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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J |
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管理番号 | 1287302 |
審判番号 | 不服2012-23961 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-12-04 |
確定日 | 2014-05-08 |
事件の表示 | 特願2007-552208「セラミックハロゲン化金属ランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月27日国際公開、WO2006/078632、平成20年 7月31日国内公表、特表2008-529220〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2006年1月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年1月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月17日付けで拒絶理由が通知され、平成24年1月10日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、同年2月22日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年7月25日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、同年8月14日付けで平成24年7月25日付けの手続補正の補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、同年12月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、平成25年8月1日付けで、審判請求人に前置報告の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年9月26日付けで回答書が提出された。 第2 平成24年12月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成24年12月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の請求項に記載された発明 平成24年12月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、特許請求の範囲の減縮を目的として補正された。 よって、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「内部空間(16)を画定する、セラミック材料で形成された放電管(12)と、 前記内部空間に配置され、不活性ガスおよびハロゲン化物成分を含み、前記ハロゲン化物成分は、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化セリウム、ハロゲン化タリウム、ならびにハロゲン化セシウムを含み、前記ハロゲン化セシウムは、前記ハロゲン化物成分の少なくとも9モル%を含み、前記ハロゲン化ナトリウムは、前記ハロゲン化物成分の少なくとも47モル%を含むイオン性充填材と、 前記充填材に電流が印加されると、それを通電させるように前記放電管内に配置された少なくとも1つの電極(18,20)と を含み、 前記放電管(12)は、前記放電管の中心軸に平行な内長(L)、および前記内長に垂直な内径(D)を有する本体(40)部を含み、前記内長の前記内径に対する比は、2.0?3.0の範囲である、セラミックハロゲン化金属ランプ(10)。」 そこで、上記本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2004-288617号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。) (a)「【実施例3】 【0122】 図1および図2に示すものとほぼ同構成で実施例1および2の定格電力250Wに比べて、電力が約1.4倍の定格電力400Wの同種の放電ランプを製造し諸発光特性を測定した。 【0123】 発光管1Aは透光性アルミナセラミックス製で、全長約80mm、膨出部11の外径約22mm、内径約20mmで内容積約4.0cc、管壁負荷約25?29W/cm^(2)、小径筒状部12a,12bの外径約3.5mm、内径約1.5mmである。 【0124】 電極2A,2Bは、タングステンWからなる電極軸21の外径約0.7mm、長さ約8mmで、電極コイル状部22は外径約0.3mmのタングステン線を密ピッチで約4ターン巻回され、両者の電極間距離約19mmである。 【0125】 導入導体23a,23bは、Nbから形成され、外径が約1.4mm、長さが約15mm、Mo線を巻回したコイル状部25a,25bは、外径が約1.4mm、長さが約18mmである。 【0126】 放電媒体としては、始動およびバッファガスとしてアルゴンを約53kPaと、NaI-TlI-InI-TmI_(3)-CeI_(3)のハロゲン化物が約29wt%-約9.5wt%-約4.5wt%-約40wt%-約17wt%の割合で約14mgおよび水銀Hg約30mgとが封入してある。 【0127】 また、外管5は石英ガラスからなるBT形で、最大部外径約116mm、最大部内径約114mm(肉厚約1.0mm)、全長約300mmで、この発光管1Aの容器1は中管3でほぼ全体を囲ってある。」 (b)「【実施例5】 【0130】 実施例3のランプと同構成、同定格の高圧放電ランプであって、実施例3および実施例4のランプL1とは封入する金属ハロゲン化物の組成のみが異なる仕様で製作したランプである。 【0131】 ランプは定格電力が400Wで、放電媒体としハロゲン化物がNaI-TlI-InI-TmI_(3)-CeI_(3)-CsIの組成で約42wt%-約11wt%-約3wt%-約22wt%-約17wt%-約5wt%の割合で約14mgおよび水銀Hg約30mgとが封入してある。」 (c)「【図1】 」 (d)「【図2】 」 すると、上記引用文献1の記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「発光管1Aは透光性アルミナセラミック製で、膨出部11を備え、 電極2A,2Bを有し、 放電媒体としては、始動およびバッファガスとしてアルゴンを約53kPaと、ハロゲン化物がNaI-TlI-InI-TmI_(3)-CeI_(3)-CsIの組成で約42wt%-約11wt%-約3wt%-約22wt%-約17wt%-約5wt%の割合で約14mgおよび水銀Hg約30mgとが封入してある放電ランプ。」 3.対比 (1)本願補正発明と引用発明との対比 (a)引用発明の「発光管1A」が内部空間を有することは技術常識であるから、引用発明の「発光管1Aは透光性アルミナセラミック製で」ある構成は、本願補正発明の「内部空間(16)を画定する、セラミック材料で形成された放電管(12)と」「を含」む構成に相当する。 (b)引用発明の「NaI-TlI-InI-TmI_(3)-CeI_(3)-CsIの組成で約42wt%-約11wt%-約3wt%-約22wt%-約17wt%-約5wt%の割合」をモル比に換算すると、約67.1モル%-約8.0モル%-約3.0モル%-約9.6モル%-約7.8モル%-約4.6モル%の割合であるから、引用発明の「放電媒体としては、始動およびバッファガスとしてアルゴンを約53kPaと、ハロゲン化物がNaI-TlI-InI-TmI_(3)-CeI_(3)-CsIの組成で約42wt%-約11wt%-約3wt%-約22wt%-約17wt%-約5wt%の割合で約14mgおよび水銀Hg約30mgとが封入してある」構成は、本願補正発明の「前記内部空間に配置され、不活性ガスおよびハロゲン化物成分を含み、前記ハロゲン化物成分は、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化セリウム、ハロゲン化タリウム、ならびにハロゲン化セシウムを含み、」「前記ハロゲン化ナトリウムは、前記ハロゲン化物成分の少なくとも47モル%を含むイオン性充填材と」「を含」む構成に相当する。 (c)引用発明の「放電ランプ」は、「発光管1Aは透光性アルミナセラミック製で、」「放電媒体として、」「ハロゲン化物がNaI-TlI-InI-TmI_(3)-CeI_(3)-CsI」「とが封入してある」ことから、本願補正発明の「セラミックハロゲン化金属ランプ(10)」に相当する。 (d)引用発明の「電極2A,2Bを有」する構成は、本願補正発明の「前記充填材に電流が印加されると、それを通電させるように前記放電管内に配置された少なくとも1つの電極(18,20)とを含」む構成に相当する。 (e)引用発明の「膨出部11」が本願補正発明の「本体(40)部」に相当し、また、引用発明の「膨出部11」が所定の内長及び内径を有することは明らかであるから、引用発明の「膨出部11を備え」る構成は、本願発明の「前記放電管(12)は、前記放電管の中心軸に平行な内長(L)、および前記内長に垂直な内径(D)を有する本体(40)部を含」む構成に相当する。 (2)一致点 してみると、両者は、 「内部空間(16)を画定する、セラミック材料で形成された放電管(12)と、 前記内部空間に配置され、不活性ガスおよびハロゲン化物成分を含み、前記ハロゲン化物成分は、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化セリウム、ハロゲン化タリウム、ならびにハロゲン化セシウムを含み、前記ハロゲン化ナトリウムは、前記ハロゲン化物成分の少なくとも47モル%を含むイオン性充填材と、 前記充填材に電流が印加されると、それを通電させるように前記放電管内に配置された少なくとも1つの電極(18,20)と、 を含み、 前記放電管(12)は、前記放電管の中心軸に平行な内長(L)、および前記内長に垂直な内径(D)を有する本体(40)部を含む、セラミックハロゲン化金属ランプ(10)。」 で一致し、次の各点で相違する。 (3)相違点 (イ)ハロゲン化セシウムについて、本願補正発明では、「前記ハロゲン化物成分の少なくとも9モル%を含」むのに対して、引用発明では、「約5wt%」、モル比に換算すると、約4.6モル%の割合で封入してある点。 (ロ)放電管について、本願補正発明では、「本体(40)部」の「前記内長の前記内径に対する比は、2.0?3.0の範囲である」のに対して、引用発明では、「膨出部11」の内長の内径に対する比が不明である点。 4.判断 (1)相違点(イ)について 引用文献1には、段落【0081】に、「また、上記金属ハロゲン化物にCa、Cs、Li、Mg、Rbのうちから選ばれた少なくとも一種のハロゲン化物を金属ハロゲン化物の総封入量Mmgに対して3?20wt%を添加封入するようにしてもよい。このCa、Cs、Li、Mg、Rbのハロゲン化物は、アークを安定させるとともに寿命経過に伴う光束の低下すなわち光束維持率を改善するなどの作用を奏する。」(下線は、当審が付した。)と記載されており、Csのハロゲン化物を、引用発明の約5wt%を大きく超える20wt%まで封入してもよいという技術事項が記載されていること、及び、本願の明細書の記載を参照しても、本願発明の「前記ハロゲン化セシウムは、前記ハロゲン化物成分の少なくとも9モル%を含」む構成の「9モル%」という下限値に格別な技術的意味が認められないことも考慮すると、引用発明において、CsIを少なくとも9モル%封入することは、当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点(ロ)について 一般に、ハロゲン化金属を使用した放電ランプにおいて、発光部の内長、内径、及び、その比は、封入するハロゲン化金属の量、種類及び割合、不活性ガスの量及び種類、水銀の量、放電電力並びに発光管の材料等の種々の要因を勘案して適宜設計し得ることが技術常識であって、内長の内径に対する比は、1程度から8程度までの広い範囲の数値が用いられること、及び、本願発明の「前記内長の前記内径に対する比は、2.0?3.0の範囲である」構成の2つの境界値に格別な技術的意味が認められないことも考慮すると、引用発明において、内長の内径に対する比を2.0?3.0の範囲とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (3)効果について 本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 (4)結論 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 5.小括 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成24年12月4日付けの手続補正は上記のとおり却下され、平成24年7月25日付けの手続補正は平成24年8月14日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年1月10日付けの手続補正により補正された、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「内部空間(16)を画定する、セラミック材料で形成された放電管(12)と、 前記内部空間に配置され、不活性ガスおよびハロゲン化物成分を含み、前記ハロゲン化物成分は、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化セリウム、ハロゲン化タリウム、ならびにハロゲン化セシウムを含み、前記ハロゲン化セシウムは、前記ハロゲン化物成分の少なくとも9モル%を含み、前記ハロゲン化ナトリウムは、前記ハロゲン化物成分の少なくとも47モル%を含むイオン性充填材と、 前記充填材に電流が印加されると、それを通電させるように前記放電管内に配置された少なくとも1つの電極(18,20)と を含むセラミックハロゲン化金属ランプ(10)。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物、その記載内容および引用発明は、前記「第2」「[理由]」「2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から、「前記放電管(12)は、前記放電管の中心軸に平行な内長(L)、および前記内長に垂直な内径(D)を有する本体(40)部を含み、前記内長の前記内径に対する比は、2.0?3.0の範囲である」という事項を削除したものである。 そうすると、本願発明は、前記「第2」「[理由]」「3.」「(3)」で挙げた相違点(イ)のみで引用発明と相違し、該相違点(イ)については、前記「第2」「[理由]」「4.」「(1)」で検討したとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-11-29 |
結審通知日 | 2013-12-03 |
審決日 | 2013-12-16 |
出願番号 | 特願2007-552208(P2007-552208) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高藤 華代 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 北川 清伸 |
発明の名称 | セラミックハロゲン化金属ランプ |
代理人 | 小倉 博 |
代理人 | 荒川 聡志 |
代理人 | 黒川 俊久 |