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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1287304
審判番号 不服2012-24826  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-14 
確定日 2014-05-08 
事件の表示 特願2009-550542「重心バランス判定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年7月30日国際公開,WO2009/093631〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年1月22日(優先権主張 2008年1月23日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成23年10月28日付けで拒絶理由が通知され,同年12月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成24年9月6日付で拒絶査定されたのに対し,同年12月14日に拒絶査定不服の審判請求がされるとともに,同日付で手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ,平成25年8月27日付けで審尋がなされ,同年10月30日に回答書が請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に係る発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
健常者の運動能力を判定する重心バランス判定装置であって、
踏み台の裏面に設置された3つ以上の荷重センサと、
前記踏み台上に被験者を搭載した状態での前記各荷重センサからの出力を予め定める周期でサンプリングし、その結果に基づいて前記被験者の重心位置である演算位置を繰り返し演算し、所定期間内に演算された前記重心位置である各演算位置から、前記被験者の重心のバランスをとる能力である重心バランス能力を判定するバランス能力判定部とを備え、
前記バランス能力判定部は、前記所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータと、前記所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータとに基づいて、前記重心バランス能力を判定し、前記重心動揺パラメータの1つが、前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を、前記演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形面積で除した値であり、当該値が大きいほど、前記被験者の重心バランス能力が高いと判定すること
を特徴とする重心バランス判定装置。」(下線は補正箇所を示す。)と補正された。

2 補正事項について
前者の「健常者の運動能力を判定する重心バランス判定装置であって、」を追加する補正は,重心バランス判定装置を限定するものであり,後者の補正前の「値であること」を「値であり、当該値が大きいほど、前記被験者の重心バランス能力が高いと判定すること」とする補正は,当該「値」によって「当該値が大きいほど、前記被験者の重心バランス能力が高いと判定する」ことを限定したものであり,両者とも,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に適合するか)について,以下に検討する。


3 引用刊行物及びその記載事項
(1)本願の優先日前に頒布された刊行物である「川端悠 他2名,スポーツ種目別にみたバランス能力特性,仙台大学大学院スポーツ科学研究科研究論文集,日本,2004年3月,Vol.5,p.103-110」(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。なお,下線は,当審において下記の引用発明1の認定に関連する箇所に付与した。

(1-ア)「現在,バランス能力を評価する簡便な方法として多用されている方法に,重心動揺計測がある。この方法は身体の重心動揺を定量的かつ客観的に評価できるため,臨床の場で広く用いられている。」(104頁左欄32?35行)

(1-イ)「そこで本研究は,立位の重心動揺を客観的かつ定量的に分析出来る重心動揺計を使用してアルペンスキー,Jr.ジャンプスキー,クロスカントリースキー,野球,サッカー,陸上短距離選手等の立位重心動揺を分析・検討し,スポーツ種目別に静的なバランス能力特性を立位重心動揺から明らかにすることを目的とした。」(104頁右欄14?19行)

(1-ウ)「D.測定手順
測定は時田(1980,1985)が行っていた,日本平衡神経学会が提示した重心動揺検査の基準(日本平衡学会,1983)に準拠した方法を参考に実施した。」(105頁左欄37行?右欄2行)

(1-エ)「E.検査項目
1)総軌跡長(LNG;cm)
総軌跡長(以下「LNG」と略すは重心の総移動距離であり,動揺の質や大きさを評価する指標として用いられている。本研究においても同様の指標として用いた。
2)単位面積軌跡長(LNG/EA;cm/cm^(2))
単位面積軌跡長(以下「LNG/EA」と略す)LNG/EAは1cm^(2)当たりの移動距離であり,姿勢制御の速さを評価する指標として用いられており,本研究においても同様の指標として用いた。
3)外周面積(EA;cm^(2))
外周面積(以下「EA」と略す)はLNGによって出来た面積であり,動揺の大きさを評価する指標として用いられている。本研究においても同様の指標として用いた。」(105頁右欄15?28行)

(1-オ)「B.単位面積軌跡長
・・・・
閉眼時の平均LNG/EAは,陸上短距離選手が23.3±7.1cm/cm^(2),サッカー選手が19.5±6.0cm/cm^(2),ジャンプスキー選手17.6±6.0cm/cm^(2),クロスカントリースキー選手17.9±3.1cm/cm^(2),アルペンスキー選手16.7±5.2cm/cm^(2)であり,スポーツ種目間で統計的な有意差は認められなかった。しかし,陸上短距離選手は微細で速いバランス制御を行っていたの対し,アルペンスキー選手やクロスカントリースキー選手はゆったりとしたバランス制御を行っている傾向が示された。閉眼時のLNG/EAの全体平均は18.7±5.1cm/cm^(2)であった。」(106頁21?39行)

これらの記載事項を総合すると,引用例1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「バランス能力を評価する簡便な方法として多用されている重心動揺計測に用いる,立位の重心動揺を客観的かつ定量的に分析出来る重心動揺計であって,
日本平衡神経学会が提示した重心動揺検査の基準(日本平衡学会,1983)に準拠した方法を参考に実施し,総軌跡長(LNG;cm),単位面積軌跡長(LNG/EA;cm/cm^(2)),外周面積(EA;cm^(2))等を検査項目とし,
単位面積軌跡長(LNG/EA)として,陸上短距離選手が23.3±7.1cm/cm^(2),クロスカントリースキー選手17.9±3.1cm/cm^(2),アルペンスキー選手16.7±5.2cm/cm^(2),との結果を得て,
陸上短距離選手は微細で速いバランス制御を行っていたの対し,アルペンスキー選手やクロスカントリースキー選手はゆったりとしたバランス制御を行っている傾向が示される,重心動揺計。」(以下「引用発明1」という。)


(2)本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平9-168529号公報(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。なお,下線は,当審において下記の引用発明2の認定に関連する箇所に付与した。

(2-ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平衡機能検査、整形外科、リハビリテーション医学、スポーツ医学分野において、被験者の床に対する反力を計測することにより、被検者の直立姿勢時の重心動揺計測もしくは被験者の歩行等の運動時のバランスや運動機能等の解析に用いられる床反力計測装置に関する。」

(2-イ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、重心動揺計を用いた重心動揺検査の項目の一つに、動揺中心偏位検査があるが、上記動揺中心偏位検査においては、足底の中心に対する動揺中心もしくは動揺平均中心のX軸方向及びY軸方向の偏位が計測されることになる。そして、上記足底の中心は、実際には、重心動揺計の検出台上に設けられた基準点であり、重心動揺の測定に際し、被験者が上記検出台の基準点を足底の中心に合わせるようにして、検出台上に乗るようになっている。」

(2-ウ)「【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の第一例の床反力計測装置を図面を参照して説明する。なお、上記第一例の床反力計測装置は、本発明の床反力計測装置を重心動揺を測定する重心動揺計に応用したものである。そして、重心動揺測定により算出する各種解析データや、その出力の形態は、目的により様々に設定できるが、この第一例における床反力計測装置では、その一例として、開眼測定と閉眼測定とを行ない、開眼測定と閉眼測定との双方について下記1?9項目の解析データを算出するとともに、第1項目の重心動揺軌跡及び第8、第9項目に関連する動揺の中心の偏倚の軌跡について、軌跡図を出力する床反力計測装置について述べることとする。
【0025】[1] 重心動揺軌跡
重心動揺軌跡は、その軌跡パターン(型)より平衡反射系や、これを制御する中枢神経系等のどの系の、どの部位に障害があるのかを把握することのできるパラメータである。
[2] 総軌跡長 ………………………… LNG
[3] 単位軌跡長 ……………………… LNG/TIME
[4] 単位面積軌跡長 ………………… LNG/E.AREA
総軌跡長、単位軌跡長及び単位面積軌跡長は、動揺の大きさを示すものであり、特に、単位面積軌跡長は、姿勢制御の微細さを示し、自己受容性姿勢制御の状態を把握することのできるパラメータである。
【0026】
[5] 外周面積 ………………………… ENV.AREA
[6] 矩形面積 ………………………… REC.AREA
[7] 実効値面積 ……………………… RMS.AREA
外周面積、矩形面積及び実効値面積は、その大きさより平衡障害の程度を把握することのできるパラメータである。
[8] 動揺平均中心変位(X方向)…… DEV OF MX
(Y方向)…… DEV OF MY
[9] 動揺中心変位 (X方向)…… DEV OF XO
(Y方向)…… DEV OF YO
動揺平均中心変位及び動揺中心変位は、迷路障害等で生じる四肢・躯幹の筋緊張の左右差による偏倚の程度や、抗重筋緊張の亢進、低下の程度を把握することのできるパラメータである。
【0027】そして、この第一例の床反力計測装置は、以下のような構成を有する。図1は、本発明を適用した床反力計測装置(重心動揺計)Aの外観を示す図であり、図2は、図1に示す床反力計測装置Aの全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、第一例の床反力計測装置Aは、検出台1と該検出台1における測定データを解析するための後述する演算処理装置(図2に図示)11を内蔵した演算処理部10とからなる。なお、上記検出台1と演算処理部10とは、コードcにより接続され、検出台1と演算処理部10とで信号の入出力が可能となっている。
【0028】上記検出台1は、被験者の両足が十分に乗せられるスペースを有する略三角形状の平面台であり、被検者は、靴を脱いで該検出台1に上がり、直立姿勢で重心動揺測定を受けるようになっている。そして、検出台1は、検出台1の上面を構成する略三角形状の検出板2と、該検出板2の三つの頂点部分の下側に検出板2を支持した状態にそれぞれ配置された三つのロードセル3…(図1においては破線でその位置を図示)と、上記検出板2の上面の被験者の足が乗る部分に配置された矩形シート状の分布圧センサ4とからなる。
【0029】上記検出板2は、上述のように略三角形の形状を有する板体であり、被検者を乗せる上面には、図1に示すように、その中心位置を示す基準点2aと、該基準点2aの両側にの位置に被検者が直立姿勢で検出台1に乗る際の両足の置き位置を指定する左右の足形の図形2b、2bと、足のサイズ毎に爪先の位置と踵の位置とをそれぞれ示す複数のライン(図示略)とが表示されている。
【0030】上記ロードセル3…は、周知のものであり、垂直方向(z軸方向)に沿って配置され、検出板2にかかる荷重を測定できるようになっており、それぞれの配設位置に加わる荷重情報を連続的に検出するとともに、検出した荷重情報を逐次演算処理部10に出力するようになっている。そして、検出板2とロードセル3…とは、周知の重心動揺計の検出台と同様の構成であり、少なくとも三つのロードセル3…からの荷重情報により、検出台1上に被験者が直立姿勢で乗った際の反力中心、すなわち、動揺中心を求めることができるようになったものである。」

(2-エ)「【0044】また、演算処理装置11は、3個のロードセル3…から逐次入力される荷重情報に基づいて、被検体の荷重中心(重心中心)位置を実時間、すなわちリアルタイムで算出する。なお、ロードセル3…では、荷重情報を連続的に検出して演算処理装置11に逐次出力するが、演算処理装置11では、逐次入力される荷重情報を、例えば、50ミリ秒といった一定時間毎にサンプリングして演算処理を行ない、反力中心位置(動揺中心位置)を算出する。」

(2-オ)「【0048】そして、上記動揺中心位置のデータの解析においては、上記原点に対する動揺中心のX軸方向及びY軸方向の偏位が求められることになるが、検出板2の基準点2aではなく、実際に測定された面積中心を原点とするXY座標を用いることにより、より正確に動揺中心の偏位(及び動揺平均中心の偏位)を求めることができるようになっている。」

(2-カ)「【0067】次に、本発明の実施の形態の第二例の床反力計測装置について図面を参照して説明する。なお、第二例の床反力計測装置は、本発明を床面に沿った方向の反力も測定可能な床反力計に応用したものであり、基本的には、リハビリテーション医学、体育・スポーツ医学等の分野において、被験者の歩行分析、バランス機能の判定等に用いられるものであり、例えば、歩行時の体重配分、駆動力や制動力、体重の移行性、捻転力、歩幅や歩行速度、歩行の安定性、さらには、上記重心動揺計と動揺に直立姿勢時のバランス等の情報を得るものである。」


(3)本願の優先日前に頒布され,原査定時に引用された刊行物「長山郁生 他6名,重心動揺検査における距離と面積の関係について,Equilibrium Research,日本,日本平衡神経科学会,1987年9月,Vol.46,No.3,p.221-227」(以下「周知例3」という。)には,次の事項が記載されている。なお,下線は,当審において付与した。

(3-ア)「重心動揺検査の分析にあたっては,コンピューターの使用が不可欠であり,分析項目も多岐にわたっているが,検査項目としては動揺面積と軌跡長とによって評価する方法が最も一般的に行われている。」(221頁左欄15行?右欄2行)

(3-イ)「検査方法
・・・・。面積の計算は矩形法に準じ,X軸とY軸の最大振幅を掛け合わせることにより算出した。
結 果
・・・・。したがって、距離と面積の間には相関関係があると推察される。」(222頁左欄5行?右欄9行)

(3-ウ)「考 察
・・・・。したがって、60秒間の検査時間内においては、距離と面積は比例的な関係にあり、両者はよく相関すると考えられる。正常者においては、とくに閉眼の場合、両者はよく相関するということができるが、末梢性めまい患者群においては必ずしもこの関係はあてはまらない。」(224頁右欄12?15行)


4 対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「バランス能力を評価する簡便な方法として多用されている重心動揺計測に用いる,立位の重心動揺を客観的かつ定量的に分析出来る重心動揺計」は,重心の動揺を計測して,バランス能力を評価していることから,「被験者の重心のバランスをとる能力である重心バランス能力を判定するバランス能力判定部とを備え」ているといえ,そして,引用発明1においては,それらを陸上短距離選手,クロスカントリースキー選手,アルペンスキー選手等の運動選手に対して行っていることから,「健常者の運動能力を判定」しているといえる。
してみれば,引用発明1の「バランス能力を評価する簡便な方法として多用されている重心動揺計測に用いる,立位の重心動揺を客観的かつ定量的に分析出来る重心動揺計」は,本願補正発明の「健常者の運動能力を判定する重心バランス判定装置であって,被験者の重心のバランスをとる能力である重心バランス能力を判定するバランス能力判定部とを備え」る「重心バランス判定装置」に相当している。

イ 引用発明1において,総軌跡長(LNG;cm),単位面積軌跡長(LNG/EA;cm/cm^(2)),外周面積(EA;cm^(2))等を検査項目とし,総軌跡長を外周面積で除した値である単位面積軌跡長が大きい陸上短距離選手は微細で速いバランス制御を行っていたの対し,その値が小さいアルペンスキー選手やクロスカントリースキー選手はゆったりとしたバランス制御を行っている傾向を示していることから,単位面積軌跡長(LNG/EA)の値が大きいほど、被験者の重心バランス能力が高いと判定することが示されているといえる。
ここで,「総軌跡長(LNG;cm)」は,摘記(1-エ)より重心の総移動距離であり,本願補正発明で「重心位置である各演算位置」としての「所定期間内における演算位置の総軌跡長」に相当するものである。また,外周面積(EA;cm^(2))は,摘記(1-エ)より,そのLNGによって出来た面積であるから,本願補正発明の「前記演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形の矩形面積」とは,演算位置の軌跡に基づく面積の点で共通している。そして,それらは「所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータ」であるから,総軌跡長(LNG;cm)を外周面積(EA;cm^(2))で除した値である単位面積軌跡長(LNG/EA;cm/cm^(2))も,その「重心動揺パラメータの1つ」であるといえる。
したがって,引用発明1の「総軌跡長(LNG;cm),単位面積軌跡長(LNG/EA;cm/cm^(2)),外周面積(EA;cm^(2))等を検査項目とし,単位面積軌跡長(LNG/EA)として,陸上短距離選手が23.3±7.1cm/cm^(2),クロスカントリースキー選手17.9±3.1cm/cm^(2),アルペンスキー選手16.7±5.2cm/cm^(2),との結果を得て,陸上短距離選手は微細で速いバランス制御を行っていたの対し,アルペンスキー選手やクロスカントリースキー選手はゆったりとしたバランス制御を行っている傾向が示される」ことは,本願補正発明の「所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータに基づいて、前記重心バランス能力を判定し、前記重心動揺パラメータの1つが、前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を、前記演算位置の最大変位で囲まれる矩形面積で除した値であり、当該値が大きいほど、前記被験者の重心バランス能力が高いと判定すること」と,「所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータに基づいて,前記重心バランス能力を判定し,前記重心動揺パラメータの1つが,前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を,前記演算位置の軌跡に基づく面積で除した値であり,当該値が大きいほど,前記被験者の重心バランス能力が高いと判定すること」で共通している。

してみれば,本願補正発明と引用発明1とは,
(一致点)
「健常者の運動能力を判定する重心バランス判定装置であって,
所定期間内に演算された重心位置である各演算位置から,被験者の重心のバランスをとる能力である重心バランス能力を判定するバランス能力判定部とを備え,
前記バランス能力判定部は,前記所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータに基づいて,前記重心バランス能力を判定し,前記重心動揺パラメータの1つが,前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を,前記演算位置の軌跡に基づく面積で除した値であり,当該値が大きいほど,前記被験者の重心バランス能力が高いと判定する,重心バランス判定装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明の「重心バランス判定装置」は,「踏み台の裏面に設置された3つ以上の荷重センサ」を備え,「前記踏み台上に被験者を搭載した状態での前記各荷重センサからの出力を予め定める周期でサンプリングし、その結果に基づいて前記被験者の重心位置である演算位置を繰り返し演算」するものであるが,引用発明1の「バランス能力を評価する簡便な方法として多用されている重心動揺計測に用いる,立位の重心動揺を客観的かつ定量的に分析出来る重心動揺計」は,前記センサを備え,前記のような演算を行うものかどうか不明である点。

(相違点2)
本願補正発明では,演算位置の軌跡に基づく面積が「演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形の矩形面積」であるのに対し,引用発明1では「外周面積」である点。

(相違点3)
本願補正発明では,重心バランス能力を判定する際に,「所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータ」にも基づいて行うのに対し,引用発明1では,該重心位置パラメータにも基づいて行うことが記載されていない点。

(2)当審の判断
ア 相違点1について
引用例2の上記摘記(2-ウ)における「少なくとも三つのロードセル3」は本願補正発明の「3つ以上の荷重センサ」のことであり,摘記(2-エ)の「演算処理装置11では、逐次入力される荷重情報を、例えば、50ミリ秒といった一定時間毎にサンプリングして演算処理を行ない、反力中心位置(動揺中心位置)を算出する」における「反力中心位置(動揺中心位置)」とは本願補正発明の「重心位置である演算位置」のことであるから,引用例2の摘記(2-ウ)及び(2-エ)に記載されているように,重心動揺計において,「踏み台の裏面に設置された3つ以上の荷重センサ」を備え,「前記踏み台上に被験者を搭載した状態での前記各荷重センサからの出力を予め定める周期でサンプリングし、その結果に基づいて前記被験者の重心位置である演算位置を繰り返し演算」するものは,本願の優先日前に周知のものといえる。そして,それは,引用例2の摘記(2-ア)に記載されているように,スポーツ医学分野等において、被検者の直立姿勢時の重心動揺計測もしくは被験者の歩行等の運動時のバランスや運動機能等の解析に用いられるていることから,引用発明1の「バランス能力を評価する簡便な方法として多用されている重心動揺計測に用いる,立位の重心動揺を客観的かつ定量的に分析出来る重心動揺計」として,上記周知の「踏み台の裏面に設置された3つ以上の荷重センサ」を備え,「前記踏み台上に被験者を搭載した状態での前記各荷重センサからの出力を予め定める周期でサンプリングし、その結果に基づいて前記被験者の重心位置である演算位置を繰り返し演算」するものを用いることは当業者が容易になし得ることである。

イ 相違点2について
引用発明1は「日本平衡神経学会が提示した重心動揺検査の基準(日本平衡学会,1983)に準拠した方法を参考に実施」するものであるが,日本平衡神経学会が提示した重心動揺検査の基準(日本平衡学会,1983)の「B.重心動揺記録の評価」には,以下のように記載されている。
「 B.重心動揺記録の評価
a.基本検査
a)X-Y記録図(Statokinesigram、Skg)において
1.動揺の大きさ:前後径、左右径、できれば面積を計測する。〈註9〉 ・・・・
3.動揺の中心:前後動揺,左右動揺の中心線の交わる点を動揺の中心 とし,足底の中心に対し,どの位置にあるかを判定する。
・・・・
〈註〉・・・・
9.「面積」はプラニメータの測定を標準とする。「前後径」×「左右径 」で代用する場合はそれを付記する。・・・・」
ここで,プラニメータの方法により測定されるのが「外周面積」に相当するものであり,これを代用する面積である「『前後径』×『左右径』」は,重心動揺の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形の矩形面積に相当するものである。そして,「外周面積」より,前後方向および左右方向の最大変位から求める「矩形面積」の方が簡便に求められることも周知のことである。
してみれば,引用発明1は「日本平衡神経学会が提示した重心動揺検査の基準(日本平衡学会,1983)に準拠した方法を参考に実施」するものであるから,その基準に則り,「外周面積」を「矩形面積」で代用されるものであり,引用発明1も「簡便な方法」で行うものであるから,演算位置の軌跡に基づく面積として,「外周面積」を本願補正発明と同じく「演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形の矩形面積」に替えることは当業者が容易になし得ることである。

ウ 相違点3について
本願補正発明における「所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータ」について,本願明細書では「ここで、総軌跡長17及び矩形面積18が、重心動揺パラメータの一例に相当している。また、重心位置(演算位置)の足形の中央位置(原点O)からの重心位置(演算位置)のずれ量が、重心位置パラメータの一例に相当している。また、足形の中央位置(原点O)が、踏み台上の基準位置として予め設定されている。」(【0020】),「重心位置パラメータである足形の中央位置(原点O)からの重心位置のずれ量」(【0024】)と記載されている(下線は当審において付与した)。
一方,引用例2の摘記(2-イ)に記載されているように,「動揺重心偏位検査」とは「動揺中心偏位検査においては、足底の中心に対する動揺中心もしくは動揺平均中心のX軸方向及びY軸方向の偏位が計測されることになる」もので,本願発明の「重心位置パラメータ」に相当し,重心動揺計の検査項目として計測することは本願の優先日前周知のことである。
また,上記重心動揺検査の基準においても,動揺の中心が,足底の中心に対し,どの位置にあるかを判定することが基本検査の1つとして記載されている。
してみれば,引用発明1は「日本平衡神経学会が提示した重心動揺検査の基準(日本平衡学会,1983)に準拠した方法を参考に実施」するものであり,引用例1の摘記(1-イ)に記載のように,引用発明1が「そこで本研究は,立位の重心動揺を客観的かつ定量的に分析出来る重心動揺計を使用して・・・・選手等の立位重心動揺を分析・検討し,スポーツ種目別に静的なバランス能力特性を立位重心動揺から明らかにすることを目的」としていることからも,「足形の中央位置(原点O)からの重心位置のずれ量」すなわち「所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータ」をさらに導入して,重心バランス能力を判定してみようとすることは当業者が容易に想到することである。

したがって,本願補正発明は,引用発明1及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 まとめ
以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されることとなるので,本願の請求項1?16に係る発明は,平成23年12月13日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
踏み台の裏面に設置された3つ以上の荷重センサと、
前記踏み台上に被験者を搭載した状態での前記各荷重センサからの出力を予め定める周期でサンプリングし、その結果に基づいて前記被験者の重心位置である演算位置を繰り返し演算し、所定期間内に演算された前記重心位置である各演算位置から、前記被験者の重心のバランスをとる能力である重心バランス能力を判定するバランス能力判定部とを備え、
前記バランス能力判定部は、前記所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータと、前記所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータとに基づいて、前記重心バランス能力を判定し、
前記重心動揺パラメータの1つが、前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を、前記演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形面積で除した値であること
を特徴とする重心バランス判定装置。」

2 引用刊行物及びその記載事項
本願の優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である上記引用例2,原査定時に引用された刊行物である周知例3の記載事項は,上記「第2」「3 引用刊行物及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 引用発明2について
引用例2の上記記載事項を総合すると,引用例2には,以下の発明が記載されていると認められる。
「平衡機能検査,スポーツ医学分野において,被験者の床に対する反力を計測することにより,被検者の直立姿勢時の重心動揺計測もしくは被験者の歩行等の運動時のバランスや運動機能等の解析に用いられ,バランス機能の判定等に用いられる床反力計測装置において,
上記床反力計測装置(重心動揺計)は,検出台1と該検出台1における測定データを解析するための後述する演算処理装置11を内蔵した演算処理部10とからなり,該検出台1は、検出台1の上面を構成する略三角形状の検出板2と、該検出板2の三つの頂点部分の下側に検出板2を支持した状態にそれぞれ配置された三つのロードセル3を有し,そして、検出板2とロードセル3とは,周知の重心動揺計の検出台と同様の構成であり,少なくとも三つのロードセル3からの荷重情報により、検出台1上に被験者が直立姿勢で乗った際の反力中心,すなわち,動揺中心を求めることができるようになったものであり,上記演算処理装置11では,逐次入力される荷重情報を,例えば,50ミリ秒といった一定時間毎にサンプリングして演算処理を行ない,反力中心位置(動揺中心位置)を算出する床反力計測装置(重心動揺計)であって,
総軌跡長LNG,
単位面積軌跡長LNG/E.AREA,
外周面積ENV.AREA,
矩形面積REC.AREA,
動揺平均中心変位(X方向)DEV OF MX(Y方向)DEV OF M Y,
動揺中心変位(X方向)DEV OF XO(Y方向)DEV OF YO
等の解析データを算出する,床反力計測装置(重心動揺計)。」(以下「引用発明2」という。)

4 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「平衡機能検査,スポーツ医学分野において,被験者の床に対する反力を計測することにより,被検者の直立姿勢時の重心動揺計測もしくは被験者の歩行等の運動時のバランスや運動機能等の解析に用いられ,バランス機能の判定等に用いられる床反力計測装置」は,重心動揺計測をし,バランスや運動機能等の解析をし,バランス機能の判定等をするものであるから,本願発明の「被験者の重心のバランスをとる能力である重心バランス能力を判定するバランス能力判定部とを備え」た「重心バランス能力を判定する重心バランス判定装置」に相当するといえる。

イ 引用発明2の「検出板2の三つの頂点部分の下側に検出板2を支持した状態にそれぞれ配置された三つのロードセル3」「少なくとも三つのロードセル3」は,本願発明の「踏み台の裏面に設置された3つ以上の荷重センサ」に相当する。

ウ 引用発明2の「検出板2とロードセル3とは,周知の重心動揺計の検出台と同様の構成であり,少なくとも三つのロードセル3からの荷重情報により,検出台1上に被験者が直立姿勢で乗った際の反力中心,すなわち,動揺中心を求めることができるようになったものであり,上記演算処理装置11では,逐次入力される荷重情報を,例えば,50ミリ秒といった一定時間毎にサンプリングして演算処理を行ない,反力中心位置(動揺中心位置)を算出する」において,「反力中心位置(動揺中心位置)」とは本願発明の「重心位置である演算位置」のことであり,引用発明2の当該記載は,本願発明の「踏み台上に被験者を搭載した状態での前記各荷重センサからの出力を予め定める周期でサンプリングし、その結果に基づいて前記被験者の重心位置である演算位置を繰り返し演算」することに相当する。

エ 引用発明2の「総軌跡長LNG」は本願発明の「所定期間内における演算位置の総軌跡長」に相当するもので,また,「外周面積ENV.AREA」とは,重心動揺軌跡を囲む面積であるから,本願発明における「演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形の矩形面積」とは,演算位置の軌跡に基づく面積の点で共通する。そして,それらは「所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータ」であるから,引用発明2の総軌跡長LNGを外周面積ENV.AREAで除した値である「単位面積軌跡長LNG/E.AREA」は,「重心動揺パラメータの1つ」であるといえる。
したがって,引用発明2の「単位面積軌跡長LNG/E.AREA」は,本願発明の「前記重心動揺パラメータの1つが、前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を、前記演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形面積で除した値である」とは,「前記重心動揺パラメータの1つが,前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を,前記演算位置の軌跡に基づく面積で除した値である」という点で共通するものである。

オ 本願発明における「所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータ」については,「第2」「4 対比・判断」「(2)当審の判断」の「ウ 相違点3について」で既に述べたように,「足形の中央位置(原点O)からの重心位置のずれ量」のことである。
一方,引用発明2の「動揺平均中心変位(X方向)DEV OF MX(Y方向)DEV OF MY」,「動揺中心変位(X方向)DEV OF XO(Y方向)DEV OF YO」は,摘記(2-イ)及び(2-オ)の記載を参照すれば,それらは足形の中央位置(原点O)からの重心位置のずれ量に他ならないことから,それらは,本願発明の「所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータ」に相当するものである。

してみれば,本願発明と引用発明2とは,
(一致点)
「踏み台の裏面に設置された3つ以上の荷重センサと,
前記踏み台上に被験者を搭載した状態での前記各荷重センサからの出力を予め定める周期でサンプリングし,その結果に基づいて前記被験者の重心位置である演算位置を繰り返し演算し,所定期間内に演算された前記重心位置である各演算位置から,前記被験者の重心のバランスをとる能力である重心バランス能力を判定するバランス能力判定部とを備え,
前記バランス能力判定部は,前記所定期間に亘る演算位置の動揺から求められる重心動揺パラメータと,前記所定期間に亘る演算位置の分布から求められる重心位置パラメータとに基づいて,前記重心バランス能力を判定し,
前記重心動揺パラメータの1つが,前記所定期間内における演算位置の総軌跡長を,前記演算位置の軌跡に基づく面積で除した値である,重心バランス判定装置。」
の点で一致し,以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明では,演算位置の軌跡に基づく面積が「演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形の矩形面積」であるのに対し,引用発明では「外周面積」である点。

(2)当審の判断
上記「第2」「4 対比・判断」「(2)当審の判断」の「イ 相違点2について」で既に述べたように,日本平衡神経学会が提示した重心動揺検査の基準(日本平衡学会,1983)には,「外周面積」を「矩形面積」で代用できることが記載されており,「外周面積」より,前後方向および左右方向の最大変位から求める「矩形面積」の方が簡便に求められることは本願の優先日前に周知のことである。そして,周知例3の摘記(3-ア)?(3-ウ)に記載されているように,重心の軌跡長と面積との相関関係を求める際の面積として「矩形面積」が用いられることも周知のことである。
一方,引用発明2も重心動揺検査に該当するものであるから,上記基準に則り,演算位置の軌跡に基づく面積として「外周面積」を「矩形面積」で代用してみようとすることは,引用発明2の装置おいて「矩形面積REC.AREA」も算出していることから,当業者が容易になし得ることである。特に,引用発明2の「単位面積軌跡長 LNG/E.AREA」は,重心の軌跡長と面積との相関関係を求めるものといえることから,上記周知技術を鑑みても,演算位置の軌跡に基づく面積として「外周面積」に替えて「矩形面積」すなわち「演算位置の前後方向および左右方向の最大変位で囲まれる矩形の矩形面積」にすることは当業者が容易に想到することである。
そして,本願発明で「外周面積」を「矩形面積」に替えたことによる効果について,本願明細書を参照しても,当業者が予期し得ない格別顕著な効果があるとはいえない。

なお,本願発明は,本願明細書の【0053】に「また、従来から用いられる外周面積は、それを測定するには、重心の移動軌跡の外周線を画像で描き、画像解析をして、外周線で囲まれたエリアの画像のドット数をカウントする必要があり、大きなメモリを消費するのに対して、矩形面積は、前後方向および左右方向の最大変位を乗算するだけで算出できるので、容易に求めることができる。」,【0100】及び【0104】に「また、前記外周面積は、それを測定するには、画像解析をして、ドット数をカウントする必要があり、大きなメモリを消費するのに対して、矩形面積は、前後方向および左右方向の最大変位を乗算するだけでよく、容易に求めることができる。」と本願発明の効果を記載する一方で,【0006】に「本発明の目的は、重心バランス能力を背景技術よりも精度よく判定することができる重心バランス判定装置を提供することである。」と記載しているように,従来技術(背景技術)で用いられている「外周面積」に替えて「矩形面積」を用いることで,重心バランス能力を背景技術よりも精度よく判定することをその目的としているが,本願明細書には,それを裏付ける実験データ等が記載されていない。
本願明細書では,【図10】を用いて「外周面積」と「矩形面積」との技術的な違いを説明しているが,【図10】を参照するに,同じ範囲(面積)で細かな重心の揺れを行ってバランスを取っている被験者でも,左右方向もしくは前後方向以外の斜めに,あるいは,左右方向と前後方向でバランスを取る被験者は,バランス能力が低いと判定されてしまうことになる。一般に,バランス能力の高い被験者は,どの方向においてもバランスを取る能力に長けているものであるから,上記のとおり,左右方向もしくは前後方向以外の斜めに,あるいは,左右方向と前後方向でバランスを取る被験者についてバランス能力を低いと判定することが,精度よく判定することにはならないと想定される。
本願発明は,上記想定とは異なるものであり,本願明細書にはそれを裏付ける実験データ等が記載されていないことから,合議体は請求人にこの点を問い合わせたが,請求人からはそれを裏付けるデータはないと回答されたことも付記しておく。

したがって,本願発明は,引用発明2及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2014-02-12 
結審通知日 2014-02-18 
審決日 2014-03-25 
出願番号 特願2009-550542(P2009-550542)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門田 宏  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 重心バランス判定装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 大西 裕人  
代理人 小谷 昌崇  

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