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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1287075
審判番号 不服2013-23391  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-11-29 
確定日 2014-05-13 
事件の表示 特願2008-118516「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日出願公開,特開2009-267309,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成20年4月30日の出願であって,平成25年4月24日付けで拒絶理由が通知され,同年7月3日に意見書と手続補正書が提出され,同年8月30日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
その後,当審において平成26年2月18日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知し,同年4月4日に意見書と手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明は,平成26年4月4日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,そのうちの本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は,以下のとおりである。
「【請求項1】
半導体基板の表面より上に位置する絶縁膜に孔を形成する工程と,
反応室内に搬入された前記半導体基板を330℃以上400℃以下に加熱し,かつB_(2)H_(6)ガス及びSiH_(4)ガスの少なくとも一方並びにタングステン含有ガス,及びキャリアガスを前記反応室内に導入することにより,前記孔の内部に第1のタングステン膜を成膜する工程と,
前記反応室内にH_(2)ガス及び不活性ガスの一方又は両方からなるガスを導入し,かつ30秒以上の時間をかけて前記半導体基板を370℃以上410℃以下に昇温する工程と,
タングステン含有ガス,H_(2)ガス,及びキャリアガスを前記反応室内に導入することにより,前記第1のタングステン膜上に第2のタングステン膜を成膜する工程と,
を備え,
前記半導体基板を昇温する工程において,前記孔の内部に成膜を行わない
半導体装置の製造方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
A.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
B.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1?4,6
・理由 A,B
・引用文献等 1
・備考
引用文献1の,特に,段落【0019】?【0024】,図2?4及び図面説明箇所を参照されたい。
(昇温速度については,段落【0023】の数値から換算して1.5?3℃/秒となり,請求項3に記載の範囲を満たしている。)

・請求項5?6
・理由 B
・引用文献等 1,2
・備考
層間絶縁膜上の第1のタングステン膜,第2のタングステン膜を除去し,コンタクトホールにタングステン膜を残すことは,引用文献2(特に,【0026】?【0030】,図2)に記載されているように,良く行われていることであるから,引用文献1において,引用文献2のタングステン膜除去工程を採用することは格別でない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2004-273764号公報
2.特開平6-275727号公報

2 拒絶査定の概要
この出願については,平成25年 4月24日付け拒絶理由通知書に記載した理由Bによって,拒絶をすべきものです。
なお,意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが,拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考
・請求項1?6
出願人は意見書において,請求項1に係る発明は,「前記半導体基板を昇温する工程において,前記孔の内部に成膜を行わない」点で,引用文献1とは異なる旨,主張している。
しかしながら,この根拠となる本願の段落【0016】において,
「次いで,反応室内にH_(2)ガス及び不活性ガスの少なくとも一方を導入し,かつ30秒以上の時間をかけて半導体基板100を370℃以上410℃以下に昇温する。不活性ガスは,たとえばArなどの希ガス及びN_(2)である。ここで導入されるガスは,後述する第2のタングステン膜240を形成する工程において反応室内に導入されるガスからタングステン含有ガスを省いたガスであっても良い。…」
とあり,下線部の記載から判断して,本願の発明の詳細な説明においては,積極的に孔の内部に成膜を行わないことに格別な効果が見受けられないし,引用文献1においても,昇温する工程で形成されるパッシベーションタングステン膜を「極力薄く」(段落【0022】)しているのであるから,引用文献1においても,本質的には,成膜条件が安定しない,昇温する工程での膜を積極的に厚く形成しようという意図がないことは明らかである。
そうすると,引用文献1において,孔の内部に成膜を行わないことに,当業者が格別な困難性を有するものとは云えない。
よって,出願人の主張は採用できず,したがって,本願の請求項1?6に係る発明は,引用文献1,2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるため,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-273764号公報
2.特開平6-275727号公報

3 当審の判断
(1)刊行物の記載事項
引用例1(特開2004-273764号公報)には,図2-4とともに,以下の事項が記載されている。
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空引き可能になされた処理容器内にて被処理体の表面にタングステン膜を形成するに際して,
還元ガスを供給する還元ガス供給工程とタングステン含有ガスを供給するタングステンガス供給工程とを,前記両工程の間に不活性ガスを供給しつつ真空引きするパージ工程を介在させて,交互に繰り返し行うようにして初期タングステン膜を形成するようにした初期タングステン膜形成工程と,
前記処理容器内へ還元ガスを流しつつ前記タングステン含有ガスの流量を増加するように変化させて同時に流すことによって前記処理容器内の圧力を次第に上昇させつつパッシベーションタングステン膜を形成するパッシベーションタングステン膜形成工程と,
前記処理容器に前記還元ガスと前記タングステン含有ガスとを引き続き流して主タングステン膜を形成する主タングステン膜形成工程と,
を有することを特徴とするタングステン膜形成方法。
【請求項2】
前記パッシベーションタングステン膜形成工程では,前記被処理体の温度を次第に上昇させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のタングステン膜形成方法。」

(1b)「【請求項6】
前記還元ガスは,H_(2) ガス,シラン(SiH_(4) ),ジシラン(Si_(2) H_(6) ),ジクロルシラン(SiH_(2) Cl_(2) ),ジボラン(B_(2) H_(6) ),ホスフィン(PH_(3) )の内のいずれか1つよりなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のタングステン膜の形成方法。」

(1c)「【0004】
これを,図17を参照して説明する。図17はボルケーノとボイドが発生している埋め込み穴を示す断面図である。半導体ウエハWの表面にコンタクトホール等の埋め込み穴2があり,この埋め込み穴2の内面を含めた表面に,例えばTi/TiN膜よりなるバリヤ層4が予め形成されている。そして,この状態でWF_(6) ガスとH_(2) ガスとを同時に供給してタングステン膜6を堆積させて埋め込みを行うと,WF_(6) 中のフッ素がバリヤ層中へ拡散し,特に表面部のバリヤ層4のTiとフッ素が反応することによって埋め込み穴2の近辺を基点としてタングステン膜6が突起状に堆積してその突起部の先端部がタングステン膜6の応力によってボルケーノ8が発生したり,また,埋め込み穴2内には空洞状のボイド10が発生したりする。
【0005】
そして,上記ボルケーノ8等の発生を防止するために,最初に水素ガスに代えて,これよりも還元力の強いシランを用いて僅かな厚さ,例えば300?500Å程度だけタングステン膜の核付け層を形成し,その後,この核付け層を起点としてH_(2) ガスとWF_(6 )ガスにより主たるタングステン膜を堆積することも行われていたが,この場合には,下地膜であるバリヤ層4の表面が例えば,有機金属膜が形成された表面や酸化された表面等によって核付け層が均一にできない場合があった。」

(1d)「【0017】
次に,以上のように構成された装置を用いて行われる本発明方法について説明する。
まず,処理容器22の側壁に設けたゲートバルブ52を開いて図示しない搬送アームにより処理容器22内にウエハWを搬入し,リフタピン36を押し上げることによりウエハWをリフタピン36側に受け渡す。そして,リフタピン36を,押し上げ棒40を下げることによって降下させ,ウエハWを載置台34上に載置する。このウエハWの表面には,埋め込み穴2の内面も含めて前工程にてすでに下地膜としてTi/TiN膜のようなバリヤ層4が形成されている(図18(A)参照)。

・・・<途中省略>・・・

【0020】
まず,図2(A)に示す初期タングステン膜形成工程のガス供給態様は,図3にも示すように還元ガスであるSiH_(4 )ガスを供給する還元ガス供給工程70とタングステン含有ガスであるWF_(6) ガスを供給するタングステンガス供給工程72とを,これらの両工程の間に不活性ガスとしてのキャリアガスを供給しつつ真空引きするパージ工程74を介在させて,交互に複数回繰り返し行うようにして初期タングステン膜76(図4参照)を形成している。すなわち,SiH_(4 )ガスの供給とWF_(6) ガスの供給を交互に繰り返し行い,それらの繰り返し工程の間にパージ工程74を介在させることにより,初期タングステン膜形成工程を行う。そして,この初期タングステン膜形成工程の最後は還元ガス供給工程70で終了している。そして,処理容器22内が基板(ウエハ)表面にSiH_(4 )ガスでSiH_(x)を付着させている事により,次のパッシベーション膜形成工程84,主タングステン膜形成工程80にて膜が効果的に形成されやすくなる。この点は,図2(B)?図2(C)においても同じである。
【0021】
このようにして,初期タングステン膜76を形成したならば,次に,還元ガスとして今度はSiH_(4 )ガスに代えてH_(2) ガスを用い,本発明の特徴とするパッシベーションタングステン膜82(図4参照)を形成するパッシベーションタングステン膜形成工程84を連続的に行っている。尚,ここでも不活性ガス,例えばAr,N_(2) ガス等を継続して流している。このパッシベーションタングステン膜形成工程84では,主タングステン膜形成工程80と同じガス種,すなわちWF_(6) ガスとH_(2) ガスとを用いており,ただし,WF_(6) ガスを流す前にH_(2) ガスを流して,その流量を一定に維持すると共に,次に,タングステン含有ガスを流してその流量を少しずつ増加するように変化させ,同時に処理容器22内の圧力(プロセス圧力)及び基板温度を次第に上昇させている(図3参照)。このパッシベーションタングステン膜形成工程84の期間T5は,例えば3?90秒で好ましくは10?60秒である。この場合,処理容器22内の圧力及び基板温度を一定に保持してもよい。
【0022】
具体的には,図3に示すように上記初期タングステン膜形成工程79の短時間のパージ工程74を行った後に,上記WF_(6) ガスを処理容器22内に入れないで排気ラインに流し,例えば1?30秒,好ましくは3?5秒程度質量流量計を安定させ,WF_(6 )ガスの流量を安定させる。このWF_(6) ガスの流量が安定したΔt秒後にWF_(6 )ガスを処理容器22内へ流してWF_(6) ガスの流量を徐々に増加させる。
またH_(2) ガスの供給はWF_(6) ガスの流量が安定するΔt秒前に処理容器22内へ供給される。このパッシベーションタングステン膜形成工程により上記初期タングステン膜上にパッシベーションタングステン膜が形成される。
上記したようにWF_(6 )ガスの流量を僅かな量から徐々に増加させる理由は,極力薄くしたパッシベーション膜を形成することで,主タングステン膜形成工程でのWF_(6) ガスからのダメージを抑制し,保護膜の上記初期タングステン膜を補強することを目的としているからである。これにより,初期タングステン膜形成工程79の成膜時間を短くすることで全成膜時間を短縮することができ,スループットの向上を図ることができる。
【0023】
つまりパッシベーションタングステン膜形成は,H_(2) ガスの供給量を,所定の流量で供給し,前述したようにWF_(6) ガスは所定の時間かけて主タングステン膜形成工程80における供給量まで少しずつ増加させることで,下地層へのWF_(6)(フッ素)のダメージを最少にするためにはWF_(6) ガスの供給量を少なくする必要がある。しかし,埋め込みを得るためには,WF_(6) ガスは多くする必要がある。これを両立するために,先にH_(2) ガスを供給して,そして,しばらくしてWF_(6) ガスの供給を開始してその供給量を次第に大きくするようにしている。
図3ではこのパッシベーションタングステン膜形成工程79におけるプロセス圧力は,13330Pa以下の圧力範囲で,例えば好ましくは1000Pa(7.5Torr)から10610Pa(80Torr)まで直線的に増加させており,また,プロセス温度は300℃?450℃の温度範囲で,例えば好ましくは350から410℃まで直線的に増加させている。また,処理時間は10?60秒が好ましく,昇温,昇圧の条件では20秒?40秒がより好ましい。また,温度一定で処理した場合は,基板の温度変化がないため,処理時間は10?20秒でよい。
【0024】
次に,上記パッシベーションタングステン膜形成工程84が終了したならば,そのままのWF_(6) ガスの流量を流し,H_(2) ガスの流量を減らしてそれぞれ流しつつ主タングステン膜形成工程80を継続して行う。尚,ここでもキャリアガスとして不活性ガス,例えばAr,N_(2) ガス等を継続して流している。このようにして所定の時間だけ主タングステン膜形成工程84を行って,例えば埋め込み穴2を主タングステン膜78で完全に埋め込む。この時のプロセス圧力,プロセス温度は,パッシベーションタングステン膜形成工程が終了した時点から実質的に変動させておらず,それぞれ一定に保つ。
ここで,初期タングステン膜形成工程において,或る還元ガス供給工程70から次の還元ガス供給工程70までの期間を1サイクルとすると,図2(A)の場合には3サイクル行っているが,このサイクル数は特に限定されない。」

(1e)「【0029】
これにより,ウエハWの表面には,初期タングステン膜76が比較的均一に且つ良好に付着して堆積することになる。この初期タングステン膜76は,図18(C)中の核付け層14として機能するものであり,従って,この上に主タングステン膜78を埋め込み性が良好な状態で堆積させることが可能となる。
また,本発明の特徴とするパッシベーションタングステン膜形成工程84では,WF_(6) ガスを少しずつ増加させるように変化させ,且つプロセス圧力も少しずつ増加させるようにしてパッシベーションタングステン膜82(図4参照)を形成するようにしているので,初期タングステン膜76のバリヤ性を補強する役割を持ち,初期タングステン膜76を極力薄くする事ができる。更に高抵抗な初期タングステン膜76の効果も小さくする効果も期待できる。
このような理由で,このパッシベーションタングステン膜が,いわゆるWF_(6) に対してのパッシベーション膜,或いはバリヤ膜として機能し,これにより,主タングステン膜を形成する際のWF_(6) のFの拡散によるTi膜へのダメージを抑制し,より一層,埋め込み特性を改善することが可能となる。」

(1f)図3は,成膜工程全体を通じての各ガス流量の一例とプロセス条件との関係を示すフローチャートであって,上記摘記(1d)の記載を参酌すれば,同図から,
SiH_(4 )ガスの供給とWF_(6) ガスの供給を交互に繰り返し行い,それらの各供給工程の間にパージ工程74を介在させることにより,プロセス温度350℃で,初期タングステン膜を形成する工程79と,
H_(2) ガスを流して,その流量を一定に維持すると共に,H_(2) ガスを流し始めた時点の3秒後から,WF_(6) ガスを小流量で流し始め,その流量を少しずつ増加するように変化させ,同時に処理容器22内の圧力(プロセス圧力)を998Paから10640Paに,また,プロセス温度を350℃から390℃に直線的に上昇させて,好ましくは10?60秒の処理時間の間,パッシベーションタングステン膜を形成する工程84と,
WF_(6) ガスの流量を流し,H_(2) ガスの流量を減らしてそれぞれ流しつつ,主タングステン膜を形成する工程80と,
を備え,
キャリアガスとして不活性ガス,例えばAr,N_(2) ガス等は継続して流す
半導体装置の製造方法のフローチャート。
を見て取ることができる。

(1g)図4は,半導体ウエハの表面に堆積したタングステン膜の一例を示す拡大断面図であって,当業者であれば,同図から,シリコン層の表面より上に位置する絶縁膜に形成した孔を,タングステン膜で埋め込んだ半導体装置の構造を見て取ることができる。

そうすると,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「半導体ウエハのシリコン層(以下「ウエハ」という。)の表面より上に位置する絶縁膜に孔を形成する工程と,
前記ウエハの表面に,前記孔の内面も含めて,下地膜としてTi/TiN膜のようなバリヤ層を形成する工程と,
処理容器内に前記ウエハを搬入する工程と,
SiH_(4 )ガスの供給とWF_(6) ガスの供給を交互に繰り返し行い,それらの各供給工程の間にパージ工程を介在させることにより,プロセス温度350℃で,初期タングステン膜を形成する工程と,
H_(2) ガスを流して,その流量を一定に維持すると共に,H_(2) ガスを流し始めた時点の3秒後から,WF_(6) ガスを小流量で流し始め,その流量を少しずつ増加するように変化させ,同時に前記処理容器内の圧力(プロセス圧力)を998Paから10640Paに,また,プロセス温度を350℃から390℃に直線的に上昇させて,好ましくは10?60秒の処理時間の間,パッシベーションタングステン膜を形成する工程と,
WF_(6) ガスの流量を流し,H_(2) ガスの流量を減らしてそれぞれ流しつつ,主タングステン膜を形成する工程と,
を備え,
キャリアガスとして不活性ガス,例えばAr,N_(2) ガス等は継続して流す
半導体装置の製造方法。」

(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「初期タングステン膜を形成する工程」及び「主タングステン膜を形成する工程」は,それぞれ,本願発明の「第1のタングステン膜を成膜する工程」及び「第2のタングステン膜を成膜する工程」に相当する。

そうすると,本願発明1と引用発明の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
半導体基板の表面より上に位置する絶縁膜に孔を形成する工程と,
反応室内に搬入された前記半導体基板を330℃以上400℃以下に加熱し,かつB_(2)H_(6)ガス及びSiH_(4)ガスの少なくとも一方並びにタングステン含有ガス,及びキャリアガスを前記反応室内に導入することにより,前記孔の内部に第1のタングステン膜を成膜する工程と,
30秒以上の時間をかけて前記半導体基板を370℃以上410℃以下に昇温する工程と,
タングステン含有ガス,H_(2)ガス,及びキャリアガスを前記反応室内に導入することにより,前記第1のタングステン膜上に第2のタングステン膜を成膜する工程と,
を備えた半導体装置の製造方法。

<相違点>
・相違点1:本願発明1では,半導体基板を昇温する工程において,「前記反応室内にH_(2)ガス及び不活性ガスの一方又は両方からなるガスを導入し」,かつ,「前記孔の内部に成膜を行わない」のに対して,引用発明では,「H_(2) ガスを流して,その流量を一定に維持すると共に,H_(2) ガスを流し始めた時点の3秒後から,WF_(6) ガスを小流量で流し始め,その流量を少しずつ増加するように変化させ」,「キャリアガスとして不活性ガス,例えばAr,N_(2) ガス等は継続して流」し,かつ,「パッシベーションタングステン膜を形成」する点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
・相違点1について
ア 引用例1の上記摘記(1e)の「このパッシベーションタングステン膜が,いわゆるWF_(6) に対してのパッシベーション膜,或いはバリヤ膜として機能し,これにより,主タングステン膜を形成する際のWF_(6) のFの拡散によるTi膜へのダメージを抑制し,より一層,埋め込み特性を改善することが可能となる。」との記載から,引用発明において,「パッシベーションタングステン膜」の形成を行わない場合には,主タングステン膜を形成する際のWF_(6) のFの拡散によるTi膜へのダメージが抑制されず,埋め込み特性が劣化することを,当業者であれば予測するものといえる。
そうすると,引用発明において,「パッシベーションタングステン膜」の形成を行わないとすることには,阻害要因が存在するといえる。

イ さらに,本願の明細書【0022】の「また,第1のタングステン膜242を成膜した後,第2のタングステン膜240を成膜する前に,反応室内にH_(2)ガス及び不活性ガスの少なくとも一方を導入し,かつ30秒以上の時間をかけて半導体基板を370℃以上410℃以下に昇温している。これにより,第1のタングステン膜242に吸着しているガスが除去されるため,第2のタングステン膜240の結晶粒が大きくなり,接続プラグの抵抗が低くなる。この効果は,第1のタングステン膜242を形成する工程においてB_(2)H_(6)ガスではなくSiH_(4)ガスを用いた場合に,特に顕著になる。」との記載から,第1のタングステン膜を成膜した後,第2のタングステン膜を成膜する前に,反応室内にH_(2)ガス及び不活性ガスの少なくとも一方を導入し,かつ30秒以上の時間をかけて,成膜を行わずに,半導体基板を370℃以上410℃以下に昇温することで,第1のタングステン膜に吸着しているガスが除去されて,第2のタングステン膜の結晶粒が大きくなり,接続プラグの抵抗が低くなるという格別の効果が奏されることが理解できる。

ウ そうすると,引用発明において,上記相違点1を本願発明1の構成とすることに阻害要因が存在し,しかも,本願発明1は,上記相違点1によって格別の効果を備えるものと認められるから,上記相違点1について本願発明の構成を採用することは容易であったとはいえない。

(4)小括
したがって,本願発明1は,引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また,本願の請求項2-6に係る発明は,いずれも請求項1を引用し,これをさらに限定する発明であるところ,本願発明1が,上記のように,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことから,本願の請求項2-6に係る発明も,本願発明1と同様に,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
本件出願は,明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


・備考
特許請求の範囲に,特許を受けようとする発明が,明確に記載されていない。

2 当審拒絶理由の判断
(1)平成26年4月4日付けの手続補正書によって,本願の請求項1は「【請求項1】
半導体基板の表面より上に位置する絶縁膜に孔を形成する工程と,
反応室内に搬入された前記半導体基板を330℃以上400℃以下に加熱し,かつB_(2)H_(6)ガス及びSiH_(4)ガスの少なくとも一方並びにタングステン含有ガス,及びキャリアガスを前記反応室内に導入することにより,前記孔の内部に第1のタングステン膜を成膜する工程と,
前記反応室内にH_(2)ガス及び不活性ガスの一方又は両方からなるガスを導入し,かつ30秒以上の時間をかけて前記半導体基板を370℃以上410℃以下に昇温する工程と,
タングステン含有ガス,H_(2)ガス,及びキャリアガスを前記反応室内に導入することにより,前記第1のタングステン膜上に第2のタングステン膜を成膜する工程と,
を備え,
前記半導体基板を昇温する工程において,前記孔の内部に成膜を行わない
半導体装置の製造方法。」と補正された。このことにより,請求項1及び請求項1を引用する各請求項の記載は明確となった。
よって,当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-05-01 
出願番号 特願2008-118516(P2008-118516)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 正山 旭  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 加藤 浩一
恩田 春香
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 天城 聡  
代理人 速水 進治  

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