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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G
管理番号 1286349
審判番号 不服2012-5047  
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-16 
確定日 2014-04-02 
事件の表示 特願2007-288125「液晶表示装置及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年5月22日出願公開、特開2008-116964〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本件出願」という。)は、2006年(平成18年)11月6日に大韓民国でされた特許出願に基づくパリ条約の優先権を主張して平成19年11月6日にされた特許出願である。そして、平成23年6月2日付け手続補正書により特許請求の範囲についての補正がされ、同年11月14日付けで拒絶査定がされ、同年同月16日に査定の謄本が送達された。
これに対して、平成24年3月16日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に特許請求の範囲についての補正がされた。
その後、当審が平成25年4月18日付けで拒絶の理由を通知したところ、同年9月2日付け手続補正書により特許請求の範囲についての補正がされるとともに、同日付け意見書が提出された。

第2 本件出願に係る発明
本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものである。ただし、「ゲットライン」は、明らかに「ゲートライン」の誤記であるから、そのように読み替える。
そうすると、本願発明は、以下のとおりのものである。なお、読み替えた部分に下線を付した。

「【請求項1】
基板の短軸方向に沿って配置される多数のデータラインと、前記データラインと交差するように前記基板の長軸方向に沿って配置される多数のゲートラインとを有し、各データラインは前記長軸方向へ延伸し、各ゲートラインは前記短軸方向へ延伸する液晶パネルと;
前記データラインにデータ電圧を供給するデータ駆動回路と;
前記ゲートラインにスキャンパルスを供給するゲート駆動回路と;
前記データ駆動回路にデジタルビデオデータを供給して前記データ駆動回路と前記ゲート駆動回路を制御するタイミングコントローラと;を備え、
前記液晶パネルは、
前記短軸方向に沿って配置される多数の赤色サブピクセルと;
前記短軸方向に沿って配置される多数の緑色サブピクセルと;
前記短軸方向に沿って配置される多数の青色サブピクセルと;を備え、
隣接する前記赤色サブピクセル、緑色サブピクセル及び青色サブピクセルは、第1の1/3水平期間、第2の1/3水平期間、及び第3の1/3水平期間を含む1水平期間の間にデータ電圧が連続して供給され、
前記データ駆動回路は
前記第1の1/3水平期間の間に赤色のデジタルビデオデータに対応する赤色のデータ電圧を前記各データラインに供給し、前記第2の1/3水平期間の間に緑色のデジタルビデオデータに対応する緑色のデータ電圧を前記各データラインに供給した後、前記第3の1/3水平期間の間に青色のデジタルビデオデータに対応する青色のデータ電圧を前記各データラインに供給し、
前記ゲート駆動回路は、1水平期間の間に3スキャンパルスを隣接する3つのゲートラインへ連続して供給し、
前記ゲート駆動回路は、1水平期間の1/3に対応するパルス幅を有するスキャンパルスを発生し、
隣接する3つのゲートラインがそれぞれ第1のゲートライン、第2のゲートライン及び第3のゲートラインとして定義される場合に、第1のゲートラインへ付加されるスキャンパルスの上昇端と第3のゲートラインへ付加されるスキャンパスの下降端の間の期間が1水平期間である
ことを特徴とする液晶表示装置。」

第3 当審が通知した拒絶の理由について
1.当審が通知した拒絶の理由
当審が通知した拒絶の理由は、概略以下のとおりである。

「発明の詳細な説明の記載によれば、従来の液晶表示装置で表示可能なデータは、本願発明の液晶表示装置でも表示可能であることが当然の前提になっていると思われる。しかし、本願発明の液晶表示装置は、従来の液晶表示装置で表示可能だったデータを表示することができない。そのため、本願発明にどのような技術的意義があるのかを理解することができない。
本件出願の発明の詳細な説明は、本願発明について経済産業省令で定めるところにより記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」

2.判断
(1)発明の詳細な説明の段落0015には、従来の液晶表示装置について次のように記載されている。

「【0015】
上記のような液晶表示装置は、液晶パネル14の長軸(x軸)方向にデータラインが配列されるので、ゲートラインに比べてデータラインの数が多い。したがって、データラインを駆動するためのソースドライブIC51,61の個数が多くなる。ソースドライブIC51,61は、ゲートドライブIC55,65に比べて単価が高いので、液晶表示装置の製造費用を上昇させる主な要因として作用している。現在、XGA解像度(1024*768)を有する液晶パネル14においてソースドライブIC51,61が618個の出力チャネルを有する場合、5個のソースドライブICを必要とする。また、PCBとFPCが比較的大きいので、液晶表示装置の費用が一層上昇する。」

これを受けて、段落0017には、発明が解決しようとする課題について次のように記載されている。

「【0017】
したがって、本発明の目的は、データラインにデータを供給するためのソースドライブICの個数を減少させ、前記ソースドライブICに信号を供給するためのFPCとPCBの大きさを減少させる液晶表示装置及びその駆動方法を提供することにある。」

これらの記載から分かるように、本願発明が解決しようとする課題は、ソースドライブICの個数の増加による液晶表示装置の製造費用の増大を抑えることにある。
一方、段落0050には、本願発明の液晶表示装置について次のように記載されている。

「【0050】
図10に示すように、データラインD1?Dnにデータ電圧が供給されるためには、ソースドライブIC 1a,1bに供給されるデータ順序を、図2のような信号配線に供給される順序と異ならせるべきである。このために、本発明の第1実施例に係る液晶表示装置の駆動方法は、インターフェース回路を通して外部からタイミングコントローラ3にデジタルビデオデータを供給するための外部システムのグラフィックカードでまたはタイミングコントローラ3内で、図9のような信号配線とサブピクセルの配置を基準にしてデータを再整列する必要がある。」

この記載から、本願発明の液晶表示装置は、外部から入力されるビデオ信号を再配列し、所定の順序でデータ電圧をデータラインに供給するが、この所定の順序は、図2に示された従来の液晶表示装置がデータ電圧をデータラインに供給する順序と異なることが分かる。そして、このことから逆に、本願発明の液晶表示装置に外部から入力されるビデオ信号は、従来どおりとされていることが明らかである。すなわち、従来の液晶表示装置で表示可能なデータは、本願発明の液晶表示装置でも表示可能であることが、当然の前提になっていると認められる。

(2)そこで、まず、従来の液晶表示装置についての記載をみると、従来の液晶表示装置は、例えばXGA解像度(横1024ピクセル、縦768ピクセル)の液晶パネルを備えており、これを駆動するには、618個の出力チャネルを有するソースドライブICが5個必要になる(段落0015)。
必要なソースドライブICの数が5個(出力チャネルの数にして3090個)とされているのは、表1(段落0088)の「従来技術」の欄に示されているように、液晶パネルが768本のゲートラインと3072本(=1024ピクセル×3本/ピクセル)のデータラインとを備えているため、ソースドライブICの出力チャネルの数は、少なくとも3072個でなければならないからである。
そして、ゲートラインは、液晶パネルの長軸方向に延びており、データラインは、液晶パネルの短軸方向に延びている(段落0015並びに図1及び2)。
ところで、液晶表示装置は、当業者に周知のとおり、一定時間Tごとに新たな画像を表示することによって動画を表示する。一定時間Tは、具体的には例えば1/30秒や1/60秒であり、液晶表示装置は、この一定時間Tの間に1画像分のデータを液晶パネルに供給しなければならない。
これを上記従来の液晶表示装置に当てはめると、一定時間Tの間に768本のゲートラインの走査を終えなければならないことになる。したがって、ゲートライン1本当たりの走査時間(すなわち、1水平期間1H)は、おおむね次の式(1)で表される。

1H=T/768 …(1)

(3)一方、本願発明の液晶表示装置も液晶パネルを備えているが、請求項1に

「基板の短軸方向に沿って配置される多数のデータラインと、前記データラインと交差するように前記基板の長軸方向に沿って配置される多数のゲートラインとを有し、各データラインは前記長軸方向へ延伸し、各ゲートラインは前記短軸方向へ延伸する液晶パネル」

と記載されているように、本願発明の液晶表示装置の液晶パネルは、従来とは反対に、ゲートラインがその短軸方向に延びており、データラインがその長軸方向に延びている。したがって、本願発明の液晶表示装置の液晶パネルは、例えばXGA解像度の場合、表1(段落0088)の「第1及び第2実施例」の欄に示されているように、3072本のゲートラインと768本のデータラインとを備えていることになる。
さらに、請求項1の

「前記液晶パネルは、
前記短軸方向に沿って配置される多数の赤色サブピクセルと;
前記短軸方向に沿って配置される多数の緑色サブピクセルと;
前記短軸方向に沿って配置される多数の青色サブピクセルと;を備え、
隣接する前記赤色サブピクセル、緑色サブピクセル及び青色サブピクセルは、第1の1/3水平期間、第2の1/3水平期間、及び第3の1/3水平期間を含む1水平期間の間にデータ電圧が連続して供給され、
前記データ駆動回路は
前記第1の1/3水平期間の間に赤色のデジタルビデオデータに対応する赤色のデータ電圧を前記各データラインに供給し、前記第2の1/3水平期間の間に緑色のデジタルビデオデータに対応する緑色のデータ電圧を前記各データラインに供給した後、前記第3の1/3水平期間の間に青色のデジタルビデオデータに対応する青色のデータ電圧を前記各データラインに供給し、
前記ゲート駆動回路は、1水平期間の間に3スキャンパルスを隣接する3つのゲートラインへ連続して供給し、
前記ゲート駆動回路は、1水平期間の1/3に対応するパルス幅を有するスキャンパルスを発生し、
隣接する3つのゲートラインがそれぞれ第1のゲートライン、第2のゲートライン及び第3のゲートラインとして定義される場合に、第1のゲートラインへ付加されるスキャンパルスの上昇端と第3のゲートラインへ付加されるスキャンパスの下降端の間の期間が1水平期間である」

という記載から明らかなように、本願発明の液晶表示装置は、例えばXGA解像度の液晶パネルを備える場合、3072本のゲートラインのそれぞれに、1水平期間の1/3に対応するパルス幅を有するスキャンパルスを供給する。すなわち、ゲートライン1本当たりの走査時間は、1/3水平期間である。

(4)ところで、段落0037には、本願発明の液晶表示装置の1水平期間について次のように記載されている。

「【0037】
…(略)…ここで、1水平期間(1H)の大きさは、同一の解像度を有する従来技術において1水平ラインにデータ電圧を供給する期間と実質的に同一である。以下で説明する1水平期間(1H)は、この値を有する。」

したがって、請求項1に記載された「1水平期間」も、「同一の解像度を有する従来技術において1水平ラインにデータ電圧を供給する期間」であることが明らかである。すなわち、本願発明の液晶表示装置の「1水平期間」は、従来の液晶表示装置の「1水平期間」と同じである。
これは、請求人も認めるところである。すなわち、請求人は、意見書で次のように主張している。

「図面1及び図面3(A)に示されるように、一般構造に基づく1Hは、1フレーム期間がTである場合に、T/2です。ここで、2ゲートラインGL1及びGL6が提供されるゆえに、1フレーム期間は2H(=1H*2)となります。
図面2及び図面3(B)に示されるように、本願発明の構造に基づく1/3Hは、1フレーム期間がTである場合にT/6です。ここで、6ゲートラインGL1?GL6が提供されるゆえに、1フレーム期間は2H(=1/3H*6)となります。」

請求人の主張は、要するに、従来の液晶表示装置の「1水平期間」が「T/2」のとき、本願発明の液晶表示装置の「1/3水平期間」が「T/6」になるということであるから、本願発明の液晶表示装置の「1水平期間」は、従来の液晶表示装置の「1水平期間」と同じである。

(5)本願発明の液晶表示装置は、例えばXGA解像度の液晶パネルを備える場合、上記(3)で述べたとおり、3072本のゲートラインを、1本当たり1/3水平期間で走査することになる。
そして、1水平期間は、従来の液晶表示装置と同じであり、したがって、式(1)で表されるから、本願発明の液晶表示装置が液晶パネルの3072本のゲートラインをすべて走査するのに要する時間T’は、次の式(2)に示すように、一定時間Tより大きくなる。

T’=(1/3)×(T/768)×3072
=4T/3
>T …(2)

本願発明の液晶表示装置が液晶パネルのすべてのゲートラインを走査するのに要する時間T’が一定時間Tより大きいということは、本願発明の液晶表示装置が一定時間Tの間に1画像分のデータを液晶パネルに供給できないことを意味する。
すなわち、本願発明の液晶表示装置は、従来の液晶表示装置で表示可能なデータを表示することができない。これは、上記(1)で述べた前提に反する。
したがって、本願発明の液晶表示装置は、その技術的意義が不明である。

3.請求人の主張について
上記2.(4)でも引用したとおり、請求人は、意見書で次のように主張している。

「図面1及び図面3(A)に示されるように、一般構造に基づく1Hは、1フレーム期間がTである場合に、T/2です。ここで、2ゲートラインGL1及びGL6が提供されるゆえに、1フレーム期間は2H(=1H*2)となります。
図面2及び図面3(B)に示されるように、本願発明の構造に基づく1/3Hは、1フレーム期間がTである場合にT/6です。ここで、6ゲートラインGL1?GL6が提供されるゆえに、1フレーム期間は2H(=1/3H*6)となります。」

請求人が主張するとおり、従来の液晶表示装置の1水平期間(一般構造に基づく1H)がT/2であれば、一定時間(1フレーム期間)Tの間に2本のゲートラインを走査することができる。そして、同じく請求人が主張するとおり、本願発明の液晶表示装置のように、1/3水平期間(本願発明の構造に基づく1/3H)がT/6であれば、一定時間(1フレーム期間)Tの間に従来の3倍に当たる6本のゲートラインを走査することができる。
これを例えばXGA解像度の液晶パネルに当てはめると、一定時間Tの間に、従来の液晶表示装置は、768本のゲートラインを走査することができるのに対し、本願発明の液晶表示装置は、その3倍に当たる2304本のゲートラインを走査することができる。しかし、これは、本願発明の液晶表示装置が走査すべきゲートラインの数(3072本)より少ないから、本願発明の液晶表示装置は、一定時間Tの間に1画像分のデータを液晶パネルに供給することができない。
請求人の主張は、上記2.で述べた判断を左右するものではない。

4.当審が通知した拒絶の理由についてのまとめ
以上に検討したとおり、本件出願の発明の詳細な説明は、本願発明について経済産業省令で定めるところにより記載されたものでないから、依然として特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4 原査定の拒絶の理由について
1.請求項1に記載された「1水平期間」の意味
上記第3で述べたとおり、本願発明の液晶表示装置は、従来の液晶表示装置と異なり、一定時間Tの間に1画像分のデータを液晶パネルに供給することができず、従来の液晶表示装置で表示可能なデータを表示することができないから、その技術的意義が不明である。
しかし、仮に、段落0037の記載が誤りであり、請求項1に記載された「1水平期間」が、「同一の解像度を有する従来技術において1水平ラインにデータ電圧を供給する期間」と異なっていてもよいのであれば、本願発明の液晶表示装置として、技術的意義が明確なものを想定することは可能である。
例えば、本願発明の液晶表示装置が例えばXGA解像度の液晶パネルを備え、その「1水平期間」が「同一の解像度を有する従来技術において1水平ラインにデータ電圧を供給する期間」の3/4であるとすれば、本願発明の液晶表示装置が液晶パネルの3072本のゲートラインのすべてを走査するのに要する時間T’は、次の式(3)に示すように、一定時間Tに等しくなる。

T’=(1/3)×(3/4)×(T/768)×3072
=T …(3)

このとき、本願発明の液晶表示装置は、明らかに、従来の液晶表示装置で表示可能なデータが表示可能であるとともに、ソースドライブICの個数の増加による製造費用の増大を抑制することができるという技術的意義を有する。
そこで、以下では、請求項1に記載された「1水平期間」は、「同一の解像度を有する従来技術において1水平ラインにデータ電圧を供給する期間」と異なっていてもよいと解釈した上で、念のため、原査定の拒絶の理由についても検討する。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由3は、概略以下のとおりである。

「本願発明は、本件出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて、本件出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2001-194645号公報」

3.刊行物1に記載された事項
(1)刊行物1の記載
刊行物1には、以下の記載がある。

ア.段落0010から0013まで
「【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、液晶パネルは、上述したように素子基板と対向基板とを貼り合わせて構成されている。実装端子と、データ線駆動回路および走査線駆動回路とは、素子基板に形成される。したがって、素子基板の面積は、対向基板の面積と比較して大きくなる。ここで、実装端子を長辺LL側に設けた液晶パネルは、実装端子を短辺LS側に設けたものと比較して、素子基板の面積が大きくなってしまう。図14に示す横長画面の液晶パネルにあっては、データ線駆動回路130Aとの関係で実装端子を長辺LL側に設ける必要があるので、素子基板の面積が大きくなり、液晶パネルのコストが上昇するといった問題がある。
【0011】一方、図15に示す縦長画面の液晶パネルを90度回転させ、横長画面を表示させる場合には、実装端子が液晶パネルの短辺LS側にあるので、素子基板の面積が大きくならない。しかしながら、この場合には90度回転させるため、横ストライプの画面になってしまい、アルファベット等の文字が読み難いといった問題がある。この点について、図16を参照しつつ、具体的に説明する。図16は緑色で表示される文字“X”を横ストライプの画面で表示した例を示す概念図である。この図において、斜線で示した部分が、緑色の文字“X”に対応する画素領域である。この場合には、文字“X”が途切れてしまい読み難くなってしまう。
【0012】すなわち、横長画面を表示させるために、図14に示す液晶パネルを用いれば素子基板の面積が大きくなる一方、図15に示す液晶パネルを90度回転させて用いる場合には文字が読み難くなるといった問題がある。
【0013】本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、素子基板の面積が小さくかつ文字が読み易い電気光学パネル、そのデータ線駆動回路および駆動方法、これを用いた電気光学装置、並びに電子機器を提供することにある。」

イ.段落0029から0034まで
「【0029】<1.第1実施形態>まず、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置について、電気光学材料として液晶を用いた液晶表示装置を例にとって説明する。
【0030】<1-1.電気光学装置の全体構成>図1は、第1実施形態に係る液晶表示装置の電気的構成を示すブロック図である。この図に示されるように、液晶表示装置は、液晶パネル100と、タイミング発生回路200と、画像信号処理回路300とを備える。
【0031】このうち、タイミング発生回路200は、各部で使用されるタイミング信号(必要に応じて後述する)を出力するものである。また、画像信号処理回路300は、R,G,Bの3原色に対応する各入力画像データDr,Dg,Dbに所定の行列変換を施して、各画像データDR,DG,DBを生成する。ここで、入力画像データDr,Dg,Dbおよび画像データDR,DG,DBは、1サンプリング当たり6ビットのパラレルデータである。なお、行列変換の詳細については後述する。
【0032】次に、液晶パネル100の電気的構成について説明する。液晶パネル100は、画像表示領域110、走査線駆動回路120およびデータ線駆動回路130を備えている。また、液晶パネル100は、後述するように、素子基板と対向基板とを互いに電極形成面を対向して貼付した構成となっている。
【0033】このうち、素子基板の画像表示領域110にあっては、図1においてY方向に沿って平行に複数本の走査線112が配列して形成され、また、これと直交するX方向に沿って平行に複数本のデータ線114が形成されている。そして、これらの走査線112とデータ線114との各交点においては、TFT116のゲート電極が走査線112に接続される一方、TFT116のソース電極がデータ線114に接続されるとともに、TFT116のドレイン電極が画素電極118に接続されている。そして、各画素領域R,G,Bは、画素電極118と、後述する対向基板に形成された共通電極と、これら両電極間に挟持された液晶とによって構成される結果、走査線112とデータ線114との各交点に対応して、マトリクス状に配列することとなる。…(略)…
【0034】図2は、画像表示領域110を構成する画素を示した概念図である。なお、符号Pjkは、第j列、第k行の画素を示す。図示するように画像表示領域110は、n行m列の各画素P11?Pmnから構成されており、縦方向の長さに対して横方向の長さが長い横長画面である。さらに、1つの画素は、R画素領域R、G画素領域GおよびB画素領域Bから構成されている。これらの画素領域R,G,Bは、走査線112とデータ線114とで仕切られており、縦長の長方形の形状となっている。」

ウ.段落0036及び0037
「【0036】ここで、走査線駆動回路120は、シフトレジスタを有し、タイミング発生回路200からのクロック信号CLXや、その反転クロック信号CLX_(INV)、転送開始パルスDX等に基づいて、走査信号を各走査線112に対して順次出力するものである。
【0037】また、データ線駆動回路130の詳細については後述するが、画像信号処理回路300から供給される画像データDR,DG,DBに基づいて、各データ線114に供給する画像信号を生成するようになっている。」

エ.段落0060から0069まで
「【0060】<1-4.データ線駆動回路の動作>次に、データ線駆動回路130の動作について説明する。図6および図7はデータ線駆動回路の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0061】図6において転送開始信号DYがデータ線駆動回路130のシフトレジスタ131に供給されると、シフトレジスタ131は、クロック信号CLYとその反転クロック信号CLY_(INV)に従って、転送開始信号DYを順次シフトして、サンプリング信号S1,S2,…,Snを出力する。
【0062】ここで、画像データDR、DG、DBは、図に示すように、サンプリング信号S1?Snと同期している。このため、第1ラッチ部132がサンプリング信号S1?Snに基づいて、画像データDR,DG,DBをラッチすると、点順次画像データDR’,DG’,DB’が得られることになる。
【0063】次に、ある走査線112の選択期間の開始のタイミングで第1転送信号TRS1がアクティブ(この例では、Hレベル)になると、点順次画像データDR’,DG’,DB’が第2ラッチ部133によってラッチされ、点順次画像データDR’,DG’,DB’が線順次画像データDR”,DG”,DB”に変換される。
【0064】図7に示すように第2転送信号TRS2は、第1転送信号TRS1がアクティブから非アクティブに変化した後にアクティブとなり、その状態を当該走査線の選択期間中維持する信号である。また、第3転送信号TRS3は、第2転送信号TRS2が非アクティブからアクティブとなり、一定時間が経過した後にアクティブとなり、その状態を当該走査線の選択期間中維持する信号である。
【0065】図6および図7に示すように時刻t10から時刻t11までの期間において、第1転送信号TRS1がアクティブになると、図5に示すUB11の各アナログスイッチSW2がオン状態となる。このとき、図5に示す信号PR1,PG1,PB1は、図7に示すように、データP11R,P11G,P11Bとなる。
【0066】この後、所定時間が経過して時刻t12に至ると、第2転送信号TRS2が非アクティブ(L)からアクティブ(H)に変化する。すると、サブユニットUB11gのインバータINV5がアクティブとなるので、P11GがサブユニットUB11rに転送され、インバータINV3,INV4によってラッチされる。したがって、時刻t12から時刻t13までの期間において、信号PR1は、“P11G”となる。
【0067】そして、時刻t13に至ると、第3転送信号TRS3が非アクティブ(L)からアクティブ(H)に変化する。すると、サブユニットUB11bおよびサブユニットUB11gインバータINV5がアクティブとなるので、P11BがサブユニットUB11rに転送される。したがって、時刻t12から時刻t13までの期間において、信号PR1は、“P11B”となる。
【0068】以上の動作が各走査線112の選択期間毎に繰り返し行われることによって、パラレル形式で供給される線順次画像データDR”,DG”,DB”がシリアル形式の画像データD_(RGB)に変換される。
【0069】こうして得られた画像データD_(RGB)が、DAコンバータ134によってアナログ信号に変換されるので、各データ線114には、R,G,Bの順序で画像信号が供給される。例えば、図1に示す画像表示領域110の最上部のデータ線114には、P11R,P11G,P11B,P21R,P21G,P21B,…,Pm1R,Pm1G,Pm1Bの順に画像信号が供給される。」

(2)刊行物1に記載された発明(引用発明)
ア.刊行物1には、画像表示領域110と走査線駆動回路120とデータ線駆動回路130とを備える液晶パネル100と、各部で使用されるタイミング信号を出力するタイミング発生回路200と、入力画像データに行列変換を施して画像データを生成する画像信号処理回路300とを備える液晶表示装置が記載されている(上記(1)イ.)。

イ.画像表示領域110は、縦方向(Y方向)より横方向(X方向)が長い横長画面であり、縦方向(Y方向)に沿って延びる複数本の走査線112が互いに平行に形成され、横方向(X方向)に沿って延びる複数本のデータ線114が互いに平行に形成される(上記(1)イ.及び図1)。

ウ.画像表示領域110は、横方向(X方向)及び縦方向(Y方向)に配列された複数の画素で構成され、各画素は、R画素領域R、G画素領域G及びB画素領域Bで構成される(上記(1)イ.)。
そして、図1及び2を参照すると、R画素領域R、G画素領域G及びB画素領域Bは、いずれも縦方向(Y方向)に沿って配列され、横方向(X方向)に隣り合うR画素領域R、G画素領域G及びB画素領域Bが1つの画素を構成していることが分かる。

エ.走査線駆動回路120は、各走査線112に走査信号を順次出力する(上記(1)ウ.)。

オ.データ線駆動回路130は、画像信号処理回路300から供給される画像データに基づいて、各データ線114に供給する画像信号を生成する(上記(1)ウ.)。
すなわち、データ線駆動回路130は、画像信号処理回路300から供給された画像データをラッチして得た点順次画像データを線順次画像データに変換し、シリアル形式の画像データに変換し、さらにアナログ形式に変換して、各データ線114にR、G、Bの順序で画像信号を供給する(上記(1)エ.)。
データ線駆動回路130がアナログ形式に変換することから、画像信号処理回路300から供給された画像データがデジタル形式であることが分かる。

カ.以上のことを踏まえて、上記(1)ア.からエ.までの記載と、図1、2及び7に示された事項とを総合すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「縦方向より横方向が長い横長画面の画像表示領域110であって、前記横方向に沿って延びる複数本のデータ線114が互いに平行に形成され、前記縦方向に沿って延びる複数本の走査線112が互いに平行に形成された画像表示領域110を備える液晶パネル100と、
前記複数本のデータ線114のそれぞれに画像信号を供給するデータ線駆動回路130と、
前記複数本の走査線112のそれぞれに走査信号を順次出力する走査線駆動回路120と、
前記データ線駆動回路130にデジタル画像データを供給する画像信号処理回路300と、
各部で使用されるタイミング信号を出力するタイミング発生回路200とを備え、
前記液晶パネル100の前記画像表示領域110は、
前記縦方向に沿って配列された複数のR画素領域Rと、
前記縦方向に沿って配列された複数のG画素領域Gと、
前記縦方向に沿って配列された複数のB画素領域Bとで構成され、
前記データ線駆動回路130は、前記複数本のデータ線114のそれぞれにR、G、Bの順序で画像信号を供給する
液晶表示装置。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

(1)引用発明の「データ線114」、「走査線112」、「液晶パネル100」及び「液晶表示装置」は、それぞれ本願発明の「データライン」、「ゲートライン」、「液晶パネル」及び「液晶表示装置」に相当する。
また、引用発明の「液晶パネル100」の「画像表示領域110」は、「縦方向より横方向が長い横長画面」であるから、引用発明の「縦方向」及び「横方向」は、それぞれ本願発明の「基板の短軸方向」及び「基板の長軸方向」に相当する。

(2)引用発明の「前記横方向に沿って延びる複数本のデータ線114が互いに平行に形成され」は、本願発明の「基板の短軸方向に沿って配置される多数のデータライン」が「前記長軸方向へ延伸し」に相当する。
同様に、引用発明の「前記縦方向に沿って延びる複数本の走査線112が互いに平行に形成された」は、本願発明の「前記データラインと交差するように前記基板の長軸方向に沿って配置される多数のゲートライン」が「前記短軸方向へ延伸する」に相当する。
したがって、引用発明の「縦方向より横方向が長い横長画面の画像表示領域110であって、前記横方向に沿って延びる複数本のデータ線114が互いに平行に形成され、前記縦方向に沿って延びる複数本の走査線112が互いに平行に形成された画像表示領域110を備える液晶パネル100」は、全体として、本願発明の「基板の短軸方向に沿って配置される多数のデータラインと、前記データラインと交差するように前記基板の長軸方向に沿って配置される多数のゲートラインとを有し、各データラインは前記長軸方向へ延伸し、各ゲートラインは前記短軸方向へ延伸する液晶パネル」に相当する。

(3)引用発明の「画像信号」は、本願発明の「データ電圧」に相当する。
したがって、引用発明の「前記複数本のデータ線114のそれぞれに画像信号を供給するデータ線駆動回路130」は、本願発明の「前記データラインにデータ電圧を供給するデータ駆動回路」に相当する。

(4)引用発明の「走査信号」は、本願発明の「スキャンパルス」に相当する。
したがって、引用発明の「前記複数本の走査線112のそれぞれに走査信号を順次出力する走査線駆動回路120」は、本願発明の「前記ゲートラインにスキャンパルスを供給するゲート駆動回路」に相当する。

(5)引用発明の「デジタル画像データ」は、本願発明の「デジタルビデオデータ」に相当する。
したがって、引用発明の「前記データ線駆動回路130にデジタル画像データを供給する画像信号処理回路300」及び「各部で使用されるタイミング信号を出力するタイミング発生回路200」は、全体として、本願発明の「前記データ駆動回路にデジタルビデオデータを供給して前記データ駆動回路と前記ゲート駆動回路を制御するタイミングコントローラ」に相当する。

(6)引用発明の「R画素領域R」、「G画素領域G」及び「B画素領域B」は、それぞれ本願発明の「赤色サブピクセル」、「緑色サブピクセル」及び「青色サブピクセル」に相当する。
したがって、引用発明の「前記液晶パネル100の前記画像表示領域110」が「前記縦方向に沿って配列された複数のR画素領域Rと、前記縦方向に沿って配列された複数のG画素領域Gと、前記縦方向に沿って配列された複数のB画素領域Bとで構成され」ることは、本願発明の「前記液晶パネル」が「前記短軸方向に沿って配置される多数の赤色サブピクセルと;前記短軸方向に沿って配置される多数の緑色サブピクセルと;前記短軸方向に沿って配置される多数の青色サブピクセルと;を備え」ることに相当する。

(7)引用発明の「前記データ線駆動回路130」が「前記複数本のデータ線114のそれぞれにR、G、Bの順序で画像信号を供給する」ことと、本願発明の「前記データ駆動回路」が「前記第1の1/3水平期間の間に赤色のデジタルビデオデータに対応する赤色のデータ電圧を前記各データラインに供給し、前記第2の1/3水平期間の間に緑色のデジタルビデオデータに対応する緑色のデータ電圧を前記各データラインに供給した後、前記第3の1/3水平期間の間に青色のデジタルビデオデータに対応する青色のデータ電圧を前記各データラインに供給」することとは、「前記データ駆動回路」が「赤色のデジタルビデオデータに対応する赤色のデータ電圧を前記各データラインに供給し、緑色のデジタルビデオデータに対応する緑色のデータ電圧を前記各データラインに供給した後、青色のデジタルビデオデータに対応する青色のデータ電圧を前記各データラインに供給」する点で共通する。

(8)以上のことをまとめると、本願発明と引用発明とは、

「基板の短軸方向に沿って配置される多数のデータラインと、前記データラインと交差するように前記基板の長軸方向に沿って配置される多数のゲートラインとを有し、各データラインは前記長軸方向へ延伸し、各ゲートラインは前記短軸方向へ延伸する液晶パネルと;
前記データラインにデータ電圧を供給するデータ駆動回路と;
前記ゲートラインにスキャンパルスを供給するゲート駆動回路と;
前記データ駆動回路にデジタルビデオデータを供給して前記データ駆動回路と前記ゲート駆動回路を制御するタイミングコントローラと;を備え、
前記液晶パネルは、
前記短軸方向に沿って配置される多数の赤色サブピクセルと;
前記短軸方向に沿って配置される多数の緑色サブピクセルと;
前記短軸方向に沿って配置される多数の青色サブピクセルと;を備え、
前記データ駆動回路は
赤色のデジタルビデオデータに対応する赤色のデータ電圧を前記各データラインに供給し、緑色のデジタルビデオデータに対応する緑色のデータ電圧を前記各データラインに供給した後、青色のデジタルビデオデータに対応する青色のデータ電圧を前記各データラインに供給する
液晶表示装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明では、「隣接する前記赤色サブピクセル、緑色サブピクセル及び青色サブピクセルは、第1の1/3水平期間、第2の1/3水平期間、及び第3の1/3水平期間を含む1水平期間の間にデータ電圧が連続して供給され」、したがって、「データ駆動回路」は、「赤色のデジタルビデオデータに対応する赤色のデータ電圧」、「緑色のデジタルビデオデータに対応する緑色のデータ電圧」及び「青色のデジタルビデオデータに対応する青色のデータ電圧」を、それぞれ「第1の1/3水平期間」、「第2の1/3水平期間」及び「第3の1/3水平期間」に供給する一方、「ゲート駆動回路」は、「1水平期間の間に3スキャンパルスを隣接する3つのゲートラインへ連続して供給し」、「1水平期間の1/3に対応するパルス幅を有するスキャンパルスを発生し」、しかも、「隣接する3つのゲートラインがそれぞれ第1のゲートライン、第2のゲートライン及び第3のゲートラインとして定義される場合に、第1のゲートラインへ付加されるスキャンパルスの上昇端と第3のゲートラインへ付加されるスキャンパスの下降端の間の期間が1水平期間である」のに対し、引用発明では、「データ線駆動回路130」(本願発明の「データ駆動回路」に相当する。)が「R、G、Bの順序で画像信号を供給する」期間が不明であり、「走査線駆動回路120」(本願発明の「ゲート駆動回路」に相当する。)の動作も不明である点。

5.相違点についての判断
クロック信号及び反転クロック信号に同期して動作するシフトレジスタでスタートパルス信号を転送し、そのシフトレジスタの隣接する出力同士をNANDゲートで処理することにより、各走査線に順次出力される走査信号を生成する液晶表示装置の走査線駆動回路は、例えば本件出願の優先日前に日本国内において頒布された特開平7-26173号公報(段落0014及び図3)や特開平11-202295号公報(段落0045から0064まで及び図5)に記載されているように、本件出願の優先日前に当業者に周知である。
刊行物1には「走査線駆動回路120」についての具体的な記載がないから、引用発明の「走査線駆動回路120」として具体的にどのような回路を用いるかは、当業者の選択に任されている。具体的な回路として、上記周知の走査線駆動回路を採用することは、当業者が適宜行い得ることである。
上記周知の走査線駆動回路が各走査線に順次出力する走査信号は、所定のパルス幅を有するパルス信号である。そして、シフトレジスタの隣接する出力同士をNANDゲートで処理して生成したものであることから、ある走査線に出力される走査信号の下降端は、その走査線に隣接する走査線に出力される走査信号の上昇端と一致することが明らかである。
そうすると、引用発明の「走査線駆動回路120」として上記周知の走査線駆動回路を採用してなるものにおいて、「走査線駆動回路120」が出力する走査信号のパルス幅の3倍に相当する期間を改めて「1水平期間」と定義すれば、「走査線駆動回路120」は、1水平期間の間に3つの走査信号を3本の「走査線112」に順次出力することになる。また、その走査信号のパルス幅は、1水平期間の1/3に対応することになる。さらに、隣接する3本の「走査線112」のうち、第1の「走査線112」に出力される走査信号の上昇端から第3の「走査線112」に出力される走査信号の下降端までの期間は、1水平期間に等しいことになる。
一方、走査線駆動回路が各走査線に順次出力する走査信号と、データ線駆動回路が各データ線に出力する画像信号とを同期させることは、液晶表示装置における技術常識である。したがって、引用発明の「走査線駆動回路120」として上記周知の走査線駆動回路を採用してなるものにおいて、「データ線駆動回路130」は、「走査線駆動回路120」が3つの走査信号を順次出力するのに同期して、R、G及びBの「画像信号」を順次出力することになる。これは、R、G及びBの「画像信号」を、それぞれ1/3水平期間の間に出力することにほかならない。
以上のとおりであるから、引用発明の「走査線駆動回路120」として上記周知の走査線駆動回路を採用してなるものは、相違点に係る構成を備えている。
なお、上記3.(2)ウ.で述べたとおり、1つの画素は、横方向に隣り合うR画素領域R、G画素領域G及びB画素領域Bで構成されるから、走査信号のパルス幅の3倍に相当する期間は、要するに1つの画素全体を走査するための期間である。この期間は、「同一の解像度を有する従来技術において1水平ラインにデータ電圧を供給する期間」と必ずしも一致しないが、「1つの画素全体を走査するための期間」という技術的な意味を有する期間であるから、それを「1水平期間」と定義することは、当業者にとって不自然なことではない。

6.原査定の拒絶の理由についてのまとめ
以上に検討したとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)と周知の走査線駆動回路とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
本件出願の発明の詳細な説明は、本願発明について経済産業省令で定めるところにより記載されたものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、刊行物1に記載された発明と周知の走査線駆動回路とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-05 
結審通知日 2013-11-07 
審決日 2013-11-19 
出願番号 特願2007-288125(P2007-288125)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G09G)
P 1 8・ 121- WZ (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西島 篤宏  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
飯野 茂
発明の名称 液晶表示装置及びその駆動方法  
代理人 岡部 正夫  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  

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