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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1287083 |
審判番号 | 不服2013-18530 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-25 |
確定日 | 2014-05-13 |
事件の表示 | 特願2010-169556「半導体装置製造用フィルム、半導体装置製造用フィルムの製造方法、及び、半導体装置の製造方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月16日出願公開、特開2012- 33557、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成22年7月28日に出願したものであって、手続きの概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成25年 3月29日(起案日) 意見書 :平成25年 6月 7日 手続補正 :平成25年 6月 7日 拒絶査定 :平成25年 6月25日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成25年 9月25日 手続補正 :平成25年 9月25日 審尋 :平成26年 1月22日(起案日) 回答書 :平成26年 3月13日 第2 平成25年9月25日付けの手続補正の適否 1.本件補正 平成25年9月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするもので、本件補正前に、 「 【請求項1】 ダイシングテープ上に接着剤層が積層された接着剤層付きダイシングテープが、前記接着剤層を貼り合わせ面にして、所定の間隔をおいてセパレータに積層された半導体装置製造用フィルムであって、 前記セパレータは、前記ダイシングテープの外周に沿った切れ込みがあり、 前記切れ込みの深さが前記セパレータの厚さの2/3以下であり、 前記接着剤層は、着色剤が添加されていることを特徴とする半導体装置製造用フィルム。」 とあったところを、 本件補正後、 「 【請求項1】 ダイシングテープ上に接着剤層が積層された接着剤層付きダイシングテープが、前記接着剤層を貼り合わせ面にして、所定の間隔をおいてセパレータに積層された半導体装置製造用フィルムであって、 前記セパレータは、前記ダイシングテープの外周に沿った切れ込みがあり、 前記切れ込みの深さが前記セパレータの厚さの2/3以下であり、 前記接着剤層は、着色剤が添加されており、フリップチップ実装の半導体装置が有する半導体チップの裏面に貼着されるものであることを特徴とする半導体装置製造用フィルム。」 とするものである。 上記本件補正の内容は、請求項1について、発明特定事項である「接着剤層」について「フリップチップ実装の半導体装置が有する半導体チップの裏面に貼着されるものである」と限定したものである。 本件補正は、発明特定事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて、以下検討する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-350520号公報(平成17年12月22日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) (1)「【0001】 本発明は、接着シート及びその製造方法、並びに、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。」 (2)「【0014】 本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、プリカット加工が施されており、剥離基材からの接着層、粘着層及び基材フィルムの剥離不良を十分に抑制することが可能な接着シート及びその製造方法、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。」 (3)「【0047】 [接着シート] (第1実施形態) 図1は、本発明の接着シートの第1実施形態を示す平面図であり、図2は、図1に示す接着シート1を図1のA1-A1線に沿って切断した場合の模式断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の接着シート1は、剥離基材12と、接着層14と、粘着層22と、基材フィルム24とが順次積層された構成を有している。また、接着層14と、粘着層22及び基材フィルム24からなる粘着フィルム20とで構成される積層体10は、所定の平面形状に切断されており、剥離基材12上に部分的に積層されている。更に、剥離基材12には、積層体10の平面形状の周縁に沿って、接着層14に接する側の面から剥離基材12の厚み方向に第1の切り込み部D1が形成されている。」 (4)「【0049】 また、接着シート1において、剥離基材12に形成された第1の切り込み部D1の切り込み深さd1は、剥離基材12の厚さ未満となっており、且つ、25μm(以下)(請求項1)となっている。 【0050】 かかる接着シート1を使用する場合には、剥離基材12から積層体10が剥離され、積層体10は接着層14を介して半導体ウェハ等の被着体に貼り付けられることとなる。」 (5)「【0055】 接着層14には、半導体チップの接着(接合)に使用されている公知の熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、熱可塑性接着剤あるいは酸素反応性接着剤等を用いることができる。これらは、単独で用いても2種類以上を組み合わせてもよい。」 (6)「【0062】 接着層14の厚さは、搭載基板への接着性は十分に確保しつつ、半導体ウェハへの貼り合わせ作業及び貼り合わせ後のダイシング作業に影響を及ぼさない範囲であることが望ましい。かかる観点から、接着層14の厚さは1?300μmであることが好ましく、5?150μmであることがより好ましく、10?100μmであることが特に好ましい。厚さが1μm未満であると、十分なダイボンド接着力を確保することが困難となる傾向があり、300μmを超えると、ダイシング作業への影響等の不具合が生じる傾向がある。」 (7)「【0074】 また、接着シート1は、剥離基材12の厚さをa(μm)として、(d1/a)の値が下記式(1)の条件を満たしていることが好ましい。 0<(d1/a)≦0.7 (1) 【0075】 上記(d1/a)の値が上記式(1)の条件を満たしていることにより、接着層14や粘着層22が第1の切り込み部D1へ噛み込まれることをより十分に抑制することができ、剥離不良の発生をより十分に抑制することができる。また、かかる効果をより十分に得る観点から、上記式(1)における(d1/a)の値の上限値は、0.5であることがより好ましく、0.3であることが更に好ましく、0.25であることが特に好ましく、0.15であることが極めて好ましく、0.1であることが最も好ましい。」 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 (a)引用例1には、半導体装置の製造に用いる接着シートが記載されている(摘示事項(1)、(2))。 (b)接着シート1は、剥離基材12と、接着層14と、粘着層22と、基材フィルム24とが順次積層された構成を有している。また、接着層14と、粘着層22及び基材フィルム24からなる粘着フィルム20とで構成される積層体10は、所定の平面形状に切断されており、剥離基材12上に所定の間隔をおいて(図1)部分的に積層されている。更に、剥離基材12には、積層体10の平面形状の周縁に沿って、接着層14に接する側の面から剥離基材12の厚み方向に第1の切り込み部D1が形成されている(摘示事項(3))。 (c)剥離基材12に形成された第1の切り込み部D1の切り込み深さd1は、剥離基材12の厚さ未満となっており、且つ、25μm以下となっている(摘示事項(4))。 (d)積層体10は接着層14を介して半導体ウェハ等の被着体に貼り付けられる(摘示事項(4))。 (e)半導体チップは接着層14を介して搭載基板に接着される(摘示事項(5)、(6))。 (f)接着シート1は、剥離基材12の厚さをa(μm)として、(d1/a)の値が下記式(1)の条件を満たしていることが好ましい。 0<(d1/a)≦0.7 (1) 上記式(1)における(d1/a)の値の上限値は、0.5であることがより好ましい(摘示事項(7))。 以上を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「剥離基材12と、接着層14と、粘着層22と、基材フィルム24とが順次積層された構成を有している半導体装置の製造に用いる接着シート1であって、 接着層14と、粘着層22及び基材フィルム24からなる粘着フィルム20とで構成される積層体10は、所定の平面形状に切断されており、剥離基材12上に所定の間隔をおいて部分的に積層されており、 剥離基材12には、積層体10の平面形状の周縁に沿って、接着層14に接する側の面から剥離基材12の厚み方向に第1の切り込み部D1が形成されており、 剥離基材12に形成された第1の切り込み部D1の切り込み深さd1は、剥離基材12の厚さ未満となっており、且つ、25μm以下となっており、 積層体10は接着層14を介して半導体ウェハ等の被着体に貼り付けられ、 半導体チップは接着層14を介して搭載基板に接着され、 剥離基材12の厚さをa(μm)として、(d1/a)の値が下記式(1)の条件を満たしている半導体装置の製造に用いる接着シート1。 0<(d1/a)≦0.5 (1)」 3.対比 そこで、本件補正発明と引用発明とを対比する。 (1)半導体装置製造用フィルム 引用発明の「粘着フィルム」20は、半導体ウェハに貼り付けられ、ダイシング時に半導体チップが飛散しないようにするものであるから、「ダイシングテープ」といえる。引用発明の「接着層」14は、「接着剤層」といえる。引用発明の「積層体」10は、接着層14と、粘着フィルム20とで構成されるから、「接着剤層付きダイシングテープ」といえる。引用発明の「剥離基材」12は、「セパレータ」といえる。引用発明の「半導体装置の製造に用いる接着シート」1は、「半導体装置製造用フィルム」といえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「ダイシングテープ上に接着剤層が積層された接着剤層付きダイシングテープが、前記接着剤層を貼り合わせ面にして、所定の間隔をおいてセパレータに積層された半導体装置製造用フィルムであ」る点で一致する。 (2)セパレータ 引用発明の「剥離基材」12には、積層体10の平面形状の周縁に沿って、接着層14に接する側の面から剥離基材12の厚み方向に第1の切り込み部D1が形成されているから、「粘着フィルム」20の外周に沿った切れ込みがあるといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記セパレータは、前記ダイシングテープの外周に沿った切れ込みがあ」る点で一致する。 (3)切れ込み 引用発明の剥離基材12に形成された第1の切り込み部D1の切り込み深さd1は、剥離基材12の厚さをa(μm)として、(d1/a)の値が0<(d1/a)≦0.5の条件を満たしているから、剥離基材12の厚さの2/3以下の条件を満たしているといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記切れ込みの深さが前記セパレータの厚さの2/3以下であ」る点で一致する。 (4)接着剤層 引用発明の「接着層」14がダイボンディング実装の半導体装置が有する半導体チップの裏面に貼着されるものであることは、明らかである。 したがって、本件補正発明と引用発明とは、「前記接着剤層は、半導体チップの裏面に貼着されるものである」点で一致する。 もっとも、本件補正発明と引用発明とは、「接着剤層」について、本件補正発明は、着色剤が添加されているのに対し、引用発明は、そのようになされていない点で相違し、「半導体チップ」について、本件補正発明は、フリップチップ実装の半導体装置が有するものであるのに対し、引用発明は、ダイボンディング実装の半導体装置が有するものである点で相違する。 そうすると、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「ダイシングテープ上に接着剤層が積層された接着剤層付きダイシングテープが、前記接着剤層を貼り合わせ面にして、所定の間隔をおいてセパレータに積層された半導体装置製造用フィルムであって、 前記セパレータは、前記ダイシングテープの外周に沿った切れ込みがあり、 前記切れ込みの深さが前記セパレータの厚さの2/3以下であり、 前記接着剤層は、半導体チップの裏面に貼着されるものである半導体装置製造用フィルム。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> (1)「接着剤層」について、本件補正発明は、着色剤が添加されているのに対し、引用発明は、そのようになされていない点。 (2)「半導体チップ」について、本件補正発明は、フリップチップ実装の半導体装置が有するものであるのに対し、引用発明は、ダイボンディング実装の半導体装置が有するものである点。 4.判断 そこで、上記相違点(1)、(2)について検討する。 原査定の拒絶の理由に引用された特開2006-140348号公報(平成18年6月1日公開、以下「引用例2」という。)には、フェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造(【0002】)に用いる保護膜形成兼ダイシング用シートの保護膜形成層2は、着色されていてもよい(【0053】)ことが記載されている。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-250970号公報(平成19年9月27日公開、以下「引用例3」という。)には、半導体素子がフェイスダウン型になっている半導体装置の製造(【0004】)に用いる半導体素子裏面保護用フィルムの樹脂層が着色剤を含む(請求項1)ことが記載されている。 しかしながら、引用発明の接着層14は、ダイボンディング実装の半導体装置が有する半導体チップの裏面に貼着されるものであって、実装後は視認し得ないものであるから、着色する動機付けがあるとはいえない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用例2、3に記載された構成に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たす。 5.本件補正についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項に規定する要件を満たす。 第3 本願発明について 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項に規定する要件を満たすから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-05-01 |
出願番号 | 特願2010-169556(P2010-169556) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
P 1 8・ 575- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 酒井 英夫 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
関谷 隆一 萩原 義則 |
発明の名称 | 半導体装置製造用フィルム、半導体装置製造用フィルムの製造方法、及び、半導体装置の製造方法。 |
代理人 | 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 |