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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08B
管理番号 1286816
審判番号 不服2013-1751  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-30 
確定日 2014-04-10 
事件の表示 特願2008-107473「住宅設備監視制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月 5日出願公開、特開2009-259010〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本件発明
本件出願は、平成20年4月17日の出願であって、平成24年4月27日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年1月30日に拒絶査定に対する審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において同年5月9日付けで審尋がなされ、これに対し、同年7月16日に回答書が提出され、同年9月18日付けで拒絶理由が通知され、同年11月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成25年11月25日付けの手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
住宅の玄関扉の施錠及び解錠を行う電気錠を含む複数の電気機器と、前記複数の電気機器を制御する制御装置と、前記玄関扉の屋外側にいる対象人物を認証する認証装置と、前記電気錠、前記制御装置及び前記認証装置が接続される宅内通信網とを備える住宅設備監視制御システムであって、
前記認証装置は、
前記対象人物の顔を撮影する撮影手段と、
複数の登録人物の顔情報を記憶するとともに当該複数の登録人物をグループ別に記憶する顔情報記憶手段と、
前記撮影手段で撮影された画像に含まれる前記対象人物の顔情報が前記顔情報記憶手段に記憶されている前記複数の登録人物の顔情報の何れかと一致した場合に、前記対象人物が当該登録人物であると判断する認証手段と、
前記顔情報とは別に前記対象人物を識別するための情報であって前記対象人物に対応付けて情報媒体に記憶されている識別情報を読み取る読み取り手段と、
前記登録人物ごとに対応付けた識別情報を登録情報として記憶する識別情報記憶手段とを有し、
前記制御装置は、帰宅時に用いられ前記電気錠を含む2以上の前記電気機器の制御内容を前記グループ別に規定し、前記対象人物が前記登録人物であると前記認証手段で判断されると、前記認証手段で判断された前記登録人物が属する前記グループに対して規定された前記制御内容にしたがって、前記玄関扉を解錠するように前記電気錠を制御するとともに、前記2以上の電気機器のうち前記電気錠を除く残りの電気機器の動作を制御し、
前記認証手段は、前記読み取り手段で読み取られた前記識別情報が前記識別情報記憶手段に記憶されている前記登録情報と一致した場合、その後、比較対象を前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報に絞り込んだ状態で、前記対象人物の顔情報を、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と比較し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致する場合に、前記対象人物が前記登録人物であると判断し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致しない場合、前記対象人物が前記登録人物ではないと判断する
ことを特徴とする住宅設備監視制御システム。」


2.引用文献記載の発明及び技術
2-1.引用文献1記載の発明
(1)本件出願の出願前に頒布され、当審の拒絶理由に引用された刊行物である特開2008-52563号公報(平成20年3月6日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
固有のIDを有する応答器と、応答器と無線通信して応答器のIDを取得する無線通信手段と、撮像装置で撮像された画像から人体を検知する人体検知手段と、警報手段とを備えており、警報手段は、人体を検知した後に前記IDを読取れない場合、或いは読取ったIDが許可されたIDでない場合に警報を発するようになした警報システムにおいて、
人体検知手段は前記画像から顔認証を行う顔認証センサであり、顔認証センサで人体が検知される前後の一定時間に撮像された前記画像のみを保存できるようになした記憶手段を備えたことを特徴とする警報システム。
【請求項2】
記憶手段で保存した前記画像を画像受信装置に転送するようになした転送手段を備えることを特徴とする請求項1記載の警報システム。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

(イ)「【0001】
本願発明は、人体検知センサと、固有のIDを持つ応答器とを組み合わせた警報システムに関するものである。」(段落【0001】)

(ウ)「【0012】
図1、2は、第一の実施形態である警報システムを示している。この警報システムは、固有のIDを有する応答器2と、応答器2と無線通信して応答器2のIDを取得する無線通信手段と、撮像装置3で撮像された画像から人体を検知する人体検知手段となる顔認証センサ4と、警報手段とを備えており、警報手段は、人体を検知した後に前記IDを読取れない場合、或いは読取ったIDが予め許可されたIDでない場合に、警報を発するようになしており、顔認証センサ4で人体が検知される前後の一定時間に撮像された前記画像のみを保存できるようになした記憶手段を備えている。又、記憶手段で保存した前記画像を画像受信装置8に転送するようになした転送手段を備えている。
【0013】
以下、この実施形態の警報システムを、より具体的詳細に説明する。図1、2に示すように、この警報システムは、例えば住宅やオフィスの出入り口付近に取り付けられ、出入り口を通る通行人Bを監視しており、侵入者を検知した場合は警報を発するものである。又、侵入者の検知の方法としては、顔認証センサ4と質問器1によるID認証を併用したものである。
【0014】
この警報システムの具体的な構成は、図1に示すように、質問器1と、応答器2と、撮像装置3と、顔認証センサ4と、警報装置5と、記憶装置6と、転送装置7とを備えている。ここで、質問器1が無線通信手段となり、撮像装置3及び顔認証センサ4が人体検知手段となり、警報装置5が警報手段となり、記憶装置6が記憶手段となり、転送装置7が転送手段となる。なお、この警報システムは、図2に示すように、質問器1、顔認証センサ4、撮像装置3、及び警報装置5が一体となった警報機Aとして設置されているが、各部が伝送線で接続されて別体として設置されていてもよい。」(段落【0012】ないし【0014】)

(エ)「【0015】
質問器1は、応答器2と無線通信することで応答器2の有するIDを取得するものであり、LF送信部11と、LF送信アンテナ12と、RF受信部13と、RF受信アンテナ14と、制御部15とを具備している。LF送信部11はLF送信アンテナ12に印加する交流電流を制御しており、この交流電流を受けてLF送信アンテナ12はLF周波数帯の交流磁界を発生させて質問信号を無線送信する。RF受信アンテナ14は応答器2から無線送信されるRF周波数帯の応答信号を受信し、RF受信部13は受信した応答信号を制御部15へと伝送する。
【0016】
制御部15は、CPUを具備した全体の制御を担う制御手段であって、接続端子16に接続されている顔認証センサ4、記憶装置6、及び警報装置5との間で信号の授受を行っている。又、制御部15は、出入りが許可されているメンバーのIDを記録したチェックリスト(不図示)を保持している。応答器2から取得したIDはこのチェックリストと照合された後、記憶装置6へと伝送される。なお、このチェックリストに記録されたIDは、随時、書き換えることも可能である。
【0017】
応答器2は、例えば無線タグであって、アクティブ型のものを想定しており、LF受信部21と、LF受信アンテナ22と、RF送信部23と、RF送信アンテナ24と、応答制御部25と、電池26とを具備しており、LF受信アンテナ22は質問器1からの質問信号を受信し、LF受信部21は受信した質問信号を応答制御部25へと伝送する。RF送信部23は、自己の識別情報となるIDを記憶しており、RF送信アンテナ24を制御して、RF送信アンテナ24から質問器1へと応答信号を無線送信する。応答制御部25は、CPUを具備する応答器2全体の制御を担う制御手段であり、電池26は応答器2全体の動作電力を供給している。なお、IDは応答制御部25で記憶していてもよい。
【0018】
撮像装置3は、図2に示すように、出入り口付近を撮像しており、撮像した撮像画像を顔認証センサ4及び記憶装置6に伝送している。なお、撮像装置3の撮像領域は質問器1の質問信号が送信される領域と略同一であり、質問器1は撮像領域に入った通行人Bが所持する応答器2からIDを取得するようになっている。
【0019】
顔認証センサ4は、撮像装置3から受けた撮像画像を画像処理することで、まず出入り口を通る人体を検出する。人体を検出した場合は、検出結果を制御部15へと伝送する。次に、顔認証センサ4は、検出された人体から顔画像の抽出を行う。ここで、顔認証センサ4には、出入りを許可された人の顔画像が予め登録顔画像として登録されており、顔画像を抽出した場合は、この登録顔画像と抽出した抽出顔画像とを照合し、照合結果を制御部15へと伝送している。なお、顔認証センサ4による顔画像の抽出及び、登録顔画像と抽出顔画像との照合は、例えば特開2005-141720号公報に示されるような従来から知られている方法を用いるものであるため、ここでの説明は省略する。
【0020】
又、顔認証センサ4には登録顔画像と対応させて、登録された顔の人物が所有している応答器2が有するIDが登録されている。したがって、照合の結果、抽出顔画像がいずれかの登録顔画像と一致すると判断された場合は、その照合結果に加えて、対応して登録されたIDの情報も制御部15へと伝送するようになっている。なお、登録顔画像及び対応して登録されたIDは随時、書き換えることも可能である。」(段落【0015】ないし【0020】)

(オ)「【0021】
制御部15は、人体が検出されたことを示す検出結果を受けると、LF送信部11に質問信号を無線送信させる。又、制御部15は、この検出結果や、顔認証センサ4から伝送された照合結果及び登録されたIDや、応答器2から取得したIDの情報を基に侵入者を検知しており、侵入者が検知された場合は侵入者検知を示す制御信号を警報装置5へと伝送する。これを受けて警報装置5は、照明器具51を点滅させたりスピーカー(不図示)から警報音を鳴らしたりすることで警報を発する。
【0022】
記憶装置6は、撮像装置3で撮像された撮像画像を録画、保存するものであり、常時録画領域と保存領域との二種類の記憶領域を有している。常時録画領域は、撮像装置6で撮像された撮像画像が常に録画されている領域であり、記憶装置6は過去に録画した撮像画像のうち古い撮像画像から順番に上書きしながら録画している。したがって、記憶装置6の動作中においては、常時録画領域に録画された撮像画像は一定時間が経過すると削除され、常時録画領域には常に新しい撮像画像のみが録画された状態になっている。これに対して保存領域は、撮像画像及びIDが保存される領域であり、保存されたデータが自動的に書き換えられることはない。
【0023】
ここで、制御部15から人体検知を示す制御信号を受けると、記憶装置6は、人体が検知される前の一定時間の撮像画像を常時録画領域から取得して保存領域に保存すると共に、人体が検知された後の一定時間の撮像画像を保存領域に録画する。つまり、自動的に書き換えられることなく保存される保存領域には、防犯上必要となる人体が検知された前後の一定時間の撮像画像のみを保存することができる。ただし、人体検知がされていない時であっても、必要に応じて撮像画像を保存領域に保存してもよい。
【0024】
又、撮像画像は時刻と対応して保存領域に保存されるようになっているが、質問器1が応答器2からIDを取得できた場合は、時刻と共に取得したIDと対応して保存領域に保存される。保存された撮像画像はテレビ受信機や携帯端末等により再生できるようになっており、再生する撮像画像は時刻やIDから検索することが可能である。又、記憶装置6は、制御部15からの制御信号を受けるか、或いは、自己の判断で保存された撮像画像を転送装置7へと伝送し、家人や警備員の所有する画像受信装置8へと転送するようになっている。」(段落【0021】ないし【0024】)

(カ)「【0025】
次に、この警報システムの動作を図3のフロー図を用いて説明する。待機状態(S01)において通行人Bが出入り口に接近すると、顔認証センサ4で人体が検知され(S02)、質問器1から質問信号が無線送信される(S03)。その後、人体が検知されてから一定時間の間に応答信号が返送されず質問器1においてIDを受信できなかった場合は(S04)、出入り口に接近した通行人Bは応答器2を所持していないと見なされ、警報装置5により警報が出力される(S07)。
【0026】
質問器1がIDを受信できた場合は、顔認証センサ4において検知した人体から顔画像が抽出され、この抽出顔画像と登録顔画像の照合がなされる(S05)。この照合の結果、抽出顔画像がどの登録顔画像にも一致しなかった場合は、警報が出力され(S07)、抽出顔画像がいずれかの登録顔画像と一致した場合は、一致した登録顔画像に対応して登録されたIDと受信したIDとが照合される(S06)。IDの照合の結果、登録されたIDと受信したIDとが一致しない場合には警報が出力され(S07)、これが一致する場合には警報が出力されることはなく、出入りが許可される。
【0027】
なお、警報が出力される場合(S07)において、記憶装置6の保存領域に保存された侵入者を撮像していると推定される撮像画像を、転送装置7から画像受信装置8へと自動的に転送されるような設定にしてもよい。
【0028】
又、図2に示す扉Cに電気錠が設けられており、電気錠の開錠、施錠を制御部15が制御するものであってもよい。この場合、電気錠の開錠のタイミングは、例えば抽出顔画像がいずれかの登録顔画像と一致した時点(S05)で開錠するか、或いは登録されたIDと受信したIDとが一致した時点(S06)で開錠することが考えられる。又、上記の動作フローには示していないが、受信したIDとチェックリストとの照合の結果、受信したIDが認証された時点で開錠してもよい。」(段落【0025】ないし【0028】)

(キ)「【0029】
したがって、この実施形態の警報システムにおいては、防犯上必要となる人体が検知された前後の一定時間の撮像画像のみを保存することができるため、記憶装置6の記憶容量を節約することができ、長時間監視する場合においても必要な画像を確実に保存することができる。更に、記憶手段となる記憶装置6の記憶容量を節約できるため、小容量の記憶装置6を用いることができ、コストを抑えることが可能となる。又、必要な画像だけを保存できるため、録画したデータから特定の画像を読み出す作業が容易になるものである。
【0030】
又、人体検知手段は顔認証センサ4であり、検知された人体の顔認証を行うことができるため、許可されたIDを有する応答器を盗難等により所有した侵入者が現れたとしても、確実に侵入者を特定して警報を発することが可能となる。
【0031】
又、保存領域に保存された画像を画像受信装置8に転送するようになした転送装置7を備えているため、携帯端末等の画像受信装置8に転送することで警備員や外出中の家主に警報を発することができる。又、防犯上必要な撮像画像のみを保存することで転送容量を節約することも可能となるため、転送時間が短くて済みネットワーク障害にあう危険性が低減できるので、より確実に撮像画像を転送させることができる。
【0032】
又、撮像装置3の撮像領域は質問器1の質問信号が送信される領域と略同一であるため、質問器1は撮像装置3に撮像された通行人Bの所持する応答器2からIDを取得するようになっており、撮像領域にいない通行人Bが所持する応答器2からIDを取得してしまうことで誤作動を起こすことを防ぐことができる。
【0033】
なお、質問器1は人体検知がなされてから質問信号を送信するようになっているが、人体検知がされるタイミングと略同時であれば、人体検知とは非同期に質問信号を送信していてもよい。
【0034】
この実施形態の警報システムは、応答器2が電池26を有するアクティブ型の無線通信手段によりIDの授受を行うシステムであり、応答器2を所持する通行人BはハンズフリーでIDの認証をすることができる。」(段落【0029】ないし【0034】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(キ)並びに図面の記載からみて、次のことが分かる。

(ク)上記(1)の(ア)及び(ウ)ないし(オ)並びに図1及び2からみて、警報システムは、複数の電気機器と、制御部15と、顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証に係る装置(以下、「顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証装置」という。)と、住宅にある信号の網状の系統(以下、「住宅にある信号網」という。)とを備えていることが分かる。
ここで、前記複数の電気機器は、住宅の扉Cの施錠及び解錠を行う電気錠を含む複数の警報装置5、照明器具51及びスピーカー等であり、前記制御部15は、前記複数の警報装置5、照明器具51及びスピーカー等の電気機器を制御するものであり、前記顔認証センサ4は、扉Cの屋外側にいる通行人Bを認証するものであり、前記住宅にある信号網は、前記電気錠、前記制御部15及び前記顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証装置を接続していることが分かる。
また、前記顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証装置は、撮像装置3と、顔認証センサ4と、質問器1とを有していることが分かる。
ここで、前記撮像装置3は、通行人Bの顔を撮影するものであることが分かる。前記顔認証センサ4は、複数の出入りを許可された人の登録顔画像を記憶する記憶機能及び出入りを許可された人ごとに対応付けた受信したIDを登録されたIDとして記憶する記憶機能(以下、「顔認証センサ4の記憶機能要素」という。)を有しており、また、顔認証センサ4及び制御部15は、前記撮像装置3で撮影された画像に含まれる前記通行人Bの抽出顔画像が前記顔認証センサ4の記憶機能要素に記憶されている前記複数の出入りを許可された人の登録顔画像の何れかと一致した場合に、前記通行人Bが当該出入りを許可された人であると判断する認証機能(以下、「顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素」という。)を有していることが分かる。前記質問器1は、前記顔画像とは別に前記通行人Bを識別するための情報であって前記通行人Bに対応付けて応答器2に記憶されている受信したIDを読み取るものであることが分かる。前記制御部15は、前記通行人Bが前記出入りを許可された人であると前記顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素で判断されると、前記扉Cを解錠するように前記電気錠を制御するものであることが分かる。

(ケ)上記(1)の(ア)、(カ)、(キ)及び上記(ク)並びに図3からみて、顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素は、記通行人B対象人物の抽出顔画像が顔認証センサ4の記憶機能要素に記憶されている出入りを許可された人の登録顔画像と一致した場合、その後、比較対象を前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDに絞り込んだ状態で、受信したIDを、前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと比較し、前記受信したIDが、前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと一致する場合に、前記前記通行人Bが前記出入りを許可された人であると判断し、前記受信したIDが、前記通行人B対象人物の抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと一致しない場合、前記通行人Bが前記出入りを許可された人ではないと判断するものといえる。

(3)上記(1)及び上記(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「住宅の扉Cの施錠及び解錠を行う電気錠を含む複数の電気機器と、前記複数の電気機器を制御する制御部15と、前記扉Cの屋外側にいる通行人Bを認証する顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証装置と、前記電気錠、前記制御部15及び前記顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証装置が接続される住宅にある信号網とを備える警報システムであって、
前記顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証装置は、
前記通行人Bの顔を撮影する撮像装置3と、
複数の出入りを許可された人の登録顔画像を記憶する顔認証センサ4の記憶機能要素と、
前記撮像装置3で撮影された画像に含まれる前記通行人Bの抽出顔画像が前記顔認証センサ4の記憶機能要素に記憶されている前記複数の出入りを許可された人の登録顔画像の何れかと一致した場合に、前記通行人Bが当該出入りを許可された人であると判断する顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素と、
前記顔画像とは別に前記通行人Bを識別するための情報であって前記通行人Bに対応付けて応答器2に記憶されている受信したIDを読み取る質問器1と、
前記出入りを許可された人ごとに対応付けた受信したIDを登録されたIDとして記憶する顔認証センサ4の記憶機能要素とを有し、
前記制御部15は、前記通行人Bが前記出入りを許可された人であると前記顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素で判断されると、前記扉Cを解錠するように前記電気錠を制御し、
前記顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素は、前記通行人Bの抽出顔画像が前記顔認証センサ4の記憶機能要素に記憶されている前記出入りを許可された人の登録顔画像と一致した場合、その後、比較対象を前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDに絞り込んだ状態で、前記受信したIDを、前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと比較し、前記受信したIDが、前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと一致する場合に、前記通行人Bが前記出入りを許可された人であると判断し、前記受信したIDが、前記通行人B対象人物の抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと一致しない場合、前記通行人Bが前記出入りを許可された人ではないと判断する
警報システム。」


2-2.引用文献2記載の技術
(1)本件出願の出願前に頒布され、当審の拒絶理由に引用された刊行物である特開2007-104380号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】
スピーカ、マイク及びカメラを有するドアホン子機と、前記ドアホン子機と音声通話し前記カメラの撮影した画像情報を表示する表示部を有するドアホン親機とを備えたドアホン装置であって、前記ドアホン親機には、人物を照合するための照合部によって来訪者が特定の人物であることが判定されたとき、該人物に対して設定された電気機器を動作させる制御実行手段が設けられたことを特徴とするドアホン装置。
【請求項2】
前記ドアホン親機には、来訪者に対する取得済み画像情報と該画像情報と関係付けられた前記来訪者の来訪者情報とを格納する来訪者情報記憶部が設けられ、前記照合部が前記カメラの撮影した画像情報と特定の人物の取得済み画像情報とが一致するか否かを照合し、照合結果が一致した場合に、前記来訪者が特定の人物であると判定することを特徴とする請求項1記載のドアホン装置。
【請求項3】
前記ドアホン親機には、来訪者に対する取得済み音声情報と該音声情報と関係付けられた前記来訪者の来訪者情報とを格納する来訪者情報記憶部が設けられ、前記照合部が前記マイクからの音声情報と特定の人物の取得済み音声情報とが一致するか否かを照合し、照合結果が一致した場合に、前記来訪者が特定の人物であると判定することを特徴とする請求項1または2記載のドアホン装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項3】)

(イ)「【0001】
この発明は、ドアホン子機の操作をした人物を自動的に認証して、特定の人物に対して所定の電気機器を動作、制御することができ、宅内の電気機器を操作、管理することができるドアホン装置に関する。」(段落【0001】)

(ウ)「【0015】
そこで本発明は、ドアホン子機の操作をした人物を自動的に認証して、特定の人物に対して所定の電気機器を動作、制御することができ、宅内の電気機器を操作、管理することができるドアホン装置を提供することを目的とする。
・・・(後略)・・・」(段落【0015】)

(エ)「【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1におけるドアホン装置は画像により人物認証を行い、特定の人物に対して所定の電気機器を動作させ、また制御するものである。図1(a)は本発明の実施の形態1におけるドアホン装置のドアホン子機の正面図、図1(b)は本発明の実施の形態1におけるドアホン装置のドアホン親機の正面図、図2は本発明の実施の形態1におけるドアホン装置のドアホン子機のブロック構成図、図3は本発明の実施の形態1におけるドアホン装置のドアホン親機のブロック構成図である。
【0026】
図1(a)において、1は実施の形態1のドアホン装置のドアホン子機、2はドアホン子機1本体正面に設けられたCCD等のカメラ、3は後述するドアホン親機6から入力された音声を出力するためのドアホン子機1本体に設けられたスピーカ、4はドアホン子機1に音声を入力するためのマイク、5は来訪者がドアホン親機6の呼び出し行う操作ボタンである。12はドアホン子機1前に人物等が接近あるいは側を通過するときその体温等の温度でこれを検出する感知センサである。
【0027】
図1(b)はドアホン親機の正面外観を示しており、6はドアホン子機1のカメラ2が撮影した来訪者の顔等の映像を受信するとともに、ドアホン子機1のマイク4から入力された音声を受信して、人物認証を行うことができるドアホン親機である。実施の形態1のドアホン親機6は、来訪者の顔等の画像から人物認証を行うと同時に、特定の人物であると認証されると宅内のテレビジョンやエアコン、照明器具等の電気機器を自動的にONし、あるいは点灯させ、また制御することができる。また、7はドアホン親機6の正面に設けられたLCD等の表示部である。表示部7は透明なタッチパネル(図示しない)で覆われ、表示部7の表示画面上でタッチすると、タッチパネルの座標が検出されて、この座標若しくはこれを含む領域の表示に対応した機能が実現できる。」(段落【0025】ないし【0027】)

(オ)「【0036】
実施の形態1のドアホン親機6においては、まず、訪問した人物の顔等の映像を表示部7に表示するとともに、この人物の画像認証(画像による照合)を行う。なお、画像を比較して同一人物か否かを判定若しくは推定するという意味であるから、本来、照合というべきであるが、照合後に宅内への侵入を許可するという意味を込めて以下、実施の形態上は認証という。このため次の構成を有している。
【0037】
37は、A/D変換部31から出力されたビデオ信号を基に1画面分の画像を取り出して個人別に蓄積されている多数の取得済み画像情報と比較し、人物推定を行う画像認証部である。そして、38は画像認証部37で行う認証のために過去の来訪者や家族等で個人別に蓄積した取得済み画像のデータと、その個人情報を蓄積したデータベース部である。データベース部38に格納されている取得済み画像は、氏名等の個人情報とともに、撮影したカメラ2のズーム等のカメラ条件、明るさ等の環境条件、また画像のサイズや付属物、例えば眼鏡の有無等の対象データ情報が、画像と関係付けられて格納されている。
【0038】
画像認証部37は、これらの条件と現在の画像の条件を比較してマッチングさせ、眼や鼻、口の位置や形状、骨格等の所定の位置の特徴点を抽出して、両者の特徴空間上での距離を測って、所定の範囲内であれば同一人であると推定する。格納してある取得済み画像の特徴点をパラメータとして予めデータ保存しておくのが好適である。この場合、画像認証部37は映像から画像を取り出し、所定の部分を切り出して、保存してある取得済み画像のデータとのマッチングを行い、パラメータを比較するだけで同一人か否かの推定ができる。このため多人数との比較が直ちに行える。なお、後述するように、データベース部38に格納されている取得済み画像は、入力キーボード11の中の更新キーを押下することで、簡単に更新することができる。また、画像認証の特徴点を比較して認証する方法は、人間の静脈や、眼を利用したりする多くの方法があり、これらを利用するのもよい。」(段落【0036】ないし【0038】)

(カ)「【0039】
次に、図3において、39はドアホン親機6の主制御部である。主制御部39はハードウェア的にはCPUから構成され、後述する記憶部47やその他のメモリからプログラムを読み込んでソフトウェア的に機能実現手段として各機能を実行する。実施の形態1の機能実現手段の各機能については後述する。
【0040】
40は第1信号線28と接続された音声処理部、41はタッチパネル制御部、42は表示部7の表面を覆う透明なタッチパネルである。表示部7の表示画面上でタッチすると、タッチパネル制御部41によってタッチパネル42の座標が検出されて、この座標若しくはこれを含む所定の領域(表示のシンボル)に対応して入力があったことが主制御部39に入力され、この座標若しくはこれを含む所定の領域に対応した所定の機能が実行されるものである。以下、この表示をアクティブな表示という。
【0041】
43,44はスピーカ8とマイク9のそれぞれのアンプである。音声処理部40は音声のとぎれ等を検出し、ドアホン親機6とドアホン子機1との間の通話の切り替えなど音声通信の制御を行う。また、45は入力キーボード11の操作ボタンを使って入力する入力部、46は応答スイッチ10を押してドアホン子機1との間で通信を開始する応答スイッチ部である。そして、47は主制御部39のためのプログラムやデータを記憶した記憶部であり、47aは電気機器制御手段が各電気機器のソフトスイッチをON/OFFする制御情報や運転のための設定を格納した制御機器情報部である。48は履歴を残すための時計部である。52はドアホン親機6の主制御部39から各電気機器へ制御信号を送信するための制御機器I/Oポート、53は各電気機器へ制御信号を出力するためにそれぞれ信号線を接続する接続端子である。」(段落【0039】ないし【0041】)

(キ)「【0045】
39eは特定の人物であると認証されたときに宅内の所定の部屋のテレビジョンのスイッチをONにするテレビ制御手段、39fは同様にエアコンのスイッチをONにして温度やその他の設定に従って動作させるエアコン制御手段、39gも同様に認証された人物に対してだけ所定の部屋の照明を点灯させる照明制御手段である。そのほか、ソフトスイッチで動作可能な他の電気機器を動作させたり、運転させたりする機能実現手段としての電気機器制御手段を主制御部39内に搭載することができる。テレビ制御手段39e、エアコン制御手段39f、照明制御手段39g等の電気機器制御手段は、それぞれの電気機器のスイッチをONにする命令と、設定条件に従って運転させることができる。さらに、39hは特定の人物であると認証されたときに設定にしたがって各電気機器の制御を命じる特定人制御実行手段である。」(段落【0045】)

(ク)「【0054】
また、画像認証部37は画像認証を行うが、家族や家族同様の人間が来訪したような場合は、特定人制御実行手段39hがこれらの人間についてはその設定に従って、テレビ制御手段39e、エアコン制御手段39f、照明制御手段39g等の各制御手段を機能させて制御を実行する。ドアホン子機1で画像認証するだけで自動的にテレビジョンやエアコンが運転を開始し、照明が点灯することになる。図7は、このような人物Aが帰宅したときにドアホン親機6に表示される標準的な画面表示を示している。図7において、7lはこの標準的な画面表示、7mは人物Aに対して設定されている人物別の電気機器の制御状態一覧表示である。
【0055】
なお、60はドアホン親機6によって操作、管理されるテレビジョン、61は同様にドアホン親機6によって操作、管理される照明器具である。ドアホン親機6によって制御する電気機器の数が増加したときには接続端子53の数が増え、配線が煩雑で、物理的に設置が難しくなったときは、無線通信I/F部(図示しない)を設けて無線LANを構成して制御するのがよい。
【0056】
このように本発明の実施の形態1のドアホン装置においては、来訪者があったときこの来訪者を画像認証で特定するとともに、氏名や企業名、電話番号等のほか、訪問履歴情報などの関連情報をドアホン親機に表示するので、この表示を見てトラブルを未然に防いだり、また、来訪者に実際に面会する前にこの来訪者の有力情報を予め入手することができたりするので、来訪者の応対が容易で迅速に行える。
【0057】
さらにドアホン子機の操作をした人物を自動的に認証して、特定の人物に対して宅内の所定の電気機器を動作させ、また制御することができる。また、家庭内の電気機器の操作/管理装置としての機能をドアホン装置のドアホン親機に持たせたため、ドアホン親機から宅内の電気機器を操作、管理することができ、ドアホン装置の人物認証機能と家庭内の電気機器管理が融合した新しいシステムが可能になる。」(段落【0054】ないし【0057】)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(ク)並びに図面の記載からみて、次のことが分かる。

(ケ)上記(1)の(ア)及び(ウ)ないし(ク)並びに図1、3及び7からみて、ドアホン装置は、画像認証部37及びデータベース部38からなる画像認証に係る部分を備えていることが分かる。
また、「画像認証部37は画像認証を行うが、家族や家族同様の人間が来訪したような場合は、特定人制御実行手段39hがこれらの人間についてはその設定に従って、テレビ制御手段39e、エアコン制御手段39f、照明制御手段39g等の各制御手段を機能させて制御を実行する」(上記(ク)段落【0054】参照。)こと、及び「特定の人物に対して宅内の所定の電気機器を動作させ」(上記(ク)段落【0057】参照。)ることから、上記の画像認証部37及びデータベース部38を備えたドアホン装置は、複数の特定の人物の顔等の画像を記憶するとともに当該複数の特定の人物を「グループ別」に記憶し、帰宅時に用いられテレビジョン、エアコン及び照明器具等の電気機器の制御内容を前記「グループ別」に規定しているといえる。

(コ)上記(1)の(ア)、(ウ)ないし(ク)及び上記(ケ)並びに図1、3及び7からみて、画像認証部37及びデータベース部38は、来訪者が特定の人物であると判断すると、前記特定の人物の「グループ別」に対して規定された制御内容にしたがって、テレビジョン、エアコン及び照明器具等の電気機器の動作を制御するものといえる。

(3)上記(1)及び上記(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されているものと認められる。

「画像認証部37及びデータベース部38を備えたドアホン装置において、複数の特定の人物の顔等の画像を記憶するとともに当該複数の特定の人物をグループ別に記憶し、帰宅時に用いられ複数の電気機器の制御内容を前記グループ別に規定し、来訪者が前記特定の人物であると画像認証部37及びデータベース部38で判断されると、前記画像認証部37及びデータベース部38で判断された前記特定の人物が属する前記グループに対して規定された前記制御内容にしたがって、前記電気機器の動作を制御する技術。」


3.対比
本件発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「扉C」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件発明における「玄関扉」に相当し、以下同様に、「制御部15」は「制御装置」に、「通行人B」は「対象人物」に、「顔認証センサ4、撮像装置3及び記憶装置6等からなる認証装置」は「認証装置」に、「住宅にある信号網」は「宅内通信網」に、「撮像装置3」は「撮影手段」に、「出入りを許可された人」は「登録人物」に、「顔画像」は「顔情報」に、「出入りを許可された人の登録顔画像」は「登録人物の顔情報」に、「顔認証センサ4の記憶機能要素」は「顔情報記憶手段」に、「通行人Bの抽出顔画像」は「対象人物の顔情報」に、「顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素」は「認証手段」に、「応答器2」は「情報媒体」に、「受信したID」は「識別情報」に、「質問器1」は「読み取り手段」に、「登録されたID」は「登録情報」に、「顔認証センサ4の記憶機能要素」は「識別情報記憶手段」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「警報システム」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件発明における「住宅設備監視制御システム」に包含される。
さらに、引用文献1記載の発明における「通行人Bの抽出顔画像が前記顔認証センサ4の記憶機能要素に記憶されている出入りを許可された人の登録顔画像と一致した場合、その後、比較対象を前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた登録されたIDに絞り込んだ状態で、受信したIDを、前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと比較し、前記受信したIDが、前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと一致する場合に、前記通行人Bが前記出入りを許可された人であると判断し、前記受信したIDが、前記通行人Bの抽出顔画像に一致した前記出入りを許可された人の登録顔画像に対応付けられた前記登録されたIDと一致しない場合、前記通行人Bが前記出入りを許可された人ではないと判断する」は、
「識別情報及び対象人物の顔情報の一方が識別情報記憶手段及び顔情報記憶手段の一方に記憶されている登録情報及び登録人物の顔情報の一方と一致した場合、その後、比較対象を前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方に絞り込んだ状態で、前記識別情報及び対象人物の顔情報の他方を、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と比較し、前記登録情報及び対象人物の顔情報の他方が、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と一致する場合に、前記対象人物が前記登録人物であると判断し、前記識別情報及び対象人物の顔情報の他方が、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と一致しない場合、前記対象人物が前記登録人物ではないと判断する」という限りにおいて、
本件発明における「読み取り手段で読み取られた識別情報が識別情報記憶手段に記憶されている登録情報と一致した場合、その後、比較対象を前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた登録人物の顔情報に絞り込んだ状態で、前記対象人物の顔情報を、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と比較し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致する場合に、前記対象人物が前記登録人物であると判断し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致しない場合、前記対象人物が前記登録人物ではないと判断する」に相当する。

したがって、本件発明と引用文献1記載の発明は、次の<一致点>及で一致し、<相違点1>及び<相違点2>で相違する。

<一致点>
「住宅の玄関扉の施錠及び解錠を行う電気錠を含む複数の電気機器と、前記複数の電気機器を制御する制御装置と、前記玄関扉の屋外側にいる対象人物を認証する認証装置と、前記電気錠、前記制御装置及び前記認証装置が接続される宅内通信網とを備える住宅設備監視制御システムであって、
前記認証装置は、
前記対象人物の顔を撮影する撮影手段と、
複数の登録人物の顔情報を記憶する顔情報記憶手段と、
前記撮影手段で撮影された画像に含まれる前記対象人物の顔情報が前記顔情報記憶手段に記憶されている前記複数の登録人物の顔情報の何れかと一致した場合に、前記対象人物が当該登録人物であると判断する認証手段と、
前記顔情報とは別に前記対象人物を識別するための情報であって前記対象人物に対応付けて情報媒体に記憶されている識別情報を読み取る読み取り手段と、
前記登録人物ごとに対応付けた識別情報を登録情報として記憶する識別情報記憶手段とを有し、
前記制御装置は、前記対象人物が前記登録人物であると前記認証手段で判断されると、前記玄関扉を解錠するように前記電気錠を制御し、
前記認証手段は、識別情報及び対象人物の顔情報の一方が識別情報記憶手段及び顔情報記憶手段の一方に記憶されている登録情報及び登録人物の顔情報の一方と一致した場合、その後、比較対象を前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方に絞り込んだ状態で、前記識別情報及び対象人物の顔情報の他方を、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と比較し、前記登録情報及び対象人物の顔情報の他方が、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と一致する場合に、前記対象人物が前記登録人物であると判断し、前記識別情報及び対象人物の顔情報の他方が、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と一致しない場合、前記対象人物が前記登録人物ではないと判断する
住宅設備監視制御システム。」

<相違点1>
登録人物の顔情報の記憶形態及び電気機器の動作制御に関し、
本件発明においては、「複数の登録人物の顔情報を記憶するとともに当該複数の登録人物をグループ別に記憶」し、「帰宅時に用いられ電気錠を含む2以上の電気機器の制御内容を前記グループ別に規定し、対象人物が前記登録人物であると認証手段で判断されると、前記認証手段で判断された前記登録人物が属する前記グループに対して規定された前記制御内容にしたがって、」「前記2以上の電気機器のうち電気錠を除く残りの電気機器の動作を制御」するのに対し、
引用文献1記載の発明においては、「複数の出入りを許可された人(登録人物)の登録顔画像(顔情報)を記憶」し、「通行人B(対象人物)が出入りを許可された人(登録人物)であると顔認証センサ4及び制御部15からなる認証機能要素(認証手段)で判断される」が、「複数の登録人物をグループ別に記憶」しているか不明であり、「帰宅時に用いられ電気錠を含む2以上の電気機器の制御内容を前記グループ別に規定し、前記対象人物が前記登録人物であると認証手段で判断されると、前記認証手段で判断された前記登録人物が属する前記グループに対して規定された前記制御内容にしたがって、」「前記2以上の電気機器のうち電気錠を除く残りの電気機器の動作を制御」しているか不明である点(以下、「相違点1」という。なお、( )内に、本件発明において相当する発明特定事項を示す。)。

<相違点2>
認証手段の認証処理に関し、
本件発明においては、「読み取り手段で読み取られた識別情報が識別情報記憶手段に記憶されている登録情報と一致した場合、その後、比較対象を前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた登録人物の顔情報に絞り込んだ状態で、対象人物の顔情報を、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と比較し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致する場合に、前記対象人物が前記登録人物であると判断し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致しない場合、前記対象人物が前記登録人物ではないと判断する」のに対し、
引用文献1記載の発明においては、「通行人B(対象人物)の抽出顔画像(顔情報)が顔認証センサ4の記憶機能要素(顔情報記憶手段)に記憶されている出入りを許可された人(登録人物)の登録顔画像(顔情報)と一致した場合、その後、比較対象を前記通行人B(対象人物)の抽出顔画像(顔情報)に一致した前記出入りを許可された人(登録人物)の登録顔画像(顔情報)に対応付けられた登録されたID(登録情報)に絞り込んだ状態で、受信したID(識別情報)を、前記通行人B(対象人物)の抽出顔画像(顔情報)に一致した前記出入りを許可された人(登録人物)の登録顔画像(顔情報)に対応付けられた前記登録されたID(登録情報)と比較し、前記受信したID(識別情報)が、前記通行人B(対象人物)の抽出顔画像(顔情報)に一致した前記出入りを許可された人(登録人物)の登録顔画像(顔情報)に対応付けられた前記登録されたID(登録情報)と一致する場合に、前記前記通行人B(対象人物)が前記出入りを許可された人(登録人物)であると判断し、前記受信したID(識別情報)が、前記通行人B(対象人物)の抽出顔画像(顔情報)に一致した前記出入りを許可された人(登録人物)の登録顔画像(顔情報)に対応付けられた前記登録されたID(登録情報)と一致しない場合、前記通行人B(対象人物)が前記出入りを許可された人(登録人物)ではないと判断する」点(以下、「相違点2」という。なお、( )内に、本件発明において相当する発明特定事項を示す。)。


4.当審の判断
上記各相違点について以下に検討する。
(1)相違点1について
(ア)本件発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、引用文献2記載の技術における「画像認証部37及びデータベース部38」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件発明における「認証手段」に相当し、以下同様に、「特定の人物」は「登録人物」に、「顔等の画像」は「顔情報」に、「来訪者」は「対象人物」に、それぞれ相当する。
また、引用文献2記載の技術における「ドアホン装置」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、本件発明における「住宅設備監視制御システム」に包含される。
さらに、引用文献2記載の技術における「複数の電気機器」は、「2以上の電気機器」という限りにおいて、「電気錠を含む2以上の電気機器」に相当し、以下同様に、
「電気機器」は、「電気機器」という限りにおいて、「2以上の電気機器のうち電気錠を除く残りの電気機器」に、相当する。

(イ)したがって、引用文献2記載の技術を本件発明における用語及び上位概念となる用語を用いて記載すると、
「認証手段を備えた住宅設備監視制御システムにおいて、複数の登録人物の顔情報を記憶するとともに当該複数の登録人物をグループ別に記憶し、帰宅時に用いられ2以上の電気機器の制御内容を前記グループ別に規定し、対象人物が前記登録人物であると認証手段で判断されると、前記認証手段で判断された前記登録人物が属する前記グループに対して規定された前記制御内容にしたがって、前記電気機器の動作を制御する技術。」
となる。

(ウ)また、引用文献1記載の発明と引用文献2記載の技術とは、「住宅設備監視制御システム」という技術分野が共通し、さらに、複数の登録人物の情報を記憶し、対象人物が前記登録人物であると認証手段で判断されると、電気機器の動作を制御する点でも共通する。このような点は、「住宅設備監視制御システム」における利便性を向上させるものであり、このような「住宅設備監視制御システム」における利便性の向上は従来からの普遍的な課題でもある。

(エ)そうすると、引用文献1記載の発明において、利便性の向上のため、電気機器の動作の制御について、引用文献2記載の技術を適用して、上記相違点1に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
(ア)認証手段の認証処理について、本件発明と引用文献1記載の発明とは、
「識別情報及び対象人物の顔情報の一方が識別情報記憶手段及び顔情報記憶手段の一方に記憶されている登録情報及び登録人物の顔情報の一方と一致した場合、その後、比較対象を前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方に絞り込んだ状態で、前記識別情報及び対象人物の顔情報の他方を、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と比較し、前記登録情報及び対象人物の顔情報の他方が、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と一致する場合に、前記対象人物が前記登録人物であると判断し、前記識別情報及び対象人物の顔情報の他方が、前記識別情報及び対象人物の顔情報の一方に一致した前記登録情報及び登録人物の顔情報の一方に対応付けられた前記登録情報及び登録人物の顔情報の他方と一致しない場合、前記対象人物が前記登録人物ではないと判断する」点において共通する。
一方、相違点2を、簡明に換言すると、本件発明においては、読み取られた識別情報を登録されている複数の登録情報と比較して該当する登録情報を見つけて絞り込み、当該登録情報に対応付けられた登録人物の顔情報と対象人物の顔情報を比較して判断するのに対し、引用文献1記載の発明においては、対象人物の顔情報を、登録されている複数の登録人物の顔情報と比較して該当する登録人物の顔情報を見つけて絞り込み、当該登録人物の顔情報に対応付けられた登録情報と識別情報を比較して判断する、ということである。

(イ)ところで、認証手段を備えた住宅設備監視制御システムにおける認証処理において、利便性の向上のため、識別情報が記憶手段に記憶されている登録情報と一致した場合、その後、比較対象を前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた登録人物の顔情報に絞り込んだ状態で、対象人物の顔情報を、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と比較し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致する場合に、前記対象人物が前記登録人物であると判断し、前記対象人物の顔情報が、前記識別情報に一致した前記登録情報に対応付けられた前記登録人物の顔情報と一致しない場合、前記対象人物が前記登録人物ではないと判断する、換言すると、識別情報を登録されている複数の登録情報と比較して該当する登録情報を見つけて絞り込み、当該登録情報に対応付けられた登録人物の顔情報と対象人物の顔情報を比較して判断することは、周知の技術(以下、「周知技術」という。例えば、特開2003-141542号公報の特に、段落【0001】、【0007】及び【0028】ないし【0033】並びに図7及び8、特開2005-292994号公報の特に、段落【0001】、【0006】及び【0060】ないし【0069】並びに図1及び4参照。)である。

(ウ)そうすると、引用文献1記載の発明において、利便性の向上のため、上記周知技術を採用し、当該相違点2に係る本件発明の発明特定事項とすることは当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。

そして、本件発明を全体として検討しても、本件発明の奏する効果は引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。


5.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用文献1記載の発明、引用文献2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-07 
結審通知日 2014-02-12 
審決日 2014-02-26 
出願番号 特願2008-107473(P2008-107473)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤間 充  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 柳田 利夫
藤原 直欣
発明の名称 住宅設備監視制御システム  
代理人 西川 惠清  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 坂口 武  
代理人 北出 英敏  

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