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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09D
管理番号 1286320
審判番号 不服2013-7996  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-04-30 
確定日 2014-04-15 
事件の表示 特願2006-287940「熱線高反射塗料組成物及び塗装物品」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 5月 8日出願公開、特開2008-106092、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年10月23日に特許出願されたものであって、平成24年3月7日付けで拒絶理由が通知され、同年4月20日に意見書及び手続補正書の提出がなされ、平成25年1月24日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年4月30日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書の提出がなされたものである。
そして、当審において、同年6月18日付けで審査官により作成された前置報告書について、同年9月10日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年11月13日付けで回答書を提出した。

第2 平成25年4月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否

1.本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に、
「【請求項1】
Biおよび/またはYの酸化物とMnの酸化物とを含む複合金属酸化物顔料と、
一般式Si(OR)_(4)(式中、Rは互いに同一でも異なってもよく、炭素数1?2のアルキル基を示す。)で表される化合物またはその部分縮合物と、
樹脂とを含有することを特徴する熱線高反射塗料組成物。
【請求項2】
前記樹脂の一部または全部がフッ素樹脂である請求項1に記載の熱線高反射塗料組成物

【請求項3】
前記複合金属酸化物顔料の含有量が0.1質量%以上である請求項1または2に記載の熱線高反射塗料組成物。
【請求項4】
さらに、硬化剤を含有する請求項1?3の何れか一項に記載の熱線高反射塗料組成物。
【請求項5】
請求項1?4の何れか一項に記載の熱線高反射塗料組成物を塗装して形成された塗膜を有することを特徴とする塗装物品。」とあったものを,

本件補正後,
「【請求項1】
Biおよび/またはYの酸化物とMnの酸化物とを含む複合金属酸化物顔料と、
一般式Si(OR)_(4)(式中、Rは互いに同一でも異なってもよく、炭素数1?2のアルキル基を示す。)で表される化合物またはその部分縮合物と、
樹脂とを含有し、
前記樹脂の一部または全部がフッ素樹脂であることを特徴する熱線高反射塗料組成物。
【請求項2】
前記複合金属酸化物顔料の含有量が0.1質量%以上である請求項1に記載の熱線高反射塗料組成物。
【請求項3】
さらに、硬化剤を含有する請求項1または2に記載の熱線高反射塗料組成物。
【請求項4】
請求項1?3の何れか一項に記載の熱線高反射塗料組成物を塗装して形成された塗膜を有することを特徴とする塗装物品。」と補正するものである。

2.補正の目的
本件補正は、補正前の請求項2が、補正前の請求項1を引用して記載したものであったところ、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項2を新たな請求項1とし、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項3?5を新たな請求項2?4としたものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定される請求項の削除を目的とするものに該当する。
また、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項に違反するところはない。
したがって、本件補正は、適法な補正であると認められる。

第3 本願発明
本件補正は、適法な補正であるから、本願の請求項1?4に係る発明(以下、「本願発明1?4」という。)は、平成25年3月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、上記第2の1.の本件補正後のとおりのものである。

第4 当審の判断
1.引用刊行物及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-311264号公報(以下,「刊行物A」という。)には、次の事項が記載されている。


「【請求項1】表面の水に対する接触角が70°以下であり、伸び率が50?250%である塗膜を防水材の表面に積層することを特徴とする積層防水構造。
【請求項2】表面の水に対する接触角が70°以下であり、伸び率が50?250%である塗膜が、
Si(OR_(1))(OR_(2))(OR_(3))(OR_(4))
(R_(1)、R_(2)、R_(3)、R_(4)は炭素数1?12の、同一又は異なったアルキル基)で表されるテトラアルコキシシランおよび/またはその縮合物を含有する塗料組成物より形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の積層防水構造。
【請求項3】表面の水に対する接触角が70°以下であり、伸び率が50?250%である塗膜が、
テトラアルコキシシランの平均縮合度4?20の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1?2と炭素数3?10のものが混在しているものとし、その混在比率が炭素数3?10のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5?50%である化合物を含有する塗料組成物より形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の積層防水構造。
【請求項4】表面の水に対する接触角が70°以下であり、伸び率が50?250%である塗膜が、(A)重量平均分子量が5000?80000、水酸基価が20?150KOHmg/gのポリオール、(B)ポリイソシアネート化合物、及び(C)テトラアルコキシシラン縮合物を含む塗料組成物であって、(A)ポリオールの樹脂固形分100重量部に対して、(B)ポリイソシアネート化合物をNCO/OH比率で0.6?1.4となるように含有し、さらに(C)テトラアルコキシシランの平均縮合度4?20の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1?2と炭素数3?10のものが混在しているものとし、その混在比率が炭素数3?10のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5?50%である化合物を、SiO_(2)換算で1.0?40.0重量部含有することを特徴とする塗料組成物より形成されるものであることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の積層防水構造。
【請求項5】表面の水に対する接触角が70°以下であり、伸び率が50?250%である塗膜が、(A’)溶解性パラメーターが6.5?9.5、重量平均分子量が5000?150000、水酸基価が15?100KOHmg/gであり、非水系溶剤中に溶解および/または分散しているポリオールの樹脂固形分100重量部に対して、(B’)ポリイソシアネート化合物をNCO/OH比率で0.7?2.0となるように含有し、さらに(C’)テトラアルコキシシランの平均縮合度4?20の縮合物であり、該縮合物中のアルキル基が炭素数1?3と炭素数4?12のものが混在しているものとし、その混在比率が炭素数4?12のアルキル基が該縮合物中の全アルキル基の5?50%である化合物を、SiO_(2)換算で1.0?50.0重量部含有することを特徴とする塗料組成物より形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載の積層防水構造。」


「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築物の屋上や屋根において、躯体内部への雨水の侵入を防止するための防水機能を、長期にわたって持続させ、なおかつその美観を維持する効果を兼ね備えた積層防水構造に関する。
【0002】
【従来技術】従来、建築物においては、降雨による躯体内部への水分の侵入を防止するために、屋上や屋根に防水層を設けることが行われている。このような防水層は、躯体の膨張や収縮、建物の揺れ等に伴なう変位に追従できる必要から、比較的伸びの大きなものが使用される。通常このような防水層は、表面層を有しており、この表面層が防水層全体の耐候性を向上させ、外観の色相を付与する役割を担っている。このような上塗塗料は当然、防水層の伸びに追従するため、比較的、伸長性を有する材料が使用される。しかしながら、このような伸びの大きな表面層は、大気中の塵埃が付着しやすく、汚染による外観の不良が発生することが多々生じていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような防水層表面の汚れを付着し難くするために、表面層として伸長性の低い材料を使用した場合には、汚れの問題は改善されるが、防水材の伸縮に追従できず、表面層にクラックを生じる場合がある。一方、防水層は降雨や日照、および季節による温度の変化に常にさらされており、非常に厳しい環境変化において常に防水性能を維持していなければならない。ところが、前述のような表面層での汚染物質の存在が、防水層の劣化を促進し、膨れやクラックの誘発要因となることが分かってきた。すなわち、このような汚染物質は、太陽光中の赤外線の吸収能が非常に高く、結果として汚染物質が蓄熱場として作用する結果、防水材の温度上昇が著しくなるためである。
【0004】したがって、本発明が解決しようとする課題は、このような汚染物質による外観の意匠性低下をきたさず、防水材の伸縮に追従できる表面材を積層した、長期に亘って防水性能を持続可能な積層構造を得ることである。」


「【0066】
【実施例】以下に実施例、比較例をあげて本発明の効果を明確にする。
(試験方法)表1に示した原料を使用して、表2に示した各配合の塗膜組成物を製造した。この塗膜組成物を表3の組み合わせにより、裏面に50mm厚の発泡ポリスチレンを積層した300×150×1mmのアルミニウム板表面に塗付したものを試験体とし、初期状態の試験体裏面温度を測定した。つぎに赤外線ランプ(1R110V250W)を20cmの距離から照射し、温度上昇が平衡に達した時の試験体裏面温度を測定した。尚、塗装方法としては、下層は鏝を使用し、塗付量は2.5kg/m^(2)(乾燥膜厚1.8mm)にて、上層はローラーを使用し、塗付量は0.30kg/m^(2)(乾燥膜厚50μm)にて行った。また、下層の形成の前にプライマーを塗付した。このプライマーとしては、エスケー化研株式会社製、湿気硬化形ウレタン樹脂系下塗材「アーキプライマーN」を塗付量0.20kg/m^(2)にて塗装した。
【0067】つぎに、試験体作製直後の赤外線照射時裏面温度測定が終了後、その試験体を、大阪府茨木市で南面向き45度傾斜にて屋外暴露を4ヶ月間実施し、この試験体について、前述と同様に赤外線照射を行い裏面温度測定を行った。試験体作製直後と暴露後の裏面温度変化について、結果を表4に示した。
【0068】また、同様に製造した各塗膜組成物を、150mm×75mm×0.8mmのアルミニウム板に、乾燥膜厚が40μmとなるようにスプレーしたものを、標準状態で7日間乾燥・養生した後、脱イオン水中に3時間浸漬した後に、18時間乾燥した後に、協和界面科学(株)社製CA-A型接触角測定装置にて接触角を測定した。接触角の値を表3に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】(実施例1)JIS A 6021「屋根用塗膜防水材」ウレタンゴム系塗膜防水材に該当する配合例1の塗膜に対して、配合例2の、塗膜の伸びが105%の弾性ウレタン系塗膜を積層したものであり、塗膜の伸びが規定範囲の為、4ヶ月暴露後の塗膜は、割れを生じておらず、また、表面の接触角も30°と規定範囲内で親水性の為に汚染が少なく、蓄熱レベルも塗膜形成初期の平衡時温度が51℃であったものが、4ヶ月暴露後においても53℃とほぼ同様の性能を示し、変化が少なく、結果として防水材の熱による劣化促進を生じ難い積層塗膜であることがわかった。」


「【0076】(実施例4)実施例1と同様の防水材塗膜に、配合例5の、塗膜の伸びが142%のフッ素樹脂系塗膜を積層したものであり、塗膜の伸びが規定範囲の為、4ヶ月暴露後の塗膜は、割れを生じておらず、また、表面の接触角も32°と規定範囲内で親水性の為に汚染が少なく、蓄熱レベルも塗膜形成初期の平衡時温度が51℃であったものが、4ヶ月暴露後においても54℃とほぼ同様の性能を示し、変化が少なく、結果として防水材の熱による劣化促進を生じ難い積層塗膜であることがわかった。」


「【0079】(比較例3)実施例1と同様の防水材塗膜に、配合例8の、塗膜の伸びが5%のウレタン樹脂系塗膜を積層したものであり、塗膜の伸びが規定範囲外の為、4ヶ月暴露後の塗膜は、割れを生じていた。塗膜表面の接触角は30°と規定範囲内の為に、汚染物質の付着は少なかったが、塗膜が割れているため、防水材が部分的にむき出し状態となり、結果として防水材の劣化を生じやすい積層塗膜であることがわかった。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-331611号公報(以下,「刊行物B」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。


「【請求項1】 金属板表面に、遮熱性顔料として、V、Sr、Yのうちの一種以上とMnを含む複合金属酸化物の粉末を含有した塗膜を形成したことを特徴とする遮熱性に優れた塗装金属板。」


「【0021】
【実施例】板厚0.5mmの溶融55%Al-Zn合金めっき鋼板を下地金属板として使用し、金属板表面を、水酸化ナトリウムを主成分とするアルカリ溶液で脱脂した後、温湯で洗い流した。次いで、塗布型クロメート処理剤を塗布・乾燥し、クロム付着量40mg/m^(2)のクロメート皮膜を金属板表面に形成した。一部の試験番号の試験片には下塗り塗料として、主樹脂にエピビス型エポキシ樹脂、架橋剤にメラミン樹脂を使用し、質量比85/15の比率で混合した塗料ベースに、クロム酸ストロンチウムを15PWC%、TiO_(2)を20PWC%、硫酸バリウムを12PWC%含有させた塗料をロールコーターにて乾燥塗膜5μmとなるように塗布し、乾燥硬化させた。
【0022】次に、フッ化ビニリデン樹脂/メタクリル酸メチル樹脂(質量比80/20)の混合樹脂溶液を樹脂ベースとする塗料に、遮熱性顔料および比較顔料を各種の割合で混合し、3本ロール混練機で分散させることによって塗料を調整した。使用した遮熱性顔料および比較顔料の主成分および平均粒径ならびに色調を表1に、遮熱性顔料の元素比率を表2に示す。
【0023】

【0024】

【0025】各種顔料を表3に示す割合で混合した。得られた塗料は、長時間静置した後でも遮熱性顔料が沈降または凝集することはなく、保存安定性は良好であった。ロールコーターを用いて金属板に塗料を塗布し、250℃で1分間加熱乾燥した後直ちに水冷することによって膜厚20μmの塗膜を形成した。作製した塗装金属板は、JIS A5759に準拠して日射反射率を測定し、また、対象波長範囲を800?2100nmに特定して日射反射率と同様に近赤外線反射率を求めた。その結果を、塗膜構成と併せて表3に示す。
【0026】



(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-273985号公報(以下,「刊行物C」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。


「【0010】
本発明の塗料組成物に使用される(ii)赤外線反射顔料は、波長1100nm?2100nmの赤外線波長域における赤外線透過率が40%以上である顔料を1種または2種以上含有していればよく、具体的には、……マンガンイットリウムブラック顔料、及びマンガンビスマスブラック顔料からなる群から選択される1種または2種以上の顔料を含有していることが好ましい。特に(ii)赤外線反射顔料は、……本発明の塗料組成物の色相を無彩色に限定したい場合には、(ii)赤外線反射顔料は、マンガンイットリウム及び/又はマンガンビスマスブラックを含有していることが好ましい。」


「【0022】
(ii)赤外線反射顔料として以下の顔料を使用した。
マンガンビスマスブラック顔料:「6301」 アサヒ化成工業製
マンガンイットリウムブラック顔料:「6303」 アサヒ化成工業製…」


「【0036】
……
【図2】マンガンビスマスブラック顔料の赤外線反射率を示す。
【図3】マンガンイットリウムブラック顔料の赤外線反射率を示す。」


「【図2】




「【図3】


2.刊行物記載の発明
ア 刊行物A記載の発明
刊行物Aの表2は,塗膜組成物の配合例を示したものであって,その配合例5として,「含フッ素共重合体1」と「シリケート2」と「顔料1」とを含むが記載されている。
そして,表1によれば,これら3成分はそれぞれ次のものである。
・「含フッ素共重合体1」は,モノマー成分を「モノクロルトリフルオロエチレン,エチルビニルエーテル,ベオバ9,N-ジメチルアミノエチルアクリレート,ヒドロキシブチルビニルエーテル」とする重合体(以下,単に「含フッ素共重合体1」という。)
・「シリケート2」は,「メチルシリケート縮合物のn-ブタノール変性物」(以下,単に「シリケート2」という。)
・「顔料1」は,「ルチル型酸化チタン」
したがって,刊行物Aには,次の発明が記載されている。
「「含フッ素共重合体1」,「シリケート2」及び「ルチル型酸化チタン」を含む塗膜組成物。」(以下,「引用発明1」という。)

イ 刊行物B記載の発明
刊行物Bの【請求項1】「…遮熱性顔料として、V、Sr、Yのうちの一種以上とMnを含む複合金属酸化物…」(摘示カ)及び【0022】「次に、フッ化ビニリデン樹脂/メタクリル酸メチル樹脂(質量比80/20)の混合樹脂溶液を樹脂ベースとする塗料に、遮熱性顔料および比較顔料を各種の割合で混合し、」?【0026】(摘示キ)の記載から、刊行物Bには次の発明が記載されているものといえる。

「YMnO_(3)顔料と、
フッ化ビニリデン樹脂/メタクリル酸メチル樹脂(質量比80/20)の混合樹脂とを含有する塗料組成物」(以下、「引用発明2」という。)

3.対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明1との対比・判断
(ア)対比
a 引用発明1の「ルチル型酸化チタン顔料」と本願発明1の「Biおよび/またはYの酸化物とMnの酸化物とを含む複合金属酸化物顔料」とは「金属酸化物顔料」である点で一致する。
b 引用発明1の「シリケート2」と,本願発明の「一般式Si(OR)4(式中,Rは互いに同一でも異なってもよく,炭素数1?2のアルキル基を示す。)で表される化合物またはその部分縮合物」とは,ともにシリケートである点では一致する。
c 引用発明1の「含フッ素共重合体1」は,本願発明でいう「一部又は全部がフッ素樹脂である樹脂」に相当する。

d 以上から、本願発明1と引用発明1とは、
「金属酸化物顔料と、
シリケートと、
樹脂とを含有し、
前記樹脂の全部がフッ素樹脂である塗料組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:
シリケートが,本願発明1では,シリケートを構成するアルキル基(すなわち,一般式中のR)が「互いに同一でも異なってもよく,炭素数1?2のアルキル基」であるのに対して,引用発明1では「メチル基の一部をブチル基で変性(置換)したもの」である点。

相違点2:
本願発明1は,金属酸化物顔料がBiおよび/またはYの酸化物とMnとを含む複合金属酸化物である熱線高反射塗料とされているのに対して,引用発明1は,金属酸化物顔料がルチル型酸化チタンである塗料とされている点。

(イ)判断
先ず,相違点1について検討する。
刊行物A記載の発明に係るシリケート化合物は、表面の水に対する接触角が70゜以下,伸び率が50?250%である塗膜を与えることが必須とされており(摘示アの請求項1),そのようなシリケート化合物としては,アルキル基が炭素数が1?2と炭素数3?10のものが混在したもの,またはアルキル基が炭素数1?3と炭素数4?10のものが混在したもの,だけが開示されている(摘示アの請求項3?5,摘示ウ及びエの実施例等)。
すなわち,刊行物Aにおいては,シリケートは,必ず炭素数3?10又は4?10のアルキル基が混在するもののみが好ましいとされていることから,引用発明1の「シリケート2」を,例えば,メチル基のみ又はエチル基のみ,或いはその両者のみからなるシリケートに代えることは,炭素数3?10又は4?10のアルキル基を一切含まないこととなるので,そのような置き換えは,たとえ当業者といえども到底想起するものとはいえない。
もっとも,刊行物Aの配合例8にはシリケートとして,「エチルシリケート」を配合する組成物が記載されているが,この配合例8は表3において,「比較例3」として使用されているように,刊行物Aの記載において好ましからざるものとされていることから,引用発明1に係る「シリケート2」をこのようなシリケートに置き換えようとする動機付けが,当業者に想起されるものとも到底いえないことも明らかである。
また,この判断は,刊行物B及びCの記載を参酌しても影響されるものではない。
したがって,引用発明1におけるシリケート2を構成するアルキル基を「炭素数1?2のアルキル基」とすることが当業者にとって容易になし得ることとはいえない。

以上のように,相違点1に関して当業者が容易にはなし得るとはいえないので,相違点2について検討するまでもなく,引用発明1及び刊行物A?C記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

イ 本願発明1と引用発明2との対比・判断
(ア)対比
a 引用発明2の「YMnO_(3)顔料」は,本願発明1の「Biおよび/またはYの酸化物とMnの酸化物とを含む複合金属酸化物顔料」に相当する。
b 引用発明2の「フッ化ビニリデン樹脂/メタクリル酸メチル樹脂(質量比80/20)の混合樹脂」は,本願発明1の一部がフッ素樹脂である樹脂に相当する。
c 引用発明2の「塗料組成物」は,本願発明1の「熱線高反射塗料組成物」とは,塗料組成物である点一致する。

d 以上から、本願発明1と引用発明2とは,
「Yの酸化物とMnの酸化物とを含む複合金属酸化物顔料と,
樹脂とを含有し,
前記樹脂の一部がフッ素樹脂である塗料組成物」
である点で一致し,以下の点で相違する。

相違点4:
本願発明1は,一般式Si(OR)_(4)(式中、Rは互いに同一でも異なってもよく、炭素数1?2のアルキル基を示す。)で表される化合物またはその部分縮合物を含有するのに対して,引用発明2は,そのようなものを含有しない点。

相違点5:
本願発明1は,塗料組成物が,熱線高反射であるのに対して,引用発明2は,そのようなものである否か明らかでない点。

(イ)判断
先ず,相違点4について検討する。
引用発明2が記載された刊行物Bは,「遮熱性に優れた塗装金属板」に関する発明について記載されていて,その課題とするところは,「濃色から淡色までの色調の選択が可能で,熱反射性の高い塗膜が形成された塗膜金属板の提供すること」(【0003】)である。
これに対して,刊行物Aは,「積層防水構造」に関する発明について記載されているものであって,「汚染物質による外観の意匠性低下をきたさず,防水材の伸縮に追従できる表面材を積層した長期に亘って防水性能を持続可能な積層構造を得ること」である。
刊行物Aの記載と刊行物Bの記載とは,ともに建築物の外装の塗膜・塗料に関する点で一応の共通性があるとしても,そり関連性は極めて希薄といえる上,刊行物Aにおいては,汚染物質による外観の意匠性低下を抑制するためにシリケート化合物を配合して親水性を高めて汚染物質の付着抑制を図るものと理解され(【0017】?【0019】など),これに対して,引用発明2に係るYMnO3顔料は,刊行物Bの表1によれば,濃青色であって,特に汚染物質による意匠性の低下が問題となる淡色系の色調ではないことから,刊行物Aにおけるシリケート添加の手法を引用発明2に組み合わせようとする動機付けが生ずるものとはいえない。
さらに,仮に,刊行物Aの記載の技術を引用発明と組み合わせようとする場合であったとしても,刊行物Aにおけるシリケート成分は,上記ア(イ)で記載したように,それを構成するアルキル基としては「炭素数1?2と炭素数3?10」又は「炭素数1?3と炭素数4?10」といった炭素数1?2よりも大きなアルキル基が混在するもののみが好ましいとされていて,例えば,エチルシリケートはいわゆる『比較例』として使用されているにとどまることから,「炭素数1?2のアルキル基」から構成されるシリケートを使用して引用発明2と組合せようとする動機付けが生じるものとはいえない。
したがって,引用発明2に対して,「一般式Si(OR)_(4)(式中,Rは互いに同一でも異なってもよく,炭素数1?2のアルキル基を示す。)で表される化合物またはその部分縮合物」をさらに添加することが,当業者にとって容易になし得ることとはいえない。

以上のように,相違点4に関して当業者が容易にはなし得るとはいえないので,相違点5について検討するまでもなく,引用発明2及び刊行物A?C記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

また,本願発明1は,明細書の【0004】並びに各実施例及び各比較例などの記載からみて「熱線の反射性能を安定して維持できる」という効果を奏するものと理解されるが,このような効果を奏することを目的として,「Biおよび/またはYの酸化物とMnとを含む複合金属酸化物顔料」に対して「一般式Si(OR)_(4)(式中,Rは互いに同一でも異なってもよく,炭素数1?2のアルキル基を示す。)で表される化合物またはその部分縮合物」を組み合わせることは,刊行物A?Cに加えて前置報告書で引用された特開2000-166305号公報の何れの刊行物の記載をみても当業者にとって容易になし得ることとはいえないので,この点からみても,本願発明1の進歩性は否定できない。

(2)本願発明2?4について
本願発明2?4は,本願発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから,上記(1)で述べたと同様の理由により,引用発明1,引用発明2,刊行物A?C及び特開2003-166305号公報記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明1?4は,引用発明1,引用発明2,刊行物A?C及び特開2003-166305号公報記載の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-03-31 
出願番号 特願2006-287940(P2006-287940)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C09D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 牟田 博一  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 菅野 芳男
新居田 知生
発明の名称 熱線高反射塗料組成物及び塗装物品  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 鈴木 三義  
代理人 志賀 正武  
代理人 柳井 則子  
代理人 柳井 則子  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
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