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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1287204
審判番号 不服2013-713  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-16 
確定日 2014-05-01 
事件の表示 特願2007-251119「超音波診断装置、及び、入力ガイド方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 4月16日出願公開、特開2009- 78083〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年(2007年)9月27日を出願日とする特願2007-251119号であって、平成24年5月9日付けで拒絶理由が通知され、同年7月13日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年10月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成25年1月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、同年8月27日付けで、前置報告書の内容について審判請求人の意見を事前に求める審尋が行なわれ、同年10月31日付けで回答書が提出された。

第2 平成25年1月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成25年1月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項7に係る発明は、平成24年7月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項9に記載の、

「入力手段と、
被検体に超音波を送波し、前記送波された超音波の反射波を受け、前記反射波に基づいて画像データを生成し、前記生成した画像データに基づいて診断用画像を表示するための各構成要素と、
前記各構成要素を前記入力手段からの入力情報に基づいて制御する制御手段と、
前記入力手段から順次入力される複数の前記入力情報について前記診断用画像の画質に関わるものか否かを判定し、前記複数の入力情報のうちから、前記診断用画像の画質に関わるパラメータの値を抽出し、前記抽出されたパラメータの値に基づく制御を行うためのファイルを、前記診断用画像の画質に関わる前記入力情報が入力された順序に基づいて作成するファイル作成手段とを有することを特徴とする超音波診断装置。」が

「入力手段と、
被検体に超音波を送波し、前記送波された超音波の反射波を受け、前記反射波に基づいて画像データを生成し、前記生成した画像データに基づいて診断用画像を表示するための各構成要素と、
前記各構成要素を前記入力手段からの入力情報に基づいて制御する制御手段と、
前記入力手段から順次入力される複数の前記入力情報について前記診断用画像の画質に関わるものか否かを判定し、前記複数の入力情報のうちから、前記診断用画像の画質に関わるパラメータの値を抽出し、前記抽出されたパラメータの値に基づく制御を行うためのファイルを、前記診断用画像の画質に関わる前記入力情報が入力された順序に基づいて作成するファイル作成手段とを有し、
前記ファイル作成手段は、前記入力手段に設けられた操作キーによる指示に基づいて前記ファイルを作成する一方で、前記入力情報が前記診断用画像のデータの保存並びに前記診断用画像のフリーズ及びプリントのうち少なくとも一つを含むとき、前記ファイルの作成を終了することを特徴とする超音波診断装置。」と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

そして、この補正は、ファイルの「作成」及びその「終了」について、「前記ファイル作成手段は、前記入力手段に設けられた操作キーによる指示に基づいて前記ファイルを作成する一方で、前記入力情報が前記診断用画像のデータの保存並びに前記診断用画像のフリーズ及びプリントのうち少なくとも一つを含むとき、前記ファイルの作成を終了する」ことを特定する補正事項からなり、当該補正事項は、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正事項であるといえる。
なお、上記の補正事項は、本件補正前の請求項11に記載の内容に加えて「前記ファイル作成手段は、前記入力手段に設けられた操作キーによる指示に基づいて前記ファイルを作成する」という特定事項によっても限定するものであるから、本件補正後の請求項7が本件補正前の請求項11と同じものではないことから、本件補正が請求項の削除を目的とするものということはできない。
よって、本件補正における請求項7に係る発明の補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項(特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮)を目的とするものである。

2 独立特許要件違反についての検討
(1)そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項7に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-255013号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(下記の「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
本発明は、超音波診断装置の動作において発生する各イベントに関するパラメータの値の記録、読み出しに関するものであり、特に、検査者が意識的にパラメータの値を記録することなく、以前に設定した画像条件等を再設定させることが可能な超音波診断装置に関する。」

「【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0016】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置10は、超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路25、画像メモリ26、制御プロセッサ27、記憶部28、パラメータ管理部29、インタフェース部30を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0017】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種パラメータの値の設定及び変更指示、関心領域(ROI)の設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール13s、マウス13c、キーボード13d等を有している。
【0019】
モニタ14は、画像生成回路25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0020】
送受信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0021】
なお、送受信ユニット21は、制御プロセッサ27の指示に従って後述するスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数。送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0022】
また、送受信ユニット21は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0023】
Bモード処理ユニット22は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成回路25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ14に表示される。
【0024】
ドプラ処理ユニット23は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成回路25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニタ14にカラー表示される。
【0025】
画像生成回路25は、信号処理回路、スキャンコンバータ、イメージフォーマッタ(それぞれ図示せず)を有している。まず、信号処理回路は、超音波スキャンの走査線信号列のレベルで画質を決定するようなフィルタリングを行う。信号処理回路の出力はスキャンコンバータに送られると同時に、画像メモリ26に保存される。スキャンコンバータは、超音波スキャンの走査線信号列から、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。この出力はイメージフォーマッタへ送られ、ここでは、輝度やコントラストの調整や、空間フィルタなどの画像処理、もしくは種々の設定パラメータの文字情報や目盛などと共に合成され、ビデオ信号としてモニタ14に出力する。
【0026】
画像メモリ26は、画像生成回路25から受信した画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。
【0027】
制御プロセッサ27は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を静的又は動的に制御する。
【0028】
パラメータ管理部29は、本超音波診断装置において発生するイベントに関するパラメータの値を時間情報と共に自動記憶し、事後的に読み出して再生するパラメータ管理を実行する。このパラメータ管理部29によって実現されるパラメータ管理機能については、後で詳しく説明する。
【0029】
図2は、パラメータ管理部29の構成を示したブロック図である。同図に示すように、パラメータ管理部29は、パラメータ設定モニタリング部291、パラメータ設定検索部293、パラメータ履歴情報記憶部295を有している。
【0030】
パラメータ設定モニタリング部291は、入力装置13からのパラメータ変更操作をモニタリングし、変更操作があった場合には、変更後のパラメータの値をパラメータ履歴情報記憶部295に送り出す。
【0031】
パラメータ履歴情報記憶部295は、パラメータ設定モニタリング部291が変更操作等有りと判定した場合には、所定の指標と関連付けて変更後のパラメータの値を自動的に記憶する。
【0032】
パラメータ設定検索部293は、パラメータ履歴情報記憶部295に格納された情報を、所定の指標及び時間情報に基づいて検索する。
【0033】
インタフェース部30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0034】
(パラメータ管理機能)
次に、本超音波診断装置10が有するパラメータ管理機能について説明する。本管理機能は、パラメータ設定自動記憶機能と、パラメータ設定検索再現機能とに大きく分類することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0035】
a.パラメータ設定自動記憶機能
パラメータ設定自動記憶機能は、所定のパラメータの設定値を、所定の指標と対応付けて自動的に記憶する機能である。記憶の対象となるパラメータ(記憶対象パラメータ)は、当該超音波診断装置の動作制御の際に設定され、且つ超音波画像の画質に影響を与えるもののうち、検査者が選択した任意のパラメータである。具体的には、「超音波送受信に必要とされるパラメータ群」、「信号処理に必要とされるパラメータ群」、「画像表示に必要とされるパラメータ群」等である。また、検査者が自動記憶の対象として選択するパラメータ群は、必要に応じて「送信周波数」、「MI(Mechanical Index)値」、「対象深度(depth)」、「焦点(focus)」「受信信号の利得(gain)」、「STCボリューム」、「各種フィルタ値」といった具合に、記憶対象パラメータをさらに細かい単位で個別に選択することも可能である。
【0036】
また、記憶対象パラメータと対応付けられる指標とは、記憶対象パラメータの検索を目的として体系化するためのものであり、例えば、患者ID、検査者ID、検査番号、検査日時、診療科名、診断部位、疾患名その他の任意の管理上の概念である。検査者は、所望の指標を少なくとも一つ選択することで、記憶対象パラメータを当該指標によって管理することができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、説明を具体的にするため、患者毎に実施される超音波診断において、超音波診断装置の動作に必要な全ての機械的若しくは電気的又は物理的パラメータを記憶対象パラメータとする。また、記憶対象パラメータと対応付けられる指標として、患者ID(医師や技師のID)、検査者ID、検査番号、検査日時を選択するものとする。
【0038】
本自動記憶は、スイッチ・ボタン13bのある特定のスイッチやボタン等(例えば、新たな(変更後の)パラメータ値を入力し、その値の確定を指示するための「SET」ボタン等や、検査ルーチンで頻繁に利用される所定のキー等)が押された場合に、これをトリガとして実施される。また、これと合わせて、ある一定の(任意の)時間間隔で定期的に自動記憶する、或いは、所定期間操作パネルのキー入力が実行されない場合には、自動的に記憶する。この様に、スイッチ等の操作とは関係なく定期的な自動記憶を行うことで、パラメータ変更のない撮影中の設定や、検査のために継続して使用されたパラメータの値が、パラメータ履歴情報記憶部295内に順次格納される。」
「【0041】
図4は、新たなパラメータ値が入力され、その値の確定を指示する操作が実行された場合の自動記憶処理のシーケンス図である。まず、ユーザにより入力装置13から変更されたパラメータ値の確定を指示する入力が実行されると、インタフェース部30は、パラメータ変更イベントを制御プロセッサ27に送信する。制御プロセッサ27は、受信したパラメータ変更イベントに従って、パラメータの値の変更を行うと共に、パラメータの値の変更情報(変更後のパラメータの値)をパラメータ管理部29に、パラメータ変更イベント送信をインタフェース部30に送信する。
【0042】
パラメータ管理部29のパラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報を受信し、受信した情報が記憶対象パラメータに該当するか否かを判定する。記憶対象パラメータに該当すると判定した場合には、パラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報をパラメータ履歴情報記憶部295に送り出す。パラメータ履歴情報記憶部295は、受け取ったパラメータの値の変更情報を時刻情報及び指標と対応付け、パラメータ履歴情報として保存する。 」

「【図1】



「【図2】



「【図4】



イ 引用例1に記載された発明の認定
上記【0017】?【0025】及び【図1】の記載から、超音波プローブ12が受信した体内組織からのエコー信号は、入力装置13から入力され設定された各種パラメータを用いて画像データに生成され、モニター14に表示されることが読み取れる。
よって、上記記載(図面の記載も含む)から、引用例1には、
「超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路25、画像メモリ26、制御プロセッサ27、記憶部28、パラメータ管理部29、インタフェース部30を具備している超音波診断装置10であって、
超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信され、
超音波プローブ12が受信した体内組織からのエコー信号は、入力装置13から入力され設定された各種パラメータを用いて画像データに生成され、、モニター14に表示され、
パラメータ管理部29によって、所定のパラメータの設定値を、所定の指標と対応付けて自動的に記憶するパラメータ設定自動記憶機能が備えられ、上記パラメータ設定自動記憶機能において、記憶の対象となるパラメータ(記憶対象パラメータ)は、当該超音波診断装置の動作制御の際に設定され、且つ超音波画像の画質に影響を与えるもののうち、検査者が選択した任意のパラメータであり、
本自動記憶は、スイッチ・ボタン13bのある特定のスイッチやボタン等が押された場合に、これをトリガとして実施され、
パラメータ管理部29のパラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報を受信し、受信した情報が記憶対象パラメータに該当するか否かを判定し、記憶対象パラメータに該当すると判定した場合には、パラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報をパラメータ履歴情報記憶部295に送り出し、パラメータ履歴情報記憶部295は、受け取ったパラメータの値の変更情報を時刻情報及び指標と対応付け、パラメータ履歴情報として保存する超音波診断装置10。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-299763号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波診断装置に関し、特に超音波診断の好適な条件設定を容易に実現することに関する。」

「【0020】また別の本発明に係る超音波診断装置は、検査対象に応じた調整の結果に基づく新たなパラメータセットを前記記憶手段に登録する登録手段を有するものである。
【0021】本発明によれば、ユーザが検査対象に応じて調整を行った結果、好適な超音波診断が実現された場合、そのときの調整パラメータに基づいて新たなパラメータセットが生成され、これが記憶手段に登録される。登録される新たなパラメータセットは、例えば、好適な超音波診断が実現されたときの調整パラメータからなるパラメータセットである。また、例えば、そのような調整結果のパラメータセットと類似する既登録のパラメータセットを考慮に入れて新たに生成されたものを登録することもできる。
【0022】また本発明に係る超音波診断装置は、ユーザにより超音波診断画像がフリーズされた時に設定されている新たなパラメータセットを前記記憶手段に登録する登録手段を有するものである。
【0023】ユーザが超音波診断画像をフリーズするときは基本的に好適な画質が達成されたときであることに基づいて、本発明によればフリーズを新規のパラメータセット登録のタイミングとする。」

「【0024】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】図1は本発明の実施形態である超音波診断装置の概略のブロック図である。この超音波診断装置は、被検者体内へ送波した超音波のエコーに基づいて断層画像を生成して表示する機能を有している。
【0026】図1において、プローブ2は、超音波パルスの送波及びエコーの受波を行う超音波探触子である。このプローブ2はアレイ振動子を有しており、そのアレイ振動子の電子走査によって超音波ビームが電子的に走査される。送受信回路4はプローブ2に対して送信信号を供給する送信回路と、プローブ2からの受信信号に対して増幅や整相加算などの処理を行う受信回路とを含んでいる。送受信回路4は制御部6の制御を受け、その制御によって送信ビームの形成及び受信ビームの形成が行われる。
【0027】画像形成部8は、断層画像すなわちBモード画像を形成する回路である。断層画像は制御部6の制御を受けて形成され、形成された断層画像は表示部10に出力される。
【0028】送受信回路4、画像形成部8は各種パラメータを設定され、それらに基づいて動作する。本装置では、各種パラメータについて画質調整により得られた値のセット(パラメータセット)が制御部6から記憶部12に記録される。記憶部12はパラメータセットを複数蓄積することができる。
【0029】入力部14は、本装置に対し各種パラメータ値等を入力するためのものであり、例えば、キーボード、マウスや、装置の操作パネル上に設けられるボタン、ダイヤルなどである。ユーザは入力部14を操作してパラメータの値を制御部6に入力することができ、制御部6は入力されたパラメータの値を送受信回路4、画像形成部8に設定する。また、ユーザは入力部14を操作して制御部6に対し指示を与えることにより、記憶部12に記憶されているパラメータセットを選択することができる。選択されたパラメータセットは記憶部12から読み出され、送受信回路4、画像形成部8に設定される。
【0030】画質調整に用いられる画質調整パラメータには、例えば、ゲイン、コントラスト、アコースティックパワー、AGC、レリーフ、FTC、フレーム相関、ライン相関、周波数といったものがあり、これらについての値の組がパラメータセットを構成する。ちなみに、ここでAGCパラメータはAGC回路に入力される信号の強弱によって応じて増幅度を変化させるためのものであり、強い反射波に対しては増幅度を抑制し、弱い反射波に対しては増幅度を向上させる。このパラメータを調節することにより、飽和してしまうような大信号が一定以下のレベルに低下され、境界が明瞭な画像が得られる。またFTCパラメータは信号の変化分のみを検出し、エコーの境界を強調するためのものである。レリーフパラメータはパルス信号を縁取りする処理に関するものであり、これにより画像のシャープさを調節することができる。
【0031】次に本装置の機能、動作について説明する。本装置の大きな特徴の一つは、制御部6が、記憶部12に蓄積される各パラメータセットごとに、当該パラメータセットに含まれる少なくとも1種類の画質調整パラメータの値に基づいてインデックスを生成して付与する点にある。例えば、インデックスは被検者の性状に応じたものに定義される。具体的には、被検者が太っている場合は痩せている場合より受信信号の減衰量が大きいため、太っている場合には、ゲインやコントラストを上げることにより良好な画質が得られ、一方、痩せている場合にはゲインやアコースティックパワーを下げることにより良好な画質が得られる。よって、これら画質調整パラメータを用いて、被検者の太っている程度に応じたインデックスを定義することが可能である。例えば、インデックス(Index)はアコースティックパワー(P)、ゲイン(G)、コントラスト(C)及び周波数(F)に基
づいて次式によって定義される。
【0032】
【数1】
Index = P+5・G+16・C-50・F ………(1)
ユーザが被検体に応じて画質を良好とする調整を行った場合、その調整結果のパラメータセットが、制御部6によりインデックスを付与された上で記憶部12に格納される。パラメータセットの格納のタイミングは、ユーザが操作パネルから直接的に指示を与えることができる。また、例えば、ユーザが動画像をフリーズする操作に連動してパラメータセットを記憶部12に格納することもできる。これは、フリーズするタイミングは、静止画像に基づいて診断部位を精査したり、写真撮影等によりデータの記録を行おうとするときであり、この時点では通常、画質調整が終了しているからである。」

「【図1】




(3)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「入力装置13」が、本願補正発明の「入力手段」に相当する。

(イ)引用発明の「超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信され」ることが、本願補正発明の「被検体に超音波を送波し、前記送波された超音波の反射波を受け」ることに相当し、引用発明の「超音波プローブ12が受信した体内組織からのエコー信号は、入力装置13から入力され設定された各種パラメータを用いて画像データに生成され、、モニター14に表示され」ることが、本願補正発明の「前記反射波に基づいて画像データを生成し、前記生成した画像データに基づいて診断用画像を表示する」ことに相当するから、引用発明の「超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信され、超音波プローブ12が受信した体内組織からのエコー信号は、入力装置13から入力され設定された各種パラメータを用いて画像データに生成され、、モニター14に表示され」るために用いられる「超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路25、画像メモリ26、制御プロセッサ27、記憶部28、パラメータ管理部29、インタフェース部30」が、本願補正発明の「被検体に超音波を送波し、前記送波された超音波の反射波を受け、前記反射波に基づいて画像データを生成し、前記生成した画像データに基づいて診断用画像を表示するための各構成要素」に相当する。

(ウ)引用発明の「入力装置13から入力され設定された各種パラメータ」が本願補正発明の「入力情報」に相当するから、引用発明の「超音波プローブ12が受信した体内組織からのエコー信号は、入力装置13から入力され設定された各種パラメータを用いて画像データに生成され、、モニター14に表示され」ることが、本願補正発明の「前記各構成要素を前記入力手段からの入力情報に基づいて制御する制御手段」を「有」することに相当する。

(エ)引用発明の「記憶の対象となるパラメータ(記憶対象パラメータ)は、当該超音波診断装置の動作制御の際に設定され、且つ超音波画像の画質に影響を与えるもののうち、検査者が選択した任意のパラメータ」であることを踏まえた上で「パラメータの値の変更情報を受信し、受信した情報が記憶対象パラメータに該当するか否かを判定」することが、本願補正発明の「前記入力情報について前記診断用画像の画質に関わるものか否かを判定」することに相当し、また、引用発明の「パラメータ履歴情報記憶部295」において「保存」された「パラメータ履歴情報」が、本願補正発明の「前記抽出されたパラメータの値に基づく制御を行うためのファイル」であって「前記診断用画像の画質に関わる前記入力情報が入力された順序に基づいて作成するファイル」に相当するから、引用発明の「パラメータ管理部29によって、所定のパラメータの設定値を、所定の指標と対応付けて自動的に記憶するパラメータ設定自動記憶機能が備えられ、上記パラメータ設定自動記憶機能において、記憶の対象となるパラメータ(記憶対象パラメータ)は、当該超音波診断装置の動作制御の際に設定され、且つ超音波画像の画質に影響を与えるもののうち、検査者が選択した任意のパラメータであり」、「パラメータ管理部29のパラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報を受信し、受信した情報が記憶対象パラメータに該当するか否かを判定し、記憶対象パラメータに該当すると判定した場合には、パラメータ設定モニタリング部291は、パラメータの値の変更情報をパラメータ履歴情報記憶部295に送り出し、パラメータ履歴情報記憶部295は、受け取ったパラメータの値の変更情報を時刻情報及び指標と対応付け、パラメータ履歴情報として保存する」ことが、本願補正発明の「前記入力手段から順次入力される複数の前記入力情報について前記診断用画像の画質に関わるものか否かを判定し、前記複数の入力情報のうちから、前記診断用画像の画質に関わるパラメータの値を抽出し、前記抽出されたパラメータの値に基づく制御を行うためのファイルを、前記診断用画像の画質に関わる前記入力情報が入力された順序に基づいて作成するファイル作成手段とを有」することに相当する。

(オ)引用発明の「本自動記憶は、スイッチ・ボタン13bのある特定のスイッチやボタン等が押された場合に、これをトリガとして実施され」ることが、本願補正発明の「前記ファイル作成手段は、前記入力手段に設けられた操作キーによる指示に基づいて前記ファイルを作成する」ことに相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「入力手段と、
被検体に超音波を送波し、前記送波された超音波の反射波を受け、前記反射波に基づいて画像データを生成し、前記生成した画像データに基づいて診断用画像を表示するための各構成要素と、
前記各構成要素を前記入力手段からの入力情報に基づいて制御する制御手段と、
前記入力手段から順次入力される複数の前記入力情報について前記診断用画像の画質に関わるものか否かを判定し、前記複数の入力情報のうちから、前記診断用画像の画質に関わるパラメータの値を抽出し、前記抽出されたパラメータの値に基づく制御を行うためのファイルを、前記診断用画像の画質に関わる前記入力情報が入力された順序に基づいて作成するファイル作成手段とを有し、
前記ファイル作成手段は、前記入力手段に設けられた操作キーによる指示に基づいて前記ファイルを作成する超音波診断装置。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

ウ 相違点
ファイル作成手段が、本願補正発明においては、「入力情報が前記診断用画像のデータの保存並びに前記診断用画像のフリーズ及びプリントのうち少なくとも一つを含むとき、前記ファイルの作成を終了する」のに対して、引用発明においては、パラメータ履歴情報の保存の終了のタイミングについての特定がない点。

(4)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
引用例2には、検査対象に応じた調整の結果に基づく新たなパラメータセットを前記記憶手段に登録する登録手段を有する超音波診断装置について、
「ユーザが動画像をフリーズする操作に連動してパラメータセットを記憶部12に格納することもできる。これは、フリーズするタイミングは、静止画像に基づいて診断部位を精査したり、写真撮影等によりデータの記録を行おうとするときであり、この時点では通常、画質調整が終了しているからである。」(【0032】)
と記載されており、引用例2には、画質調整に関するパラメータの履歴情報の作成及び保存(格納)終了のタイミングをユーザが動画像をフリーズするタイミングとすることが記載されているといえる。
引用発明において、画質調整に関するパラメータの履歴情報の作成及び保存を終了するタイミングについては、種々のタイミングが考え得るところ、引用例2に記載された技術を参酌し、ユーザの調整終了が推定され得るタイミングである「ユーザが動画像をフリーズするとき」に終了するとして、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び引用例2に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおりであり、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年1月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項9に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年7月13日付けの手続補正による補正された特許請求の範囲の請求項9に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成25年1月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例(引用例1のみ)の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成25年1月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」の「ア」及び「イ」に記載したとおりである。

3 対比・判断
(1)対比・一致点・相違点
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 平成25年1月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明との対比」の「ア 対比」における(ア)ないし(エ)に記載の手法及び結果と同様の手法及び結果により、本願発明と引用発明は、
「入力手段と、
被検体に超音波を送波し、前記送波された超音波の反射波を受け、前記反射波に基づいて画像データを生成し、前記生成した画像データに基づいて診断用画像を表示するための各構成要素と、
前記各構成要素を前記入力手段からの入力情報に基づいて制御する制御手段と、
前記入力手段から順次入力される複数の前記入力情報について前記診断用画像の画質に関わるものか否かを判定し、前記複数の入力情報のうちから、前記診断用画像の画質に関わるパラメータの値を抽出し、前記抽出されたパラメータの値に基づく制御を行うためのファイルを、前記診断用画像の画質に関わる前記入力情報が入力された順序に基づいて作成するファイル作成手段とを有する超音波診断装置。」
の発明である点で一致し、両者に、格別、相違するところが存在しない。

(2)当審の判断
よって、本願発明は、引用発明であるというべきである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-28 
結審通知日 2014-03-04 
審決日 2014-03-17 
出願番号 特願2007-251119(P2007-251119)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮川 哲伸  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 岡田 孝博
信田 昌男
発明の名称 超音波診断装置、及び、入力ガイド方法  
代理人 特許業務法人三澤特許事務所  
代理人 特許業務法人三澤特許事務所  

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