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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1286324
審判番号 不服2013-12931  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-05 
確定日 2014-04-15 
事件の表示 特願2011- 81842号「開放型クリーンベンチ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月13日出願公開、特開2011-202945号、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年5月1日に出願した特願2007-120626号の一部を平成23年4月1日に新たな特許出願としたものであって、平成25年5月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成25年7月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年7月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
2-1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】
作業台の上方における開放した作業空間の空気を清浄化する開放型クリーンベンチにおいて、
前記開放した作業空間外の空気を吸い込んで清浄化する空気清浄化手段からの清浄空気を面の全体から風速が1m/秒以下の一様なプッシュ気流として作業空間内に吹き出す空気流開口面を備える一組のプッシュフードを互いのプッシュ気流が衝突して前記開放した作業空間外に流出するように前記各空気流開口面を対向させて設置し、前記開放した作業空間を前記作業台の上方における前記対向する前記空気流開口面間の前記プッシュ気流域内のほとんどの領域として、前記開放した作業空間を他の領域に比較して高い清浄度とすることを特徴とする開放型クリーンベンチ。
【請求項2】
前記一組のプッシュフードの空気流開口面の面積及び前記一組のプッシュ気流の吹き出し風速が相互に略同一であることを特徴とする請求項1に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項3】
前記一組のプッシュフードの前記空気流開口面を正対させて設置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項4】
前記一組のプッシュフードは、前記空気流開口面から吹き出すプッシュ気流の風速を可変できる機能を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項5】
前記空気流開口面から吹き出すプッシュ気流の風速が0.6m/秒以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項6】
前記一様なプッシュ気流は、前記空気流開口面近傍において当該気流の吹き出し方向に対し垂直な断面でみたとき、当該気流の風速がその断面のいたるところで実質的に一定であり、障害物がない状態での速度分布のバラツキが平均値に対して±30%以内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項7】
前記一様なプッシュ気流は、前記空気流開口面近傍において当該気流の吹き出し方向に対し垂直な断面でみたとき、当該気流の風速がその断面のいたるところで実質的に一定であり、障害物がない状態での速度分布のバラツキが平均値に対して±20%以内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項8】
前記一組のプッシュフードの前記空気流開口面から吹き出すプッシュ気流の風速の比は1:1?1:1.8であることを特徴とする請求項1に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項9】
前記一組のプッシュフードの前記空気流開口面の面積の比は1:1?1:4であることを特徴とする請求項1又は8に記載の開放型クリーンベンチ。」
から
「【請求項1】
作業台の上方における開放した作業空間の空気を清浄化する開放型クリーンベンチにおいて、
前記作業空間外の空気を吸い込んで清浄化する空気清浄化手段からの清浄空気を面の全体から風速が1m/秒以下の一様なプッシュ気流として作業空間内に吹き出す空気流開口面を備える一組のプッシュフードを互いのプッシュ気流が衝突して前記作業空間外に流出するように前記各空気流開口面を対向させて設置することにより前記作業空間の2?4方向を開放し、前記開放した作業空間を前記作業台の上方における前記対向する前記空気流開口面間の前記プッシュ気流域内のほとんどの領域として、前記開放した作業空間を他の領域に比較して高い清浄度とすることを特徴とする開放型クリーンベンチ。
【請求項2】
前記一組のプッシュフードの空気流開口面の面積及び前記一組のプッシュ気流の吹き出し風速が相互に略同一であることを特徴とする請求項1に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項3】
前記一組のプッシュフードの前記空気流開口面を正対させて設置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項4】
前記一組のプッシュフードは、前記空気流開口面から吹き出すプッシュ気流の風速を可変できる機能を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項5】
前記空気流開口面から吹き出すプッシュ気流の風速が0.6m/秒以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項6】
前記一様なプッシュ気流は、前記空気流開口面近傍において当該気流の吹き出し方向に対し垂直な断面でみたとき、当該気流の風速がその断面のいたるところで実質的に一定であり、障害物がない状態での速度分布のバラツキが平均値に対して±30%以内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項7】
前記一様なプッシュ気流は、前記空気流開口面近傍において当該気流の吹き出し方向に対し垂直な断面でみたとき、当該気流の風速がその断面のいたるところで実質的に一定であり、障害物がない状態での速度分布のバラツキが平均値に対して±20%以内であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項8】
前記一組のプッシュフードの前記空気流開口面から吹き出すプッシュ気流の風速の比は1:1?1:1.8であることを特徴とする請求項1に記載の開放型クリーンベンチ。
【請求項9】
前記一組のプッシュフードの前記空気流開口面の面積の比は1:1?1:4であることを特徴とする請求項1又は8に記載の開放型クリーンベンチ。」
とする補正を含むものである。

2-2.補正の適否
2-2-1.新規事項
本件補正は、補正前の請求項1において、開放した作業空間に関して「作業空間の2?4方向を開放」することの限定を付加する補正を含むものである。
しかし、作業空間を開放する方向の数については、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」いう。)に記載されていない。
また、上記補正について、審判請求人は、平成25年10月30日付け回答書において、「明細書の段落0009には、「本発明の局所空気清浄化装置(開放型クリーンベンチは、)・・・床の上に直接又は間接に設置することもできる」ことが記載されており、局所空気清浄化装置を床の上に直接設置することにより「下」方向が閉鎖され、作業空間の3方向が開放された状態となります。さらに、局所空気清浄化装置を壁際に配置することは一般的に行われていることであり、この場合には「後」方向が閉鎖されます。このように、局所空気清浄化装置を床の上であって壁際に直接設置することにより作業空間の2方向が開放された状態となります。 このため、2方向又は3方向を開放することは当初明細書等の記載から当然に導き出せる自明な事項です。」と主張しているが、局所空気清浄化装置を床の上に直接設置することにより「下」方向が閉鎖され、作業空間の3方向が開放することは示唆されているとし得ても、局所空気清浄化装置を床の上であって壁際に直接設置することは、当初明細書等に記載がなく、作業空間の2方向を開放することが、当初明細書等の記載から当然に導き出せる自明な事項とすることはできない。
よって、上記補正は、当初明細書等のすべての記載を統合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。

2-2-2.まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
3-1.本願発明
平成25年7月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?9に係る発明は、平成25年1月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項(上記「2-1.本件補正」の補正前の請求項1?9参照。)により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)。

3-2.原査定の理由の概要
この出願の請求項1?9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


1.特公平5-61541号公報(以下「引用例1」という。)
2.特開2004-12038号公報(以下「引用例2」という。)
3.特開平1-244226号公報(以下「引用例3」という。)
4.特開2005-201488号公報(以下「引用例4」という。)

3-3.引用例の記載事項
[引用例1について]
(1a)「〔発明の利用分野〕
本発明は、清浄室と外界との間に開閉扉を有するクリーンベンチ、クリーンルーム、エアーシヤワー装置などの空気清浄装置に関する。」(第1欄17?20行)

(1b)「 第2図は清浄室に供給された清浄空気の全量を外界へ放出する開放形クリーンベンチの従来例を示す。このクリーンベンチは、前面に開口部2を有する清浄室1と、この清浄室1に清浄空気を供給するための給気フイルタ3、送風機4、給気ダクト5、プレフイルタ15を備え、清浄室1と外界との間に透光性を有するスライド式の開閉扉7を設けてある。作業中に清浄室1へ外気が流入するのを防ぐため、第2図aの矢印で示すようにプレフイルタ15を通して外気を取り入れ、送風機4から送り出された空気の全量を給気フイルタ3を通して天井部空気吹出口10から清浄室1へ供給し、清浄室1内を通過した気流を開閉扉7の下側の開口部2から外界へ流出させるようにしてある。」(第3欄20?34行)

以上の記載によると、引用例1には、
「清浄室に供給された清浄空気の全量を外界へ放出する開放形クリーンベンチであって、
前面に開口部2を有する清浄室1と、この清浄室1に清浄空気を供給するための給気フイルタ3、送風機4、給気ダクト5、プレフイルタ15を備え、清浄室1と外界との間に透光性を有するスライド式の開閉扉7を設けてあり、
作業中に清浄室1へ外気が流入するのを防ぐため、プレフイルタ15を通して外気を取り入れ、送風機4から送り出された空気の全量を給気フイルタ3を通して天井部空気吹出口10から清浄室1へ供給し、清浄室1内を通過した気流を開閉扉7の下側の開口部2から外界へ流出させるようにしてある開放形クリーンベンチ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用例2について]
(2a)「【請求項1】
空調対象領域を挟んで向き合うようにして設けられた一対の吹出口と、
該一対の吹出口にそれぞれ清浄エアを供給する清浄エア供給手段と、
前記吹出口の上方位置、及び下方位置に設けられた還気口と、を備え、
前記一対の吹出口からそれぞれ吹き出された清浄エア同士を前記空調対象領域で衝突させるとともに、前記空調対象領域のエアを前記還気口から吸い込むことによって、前記清浄エアの衝突位置に清浄なクリーンゾーンを形成させることを特徴とするクリーンルーム。」

(2b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のクリーンルームは、要求される清浄度が高まるにつれて実効換気回数、すなわち清浄エアの送風量を増加させる必要があり、換気のためのランニングコストが嵩むという問題があった。また、送風量が大きくなると、清浄エアの気流が周りの空気を誘引して、乱流域と滞留域が発生し、清浄度がかえって低下するおそれもあった。特に、上述した水平一方向流方式のクリーンルームは、送風量の増加に伴って気流が乱れやすいため、クラス10000程度の清浄度を確保することは大空間のクリーンルームにおいては現実的には不可能であった。このような背景から、清浄エアを小さな送風量で供給しながら、高い清浄度を確保できるクリーンルームが望まれていた。」

(2c)「【0006】
本発明の発明者は、天井面にHEPAフィルタやFFUを設置できない条件下で、様々な空調試験を行った結果、次のことを発見した。すなわち、空調対象領域を挟んで対向する側面に吹出口を設けるとともに、この吹出口の上方位置、及び下方位置に還気口を設けて、前記吹出口から低速で清浄エアを吹き出すと、吹き出された清浄エア同士が衝突して、その衝突位置に清浄なクリーンゾーンが形成され、空調対象領域を効果的に浄化できることを見いだした。したがって、本発明によれば、例えば2?3m/sの遅い吹出風速と少ない送風量であっても、クラス10000程度の清浄度を確保することができ、ランニングコストの低下と、高い清浄度の確保の両方を達成することができる。」

[引用例3について]
(3a)「[産業上の利用分野]
本発明は、開口を通る固体物体の移動を阻害することなくかつ開口を介しての光学的アクセスを阻害することなく、開口を介して包囲領域内に移動する外部流体の量を減ずる方法および装置に関する。本発明はまた、ある表面又は領域平面が外部流体と接触又は相互混合するのを防ぐ方法及び装置に関する。
[従来の技術]
ガス流を所望の空間に差し向けるため、あるいは包囲領域におけるガスの組成を制御するためにガスジェット及び空気カーテンを使用することで、近年数々のプロセスの改善が可能となった。」(第5頁右上欄9行?同左下欄2行)

(3b)「 例 4
ここでは、パージガスを流さない高温はんだの環境を、その水平なはんだ表面を覆う室温の層状窒素流体ドアを用いて室温の周囲空気から防護する例を取上げた。
第3図は、2つの層状流体ドア42、44によって防護された高温はんだ表面40の寸法形状を示す。2つの層状流体ドア42、44は、はんだ浴52の上の空気がはんだ浴52の表面40に接触してそれを酸化させるのを防止するためにはんだ浴52の両側に配置した。・・・はんだ表面から開口を通しての周囲環境へのパージガスの流れはゼロとした。はんだ浴を取巻く周囲環境は空気であった。ベクトル42、44で表わされる層状流体流れは、室温の窒素ガスによって構成した。
各層状流体のための分配器56、60は、例1の場合と同様の態様で構成した。各分配器56、60の孔度2μの焼結金属製多孔質側壁54、58は、層状流体流れ42、44がはんだ浴52の表面に平行になるように位置づけした。ベクトル42、44で表わされる室温の窒素ガスの層状流体流れは、孔度2μの焼結金属製多孔質側壁即ち多孔質シート54、58によって均一に分配され、室温の窒素ガスの層状流体層即ち層状流体ドアがはんだ表面40の上部に沿って流れた。これらの2つの層状流体層は、はんだ浴の開口62の中央部で合流し、底から上向きに転向してはんだ浴表面から離れる方向に流れた。単一の層状流体層でも、はんだ表面40を酸化から防護することはできたが、上述のように2つの層状流体層を使用した場合の方が層状流体ドアの安定性が増し、周囲空気の侵入を実質的に減少又は排除することが認められた。」(第14頁右上欄12行?同右下欄13行)

[引用例4について]
(4a)「【請求項1】
載置手段の上方空間を浄化領域であるゾーンとし、このゾーンに対してエアを吹き付けるゾーン浄化システムであって、前記エアの吹き出し口に、小径で且つ互いに平行な直線状の流路を密に具備したエア吹き出し手段が設けられ、前記ゾーンの真上部の左右両側からゾーンに向け斜め方向にエアを吹き付けるように構成されていることを特徴とするゾーン浄化システム。
【請求項2】
前記載置手段に、ゾーンに向けて吹き付けられたエアを吸入する吸い込み口を設けた請求項1に記載のゾーン浄化システム。」

(4b)「【0017】
図1および図2において、1は剖検室であり、この剖検室1内に、載置手段としての解剖台2が配置されている。そして、この実施例のゾーン浄化システムは、解剖台2の上方空間を浄化領域であるゾーンZとし、このゾーンZに向けてその上方(斜め上方)から層流状態のクリーンエアAを吹き付けるように構成されている。」

(4c)「【0027】
上記の構成からなるゾーン浄化システムでは、流路9を流れるクリーンエアAがエア吹き出し手段6を通過する間に、その流れが整流化され、これに加えて乱れ成分も取り除かれるので、エア吹き出し手段6を通過したクリーンエアAは層流となる。そして、エア吹き出し口5から吹き出されるクリーンエアAが真下に向かわずにその斜め下にあるゾーンZに向かうように構成してあり、エア吹き出し口5からゾーンZに向けて直線的に吹き出されたクリーンエアAは、ほとんど拡散することなくゾーンZに良好に到達した後、ゾーンZのすぐ下に設けられた吸い込み口3から一部が吸い込まれ、その流れに伴って、他のクリーンエアAも下方へと向かい、やがて排気口11に吸い込まれる。
【0028】
そのため、浄化領域とするゾーンZには、クリーンエアAによる下向きの気流が効果的に形成され、検体Eから発生したエアロゾルは、クリーンエアAによって誘導され強制的にゾーンZよりも下方へと流されることになる。・・・」

3-4.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、
引用発明の「清浄室」は、作業を行う室であるので、本願発明1でいう「作業台」を備えることは明らかであり、また、「開口部2」を備えていることから、その上方は、本願発明1の「開放した作業空間」といえ、
引用発明の「天井部空気吹出口10」は、本願発明1の「空気流開口面」に相当し、また、そこから吹き出される気流は、本願発明1の「プッシュ気流」といえ、「天井部空気吹出口10」の全面から一様に吹き出されているものと認められ、当該「天井部空気吹出口10」が備えられている部分は、本願発明1の「プッシュフード」に相当し、
引用発明は、「プレフイルタ15を通して外気を取り入れ、送風機4から送り出された空気の全量を給気フイルタ3を通して天井部空気吹出口10から清浄室1へ供給」していることから、本願発明1でいう「開放した作業空間外の空気を吸い込んで清浄化する空気清浄化手段」を備えるものといえる。
よって、両者は、
「作業台の上方における開放した作業空間の空気を清浄化する開放型クリーンベンチにおいて、
前記開放した作業空間外の空気を吸い込んで清浄化する空気清浄化手段からの清浄空気を面の全体から一様なプッシュ気流として作業空間内に吹き出す空気流開口面を備えるプッシュフードを設置した開放型クリーンベンチ。」で一致し、以下の点で相違する。

相違点;本願発明1では、プッシュ気流の風速が、1m/秒以下であり、また、設置されたプッシュフードが、一組であり、それらから吹き出される互いのプッシュ気流が衝突して開放した作業空間外に流出するように各空気流開口面を対向させて設置され、前記開放した作業空間を作業台の上方における前記対向する前記空気流開口面間の前記プッシュ気流域内のほとんどの領域として、前記開放した作業空間を他の領域に比較して高い清浄度とするのに対し、引用発明では、気流の風速の特定はなく、また、空気吹出口は、1つである点。

上記相違点について検討する。
引用例2に記載されたクリーンルームは、一対の吹出口が、空調対象領域を挟んで向き合うようにして設けられているものの、それらから吹き出された清浄エア同士の衝突位置に清浄なクリーンゾーンが形成されるものであり、クリーンルーム全体の清浄度を確保するものではないことから、「作業中に清浄室1へ外気が流入するのを防ぐ」もの、すなわち、清浄室1全体の清浄度を確保するものである引用発明に引用文献2の技術を適用し得るものではない。さらに、引用例2には、気流の風速を1m/秒以下とすることも記載されていない。
引用例3に記載された層状窒素流体ドアは、周囲空気の侵入を実質的に減少又は排除する、いわゆる「空気(エア)カーテン」に係る技術であって、引用発明の「開放形クリーンベンチ」とガス流の使用形態が異なることから、引用発明に引用例3の技術を適用し得るものではない。
引用例4に記載されたゾーン浄化システムは、ゾーンの真上部の左右両側のエア吹き出し口からゾーンに向け斜め方向にエアを吹き付けるように構成されいるが、それぞれの吹き付けられたエアは、当該ゾーンより下方に流されるものであり、それらの気流が、上記相違点のように衝突して開放した作業空間外に流出するように各エア吹き出し口を対向させて設置したものではない。
よって、引用例2?4に記載されて事項から、上記相違点を、容易になし得たものとすることはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用例2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3-5.本願発明2?9について
本願発明2?9は、本願発明1を引用し、本願発明1にさらに限定を付加するものであるので、本願発明2?9についても、本願発明1と同様に、当業者が容易に発明することができたものとすることもできない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1?9は、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-04-03 
出願番号 特願2011-81842(P2011-81842)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
P 1 8・ 561- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 竹之内 秀明
特許庁審判官 山崎 勝司
鳥居 稔
発明の名称 開放型クリーンベンチ  
代理人 桜田 圭  
代理人 毛受 隆典  
代理人 森川 泰司  
代理人 雨宮 康仁  
代理人 木村 満  

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