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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F16L
管理番号 1287131
審判番号 無効2012-800176  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-10-24 
確定日 2014-05-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3768329号発明「サドル付き分水栓」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3768329号に係る出願は、平成9年5月6日の出願であって、平成18年2月10日にその請求項1に係る発明について特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、株式会社タブチ(以下、「請求人」という。)から平成24年10月24日付けで請求項1に係る発明の特許について、無効審判の請求がなされたものであり、その後の手続の経緯は,以下のとおりである。

審判請求書 平成24年10月24日
審判事件答弁書 平成25年 1月15日
弁駁書 平成25年 3月 8日
審理事項通知書 平成25年 5月16日
口頭審理陳述要領書(請求人) 平成25年 6月24日
口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成25年 6月24日
口頭審理(特許庁審判廷) 平成25年 7月 8日

2.審判請求人の主張

審判請求人が主張する無効理由の要旨は、次のとおりである。
なお、請求人は、証拠方法として、甲第1号証?甲第6号証、参考資料として甲第7号証?甲第16号証を提出している。

甲第1号証 横須賀市水道局編 給水装置指針書(第5版)
甲第2号証 韓国実用新案1933-1631
甲第3号証 実願昭50-58545号(実開昭51-137722号)のマイクロフィルム
甲第4号証 韓国実用新案1991-1722
甲第5号証 日本水道協会規格(水道用サドル付分水栓、JWWA B 117-1982)
甲第6号証 意見書(本件特許の審査段階における意見書)
甲第7号証 JIS 銅及び銅合金鋳物
甲第8号証 橋本邦之編著 「エポキシ樹脂」(日刊工業新聞社)
甲第9号証の1 図面
甲第9号証の2 図面
甲第10号証 変更及び通知書
甲第11号証の1 分岐方向変換試験報告書
甲第11号証の2 動画
甲第12号証 図面
甲第13号証 実公昭52-45855号公報
甲第14号証 実願昭47-35226号(実開昭48-111916号)のマイクロフィルム
甲第15号証 広辞苑 「分解」
甲第16号証 生産仕様書

(1)無効理由

本件特許発明は、甲第1号証?甲第5号証に基づき、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は特許法第123条第1項2号に該当し、無効とされるべきである。

(2)口頭審理において、請求人は、

・甲第1号証記載のものは、結合方向変換時には、本件特許明細書でいうところの「止水部を分解」しているものであること、を認めた。

・構成要件Gに関し、甲第9号証の1及び甲第9号証の2において、部品の変更がないことについて、積極的な記載はないことを認めた。

3.被請求人の主張

被請求人の主張の要旨は、次のとおりである。
なお、被請求人は、証拠方法として、乙第1号証?乙第7号証を提出している。

乙第1号証 「給水装置工事技術指針 本編」
乙第2号証 請求人カタログ「TBCサドル分水栓 TBC形・日本水道協会形・東京都形」
乙第3号証 被請求人カタログ「サドル分水栓東京都仕様」
乙第4号証 「JISハンドブック 鉄鋼」
乙第5号証 日本水道協会規格「水道用ダグタイル鋳鉄管内面エポキシ樹脂粉体塗装 JWWA G 112」
乙第6号証の1 請求人製品1設計図
乙第6号証の2 請求人製品2設計図
乙第6号証の3 請求人製品3設計図
乙第7号証 請求人サドル分水栓カタログ

(1)無効理由について

本件特許発明と甲1に記載の発明とは、相違点1?6において相違するところ、いずれの相違点も、当業者が容易に想到するものではないから、本件特許発明は、進歩性を有することが明らかであり、請求人が主張する進歩性欠如の無効理由はない。

(2)口頭審理において、被請求人は、

・甲第1号証において、本件特許発明の「サドル」、「分水栓本体」に対応するものは、「本体1」、「ボールケース3」であり、両者は異種金属で、「本体1」はエポキシ樹脂粉体塗装がされていること、を認めた。

・「環状保持体」が「ボール」を押さえるものであること、は認めた。

・甲第1号証記載のものは、分解すれば方向を変更できるものであること、を認めた。

4.本件特許発明

本件特許の請求項に係る発明は、本件特許請求の範囲、本件特許明細書及び本件図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本件特許発明」という。)。

「【請求項1】サドルとバンドから成るサドル本体を水道本管に固定し、前記サドルの上部端面に支受面を形成し、一方、分水栓本体の内部に三方口を有するボールをステムを介して回動自在に設け、前記分水栓本体に環状保持体を螺着し、この環状保持体と分水栓本体の内部に一対のボールシートを介在させて止水機構を構成し、前記環状保持体の下面と前記水道本管との間にガスケットを装着すると共に、前記分水栓本体の下部にフランジ部を形成し、前記支受面上に塗膜又は樹脂を介して前記フランジ部を重ねて支受面とフランジ部とを同一間隔に配置した4個のボルトで固定して、電気的腐食を防止すると共に、分水栓本体と支受面との結合方向を選択できるようにしたことを特徴とするサドル付分水栓。」

5.甲各号証の記載内容

(1)甲第1号証

甲第1号証には、配水管にサドル付分水栓を取り付けること、ボール式サドル分水栓の組み立て図が開示されており、174頁のボール式サドル分水栓の組み立て図には、以下の事項が記載されていると認められる。

・サドル本体は本体とカバーとからなり、本体の上部端部にはボールケースを支持する面が形成されていること。

・ボールケースの内部に三方口を有するボール弁体がスピンドルを介して回動自在に設け、ボールケースと本体の内部にボールシートを介在させて止水機構を構成していること。

・本体と配水管との間にサドルパッキンを装着していること。
・ボールケースの下部にフランジ部が形成されること。

・本体にボールケースのフランジ部が載置されること、また、その際、ボール弁体はボールシートを介して本体に支持されること。

・本体がエポキシ樹脂粉体塗装されていること。

・ボールケースのフランジ部と本体とは縦横に配置した4個の六角ボルトで固定されていること。

・ボールケースのフランジ部と本体とは、結合方向が変えられること。

これらの記載によると、甲第1号証には、

「本体とカバーから成るサドル本体を配水管に固定し、前記本体の上部端面にボールケースを支持する面を形成し、一方、ボールケースに三方口を有するボール弁体がスピンドルを介して回動自在に設け、ボールケースと本体の内部にボールシートを介在させて止水機構を構成し、本体と配水管との間にサドルパッキンを装着し、前記ボールケースの下部にフランジ部を形成し、本体はエポキシ樹脂粉体塗装がされており、前記ボールケースを支持する面にエポキシ樹脂粉体塗装を介して前記フランジ部を重ねてボールケースを支持する面とフランジ部とを縦横に配置した4個のボルトで固定して、ボールケースとボールケースを支持する面との結合方向を選択できるようにしたサドル付分水栓。」の発明(以下「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)甲第2号証

甲第2号証には、以下の記載がある。

・「請求項1
上水道分水栓(1)を締結バンド(2)の締着部(3)に結合するようにした公知のものにおいて、分水栓(1)のボールバルブを固定するリテーナー(6)の下端部に胴体(1')の外部に突出するフランジ(6')を形成し、前記バンドの締着部(3)にネジ締めなしに挿着して締結ネジ(7)の下端部が前記フランジ(6')を締着部(3)の底に圧着できるように締結し、分水栓の方向を水平の任意方向に調節できるように構成したことを特徴とする上水道分水栓の締着装置。」(請求の範囲)

・図2には、締結バンド(2)と上水道管(4)の間、および、締結バンド(2)とフランジ(6’)の間に、一体のパッキン(11)が装着されていることが記載されている。

(3)甲第3号証

甲第3号証には、以下の記載がある。

・「栓本体(4)を着脱自在な上胴(5)と下胴(6)とで構成し、上胴(5)にはボール栓嵌入部(7)と、このボール栓嵌入部に通ずる通水口(12)(13)とを設けると共に、上胴のボール栓嵌入部(7)を下方に開口(8)させて、この開口(8)に下胴(6)の上端が螺合せしめられるようになし、上胴(5)のボール栓嵌入部(7)に装填されたボール栓(1)の下面を下胴(6)の上端面で支承するようにしたことを特徴とする分水栓。」(実用新案登録請求の範囲)

・「このようにして組込みを終えた栓本体は、下胴(6)の下部外壁面に形成されたテーパネジ部(23)をサドルバンド(25)のボス部に形成されているネジ孔(26)にネジ込んで固定する。」(第(5)頁第7?10行)

(4)甲第4号証

甲第4号証には、以下の記載がある。

・「請求項1
上部バンド(1)と下部バンド(2)を上水道管(3)に締結するようになったものにおいて、上部バンド(2)の上部に、孔(6)と関連した連結部(6’)を凹入するように形成し、バンドの底面に付着したゴムパッキング(7)の上端部のフランジ(7’)を連結部の段部(6’’)に密着させ、上部バンドの連結部(6)の両側方に孔(8’)が形成された肩部(8)を形成し、ボルト(9)を嵌め込み、下端部に挿着部(10’)が形成された胴部(10)の下周面に締結板(11)を形成し、胴体の挿着部(10’)を連結部(6’)に嵌め込んで密着させ、ボルト(9)によって胴体の締結板(10)を締結して胴体(10)と上部バンド(2)を結合させてなる上水道管の給水管連結装置。」(請求の範囲)

(5)甲第5号証

甲第5号証には、「水道用サドル付分水栓」について以下の記載がある。

・「6.塗装 栓の鋳鉄部には、JWWA G 112(水道用ダクタイル鋳鉄管内面エポキシ樹脂粉体塗装)又はJWWA K 115(水道用タールエポキシ樹脂塗料塗装方法)に規定する塗装を施すものとする。
なお、注文者の指定により、他の塗料を用いることができる。」(第(2)頁第17行から第20行)

6.当審の判断

本件特許発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、後者における「本体」、「カバー」、「配水管」は、前者における「サドル」、「バンド」、「水道本管」に相当する。
また、後者における「ボールケース」、「ボールケースを支持する面」、「ボール弁体」、「スピンドル」は、前者における「分水栓本体」、「支受面」、「ボール」、「ステム」に相当する。
また、後者において、「ボールケースと本体の内部にボールシートを介在させて止水機構を構成」していることと、前者において、「分水栓本体に環状保持体を螺着し、この環状保持体と分水栓本体の内部に一対のボールシートを介在させて止水機構を構成」していることとは、「止水機構を構成」している点で共通する。
また、後者において、「本体と配水管との間にサドルパッキンを装着」していることと、前者において、「環状保持体の下面と水道本管との間にガスケットを装着」していることとは、「水道本管との間にガスケットを装着」している点で共通する。
また、後者における「ボールケースを支持する面にエポキシ樹脂粉体塗装を介して前記フランジ部を重ねてボールケースを支持する面とフランジ部とを縦横に配置した4個のボルトで固定して、ボールケースとボールケースを支持する面との結合方向を選択できるようにした」構成は、前者における「支受面上に塗膜又は樹脂を介してフランジ部を重ねて支受面とフランジ部とを同一間隔に配置した4個のボルトで固定して、」「分水栓本体と支受面との結合方向を選択できるようにした」構成に相当する。
したがって、両者は、「サドルとバンドから成るサドル本体を水道本管に固定し、前記サドルの上部端面に支受面を形成し、一方、分水栓本体の内部に三方口を有するボールをステムを介して回動自在に設け、止水機構を構成し、水道本管との間にガスケットを装着すると共に、前記分水栓本体の下部にフランジ部を形成し、前記支受面上に塗膜又は樹脂を介して前記フランジ部を重ねて支受面とフランジ部とを同一間隔に配置した4個のボルトで固定して、分水栓本体と支受面との結合方向を選択できるようにしたサドル付分水栓。」である点で一致し、次の各点で相違する。

[相違点1]
「止水機構」に関し、本件特許発明では、「分水栓本体に環状保持体を螺着し、この環状保持体と分水栓本体の内部に一対のボールシートを介在させて止水機構を構成し」ているのに対し、甲第1号証記載の発明では、「ボールケースと本体の内部にボールシートを介在させて止水機構を構成」している点。

[相違点2]
「水道本管との間にガスケットを装着」することに関し、本件特許発明では、「環状保持体の下面と水道本管との間にガスケットを装着」しているのに対し、甲第1号証記載の発明では、「本体と配水管との間にサドルパッキンを装着」している点。

[相違点3]

本件特許発明では、「支受面上に塗膜又は樹脂を介してフランジ部を重ねて」固定することで「電気的腐食を防止する」としているのに対し、甲第1号証記載の発明では、「ボールケースを支持する面にエポキシ樹脂粉体塗装を介してフランジ部を重ねて」固定してはいるものの、「電気的腐食を防止する」とはされていない点。

相違点1について検討すると、ねじ式サドル付分水栓においては、本件明細書にも従来例として記載されているように、分水栓本体にボールを回転自在に内蔵した止水機構を設けることは周知であり、その構成として、甲第2号証に記載されたような、分水栓のボールバルブを固定するリテーナーを設けることや、甲第3号証に記載されたような、上胴のボール栓嵌入部に装填されたボール栓の下面を下胴の上端面で支承することも公知である。しかし、これらはいずれも、分水栓下部に、サドルに結合する円筒部を有しており、円筒部上部において、ボールを支持する必要があるものである。一方、フランジ式サドル付分水栓においては、サドル自体がボールを支持しており、別部材を設けて分水栓内部にボールを支持する必要がない。本件特許発明においては、止水部を分解せずに分岐方向を変換できるように、分水栓本体に環状保持体を螺着し、この環状保持体と分水栓本体の内部に一対のボールシートを介在させて止水機構を構成しているが、甲第1号証記載の発明において、止水部を分解せずに分岐方向を変換できるようにしようとすることを示唆する証拠はなく、前記したように、別部材を設けてボールを支持する必要性のない甲第1号証記載の発明において、甲第2号証に記載されたようなリテーナ、あるいは甲第3号証に記載されたような下胴のような、分水栓内部にボールを固定する部材を設けることは、動機付けがないばかりか、分水栓下部に余計な円筒部を付加することにもなるので、該相違点1に関する構成が、当業者にとって、容易に想到し得るものであるとは認めることができない。
なお、甲第4号証に、ボルトによって胴体の締結板を締結して胴体と上部バンドを結合させる分水栓において、分水栓内部にボールを保持したものが記載されているが、構成が、本件特許発明における「環状保持体」とは異なり、相違点1に関する構成を示唆しているとは認められない。

相違点2について検討すると、甲各号証に記載されたものは、サドルと水道本管の間、および、サドルと分水栓本体の間をシールするガスケットを設けたもので、両者を一体で構成することは記載されているものの、本件特許発明のように、分水栓の環状保持体の下面と水道本管との間にガスケットを装着したものとは異なるものであると認められる。そして、甲各号証に、分水栓本体と水道本管の間にガスケットを装着することが示唆されているとも認められないので、該相違点2に関する構成が、当業者にとって、容易に想到し得るものとは認められない。

相違点3について検討すると、本件特許明細書段落【0019】に「フランジ形であるため、サドルとの金属同志の接触を塗膜や樹脂を介在させて容易に絶縁するこことができる。」と記載されていること、エポキシ樹脂が電気絶縁材料であること、を考慮すれば、甲第1号証記載の発明においては、耐久性向上のためにボールケースをエポキシ樹脂粉体塗装し、「ボールケースを支持する面にエポキシ樹脂粉体塗装を介してフランジ部を重ねて」いるので、結果的に、「電気的腐食を防止」しているものと認められ、該相違点3が、実質的な差異であるとは認められない。

以上のとおりであるから、本件特許発明は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証?甲第5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認めることができない。

7.むすび

以上のとおり、本件特許発明についての特許は、請求人の主張及び証拠方法によっては、無効とすることができない。

本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-07-17 
結審通知日 2013-07-19 
審決日 2013-07-30 
出願番号 特願平9-131694
審決分類 P 1 113・ 121- Y (F16L)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 丸山 英行
特許庁審判官 原 泰造
小関 峰夫
登録日 2006-02-10 
登録番号 特許第3768329号(P3768329)
発明の名称 サドル付き分水栓  
代理人 小林 哲男  
代理人 松田 裕史  
代理人 和田 祐造  
代理人 丸山 英之  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 辻本 希世士  
代理人 ▲高▼見 憲  
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