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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61J
管理番号 1286759
審判番号 不服2013-12800  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-04 
確定日 2014-04-08 
事件の表示 特願2009-522123号「医薬製剤を含むパック」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月 7日国際公開、WO2008/014862、平成21年12月24日国内公表、特表2009-545343号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2007年7月4日(パリ条約による優先権主張2006年8月3日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成24年2月15日付けで拒絶理由が通知され、平成24年8月20日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年7月4日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明は、平成24年8月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「一つ又は複数の内壁に少なくとも一つのチャネル形成部が少なくとも一つの吸収剤と共に領域の少なくとも一部に組み込まれている再密閉可能な容器、及び一つ以上の固体医薬製剤を含有する少なくとも一つのブリスターパックを含み、前記一つ又は複数のブリスターパックが容器内に含有されているパック。」

2.引用例に記載された事項
(引用例1)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された特開平4-253633号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(ア)「【課題を解決するための手段】この目的は、キャップ状閉塞体を一側に設けられた薬剤包装用カードボード製のカートンによって達成される。
本発明によるカートンは、好ましくはブリスタ包装用に利用される。この形式のカートンは、それ自体が公知であり、たばこの包装に利用されている。ヨーロッパ公開特許出願348,840によれば、これらのカートンは、湿気の侵入に対してカートンの内容を保護する乾燥剤も含むことができる。」(段落【0006】?【0007】)

(イ)「【実施例】カートン1自身は、好ましくはキャップ状閉塞体2の部分において二層に形成され、二層の異なる厚さのカードボードを使用できる。しかしながら、内側層3が、少なくとも一側において、フラップが離れる場所において除かれている。このためブリスタ4が確実に取り出せる。好ましくは、この内側層も、カートンの前側の場所で部分的に除かれている(側面長の比率が2対1未満)。このため、キャップ状閉塞体を開封した後、ブリスタス片4および薬剤5は直ちに上方から見ることが可能である。しかし、カートンの前側の内部層におけるこの開口部6は、被着されるキャップ状閉塞体2により形成される外側層より小さいことが好ましい。
キャップ状閉塞体により閉塞が可能なカートンの一側の開口部は、本発明によるカートンの側面の一側に設けら、その側面長の比率は2対1以上であることが望ましい。それぞれの場合において開口部は側面全に形成することも可能である。本発明によるカートンの多様なデザインによれば、閉塞体キャップは短尺側の側面(図1)でも長尺側の側面(図2)のいずれをも閉塞することができる。
閉塞体キャップ2は三次元の形状であり、もともと安定している。閉塞中に開口部6を覆う閉塞体キャップの側面は、その反対側の一部がカートンの後側に連続するとともに折り曲げによってのみ分割されるキャップの側面より大きい。後側として示されたカートンの側面は、開口部6のある側面の反対側である。カートンの閉塞状態において、閉塞体キャップの前側はカートンの内側層3を覆い、それがカートンの開口部の位置においてカートンの側面の外側層に対応するので、これらの側面と共に平坦な面を形成する。(段落【0009】?【0011】)

(ウ)「【発明の効果】本発明によるカートンの利点は、以下のように要約することができる。特に高齢患者にとって、明白であり、より扱いやすい一側で閉塞し、包装が常に「正しい」側から開封されることを確実にする。包装の安定性がより良くなり、その結果としてカートンは、たとえ数回開け閉め操作を行ったあとでも完全にそのままの形状である。使用法の情報が取り出しやすく、しかも簡単に戻せる。また、ブリスタが備えられている。包装を開封した直後に、ブリスタを最初に取り出したり戻したりする必要もなく、薬剤が見える。魅力的な外観である。」(段落【0014】)

(エ)図1,2には、複数の薬剤を含有する複数のブリスタがカートン内に収納された構成が図示されている。

上記(ア)?(ウ)に記載された事項及び図示内容(エ)を総合すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「乾燥剤を含み、ブリスタ包装用に利用され、キャップ状閉塞体により閉塞が可能で、カートンの閉塞状態において、閉塞体キャップの前側はカートンの内側層を覆い、それがカートンの開口部の位置においてカートンの側面の外側層に対応するので、これらの側面と共に平坦な面を形成し、たとえ数回開け閉め操作を行ったあとでも完全にそのままの形状であるカートンを含み、複数の薬剤を含有する複数のブリスタと、複数のブリスタがカートン内に収納されたブリスタ包装用カートン。」

(引用例2)
同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された特表2005-522384号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(オ)「本発明は、最終ユーザーによって使用されるまで実質的に湿気の無い環境で維持されるべき発泡性錠剤を包装して保存するための乾燥剤混入プラスチックバイアル組立体に関するものである。本出願は、また乾燥剤混入プラスチックバイアル組立体を使用する方法も開示している。」(段落【0002】)

(カ)「本発明は、容器とキャップとを有する相互に連結されたバイアル組立体に導かれ、前記バイアル組立体は、発泡性錠剤、飲料形成錠剤、及び実質的に湿気の無い環境に包装と保存が必要な他の品目に実質的に湿気の無い環境を提供する。一実施例では、容器及びキャップはヒンジによって共に接合され、それ故この実施例では、相互に連結された組立体であり、そこではキャップが“上げ蓋式”配置構造で開閉される。他の実施例では、ヒンジはキャップ及び容器に一体であり、このことが一体形バイアル組立体を提供する。本発明のバイアル組立体は、乾燥剤混入プラスチックを含んでいる。一実施例では、乾燥剤混入プラスチックは、バイアル組立体スリーブ内の製品の少なくとも一部を囲む乾燥剤スリーブ内に配置されている。更に別の実施例では、スリーブは、バイアル組立体内に収容された製品が、乾燥剤混入プラスチックスリーブによって完全に囲まれるように、薄い壁のプラスチックでバイアル組立体の内部を取り囲む。他の実施例では、本発明のバイアル組立体に収容された品目は、従来の栓付きバイアルと比較したとき約50分の1の湿気にさらされる。」(段落【0005】)

(キ)「図面においては同じ参照符号はいくつかの図の全体を通して同一又は相当する部品を指し示しているが、ここで図面、特に図1を参照すると、そこには本発明の一体形バイアル組立体1の一実施例が図示されている。組立体1は、基部16又は内部キャビティ15及び外側表面12及び上方部分11を有する容器10を具備している。容器10は、乾燥剤混入プラスチック17から作られた内側スリーブ17を有している。容器10は上方部分11にリム13を有している。容器10は、容器10の外側表面12から半径方向外側に延びるフランジ14も有している。接触要素21と破断点22とをもつ切取り可能な突出部20がフランジ14に又はフランジ14の近くに配置されている。組立体1は、ベース部31を有するキャップ30も含んでいる。キャップ30は、タブ40とヒンジ34も有している。タブ40は、突出部20をそれぞれ収容できる第一スロット41及び第二スロット42を有している。第二スロット42は連結デバイス43を具備している。」(段落【0020】)

(ク)「更に別の実施例では、本発明のバイアル組立体は、蓋の繰り返しの開閉の後の密封性能を維持する。例えば、シールは、蓋の繰り返しの開閉後に低侵入率を維持する。一つの具体的な例では、シールはその低湿気侵入性能を50周期の蓋の開閉後に維持している。米国特許第4812116号明細書、第4807425号明細書、及び第5723085号明細書、並びに1999年8月31日に出願された係属中の米国特許出願第09/386702号明細書、並びに欧州特許出願公開第625948号明細書が、シール構造の実施例を記載している。これらの文献は、引用によって本書に組み入れられる。」(段落【0042】)

(ケ)「適切な乾燥剤混入プラスチックが、米国特許第5911937号、第6214255号、第6130263号、第6080350号、第6174952号、第6124006号、及び第6221446号、並びに2000年2月14日に出願された米国特許出願第09/504029号に開示されているこれら乾燥剤プラスチックを含んでいる。プラスチック配合物内の乾燥剤の装填及びチャネリング剤を変化させることによって、乾燥剤混入プラスチックの全体的な保湿容量と吸収速度とを制御することができる。これらの文献は、引用することによって本書に組み入れられる。」(段落【0045】)

上記(オ)、(カ)に記載された事項から、引用例2には、
発泡性錠剤を包装して保存するための乾燥剤混入プラスチックバイアル組立体において、乾燥剤混入プラスチックは、バイアル組立体スリーブ内の製品の少なくとも一部を囲む乾燥剤スリーブ内に配置され、又はスリーブは、バイアル組立体内に収容された製品が、乾燥剤混入プラスチックスリーブによって完全に囲まれるように、薄い壁のプラスチックでバイアル組立体の内部を取り囲むことが記載されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
後者における、「カートン」は、その機能ないし構造からみて、前者における「容器」に相当する。以下、同様に、後者の「乾燥剤」、「薬剤」、「ブリスタ」は、それぞれ、前者の「吸収剤」、「固体医薬製剤」、「ブリスターパック」に相当する。
そして、後者の「複数のブリスタがカートン内に収納され」は前者の「複数のブリスターパックが容器内に含有され」と同じ状態を意味するから、後者における、「複数の薬剤を含有する複数のブリスタを含み、複数のブリスタがカートン内に含有されたブリスタ包装用カートン」は、前者における、「一つ以上の固体医薬製剤を含有する少なくとも一つのブリスターパックを含み、前記一つ又は複数のブリスターパックが容器内に含有されているパック」に相当する。

そうすると、両者は、
「吸収剤を含む容器、及び一つ以上の固体医薬製剤を含有する少なくとも一つのブリスターパックを含み、前記一つ又は複数のブリスターパックが容器内に含有されているパック。」である点で一致しており、次の点で相違する。

相違点1:前者においては、容器の「一つ又は複数の内壁に少なくとも一つのチャネル形成部が少なくとも一つの吸収剤と共に領域の少なくとも一部に組み込まれている」のに対し、後者においては、容器に吸収剤を含むようにした点。

相違点2:容器においては、前者においては、「再密封可能」としたのに対し、後者においては、「たとえ数回開け閉め操作を行ったあとでも完全にそのままの形状である」ものの、再密封可能かどうか不明な点。

4.当審の判断
(1)まず、上記相違点1について検討する。
引用例2において、(キ)における内側スリーブは、容器の内壁を構成しているといえるから、(カ)における、製品の一部を囲むスリーブ、又は完全に囲まれるようにしたスリーブは、容器における一つ又は複数の内壁と同様な構成とみることができる。そして、乾燥剤混入プラスチックはスリーブ内に配置されることから、スリーブには乾燥剤を共にするチャネル形成部に相当する構成があると考えられる。
そして、引用例2の「乾燥剤混入プラスチックバイアル組立体」、「乾燥剤」は、それぞれ本願発明の「容器」、「吸収剤」に相当するから、引用例2の「乾燥剤混入プラスチックバイアル組立体」における「乾燥剤混入プラスチックは、バイアル組立体スリーブ内の製品の少なくとも一部を囲む乾燥剤スリーブ内に配置され、又はスリーブは、バイアル組立体内に収容された製品が、乾燥剤混入プラスチックスリーブによって完全に囲まれるように、薄い壁のプラスチックでバイアル組立体の内部を取り囲む」は、本願発明の「容器」における「一つ又は複数の内壁に少なくとも一つのチャネル形成部が少なくとも一つの吸収剤と共に領域の少なくとも一部に組み込まれている」と同様な構成であるということができる。

なお、本願明細書の【0013】には、「・・・吸収剤とチャネル形成部を備え、本発明のパックの容器として適切であるポリマーから製造される容器は、従来技術において既知であり、例えば、WO 97/32663 A1、EP 1000873 A2、WO 03/086900 A1、EP 1421991 A1において記載されている。・・・」と記載されている。そして、このWO 03/086900 は、引用例2の特表2005-522384号公報の国際公開番号であるから、引用例2には、本願発明に係る吸収剤、チャンネル形成部の構成が記載されている(引用例2の(ケ)の記載参照)ことは明らかである。

そして、引用例2における、「発泡性薬剤」は、本願発明の「固体医薬製剤」に相当するから、結局、引用例2には、固体医薬製剤剤を包装して保存するための吸収剤混入プラスチック容器において、「一つ又は複数の内壁に少なくとも一つのチャネル形成部が少なくとも一つの吸収剤と共に領域の少なくとも一部に組み込まれている」ことが記載されている。
また、引用例2に記載された事項は、引用発明と同様に容器内の湿気を防ぐという共通の課題を解決するものであるから、引用発明に引用例2に記載された事項を適用し、前記相違点1に係る本願発明の構成にすることは当業者が容易に行い得ることである。

(2)次に、上記相違点2について検討する。
引用例2の(ク)には、「本発明のバイアル組立体は、蓋の繰り返しの開閉の後の密封性能を維持する。」と記載されており、表現は違うものの、容器は再密閉可能であることを意味している。

そして、引用例2に記載された事項は、引用発明と同様に容器内の湿気を防ぐという共通の課題を解決するものであるから、引用発明に引用例2に記載された事項を適用し、前記相違点2に係る本願発明の構成にすることは当業者が容易に行い得ることである。

また、本願発明の作用効果は引用発明及び引用例2に記載された事項に基づいて、当業者が予測し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-01 
結審通知日 2013-11-05 
審決日 2013-11-26 
出願番号 特願2009-522123(P2009-522123)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 蓮井 雅之
関谷 一夫
発明の名称 医薬製剤を含むパック  
代理人 市川 さつき  
代理人 辻居 幸一  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 田代 玄  
代理人 箱田 篤  
代理人 山崎 一夫  
代理人 浅井 賢治  

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