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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1286920
審判番号 不服2011-23961  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-11-07 
確定日 2014-04-16 
事件の表示 特願2000-600624「促進剤を含む固体経口剤形」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月31日国際公開、WO2000/50012、平成14年11月5日国内公表、特表2002-537321〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成12年2月22日(パリ条約による優先権主張 平成11年2月22日,アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする特許出願であって,平成18年11月2日に手続補正書が提出され,平成22年3月30日付けで拒絶理由が通知され(発送日:平成22年4月6日),同年10月5日に意見書とともに手続補正書が提出されたが,平成23年6月27日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成23年7月5日),これに対し,同年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され,その後,当審において平成25年5月2日付けで審尋がなされ,これに対して同年8月7日に回答書が提出されたものである。

第2.平成23年11月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年11月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成23年11月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の,
「薬物と少なくとも1種の促進剤,ならびに必要に応じて,速度制御ポリマー材料,希釈剤,滑沢剤,崩壊剤,可塑剤,粘着防止剤,不透明化剤,色素および香味料からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む固体経口剤形であって,該促進剤のそれぞれは炭素原子数6?20の炭素鎖長を有し,かつ室温で固体である中鎖脂肪酸の塩であり,該固体経口剤形は錠剤,圧縮して錠剤を形成することが可能な多粒子剤,または多粒子剤を含むカプセル剤であり,かつ腸溶性で急速放出型の剤形である,上記固体経口剤形。」を,
「薬物と少なくとも1種の促進剤,ならびに必要に応じて,希釈剤,滑沢剤,崩壊剤,可塑剤,粘着防止剤,不透明化剤,色素および香味料からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤からなる固体経口剤形であって,該促進剤のそれぞれは炭素原子数8?14の炭素鎖長を有し,かつ室温で固体である中鎖脂肪酸の塩であり,該固体経口剤形は錠剤,圧縮して錠剤を形成することが可能な多粒子剤,または多粒子剤を含むカプセル剤であり,かつ腸溶性コートを施した急速放出型の剤形である,上記固体経口剤形。」
とする補正を含むものであり,上記補正は次の補正事項1?3を含むものである。

補正事項1:本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項(以下,「発明特定事項」という。)である,「ならびに必要に応じて,速度制御ポリマー材料,希釈剤,滑沢剤,崩壊剤,可塑剤,粘着防止剤,不透明化剤,色素および香味料からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む」との事項を,「ならびに必要に応じて,希釈剤,滑沢剤,崩壊剤,可塑剤,粘着防止剤,不透明化剤,色素および香味料からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤からなる」とする補正。

補正事項2:発明特定事項である「該促進剤のそれぞれは炭素原子数6?20の炭素鎖長を有し,」との事項を,「該促進剤のそれぞれは炭素原子数8?14の炭素鎖長を有し,」とする補正。

補正事項3:発明特定事項である「腸溶性で急速放出型の剤形」との事項を,「腸溶性コートを施した急速放出型の剤形」とする補正。

2.補正の目的について
上記補正事項1ないし3は,本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものであるので,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件の有無について
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は,次のとおりのものである。
「薬物と少なくとも1種の促進剤,ならびに必要に応じて,希釈剤,滑沢剤,崩壊剤,可塑剤,粘着防止剤,不透明化剤,色素および香味料からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤からなる固体経口剤形であって,該促進剤のそれぞれは炭素原子数8?14の炭素鎖長を有し,かつ室温で固体である中鎖脂肪酸の塩であり,該固体経口剤形は錠剤,圧縮して錠剤を形成することが可能な多粒子剤,または多粒子剤を含むカプセル剤であり,かつ腸溶性コートを施した急速放出型の剤形である,上記固体経口剤形。」

(2)特許法第29条第1項第3号について
ア.引用刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に頒布されたことが明らかな国際公開第94/010983号(拒絶理由通知の引用例2。以下,「引用例」という。)には,下記の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】活性成分を含有する核からなる固形薬剤を,陽イオン性ポリマーからなる内層,陰イオン性ポリマーからなる外層をそれぞれ被覆してなる二重被覆構造を有することを特徴とする下部消化管放出性の経口医薬製剤。
【請求項2】前記核が吸収促進剤を含有する請求項1に記載の下部消化管放出性の経口医薬製剤。
【請求項3】前記吸収促進剤が,シュガーエステル,ショ糖脂肪酸エステル,グリシルリジン酸塩,グリチルレチン酸,グリチルリチン酸ジカリウム,胆汁酸,グリセリン脂肪酸エステル,1-〔(2-デシルチオ)エチル〕アザシクロペンタン-2-オン,アジピン酸,塩基性アミノ酸,ポリエチレングリコール,カプリン酸ナトリウムから選択される請求項2に記載の下部消化管放出性の経口医薬製剤。
【請求項4】前記陽イオン性ポリマーが,pH6.0以下で可溶性または膨潤性を示すアミノアルキルメタアクリレートコポリマーまたはポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートである請求項1に記載の下部消化管放出性の経口医薬製剤。
【請求項5】前記陰イオン性ポリマーが,pH5.5以上で溶解するメタアクリル酸コポリマーL,メタアクリル酸コポリマーS,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロースフタレート,ポリビニルアセテートフタレート,セルロースアセテートおよびセルロースアセテートテトラヒドロフタレートよりなる群より選択される請求項1に記載の下部消化管放出性の経口医薬製剤。
【請求項6】前記消化管内のpH7.0?5.5範囲以下に変化する下部消化管内において崩壊吸収する請求項1に記載の下部消化管放出性の経口医薬製剤。
【請求項7】前記活性成分がペプチド,タンパク質,抗炎症剤,抗腫瘍剤,抗生物質および化学療法剤よりなる群より選択される請求項1記載の下部消化管放出性の経口医薬製剤。」(特許請求の範囲)

(イ)「[発明の開示]
本発明は,これら従来技術の課題を解消し,胃液の影響を受けることなく胃内を通過し,小腸においても何ら変化せず,大腸に到達したときに初めて錠剤が崩壊放出され,活性成分が大腸内で吸収されてなる経口医薬製剤を提供することを目的とするものである。
本発明による下部消化管放出性の経口医薬製剤は,活性部分を含有する核からなる固形薬剤を,陽イオン性ポリマーからなる内層,陰イオン性ポリマーからなる外層をそれぞれ被覆してなる二重被覆構造を有することを特徴とする。
つまり,本発明は,下部消化管で崩壊放出される活性成分を含有し,治療用活性成分を含む核からなる固形薬剤と以下に示す下記○1(原文は○の中に数字,以下同様)?○2層からなるコーティング層からなる新規な経口医薬製剤である。
○1層:適当な可塑剤または結着防止剤を含み,6.0以下のpHで可溶または膨潤する陽イオン性コポリマーからなる内層。
○2層:5.5以上のpHで溶解する陰イオン性のポリマーから成る外層。
この核からなる固形薬剤は,治療用活性成分を,単独または賦形剤,結合剤,崩壊剤および吸収促進剤との混合において調製される。
ここにおいて,賦形剤としては,ラクトース,結晶セルロース,結晶セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム,小麦デンプン,ステアリン酸マグネシウム等が例示される。
結合剤としては,結晶セルロース,プルラン,アラビアゴム,アルギン酸ナトリウム,ポリビニルピロリドン,マクロゴール等が例示される。
崩壊剤としては,カルボキシメチルセルロース,カルボキシメチルセルロースカルシウム,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルスターチ,デンプン,アルギン酸ナトリウム等の通常使用される医薬用不活性物質が用いられる。
また活性成分の吸収促進を目的としてシュガーエステル,ショ糖脂肪酸エステル,グリシルリジン酸塩,グリチルレチン酸,グリチルリチン酸ジカリウム,胆汁酸,グリセリン脂肪酸エステル,1〔(2-(デシルチオ)エチル〕アザシクロペンタン-2-オン,アジピン酸,塩基性アミノ酸,ポリエチレングリコール,カプリン酸ナトリウム等の吸収促進剤を添加することもできる。
また,この固形製剤は,ゼラチンカプセルに封入したり,顆粒化もしくは打錠して製造してもよい。
この固形薬剤に含まれる治療用活性成分は,下部消化管内で放出された際に有効な物質であれば特に制限されることなく,いずれであっても使用できる。例えば,ペプチド,タンパク質,抗炎症剤,抗腫瘍剤,抗生物質,化学療法剤,潰瘍性大腸炎治療薬,過敏大腸症治療薬(コリン遮断剤)および便秘薬等が挙げられる。具体例としては,ソマトスタチン,インシュリン,カルシトニン,バソプレッシン,ガストリン,EGF(表皮細胞増殖因子),α-hANP(α-ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド),エンケファリン,エンドルフィン,GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー形成刺激因子),G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子),ヒト成長ホルモン,グルカゴン,t-PA(組織プラスミノーゲン活性活性化因子),TNF(腫瘍懐死因子),TCGF(T細胞成長因子),ACTH(副腎皮質刺激ホルモン),インターロイキン類,インターフェロン,EPO(エリスロポエチン),ウロキナーゼ,ネオカルチノスタチン,ブラジキニン,イムノグロブリンおよびその消化物,各種アレルゲンおよびその消化物,ケトプロフェン,イブプロフェン,ジクロフェナック,インドメタシン,ケトロラク,フェンブフェン,ロキソプロフェン,テニダップ,ピロキシカム,テノキシカム,サラゾスルファピリジン,塩酸ピペタナート,臭化メピンゾラード,センノサイドAまたはセンノサイドB等の薬物が挙げられる。」(第3頁9行?第4頁末行)

(ウ)「実施例7
カルシニトンを含む核からなる固定薬剤を以下の処方により製造した。

表3に示した各々の処方を均一になるように混合し,打錠機を用いて直径7mm,重量200mgの錠剤を製造した。この錠剤に以下のコーティングを施した。
オイドラギットE(商品名) 7.0重量部
エタノール 70.0重量部
水 19.5重量部
タルク 3.5重量部
この内層は,予め50℃に加熱された該固形薬上に,上記の溶液を50℃で連続的に噴霧することにより塗布した。該固形薬の重量増加は14mgであった。乾燥後,以下の溶液をさらに塗布した。
オイラギットS(商品名) 7.0重量部
エタノール 70.0重量部
水 18.8重量部
タルク 3.5重量部
ポリエチレングリコール6000 0.7重量部
この外層は,予め50℃に加熱された該固形薬上に,上記の溶液を50℃で連続的に噴霧することにより塗布した。該固形薬の重量増加は14mgであった。
(H)インビボにおける吸収促進剤の効果の検討
実施例7で作成した錠剤を実施例5と同様に犬に投与し,血中カルシウム濃度を測定した。結果を図9に示す。同図において,○は表3中のサンプルNo.○1(原文は○の中に数字,以下同様),●は表3中のサンプルNo.○2,△は表3中のサンプルNo.○3,▲は表3中のサンプルNo.○4,□は表3中のサンプルNo.○5をそれぞれ示す。
図9の結果から,No.1から4のサンプルはいずれも10時間後から血中カルシウム濃度の低下が観察されたが,吸収促進剤を用いなかったNo.5のサンプルでは血中カルシウム濃度の低下が観察されなかった。吸収促進剤としてカプリン酸ナトリウム,グリチルリチン酸ジカリウムを用いたものは特に優れた血中カルシウム濃度の低下が観察された。」(第13頁5行?第14頁17行)

(エ)「

」(FIG.9)

イ.引用例に記載された発明
上記引用例には,摘示(ア)の請求項1及び2の記載からみて,「活性成分及び吸収促進剤を含有する核からなる固形薬剤を,陽イオン性ポリマーからなる内層,陰イオン性ポリマーからなる外層をそれぞれ被覆してなる二重被覆構造を有することを特徴とする下部消化管放出性の経口医薬製剤。」が記載され,その吸収促進剤としてカプリン酸ナトリウムを用いることが記載されている(摘示(ア)の請求項3,摘示(イ)ないし(エ))。
したがって,引用例には,
「活性成分及びカプリン酸ナトリウムを含有する核からなる固形薬剤を,陽イオン性ポリマーからなる内層,陰イオン性ポリマーからなる外層をそれぞれ被覆してなる二重被覆構造を有することを特徴とする下部消化管放出性の経口医薬製剤。」に係る発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

ウ.対比
引用発明の活性成分は,摘示(イ)の記載及び本願明細書の段落【0018】の記載からみて,本願補正発明の薬物に相当する。また,カプリン酸ナトリウムは,炭素原子数10の炭素鎖長を有し,かつ室温で固体である中鎖脂肪酸の塩である。
したがって,本願補正発明と引用発明とは,
「薬物と少なくとも1種の促進剤,ならびに必要に応じて,希釈剤,滑沢剤,崩壊剤,可塑剤,粘着防止剤,不透明化剤,色素および香味料からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤からなる固体経口剤形であって,該促進剤のそれぞれは炭素原子数8?14の炭素鎖長を有し,かつ室温で固体である中鎖脂肪酸の塩である,上記固体経口剤形。」の点で重複一致し,下記の相違点1?2で一応相違する。

<相違点1>
本願補正発明は,その剤形について,「錠剤,圧縮して錠剤を形成することが可能な多粒子剤,または多粒子剤を含むカプセル剤であり」と特定されているのに対し,引用発明ではかかる特定はなされていない点。

<相違点2>
本願補正発明は,その剤形について,「腸溶性コートを施した急速放出型」と特定されているのに対し,引用発明では「陽イオン性ポリマーからなる内層,陰イオン性ポリマーからなる外層をそれぞれ被覆してなる二重被覆構造を有する」及び「下部消化管放出性」と特定されている点。

エ.相違点についての判断
<相違点1>について
引用例の摘示(イ)には「この固形製剤は,ゼラチンカプセルに封入したり,顆粒化もしくは打錠して製造してもよい。」と記載されており,また,摘示(ウ)には錠剤を製造したことが記載されている。
したがって,相違点1は,実質的な相違点とは認められない。

<相違点2>について
本願明細書には,「腸溶性」について,段落【0024】及び【0025】に記載はあるが,格別定義はなされていない。
通常,「腸」とは,小腸及び大腸を包含する概念であり,腸溶性コートは,「錠剤や顆粒などに特殊な皮膜をかけ,胃で崩壊することなく,腸で崩壊し溶解・溶出する剤皮」を意味するものである(「南山堂 医学大事典」 2006年5月10日 19版2刷 株式会社南山堂発行 283頁「エンテリックコーティング」の項及び1645頁「腸」の項,「広辞苑」 昭和49年9月20日 第2版第8刷 株式会社岩波書店発行 1447頁「腸」の項参照)。
そうであるから,本願補正発明の「腸溶性コート」は,「薬物が胃では溶けず,腸で溶けるようにするための被覆」を意味すると解さざるを得ない。
これに対して,引用発明の「イオン性ポリマーからなる内層,陰イオン性ポリマーからなる外層をそれぞれ被覆してなる二重被覆構造」は,引用発明の「下部消化管放出性」との事項及び摘示(イ)の記載からみて,「薬物が胃ないし小腸では溶けず,大腸で溶けるようにするための被覆」と解されるから,「薬物が胃では溶けず,腸で溶けるようにするための被覆」の一態様といえるものである。
また,本願明細書には,「急速放出型」については,段落【0022】に,「腸の好適な部位に到達すると薬物および促進剤を即座に放出し,吸収部位における薬物および促進剤の局所濃度を最大にすることによって浸透性の低い薬物の送達を最大限に増加させる」と記載されているものの,そのための錠剤処方等については,具体的に記載されてはいない。
しかしながら,「急速放出型」と同義に用いられていると認められる「即時放出性」錠剤(IR錠剤)についての処方(表2,表4,表5)を,持続放出性錠剤(SR錠剤)についての処方(表3,表6?表8)と対比してみると,速度制御ポリマー材料を含まないものを意味すると解される。
この点については,審判請求人も審判請求書において,「剤形中の成分の放出速度を遅らせる制御放出成分を何ら含まない剤形を意味する。」と記載しているとおりである。
そうであれば,引用発明は,摘示(ウ)の実施例7に記載されているように,錠剤中に速度制御ポリマー材料を含まない態様を包含するものであるから,急速放出型の剤形を包含することは明らかである。
したがって,相違点2は,実質的な相違点とは認められない。

オ.まとめ
以上のとおり,相違点1及び2は実質的な相違点とは認められないから,本願補正発明は,引用例に記載された発明である。
よって,本願補正発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.結び
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.原査定の妥当性について
1.本願発明
上記のとおり,平成23年11月7日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1ないし41に係る発明は,平成22年10月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし41に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は以下のとおりである。
「薬物と少なくとも1種の促進剤,ならびに必要に応じて,速度制御ポリマー材料,希釈剤,滑沢剤,崩壊剤,可塑剤,粘着防止剤,不透明化剤,色素および香味料からなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む固体経口剤形であって,該促進剤のそれぞれは炭素原子数6?20の炭素鎖長を有し,かつ室温で固体である中鎖脂肪酸の塩であり,該固体経口剤形は錠剤,圧縮して錠剤を形成することが可能な多粒子剤,または多粒子剤を含むカプセル剤であり,かつ腸溶性で急速放出型の剤形である,上記固体経口剤形。」

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,次の理由3を含むものである。
理由:本願発明は,引用例2(国際公開第94/010983号,上記引用例と同じ。)に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

3.引用例の記載事項及び引用発明
引用例の記載事項及び引用発明は,前記「第2.3.(2)(2-1)及び(2-2)」に記載したとおりである。

4.本願発明について
本願補正発明は,前記第2.1.及び第2.2に記載したように,本願発明を限定したものであるから,本願発明は,本願補正発明を包含するものである。
そして,本願補正発明が,前記第2.3.(2)に記載したとおり,引用例に記載された発明であるから,本願発明も同様の理由により,引用例に記載された発明である。

第5.審判請求人の主張について
審判請求人は,審判請求書及び回答書において,引用例(引用例2)について,概ね以下のような主張をしている。
・「引用例2の実施例7には,カルシトニンとカプリン酸ナトリウムを含む製剤が顕著な効果を示す旨が開示されているものの,これは大腸における吸収を目的として二重コートが施された剤形の使用に関するものであり,小腸内で薬物および促進剤を迅速放出する本願発明の固体経口剤形とは,その機能および剤形が異なっている。
また,引用例2では,小腸におけるカプリン酸ナトリウムの効果については何ら記載されておらず,本願発明に係る,薬剤および促進剤の放出が最大となるように特別に設計された固体経口剤形におけるカプリン酸ナトリウムの効果については,何ら教示/示唆されていない。
さらに,引用例2はそもそも,大腸において薬剤および促進剤の放出が最大となる剤形を製造することを課題としており,本願発明の課題とは異なるものである。したがって,審査官殿の上記判断は誤りであると思料する。」
・「引用例2に記載される小腸を何ら変化なく通過することができ,大腸に薬物送達することができるように設計された二重被覆剤形と,本願発明に係る小腸において迅速に薬物送達することができるように設計された単層の腸溶性コートが施された固体経口剤形とはその構造及び構成が全く異なっています。」

しかしながら,本願発明の腸溶性コートが,「薬物が胃では溶けず,腸で溶けるようにするための被覆」を意味し,小腸での溶解のみを意味するものではないことは,前記第2.3.(2)(2-4)に記載したとおりである。
これに関して,本願明細書の実施例12においては,空腸および大腸にそれぞれカテーテルを取り付け,試験溶液を腸内カテーテルを経由して投与する態様が記載されているから,本願発明が,小腸からの薬剤の吸収のみならず,大腸からの吸収をも意図していることは明かである。
さらに,本願明細書の各実施例においては,吸収の程度は血液サンプルの分析によるものであって,全吸収部位での総吸収量が測定されているにすぎないことから,その吸収が小腸で行われたことを裏付けるに足るものとは認められない。
したがって,本願発明が,「小腸において迅速に薬物送達することができるように設計された単層の腸溶性コートが施された固体経口剤形」であるとは,直ちには認められない。
よって,審判請求人の主張は,採用できない。

第6.結び
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものであり,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願はこの理由により拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2013-11-14 
結審通知日 2013-11-19 
審決日 2013-12-03 
出願番号 特願2000-600624(P2000-600624)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 広介  
特許庁審判長 田口 昌浩
特許庁審判官 蔵野 雅昭
天野 貴子
発明の名称 促進剤を含む固体経口剤形  
代理人 藤田 節  
代理人 新井 栄一  
代理人 石井 貞次  
代理人 平木 祐輔  

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