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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1287306
審判番号 不服2012-25946  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-27 
確定日 2014-05-08 
事件の表示 特願2007- 54619「磁気共鳴診断装置および医用画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月18日出願公開、特開2008-212418〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年3月5日を出願日とする出願であって,平成23年10月24日付けで拒絶理由が通知され,同年12月28日付けで手続補正がなされ,平成24年9月28日付けで拒絶査定がなされ,同年12月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けにて手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに,平成25年8月27日付けで審尋がなされ,回答書が同年11月5日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明(下線は補正箇所を示す。)
本件補正により,補正前の特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】
被検体のスライス画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記スライス画像の撮像を行った撮像スライスに関係した測定スライス内に複数が設定されるボクセルのそれぞれに関して前記被検体の磁気共鳴スペクトルを測定する測定手段と、
前記スライス画像に前記ボクセルの範囲を表すグリッド線を重ねた画像を第1の表示エリアに表示させるとともに、前記磁気共鳴スペクトルを表すスペクトル画像を第2の表示エリアに表示させる画像データを生成する生成手段とを具備し、
前記生成手段は、前記複数のボクセルのうちで前記第1の表示エリア内を移動可能なポインタがポイントするボクセルに関して前記測定手段が測定した前記磁気スペクトルを表すスペクトル画像を前記第2の表示エリアに表示させるように前記画像データを生成する磁気共鳴診断装置。」
と補正された。

本件補正は,補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「前記スライス画像を第1の表示エリアに表示させる」ことについて,「前記スライス画像に前記ボクセルの範囲を表すグリッド線を重ねた画像を第1の表示エリアに表示させる」と「第1の表示エリアに表示させる画像」を限定した補正を含むものである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願の出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平3-264049号(以下,「刊行物1」という。)には,「磁気共鳴診断装置」について,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1-ア)「2.特許請求の範囲
被検体の特定部位に一又は複数の原子核にかかる磁気共鳴現象を生じさせると共に該現象により生じた磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴パラメータによる診断情報を生成して表示する磁気共鳴診断装置において、プロトンにかかる断層像情報、前記プロトン以外の少なくとも一つの原子核にかかるスペクトロスコピックイメージ情報、およびスペクトラム情報をそれぞれ格納するファイル装置を有し、前記スペクトラム情報は、前記断層像情報と前記スペクトロスココピック情報とに共通に付した関心領域について検索することを特徴とする磁気共鳴診断装置。」(第1頁左下欄4?16行)

(1-イ) 「(産業上の利用分野)
本発明は、磁気共鳴(MR:magnetic resonance)現象を利用して被検体(生体)のスライス画像等の形態情報やスペクトロスコピックイメージ等の機能情報を得る磁気共鳴診断装置に関する。」(第1頁左下欄19行?右下欄4行)

(1-ウ) 「 このような磁気共鳴診断装置にあっては、プロトン(^(1)H)にかかる断層像情報を位置決め画像として用いて、他の核種についてのスペクトロスコピックイメージを得、両者を同一画面に表示すると共に特定領域のスペクトラムを表示することがある。
第7図は従来の表示例であり、一つの画面20の左上部にはプロトン断層像PIが表示され、左下部には例えば^(31)Pのスペクトロスコピーの各ボクセルについてのデータを周波数方向に積分したものであるリン密度分布像SIが表示され、右下部にはプロトン断層像PI又はリン密度分布像SI上のROIについてのスペクトラムSPが表示されたものとなっている。
(発明が解決しようとする課題)
上述した従来の方式では、プロトン断層像PIとリン密度分布像SIとに対するROI設定は別個に行うものとなっているが、リン密度分布像SIは空間分解能が低く、形態情報が十分でないので、操作者は、スペクトラムSPを表示したい領域にROIを設定することができない、という問題があった。
また、両画像においては、別個に設定され得るROIであるため、第7図に示すように、異なる位置にそれぞれROI_(1)、ROI_(2)が表示された場合、スペクトラムSPがどちらのROIに関するものであるかは不明であり、誤診断を招くことになった。
そこで本発明の目的は、スペクトラムSPを表示したい領域の設定を容易に行うことができ、誤りのない機能診断を可能とする磁気共鳴診断装置を提供することにある。」(第2頁左上欄17行?左下欄8行)

(1-エ) 「(実施例)
以下本発明にかかる磁気共鳴診断装置の一実施例を図面を参照して説明する。
第1図は本実施例の磁気共鳴診断装置の構成を示すブロック図、第2図?第4図は本実施例の磁気共鳴診断装置におけるファイルされる情報のデータ構造を示す図、第5図は本実施例の磁気共鳴診断装置における表示例を示す図である。
第1図に示すように、被検体Pを内部に収容することができるようになっているマグネットアッセンブリMAとして、常電導又は超電導方式による静磁場コイル(静磁場補正用シムコイルが付加されていることもある。)1と、磁気共鳴信号の誘起部位の位置情報付与のための傾斜磁場を発生するためのX,Y,Z軸の傾斜磁場発生コイル2と、回転高周波磁場を送信すると共に誘起された磁気共鳴信号(MR信号)を検出するための送受信系である例えば送信コイル及び受信コイルからなるプローブ3とを有し、RFパルスの送信制御を行う送信器4、誘起MR信号の受信制御を行う受信器5、X,Y,Z軸の傾斜磁場発生コイル2のそれぞれの励磁制御を行うX軸傾斜磁場電源(GXA)6,Y軸傾斜磁場電源(GYA)7,Z軸傾斜磁場電源(GZA)8,スライス画像生成のためのパルスシーケンスやスペクトロスコピー生成のためのパルスシーケンスを実施することができるシーケンサ9、これらを制御すると共に検出信号の信号処理及びその表示を行うコンピュータ10、モニタ11、コンソール12、マウス装置(又はトラックボール装置)13を有している。
上述の基本構成に加えて、ファイルシステムを有している。このファイルシステムは、第1のファイル装置14、第2のファイル装置15、第3のファイル装置16、コントローラ17から構成されている。
ここで、第1のファイル装置14は、第2図に示すデータ構造のように、被検者識別番号や撮影日をインデックスとして検索可能なプロトン断層像PI_(i)を複数記憶することができるものである。ここで、プロトン断層像PI_(i)は、例えばマトリックス数256×256等である。
また、第2のファイル装置15は、第3図に示すデータ構造のように、被検者識別番号や撮影日をインデックスとして検索可能な^(31)Pのスペクトロスコピーの各ボクセルについてのデータを周波数方向に積分したものであるリン密度分布像SI_(j)を複数記憶することができるものである。ここで、リン密度分布像SI_(j)は例えばマトリックス数が4×4や16×16等であり、図示では4×4マトリックスにて示しである。
なお、両画像PI_(i)とSI_(j)とには、共通するグリッド(図示では4×4)が付されており、両画像PI_(i)とSI_(j)とのいずれかにROIを設定すると、他の画像の対応するグリッドにROIが設定されるようになっている。
さらに、第3のファイル装置16は、第4図に示すデータ構造のように、ROI_(k)をインデックスとして検索可能な^(31)Pのスペクトラム像を複数記憶することができるものである。
そして、コントローラ17は、コンピュータ10、コンソール12およびマウス装置13の制御の下で上述の画像を呼出して、モニタ11上にマルチ表示するものとなる。
以上のごとく構成された本実施例装置によれば、モニタ11の画面20には、第5図に示すように、空間分解能の低い^(31)P密度分布画像SI_(j)の他に空間分解能の高いプロトン画像PI_(i)が同時に表示され、しかも、両画像に設定されるROI_(k)は、両画像に連動するものであるため、スペクトラム像SP_(ROIk)の領域設定に際しては、空間分解能の高いプロトン画像PI_(i)を参照して設定操作を行うことができ、また、直接にSI_(j)を参照して設定操作することができるので、所望領域についてのスペクトラム像SP_(ROIk)を表示することができるものである。
また、第6図に示すように、スペクトラム像SP_(ROIk)についての複数のピーク(図示ではビークP_(1),P_(2))についてそれぞれ例えば^(31)P密度分布画像SI_(j)、SI_(p)′を表示する形態を採用しても良い。
なお、上記の例では、^(31)Pについて例示しているが、他の核種についても適用できるものである。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できるものである。」(第2頁左下欄11行?第3頁右下欄14行)

(1-オ)「[発明の効果]
以上のよう本発明では、プロトンにかかる断層像情報、前記プロトン以外の少なくとも一つの原子核にかかるスペクトロスコピックイメージ情報、およびスペクトラム情報をそれぞれ格納するファイル装置を有し、前記スペクトラム情報は、前記断層像情報と前記スペクトロスココピック情報とに共通に付した関心領域について検索することにより、スペクトラムを表示したい領域の設定に際しては、空間分解能の高い画像であるプロトンにかかる断層像情報に対して行うことにより、所望の領域への設定が可能となり、誤りのない機能診断を可能とし、且つ容易にするものである。
よって本発明によれば、スペクトラムを表示したい領域の設定を容易に行うことができ、誤りのない機能診断を可能とし、且つ容易にする磁気共鳴診断装置を提供することができる。」(第3頁右下欄15行?第4頁左上欄11行)

(1-カ)
第5図には本実施例の磁気共鳴診断装置における一表示例として、画面の左上にはグリッド(図示では4×4)が付されて、グリッドのマス目の一つがROIとして設定されている画像PI_(i)が表示され、画面の右下には、設定されたROIに対応するスペクトラム像が表示されている。


上記(1-ア)?(1-カ)の記載と第1?7図を参照すると,上記刊行物1には, 次の発明が記載されていると認められる。
「 スライス画像生成のためのパルスシーケンスやスペクトロスコピー生成のためのパルスシーケンスを実施することができるシーケンサ9、これらを制御すると共に検出信号の信号処理及びその表示を行うコンピュータ10、モニタ11、コンソール12、マウス装置13を有し、マトリックス数256×256であるプロトン断層像PI_(i)を複数記憶することができる第1のファイル装置14、ROI_(k)をインデックスとして検索可能な^(31)Pのスペクトラム像を複数記憶することができる第3のファイル装置16、コントローラ17から構成されているファイルシステムを有し、被検体の特定部位に一又は複数の原子核にかかる磁気共鳴現象を生じさせると共に該現象により生じた磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴パラメータによるプロトン断層像PI_(i、)^(31)Pのスペクトラム像等の診断情報を生成する磁気共鳴診断装置において,
モニタ11の画面の左上にはグリッド(4×4)が付されて、グリッドのマス目の一つがROIとして設定されている画像PI_(i)が表示され、画面の右下には、設定されたROIに対応するスペクトラム像が表示され、スペクトラム像SP_(ROIk)の領域設定に際しては、設定されるプロトン画像PI_(i)を参照してROI_(k)設定操作を行い、所望領域についてのスペクトラム像SP_(ROIk)を表示することができる上記装置。」

3 対比・判断
補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「スライス画像」が、補正発明の「被検体のスライス画像」に相当することは明らかである。

イ 引用発明の「スライス画像生成のためのパルスシーケンス」「生成のためのパルスシーケンスを実施することができるシーケンサ9、これらを制御すると共に検出信号の信号処理及びその表示を行うコンピュータ10」は、スライス画像を生成し表示するのであるから、補正発明の「被検体のスライス画像を撮像する撮像手段」を具備することは明らかである。
また、本願明細書には、「【0007】・・・グリッド線61aにより表されるボクセル・・・」、「【0037】・・・スライス画像31には、ボクセルの範囲を表すグリッド線31aが含まれる。」と記載されていることから、引用発明の「グリッドのマス目」は、補正発明の「ボクセル」に相当する。
また、引用発明の「スペクトラム像」が、補正発明の「磁気共鳴スペクトルを表すスペクトル画像」に相当する。
そして、引用発明の「スライス画像生成のためのパルスシーケンスやスペクトロスコピー生成のためのパルスシーケンスを実施することができるシーケンサ9、これらを制御すると共に検出信号の信号処理及びその表示を行うコンピュータ10」は、「モニタ11の画面の左上にはグリッド(4×4)が付されて、グリッドのマス目の一つがROIとして設定されている画像PI_(i)が表示され、画面の右下には、設定されたROIに対応するスペクトラム像が表示され」るのであり、「ROI_(k)設定操作を行い、所望領域についてのスペクトラム像SP_(ROIk)を表示することができる」のであるから、補正発明の「前記撮像手段が前記スライス画像の撮像を行った撮像スライスに関係した測定スライス内に複数が設定されるボクセルのそれぞれに関して前記被検体の磁気共鳴スペクトルを測定する測定手段」を具備することは明らかである。
そうすると、引用発明の「磁気共鳴診断装置」は補正発明の「磁気共鳴診断装置」に相当する。

ウ 引用発明の「グリッド(4×4)が付されて、グリッドのマス目の一つがROIとして設定されている画像PI_(i)が表示され」ることは、補正発明の「前記スライス画像に前記ボクセルの範囲を表すグリッド線を重ねた画像」が表示されることに相当するから、引用発明の「モニタ11の画面の左上」は、補正発明の「第1の表示エリア」に相当する。
同様に、引用発明の「設定されたROIに対応するスペクトラム像が表示され」ることは、補正発明の「前記磁気共鳴スペクトルを表すスペクトル画像」が表示されることに相当するから、引用発明の「画面の右下」は、補正発明の「第2の表示エリア」に相当する。
そして、引用発明の「被検体の特定部位に一又は複数の原子核にかかる磁気共鳴現象を生じさせると共に該現象により生じた磁気共鳴信号を収集して磁気共鳴パラメータによるプロトン断層像PI_(i、)^(31)Pのスペクトラム像等の診断情報を生成する」ことが、補正発明の「生成手段」を具備することに相当する。

エ 上記ウの記載と、引用発明は「スペクトラム像SP_(ROIk)の領域設定に際しては、設定されるプロトン画像PI_(i)を参照してROI_(k)設定操作を行い、所望領域についてのスペクトラム像SP_(ROIk)を表示することができ」、「グリッドのマス目の一つがROIとして設定」されるのであるから、引用発明の「モニタ11の画面の左上にはグリッド(図示では4×4)が付されて、グリッドのマス目の一つがROIとして設定されている画像PI_(i)が表示され、画面の右下には、設定されたROIに対応するスペクトラム像が表示され、スペクトラム像SP_(ROIk)の領域設定に際しては、設定されるプロトン画像PI_(i)を参照してROI_(k)設定操作を行い、所望領域についてのスペクトラム像SP_(ROIk)を表示することができ」と補正発明の「前記生成手段は、前記複数のボクセルのうちで前記第1の表示エリア内を移動可能なポインタがポイントするボクセルに関して前記測定手段が測定した前記磁気スペクトルを表すスペクトル画像を前記第2の表示エリアに表示させるように前記画像データを生成する」とは、「前記生成手段は、前記複数のボクセルのうちで前記第1の表示エリア内を移動可能な指定手段が指定するボクセルに関して前記測定手段が測定した前記磁気スペクトルを表すスペクトル画像を前記第2の表示エリアに表示させるように前記画像データを生成する」点で共通する。

そうすると,両者は,
(一致点)
「被検体のスライス画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記スライス画像の撮像を行った撮像スライスに関係した測定スライス内に複数が設定されるボクセルのそれぞれに関して前記被検体の磁気共鳴スペクトルを測定する測定手段と、
前記スライス画像に前記ボクセルの範囲を表すグリッド線を重ねた画像を第1の表示エリアに表示させるとともに、前記磁気共鳴スペクトルを表すスペクトル画像を第2の表示エリアに表示させる画像データを生成する生成手段とを具備し、
前記生成手段は、前記複数のボクセルのうちで前記第1の表示エリア内を移動可能な指定手段が指定するボクセルに関して前記測定手段が測定した前記磁気スペクトルを表すスペクトル画像を前記第2の表示エリアに表示させるように前記画像データを生成する磁気共鳴診断装置。」である点で一致し,以下の点で相違するといえる。

(相違点)
表示エリア内を指定手段が指定することについて、補正発明が「ポインタがポイントする」のに対して,引用発明では,「設定操作を行う」点。

(1)相違点についての検討
コンピュータ-技術において、画面上の表示可能エリア内での位置の設定操作として、マウス等のポイント手段を用いて、画面上のポインタを移動させポイントすることにより行うことは常套手段である。
そして、引用発明もコンピュータを用いている装置であり、しかもマウスを具備している。
してみると、引用発明も補正発明同様にポインタがポイントしているものといえる。
そして、引用発明も補正発明も、作用・効果においても、実質的に同じであるといえる。

したがって、補正発明は、引用発明と実質的に同一であり、刊行物1に記載された発明であるというべきである。

仮に,相違点が実質的に同一とはいえないとしても、引用発明の「設定操作を行う」「ROI_(k)」を「ポインタがポイントするボクセル」に置き換えることは、その機能が同一であることからみて、何ら困難性がなく、当業者が容易に想到し得る事項であるといえる。
そうすると、補正発明は,当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるというべきである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?6に係る発明は,平成23年12月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであって,その請求項1に係る発明は,次のとおりである。
「【請求項1】
被検体のスライス画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が前記スライス画像の撮像を行った撮像スライスに関係した測定スライス内に複数が設定されるボクセルのそれぞれに関して前記被検体の磁気共鳴スペクトルを測定する測定手段と、
前記スライス画像を第1の表示エリアに表示させるとともに、前記磁気共鳴スペクトルを表すスペクトル画像を第2の表示エリアに表示させる画像データを生成する生成手段とを具備し、
前記生成手段は、前記複数のボクセルのうちで前記第1の表示エリア内を移動可能なポインタがポイントするボクセルに関して前記測定手段が測定した前記磁気スペクトルを表すスペクトル画像を前記第2の表示エリアに表示させるように前記画像データを生成する磁気共鳴診断装置。」(以下,「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1およびその記載事項は,前記「第2 2 引用刊行物およびその記載事項」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は,補正発明の「前記スライス画像に前記ボクセルの範囲を表すグリッド線を重ねた画像を第1の表示エリアに表示させる」から「前記スライス画像を第1の表示エリアに表示させる」と、「第1の表示エリアに表示させる画像」を限定する構成を省いたものに相当する。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含む補正発明が,上記「第2 3 対比・判断 (1)相違点についての検討」において検討したとおり,刊行物1に記載された発明である、あるいは、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1に記載された発明である、あるいは、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものというべきである。

第4 回答書について
請求人は回答書において「 (4) 審査官殿は、本願の請求項2,5については、何らの認定もなされていません。従いまして、本願の請求項2,5については、拒絶の理由は存在せず、十分に特許要件を備えているものであると確信します。
(5) 以上の説明から明らかなように、前置報告書における審査官殿の認定を踏まえたとしても、本願が特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとの事実は認めらません。
ただし、もし合議体においても、『請求項1,4は特許要件を満たさない』との結論に達した場合、出願人は従属請求項に限定してでも権利を得ることを希望しています。
そのような場合には、是非とも補正の機会をお与えいただけますよう、宜しくお願い申し上げます。 」と主張している。
しかしながら、「【請求項2】 確定指示がなされたときに前記第2の表示エリアに表示されていたスペクトル画像が表す磁気共鳴スペクトルを後処理の対象として確定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴診断装置。」であるところ、「後処理」について、本願明細書には、「【0037】・・・なお表示画面30には、コンソール画像33が含まれる。コンソール画像33には、各種の操作ボタンや情報表示領域が含まれる。コンソール画像33のうちの領域33aは、後処理の内容を設定するための領域である。後処理とは、スペクトラムデータまたはスペクトル画像に対して行う各種の処理である。この後処理は例えば、データ種(FFT後データや位相補正データなど)やデータタイプ(Real,Imgなど)の変更や正規化、あるいは記憶媒体への保存など、如何なる処理であっても良い。」と記載され、作業後に普通に行う「記憶媒体への保存」も含まれるのであるから、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。この点は請求項5も同様である。
したがって、従属請求項に限定しても、刊行物1に記載された発明である、あるいは、当業者が刊行物1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。
してみると、上記請求人の主張は採用できない。

第5 まとめ
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号あるいは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-02-07 
結審通知日 2014-02-12 
審決日 2014-03-25 
出願番号 特願2007-54619(P2007-54619)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 森林 克郎
信田 昌男
発明の名称 磁気共鳴診断装置および医用画像表示装置  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 中村 誠  
代理人 峰 隆司  
代理人 福原 淑弘  
代理人 福原 淑弘  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 峰 隆司  
代理人 峰 隆司  
代理人 中村 誠  
代理人 福原 淑弘  

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