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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1286815
審判番号 不服2013-1741  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-30 
確定日 2014-04-10 
事件の表示 特願2009-296291「インクジェット画像記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月15日出願公開、特開2010-155457〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年12月25日(パリ条約による優先権主張2009年1月5日、米国)の出願であって、平成24年10月19日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成25年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたものである。

第2.平成25年1月30日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年1月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、本件補正前の請求項1に
「搬送ベルトと、前記搬送ベルトを通してエアーを吸引し前記搬送ベルト上に前記記録媒体を吸着させるエアー吸引部とを含む搬送部と、
前記搬送ベルトの上方に配置され、前記搬送部により搬送される前記記録媒体に対してインクを吐き出して記録を行う記録ヘッドと、
前記搬送ベルトを支持し、かつ前記エアーを通す複数の第1の吸引口が設けられたベルト支持部材と、
前記ベルト支持部材と前記エアー吸引部との間に設けられ、前記エアーを通す複数の第2の吸引口が設けられた吸引口可変部材と、前記ベルト支持部材に対して前記吸引口可変部材を移動させ、前記記録媒体のサイズに応じて開放する前記第1の吸引口を可変する部材移動部とを含み、前記エアー吸引部による前記エアー吸引により生じる前記搬送ベルト上への前記記録媒体の吸着力を前記記録媒体のサイズに応じて調整する吸着力調整部と、
を具備することを特徴とするインクジェット画像記録装置。」
とあるのを、
「搬送ベルトと、前記搬送ベルトを通してエアーを吸引し前記搬送ベルト上に前記記録媒体を吸着させるエアー吸引部とを含む搬送部と、
前記搬送ベルトの上方に配置され、前記搬送部により搬送される前記記録媒体に対してインクを吐き出して記録を行う記録ヘッドと、
前記搬送ベルトを支持し、かつ前記エアーを通す複数の第1の吸引口が設けられたベルト支持部材と、
前記ベルト支持部材と前記エアー吸引部との間に設けられ、前記エアーを通す複数の第2の吸引口が設けられた吸引口可変部材と、前記ベルト支持部材に対して前記吸引口可変部材を移動させ、前記記録媒体のサイズに応じて開放する前記第1の吸引口を可変する部材移動部とを含み、前記エアー吸引部による前記エアー吸引により生じる前記搬送ベルト上への前記記録媒体の吸着力を前記記録媒体のサイズに応じて調整するもので、前記記録媒体の前記サイズに応じたエリア内で前記エアーを吸引し、前記記録媒体の前記サイズが小さくなる程、前記搬送ベルト上における前記記録媒体に対する吸着力を大きくする吸着力調整部と、
を具備し、
前記搬送部は、前記記録媒体を反転する反転機構を有し、
前記記録媒体の一方の面に記録を行った後、前記反転機構により前記記録媒体を反転し、前記記録媒体の他方の面に記録を行う場合、
前記吸着力調整部は、前記記録媒体の第1面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力よりも前記記録媒体の第2面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力を大きくする、
ことを特徴とするインクジェット画像記録装置。」
とする補正を含むものである。

2.目的要件等
特許請求の範囲の請求項1に関する補正は、補正前の請求項1に記載した「搬送部」を「記録媒体を反転する反転機構を有し、前記記録媒体の一方の面に記録を行った後、前記反転機構により前記記録媒体を反転」するものに、また、「吸着力調整部」を「記録媒体のサイズに応じたエリア内でエアーを吸引し、前記記録媒体の前記サイズが小さくなる程、搬送ベルト上における前記記録媒体に対する吸着力を大きく」し、「前記記録媒体の他方の面に記録を行う場合、前記記録媒体の第1面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力よりも前記記録媒体の第2面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力を大きくする」ものに、それぞれ限定するものであり、本件補正後の請求項1に記載された発明は、本件補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、当該補正は全体として特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

本願補正発明は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

(1)引用文献及び引用発明
i)平成24年2月6日付け拒絶理由通知で引用された実願昭62ー114038号(実開昭64-21152号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「第1図に示すように、搬送コンベヤ1は、一対のローラ2、2間にエンドレスの吸着ベルト3をかけ渡してあり、吸着ベルト3の全体には多数の孔4が形成してある。
…。
上記吸着ベルト3のキャリア側ベルト3’の背部にはサクションボックス10が配置されている。
第2図および第3図は上記サクションボックス10の詳細を示す。このサクションボックス10のキャリア側ベルト3’と対向する前側板11の表面には段差が設けられて外周部における外周三辺部が低くなっている。上記前側板11には、上段部12と下段部13の全体に、キャリア側ベルト3’の移動方向に等間隔に並ぶ吸引孔14が、前側板11の幅方向に複列に設けられている。
下段部13の表面にはコの字形の調節板15が重ねられ、その調節板15の表面は、上段部12の表面と同一になっている。
また、調節板15は、前側板11の幅方向にスライド可能に設けられ、そのスライド操作用の引手孔16が一側部に形成されている。
…。
上記調節板15には、多数の吸着孔17が設けられ、その吸着孔17は、下段部13に形成した吸引孔14の配置と同一になり、上記吸着孔17の列間が閉塞部18とされている。吸着孔17は、調節板15を引くことにより、下段部13の吸引孔14と一致し、また、調節板15を押し込むと、吸引孔14と吸着孔17の位置がずれ、吸引孔14は閉塞部18によって全閉される。
実施例で示す電子写真複写機におけるシート状物の吸着搬送装置は上記の構造から成り、シート状物の搬送に際しては、サクションボックス10の内部を吸引し、吸引孔14を介してキャリア側ベルト3’の孔4に作用する吸引力によりシート状物Sを吸着し、吸着ベルト3の移動により一方向に搬送するのである。」(明細書第5頁第3行?第7頁第8行)
(イ)「上記のようなシート状物Sの搬送に際して、そのシート状物Sの幅寸法に応じて調節板15をスライドし、キャリア側ベルト3’の吸引範囲を調整する。
いま、調整板15を引くと、第2図に示すように、調整板15の吸着孔17が下段部13の吸引孔14と一致するため、キャリア側ベルト4’の全部の孔5に吸引力が作用する。このため、幅寸法の大きなシート状物Sを吸着することができる。
また、調整板15を押すと、第4図および第5図に示すように、下段部13の吸引孔14に調節板15の閉塞部18が臨むため、上段部12の吸引孔14にのみ吸引力が作用する。
したがって、幅寸法の小さなシート状物Sを確実に搬送することができる。」(明細書第7頁第9行?第8頁第4行)
(ウ)「実施例の場合は、所定大きさのシート状物Sをキャリア側ベルトS(審決注:「3’」の誤記と認める。)の搬送方向中央部まで搬送するために、前側板11の外周三辺に下段部13を設けるようにしたが、上記下段部13および上段部12の形成部位は、シート状物Sの搬送基準線の位置およびシート状物Sの移送方法に応じて決定し、例えば、サクションボックス10の一側面を基準線としてシート状物Sを一方向に搬送する場合は、前側板11の表面他側部に下段部13を設けるようにする。」(明細書第8頁第5?14行)
(エ)「例えばCPC方式の電子写真複写機においては、幅寸法が異なる日本工業規格A列又はB列のシート状物(感光紙)を適宜選択するため、シート状物搬送後の帯電、露光、現像工程で、帯電ムラ、ピントのズレ、現像ムラ等種々の問題を引き起こし、結果的には高品質の画像が得られなくなる。」(明細書第2頁第20行?第3頁6行)
(オ)「上記のように構成すれば、調節板をスライドし、吸着孔を下段部の吸引孔に一致させることにより、キャリア側ベルトの全部の孔に吸引力を付与することができ、また、調節板の閉塞部を吸引孔に対向させることにより、キャリア側ベルトのサクションボックスの上段部と対向する部分の孔にのみ吸引力を付与することができる。
このように、調節板のスライドによって、キャリア側ベルトの吸引範囲を調節することができるため、シート状物の幅寸法が変更になった場合でも、調節板のスライドによる吸引範囲の調節によって、上記シート状物を確実に吸着搬送することができる。」(明細書第4頁第7?19行)

上記の記載事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「吸着ベルト3と、前記吸着ベルト3にシート状物Sを吸着するサクションボックス10とを含む搬送コンベヤ1と、
前記吸着ベルト3のキャリア側ベルト3’と対向する表面を有し、前記サクションボックス10の吸引力を前記キャリア側ベルト3’の孔4に作用させるための吸引口14が幅方向に複列設けられた前側板11と、
前記前側板11の表面の下段部13にスライド可能に設けられ、前記サクションボックス10の吸引力を作用させるための多数の吸着孔17が設けられた調節板15と、前記前側板11に対して、前記調節板15をスライドさせ、前記シート状物Sの幅寸法に応じて開放する前記吸引口14を変化させるスライド操作用の引手孔16とを含み、これらによって、前記キャリア側ベルト3’の吸引範囲を調整する吸着力調整手段と、
を具備した電子写真複写機。」

ii)平成24年2月6日付け拒絶理由通知で引用された特開2003-155140号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0029】次に図3?図4を参照すると、本発明のフューザ前搬送アセンブリ200が詳細に示されている。図示されるように、フューザ前搬送アセンブリ200は搬送プレナム210を有し、搬送プレナム210は、床部を構成すると共に部分的にキャビティ214を定める第1プレート212を有する。第1プレート212は、各々が第1のサイズを有すると共に全体で第1のパターンを構成する一連の第1の穴216を有する。フューザ前搬送アセンブリ200は、プレナム210の外面に沿って走行する一連の搬送ベルト220も有する。図示されるように、各ベルト220は、第1プレート212の一連の第1の穴216と協働する一連の第2の穴222を有する。周知のように、キャビティ214は、真空手段224によって、一連の第1の穴216を通して真空排気が可能であり、それにより搬送プレナム210の外側と内側とに圧力差を生じる。搬送プレナム210の外側と内側との圧力差により、トナー画像を有するコピー用紙48の裏側が搬送ベルト220に引きつけられ、転写ステーションDD(図1)から融着ステーションFFへと搬送される。」
(イ)「【0031】本発明の1つの態様によれば、底部又は第1プレート212の各第1の穴216の面積、即ち貫通開口のサイズを調節できる。一連の第3の穴232を有するスライド又は第2プレート230が設けられている。一連の第3の穴232は各々、第1プレート212の穴216と同じサイズを有する。一連の第3の穴232は、全体として、底部又は第1プレート212の第1の穴216のパターンのような第2のパターンを有する。図示されるように、第2プレート230は、底部又は第1プレート212に接して静止すると共に第1プレート212に対してスライド可能なように取り付けられている。図示されるように、フューザ前搬送アセンブリが、(この図のように)トップ型(最上部の用紙から搬送する)搬送装置として配置される場合には、第2プレート230は第1プレート212の上面に配置即ち載置される。」
(ウ)「【0034】更に図示されるように、フューザ前搬送アセンブリ200はモータ240を有する。モータ240は、スライド又は第2プレート230に取り付けられた少なくとも1つのタブ部材又は(機構)要素244に装着された少なくとも1つのウォームギア242を作動させる。複数のウォームギア及びタブ部材を適宜用いることができる。ウォームギア242が回転すると、スライド又は第2プレート230が、底部又は第1プレート212の貫通口即ち第1の穴216の面積を増減する。第1の穴216の面積を増減することにより、取得領域に達する真空圧の量も増減される。用紙パラメータ検出装置160は用紙のサイズ及び重量を検出し、それに応答してコントローラ29はモータ240を作動させ、各貫通口(即ち第1の穴)216の面積を増減する。」
(エ)「【0040】以上の説明からわかるように、(a)複数の貫通する真空開口を有する無端ベルトであって、駆動ローラを含む複数のローラの周囲に掛け回された前記無端ベルトと、(b)前記無端ベルトの下(内側)に配置される第1プレートであって、第1のパターンを有し各々が第1のサイズを有する第1の貫通する穴を有する前記第1プレートと、(c)前記無端ベルトの前記開口及び前記第1プレートの前記第1の穴の前記第1のパターンを通して空気を吸引する真空手段と、(d)前記第1プレートの下(内側)に配置される第2プレートであって、第2のパターンを有し各々が第2のサイズを有する第2の穴を有すると共に前記第1プレートに沿って横方向に可動な前記第2プレートを含む第2プレートアセンブリと、(e)測定されたコピー用紙のパラメータの変化に応答して、前記第1プレートに対する前記第2プレートの位置を検出及び調節する制御手段であって、前記第1の穴と前記第2の穴との重なりの程度を制御可能に調節することにより未融着トナー画像を有しフューザへと搬送される前記コピー用紙に加えられる真空圧を調節可能に制御する手段を有する前記制御手段と、を有するフューザ前用紙搬送アセンブリが提供された。」
(オ)「【図面の簡単な説明】
…。
【図3】本発明による一連の第2の穴を有する第2プレートを含むフューザ前用紙搬送アセンブリの端面図である。」
(カ)図3から、第1プレート212の外側に、端面方向からみて左右(横)それぞれに2つの第2の孔222を設けた無端ベルト220が、内側に第2プレート230が配置され、前記第1プレート212に沿って、前記第2プレート230が横方向に可動である(矢印236及び上記(エ)の(d)参照)点がみてとれる。

iii)平成24年2月6日付け拒絶理由通知で引用された特開2005-96135号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は記録媒体の搬送装置および画像形成装置に係り、特にサイズの異なる記録媒体を安定して搬送できる記録媒体の吸引搬送装置および画像形成装置に関する。

【0002】
インクジェット方式の画像形成装置には、エアを吸引する吸引孔が形成された搬送ベルトに記録紙を吸着させて搬送させ、記録ヘッドから当該記録紙にインクを吐出して記録紙上に画像を形成するものがある。このような画像形成装置においては、記録精度を保つために記録ヘッドと記録紙とのクリアランスを狭くかつ一定に維持する必要がある。しかし、搬送ベルトの吸引孔が記録紙によって完全に塞がれていない場合には、一部の吸引孔が開放されて、記録紙の単位面積当りの吸引力が弱まり、記録紙の吸着力が低下する。これにより、記録紙が搬送ベルトに吸着せずに剥がれるなどして浮き上がり、記録ヘッドと記録紙とのクリアランスが一定に維持できずに画像ムラが発生する。また、浮き上がった記録紙が記録ヘッドに接触すると、記録紙の画像記録面がインクで汚れるという不具合があった。記録紙の吸着力を確保するために大型の吸引装置を用いると、吸引装置から騒音が発生するほか、搬送ベルトの駆動抵抗が増大して搬送ベルトの駆動モータを大型化する必要があり、コスト面で不利となる。さらに、駆動抵抗の増大に伴い、ベルトとベルト案内板の接触部が磨耗し易いという問題があった。これに対処するために、搬送方向の開放した吸引孔をシャッタで塞いで記録紙の吸着力低下を防ぐ技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
…。
【特許文献1】特開2002-53256号公報

【0004】
特許文献1によれば、搬送ベルトとエアを吸引する吸引手段との間に搬送方向のシャッタを設け、このシャッタによって記録紙の乗っていない搬送方向の吸引孔を塞ぐ構成となっているが、この画像形成装置ではシャッタ機構が複雑となるほか、幅方向でサイズの異なる記録紙には対応できないという不具合があった。」
(イ)「【0018】
図1は本発明の実施の形態に係る記録媒体の吸引搬送装置および画像形成装置の全体構成図である。画像形成装置10は、インクの色すなわちブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)ごとに設けられた複数のインク貯蔵部12を有する記録ヘッド14と、この記録ヘッド14に対向して配置され、記録紙(記録媒体)16の平面性を保持しながら記録紙16をベルト38にて搬送する吸引搬送装置18と、記録紙16を供給する給紙部20と、画像記録済みの記録紙を排出する排紙部22と、を備えている。
【0019】
図1、図2に示すように記録ヘッド14は、記録紙16の最大幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙送り方向と直交方向に配置した、いわゆるフルライン型ヘッドで構成されている。記録紙16の搬送方向(矢印A)に沿って上流側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した不図示のノズルが記録ヘッド14下部に形成され、記録紙16を搬送しつつ各ノズルからそれぞれの色インクを記録紙16に吐出することにより記録紙16上にカラー画像などを形成する。」

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「吸着ベルト3」、「吸着孔17」、「調整板15」、「引手孔16」、「調整板15」及び「引手孔16」、「シート状物Sの幅寸法」は、それぞれ本願補正発明の「搬送ベルト」、「第2の吸引口」、「吸引口可変部材」、「部材移動部」、「吸着力調整部」、「記録媒体のサイズ」に相当し、引用発明の「シート状物S」は、感光紙であり、帯電、露光、現像工程を経る(上記(1)i)(エ))から、本願補正発明の「記録媒体」に、引用発明の「サクションボックス10」は、内部を吸引することで吸引口14より外気(エアー)を吸引して吸着ベルト3にシート状物Sを吸着する(上記(1)i)(ア))から、本願補正発明の「エアー吸引部」に、引用発明の「サクションボックス10の吸引力をキャリア側ベルト3’の孔4に作用させるための吸引口14」は本願補正発明の「エアーを通す第1の吸引口」に、引用発明の「前側板11」はキャリア側ベルト3’と対向する表面側で吸着ベルト3を支持するものであるから、本願補正発明の「ベルト支持部材」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「電子写真複写機」と本願補正発明の「インクジェット画像記録装置」とは「画像形成装置」である限りにおいて一致し、引用発明の「搬送コンベヤ1」と本願補正発明の「搬送部」は、画像記録装置の「吸着搬送装置」である限りにおいて一致する。
以上より、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「搬送ベルトと、前記搬送ベルトを通してエアーを吸引し前記搬送ベルト上に前記記録媒体を吸着させるエアー吸引部とを含む吸着搬送装置と、
前記搬送ベルトを支持し、かつ前記エアーを通す複数の第1の吸引口が設けられたベルト支持部材と、
前記エアーを通す複数の第2の吸引口が設けられた吸引口可変部材と、前記ベルト支持部材に対して前記吸引口可変部材を移動させ、前記記録媒体のサイズに応じて開放する前記第1の吸引口を可変する部材移動部とを含み、前記エアー吸引部による前記エアー吸引により生じる前記搬送ベルト上への前記記録媒体の吸着力を前記記録媒体のサイズに応じて調整するもので、前記記録媒体の前記サイズに応じたエリア内で前記エアーを吸引する吸着力調整部と、
を具備する画像記録装置。」
である点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、吸引口可変部材が「ベルト支持部材とエアー吸引部との間に設けられる」のに対して、引用発明では、吸着ベルト3のキャリア側ベルト3’と対向する、前側板11の表面に形成した下段部13上に設けられる点。

[相違点2]
本願補正発明では、画像記録装置が「インクジェット画像記録装置」であり、「記録ヘッド」が「搬送ベルトの上方に配置され、前記搬送部により搬送される前記記録媒体に対してインクを吐き出して記録を行う」のに対して、引用発明では、「電子写真複写機」である点。

[相違点3]
本願補正発明では、「吸着力調整部」が「記録媒体のサイズが小さくなる程、搬送ベルト上における記録媒体に対する吸着力を大きくする」のに対して、引用発明では、このような規定が特にない点。

[相違点4]
本願補正発明では、「搬送部は、記録媒体を反転する反転機構を有し、前記記録媒体の一方の面に記録を行った後、前記反転機構により前記記録媒体を反転し、前記記録媒体の他方の面に記録を行う場合、吸着力調整部は、前記記録媒体の第1面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力よりも前記記録媒体の第2面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力を大きくする」のに対して、引用発明では、当該構成を有しない点。

(3)当審の判断
上記相違点1について検討すると、コピー用紙等の画像記録媒体の真空吸着を利用した搬送装置において、吸引口可変部材がその機能を実現するためには「ベルト支持部材とエアー吸引部の間に設けられる」ことが必須というものではない、そして、吸引口可変部材(引用文献2の第2プレート230)をベルト支持部材(引用文献2の第1プレート212)とエアー吸引部(引用文献2の搬送プレナム210)との間(第1プレートの内側)に設けることは引用文献2に記載された事項である(上記(1)ii)(エ)参照)。よって、引用発明において、前側板11と調節板15の配置を反転させ、調節板15が前側板11とサクションボックス10との間に設けられるようにすることは当業者が容易になし得たことである。
次に、上記相違点2について検討すると、画像形成装置として、インクジェット方式は周知であって、引用発明の電子写真複写機と同様、種々のサイズのシートを扱っている。インクジェット方式の画像形成(画像記録)装置において、搬送される記録媒体に対してインクを吐き出して記録を行う記録ヘッドと対向するように吸引(吸着)搬送装置を配置することは引用文献3に記載された事項であり(上記(1)iii)(イ)参照)、引用発明のシート状物Sの幅寸法に応じて開放する吸引口を変化させるサクションボックスを、一般に種々のシートを扱うインクジェット画像記録装置に用いることは当業者が容易になし得たことである。
次に、上記相違点3について検討すると、引用発明において、エアー吸引部の開口を変化させた際に、吸引力を恒常的に保つために、開口の変化に合わせてファン等の吸引力発手段の駆動を制御することが当然のことであるとはいえず、一般にファン等の駆動力を特に変化させないので、記録媒体のサイズが小さくなり、開口が減少すれば吸引力は増大し、搬送ベルト上における記録媒体に対する吸着力が大きくなるものと認められる。
したがって、この点は実質的な相違点とはいえない。
次に、上記相違点4について検討すると、画像記録装置において、「搬送部は、記録媒体を反転する反転機構を有し、前記記録媒体の一方の面に記録を行った後、前記反転機構により前記記録媒体を反転し、前記記録媒体の他方の面に記録を行う場合、吸着力調整部は、前記記録媒体の第1面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力よりも前記記録媒体の第2面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力を大きくする」点は、周知技術にすぎず(例えば、特開2005ー343636号公報の【0006】?【0010】、特開2003ー248346号公報の段落【0017】参照)、引用発明において、シート状物Sを反転する反転機構を設けると共に、シート状物Sの第1面に記録を行うときの吸着力よりも第2面に記録を行うときの吸着力を大きくすることは当業者が容易になし得たことである。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された事項、並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された事項、並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は審判請求書において、「本願発明は、記録媒体のサイズに応じたエリア内でエアーを吸引し、記録媒体のサイズが小さくなる程、搬送ベルト上における記録媒体に対する吸着力を大きくする吸着力調整部を具備する点、搬送部は、記録媒体を反転する反転機構を有する点、記録媒体の一方の面に記録を行った後、反転機構により記録媒体を反転し、記録媒体の他方の面に記録を行う場合、吸着力調整部は、記録媒体の第1面に記録を行うときの記録媒体の吸着力よりも記録媒体の第2面に記録を行うときの記録媒体の吸着力を大きくする点について技術的特徴の手段を有するものです。」とし、「引用文献2(審決注:上記引用文献1、即ち実願昭62ー114038号(実開昭64-21152号)のマイクロフィルムに相当。)は、吸引孔14が設けられた前側板11と、多数の吸着孔17が設けられた調節板15を備え、調節板15を引くことにより吸着孔17が吸引孔14に一致し、調節板15を押し込むことにより吸着孔17と吸引孔14との位置がずれて全閉するもので、上記本願発明における技術的特徴の手段と相違することが明確です。」と主張している(「3.本源発明が特許されるべき理由」の(4)参照)。
当該実願昭62ー114038号(実開昭64-21152号)のマイクロフィルムに記載された、上記引用発明の構成が「記録媒体のサイズに応じたエリア内でエアーを吸引し、記録媒体のサイズが小さくなる程、搬送ベルト上における記録媒体に対する吸着力を大きくする吸着力調整部を具備する」構成に含まれないとは認めない。
しかし、仮に、当該本願特許請求の範囲の記載を「調節板15を引くことにより吸着孔17が吸引孔14に一致し、調節板15を押し込むことにより吸着孔17と吸引孔14との位置がずれて全閉する」選択のみでなく、「より多種類のサイズに応じた調整を可能にしたもの」(例えば本願の図6に示された実施例はS1?S3の3種類に対応可能)であると限定して解した場合でも、上記引用文献1には「サクションボックス10の一側面を基準線としてシート状物Sを一方向に搬送する場合は、前側板11の表面他側部に下段部13を設け」、当該他端側から調整板で覆う点が記載され(上記(1)i)(ウ)参照)、また、プレナム(本願発明の「エアー吸引部」に相当)のシートSの乗っていない吸気口を、開口の少ないシャッタ4aを有するシャッタベルト4(本願発明の「吸引口可変部材」に相当)で塞いでシートSの吸着力を上げる構成が周知技術であるので(上記(1)iii)(ア)及び特開2002-53256号公報の段落【0008】、【0010】、【0015】、【0023】参照)、引用発明において、シート状物S幅に応じて「前側板の他側側に設けた」調整板を適宜量移動して、多種類のサイズに応じた調整を可能にするのは当業者が容易になし得る程度のこととであり、進歩性を有するとはいえない。

4.まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成25年1月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年4月13日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」「1.」補正前の請求項1参照)。

第4.対比・判断
本願発明は、本願補正発明(前記「第2.」「1.」の補正後の請求項1参照。)から、「搬送部」を「記録媒体を反転する反転機構を有し、前記記録媒体の一方の面に記録を行った後、前記反転機構により前記記録媒体を反転」するもの、また、「吸着力調整部」を「記録媒体のサイズに応じたエリア内でエアーを吸引し、前記記録媒体の前記サイズが小さくなる程、搬送ベルト上における前記記録媒体に対する吸着力を大きくし」、「前記記録媒体の他方の面に記録を行う場合、前記記録媒体の第1面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力よりも前記記録媒体の第2面に記録を行うときの前記記録媒体の吸着力を大きくする」ものとそれぞれ限定する、限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」の「3.」に記載したとおり、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された事項、並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同様の理由により、本願発明も引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された事項、並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載された事項、並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-29 
結審通知日 2014-02-04 
審決日 2014-02-24 
出願番号 特願2009-296291(P2009-296291)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿崎 拓  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 熊倉 強
渡邊 真
発明の名称 インクジェット画像記録装置  
代理人 野河 信久  
代理人 中村 誠  
代理人 中村 誠  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 峰 隆司  
代理人 白根 俊郎  
代理人 河野 直樹  
代理人 砂川 克  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 竹内 将訓  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 野河 信久  
代理人 竹内 将訓  
代理人 白根 俊郎  
代理人 砂川 克  
代理人 河野 直樹  
代理人 福原 淑弘  
代理人 佐藤 立志  
代理人 岡田 貴志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 福原 淑弘  
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