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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1286793
審判番号 不服2012-3580  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-02-24 
確定日 2014-04-09 
事件の表示 特願2006- 99504「患者を無線で監視するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月26日出願公開、特開2006-289081〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成18年3月31日(パリ条約による優先権主張2005年4月1日,米国(US))を出願日とする出願であって,平成23年10月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成24年2月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けにて手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに,同年10月15日付けで審尋がなされ,回答書が平成25年1月10日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】 患者のセンサを監視するための装置において,
患者およびその体内の少なくとも一方に配置され,センサデータを連続的に読み取る検出装置と,
通常は電源が入っていない状態であり,前記センサデータを送信する際に電源が入れられる,内部で電力が供給される前記患者に配置される送信機と,
前記送信機が前記検出装置から前記センサデータを受信する,前記検出装置と前記送信機との間の第1のリンクであって,無線リンクを含む前記第1のリンクと,
前記送信機から無線送信される前記センサデータを受信し,保存し,収集する,前記患者から遠隔に配置された受信機であって,この送信が,バースト送信および指令に応じた送信の少なくとも一方である,前記受信機と,
を含み,
前記送信機が,前記受信機への送信の前に前記センサデータを一時的に保存する第1のメモリを含み,
前記センサデータの受信を知らせる,前記受信機から前記送信機に送信される確認信号をさらに含み,
前記確認信号が,前記受信機への送信の前に前記センサデータを一時的に保存している第1のメモリを消去又は上書きするように前記送信機に命令する,装置。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

本件補正は,請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「受信機」について「前記送信機から無線送信される前記センサデータを受信する,」を「前記送信機から無線送信される前記センサデータを受信し,保存し,収集する,」として,「受信機」の機能を特定し限定した補正を含むものである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2002-541893号公報(以下「刊行物1」という。)には,「携帯型遠隔式患者テレモニタリングシステム」について,図面とともに次の事項が記載されている。
(1-ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 健康パラメーターデータ収集及びモニタリングシステムに於いて, 対象に適用するためにセンサー組立体を備えるセンサーバンドを具備しており,前記センサー組立体は該対象の少なくとも1つの健康パラメーターの値を示す健康パラメーターデータを有するデータ信号を発生し,前記センサーバンドは更に第1の通信リンク上を前記データ信号を送信する送信器を備えており,該システムは又, 第2の,無線通信リンク上での前記データ信号の再送用に前記健康パラメーターデータ信号を受信するために前記第1通信リンクに接続されたトランシーバーと, 前記第2通信リンクを経由して前記トランシーバーからの前記再送されたデータ信号を受信するために配置された遠隔式モニタリングステーションとを具備しており,前記遠隔式モニタリングステーションは表示と次ぎのアクセス用に前記健康パラメーターデータを取り込みそして前記健康パラメーターデータを処理することを特徴とする健康パラメーターデータ収集及びモニタリングシステム。・・・
【請求項3】 請求項1のシステムに於いて,前記センサーバンドは該対象の胸部への取付に適合されており,前記センサー組立体は心電図,呼吸,皮膚温度,そして対象の運動の少なくとも1つを示す健康パラメータを生ずることを特徴とするシステム。
・・・
【請求項5】 請求項1のシステムに於いて,前記トランシーバーは,少なくとも,前記第2通信リンクが遮断されたり,喪失したり,又は信頼性を無くした時間中は,前記センサーバンドから受信された健康パラメーターデータを記憶するバッフアーを備えることを特徴とするシステム。」

(1-イ) 「【0001】 【発明の背景】 発明の分野
本発明は無線遠隔測定技術(radiotelemetry techniques)を使って遠隔式に患者からの重要徴候(vital signs)をモニターし,データを取り込む(capturing)システムと方法に関する。特に,本発明は,例えば,全波形心電図(full waveform ECG),呼吸率(respiration rate),皮膚温度,及び血圧を含む,非侵襲性の重要徴候データの遠隔式電子的取り込み用,低コスト,かつ患者に優しい,通院モニターシステム(ambulatory monitering system)である。」

(1-ウ)「【0017】 本発明のシステムは第1部品すなわち,電極パッチと,他のセンサーと,そして重要徴候データの検出及び送信用の送信回路とを有する,接着性で,コードレスで,使い捨て式のセンサーバンド(sensor band)で特徴付けられる。該センサーバンドは使用容易で,該患者により該患者上に位置付けられる。該センサーバンドは24時間該患者により快適に着用されるよう設計されているが,その時間で該センサーバンドは捨てられてもよく,新しいセンサーバンドにより取り替えられてもよい。」

(1-エ) 「【0026】 【現在の好ましい実施例の詳細な説明】
本発明の現在の好ましい例示的実施例に依る,上記の有利な特徴を有するシステムと方法が図1-17を参照して下記で説明される。それらの図を参照してここで与える説明は単に例示目的用であり,如何なる仕方でも,本発明の範囲を限定するよう意図されていないことは当業者には評価されるであろう。本発明の範囲に関する全ての疑問は付属する請求項を参照して解決される。
I.システム概要
本発明の遠隔式患者テレモニタリングシステムの現在の好ましい実施例は図1で図解される。図解される様に,本発明のシステムは患者の重要徴候を測定し,該測定された重要徴候データを送信するために,患者の胸に着用されるのが好ましい,使い捨ての多数パラメータセンサーバンド(disposable multi-parameter sensor band)10と,該測定された重要徴候データを記憶し,再送するための該センサーバンド10に近接した信号転送ユニット(signal transfer unit)20と,該再送信された重要徴候データを受信し,該重要徴候データを通信リンク40上で送信する基地ステーションユニット(base station unit)30と,そして該遠隔通信リンク40を経由して該基地ステーションユニット30から該重要徴候データを受信する遠隔式モニタリングステーション(remote monitoring station)50とを具備する。該システムの該部品の各々の動作は下記でより詳細に説明する。
【0027】 A.多数パラメーターセンサーバンド
・・・該センサーバンド10内の送信回路12は好ましくは1.5メートルの距離内にある信号転送ユニット20へ無線リンク経由でデジタル化した信号サンプルを連続的に送信する送信アンテナ13を有する。」

(1-オ) 「【0035】 B.信号転送ユニット
本発明の現在の好ましい実施例に依ると,患者は該センサーバンド10により送信される該重要徴候データ信号を受信するため信号転送ユニット20を担う。該信号転送ユニット20は該受信データを60mまでの距離から該基地ステーションユニット30へ再送するよう設計されているが,典型的範囲は約30mである。該信号転送ユニット20は常に患者により担われる必要はないが,送信される該重要徴候データを受信するために,該センサーバンド10の通信範囲内にあらねばならない(有線通信でないならば)。該信号転送ユニット20は小型(約110×65×25mm)で,例えば,4個の”AA”1次電池すなわち再充電可能な電池,又は最小30時間続けられるよう設計された再充電可能なバッテリーパックを使用してバッテリー動作させられる。好ましくは,該信号転送ユニット20はウエーストベルトへの取付用クリップ及び/又は患者により容易に担えるようにホルスター(holster)を有するのがよい。
【0036】 該信号転送ユニット20は該基地ステーションユニット30との無線接続が失われた場合に使用されるメモリーバッフアーを有する。このメモリーバッフアーは該メモリーバッフアーの規模により決定される時間の間該センサーバンド10からの重要徴候データを記憶出来る。該メモリーバッフアーはかくして或る時間の間,好ましくは少なくとも1時間(1時間の記憶は,データ圧縮なしで,ここに説明したサンプリングレートを使用し,2メガバイトのバッフアーを要する)該基地ステーションユニット30の範囲の外へ該患者が移動することを可能にすることにより患者の移動性の向上を可能にする。本発明者は,メモリーのオプションが拡がり,コストが低下し続けると,該信号転送ユニット20は,何等データを失うことなく,遙かに長い間(例えば,24時間)患者が該基地ステーションユニット30の範囲外へ移動することを可能にするに充分なメモリーを含むよう設計されると考える。好ましくは,該信号転送ユニット20は,エネルギーを節約するためにそれが基地ステーションユニット30の範囲外にある時はその送信回路を自動的にシャットダウン(shuts down)するのがよい。この場合,該信号転送ユニット20はそれが範囲内に戻るまで該基地ステーションユニット30と再接続するよう試み続ける。」
一般に,該メモリーバッフアーは先入れ先出しのデータ転送モード(in FIFO data transfer mode)で動作し,該信号転送ユニット20は,該メモリーバッフアーが,一旦該信号転送ユニット20が該基地ユニット30の範囲内に戻ると空にされるよう,それが受信されるより実質的に速いレートでデータを送信する。しかしながら,本発明者は,もう1つの実施例で,もし警報条件が該基地ステーションユニット30により該受信データ内に検出されるならば,最も最近のデータが該基地ステーションユニット30へ最初に送信され得ることを考慮している。又,もし該メモリーバッフアーがどんな点ででも満杯になるならば,該メモリー内の最も早期のデータが最も最近のデータに置き換えられる。」

(1-カ) 「【0048】 動作中,該基地ステーションユニット30は該センサーバンド10から受信した全てのデータを集め,記憶する。該基地ステーションユニット30は好ましくは,それが該遠隔式モニタリングステーション50へ送られるよう用意されるまでデータの記憶を可能にするハードデイスクメモリー(hard disk memory)を有するのがよい。現在の好ましい実施例では,数日のデータ(データ圧縮をしないと仮定し,ここに説明したサンプリングレートで少なくとも2ギガバイトのメモリー)の記憶の能力を有するメモリーが望ましい。好ましくは,該センサーバンド10からの該センサーデータ,該イベントデータ{しきい値越え(threshold violation),ボタン押し等},そして該補助測定データ(呼吸計,体重計,及び/又は血圧)は別々に記憶されそして該センサーバンド10及び/又は該信号転送ユニット20からのタイムスタンプ(time stamps)に基づき該基地ステーションユニット30のメモリー内で独立に古くなる。該タイムスタンプを同期化させるために時刻同期信号が該基地ステーションユニット30から該信号転送ユニット20及び/又はセンサーバンド10へ送られる。全てのデータは,それが該遠隔式モニタリングステーション50から送られるインストラクションで捨てられるよう導かれるまでか,又はその点で最も早期のデータが初めて捨てられる該基地ステーションメモリーが満杯になるまでか何れかまで,該基地ステーションメモリー内に保持される。」

(1-キ) 「 【0106】 ・・・
データ流れ機構 データ流れ機構の目的は測定データを該信号転送ユニット20から該基地ステーションユニット30へ転送することと,該基地ステーションユニット30が,必要ならば,該信号転送ユニット20内の制御パラメーターを再構成するための機会を提供することである。・・・前と同じ様に,確認応答パケットは,暗黙の確認応答を有するデータパケットで置き換えられてもよく,そして,同様に,逆のリンク上のデータパケットが該制御情報の安全な受信を暗黙に確認応答してもよい。該データパケットは該基地ステーションユニットに更にデータパケットが該対話で送信される筈かどうかを知らせる制御情報を含んでいる。
・・・
パケットフオーマット
上記説明の機能的機構を実施するに要するデータパケットのフオーマットをここで説明する。パケットの3つの主要な種類を次の様に規定するが,すなわち
1)対話要求パケット(Dialog Request Packet),
2)確認応答パケット(Acknowledgement Packet),そして
3)データパケット(Data Packet)である。
各主要な種類の部分集合は詳細な機能性を実施するよう規定される。
・・・
確認応答パケット
確認応答パケットは送信者に送信パケットの成功を知らせるために使用される。2つの種類の確認応答パケットが成功と失敗用に規定される。全ての確認応答パケットは固定長さであり,該パケットに付属されるシーアールシービットを有する。各場合に該シーアールシーは該パケットのデータ内容のみに適用され,該同期化コードワードは除外する。一般に,各確認応答パケットはプリアンブルと,同期化コードワードと,エイシーケー(ACK)又はエヌエイシーケー(NACK)識別コードワードと,該信号転送ユニット20のオプションの通し及び/又は論理ユニットアイデーと,パケットアイデーと,パケット成功アイデー又は再送参照アイデーと,そしてシーアールシービットとを有する。」

上記(1-ア)?(1-キ)の記載と第1?17図を参照すると,上記刊行物1には, 次の発明が記載されていると認められる。
「健康パラメーターデータ収集及びモニタリングシステムに於いて,
対象に適用するためにセンサー組立体を備える多数パラメータセンサーバンド10を具備しており,前記センサー組立体は該対象の少なくとも1つの健康パラメーターの値を示す健康パラメーターデータを有するデータ信号を発生し,前記センサーバンド10は更に第1の通信リンク上を前記データ信号を連続的に送信する送信器を備えており,該システムは又,
第2の,無線通信リンク上での前記データ信号の再送用に前記健康パラメーターデータ信号を受信するために前記第1通信リンクに接続された信号転送ユニット20と,
前記第2通信リンクを経由して前記信号転送ユニット20からの前記再送されたデータ信号を受信するために配置された基地ステーションユニット30とを具備しており,前記基地ステーションユニット30は 前記センサーバンド10から受信した全てのデータを集め,記憶し,前記信号転送ユニット20は,前記センサーバンド10から受信された健康パラメーターデータを記憶するメモリーバッフアーを備える健康パラメーターデータ収集及びモニタリングシステム。」(以下,「引用発明」という。)

3 対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「健康パラメーターデータ収集及びモニタリングシステム」,「多数パラメータセンサーバンド10」,「基地ステーションユニット30」及び「メモリーバッフアー」は,補正発明の「患者のセンサを監視するための装置」,「検出装置」,「受信機」,及び「第1のメモリ」に相当することは明らかである。

イ 引用発明の「信号転送ユニット20」は上記(1-オ)に「該信号転送ユニット20は」「例えば,」「再充電可能なバッテリーパックを使用してバッテリー動作させられる。好ましくは,該信号転送ユニット20はウエーストベルトへの取付用クリップ及び/又は患者により容易に担えるようにホルスター(holster)を有するのがよい。」と記載されていることから,補正発明の「内部で電力が供給される前記患者に配置される送信機」に相当する。

ウ 引用発明の「第1の通信リンク」は,引用発明の「センサーバンド10は更に第1の通信リンク上を前記データ信号を送信する送信器を備えており」及び「健康パラメーターデータ信号を受信するために前記第1通信リンクに接続された信号転送ユニット20」との記載より「センサーバンド10」と「信号転送ユニット20」との間の通信リンクであり,上記(1-エ)の「該センサーバンド10内の送信回路12は好ましくは1.5メートルの距離内にある信号転送ユニット20へ無線リンク経由でデジタル化した信号サンプルを連続的に送信する送信アンテナ13を有する。」との記載より「無線リンク」を含むのであるから,補正発明の「第1のリンク」に相当する。

エ 引用発明の「信号転送ユニット20」から「基地ステーションユニット30」への送信が,指令に応じた送信であることは技術常識であり,また,上記(1-オ)の「該信号転送ユニット20は,該メモリーバッフアーが,一旦該信号転送ユニット20が該基地ユニット30の範囲内に戻ると空にされるよう,それが受信されるより実質的に速いレートでデータを送信する。」との記載は,バースト送信を意味するので,引用発明の「信号転送ユニット20」から「基地ステーションユニット30」への送信が,バースト送信の場合も含むことは明らかである。

オ 上記(1-キ)には,「データ流れ機構の目的は測定データを該信号転送ユニット20から該基地ステーションユニット30へ転送することと,該基地ステーションユニット30が,必要ならば,該信号転送ユニット20内の制御パラメーターを再構成するための機会を提供することである。」「・上記説明の機能的機構を実施するに要するデータパケットのフオーマットをここで説明する。」「確認応答パケットは送信者に送信パケットの成功を知らせるために使用される。」と記載されている。ここで,送信者とは「信号転送ユニット20」であるから,「基地ステーションユニット30」から「信号転送ユニット20」へ「送信パケットの成功を知らせるため」確認応答パケットが送られることが記載されている。
したがって,引用発明は,補正発明の「センサデータの受信を知らせる,前記受信機から前記送信機に送信される確認信号をさらに含み,」を含んでいるといえる。

そうすると,両者は,
(一致点)
「患者のセンサを監視するための装置において,
患者およびその体内の少なくとも一方に配置され,センサデータを連続的に読み取る検出装置と,
内部で電力が供給される前記患者に配置される送信機と,
前記送信機が前記検出装置から前記センサデータを受信する,前記検出装置と前記送信機との間の第1のリンクであって,無線リンクを含む前記第1のリンクと,
前記送信機から無線送信される前記センサデータを受信し,保存し,収集する,前記患者から遠隔に配置された受信機であって,この送信が,バースト送信および指令に応じた送信の少なくとも一方である,前記受信機と,
を含み,
前記送信機が,前記受信機への送信の前に前記センサデータを一時的に保存する第1のメモリを含み,
前記センサデータの受信を知らせる,前記受信機から前記送信機に送信される確認信号をさらに含む,装置。」
である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
送信機について,補正発明では,「通常は電源が入っていない状態であり,前記センサデータを送信する際に電源が入れられる」のに対して,引用発明では,そのような構成を有していない点。

(相違点2)
確認信号について,補正発明では,「前記受信機への送信の前に前記センサデータを一時的に保存している第1のメモリを消去又は上書きするように前記送信機に命令する,」のに対して,引用発明では,そのように特定されていない点。

(1)相違点1についての検討
本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2004-538736号公報に,「【0011】一実施形態では,装置は,通信装置部に電力を供給する電源をさらに含む。この電源は,医療装置部の制御の下でオン/オフされるようにしてもよい。このように,電力の使用は,通信部が使用されないとき,通信部をオフにすることにより節約/最小にされる。」と記載され,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開2004/027676号に対応する特表2005-538794号公報に,「【0007】 ・・・好ましくは,ワイヤレス送信器は,電源投入されるとワイヤレスネットワークとの接続を自動的に確立し,電源投入されている間は接続を維持するように適合される。・・・患者は,装置に電源を投入し,測定を行い(この時点で,測定値は遠隔サーバに自動的に送信される),装置の電源を落とすことのみを必要とする。」と記載されているように「通常は電源が入っていない状態であり」,「センサデータを送信する際に電源が入れられる」構成は,遠隔式患者監視システムにおいて電力の使用を節約するための周知技術である。
そして,電力の使用をできるだけ節約することは,携帯型の装置においては周知の課題である。
してみると,引用発明に上記周知技術を付加して,相違点1に記載の補正発明の構成とすることは,十分動機付けがあり,阻害要因もなく,当業者が容易に想到するものといえる。

(2)相違点2についての検討
本願優先権主張日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表2002-512829号公報(以下,刊行物2という。)に,「【請求項15】 前記中間ステーション(40)が,前記センサーから測定値を受けた時に,該センサー(10)へ消去信号を送信するための装置を有している」と,センサデータの受信があると,受信機への送信の前にセンサデータを一時的に保存しているメモリを消去するように前記送信機に命令する構成が記載されている。
そして,情報通信技術は,多くの技術分野で用いられる汎用技術であり,重複した通信を減らし効率的な通信とすることは周知の課題である。
してみると,引用発明に上記構成を採用して,「確認信号が,前記受信機への送信の前に前記センサデータを一時的に保存している第1のメモリを消去」「するように前記送信機に命令する」相違点2に記載の補正発明の構成とすることは,十分動機付けがあり,阻害要因もなく,当業者が容易に想到するものといえる。

(3)そして,補正発明の作用効果は,刊行物1,2に記載された事項,及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(4)したがって,補正発明は,引用発明,刊行物2に記載された発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1?17に係る発明は,平成23年9月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されたものであって,その請求項1に係る発明は,次のとおりであると認める。
「【請求項1】 患者のセンサを監視するための装置において,
患者およびその体内の少なくとも一方に配置され,センサデータを連続的に読み取る検出装置と,
通常は電源が入っていない状態であり,前記センサデータを送信する際に電源が入れられる,内部で電力が供給される前記患者に配置される送信機と,
前記送信機が前記検出装置から前記センサデータを受信する,前記検出装置と前記送信機との間の第1のリンクであって,無線リンクを含む前記第1のリンクと,
前記送信機から無線送信される前記センサデータを受信する,前記患者から遠隔に配置された受信機であって,この送信が,バースト送信および指令に応じた送信の少なくとも一方である,前記受信機と,
を含み,
前記送信機が,前記受信機への送信の前に前記センサデータを一時的に保存する第1のメモリを含み,
前記センサデータの受信を知らせる,前記受信機から前記送信機に送信される確認信号をさらに含み,
前記確認信号が,前記受信機への送信の前に前記センサデータを一時的に保存している第1のメモリを消去又は上書きするように前記送信機に命令する,装置。」(以下,「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1,2およびその記載事項は,上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は,「受信機」について,補正発明の「前記送信機から無線送信される前記センサデータを受信し,保存し,収集する」から「前記送信機から無線送信される前記センサデータを受信する」と,「受信機」の機能を特定し限定する構成を省いたものに相当する。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2 3」において検討したとおり,引用発明,刊行物2に記載された発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,刊行物2に記載された発明,及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について言及するまでもなく,本願出願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-06 
結審通知日 2013-11-12 
審決日 2013-11-26 
出願番号 特願2006-99504(P2006-99504)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 貴之渡▲辺▼ 純也多田 達也  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
森林 克郎
発明の名称 患者を無線で監視するシステム  
代理人 加藤 公延  

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