ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
---|---|
管理番号 | 1287205 |
審判番号 | 不服2013-1095 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-01-22 |
確定日 | 2014-05-01 |
事件の表示 | 特願2007-260321「乳房撮影検査用X線診断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年4月30日出願公開,特開2009-89739〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成19年10月3日を出願日とする出願であって,平成24年4月25日付けで拒絶理由が通知され,同年6月22付けで意見書及び手続補正書が提出され,さらに,同年7月20日付けで最後の拒絶理由が通知され,同年9月24付けで意見書及び手続補正書が提出され,その同年9月24付け手続補正書による補正に対し同年10月15日付けで補正却下の決定がなされるとともに,同日付で拒絶査定がなされた。これに対し,平成25年1月22日に拒絶査定不服の審判請求がされるとともに,同日付で手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ,同年8月27日付けで審尋がなされ,同年11月5日に回答書が請求人より提出されたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正後の請求項1に係る発明 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は, 「【請求項1】 被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段と、該X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持部と、前記X線発生手段の操作を行う操作装置と、を備えた乳房撮影検査用X線診断装置に於いて、 前記操作装置に備えられ、前記被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づく前記本曝射におけるX線の曝射残り期間を表示する表示手段を具備することを特徴とする乳房撮影検査用X線診断装置。」(下線は補正箇所を示す)と補正された。 2 補正事項について 補正前の請求項1における「X線の曝射残り期間」を「前記被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づく前記本曝射におけるX線の曝射残り期間」に限定するものであるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 3 引用刊行物及びその記載事項 (1)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2006-87919号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記において,引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。 (1-ア)「【0001】 本発明の一実施形態は放射線投射型断層撮影用の装置であり、特に、放射線がX線であるマンモグラフィ用の装置である。」 (1-イ)「【0004】 しかしながら、X線によるこのような像の取得では、X線発生技術に固有の問題が存在する。実際には、X線管は、良好に制御された使用条件においてのみ所要の硬度及び期待されたレベルのパワーを持つ放射線を放出することができる。」 (1-ウ)「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 この型式の取得の際に遭遇する問題は、第1には物体(すなわち、マンモグラフィの場合では患者)が検査を受ける時間の長さである。この種のマンモグラフィ検査で患者の胸部に苦痛を伴う圧迫が加えられる場合、この検査が長すぎれば、検査における快適さの程度が許容できないレベルになる。」 (1-エ)「【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 図1は本発明の一実施形態による放射線投射型断層撮影装置1を示す。断層撮影装置1は、断層撮影を受けるべき物体を支持する支持手段2を有する。本発明の一実施形態では、断層撮影装置はマンモグラフィ装置であってよく、その場合、支持手段2は患者の胸部(乳房)を支持するための胸部保持トレイである。とはいえ、任意の他の型式の断層撮影装置も考えられる。通常、患者の胸部はトレイ2の上に置かれて、パッド3によって圧迫される。パッド3は、例えば把手4を使用してオペレータによって操作することができる。断層撮影装置1は更に、X線管5のような放射線源と、患者の胸部を横切った後の射線を検出することのできる検出器6のような検出手段とを含んでいる。検出器6は胸部保持トレイ2の下に配置されている。実際には、パッド3はX線透過性材料、具体的にはプラスチックで作られる。」 (1-オ)「【0014】 ・・・・。像の数が多い場合、例えば、約10よりも大きい数である場合は、検査の持続期間が約10秒までにもなることがある。これは、胸部を圧迫され続けられている患者にとって耐え難いものである。」 (1-カ)「【0016】 一例として、図3aは端部49の経路22を円弧の形で示している。この経路は(図1に示されているように、検出器6の付近に又は検出器6の中央にほぼ配置されている)目標中心23を中心とする。」 (1-キ)「【0022】 図5aは、サイクロイド運動を可能にする装置の模範的な実施形態を示している。この図は、管1の目標中心に対応する回転中心23に関して、アーム10を示している。アーム10は、軸受31によって、中心23の周りに傾斜させることができる。」 (1-ク)「【0028】 アーム10は管5を担持する。軸線23を中心として旋回するアーム10の代わりに、従来技術におけるようにレール上を摺動する滑り台又は往復台を使用することを選択した場合、この往復台上に保持されているシャフトで管を担持し、このシャフトは、焦点スポットの相対的シフトを測定するアームの役割を満たす。」 これらの記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。 「X線管5のような放射線源と,患者の胸部を横切った後の射線を検出することのできる検出器6のような検出手段と,該管5を担持するアーム10を備えたマンモグラフィ装置で,該アーム10は,軸受31によって,中心23の周りに傾斜させることができる,マンモグラフィ装置。」(以下「引用発明1」という。) (2)本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭61-166829号(実開昭63-71013号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。なお,以下の摘記において,引用発明2の認定に関連する箇所に下線を付与した。 (2-ア)「本考案は,NMRイメージング装置(核磁気共鳴断層撮影装置),X線CT(X線断層撮影装置)等の断層撮影装置に関し,更に詳しくは,スキャンデータ収集の際,所定の位置に設置された被検者の視野内に,スキャンの残り時間を表示する手段を備えた断層撮影装置に関する。」(1頁18行?2頁3行) (2-イ)「ところで,スキャンデータの収集中,被検者は狭い空間に設置され,長い間窮屈な姿勢で動く事を禁じられている。このため,被検者の肉体的,精神的負担が大きく,特に,被検者が狭所恐怖症の場合,思わぬ事故が起こる危険性がある。」(3頁4?8行) (2-ウ)「8はガラス窓7の外から表示部をガラス面に向けて設置される被検者用時間表示装置,10は操作パネル11を有するオペレータコンソールである。被検者用時間表示装置8は,スキャンの残り時間を表示し,被検者が所定の位置に設置された状態で,鏡3を介して形成される視野内9に配置されており,オペレータコンソール10に電気的に接続される。又,被検者用時間表示装置8は,第4図(a)に示すようなディジタル時計方式の表示部を有し,オペレータコンソールからの信号により,時刻表示モード(現在00持00分)と,スキャン所要時間表示モード(あと00分00秒)のいずれかを切換えて表示するようになっている。オペレータコンソール10は,外部に,断層像等を表示するCRTスクリーン,操作者用時間表示装置,スキャンパラメータの設定や画像解析を行う操作KEY群等を備えている。」(5頁6行?6頁2行) (2-エ)「以上,説明の通り,本考案の断層撮影装置によれば,以下の効果が得られる。 (1)被検者の不安,恐怖心などの精神的負担は,被検者がスキャンデータ収集中にスキャンの残り時間を知ることにより軽減される。」(8頁4?8行) これらの記載事項を総合すると,引用例2には,以下の発明が記載されていると認められる。 「所定の位置に設置された被検者の視野内に,スキャンの残り時間を表示する手段である被検者用時間表示装置8を備え,操作パネル11を有するオペレータコンソールを備えたX線断層撮影装置において, 該オペレータコンソールは,操作者用時間表示装置を備え,上記被検者用時間表示装置8はオペレータコンソールの信号により表示するようになっているX線断層撮影装置。」(以下「引用発明2」という。) 4 対比・判断 (1)本願補正発明と引用発明1について ア 対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「マンモグラフィ装置」は,本願補正発明の「乳房撮影検査用X線診断装置」に相当する。 (イ)引用発明1の「X線管5のような放射線源」は,摘記(1-エ)から,患者の胸部(乳房)にX線を投射して断層撮影を行うものであるから,本願補正発明の「被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段」に相当する。 (ウ)引用発明1の「患者の胸部を横切った後の射線を検出することのできる検出器6のような検出手段」は,本願補正発明の「該X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段」に相当する。 (エ)引用発明1の「アーム10」は本願補正発明の「アーム部」に相当するものであり,「アーム10は、軸受31によって、中心23の周りに傾斜させることができる」ものであるから,引用発明1の「軸受31」が本願補正発明の「該アーム部を回動可能に支持する支持部」に相当する。そして,「アーム10」は「管5を担持する」ものであるから,本願補正発明の「X線発生手段を備えたアーム部」に相当する。 してみれば,本願補正発明と引用発明1とは, (一致点) 「被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段と,該X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段とを備え,該X線発生手段を備えたアーム部を回動可能に支持する支持部を備えた乳房撮影検査用X線診断装置。」 の点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点1) 本願補正発明は,乳房撮影検査用X線診断装置における「検出手段」をアーム部に備えたものであるのに対し,引用発明1のマンモグラフィ装置においては,検出器6のような検出手段がアーム10に備えられたものでない点。 (相違点2) 本願補正発明の乳房撮影検査用X線診断装置は,「X線発生手段の操作を行う操作装置」を備え,それが「被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づく前記本曝射におけるX線の曝射残り期間を表示する表示手段」を備えているのに対し,引用発明1の装置は,そのような操作装置が備えられているかどうか不明である点。 イ 当審の判断 まず,上記(相違点1)について検討する。 放射線源であるX線管をアーム部に備え,アーム部を回転させることによりX線の曝射方向を変えて撮影を行うマンモグラフィ装置において,X線の検出手段をアーム部のX線管を設けた端側とは反対の他端側に設けることは,例えば,特開2007-236524号公報(以下「周知例1」という。)の【0016】【0017】,特開平6-154194号公報(以下「周知例2」という。)の【0013】に記載されているように,本出願前周知のことである。引用発明1においては,引用例1の摘記(1-カ)に記載されているとおり,検出器6は,アーム10のX線管5が担持されている側の端部49が円弧の経路をたどる時の,その円弧の中心に配置されるものであるから,アーム10のX線管5が担持されている側と反対側の端部の位置に相当する場所にあるといえる。してみれば,引用発明1において,上記周知技術を鑑みて,検出手段をアーム10のX線管を設けた端部とは反対の他端側に設けること,すなわち,アーム10をX線管5の他に検出手段も備えたものとすることは当業者が容易になし得ることである。 次に,上記(相違点2)について検討する。 引用例1の摘記(1-イ)に記載されているように,X線管の使用条件は良好に制御される必要があり,X線発生手段は操作されるものであるから,X線管を備えている引用発明1のマンモグラフィ装置が,「X線発生手段の操作を行う操作装置」に相当するものを備えていることは当業者において自明のことである。 また,引用例2の摘記(2-ア),(2-イ)及び(2-エ)には,X線CT(X線断層撮影装置)において,長い間窮屈な姿勢で動くことを禁じられている肉体的,精神的負担を軽減するために,スキャンデータ収集の際,所定の位置に設置された被検者の視野内に,スキャンの残り時間を表示する手段を備えることが記載されている。さらに,引用例2の摘記(2-ウ)から,オペレータコンソール10には操作者用時間表示装置があり,そのオペレータコンソール10からの信号により被検者にスキャンの残り時間を表示することから,オペレータコンソール10の操作者用時間表示装置にもスキャンの残り時間を表示し得るものといえる。してみれば,引用例2には,X線CT(X線断層撮影装置)において,長い間窮屈な姿勢で動くことを禁じられている肉体的,精神的負担を軽減するために,被検者の視野内にスキャンの残り時間を表示する手段を備えるとともに,オペレータコンソールの操作者用時間表示装置にもスキャンの残り時間を表示することが記載されているといえる。 一方,引用発明1において,摘記(1-ウ)に「第1には物体(すなわち、マンモグラフィの場合では患者)が検査を受ける時間の長さである。この種のマンモグラフィ検査で患者の胸部に苦痛を伴う圧迫が加えられる場合、この検査が長すぎれば、検査における快適さの程度が許容できないレベルになる。」,摘記(1-オ)に「検査の持続期間が約10秒までにもなることがある。これは、胸部を圧迫され続けられている患者にとって耐え難いものである。」と記載されているとおり,その課題とするところは引用例2記載の上記課題と同様であり,引用例1の摘記(1-エ)に記載されているとおり,マンモグラフィ装置はX線断層撮影装置であるから,引用発明1においても,被検者の視野内にスキャンの残り時間を表示する手段を備えるとともに,オペレータコンソールすなわち上記操作装置に操作者用時間表示装置としてスキャンの残り時間を表示するようにすることは,当業者が容易になし得ることである。そして,マンモグラフィ装置において,本曝射におけるX線の曝射期間を「被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づ」いたものとすることは,審尋の際に提示した特開平4-9145号公報(以下「周知例3」という。)の第2頁右下欄11行?3頁左下欄3行)に記載されているように本出願前周知のことであるから,スキャンの残り時間を表示する,すなわち,本曝射におけるX線の曝射残り期間を表示する際にも「被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づ」いて表示されることになる。 してみれば,上記相違点2は,引用例2の記載事項及び周知技術から当業者が容易になし得たことである。 (2)本願補正発明と引用発明2について ア 対比 (ア)引用発明2の「X線断層撮影装置」と本願補正発明の「乳房撮影検査用X線診断装置」とは,「X線診断装置」の点で共通するものである。そして,引用発明2の「X線断層撮影」は「被検者」に対して行うもので,その際,X線断層撮影とは被検体に対してX線を曝射し被検体を透過させて検出することにより撮影を行うことであるから,引用発明2の「X線断層撮影装置」は,本願補正発明の「被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段と、該X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段とを備えた」ものといえる。 (イ)引用発明2の「オペレータコンソール」は「操作パネルを有する」ものであり,引用発明2は「X線断層撮影装置」であることから,その「操作パネル」にはX線発生についての操作を行うことが含まれていることは明らかである。してみれば,引用発明2の「操作パネル11を有するオペレータコンソール」は,本願補正発明の「X線発生手段の操作を行う操作装置」の点で共通するものである。 (ウ)引用発明2の「オペレータコンソール」には「操作者用時間表示装置」があり,そのオペレータコンソールからの信号により「被検者用時間表示装置8」に「スキャンの残り時間」を表示するようになっていることから,オペレータコンソールの操作者用時間表示装置にもスキャンの残り時間を表示し得るものといえる。そして,「スキャンの残り時間」とは,本願補正発明の「本曝射におけるX線の曝射残り期間」に他ならない。してみれば,引用発明の「スキャンの残り時間を表示する手段である被検者用時間表示装置8を備え」「オペレータコンソールは,操作者用時間表示装置を備え,上記被検者用時間表示装置8はオペレータコンソールの信号により表示するようになっている」ことは,本願補正発明の「前記操作装置に備えられ」「本曝射におけるX線の曝射残り期間を表示する表示手段を具備する」ことに相当するといえる。 してみれば,本願補正発明と引用発明2とは, (一致点) 「被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段と、該X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段と,前記X線発生手段の操作を行う操作装置と、を備えたX線診断装置に於いて、 前記操作装置に備えられ、本曝射におけるX線の曝射残り期間を表示する表示手段を具備するX線診断装置。」 の点で一致し,以下の点で相違する。 (相違点) 本願補正発明のX線診断装置が「乳房撮影検査用」であり,該装置が,「X線発生手段」と「検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持部」を備え,本曝射におけるX線の曝射残り期間が「被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づく」ものであるの対し,引用発明2のX線断層撮影装置は「乳房撮影検査用」に限定されておらず,本願補正発明の前記「アーム部」及び「支持部」が備えられておらず,スキャンの残り時間が「被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づく」ものとは特定されていない点。 イ 当審の判断 上記相違点について検討するに,乳房撮影検査用X線診断装置として,X線発生手段と検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持部を備えたものは,上記周知例1の【0016】【0017】,上記周知例2の【0013】に記載されているように,本出願前周知のものである。また,乳房撮影検査用X線診断装置において,本曝射におけるX線の曝射期間を「被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づ」いたものとすることは,上記「(1)本願補正発明と引用発明1について」の「イ 当審の判断」において周知例3を上げて述べたように,本出願前周知のことである。そして,乳房撮影検査用X線診断装置の技術課題として,引用例1の摘記(1-ウ)に「第1には物体(すなわち、マンモグラフィの場合では患者)が検査を受ける時間の長さである。この種のマンモグラフィ検査で患者の胸部に苦痛を伴う圧迫が加えられる場合、この検査が長すぎれば、検査における快適さの程度が許容できないレベルになる。」,摘記(1-オ)に「検査の持続期間が約10秒までにもなることがある。これは、胸部を圧迫され続けられている患者にとって耐え難いものである。」と記載されているようなことが本出願前すでに知られているところである。 一方,引用発明2の課題は,摘記(2-イ)及び(2-エ)に記載されているように,X線断層撮影装置における,長い間窮屈な姿勢で動くことを禁じられている肉体的,精神的負担を軽減することである。当該引用発明2の課題は,乳房撮影検査用X線診断装置としての上記課題と同様のものであるから,引用発明2のX線断層撮影装置を乳房撮影検査用として適用してみようとする当業者が容易に想到することであり,そして,X線断層撮影装置を乳房撮影検査用として適用する際に,上記周知技術を鑑みれば,引用発明2のX線診断装置は「X線発生手段と,検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持部」を備えたものとなり,引用発明2のスキャンの残り時間は「被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づ」いたものとなる。 (3)本願補正発明の効果について 本願明細書で本願補正発明の効果を以下のように記載している。 「【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、X線の曝射の進行状況を目標期間(目標線量)に対して視覚的に表示するようにしたので、X線曝射が長時間にわたるときでも術者が安心して曝射を続けることができると共に、患者にとっても曝射終了を容易に予想することができるため、苦痛を和らげて体を静止させることができる。」 前者の効果については,X線曝射が長時間にわたるとき術者が当然に留意しなければならないこと(例えば,特開2007-244489号公報の【0002】,等参照)であり,そのため前記公報の【0006】に「本発明により術者は検査中常時被検者の体表面の各区分ごとに許容被曝線量に達するまでの残り時間を表示等により知ることができる」と記載されているように,術者に「X線の曝射残り期間を表示する」ことの効果として当業者が通常に予期することである。また,後者の効果についても,引用例2の摘記(2-エ)に記載されているとおり,格別顕著なことではない。 (4)小括 したがって,本願補正発明は,引用発明1並びに引用例2の記載事項及び周知技術に基いて,あるいは,引用発明2並びに引用例1の記載事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお,請求人は,審尋に対する回答書で, 「本願出願人は、本願発明の技術的特徴をより限定して明確にするために、『操作装置に備えられ、前記被検体の乳房の圧迫厚に応じたX線条件によるプレ曝射によるプレ曝射画像から決まる本曝射のX線条件に基づいて、前記プレ曝射後に続けて実行される前記本曝射におけるX線の曝射残り期間を表示する表示手段』との補正を希望しており、当該手続補正書を提出させていただく機会を是非ともお願いできればと考えます。 当該補正では、プレ曝射に基づいて本曝射の曝射時間を求め、立て続けに本曝射を行なうととともに曝射残り時間をすぐさま表示するとの技術的特徴が明確になるものと考えます。 引用文献2はプレ曝射を行なうことによって本曝射のX線条件・曝射時間を求めてはいますが、その本曝射をプレ曝射に続けて行なうという記載はないものです。」と主張しているが,請求人が主張するような「本曝射をプレ曝射に続けて行なう」すなわち「立て続けに本曝射を行なう」ということは,願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に技術的特徴として何ら記載されておらず,また,引用文献2(上記特開平4-9145号公報)に記載されているマンモグラフィ装置において,本曝射をプレ曝射に続けて行なえないということもない。してみれば,上記請求人の補正案は受け入れられるものではない。 5 まとめ 以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1?13に係る発明は,平成24年6月22付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。 「【請求項1】 被検体に対してX線を曝射して撮影するX線発生手段と、該X線発生手段より発生されたX線を前記被検体を透過して検出する検出手段とを備えたアーム部と、該アーム部を回動可能に支持する支持部と、前記X線発生手段の操作を行う操作装置と、を備えた乳房撮影検査用X線診断装置に於いて、 前記操作装置に備えられ、前記X線発生手段によるX線の曝射残り期間を表示する表示手段を具備することを特徴とする乳房撮影検査用X線診断装置。」 2 引用刊行物及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である上記引用例1及び2の記載事項は,上記「第2」「3 引用刊行物及びその記載事項」に記載したとおりである。 3 対比・判断 上記「第2」「2 補正事項について」に記載したとおり,本願補正発明は,本願発明にさらに限定事項を追加したものであるから,本願発明は,本願補正発明から限定事項を省いた発明といえる。その本願補正発明が,前記「第2」「4 対比・判断」に記載したとおり,引用発明1並びに引用例2の記載事項及び周知技術に基いて,あるいは,引用発明2並びに引用例1の記載事項及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明することができたものである以上,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり,審決する。 |
審理終結日 | 2014-02-28 |
結審通知日 | 2014-03-04 |
審決日 | 2014-03-18 |
出願番号 | 特願2007-260321(P2007-260321) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 今浦 陽恵、泉 卓也 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 岡田 孝博 |
発明の名称 | 乳房撮影検査用X線診断装置 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 峰 隆司 |