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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1287034
審判番号 不服2012-22298  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-12 
確定日 2014-04-24 
事件の表示 特願2006-353286「粘着剤転写シート」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月17日出願公開、特開2008-163155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下「本願」という。)は、平成18年12月27日になされた特許出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりのものである。

平成24年 4月11日付け 拒絶理由通知
平成24年 6月15日 意見書・手続補正書
平成24年 8月 6日付け 拒絶査定
平成24年11月12日 本件審判請求

第2 本願に係る発明について
本願に係る発明は、平成24年 6月15日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるものである。
「剥離基材と、当該剥離基材上に粘着剤を間欠的に塗布され、周縁部を直線又は曲線により構成され中心から外方へ向けて膨出させた膨出形状に成形した複数の粘着剤ブロックからなる粘着剤配置領域及び剥離基材の周縁部に成形された粘着剤退避領域を有する粘着剤層と、当該粘着剤層を被覆し得る剥離被覆材とを少なくとも具備し、
前記剥離被覆材の周囲に前記粘着剤退避領域を設けることにより、前記粘着剤退避領域上に前記剥離被覆材の端縁を位置付けていることを特徴とする粘着剤転写シート。」

第3 原審の拒絶査定の概要
原審において、平成24年4月11日付け拒絶理由通知書で概略以下の内容を含む拒絶理由が通知され、当該拒絶理由が解消されていない点をもって下記の拒絶査定がなされた。

<拒絶理由通知>
「 理 由

1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・理由1-2
・請求項1-7
・引用文献1-2
・備考
引用文献1の【特許請求の範囲】、【0014】、【実施例】、【図】等参照。
引用文献2の【0019】等参照。

(i)請求項1-5,7について

引用文献1には、本願の請求項1-5に係る発明と同様のものが記載されている。
ここで、引用文献1の実施例1の粘着シート材の粘着剤のドットの形状は、粘着剤の表面張力により本願発明の粘着剤ブロックの形状と同様の形状となっていると認められる。
また、図5に記載の粘着シート材の周縁部は、粘着剤が塗布されていない領域であるから、本願発明の粘着剤退避領域に相当する。

してみれば、本願の請求項1-5に係る発明は、引用文献1に記載された発明と特に相違するものではなく、引用文献1に記載された発明に基づき、当業者が容易に想到するものである。
また、シート形状を適当な形状にすることは、技術の具体的適用に伴う設計事項であり、当業者が適宜なし得ることである。
さらに、粘着剤のはみ出しを防止するために、ドライエッジを設けることは、当該技術分野において周知慣用の技術であるから(例えば、実用新案登録第3123366号公報、実用新案登録第3125301号公報、実願昭57-140294号(実開昭59-044751号)のマイクロフィルム及び実願昭63-050600号(実開平01-156163号)のマイクロフィルム参照。)、本願発明の効果も、当業者が十分に予測し得るものであり、格別なものでもない。
・・(中略)・・

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平08-333556号公報
・・(後略)」

<拒絶査定>
「この出願については、平成24年 4月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。
備考
<・理由2 ・請求項1-8 ・引用文献1-2>
引用文献1には、粘着剤層上に保護シートとしての剥離シートを被せることが記載されているが、剥離シートの端縁が担体シートの粘着剤が塗布されてない周縁部上となるようにすることは記載されていない。
しかしながら、粘着剤層を保護するために粘着剤が配置された領域全面を覆うことができるサイズの剥離シートを選択することは自明であり、その上で、適当なサイズの剥離シートを選択する程度のことは、技術の具体的適用に伴う設計事項であり、当業者が適宜なし得ることである。
また、それによる格別顕著な効果も認められない。

なお、出願人は意見書において、「通常このような粘着剤転写シートは複数の当該粘着剤転写シートが積層された状態で包装袋等に収納されています。その際、包装袋の下部分にある粘着剤転写シートには相当の荷重が掛かります。そして時間の経過とともに粘着剤が圧縮されて広がることとなります。そこで本願発明に係る粘着剤転写シートであればこの様な実際に起こる状況であっても、荷重により広がった粘着剤が剥離被覆層や剥離基材から粘着剤がはみ出し、誤って袋に止着されてしまうことがありません。そして、使用時には積層された全ての粘着剤転写シートを収納袋から容易に取り出すことができます。すなわち上記の点により本願発明は実際の流通に係る保管・輸送時から販売、使用時に至るまで上記の顕著な作用効果が奏されるものであります。」と主張しているが、この主張は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に基づいたものではないから、採用できない。」

第4 当審の判断
当審は、
上記拒絶査定の理由と同一の理由により、本願は、特許法第49条第2号に該当するから、拒絶すべきものである、
と判断する。以下詳述する。

1.刊行物に記載された事項
本審決で引用する刊行物は、以下のとおりである。

刊行物:
1.特開平08-333556号公報(原査定における「引用文献1」)
2.実用新案登録第3123366号公報(原審の拒絶理由通知で引用された文献)
3.実用新案登録第3125301号公報(原審の拒絶理由通知で引用された文献)
4.実願昭57-140294号(実開昭59-044751号)のマイクロフィルム(原審の拒絶理由通知で引用された文献)
5.実願昭63-050600号(実開平01-156163号)のマイクロフィルム(原審の拒絶理由通知で引用された文献)
(以下、上記刊行物「1.」を「引用例」といい、上記刊行物「2.」ないし「5.」をそれぞれ「周知例1」ないし「周知例4」という。)

(1)引用例の記載事項
上記引用例には、以下の事項が記載されている。

(1a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 剥離機能を有する担体シート上に、不連続の独立単位区域の集合よりなる形状を有する粘着剤層が形成され、且つ、前記各独立単位区域の寸法が被転写面の寸法以下であることを特徴とする転写型粘着シート材。
【請求項2】 前記各独立単位区域の寸法範囲が約0.1mm?約30mm、好ましくは約0.2mm?約10mm、更に好ましくは約0.4mm?約5mmであるドットの集合模様より前記粘着剤層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の転写型粘着シート材。
【請求項3】 前記粘着剤層上に剥離シートを保護シートとして被せていることを特徴とする請求項1又は2に記載の転写型粘着シート材。」

(1b)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種部品、各種部材を含めた各種物品の接合・貼り合わせや貼り付け一時仮止めに広く用い得る転写型粘着シート材に関する。本発明の転写型粘着シート材を用い、簡便な押圧による転写方法により、物品の任意の面・箇所に粘着剤層を形成させる(盛りつける)ことができるので、ラベル、シール、銘板、紙製品等の貼り付けや、プラスチック製品、金属製品、セラミック製品等への転写適用による貼り付け、組み立て等に広く用いることができる。」

(1c)
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記各方法は、それぞれ欠点を有している。即ち、(1)両面粘着シート(テープ)を用いる方法は、予め所望形状に切断するためのダイカット等の打抜き又は切り抜きの装置及び/又は時間を要するし、打抜き又は切り抜きによる両面粘着シート(テープ)の無駄が多く、また、所定位置への貼り付けの煩わしさや正確に貼り付けることの困難さを伴う。(2)ホットメルト型粘着剤を用いる方法は、専用の加熱融解吐出装置を要し、特に加熱用電源の無い場所では使用不可であり、また、泡型ホットメルト粘着剤以外のホットメルト型粘着剤では、垂直面や仰向面への適用は不可である。(3)揮発成分含有型粘着剤を用いる方法は、有機溶剤含有型の場合、作業環境の悪化と引火性の問題が有り、水含有型の場合、含有水分の揮散迄の待ち時間を要したり、完全乾燥のための加熱工程を必要とする。また、この方法では、所定の位置に正確に粘着剤層を形成させるために、マスキングパターン型やプリント版型等が別途必要となる。(4)光反応型粘着剤を用いる方法は、上述のホットメルト型粘着剤を用いる方法と同様に、専用の装置を必要とし、主に光発生源となる装置(紫外線、近赤外線発生装置等)は電源を必要とするために制約を受ける。(5)熱転写型粘着剤を用いる方法は、所定の加熱圧押型等の装置及びそのための電源を必要とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】任意の貼り合わせ面に簡便に粘着剤層を形成させるためには、既成の粘着剤層を所望の面に押し当て、該粘着剤層を該所望の面に転移(転写)させることにより、目的が達せられる筈であるが、連続相の粘着剤層の凝集力が働き、押し当て圧が印加されるかされないかの境界部位において粘着剤層の切断が円滑に起こらず、実際には望むような転写形状は得られ難い。これに対し、本発明者は、「粘着剤層を、その単位区域の寸法が、被押し当て面(被転写面)の寸法以下、好ましくはより小さな単位の独立層とすること」により、転写が容易・簡便に行えることを見出した。
【0010】即ち、本発明は、剥離機能を有する担体シート上に、不連続の独立単位区域の集合よりなる形状を有する粘着剤層が形成され、且つ、前記各独立単位区域の寸法が被転写面の寸法以下であることを特徴とする転写型粘着シート材を提供するものである。」

(1d)
「【0011】剥離機能を有する担体シートとしては、それ自体が剥離性を有するポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムを使用することもできるが、更にこれらのフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムやポリ塩化ビニールフィルム等の各種プラスチックフィルム又は紙にシリコーン系や弗素系の剥離剤を塗布処理したものを使用することが、転写の容易性等の観点から好ましい。」

(1e)
「【0012】粘着剤層は、不連続の独立単位区域の集合よりなる形状を有するが、各独立単位区域の寸法(大きさ)は、被転写面の寸法(大きさ)により、大きく異なり、基本的には、転写の容易性を損なわない限り、被転写面寸法を越えなければよいが、転写をより容易にするためには、被転写面寸法より小さめ(どの程度小さめであるかは被転写面の寸法により異なる)であるのが好ましく、これらの場合は特定の被転写面に対して有効である。一つの特定の被転写面に対し一つの独立単位区域を対応させることもできるし、複数の独立単位区域を対応させることもできる。前者の場合は独立単位区域の形状を特定の被転写面の形状にほぼ対応させることとなるが、後者の場合は前記複数の独立単位区域が特定の被転写面寸法内にほぼ収まれば、各独立単位区域の形状は相当の自由度を持つことになる。各種の寸法(大きさ)の被転写面に対して汎用性を持たせるためには、各独立単位区域を小さなドットとし、例え被転写面から食み出す粘着剤ドットが幾らか有ったとしても、各粘着剤ドットの凝集力により食み出し量が小さくなり、粘着剤の残存食み出し量が支障を生じない程度とすればよい。この場合、各独立単位区域を構成するドットの形状は、特に限定されず、円状、楕円状、多角形状、星状、×状、ドーナツ状、ビード状、その他各種の形状やこれらの形状の組み合わせを採り得る。また、各独立単位区域を構成する各ドットの寸法範囲は、ドット形状や粘着剤層の厚み等により異なるが、上述の観点とドット形成上の観点から、一般的に、約0.1mm?約30mmが好ましく、より好ましくは約0.2mm?約10mm、更に好ましくは約0.4?約5mmである。ここで、「寸法範囲」とは、各ドットの最大寸法が上記の数値範囲の上限を越えず、一方、各ドットの最小寸法が上記の数値範囲の下限より小さくないという意味で、例えば、楕円状ドットの場合、長径が上記の数値範囲の上限を越えず、短径が上記の数値範囲の下限より小さくないと言うことである。各ドット間の隙間の大きさは、転写の対象となる物品の種類や粘着剤層の厚みや粘着力、ドットの形状や寸法等により大きく異なるが、一般的に、ドットの占める面積に対して0.03?20倍が好ましく、より好ましくは0.1?10倍、更に好ましくは0.2?5倍である。粘着剤層の厚みは、好ましくは5μm?4mmで、より好ましくは7μm?2mmで、特に好ましくは10μm?1mmで、ドットの占める面積に対する各ドット間の隙間の倍率が高い場合は、粘着剤層の厚みを大きくして、転写の際又は二物品の接合の際の押圧により、粘着剤層を押し広げることができる。」

(1f)
「【0014】粘着剤層上に、保護シートとしての剥離シートを被せてもよいが、必ずしも必要では無く、剥離機能を有する担体シートの裏面を粘着剤塗布面より剥離性が高くなるように剥離剤処理しておき、転写型粘着シート材を枚葉で重ね合わせたり、ロール状に巻き取るようにしてもよい。また、保護シート無しの枚葉の転写型粘着シート材自体を、粘着剤層を内側としたカートン・ボックスとして、使用に際して該カートン・ボックスを開くようにしてもよい。なお、本発明の転写型粘着シート材をテープ状に裁断してもよく、従って、本発明の転写型粘着シート材は、テープ状のものを包含する。」

(1g)
「【0015】
【作用】本発明の転写型粘着シート材の粘着剤層は、不連続の独立単位区域の集合よりなる形状を有し、各独立単位区域の寸法(大きさ)は、被転写面の寸法を越えず、好ましくは、転写をより容易にするように被転写面寸法より小さめであるので、連続相の粘着剤層の場合の転写における粘着剤層の切断が円滑に起こらず、所望の転写形状が得られないというような問題は無く、特別の用具や装置が無くても容易に被転写面に粘着剤層を転写することができる。また、例えば、「図1」?「図4」のような独立単位区域が小さなドット形状の粘着剤の集合模様よりなる粘着剤層が剥離機能を有する担体シート上に形成された本発明の転写型粘着シート材を用いれば、物品の任意の面に簡便に粘着剤層を転写形成することができるので、各種物品の接合・貼り合わせや貼り付け一時仮止めを極めて容易に行うことができる。粘着剤層転写時の押し当て圧は、対象物品に粘着剤層が転移するに要する程度の軽い圧でよく、極めて容易に転写が可能である。また、ドット形状の粘着剤の集合模様よりなる粘着剤層を有する本発明の転写型粘着シート材は、被転写面が平面のみならず、曲面の場合も容易に転写が行える等の利点を有する。」

(1h)
「【0016】
【実施例】以下、図面を参照しつつ実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明が実施例により限定されるもので無いことは言うまでもない。各図において、黒く塗り潰した部分(ドット)が粘着剤層であるが、各図は概念図であり、各寸法やそれらの比は必ずしも実際の寸法や比を表すものでは無い。
【0017】実施例1
剥離機能を有する担体シート(剥離ライナー)としては、0.3mmの厚さの無可塑ポリ塩化ビニールシート上に二液型紫外線硬化シリコーンエポキシ「UV-9300/UV-9310C」(米国GE社製)を10?15μmの厚さに塗布し、紫外線硬化させたものを用いた。
【0018】ITWダイナテック社(米国)製のホットメルト吐出機を用い、非反応型ホットメルト粘着剤である「アサヒタックA136」(旭化学合成社製)を「図1」のような円状ドットの集合模様に上記剥離ライナー上に吐出して、粘着剤層を形成した。各独立単位ドットの直径は1mmで、ドット間の隙間は1mmであった。
【0019】実施例2
アクリル系ゾル型粘着剤である「ニッセツKP802L」(日本カーバイド社製)をスクリーン印刷法により、実施例1で用いたと同様の剥離ライナー上に「図2」のような四角ドットの集合模様に印刷後、放置乾燥し、粘着剤層を形成した。各独立単位ドットの縦横長さは2mmで、ドット間の間隔は1mmであった。
【0020】実施例3
アクリル系紫外線硬化型粘着剤である「ニッセツSMR-311」(日本カーバイド社製)をスクリーン印刷法により、実施例1で用いたと同様の剥離ライナー上に「図3」のようなビードドットの集合模様に印刷後、紫外線照射により反応固化(粘着剤化)させ、粘着剤層を形成した。各独立単位ドットの横長さは3mmで、ドット間の間隔は2mmであった。
【0021】上記実施例1?3で得られた転写型粘着シート材の粘着剤層に、貼り付け用試験片の被転写面を押し当てることにより、容易に被転写面のほぼ全面にドット状の粘着材層を転写することができた。更に、その貼り付け用試験片の被転写面を再度各転写型粘着シート材の粘着剤層に押し当てれば、最初に転写されたドット間の隙間にも粘着剤を付着させることができ、粘着剤の占める面積を大きくすることができた。実施例1の転写型粘着シートの粘着剤層上に貼り付け用試験片の被転写面を押し当てた様子を「図5」に示す。「図5」中、1が転写型粘着シート材で、2が貼り付け用試験片である。「図6」は、ドット状粘着剤層が転写された上記貼り付け用試験片の被転写面を示す。このようにして粘着剤ドットが転写形成された試験片は、極めて容易に金属、木材、石材、紙、プラスチック製品等の面に貼り付けることができた。」

(1i)
「【0022】
【発明の効果】本発明の転写型粘着シート材の粘着剤層は、不連続の独立単位区域の集合よりなる形状を有し、各独立単位区域の寸法(大きさ)は、被転写面の寸法(大きさ)を越えず、好ましくは転写をより容易にするように被転写面の寸法より小さめであるので、連続相の粘着剤層の場合のような転写における粘着剤層の切断が円滑に起こらず、所望の転写形状が得られないというような問題は無く、特別の用具や装置が無くても容易に被転写面に粘着剤層を転写することができ、垂直面や仰向面への転写も可能で、また、打抜きや切り抜きを行わなくても転写でき、シート材の無駄を少なくできる等の利点を有する。また、本発明による剥離性担体シート上に小さなドット状に形成された粘着材層を有する転写型粘着シート材(テープ状を包含する)があれば、何処でも特別の用具や装置が無くても、容易且つ簡便に任意の物品の被転写面に粘着剤層を転写により形成させることができ、その結果、貼り付け作業を極めて能率的且つ安全に実施することができ、また、被転写面が平面のみならず曲面の場合も容易に転写が行える。」

(1j)【図1】?【図6】(5頁中段)





(2)各周知例の記載事項

ア.周知例1
周知例1には、以下の事項が記載されている。

(2a)
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
塗膜を塗布した基材を巻装した送出軸と、被転写体へ転写した後の基材を巻き取る巻取軸と、送出軸と巻取軸との間の基材搬送経路上に設けられた転写部とを備えた転写具に用いられる転写テープであって、前記塗膜を点状に形成して、前記基材の幅方向に複数の列状で、かつ、ある塗膜における該基材の縦方向の先端部位が隣接する他の塗膜における該基材の縦方向の途中部位に位置させて、前記基材上の単位面積あたり70?80%の占有率となるように均一に塗布したことを特徴とする転写テープ。
【請求項2】
基材の幅方向両端に、ドライエッジ部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の転写テープ。」

(2b)
「【技術分野】
【0001】
本考案は、転写具に用いられる両面粘着型の塗膜が基材上に塗布された転写テープに係り、転写の終了時に該塗膜が被転写体と転写具本体との間で伸びたりしないで必要な箇所で確実に切断でき、かつ被転写体上の所望の箇所で転写を終了させたときにその終了端に塗膜が存在し、また、塗膜の粘着力を維持できる技術に関する。」

(2c)
「【考案が解決しようとする課題】
【0007】
確かに特許文献1?3は、塗膜が単純に基材上の縦方向に不連続(予め区切られた状態)で塗布されているから、不連続部分で転写を終了すれば糸引きを回避できる。しかしながら、特許文献1?3は、塗膜における基材の縦方向の途中で転写を終了させる場合、被転写体上の転写終了端に塗膜が存在しなかったり、転写終了端からはみ出て余分に塗膜が転写されてしまうことがあった。
【0008】
上記の点を解消するためには、塗膜の不連続部分の間隔を短くしたり、塗膜の面積を小さくすれば、転写終了端で的確に塗膜を存在させることが可能かもしれないが、この場合、塗膜の間隔と面積を過剰に小さくすると転写時の押圧により塗膜同士が接触して繋がってしまい糸引きが生じる可能性が高くなり、また、塗膜の面積が小さく、塗膜の間隔が広いと粘着力が低下する。
・・(中略)・・
【0010】
本考案が解決しようとする問題点は、基材の縦方向に塗膜を単純に不連続的に塗布した場合は転写終了端に塗膜を存在させることができない点、また、塗膜の面積と間隔を調整しても粘着力の高低により効果が一定とならない点、を解消することにある。」

(2d)
「【0014】
また、本考案の転写テープにおいて、基材の幅方向両端にドライエッジ部を形成しておけば、転写テープの製造段階において、所定幅に基材を切断する際に、切断刃に塗膜が付着することが防止されるので、作業性が向上する。」

(2e)
「【0028】
さらに、本考案の転写テープ1は、図5(a)に示すように、基材2の幅方向の両端部にドライエッジ部2Aを設けてもよい。ドライエッジとは、基材2上の幅方向の両端において塗膜3が存在しない部位を意味する。ちなみに、ドライエッジ部2Aが設けられていない転写テープ1は、図1?図3に示したように塗膜3が基材2の幅方向端縁部まで存在している。
【0029】
図5(a)に示すドライエッジ部2Aの幅(A,B)は、点状とされた塗膜3の幅よりも狭くすることが望ましい。この理由は、転写テープ1としての基材2の幅方向における有効粘着面において、塗膜3が存在しない面積が過剰に広いと、前記有効粘着面での粘着力が低下するからである。よって、ドライエッジ部2Aは、点状とされた塗膜3の幅よりも狭く、つまり必要最低限の幅であればよいのである。
【0030】
ドライエッジ部2Aが設けられた転写テープ1は、塗膜3の材料を装填するセルが刻設された図5(b)に示すグラビアロールGにより塗膜3を幅方向に一体とされた基材2上に塗布し、その後、幅方向に一体とされた状態の転写テープ1の原反を、幅方向において塗膜3が存在しない部位(A+B)の幅中央で切断刃を用いて切断して製造する。
【0031】
つまりドライエッジ部2Aを設けた転写テープ1は、ドライエッジ部2Aとなるべき部位に前記セルが刻設されていないグラビアロールGを用いて塗膜3を塗布し、ドライエッジ部2Aを設けていない転写テープ1は、周面全域に前記セルが刻設されたグラビアロールGを用いて塗膜3を塗布するということである。
【0032】
このとき、ドライエッジ部2Aを設けていない場合、本発明の基材2上に粘着剤を点状に設けた塗膜3は、基材2上に均一な層として塗膜3を設けている場合に較べて、基材2との接触面積が小さいため、基材2との密着が小さい。よって塗膜3が切断刃と接触すると塗膜3ごと切断刃に付着する虞がある。
【0033】
ドライエッジ部2Aを設けている場合、基材2上に塗膜3が点状に塗布された転写テープ1の原反を切断する際、ドライエッジ部2Aを形成した基材2だけを切断することになるから、塗膜3が切断刃に付着することがなく、製造作業性が向上する。さらに製品としては、基材2の幅方向両端に設けた塗膜3が切断刃に付着して取り除かれるということがないから、点状の配列が乱れることが防止され、粘着力が安定する。」

(2f)【図5】(9頁中段)





イ.周知例2
周知例2には、以下の事項が記載されている。

(3a)
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
塗膜を塗布した基材を巻装した送出軸と、被転写体へ転写した後の基材を巻き取る巻取軸と、送出軸と巻取軸との間の基材搬送経路上に設けられた転写部とを備えた転写具に用いられる転写テープであって、前記塗膜を多角形形状の点状に形成して、前記基材の幅方向に複数の列状で、かつ、ある塗膜における該基材の縦方向の先端部位が隣接する他の塗膜における該基材の縦方向の途中部位に位置させて、前記基材上の単位面積あたり68?82%の占有率となるように均一に塗布したことを特徴とする転写テープ。
【請求項2】
塗膜の多角形形状の角を円弧状としたことを特徴とする請求項1記載の転写テープ。
・・(中略)・・
【請求項5】
基材の幅方向両端に、ドライエッジ部が形成されていることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の転写テープ。」

(3b)
「【技術分野】
【0001】
本考案は、転写具に用いられる両面粘着型の塗膜が基材上に塗布された転写テープに係り、転写の終了時に該塗膜が被転写体と転写具本体との間で伸びたりしないで必要な箇所で確実に切断でき、かつ被転写体上の所望の箇所で転写を終了させたときにその終了端に塗膜が存在し、また、塗膜の粘着力を維持できる技術に関する。」

(3c)
「【考案が解決しようとする課題】
【0007】
確かに特許文献1?3は、塗膜が単純に基材上の縦方向に不連続(予め区切られた状態)で塗布されているから、不連続部分で転写を終了すれば糸引きを回避できる。しかしながら、特許文献1?3は、塗膜における基材の縦方向の途中で転写を終了させる場合、被転写体上の転写終了端に塗膜が存在しなかったり、転写終了端からはみ出て余分に塗膜が転写されてしまうことがあった。
【0008】
上記の点を解消するためには、塗膜の不連続部分の間隔を短くしたり、塗膜の面積を小さくすれば、転写終了端で的確に塗膜を存在させることが可能かもしれないが、この場合、塗膜の間隔と面積を過剰に小さくすると転写時の押圧により塗膜同士が接触して繋がってしまい糸引きが生じる可能性が高くなり、また、塗膜の面積が小さく、塗膜の間隔が広いと粘着力が低下する。
【0009】
そこで塗膜の面積と塗膜の間隔を規定する手法(特許文献3)が考えられる。しかし、特許文献3の規定を満たしたとしても次の不具合が生じる可能性がある。特許文献3は、例えば塗膜の面積と間隔の規定が共に規定の最大の限界値に近づくと、転写開始端又は転写終了端の被転写体又は基材に塗膜を適切に存在させることができなかったり、被転写体と基材上に大きい面積の塗膜が跨って糸引きが生じたりする可能性がある。
【0010】
また、特許文献3は、例えば塗膜の面積と間隔の規定が共に最小の限界値に近づくと、上記の可能性は低減するものの、塗膜の粘着力の高低により効果が一定ではなくなるという可能性がある。
【0011】
特許文献3において塗膜の面積と間隔の規定を共に最小の限界値に近づけた場合で、塗膜の粘着力が高くなると、塗膜の粘着性に起因して、基材上で転写時の塗膜同士の接触が生じて糸引きが生じやすくなり、これを回避しようとして、塗膜の粘着力を低くすれば、全体としての塗膜の粘着力を維持できない可能性がある。
【0012】
本考案が解決しようとする問題点は、基材の縦方向に塗膜を単純に不連続的に塗布した場合は転写終了端に塗膜を存在させることができない点、また、塗膜の面積と間隔を規定しても糸引きの発生を回避することと、転写解始端や転写終了端に適切に塗膜を存在させることを達成できない可能性がある点、さらに、粘着力の高低により効果が一定とならない点、を解消することにある。」

(3d)
「【0047】
さらに、本考案の転写テープ1は、図9(a)に示すように、基材2の幅方向の両端部にドライエッジ部2Aを設けてもよい。ドライエッジとは、基材2上の幅方向の両端において塗膜3が存在しない部位を意味する。ちなみに、ドライエッジ部2Aが設けられていない転写テープ1は、図1?図3、及び図8に示したように塗膜3が基材2の幅方向端縁部まで存在している。
【0048】
図9(a)に示すドライエッジ部2Aの幅(A,B)は、点状とされた塗膜3の幅よりも狭くすることが望ましい。この理由は、転写テープ1としての基材2の幅方向における有効粘着面において、塗膜3が存在しない面積が過剰に広いと、前記有効粘着面での粘着力が低下するからである。よって、ドライエッジ部2Aは、点状とされた塗膜3の幅よりも狭く、つまり必要最低限の幅であればよいのである。
・・(中略)・・
【0051】
このとき、ドライエッジ部2Aを設けていない場合、本発明の基材2上に粘着剤を点状に設けた塗膜3は、基材2上に均一な層として塗膜3を設けている場合に較べて、基材2との接触面積が小さいため、基材2との密着が小さい。よって塗膜3が切断刃と接触すると塗膜3ごと切断刃に付着する虞がある。
【0052】
ドライエッジ部2Aを設けている場合、基材2上に塗膜3が点状に塗布された転写テープ1の原反を切断する際、ドライエッジ部2Aを形成した基材2だけを切断することになるから、塗膜3が切断刃に付着することがなく、製造作業性が向上する。さらに製品としては、基材2の幅方向両端に設けた塗膜3が切断刃に付着して取り除かれるということがないから、点状の配列が乱れることが防止され、粘着力が安定する。」

(3e)【図9】(13頁中段)





ウ.周知例3
周知例3には、以下の事項が記載されている。

(4a)
「1)両面剥離紙上に粘着剤を互いに少狭の間隙を保持して点状に複数個塗布してなることを特徴とする両面粘着転写テープ。
2)実用新案登録請求の範囲第1項記載の両面剥離紙の長手方向の上側部、下側部には点状粘着剤を塗布しないことを特徴とする両面粘着転写テープ。」(1頁5行?11行、実用新案登録請求の範囲第1項及び第2項)

(4b)
「本考案は両面粘着転写テープの改良に関するものである。
近年両面剥離紙に粘着剤のフィルム幕を塗布し、それをテープ状に巻き込んだ両面粘着転写テープが汎用されている。芯材を使用した従来の両面粘着転写テープに比較して、この種の両面粘着転写テープは、シンプルで理想的なテープであるが、以下の如き未解決の問題点が残存している。
すなわち、両面剥離紙上面全域、全面にフィルム状粘着剤が塗布されているため、テープ状に巻き込んだ際に粘着剤が両側にはみ出してしまい、例えばこの巻テープを自動転写装置ケース内に収納して使用する場合にはケース内側にはみ出した粘着剤が粘着し、両面粘着転写テープのスムーズな回転繰り出しに支障を生ずるとともに、ケース内に粘着した部分が剥離され部分的に粘着剤が欠除された両面粘着転写テープが感圧転写されることにもなる。」(1頁17行?2頁15行)

(4c)
「本考案にあってはこのような欠点を解決し、誤差を生ずることなく所望位置にて正確に両面粘着剤切断が容易に行うことができるとともに粘着剤の両側部へのはみ出し等も防ぐことのできる両面粘着転写テープを提供することを目的とする。」(4頁17行?5頁2行)

(4d)
「第1図に示す実施例において、図中1は両面剥離紙であり、長手方向の上側部2、下側部3を除く部分には、点状粘着剤4が複数個互いに少狭の間隙5を有して塗布されている。・・(中略)・・第2図・第3図に示す実施例の如く点状粘着剤4を長手方向に対して縦方向に整列化した時にはさらに正確かつ整然と所望の終端位置にて両面粘着剤の転移作業を行うことができるものであり、・・(中略)・・また、粘着性にあっても各点状粘着剤は少狭の間隔で複数個密集状に塗布されていることから充分な粘着力を有するものである。さらに上側部、下側部には点状粘着剤4が塗布されていないことから、第4図に示す如く巻回テープ状とした時にあっても、両側部よりはみ出してしまい自動転写器ケース内に接着し、充分な繰り出し状態が得られなくなるというおそれも全くないものである。」(5頁8行?6頁11行)

(4e)「第1図」?「第4図」(8頁?9頁)







エ.周知例4
周知例4には、以下の事項が記載されている。

(5a)
「両面剥離紙の片面に感圧性の粘着剤を塗布した両面粘着転写テープを粘着剤が外面に露呈すべく巻回して成る巻テープを回転自在にケーシング内部に挿軸し、前記ケーシング内部には前記巻テープの自由回転を防止すべく巻テープに圧接するバネ状の圧接板を取り付け、前記ケーシング下方には、前記巻テープの粘着剤面が露呈すべく切欠部を設け、また前記ケーシング上方には粘着剤を剥離転写済みの両面剥離紙を排出する送出口を設けて成る両面粘着転写テープの自動転写器構造に於いて、前記両面剥離紙に塗布する粘着剤は、両面剥離紙の長手方向の上側部、下側部にはドライエッジ部分を形成すべく、前記上側部、下側部には両面剥離紙露呈部が形成され、更に、前記ケーシングの上方内部の前記送出口よりも巻テープ回転方向側には溝状または袋穴状のガイド部に自身の重さにより前記巻テープ方向へ自由移動降下して前記巻テープ表面の両面剥離紙のドライエッジ部分のみに当接するための切欠部を有し、鉄材の如き比較的重い素材より成る剥離紙巻き込み防止用ストツパーとしての自由当接片を位置せしめるとともに、前記バネ状の圧接板は、ケーシングの内周取付基部から巻テープの回転方向に習う方向に突出するとともに、この圧接板端部は両面剥離紙のドライエッジ部分のみに圧接して当接部に粘着剤の接触を回避するための切欠部を有し、かつ圧接板両端部が常時ドライエッジ部分のみに確実に当接位置すべく圧接板両端部のやや後方には巻テープ方向に向かつてガイド板を突設したことを特徴とする両面粘着転写テープの自動転写器。」(1頁5行?2頁14行、実用新案登録請求の範囲第1項)

(5b)
「また、この種の両面粘着転写テープの自動転写機に使用される両面粘着転写テープ自体にも次の如き問題点があった。
近年両面剥離紙に粘着剤のフィルム膜を塗布し、それをテープ状に巻き込んだ両面粘着転写テープが汎用されている。芯材を使用した従来の両面粘着転写テープに比較して、この種の両面粘着転写テープは、シンプルで理想的なテープであるが、以下の如き未解決の問題点が残存している。
すなわち、両面剥離紙上面全域、全面にフィルム状粘着剤が塗布されているため、テープ状に巻き込んだ際に粘着剤が両側にはみ出してしまい、例えばこの巻テープを自動転写装置ケース内に収納して使用する場合にはケース内側にはみ出した粘着剤が粘着し、両面粘着転写テープのスムースな回転繰り出しに支障を生ずるとともに、ケース内に粘着した部分が剥離され部分的に粘着剤が欠除された両面粘着転写テープが感圧転写されることにもなる。」(5頁6行?6頁4行)

(5c)
「[課題を解決するための手段]
前述した課題は両面剥離紙の片面に感圧性の粘着剤を塗布した両面粘着転写テープを粘着剤が外側に露呈すべく巻回して成る巻テープを回転自在にケーシング内部に挿軸し・・(中略)・・て成る両面粘着転写テープの自動転写器構造に於いて、前記両面剥離紙に塗布する粘着剤は、両面剥離紙の長手方向の上側部、下側部にはドライエッジ部分を形成すべく、前記上側部、下側部には両面剥離紙露呈部が形成され・・(中略)・・たことを特徴とする両面粘着転写テープの自動転写器によって解決されるものである。」(8頁7行?9頁18行)

(5d)
「[実施例]
以下、図面に基づいて本考案の一実施例を説明する。
第1図から第5図に於いて、1は転写器であり、この転写器1は蓋部2aを有するケーシング2の巻テープ装着軸3に第1図、第2図、第3図に示す如く両面剥離紙4の片面4aに感圧性の粘着剤片5を前記両面剥離紙4の長手方向、上側、下側に粘着剤の存在しないドライエッジ部分4bを形成すべく両面剥離紙4よりも幅狭とし、少しの間隔をおいて連続して塗布してなる両面粘着転写テープを巻き取りして成る巻テープ6を回転自在に装填している。」(9頁19行?10頁11行)

(5e)「第1図」?「第3図」(16頁?17頁左上欄)







2.本願発明についての検討

(1)引用例に記載された発明
上記引用例には、「剥離機能を有する担体シート上に、不連続の独立単位区域の集合よりなる形状を有する粘着剤層が形成され、且つ、前記各独立単位区域の寸法が被転写面の寸法以下であることを特徴とする転写型粘着シート材」が記載され(摘示(1a)の【請求項1】参照)、当該「転写型粘着シート材」の「粘着剤層上に剥離シートを保護シートとして被せている」ことも記載されている(摘示(1a)の【請求項3】参照)。
そして、上記引用例には、上記「不連続の独立単位区域の集合よりなる形状を有する粘着剤層」として、円形、方形又は楕円形のドット状の「不連続の独立単位区域」形状の粘着剤層の配列集合からなるものが記載されている(摘示(1j)参照)。
してみると、上記引用例には、上記(1a)ないし(1j)の摘示事項からみて、
「剥離機能を有する担体シート上に、円形、方形又は楕円形のドット形状の不連続の独立単位区域の配列集合よりなる粘着剤層が形成され、且つ、前記粘着剤層上に剥離シートを保護シートとして被せている転写型粘着シート材」
に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものといえる。

(2)対比・検討

ア.対比
本願発明と上記引用発明とを対比すると、引用発明における「剥離機能を有する担体シート」、「円形、方形、楕円形又はX形のドット形状の不連続の独立単位区域の配列集合よりなる粘着剤層」、「剥離シート」及び「転写型粘着シート材」は、それぞれ、本願発明における「剥離基材」、「粘着剤を間欠的に塗布され、周縁部を直線又は曲線により構成され中心から外方へ向けて膨出させた膨出形状に成形した複数の粘着剤ブロックからなる粘着剤配置領域・・を有する粘着剤層」、「剥離被覆材」及び「粘着剤転写シート」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「剥離基材と、当該剥離基材上に粘着剤を間欠的に塗布され、周縁部を直線又は曲線により構成され中心から外方へ向けて膨出させた膨出形状に成形した複数の粘着剤ブロックからなる粘着剤配置領域を有する粘着剤層と、当該粘着剤層を被覆し得る剥離被覆材とを少なくとも具備する粘着剤転写シート」
の点で一致し、下記の2点で相違する。

相違点1:「粘着剤層」につき、本願発明では、「剥離基材の周縁部に成形された粘着剤退避領域を有する」のに対して、引用発明では、そのような粘着剤退避領域につき特定されていない点
相違点2:本願発明では、「前記剥離被覆材の周囲に前記粘着剤退避領域を設けることにより、前記粘着剤退避領域上に前記剥離被覆材の端縁を位置付けている」のに対して、引用発明では、剥離シートの周囲に粘着剤退避領域を設けること及び剥離シートの端縁の位置付けにつき特定されていない点

イ.各相違点に係る検討

(ア)相違点1について
上記相違点1について検討すると、引用発明の転写型粘着シート材においても、円形、方形、楕円形又はX形のドット形状の不連続の粘着剤層単位は、剥離機能を有する担体シート上に独立して間隔を開けて配列しており、担体シートの上側部及び下側部の端部に接する単位が存しないものであって(摘示(1j)の【図5】参照)、さらに、引用発明の転写型粘着シート材においても、粘着剤層(単位)の押圧などによる「食み出し」及び「押し広げ」につき開示されているのである(摘示(1e)参照)から、引用発明の転写型粘着シート材は、単位区域の配列集合よりなる粘着剤層の周囲に粘着剤層単位が存しない部分が存在し、さらに当該部分は、本願発明における「粘着剤退避領域」に相当するものと理解するのが自然である。
してみると、上記相違点1については、実質的な相違点であるとはいえない。
また、仮に、上記相違点1に係る事項が実質的な相違点であるとしても、上記周知例1ないし4にそれぞれ記載されている(特に摘示(2e)、(3d)、(4d)及び(5d)参照)とおり、転写型粘着テープ材の技術分野において、切断加工などによりテープ材が押圧される場合の粘着剤(層)のはみ出しによる装置への接着などを防止するために、基材上の粘着剤層の周囲に粘着剤が存しない部分(ドライエッジ)を設けることは、当業者の周知技術であるものと認められる。
してみると、引用発明の転写型粘着シート材において、粘着剤(層)のはみ出しによる装置への接着などを防止するために、上記当業者の周知技術に基づき、単位区域の配列集合よりなる粘着剤層の周囲に粘着剤層単位が存しない部分、すなわち、粘着剤退避領域を設けることは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点であるとはいえないか、当業者が適宜なし得ることである。

(イ)相違点2について
上記相違点2につき検討すると、引用発明の転写型粘着シート材において、剥離シートは、粘着剤層上に保護シートとして被せているのであるから、当該剥離シートは、ドット形状の不連続の独立単位区域の配列集合よりなる粘着剤層が存在する部分を超えて存在するものと理解するのが自然であり、また、当該剥離シートの面積は、基材である剥離機能を有する担体シートの面積を超えることは、特段の事情がない限り不要であることが当業者に自明であるから、当該剥離シートは、担体シートの面積を超えて設けられているものではないと理解するほかはない。
してみると、引用発明の転写型粘着シート材において、剥離シートは、その端縁が、ドット形状の不連続の独立単位区域の配列集合よりなる粘着剤層が設けられている部分の外縁と担体シートの外縁との間、すなわち、担体シート上の粘着剤層が設けられていない部分に存するものと理解するほかはなく、これは、本願発明でいう「剥離被覆材の周囲に前記粘着剤退避領域を設けること」及び「粘着剤退避領域上に前記剥離被覆材の端縁を位置付けている」ことと実質的に同一の状態であるものと認められる。
(なお、本願発明における「剥離被覆材の周囲に前記粘着剤退避領域を設けること」なる記載では、粘着剤退避領域を設ける部分につき、剥離被覆材の端縁の外側周囲である場合と剥離被覆材の端縁の内側周囲(剥離被覆材と剥離基材とで挟まれた粘着剤層が存在しない部分)である場合とが想起し得る。しかしながら、上記前者である場合、剥離被覆材の端縁の外側周囲に粘着剤(層)がはみ出せば、粘着剤転写シートを重積保管した際、複数のシート同士が接着する蓋然性が極めて高く、当該部位に粘着剤退避領域を設けたことの技術的意義を喪失するものと理解される。したがって、上記で説示した検討においては、上記後者の意味と理解した上で検討を行った。)
したがって、上記相違点2は、実質的な相違点であるとはいえないか、当業者が所望に応じて適宜発明特定事項として規定したものに過ぎない。

ウ.本願発明の効果について
本願発明の効果につき本願明細書及び図面の記載に基づいて検討すると、従来技術を表す【図8】の記載からみて、従来技術における上記相違点1及び相違点2に係る事項を具備する場合(すなわち、剥離被覆材の端縁及び剥離基材の端縁から離れた内側位置にある粘着剤ブロックg(最左方)の場合)であっても、剥離被覆材の剥離に伴い粘着剤ブロックgが剥離基材から剥離被覆材に転写される場合が存するものと認められる。
また、上記イ.(ア)で示したとおり、転写型粘着テープ材の技術分野において、切断加工などによりテープ材が押圧される場合の粘着剤(層)のはみ出しによる装置への接着などを防止するために、基材上の粘着剤層の周囲に粘着剤が存しない部分(ドライエッジ)を設けることは、当業者の周知技術であるから、当該基材上の粘着剤層の周囲に粘着剤が存しない部分(ドライエッジ)を設けた場合、装置への接着等が回避されるであろうことは、当業者が予期し得るものと認められる。
してみると、本願発明が上記相違点1及び2の事項を具備することにより、例えば引用発明のものに比して、特段の効果を奏するものとは認められない。

エ.対比・検討のまとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用発明及び当業者の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)審判請求人の主張について
なお、審判請求人は、平成24年11月12日付け本件審判請求書において、
「各引用文献と比較した場合、本願の請求項1に係る発明と、各引用文献記載の発明とを比較した場合、本願発明は、剥離被覆材の周囲に粘着剤退避領域を設けることにより、粘着剤退避領域上に剥離被覆材の端縁を位置付けている点で、引用文献記載の発明とは明らかな構成上の差異を有しています。
このような構成により、本願発明によれば、(A)剥離被覆材の縁部は基材よりも退避している位置に設けているため輸送中などは不意に剥離被覆材が縁部から側面からの衝撃等により剥がれてしまうことを回避しつつ、所望のときだけ粘着剤退避領域上にある縁部を使用者が適宜摘む等により剥離被覆材を容易に剥がすことができるという顕著な作用効果を奏しています。(B)加えて、通常このような粘着剤転写シートは複数の当該粘着剤転写シートが積層された状態で包装袋等に収納されています。その際、包装袋の下部分にある粘着剤転写シートには相当の荷重が掛かります。そして時間の経過とともに粘着剤が圧縮されて広がることとなります。そこで本願発明に係る粘着剤転写シートであればこの様な実際に起こる状況であっても、荷重により広がった粘着剤が剥離被覆材や剥離基材から粘着剤がはみ出し、誤って袋に止着されてしまうことがありません。そして、使用時には積層された全ての粘着剤転写シートを収納袋から容易に取り出すことができます。すなわち上記の点により本願発明は実際の流通に係る保管・輸送時から販売、使用時に至るまで上記の顕著な作用効果が奏されるものであります。」
と主張する(【本願発明が特許されるべき理由】の「3.本願請求項に係る発明と引用文献記載の発明の対比」の欄)。

しかるに、本願の願書に最初に添付された明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を検討すると、請求人が主張する「剥離被覆材の縁部は基材よりも退避している位置に設け」ることについては、図面(【図1】、【図4】及び【図7】)及び発明の詳細な説明の図面に関する説明部(【0030】)に単に記載されているのみであり、発明の詳細な説明の他の部分及び他の図面には記載又は示唆されておらず、さらに発明の詳細な説明の記載を検討しても、「剥離被覆材の縁部は基材よりも退避している位置に設け」ることによる上記請求人が主張する「輸送中などは不意に剥離被覆材が縁部から側面からの衝撃等により剥がれてしまうことを回避」することなどの効果につきその作用機序を理解することができる事項が記載されているものとも認められない。
また、本願発明の粘着剤転写シートの製造方法に係る本願の願書に最初に添付された明細書の発明の詳細な説明(【0032】?【0039】)及び図面(【図6】)の記載を検討すると、工程ST3において、積層して形成した粘着転写シート長尺物の剥離被覆材と剥離基材とを同時に単一の切断具で切断して単葉の粘着転写シートとしており、切断により形成された上記剥離被覆材の端縁と剥離基材の端縁とは略同一の部位となるものと理解するほかはなく、「剥離被覆材の縁部」が「基材(の縁部)」よりも退避した位置となるものとは認められない。
さらに、仮に、「剥離被覆材の縁部」が「基材(の縁部)」よりも退避した位置となるものとすると、実質的な粘着剤退避領域は「剥離被覆材と剥離基材とで挟まれた粘着剤層が存在しない部分」なのである(上記(2)イ.(イ)の括弧内の説示参照)から、単に粘着剤退避領域が狭くなるだけであって、積層時などの粘着剤(層)のはみ出しの可能性が高くなり、複数の粘着シートの接着などの危険性が高まるものと理解するほかはない。
してみると、請求人の上記(A)の主張は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載に基づかないものであり、また上記(B)の主張は、「剥離被覆材の縁部は基材よりも退避している位置に設け」るという発明特定事項との因果関係が不明であって技術的根拠を欠くものであると認めざるを得ない。
したがって、審判請求人の上記請求書における主張は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載に基づかないものであるか、技術的な根拠を欠くものであるから、採用する余地がないものであり、当審の上記(2)の検討結果を左右するものではない。

(4)当審の判断のまとめ
以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び当業者の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではない。

第5 むすび
したがって、本願は、他の請求項に係る各発明につき検討するまでもなく、特許法第49条第2号の規定に該当し、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-19 
結審通知日 2014-02-25 
審決日 2014-03-11 
出願番号 特願2006-353286(P2006-353286)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松原 宜史  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 橋本 栄和
日比野 隆治
発明の名称 粘着剤転写シート  
代理人 赤澤 一博  
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