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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E01F
管理番号 1287236
審判番号 不服2012-17931  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-13 
確定日 2014-04-28 
事件の表示 特願2009- 61018「防風雪柵」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月30日出願公開、特開2010-216095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成21年3月13日の出願であって、平成24年6月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月13日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、当審において、平成25年2月28日付けで審尋が通知され、平成25年4月25日に回答書が提出されたものである。


第2 平成24年9月13日付け手続補正の却下の決定

〔補正の却下の決定の結論〕
平成24年9月13日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成24年9月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであって、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1に、
「立設された複数の支柱間に、多数の通風口が形成された可とう性を有する遮蔽幕が設けられ、該遮蔽幕の一方の面から他方の面に前記通風口から風が吹き抜けることにより、風が減速されるようになされた防風雪柵であって、前記遮蔽幕は、繊維が格子状に編成されて、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とが形成された網状体からなると共に、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とで囲まれる各空間が通風口となされ、かつ、前記通風口は、一辺が3mm?12mmのほぼ正方形であり、かつ遮蔽幕全体に対する前記通風口の開口率は40%?60%となされていること特徴とする防風雪柵。」とあったものを、
「立設された複数の支柱間に、多数の通風口が形成された可とう性を有する遮蔽幕が設けられ、該遮蔽幕の一方の面から他方の面に前記通風口から風が吹き抜けることにより、風が減速されるようになされた防風雪柵であって、前記遮蔽幕は、ポリエステル製合成繊維がカラミ織により格子状に編成されて、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とが形成された網状体からなると共に、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とで囲まれる各空間が通風口となされ、かつ、前記通風口は、一辺が3mm?12mmのほぼ正方形であり、かつ遮蔽幕全体に対する前記通風口の開口率は40%?60%となされ、かつ、前記遮蔽幕は、これを空中で保持し、一方の面に対して略垂直な方向から一定速度の風を送り、前記通風口から他方の面に吹き抜けた前記風の挙動を観察した場合に、遮蔽幕の位置から遮蔽幕の縦幅の4倍に至るまでの前記風が減速される範囲において、逆流及び乱流が生じないように、前記通風口の一辺の大きさ及び開口率が設定されているものであることを特徴とする防風雪柵。」と補正するものである。(下線は審決で付した。)

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「遮蔽幕」に関し、「繊維が格子状に編成され」たものを、「ポリエステル製合成繊維がカラミ織により格子状に編成され」たものに限定し、同じく「遮蔽幕」に関し、「これを空中で保持し、一方の面に対して略垂直な方向から一定速度の風を送り、前記通風口から他方の面に吹き抜けた前記風の挙動を観察した場合に、遮蔽幕の位置から遮蔽幕の縦幅の4倍に至るまでの前記風が減速される範囲において、逆流及び乱流が生じないように、前記通風口の一辺の大きさ及び開口率が設定されているものである」との限定を加えるものである。

2 補正の目的
本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭57-77704号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。)
ア 「2.特許請求の範囲
平均直径が2?10mmの透孔がシート全体に均一に分布し、且つ開孔率が20?50%である防雪用透孔シート。」(1頁左下欄5?8行)

イ 「3.発明の詳細な説明
本発明は防雪用透孔シートに関する。
現在、国内で主として使用されている防雪装置は、柱体を立設し、柱体間に細長い平板(スラット)を架設した防雪柵である。
・・・(中略)・・・
ところがこれらスラットタイプの防雪柵を道路、鉄道線路に沿設すると、その高さが2?8mもあるので、沿線の景観を遮断し、ドライバー或いは乗客に違和感を与える結果になっていた。」(1頁左下欄9行?右下欄4行)

ウ 「本発明者は、上記実情に鑑み、道路・鉄道線路に沿設しても、沿線の景観が遮断されず、防雪機能を十分に発揮させる防雪装置を提供すべき鋭意研究を行った。本発明者による防雪装置は一般に吹きだめ式と称し、通常道路や鉄道線路の風上に設け、地吹雪によって運ばれてくる雪を防雪装置の風上側及び防雪装置と道路(あるいは鉄道線路)間に堆積させ道路上(あるいは鉄道線路)への堆積を極力防止しようとするものである。
これらの現象を発生させるには、先づ防雪装置の風上側で小さな乱流を生起させ且つ風下直下で瞬間的に大きな乱流を生起させ、その直後急激にその乱流を消失させるとともに、風速も防雪装置の風下側で漸次減垂(注:「垂」は「衰」の誤記と認める。)させ道路(あるいは線路)上付近で再び風速を上昇させる必要がある。
本発明者は沿線の景観を遮断させず上記現象を生起させるために防雪装置がスラットの組立てによるものではなく全体に均一に孔のあいたシート状体を使用した防雪装置であることは必要であり、且つ上記現象を生起させるには透孔シートの孔の大きさ及び孔の占める割合(開孔率)が決定的な因子になることに着目し種々検討した。特に透孔シートの透孔の平均直径により乱流の生成位置、大きさおよび乱流の消失の現象が、又透孔シートの開孔率により風速の減衰が決定されることを見い出し本発明に到達した。
すなわち本発明は平均直径が2?10mmの透孔がシート全体に均一に分布し、且つ開孔率が20?50%である防雪用透孔シートである。」(1頁右下欄5行?2頁左上欄13行)

エ 「以下、図面を参照して本発明を説明する。
第1図は透孔(2)を均一に分布させた透孔シート(1)の一実施例である。透孔の形状は第1図では略菱形であるが、矩形・円形・楕円形・亀甲形でもよい。透孔シート(1)の透孔(2)の平均直径は2?10mmである。ここで「平均直径」とは第1図に示すように長径(a)及び短径(b)より{長径(a)+短径(b)}/2と定義する。又、透孔シート(1)の透孔(2)はシート全体に分布し、且つ開孔率20?50%であることを必要とする。該透孔シート(1)の素材として合成樹脂・金属・木材等があるが、この中で合成樹脂製融着網は耐蝕性に富み、又軽量であるので施工が簡単であり、シーズンオフには撤去し易すく保管管理もし易すいので好ましい。使用される合成樹脂には種々のものがあるが、特にポリエチレン・ポリ塩化ビニル・ポリプロピレンが好適である。この合成樹脂製融着網の製法については、例えば特公昭34-4185号公報に詳述されている。この他にパンチングボード、あるいは線状体を編んだ網状物も使用可能である。
上述の透孔シート(1)を例えばその周縁を縁取り部材(3)で挟着固定し、第2図のようにパネル状に構成し、柱体(4)に架設して防雪装置(5)とすることができる。
上述の防雪装置において、たて1m、よこ3mの大きさ、透孔の形状が略菱形で透孔が均一に分布した種々の透孔シートを第2図のようにパネル状に構成し、地上から約0.5mの間隔をあけ、道路から風上側約25mのところに風向きに対して略垂直方向に架設し、防雪装置とし、防雪装置の前後での乱流の生成・消失、風速の減衰並びに防雪装置の前後の積雪状況から本発明の防雪用透孔シートの作用効果を説明する。」(2頁左上欄14行?左下欄6行)

オ 「第3図は本発明の透孔シートを用いた防雪装置(5)で、風速(6)は防雪装置(5)の風下側で徐々に減衰し、防雪装置(5)と道路(8)間では約1/5に減衰し、道路(8)上では再び上昇し始める。乱流(7)は防雪装置(5)の風上側隣接付近で小さく、又風下直下で大きく生起し、その直後急激に消失する。その結果地吹雪によって運ばれてくる雪は第3図斜線部分のように防雪装置(5)の風上側及び防雪装置(5)と道路(8)間に堆積し道路(8)上への堆積はほとんどない。」(2頁左下欄7行?左下欄15行)

カ 「又、第5図は透孔の平均直径が10mm以上且つ開孔率が50%以上の透孔シートを用いた防雪装置(5’’)で、風速(6’’)は防雪装置(5’’)の前後(風上側と風下側)でほとんど変化せず層流化現象を起こす。又、乱流(7’’)は防雪装置(5’’)の前後隣接付近で小さく生起するだけである。その結果、地吹雪によって運ばれてくる雪は防雪装置(5’’)通過後も地吹雪とともに移動し、第5図の斜線部分のように積雪状態になり吹きだめ式の防雪装置としては全く効果がない。
以上の説明のように本発明の防雪用透孔シートは吹きだめ式の防雪装置として極めて効果があり、更に道路・鉄道路線に沿設しても沿線の景観も遮断されず有用である。
なお、本発明による透孔シートの上述の機能より容易にわかるように防雪用のみならず防風用にも使用可能なことはもちろんである。」(2頁右下欄14行?3頁左上欄6行)

キ 「4.図面の簡単な説明
第1図は本発明の防雪用透孔シートの一実施例を示す平面図、第2図は本発明の防雪用透孔シートを用いた防雪装置の一実施例を示す平面図、第3図は本発明の透孔シートを用いた防雪装置における風速、乱流、積雪状況を示す概略図、第4図及び第5図は本発明以外の透孔シートを用いた防雪装置における風速、乱流、積雪状況を示す概略図である。」(3頁左上欄7?15行)

ク 第1図、第2図、第3図、第5図


ケ 上記エを参照して第2図をみると、その周縁を縁取り部材(3)で挟着固定して構成したパネル状の透孔シート(1)を、左右両側の柱体(4)に架設したことが見てとれる。
また、第1図をみると、斜めに延びる線状体が交差して囲まれる各空間が透孔(2)となされていることが見てとれる。

コ 上記アないしケからみて、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「透孔シート(1)の周縁を縁取り部材(3)で挟着固定し、パネル状に構成して、左右両側の柱体(4)に架設した防雪装置(5)であって、
透孔シート(1)は、たて1m、よこ3mの大きさであって、透孔(2)が均一に分布した合成樹脂製融着幕であって、
透孔(2)は、斜めに延びる線状体が交差して囲まれる各空間であって、その形状は略菱形で、平均直径は2?10mm(ここで「平均直径」とは、長径(a)及び短径(b)より{(長径(a)+短径(b)}/2と定義する。)、且つ開口率20?50%であり、
パネル状に構成した透孔シート(1)を、地上から約0.5mの間隔をあけ、道路から風上側約25mのところに、風向きに対して略垂直方向に架設したものであって、
風速(6)は防雪装置(5)の風下側で徐々に減衰し、防雪装置(5)と道路(8)間では約1/5に減衰し、道路(8)上では再び上昇し始め、乱流(7)は防雪装置(5)の風上側隣接付近で小さく、又風下直下で大きく生起し、その直後急激に消失することにより、吹雪によって運ばれてくる雪は防雪装置(5)の風上側及び防雪装置(5)と道路(8)間に堆積し道路(8)上への堆積はほとんどない、
防風用にも使用可能な防雪装置(5)。」

4.対比
ア 引用発明の「柱体(4)」は本願発明の「支柱」に相当し、以下同様に「透孔(2)」は「通風口」に、「透孔シート(1)」は「可撓性を有する遮蔽幕」に、「防風装置(5)」は「暴風雪柵」に、それぞれ相当する。
引用発明の「透孔(2)が均一に分布した」「透孔シート(1)の周縁を縁取り部材(3)で挟着固定し、パネル状に構成して、左右両側の柱体(4)に架設した」ことは、本件補正発明の「立設された複数の支柱間に、多数の通風口が形成された可とう性を有する遮蔽幕が設けられ」ることに相当する。

イ 引用発明の防風装置(5)は、「風速(6)は防雪装置(5)の風下側で徐々に減衰し、防雪装置(5)と道路(8)間では約1/5に減衰し、道路(8)上では再び上昇し始め、乱流(7)は防雪装置(5)の風上側隣接付近で小さく、又風下直下で大きく生起し、その直後急激に消失すること」からみて、透孔シート(1)の透孔(2)を上流から下流にかけて風が吹き抜けて、風速が減速するものであるから、引用発明の防風装置(5)が「風速(6)は防雪装置(5)の風下側で徐々に減衰し、防雪装置(5)と道路(8)間では約1/5に減衰し、道路(8)上では再び上昇し始め、乱流(7)は防雪装置(5)の風上側隣接付近で小さく、又風下直下で大きく生起し、その直後急激に消失すること」は、本件補正発明の「遮蔽幕の一方の面から他方の面に前記通風口から風が吹き抜けることにより、風が減速されるようになされ」ることに相当する。

ウ 引用発明の「合成樹脂製熱融着網」と、本件補正発明のポリエステル製合成繊維がカラミ織により格子状に編成されて、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部が形成された網条体」とは、「合成樹脂製の網状体」で共通している。
引用発明の「透孔(2)は」「斜めに延びる線状体が交差して囲まれる各空間」であることと、本件補正発明の「縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とで囲まれる各空間が通風口とされ」ていることとは、「帯状部で囲まれる各空間が通風口とされ」ていることで共通している。

エ 上記アないしウからみて、本件補正発明と引用発明とは、
「立設された複数の支柱間に、多数の通風口が形成された可とう性を有する遮蔽幕が設けられ、該遮蔽幕の一方の面から他方の面に前記通風口から風が吹き抜けることにより、風が減速されるようになされた防風雪柵であって、前記遮蔽幕は、合成樹脂製の網状体からなると共に、帯状部で囲まれる各空間が通風口となされる、防風雪柵。」で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:遮蔽幕が、本件補正発明は、ポリエステル製合成繊維がカラミ織により格子状に編成されて、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とが形成された網状体からなると共に、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とで囲まれる各空間が通風口となされるのに対し、引用発明は、合成樹脂製融着幕であって、透孔は、斜めに延びる線状体が交差して囲まれる各空間が通風口となされている点。

相違点2:通風口が、本件補正発明は、一辺が3mm?12mmのほぼ正方形であり、かつ遮蔽幕全体に対する前記通風口の開口率は40%?60%となされいるのに対し、引用発明は、平均直径が2?10mmの略菱形であり、且つ開口率が20?50%である点。

相違点3:遮蔽幕が、本件補正発明は、空中で保持し、一方の面に対して略垂直な方向から一定速度の風を送り、前記通風口から他方の面に吹き抜けた前記風の挙動を観察した場合に、遮蔽幕の位置から遮蔽幕の縦幅の4倍に至るまでの前記風が減速される範囲において、逆流及び乱流が生じないように、前記通風口の一辺の大きさ及び開口率が設定されているものであるのに対し、引用発明は、その様に設定しているかどうか不明な点。

5 判断
(1)相違点1について
防風網において、「ポリエステル製合成繊維がカラミ織により格子状に編成されて、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とが形成された網状体からなると共に、縦方向に延びる帯状部と横方向に延びる帯状部とで囲まれる各空間が通風口となされる」ことは、特開昭58-28324号公報(1頁右下欄18?末行、2頁右上欄14行?左下欄9行、第1図(B)、第1図(C)等参照。)や特開昭58-57934号公報(1頁右下欄18行?2頁左上欄3行、2頁右上欄13行?右下欄12行、第2図、第3図等参照。)に記載されているように、本件出願前に周知な技術であるので、引用発明の透孔シート(1)を、当該周知技術として具現化して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことと認める。

(2)相違点2について
ア まず、上記(1)で挙げた両文献に記載されているように、通風口を略正方形とすることは、本件出願前に周知な構成である。
また防雪装置において、通風口の大きさや開口率を考慮することによって、乱流や渦流を減少させることは、登録実用新案第3115624号公報(【0002】、【0003】、【0008】、【0014】等参照。)や特開平11-107106号公報(【0003】、【0004】、【0009】、【0014】等参照。)に記載されているように、本件出願前に周知な課題である。

イ そこで、引用例をみると、第3図は、略菱形の透孔(2)の平均直径が2?10mm、開孔率が20?50%の透孔シート(1)を用いた防雪装置(5)における、風速,乱流,積雪状況の概略図である。
次に第5図は、透孔の平均直径が10mm以上、開孔率が50%以上の透孔シートを用いた防雪装置における、風速,乱流,積雪状況の概略図である。
平均直径,開口率と乱流の発生状況を、第3図の概略図のものと第5図の概略図のものとを比較すると、第5図の概略図のものの方が、平均直径が大きく、開口率が高くなり、乱流は小さくなっていることがみてとれるので、第3図と第5図の概略図の結果をみれば、平均直径が大きくなり、開口率が高くなると、乱流が減少できるものと、当業者であれば気付くことである。
そうすると、第3図の概略図のものの条件となる平均直径が2?10mm、開孔率が20?50%の中で、開口の大きさや開孔率を考慮することによって、乱流や渦流を減少させるという周知な課題に基いて、平均直径の範囲のうちの最大値である10mmや、開孔率の範囲のうちの最大値である50%を選択することは、当業者であれば、容易になし得たことである。

ウ そして平均直径が10mmの略菱形とは、その面積が50mm^(2)であって、この同面積を通風口の周知な形状である正方形に換算すると、一辺が約7.07mmの正方形となるので、上記イで採用した平均直径が10mm及び開孔率が50%であることは、相違点2に係る構成である「通風口は、一辺が3mm?12mmのほぼ正方形であり、かつ遮蔽幕全体に対する通風口の開口率は40%?60%」の範囲に含まれるものとなる。
したがって、当該周知な課題を考慮に入れた上で、引用発明の遮蔽幕の構成を、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とした点は、当業者が容易に成し得たことと認められる。

(3)相違点3について
当該相違点3に係る構成において、「遮蔽幕の位置から遮蔽幕の縦幅の4倍に至るまでの前記風が減速される範囲において、逆流及び乱流が生じない」とあるが、通常、流体が物体に接すると、その接した周囲に乱流が発生することが一般的であり、例えば引用例の第5図に示されたように、開口の面積が大きく、かつ開孔率が高くなった場合に、防雪装置の前後で風速はほとんど変化しないものの、乱流は防雪装置の前後隣接付近で小さく生起するものである。とすれば、これら一般的な事項からみて、「逆流や乱流が発生しない」とは、「逆流や乱流を減少させる」という意味であるものと解することができる。
また、「遮蔽幕は、これを空中で保持し、一方の面に対して略垂直な方向から一定速度の風を送り、前記通風口から他方の面に吹き抜けた前記風の挙動を観察した場合に、遮蔽幕の位置から遮蔽幕の縦幅の4倍に至るまでの前記風が減速される範囲において、逆流及び乱流が生じないように、前記通風口の一辺の大きさ及び開口率が設定されている」とは、本件補正発明の効果を述べているものと認められるが、上記(2)で検討したとおり、一辺が7.07mmのほぼ正方形であり、かつ遮蔽幕全体に対する通風口の開口率が50%であることを選択したことによっても同様に得られる効果と認めらる。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正発明は、当業者が引用発明、周知技術及び周知な課題に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記「第2〔理由〕3(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明の発明特定事項を限定したものである。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項を全て含み,さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕5」に記載したとおり,引用発明、周知技術及び周知な課題に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明、周知技術及び周知な課題に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、周知技術及び周知な課題に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-27 
結審通知日 2014-02-28 
審決日 2014-03-18 
出願番号 特願2009-61018(P2009-61018)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E01F)
P 1 8・ 121- Z (E01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳元 八大  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 杉浦 淳
住田 秀弘
発明の名称 防風雪柵  
代理人 阿部 綽勝  
代理人 白崎 真二  
代理人 勝木 俊晴  
代理人 阿部 綽勝  
代理人 勝木 俊晴  
代理人 白崎 真二  

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