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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01G
管理番号 1287297
審判番号 不服2012-18095  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-09-18 
確定日 2014-05-08 
事件の表示 特願2010-506797「搬送式秤量装置、特に搬送コンベア付き秤量コンベア」拒絶査定不服審判事件〔平成20年11月13日国際公開、WO2008/135027、平成22年 7月29日国内公表、特表2010-526304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成20年5月5日
(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年5月4日、独国、を伴う国際出願)
手続補正: 平成24年1月30日(以下、「補正1」という。)
意見書 : 平成24年1月30日
拒絶査定: 平成24年5月14日(送達日:同年同月16日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成24年9月18日
手続補正: 平成24年9月18日(以下、「本件補正」という。)
審尋 : 平成25年3月19日(発送日:同年同月21日)
審尋に対する回答書: 平成25年6月17日


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
本件補正(平成24年9月18日付け手続補正)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。

(補正前)
「(a)秤量セル(9)および、秤量セル(9)へ供給し秤量セルから排出するために計量商品用の搬送装置(5)を備えており、
(b)搬送式秤量装置(1)の機能を制御するための制御装置(11)を備えている搬送式秤量装置において、
(c)制御装置(11)が洗浄モードに移行可能であり、そのモードにおいて、事前に決められた洗浄モード機能マスターに従って搬送式秤量装置(1)の機能を、作業者の危険性および/または搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御する
ことを特徴とする搬送式秤量装置。」

(補正後)
「(a)秤量セル(9)および、秤量セル(9)へ供給し秤量セルから排出するために計量商品用の搬送装置(5)を備えており、
(b)搬送式秤量装置(1)の機能を制御するための制御装置(11)を備えている搬送式秤量装置において、
(c)制御装置(11)が洗浄モードに移行可能であり、そのモードにおいて、事前に決められた洗浄モード機能マスターに従って搬送式秤量装置(1)の機能を、作業者の危険性および/または搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御し、前記洗浄モード機能マスターが、
(d)搬送装置(5)の駆動手段を、事前に決められた回転トルク又は事前に決められた駆動力又は事前に決められた動作経路で制御し、回転トルクまたは駆動力または動作経路が、作業者の負傷又は搬送式秤量装置(1)の損傷を回避する又は減らすように選択されている、
(e)搬送装置の駆動手段を、ブレーキをかける又は移動を停止するトルクがなくなった後に、又は該当する力がなくなった後に、事前に決められた機能マスターに従った動作に自動的に復帰するように制御する、
(f)搬送装置の駆動手段を、一つ又は複数の動作要素を洗浄位置に移動するように制御する、
(g)秤量セル(9)を密封する手段を機能させる、
(h)秤量セル(9)用にオーバーロード安全装置を機能させる、
(i)事前に決められた電気または電子的な構成グループを電流ゼロに切り替えるという機能の一つ又は複数を含んでいることを特徴とする搬送式秤量装置。」(下線は補正箇所)

補正の内容は、上記のとおり、「洗浄モード機能マスター」について、
「(d)搬送装置(5)の駆動手段を、事前に決められた回転トルク又は事前に決められた駆動力又は事前に決められた動作経路で制御し、回転トルクまたは駆動力または動作経路が、作業者の負傷又は搬送式秤量装置(1)の損傷を回避する又は減らすように選択されている、
(e)搬送装置の駆動手段を、ブレーキをかける又は移動を停止するトルクがなくなった後に、又は該当する力がなくなった後に、事前に決められた機能マスターに従った動作に自動的に復帰するように制御する、
(f)搬送装置の駆動手段を、一つ又は複数の動作要素を洗浄位置に移動するように制御する、
(g)秤量セル(9)を密封する手段を機能させる、
(h)秤量セル(9)用にオーバーロード安全装置を機能させる、
(i)事前に決められた電気または電子的な構成グループを電流ゼロに切り替える
という機能の一つ又は複数を含んでいる」
と、(d)ないし(i)に係る機能の一つ又は複数を含むことを限定する補正を含むものである。
ところで、補正前の請求項8は、
「前記請求項1から7のいずれかに記載の搬送式秤量装置において、
事前に決められた一つ又は複数の洗浄モード機能マスターが、
(a)搬送装置(5)の駆動手段を、事前に決められた速度で駆動する、
(b)搬送装置(5)の駆動手段を、事前に決められた動作方向で駆動する、
(c)搬送装置(5)の駆動手段を、速度および/または動作方向に関して、事前に決められた時間変化に従って駆動する、
(d)搬送装置(5)の駆動手段を、事前に決められた回転トルク又は事前に決められた駆動力又は事前に決められた動作経路で制御し、回転トルクまたは駆動力または動作経路が、作業者の負傷又は搬送式秤量装置(1)の損傷を回避する又は減らすように選択されている、
(e)搬送装置の駆動手段を、ブレーキをかける又は移動を停止するトルクがなくなった後に、又は該当する力がなくなった後に、事前に決められた機能マスターに従った動作に自動的に復帰するように制御する、
(f)搬送装置の駆動手段を、一つ又は複数の動作要素を洗浄位置に移動するように制御する、
(g)秤量セル(9)を密封する手段を機能させる、
(h)秤量セル(9)用にオーバーロード安全装置を機能させる、
(i)事前に決められた電気または電子的な構成グループを電流ゼロに切り替える
という機能の一つ又は複数を含んでいる
ことを特徴とする搬送式秤量装置。」
というものであり、請求項1に従属する請求項であるところ、その内容は、(a)ないし(i)という機能の一つ又は複数を含んでいるというものである。
してみると、補正の内容は、補正前の請求項8の内容のうち(d)ないし(i)という一部の機能の一つ又は複数を含んでいるという技術事項を限定するものである。
よって、この補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 検討
(1)引用例記載の事項・引用発明1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-258640号公報(以下「引用例」という。)には、物品検査装置(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項(a)ないし(e)が図面の図1ないし図4とともに記載されている。

(a)
「【0002】
従来より、被検査品をコンベア搬送しながら所定の検査(例えばX線検査、金属検出、重量検査、形状検査、包装状態検査等)を行ない、その検査結果に応じ選別機を作動させて不良品を搬送路の外部に選別排出させるようにした物品検査システムが多用されている。
【0003】
一方、そのような物品検査システムは一般的に製造ラインを自動化した大型のものとなるので、小規模の工場や設置スペースが確保できない場合には、狭いスペースで検査を行ない且つ不良品を選別排出するために不良発生時には物品検査装置のコンベア搬送部を一時停止させ、不良品を検査ヘッド部から取り出すといったことも、従前より広く行なわれている(例えば、特許文献1参照)。」

(b)
「【0006】
しかしながら、不良発生時に物品検査装置のコンベア搬送部を一時停止させ、不良品を検査ヘッド部から取り出す従来の物品検査装置にあっては、検査ヘッド内に被検査物が入った状態で搬送が停止されるため、特に検査ヘッドの開口高さが低い場合に被検査物を取り出す作業が容易でなかった。また、場合によっては検出ヘッドの内部環境が人の手を入れるのに適していないといったこともあり、物品検査効率が更に低下してしまう要因となっていた。
【0007】
さらに、上述のような問題は、不良発生時のみならず、ユーザーが清掃が必要と判断してコンベア搬送を停止させたような場合にも発生し、その場合に、運転再開までコンベア搬送が停止されているので、手動でコンベアを回転させる等の手間がかかるばかりか、そのためにコンベアベルトの蛇行が生じたり汚れが付着してしまったりすることもあった。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、搬送停止時における検査ヘッド内からの被検査物の直接の取り出し作業を不必要にし、かつ、清掃等をも容易に行なうことのできる物品検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的達成のため、(1)被検査物を搬送しながら検査する物品検査装置であって、前記被検査品を所定の搬送路長を有するコンベア搬送路により搬送する搬送速度制御可能な搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される被検査品が通過する所定の検査空間領域内で該被検査品を検査する検査手段と、前記搬送手段の搬送速度を可変制御す
る搬送速度制御手段と、寸動実行のための操作入力部を有し、前記搬送速度制御手段と協働して前記搬送手段による被検査物の搬送速度を前記検査手段による検査時の搬送速度より低速に指定し、かつ、該低速での前記被検査物の搬送を前記操作入力部への操作入力に対応する搬送時間だけ実行させ、前記搬送手段を前記操作入力毎に寸動させる寸動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、操作入力部への操作入力毎に、検査時の搬送速度より低速での被検査物の搬送が前記操作入力に対応する搬送時間だけ実行されることになり、操作入力部への操作入力を適宜の操作量(例えば操作の回数、操作時間の長さ、操作力の強さ、操作距離、操作角度等)で行なうことにより、所要の搬送量だけ寸動を実行させることが可能となる。その結果、搬送停止時における検査ヘッド内からの被検査物の直接の取り出し作業が不必要になり、清掃等も容易に行なうことのできる物品検査装置となる。
【0011】
本発明の物品検査装置においては、(2)前記搬送手段が正転搬送方向および反転搬送方向のうち任意の搬送方向に切換え可能であるとともに、前記搬送手段の搬送方向を正転搬送方向および反転搬送方向のうちに任意の一方向に切換え制御する搬送方向制御手段を備え、前記寸動制御手段が、搬送方向指定のための操作入力部を有し、前記搬送方向制御手段と協働して前記搬送手段による被検査物の搬送方向を指定し、かつ、該指定した方向への前記被検査物の搬送を前記操作入力部への操作入力に対応する搬送時間だけ実行させ、前記搬送手段を前記操作入力毎に寸動させるのがよい。」

(c)
「【0026】
図1?図4は、本発明に係る物品検査装置の第1の実施の形態を示す図であり、本発明を物品検査装置の一つである金属検出装置に適用した例を示している。
【0027】
まず、本実施形態の物品検査装置1は、被検査品(ワークともいう)Wを搬送するコンベア搬送部10(搬送手段)と、このコンベア搬送部10によって搬送される被検査品Wが通過する検査穴部2内で、その被検査品Wを検査する検査ヘッド5と、被検査物Wが正転搬送方向(図1中の左から右側に向かう方向)に進みながら検査穴部2内に進入したときこれを検知する例えばコンベア搬送路を挟んで対向する投受光器からなる進入検知センサ3と、検査結果や設定画面等を表示する表示部6と、設定入力や運転の開始および停止の指令操作等が可能な操作入力部7とを備えている。
【0028】
コンベア搬送部10は、所定幅の無端ベルト11を複数のローラ12、13に着脱可能に巻き掛けて、その上走部に所定の搬送路長Lを有するコンベア搬送路を構成するようになっており、コンベア搬送部10によって搬送される被検査品Wが通常は図1中の左方側から右方側へと搬送されるようになっている。また、無端ベルト11は少なくとも一方側のローラ12又は13を介し、例えば速度制御および正逆転切換えが可能なDCブラシレスモータ等の搬送モータ15によって駆動されるようになっており、コンベア搬送方向が
正転搬送方向とこれとは逆方向の反転搬送方向(図1中の右方側から左方側へと搬送される方向)に切換え可能になっている。なお、搬送モータ15は、搬送駆動部16を介して制御回路30(図2参照)によって制御され、それについては後述する。」

(d)
【0034】
制御回路30は、例えばCPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェースを含むマイクロコンピュータ構成に加え、搬送駆動部16のドライバに入出力信号を与えるプログラマブルコントローラ等を含んで構成されており、検査ヘッド5からの検出信号および他のセンサ情報に基づき、ROM内等に格納された制御プログラムをRAM等との間でデータの授受を行ないながらCPUにより実行し、I/Oインターフェースを介して搬送駆動部16その他の作動部に指令信号を出力することで、異物有無の判定機能、所定の搬送制御機能、表示その他の出力制御機能等を発揮することができる。
【0035】
具体的には、制御回路30は、検出ヘッド5の検出信号を基に異物有無の判定処理を行なう公知の判定処理プログラムとその処理のためのデータテーブルやメモリ領域を有し、判定結果を表わす信号(結果信号)を出力する判定部31と、判定部31の判定結果を表示部6に表示出力し又は他の出力形態で情報出力するための画像処理プログラムおよび画像データメモリ等を含む出力制御部32と、後述する複数の搬送モードを選択的に実行するための制御プログラムを内蔵し搬送駆動部16に速度制御および回転方向制御のための指令信号を出力する搬送制御部33と、動作条件の異なる複数の動作モードについての設定パラメータを記憶保持する設定データメモリおよびその設定情報に基づいて指定された動作モードへの切り替え制御を行なうモード制御プログラムを有し、複数の動作モードのうち任意のモードを選択することができるモード選択部34(モード選択手段)と、を具備している。
【0036】
搬送制御部33は、搬送モータ15の回転速度を可変制御する速度制御信号を出力する速度制御部33a(搬送速度制御手段)と、搬送モータ15の回転方向を正転方向および逆転(搬送反転)方向のうち任意の一方向に切換え制御する方向切換え信号を出力する反
転制御部33b(搬送方向制御手段)と、操作入力部7の一部を寸動実行のため操作入力部として所定の寸動モードを実行させる寸動制御部33c(寸動制御手段)と、検査ヘッド5の検査結果に応じて被検査物Wが不良判定されたときコンベア搬送部10を停止させる搬送停止部33dとを含んで構成されている。
【0037】
ここで、寸動制御部33cは、搬送速度制御部33aと協働して、コンベア搬送部10による被検査物Wの搬送速度を検査ヘッド5での検査時の搬送速度より低速になる寸動搬送速度を指定し、かつ、その速度での被検査物Wの搬送を操作入力部7への操作入力に対応する搬送時間だけ実行させ、コンベア搬送部10を操作入力毎に寸動させるようになっている。また、ここで操作入力に対応する搬送時間とは、例えば一回のボタン操作に対し予め固定値として設定されている所定の寸動搬送時間、あるいは、操作(押下)している間は寸動搬送が繰り返されるか又は搬送が連続実行される時間である。」

(e)
「【0059】
このように、本実施形態においては、操作入力部7への操作入力毎に、検査時の搬送速度より低速での被検査物Wの搬送が前記操作入力に対応する搬送時間だけ実行されることになり、操作入力部7への操作入力を適宜の操作量、例えば操作の回数、操作時間の長さ、操作力の強さ、操作距離、操作角度等で行なうことにより、所要の搬送量だけ寸動を実行させることが可能となる。その結果、不良発生時における検査ヘッド5内の被検査物Wについて作業者による直接の取り出し作業が不必要になり、しかも、コンベア搬送部10の無端ベルト11を所要の搬送量だけ寸動させながら清掃等を容易に行なうことのできる物品検査装置となる。」

上記記載(a)ないし(e)、及び図面の図1ないし4の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「重量検査を行う検査ヘッド5及び、検査ヘッド5を通過搬送させるために、製造ライン上の被検査品W用のコンベア搬送部10を備えており、
物品検査装置1の搬送駆動部16を制御するための制御回路30を備えている物品検査装置1において、
制御回路30の搬送制御部33は、複数の搬送モードを選択的に実行するための制御プログラムを内蔵し、前記制御プログラムに従って物品検査装置1を、コンベアベルトの蛇行が生じたり汚れが付着してしまったりすることのないように制御し、前記制御プログラムが、
コンベア搬送部10の無端ベルト11を所要の搬送量だけ寸動させながら清掃等を容易に行なうことのできるように制御する、
という機能を含んでいる
ことを特徴とする物品検査装置1。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
まず、引用発明1の「重量検査を行う検査ヘッド5」と、本願補正発明の「秤量セル(9)」とは、共に「重量検出部」である点で共通し、そこへ通過搬送させるための、引用発明1における「製造ライン上の被検査品W用のコンベア搬送部10」は、同様に供給、排出を行うための、本願補正発明における「計量商品用の搬送装置(5)」に相当する。
また、引用発明1の「物品検査装置1」は、搬送中の重量検査を行うものであるから、本願補正発明における「搬送式秤量装置(1)」に相当し、引用発明1における「物品検査装置1の搬送駆動部16を制御するための制御回路30」は、本願補正発明における「搬送式秤量装置(1)の機能を制御するための制御装置(11)」に相当する。
そして、引用発明1における「制御プログラム」は、本願補正発明における「洗浄モード機能マスター」に相当し、引用発明1の「制御回路30の搬送制御部33は、複数の搬送モードを選択的に実行するための制御プログラムを内蔵し、前記制御プログラムに従って物品検査装置1を」制御することが、本願補正発明の「制御装置(11)が洗浄モードに移行可能であり、そのモードにおいて、事前に決められた洗浄モード機能マスターに従って搬送式秤量装置(1)の機能を」制御することに相当し、またその際に、引用発明1において「コンベアベルトの蛇行が生じたり汚れが付着してしまったりすることのないように制御」されていることは、本願補正発明において「搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御」されていることに相当する。
さらに、引用発明1の「コンベア搬送部10の無端ベルト11を所要の搬送量だけ寸動させながら清掃等を容易に行なうことのできるように制御する」ことは、本願補正発明の「(f)搬送装置の駆動手段を、一つ又は複数の動作要素を洗浄位置に移動するように制御する」ことに相当する。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「(a)重量検出部及び、重量検出部へ供給し重量検出部から排出するために計量商品用の搬送装置(5)を備えており、
(b)搬送式秤量装置(1)の機能を制御するための制御装置(11)を備えている搬送式秤量装置において、
(c)制御装置(11)が洗浄モードに移行可能であり、そのモードにおいて、事前に決められた洗浄モード機能マスターに従って搬送式秤量装置(1)の機能を、搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御し、前記洗浄モード機能マスターが、
(f)搬送装置の駆動手段を、一つ又は複数の動作要素を洗浄位置に移動するように制御する、
という機能を含んでいる
ことを特徴とする搬送式秤量装置。」

(相違点)
相違点1:重量検出部に関し、本願補正発明は、「秤量セル」が用いられているのに対し、引用発明1においては具体的な構成が不明である点。

(3)判断
前記相違点1について検討する。

例えば、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-227650号公報において、
「【0014】・・・本発明によれば、装置5は長手方向平行列2と整列して配置され且つ搬送製品キヤリヤ7からなる複数の搬送コンベヤ手段6から構成されている。・・・」
「【0028】・・・本発明のさらに他の詳細によれば、中間コンベヤ12が供給コンベヤ1と搬送装置5との間に配置され、この中間コンベヤ12は秤量セル13の上方に製品Pを案内しかつ次に該製品Pを搬送製品キヤリヤ7上に配置すべくなされている。・・・」
と記載されているように、コンベア搬送装置における重量検出部としての秤量セルは周知であり、これを引用発明1の重量検出部に採用することは、当業者が容易になし得たものである。

また、本願補正発明の構成をとることにより、当業者の予想し得ない特段の効果が生じているとも認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書及び審尋に対する回答書において、概略、以下のように主張しているので、検討する。

(1)請求人の主張の概要
「(c)引用文献の発明と本願発明の対比
・・・
これに対して本願発明は、前記構成要件(c)のように、制御装置が「洗浄モード」に移行可能であり、かつ当該[洗浄モード]は、洗浄モード機能マスターに含まれる(d)?(i)の事前に決められた機能に従って搬送式秤量装置(1)の機能を、作業者の危険性および/または搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御します。従って、教育を受けていない作業者でも簡単で確実な洗浄が可能です(本願明細書[0006]段)。
・・・
以上のように、本願発明は(d)?(i)の機能を含む「洗浄モード機能マスター」を備えており、当該洗浄モードは事前に決められた(d)?(i)の機能に従って搬送式秤量装置の機能を、作業者の危険性および/または搬送式秤量装置の損傷を減らす又は回避するように制御するものですから、新規かつ進歩性を有するものとして特許されるべきものと確信致します。」(審判請求書)

「(2)前置報告書に対する反論
・・・また、本願発明の「洗浄モード機能マスター」は、作業者の危険性および/または搬送式秤量装置の損傷を減らす又は回避するように、請求項1の(d)?(i)に記載のように多様な内容を含んでおります。このように本願発明の「洗浄モード機能マスター」には多様な内容が含まれていますので、教育を受けていない作業者でも簡単で確実な洗浄が可能です。
これに対して引用文献1の「寸動モード」は、搬送装置を「低速」で「所定搬送時間」だけ駆動するものであり、本願発明の「洗浄モード機能マスター」の(d)?(i)のような多様な内容はまったく含まれていません。従って、引用文献1の「寸動モード」から、補正後の本願発明(請求項1)の「洗浄モード機能マスター」を容易に想到することはできません。よって、本願発明は引用文献1に対して新規性進歩性を有し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであります。」(回答書)

(2)当審による検討
請求人は、審判請求書及び回答書において、本願補正発明が上記(d)?(i)の機能を含むものであるとの主張を行っている。しかしながら、本願補正発明は上記(d)?(i)という機能の一つまたは複数を含むものとされており、例えば機能(f)を備え、機能(d),(e),(g)?(i)を備えないものも含まれる。そして、上記「2検討 (2)対比」において述べたように、引用発明1は機能(f)を備えるものである。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。

4 まとめ
以上、説示したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「(a)秤量セル(9)および、秤量セル(9)へ供給し秤量セルから排出するために計量商品用の搬送装置(5)を備えており、
(b)搬送式秤量装置(1)の機能を制御するための制御装置(11)を備えている搬送式秤量装置において、
(c)制御装置(11)が洗浄モードに移行可能であり、そのモードにおいて、事前に決められた洗浄モード機能マスターに従って搬送式秤量装置(1)の機能を、作業者の危険性および/または搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御する
ことを特徴とする搬送式秤量装置。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由2は、本願発明は、その優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-258640号公報(引用例)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例記載の事項・引用発明2
引用例に記載されている事項は、上記「第2 補正却下の決定 2検討 (1)引用例記載の事項・引用発明1」に示したとおりであり、引用例の上記記載(a)ないし(e)、及び図面の図1ないし4の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「重量検査を行う検査ヘッド5及び、検査ヘッド5を通過搬送させるために、製造ライン上の被検査品W用のコンベア搬送部10を備えており、
物品検査装置1の搬送駆動部16を制御するための制御回路30を備えている物品検査装置1において、
制御回路30の搬送制御部33は、複数の搬送モードを選択的に実行するための制御プログラムを内蔵し、前記制御プログラムに従って物品検査装置1を、操作入力部への操作入力毎に、検査時の搬送速度より低速で、また搬送方向を正転搬送方向および反転搬送方向のうちに任意の一方向に切換え、被検査品Wの搬送が前記操作入力に対応する搬送時間だけ実行されるように制御して、清掃等を容易に行なうことのできるようにした
ことを特徴とする物品検査装置1。」(以下「引用発明2」という。)

4 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
まず、引用発明2の「重量検査を行う検査ヘッド5」と、本願発明の「秤量セル(9)」とは、共に「重量検出部」である点で共通し、そこへ通過搬送させるための、引用発明2における「製造ライン上の被検査品W用のコンベア搬送部10」は、同様に供給、排出を行うための、本願発明における「計量商品用の搬送装置(5)」に相当する。 また、引用発明2の「物品検査装置1」は、搬送中の重量検査を行うものであるから、本願発明における「搬送式秤量装置(1)」に相当し、引用発明2における「物品検査装置1の搬送駆動部16を制御するための制御回路30」は、本願発明における「搬送式秤量装置(1)の機能を制御するための制御装置(11)」に相当する。
そして、引用発明2における「制御プログラム」は、本願発明における「洗浄モード機能マスター」に相当し、引用発明2の「制御回路30の搬送制御部33は、複数の搬送モードを選択的に実行するための制御プログラムを内蔵し、前記制御プログラムに従って物品検査装置1を」制御することが、本願発明の「制御装置(11)が洗浄モードに移行可能であり、そのモードにおいて、事前に決められた洗浄モード機能マスターに従って搬送式秤量装置(1)の機能を」制御することに相当する。
さらに上記制御に関して、補正1により補正された特許請求の範囲の請求項8に
「・・・事前に決められた一つ又は複数の洗浄モード機能マスターが、
(a)搬送装置(5)の駆動手段を、事前に決められた速度で駆動する、
(b)搬送装置(5)の駆動手段を、事前に決められた動作方向で駆動する、
(c)搬送装置(5)の駆動手段を、速度および/または動作方向に関して、事前に決められた時間変化に従って駆動する、
・・・
という機能の一つ又は複数を含んでいる・・・」
とあり、本願明細書の内容を併せ見ても、本願発明の「作業者の危険性および/または搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御する」ことが、搬送装置の駆動速度、駆動方向、及び駆動時間の制御を含むことは明らかである。したがって、引用発明2において「操作入力部への操作入力毎に、検査時の搬送速度より低速で、また搬送方向を正転搬送方向および反転搬送方向のうちに任意の一方向に切換え、被検査品Wの搬送が前記操作入力に対応する搬送時間だけ実行されるように制御して、清掃等を容易に行なうことのできるようにした」ことは、本願発明において「作業者の危険性および/または搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御すること」に相当するといえる。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「(a)重量検出部及び、重量検出部へ供給し重量検出部から排出するために計量商品用の搬送装置(5)を備えており、
(b)搬送式秤量装置(1)の機能を制御するための制御装置(11)を備えている搬送式秤量装置において、
(c)制御装置(11)が洗浄モードに移行可能であり、そのモードにおいて、事前に決められた洗浄モード機能マスターに従って搬送式秤量装置(1)の機能を、作業者の危険性及び/または搬送式秤量装置(1)の損傷を減らす又は回避するように制御することを特徴とする搬送式秤量装置。」

(相違点)
相違点2:重量検出部に関し、本願発明は、「秤量セル」が用いられているのに対し、引用発明2においては具体的な構成が不明である点。

5 判断
相違点2は相違点1と同一であり、これについては上記「第2 補正却下の決定 2検討 (3)判断」で検討したとおりである。

したがって、本願発明は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-06 
結審通知日 2013-12-09 
審決日 2013-12-20 
出願番号 特願2010-506797(P2010-506797)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01G)
P 1 8・ 121- Z (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三笠 雄司  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 中塚 直樹
小林 紀史
発明の名称 搬送式秤量装置、特に搬送コンベア付き秤量コンベア  
代理人 田中 秀佳  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  

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