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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A62B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A62B |
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管理番号 | 1286820 |
審判番号 | 不服2013-6161 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-04 |
確定日 | 2014-04-09 |
事件の表示 | 特願2010-514898「ハーネスを有するレスピレーター、並びにその作製及びフィッティング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月31日国際公開、WO2009/002608、平成22年 9月30日国内公表、特表2010-531710〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2008年5月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2007年6月28日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年12月25日付けで特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成22年2月1日付けで特許法第184条の4第1項に規定する明細書、請求の範囲及び要約書の翻訳文が提出され、平成23年4月25日付けで手続補正書が提出された後、平成24年7月5日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成24年11月9日付けで意見書が提出されたが、平成24年11月28日付けで拒絶査定がなされ、平成25年4月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに、当審において平成25年5月16日付けで書面による審尋がなされ、平成25年9月18日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成25年4月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成25年4月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 (1)本件補正の内容 平成25年4月4日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち、平成23年4月25日付けの手続補正書により補正された)請求項1の記載の下記(ア)を、下記(イ)へと補正するものである。 (ア)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 (a)マスク本体と、 (b)前記マスク本体に取り付けられたハーネスと、を有するレスピレーターであって、前記ハーネスは、 (i)前記マスク本体の第1の側面に配置された第1の締結ストラップ固定機構と、 (ii)前記第1の側面に対向する、前記マスク本体の第2の側面に配置された第2の締結ストラップ固定機構と、 (iii)2つの末端部分と、該末端部分の間のループ部分とを有する締結ストラップであって、2つの末端部分が前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の1つに取り付けられる、締結ストラップと、を含み、 (iv)前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の他方によって、レスピレーターを着用するときに、締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せてその上に保持できるようにし、締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せることによってそこから手で取り外せるようにした、レスピレーター。」 (イ)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 (a)マスク本体と、 (b)前記マスク本体に取り付けられたハーネスと、を有するレスピレーターであって、前記ハーネスは、 (i)前記マスク本体の第1の側面に配置された第1の締結ストラップ固定機構と、 (ii)前記第1の側面に対向する、前記マスク本体の第2の側面に配置された第2の締結ストラップ固定機構と、 (iii)2つの末端部分と、該末端部分の間のループ部分とを有する締結ストラップであって、2つの末端部分が前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の一方に取り付けられる、締結ストラップと、を含み、 (iv)前記締結ストラップが取り付けられていない、前記第1又は第2の締結ストラップ固定機構によって、レスピレーターを着用するときに、締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せてその上に保持できるようにし、締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せることによってそこから手で取り外せるようにし、 前記末端部分は、前記第1又は前記第2の締結ストラップ固定機構の前記一方に摩擦で保持されており、且つ、前記締結ストラップの長さを増分調整できるように前記第1又は前記第2の締結ストラップ固定機構の前記一方に対して移動可能である、レスピレーター。」(なお、下線は、審判請求人が補正箇所を明示するために付したものである。) (2)本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された締結ストラップの「末端部分」に関し、第1又は第2の締結ストラップ固定機構の一方に摩擦で保持されており、且つ、締結ストラップの長さを増分調整できるように第1又は第2の締結ストラップ固定機構の一方に対して移動可能である旨を限定することを含むものである。 したがって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2.本件補正の適否についての判断 本件補正における特許請求の範囲の補正は、前述したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 2.-1 引用文献 (1)引用文献の記載 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表昭62-500144号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。 (ア)「本発明は使い捨て呼吸器用の吊り具組立体に関し、特に呼吸器の吊り具ストラツプを使用者の頭越しに通すことなく呼吸器の装着を可能とし、かつ使用中十分な緊張を付与し、かつ使用者の顔と接している呼吸器の全体部分にわたり圧力を均等に分配するよう簡単に調整できる呼吸器の吊り具組立体に関する。」(第2ページ左上欄第4行ないし第9行) (イ)「図面を参照すれば、図示のように呼吸器10は、丸形のコツプ状である、軽量で、多孔性の織布から構成された使い捨ての、ダスト/霧およびダスト/霧/ガス用呼吸器を示す。呼吸器は、抑制せず隔置された状態で鼻、口およびあごに適合するに十分な大きさであり、かつ呼吸すると空気の概ね全てが多孔性の織布構造体を出入るように、軽く境界部で適合する形状としうる。希望に応じて、呼吸器が着装者の鼻の上に適合しやすくするために呼吸器の上部中央周縁部に薄い積重ね可能帯片11を設けることができる。 呼吸器10には、軽量の弾性ループ15と、呼吸器の一方の側縁部に沿つて位置した弾性のループサポート手段20および呼吸器の反対側の側縁部に沿つて位置した滑り止め手段30とを含む吊り具組立体が設けられている。 第2図から最も明瞭に判るように、弾性ループ15は連続した弾性ループであつて、該ループは、弾性ループサポート手段20において約1.75インチ(4.5センチ)隔置された開口22および23を通れている。弾性ループ15は、当該分野では周知の市販されてる合成弾性材、天然ゴムあるいは縁どり弾性織布のいずれかから構成してよい。幅が0.25インチ(0.63センチ)で厚さが500ミクロン(μm)の弾性高分子材料から形成された弾性ループ15が本発明による吊り具組立体において満足に機能した。図示のように、弾性ループサポート手段20は、呼吸器の成形過程の間に呼吸器の延長部分として都合よく形成され、寸法が約0.5インチ×2.5インチ(1.3センチ×6.3センチ)である長方形のタブ21を含む。弾性ループ15は、希望に応じて、図示のように開口22、23を通す代りに、タブ21あるいは呼吸器本体に、ホツチキス止め、溶接あるいは他の方法で取り付ければよく、かつその他の取付手段も考えられる。弾性ループ15が呼吸器の本体あるいは呼吸器自体に直接取り付けられると、弾性ループサポート手段15は呼吸器の本体への弾性ループ15の取付け点を含むことになる。弾性ループ15の弾性の度合いによつてその長さが決まる。前述した弾性の高分子材料に対しては、約25インチ(63センチ)の長さであれば、使用者の顔へ呼吸器を軽く装着させることが判明している。 第2図に示す実施例における滑り止め手段30も、呼吸器の成形過程の間に形成される長方形のタブ31である。前記タブ31の端部近くのC字形切欠きが滑り止め手段30においてアーム32,33を形成する。第2図から明らかに判るように、アーム32,33は、ループサポート手段20の開口22,23の間隔に対応するよう隔置している。」(第2ページ右下欄第8行ないし第3ページ右上欄第4行) (ウ)「本発明による吊り具組立体は作業者が安全硬質ハツトを着装している間でさえ呼吸器を極めて簡単に装着できるようにする。図示の実施例において、作業者は左手で呼吸器10を顔に当て、右手で概ね中間点で自在に懸吊したループ15を掴み、同時に頭の後ろの周りにループを通しながら右側アームを頭の上に上げ、弾性ループ15の自由端を滑り止め手段30あるいは40上に位置させる。呼吸器10の取外しは右手で、滑り止め手段30または40のすぐ上あるいは下の個所で弾性ループ15を単に掴み、滑り止め手段から弾性ループを外し、その後左手で呼吸器を軽く支持しながらループを解放することにより行われる。 呼吸器の吊り具組立体を、丸形のコツプ状の使い捨て呼吸器に関して説明してきたが、この吊り具組立体は、例えば平坦に折りたたむ呼吸器、軽量のダストマスク、透明なルームマスク、外科用マスク等その他のマスクや呼吸器に対しても使用でき、そのような用途も計画されることが直ちに明らかとなる。また、呼吸器吊り具組立体は呼吸器のいずれかの縁部に位置させ、本明細書で説明しかつ図示した呼吸器吊り具と機能的に均等であることも明らかである。また、本明細書に記載の図示実施例のその他の変更および修正は本発明の精神と範囲から逸脱することなく、当該分野の専門家には明らかとなることも理解される。」(第3ページ右下欄第11行ないし第4ページ左上欄第9行) (2)引用文献記載の事項 上記(1)(ア)ないし(ウ)並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、引用文献には次の事項が記載されていることが分かる。 (エ)上記(1)(ア)ないし(ウ)並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、引用文献には、呼吸器10と、呼吸器10に設けられた吊り具組立体と、を有する使い捨て呼吸器が記載されていることが分かる。 (オ)上記(1)(イ)並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、引用文献に記載された使い捨て呼吸器において、前記吊り具組立体は、前記呼吸器10の一方の側縁部に沿って位置するループサポート手段20と、呼吸器10の反対側の側縁部に沿って位置する滑り止め手段30と、ループを有する弾性ループ15であって、開口22および23を通すことで弾性ループサポート手段20に取り付けられた弾性ループと、を含むものであることが分かる。 (カ)上記(1)(ウ)並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、引用文献に記載された使い捨て呼吸器において、滑り止め手段30によって、使い捨て呼吸器を装着するときに、弾性ループ15の自由端を滑り止め手段30上に位置させられ、滑り止め手段30のすぐ上あるいは下の個所で弾性ループを単に掴むことによって手で取り外すことができるものであることが分かる。 (キ)上記(1)(ウ)の記載から、引用文献に記載された使い捨て呼吸器は、ダストマスクとして使用可能であることが分かる。 (3)引用文献記載の発明 上記(1)及び(2)並びにFIG.1及びFIG.2の記載から、引用文献には、次の発明(以下、「引用文献記載の発明」という。)が記載されているといえる。 「呼吸器10と、 呼吸器10に設けられた吊り具組立体と、を有するダストマスクとして使用可能な使い捨て呼吸器であって、 前記吊り具組立体は、 前記呼吸器10の一方の側縁部に沿って位置するループサポート手段20と、 前記呼吸器10の反対側の側縁部に沿って位置する滑り止め手段30と、 ループを有する弾性ループ15であって、開口22および23を通すことで弾性ループサポート手段20に取り付けられた弾性ループ15と、を含み、 前記滑り止め手段30によって、使い捨て呼吸器を装着するときに、弾性ループ15の自由端を滑り止め手段30上に位置させられ、滑り止め手段30のすぐ上あるいは下の個所で弾性ループを単に掴むことによって手で取り外すことができるダストマスクとして使用可能な使い捨て呼吸器。」 2.-2 対比 本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「呼吸器10」は、その構成、機能及び技術的意義からみて、本願補正発明における「マスク本体」に相当し、以下同様に、「吊り具組立体」は「ハーネス」に、「ダストマスクとして使用可能な使い捨て呼吸器」は「レスピレーター」に、「ループサポート手段20」は「第1の締結ストラップ固定機構」に、「滑り止め手段30」は「第2の締結ストラップ固定機構」に、それぞれ相当する。 さらに、引用文献記載の発明において「ループサポート手段20」が「前記呼吸器10の一方の側縁部に沿って位置する」ことは、その構成からみて、本願補正発明において「第1の締結ストラップ固定機構」が「前記マスク本体の第1の側面に配置され」ることに相当し、同様に、「滑り止め手段30」が「前記呼吸器10の反対側の側縁部に沿って位置する」ことは、「第2の締結ストラップ固定機構」が「前記第1の側面に対向する、前記マスク本体の第2の側面に配置され」ることに相当する。 また、引用文献記載の発明における「ループ」及び「弾性ループ15の自由端」は、その構成からみて本願補正発明における「ループ部分」に相当するから、「ループ部分を有する締結ストラップであって、一部が前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の一方に取り付けられる締結ストラップ」という限りにおいて、引用文献記載の発明における「ループを有する弾性ループ15であって、開口22および23を通すことで弾性ループサポート手段20に取り付けられた弾性ループ15」は、本願補正発明における「2つの末端部分と、該末端部分の間のループ部分とを有する締結ストラップであって、2つの末端部分が前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の一方に取り付けられる、締結ストラップ」に相当する。 そして、引用文献記載の発明において「滑り止め手段30によって、使い捨て呼吸器を装着するとき」に、「滑り止め手段30」は「ループサポート手段20」と「滑り止め手段30」のうち弾性ループ15が取り付けられていない側であるといえるから、引用文献記載の発明において「前記滑り止め手段30によって、使い捨て呼吸器を装着するときに、弾性ループ15の自由端を滑り止め手段30上に位置させられ」ることは、本願補正発明において「前記締結ストラップが取り付けられていない、前記第1又は第2の締結ストラップ固定機構によって、レスピレーターを着用するときに、締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せてその上に保持でき」ることに相当する。 また、引用文献記載の発明において、弾性ループを滑り止め手段30から取り外すときに、「弾性ループを単に掴む」ことにより、弾性ループを滑り止め手段の上に引き寄せることになるから、引用文献記載の発明において「滑り止め手段30のすぐ上あるいは下の個所で弾性ループを単に掴むことによって手で取り外すことができる」ことは、本願補正発明において「締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せることによってそこから手で取り外せる」ことに相当する。 したがって、本願補正発明と引用文献記載の発明は、 「 マスク本体と、 前記マスク本体に取り付けられたハーネスと、を有するレスピレーターであって、前記ハーネスは、 前記マスク本体の第1の側面に配置された第1の締結ストラップ固定機構と、 前記第1の側面に対向する、前記マスク本体の第2の側面に配置された第2の締結ストラップ固定機構と、 ループ部分を有する締結ストラップであって、一部が前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の一方に取り付けられる締結ストラップと、を含み、 前記締結ストラップが取り付けられていない、前記第1又は第2の締結ストラップ固定機構によって、レスピレーターを着用するときに、締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せてその上に保持できるようにし、締結ストラップのループ部分をその上に引き寄せることによってそこから手で取り外せるようにしたレスピレーター。」 である点で一致し、次の点において相違する。 〈相違点〉 (a)「ループ部分を有する締結ストラップであって、一部が前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の一方に取り付けられる締結ストラップ」に関し、本願補正発明においては、「2つの末端部分と、該末端部分の間のループ部分とを有する締結ストラップであって、2つの末端部分が前記第1及び第2の締結ストラップ固定機構の一方に取り付けられる、締結ストラップ」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、「ループを有する弾性ループ15であって、開口22および23を通すことで弾性ループサポート手段20に取り付けられた弾性ループ15」であって、弾性ループ15が2つの末端部分を有さず、弾性ループサポート手段20への弾性ループ15の取り付け部位が、弾性ループ15の該2つの末端部分でない点(以下、「相違点1」という。)。 (b)本願補正発明においては、「前記末端部分は、前記第1又は前記第2の締結ストラップ固定機構の前記一方に摩擦で保持されており、且つ、前記締結ストラップの長さを増分調整できるように前記第1又は前記第2の締結ストラップ固定機構の前記一方に対して移動可能である」のに対し、引用文献記載の発明においては、弾性ループ15が開口22および23を通すことで弾性ループサポート手段20に取り付けられ、弾性ループ15の長さを増分調整できるようにはなっていない点(以下、「相違点2」という。)。 2.-3 判断 まず、上記相違点1について検討する。 マスクの締紐として、末端部分を有する締紐を用い、該末端部分をマスク本体の側面に配置された締紐取付装置に取り付けることは、周知技術(以下、「周知技術1」という。例えば、実願昭63-89064号(実開平2-10864号)のマイクロフィルムの第1図、及び実用新案登録第3117487号公報の図5等参照。)である。 そして、引用文献記載の発明において、弾性ループサポート手段20に弾性ループ15を取り付けるにあたり、上記周知技術1を採用して、弾性ループ15を2つの末端部分を設けた締結ストラップとし、該2つの末端部分を弾性ループサポート手段20に取付けられるようにすることは、単なる設計変更というべきことである。 したがって、引用文献記載の発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 次に、上記相違点2について検討する。 マスクにおいて、締紐の端部を固定機構に摩擦で保持し、かつ、締紐の長さを増分調整できるように固定機構に対して移動可能とすることは、周知技術(以下、「周知技術2」という。例えば、実願昭63-89064号(実開平2-10864号)のマイクロフィルムの第1図、及び実用新案登録第3117487号公報の図4等参照。)である。 そして、引用文献記載の発明において、弾性ループサポート手段20に弾性ループ15を取り付けるにあたり、上記周知技術2を採用することは、単なる設計変更というべきことである。 したがって、引用文献記載の発明において、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別の効果を奏すると認めることはできない。 以上により、本願補正発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 前記のとおり、平成25年4月4日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成23年4月25日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲及び平成22年2月1日付けで提出された明細書の翻訳文並びに国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであり、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記(第2.の[理由]1.(1)(ア)【請求項1】)のとおりのものである。 2.引用文献 本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特表昭62-500144号公報)記載の発明は、前記第2.の[理由]2.-1に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記第2.の[理由]1.(1)及び(2)で検討したように、実質的に、本願補正発明における発明特定事項の一部の構成を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、前記第2.の[理由]2.-1ないし2.-3に記載したとおり、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-11-08 |
結審通知日 | 2013-11-12 |
審決日 | 2013-11-25 |
出願番号 | 特願2010-514898(P2010-514898) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A62B)
P 1 8・ 121- Z (A62B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山村 秀政 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
藤原 直欣 金澤 俊郎 |
発明の名称 | ハーネスを有するレスピレーター、並びにその作製及びフィッティング方法 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 山崎 宏 |
代理人 | 大畠 康 |