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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05B
管理番号 1286832
審判番号 不服2013-18551  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-09-25 
確定日 2014-04-10 
事件の表示 特願2011-168333「水処理プラントの運転支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月12日出願公開、特開2012- 9043〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成18年8月30日に出願された特願2006-233867号の一部を、同23年8月1日に分割して新たな特許出願としたものであって、同25年6月17日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成25年9月25日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされ、同25年11月21日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同26年1月27日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成26年1月27日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
水源からの水に対して浄水処理である水処理を実行し、複数の調節弁を含む調節弁設備を有する水処理プラントに適用する運転支援システムにおいて、
前記各調節弁を同1条件で運転しているときに前記各調節弁間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備し、
前記制御手段は、
前記各調節弁の動作状態として、前記各調節弁の全開から全閉に至るまでの時間、全閉から全開に至るまでの時間、各弁開度に対する流量の測定値のいずれかを前記各調節弁間で比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備の異常発生を検出する運転支援システム。」

第3 引用刊行物記載の発明
これに対して、当審での平成25年11月21日付けの拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された下記刊行物には、以下の発明、あるいは事項が記載されていると認められる。

刊行物3:特開昭 63-270514号公報
刊行物2:特開2000- 99132号公報

1 刊行物3
(1)刊行物3に記載された事項
刊行物3には、「浄水場における濾過池制御装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア 第1ページ右下欄第12?18行
「(産業上の利用分野)
本発明は、浄水場における濾過池制御装置に関する。
(従来の技術)
一般に、浄水場では、沈殿池から沈澱池流出渠に流入された水を複数の濾過池で濾過し配水池に供給する。」

イ 第2ページ左上欄末行?右上欄第2行
「更に、流量制御弁は故障し易いので、代替弁の並設や、異常事態に対処するための人員確保などの対策が必要となる。」

ウ 第2ページ左下欄第15行?右下欄第12行
「第1図は本発明の一実施例に係る濾過池制御装置を浄水プラントと共に示すブロック図である。
まず、浄水プラントの構成を示すと、沈澱池1の入力側には着水井(図示せず)と接続される流量計2が接続され、該流量計2を介して浄水処理すべき水が流入さるようになっている。
一方、沈澱池1の出力側には、該沈澱池1からオーバフローされた水を流入する沈澱池流出渠3が配置されている。該流出渠に流入される単位時間当りの水の量をQ、現在水位をhとする。又、該流出渠3の水平断面積はAであるとする。
前記沈澱池流出渠3には、電磁式開閉弁4を介して複数の濾過池5が並列に接続され、該濾過池5には、流量計6及び電磁式開閉弁7を介して配水池8と接続される導管9が接続されている。
配水池8の出力側には、浄化された水を需要家に供給するための配水ポンプ10及び流量計11が接続されている。」

エ 第4ページ右上欄第5?末行
「第3図は、他の実施例示す説明図である。
本例では、第1図に示した実施例に対し、各濾過池5に備えた開閉弁7に次いで流量調整弁19を設け、各濾過池5の流量制御に合わせて起動/停止の制御を行うようにしたものである。
制御装置には、流量の目標値q_(0)を設定する流量目標値設定部20と、処理量q_(i)が目標値q_(0)と一致するよう各濾過池5の流量制御弁19を開度制御する濾過流量制御装置21が設けられている。
本例では、第1図の例では流量制御を起動/停止でしか行うことができなかったのに対し、流量制御弁19により各濾過池5の処理量q_(i)を目標値q_(0)に保つことができるので、(5)式に示す条件を完全に守りつつ、これに起動/停止の制御を加えて、水位hを上限h_(H)及び下限h_(L)内に収束させることができる。」

オ 第3図
以下にその一部を示す第3図を参酌すれば、流量制御弁19が複数あることが理解できる。



(2)刊行物3発明
刊行物3の上記摘記事項アないしエ及び認定事項オを、特に摘記事項エの「他の実施例」に着目して、技術常識を踏まえ本願発明に照らして整理すると、刊行物3には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「刊行物3発明」という。)
「沈澱池1からの水に対して浄水処理である水処理を実行し、複数の流量制御弁19を含む弁設備を有する浄水プラントに適用する制御装置。」

2 刊行物2
(1)刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「機器の劣化診断方法及び装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

ア 特許請求の範囲
「【請求項6】 内部で運転される機器の運転状態を機器情報として出力する複数の機器情報取得手段と、
該各々の機器情報取得手段から得られた同一種類の機器の機器情報を相互に比較して劣化状態にある機器を特定する診断手段と、
を具備することを特徴とする機器の劣化診断装置。」

イ 「【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明に係わる機器の劣化診断方法及び装置の一実施形態について説明する。なお、この実施形態において劣化診断される機器は、同一種類のガスタービンエンジンであり、通常運転において同一運転条件の下に運転されているものである。」

ウ 「【0019】図1は、本実施形態の機能構成を示すブロック図である。この図において、符号1はデータ収集管理施設(診断手段)、2は通信回線、3,4,……はデータ収集管理施設1に対して遠隔地に配置された機器運転施設(機器情報取得手段)である。データ収集管理施設1は、通信回線2を介して機器運転施設3,4,……と交信をすることにより、後述するガスタービンエンジン(以下、単にエンジンという)の劣化を診断するものである。このようなデータ収集管理施設1は、通信装置1a、コンピュータ1b、入力装置1c、表示装置1d及びデータベース1eから構成されている。
【0020】通信装置1aは、コンピュータ1bによる制御の下、通信回線2を介して各機器運転施設3,4,……と交信を行うものである。コンピュータ1bは、当該データ収集管理施設1を統括的に制御するものであり、通信装置1aによって受信された情報及びデータベース1eに記憶された情報に基づいてエンジンの劣化状態を判断し、その結果を表示装置1dに表示させる。」

エ 「【0025】エンジン3dは、プラント発電機3eを回転駆動するものである。プラント発電機3eは、このようなエンジン3dによって回転駆動されることにより発電を行うものである。ここで、機器運転施設3,4,……にそれぞれ設けられたエンジン3d,4d,……は、同一種類つまり同一構造かつ同一定格を有し、同一の運転条件の下に運転されているものである。」

オ 「【0030】〔ステップS4〕このように各エンジン3d,4d,……の機器情報が通信装置1aによって受信されると、コンピュータ1bは、これら機器情報を相互に比較することによって、劣化状態にあるエンジンを判断・特定する。すなわち、各エンジン3d,4d,……が劣化することなく運転されている場合には、全てのエンジン3d,4d,……の機器情報はほぼ同一値となる。しかし、何れかのエンジンが劣化状態にある場合、当該劣化したエンジンの機器情報は、他の正常なエンジンの機器情報とは異なった値となる。
【0031】各エンジン3d,4d,……は同一運転条件の下に運転されていることが前提となっているので、機器情報のうち、例えばある時刻におけるエンジンの回転数は、多少のばらつき誤差はあるものの、ほぼ同一値となる。このことは、エンジン要部の温度や振動についても同様である。また、各エンジンのうち、複数のエンジンが同時に劣化状態となることは極めて希にしか生じ得ない。したがって、機器情報のうち、同一物理量に係わるもの同士を比較することにより、劣化状態にある1つのエンジンを特定することができる。」

カ 「【0040】(4)また、劣化診断の比較対象とする機器については、上述したガスタービンエンジンに限定されることなく、種々のものが考えられる。動作特性が同一である同一種類の機器であり、かつ同一の運転条件の下に運転されている機器であれば、如何なる機器であっても本発明を適用することができる。」

(2)刊行物2事項
刊行物2の上記摘記事項アないしカを図面を参照しつつ、技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下、「刊行物2事項」という。)
「各機器を同一運転条件で運転しているときに前記各機器間の機器情報を比較し、当該比較結果に基づいて劣化状態にある機器を特定する診断手段を具備すること。」

第4 対比
本願発明と刊行物3発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物3発明の「沈澱池1からの水」は本願発明の「水源からの水」に相当することは、その機能及び技術常識に照らして明らかであり、以下同様に、「流量制御弁19」は「調節弁」に、「浄水プラント」は「水処理プラント」に、「制御装置」は「運転支援システム」にそれぞれ相当することも明らかである。
また、刊行物3発明の「弁設備」は、流量制御弁19を含む弁設備、であることから、本願発明の「調節弁設備」に相当するということができる。

したがって、本願発明と刊行物3発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「水源からの水に対して浄水処理である水処理を実行し、複数の調節弁を含む調節弁設備を有する水処理プラントに適用する運転支援システム。」
そして、本願発明と刊行物3発明とは、以下の点で相違している。
<相違点>
本願発明の運転支援システムは、各調節弁を同1条件で運転しているときに前記各調節弁間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備し、前記制御手段は、前記各調節弁の動作状態として、前記各調節弁の全開から全閉に至るまでの時間、全閉から全開に至るまでの時間、各弁開度に対する流量の測定値のいずれかを前記各調節弁間で比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備の異常発生を検出するのに対し、刊行物3発明の制御装置は、そのようなものか不明である点。

第5 相違点の検討
1 <相違点>について
(1)まず、刊行物3発明は、各機器たる「複数の流量制御弁19」に適用される制御装置であるところ、流量制御弁等の制御機器を監視することは広く一般に行われていることであり、また、刊行物3発明には、上記摘記事項第3の1(1)イにて指摘したように、流量制御弁は故障し易いものである旨の記載があることを併せ鑑みれば、故障に備えて「複数の流量制御弁19」の診断手段を設けようとすることは、当業者がごく自然に行い得ることである。

(2)次に、上記第3の2(2)にて指摘したように、刊行物2事項は、
「各機器を同一運転条件で運転しているときに前記各機器間の機器情報を比較し、当該比較結果に基づいて劣化状態にある機器を特定する診断手段を具備すること。」というものであるところ、これを本願発明の用語に倣って表現すれば、刊行物2事項の「同一運転条件」は「同1条件」と表現でき、以下同様に、「機器情報」は「動作状態」と、「劣化状態にある機器を特定する」は「設備が正常であるか否かを判定する」と表現できる。
また、本願発明の「制御手段」は「設備が正常であるか否かを判定する」ものであることを踏まえ、刊行物2事項の「診断手段」は本願発明に倣って「制御手段」とも表現できる。
次に、刊行物2事項の「機器」と本願発明の「調節弁」とは、機器、である限りにおいて共通する。
したがって、刊行物2事項は、
「各機器を同1条件で運転しているときに前記各機器間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備すること。」と言い換えることができる。

(3)ここで、上記第3の2(1)カにて摘記したように、刊行物2には「・・・劣化診断の比較対象とする機器については、上述したガスタービンエンジンに限定されることなく、種々のものが考えられる。・・・」との記載があり、診断対象を(実施例たる)ガスタービンのみならず、広く機器一般とすることの示唆があるといえる。また、刊行物2事項は「各機器を同一運転条件で運転している」ことを前提とする診断手段であるが、刊行物3記載の浄水プラントを設けるにあたり、複数の濾過池の濾過能力を相互に異ならせる理由はないから、配管や弁について同一種類のものが設けられていると解すべきである。そうすると、各「流量制御弁19」の運転条件についても同1条件で運転されることが通常であるということができるから、刊行物2に接した当業者が、刊行物3発明の「複数の流量制御弁19」に診断手段を設けるにあたり、刊行物2事項を適用することを試みることも、格別困難なことではない。

(4)そして、刊行物3発明に刊行物2事項を適用して、各機器たる複数の流量制御弁19を同1条件で運転しているときに前記各機器間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて設備が正常であるか否かを判定することとした場合、各機器たる複数の流量制御弁19の動作状態として、弁開度に対する流量の測定値を用いることも、一般に、弁開度に対する流量の測定値によって弁を診断することは、当審の拒絶理由通知にて示した特公平2-42156号公報(第3ぺージ左欄下から3行?右欄第3行等参照)に示されるように従来周知の事項であることからすれば、やはり想到容易というべきである。

(5)そうしてみると、刊行物3発明に刊行物2事項及び上記従来周知の事項を適用して、各調節弁(複数の流量制御弁19)を同1条件で運転しているときに前記各調節弁間の動作状態を比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定する制御手段を具備し、前記制御手段は、前記各調節弁の動作状態として、各弁開度に対する流量の測定値を前記各調節弁間で比較し、当該比較結果に基づいて前記調節弁設備が正常であるか否かを判定する(すなわち、異常発生を検出する)こととして、上記相違点に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものと解するのが相当である。

2 小括
したがって、本願発明は、刊行物3発明、刊行物2事項及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物3発明、刊行物2事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-06 
結審通知日 2014-02-12 
審決日 2014-02-25 
出願番号 特願2011-168333(P2011-168333)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 刈間 宏信
長屋 陽二郎
発明の名称 水処理プラントの運転支援システム  
代理人 堀内 美保子  
代理人 野河 信久  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  
代理人 中村 誠  
代理人 砂川 克  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
代理人 井関 守三  
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