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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1287319 |
審判番号 | 不服2013-11260 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-17 |
確定日 | 2014-05-08 |
事件の表示 | 特願2010-114841「防湿剤塗布補助装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 1日出願公開、特開2011-243756〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成22年5月19日の出願であって、平成25年3月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1?6に係る発明は、平成24年9月18日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項1の特許請求の範囲は次のとおりである。 「【請求項1】 回路部品を搭載した電子回路基板へ防湿剤を塗布する際の防湿剤塗布補助装置であって、 前記回路基板を搭載固定する固定台と、 前記固定台に固定された電子回路基板面上に、防湿剤塗布エリアおよび防湿剤塗布禁止エリアを映し出す投影手段と、 を含むことを特徴とする防湿剤塗布補助装置。」 3.本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について (1)本願発明1は、上記2.に記載したとおりである。 (2)引用例 (2-1)引用例1 実願平4-68970号(実開平6-26277号)のCD-ROM(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (あ)「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、実装された部品についての後加工とその確認とが容易にできるようにしたプリント配線板に関する。 【0002】 【従来の技術】 プリント配線板は、絶縁板の板面に薄い箔状の導体を設けるとともに、この板面にシルクスクリーン印刷により施される印刷を設けている。従来において前記印刷は、プリント配線板に実装される部品の取付けに係る情報(部品リストに対応する部品番号、部品形状の向き等)の部品表示、および電圧レベルの表示(例えば5V,GND等)のためと、前記導体の保護のためにだけ設けられていた。導体の保護をなす印刷保護部は、部品のリード脚が挿通される導体のランドに対応する位置に施されて、その膜厚により前記ランドが前記リード脚の挿入に伴って痛められることを防止するものである。 【0003】 ところで、プリント配線板においては、これに部品が実装された後、つまり、所用部品が所定の導体と接続する位置に配置されてから、自動半田により前記部品がプリント配線板に半田付けされた後に、必要な部品に対して手作業による後加工が施されることがある。 【0004】 この後加工としては、背が高い部品の自立状態を安定させるために、この部品のリード脚が通ったランド部分に絶縁性の接着剤を塗布する作業、可変抵抗での抵抗値の調整後に、その調整値を維持するために、この可変抵抗の調整部分に絶縁性の接着剤を塗布する作業、経年使用に伴う埃等の付着に対する電気的な保護および湿気に対する電気的保護のために、電源部をなす部品等必要部品群全体に絶縁性の塗布剤を塗布する作業、およびランドに通された部品を抜けにくくするとともに導体との電気的接続の信頼性を向上させるために、半田付け部に更に半田を盛り付ける作業などが知られている。従来において、これらの後加工は、その必要に応じて配布される作業指導書に基づいて行われている。 【0005】 【考案が解決しようとする課題】 従来のプリント配線板には前記後加工についての表示がないので、この後加工をするに際して、プリント配線板の板面と作業指導書とをいちいち見比べながら作業をしなければならないから、作業性が悪いとともに作業間違いの恐れも高いという問題がある。さらに後加工の終了後の製品検査は、前記後加工の作業者とは別の作業者により行われるため、その際において仮に作業指導書があったとしても後加工箇所が多い場合には、加工忘れがあってもそれを見逃すおそれが高く、また、前記作業指導書がないと、後加工が適正に行われたかどうか判断できず、後加工の検査作業が面倒であるという問題がある。 【0006】 本考案の目的は、後加工の作業間違いを少なくできるとともに、この後加工の作業性およびこの加工後における第三者による検査の作業性を夫々向上できるプリント配線板を得ることにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 前記目的を達成するために、本考案のプリント配線板は、薄い箔状の導体が設けられた絶縁板の板面に、前記導体に接続する部品が前記絶縁板に実装された後に前記部品について施される後加工の内容を指示する後加工用印刷表示を、前記後加工が施される位置から外して設けたものである。 【0008】 また、後加工が絶縁板の板面に塗布剤を塗布することを内容とする実施において、この塗布剤が塗布された実装部品に対する電気的保護の信頼性を長期間にわたって維持できるようにするために、塗布剤の塗布範囲において前記絶縁板に通孔を設け、この通孔に通された前記塗布剤の一部を介して前記絶縁板の表裏両板面に夫々相対応して塗布された塗布剤を一体につなげるとよい。 【0009】 【作用】 請求項1の構成のプリント配線板において、絶縁板の板面に設けられた後加工用印刷表示は、絶縁板の導体に接続される部品について施される後加工の内容を指示する。この後加工用印刷表示は後加工が施される位置から外れているので、後加工により隠されることがない。そのため、後加工の際およびその後の検査の際において、作業者は作業指導書によることなく、絶縁板の板面上を視認するだけで一目で後加工の種類、位置、および範囲などの後加工の内容を知ることができる。」 (い)「【0015】 後加工用印刷表示7は実装された部品について施される後加工の内容を指示する印刷である。詳しくは、図1に示されるように前記部品装着板面上に、「塗布剤塗布範囲」なる文字列による後加工の作業の種類を指示する第1表示部7aと、塗布剤の塗布範囲の大きさを指示する第2表示部7bとで形成されている。…(略)… …(略)… 【0018】 後加工用印刷表示19は、前記後加工用印刷表示7と同様に実装された部品について施される後加工の内容を指示する印刷である。詳しくは、図2に示されるように前記導体パターン板面上に、「塗布剤塗布範囲」なる文字列による後加工の作業の種類を指示する第1表示部19aと、塗布剤の塗布範囲の大きさを指示する第2表示部19bとで形成されている。…(略)…」 (う)「【0032】 【考案の効果】 以上詳記したように本考案の請求項1に係るプリント配線板においては、後加工の際およびその後の検査の際において、作業者は絶縁板の板面上の後加工用印刷表示を視認するだけで、作業指導書によることなく、後加工の種類、位置、および範囲などの後加工内容を容易に知る得るから、後加工の作業間違いを少なくできるとともに、この後加工の作業性およびこの加工後における第三者による検査の作業性を夫々向上できる。」 (え)引用例1(特に【0015】、【0018】)には、プリント配線板1の部品装着板面上に後加工用印刷表示7及び後加工用印刷表示19が設けられているが、その後加工として、【0004】には「経年使用に伴う埃等の付着に対する電気的な保護および湿気に対する電気的保護のために、電源部をなす部品等必要部品群全体に絶縁性の塗布剤を塗布する作業」が例示されている。したがって、引用例1には、湿気に対する電気的保護のために必要部品群全体に絶縁性の塗布剤を塗布すること、及び、プリント配線板面上に、塗布剤塗布範囲を指示する印刷表示が設けられていることが開示されているといえる。 また、上記の印刷表示は、塗布剤を塗布する作業の作業性向上等のために設けられるものであるが、該印刷表示を設けるためには種々の器具・手段等が必要であるから、それらの器具・手段等(ないしそれらに該印刷表示を含めたもの)は、塗布作業補助装置ということができる。 以上の事項及び図面(特に図1?4)からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。 「回路部品を搭載したプリント配線板へ、湿気に対する電気的保護のために必要部品群全体に絶縁性の塗布剤を塗布する際の塗布作業補助装置であって、 前記プリント配線板面上に、塗布剤塗布範囲を指示する印刷表示が設けられている塗布作業補助装置。」 (2-2)引用例2 特開2005-85985号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。 (か)「【技術分野】 【0001】 本発明はプリント配線板実装装置に関し、更に詳しくは、プリント配線板の実装情報表示や配線作業、目視検査等を行なうためのプリント配線板実装装置に関する。 【0002】 プリント基板に部品を実装したり、短絡配線を行ったり、プリント配線板の組立作業は、年々部品の小型化、実装の高密度化により、微細な作業となってきており、誤作業削減と効率化のために部品装着の自動化が推進されている。しかしながら、自動装着ヘッドで装着困難な部分や短絡配線作業等は人手によ作業となる。この場合も、各種の保持機器を用いて、部品の誤装着を防止する必要がある。 【背景技術】 【0003】 プリント配線板の組み立てを部分的に手作業により行なう場合も、その作業をCAM(Computer Aided Manufucturingの略)のデータから読み出して順々に知らせたり、プリント板上に指定位置を投光器からのビームによりスポット状や2点間を結ぶ線分として表示させたりするプリント配線板用位置指示器があり、誤作業防止として用いられている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。 【特許文献1】特開平1-181600号公報(第2頁、第1図) 【特許文献2】特開平2-299296号公報(第4頁、第1図) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、従来の位置指示器はプリント配線板の表のみ、裏のみ、若しくは表裏に対応した表示のみであった。 【0005】 また、プリント配線板を水平方向に任意の角度に回転させた時、自動的に付随して位置表示を行なうことができなかった。 【0006】 また、配線の変更作業やハンダ付け両面での短絡配線及び目視検査工程時では作業を効率化するため、プリント配線板を水平方向に回転させることが多く、これに適した機器がなかった。 【0007】 また、従来の指示器は、表示をビームで行なっていたため、一度に表示できる情報が少ないと共に、取り付け部品を1点1点順次位置表示させるのみであった。 【0008】 また、プリント配線板完成後の目視検査においては、画面全体を一度に見渡す必要があり、これに適した機器がなかった。 【0009】 また、プリント配線板には必ず目視の検査工程が入り、部品との照合を行なうために、紙の図面、及びプリント配線板上にシルク印刷が必要であった。 【0010】 本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、プリント配線板を水平方向に回転させても、何時も同じ指定位置及び適切な量の付随情報を表裏面に対応して表示する投光表示が行なえ、また、プリント配線板の完成時に部品搭載情報を一度に表示し目視検査も行なえるプリント配線板実装装置を提供することを目的としている。」 (き)「【0014】 ハッチングで示す部分1bはプリント配線板1の裏面である(1aは表面)。Aはプロジェクタ2によりプリント配線板1の表面に表示された部品の実装情報である。本発明では、プリント配線板1の全面に同時に部品の実装情報が表示される。81は作業者である。」 (く)「【0020】 図3は本発明の動作の一例を示すフローチャートである。装置としては、図1,図2に示した構成を用いる。先ず、パソコン14はCAMデータからプリント配線板の位置データを読み出す(S1)。次に、パソコン14はセンサ5,6のオン状態を調べる(S2)。若し、表面を示すセンサ5がオンになっている場合、パソコン14は角度検出用のエンコーダ13の出力を受けてプリント配線板1の回転角度を検出する(S3)。 【0021】 回転角度が検出されたら、今度は回転角度に基づく部品実装データの位置データの変換を行なう(S4)。次に、プロジェクタ2を用いてプリント配線板1上に部品実装情報を投影する(S5)。そして、作業者81はこの状態でプロジェクタ2で投影されたプリント配線板1上に部品を取り付けていく。そして、部品の取り付けが終了したら、該当プリント配線板1を外すので、センサ5はオフになる(S6)。 …(略)… 【0026】 このように、発明によれば、プリント配線板上に部品の配置情報がプロジェクタから投影されるので、一度に表示できる情報が多く、作業ミスの低減が図れる。プリント配線板を回転させても、これに自動的に追随して実装作業表示を行なうことができるため、配線の変更作業やハンダ付け両面での短絡作業では作業の効率化が図れる。更に、プリント配線板完成後の目視検査において、画面全体の情報を一度に表示することが可能となり、これまでプリント配線板にあったシルク印刷が不要となり、コストダウンが図れる。」 (け)「【0029】 (c)において、1はプリント配線板、3はプリント配線板1の端部が突き当たって位 置決めされる角ストッパa、5はプリント配線板1が取り付けられているとことを検出するセンサ、7はプリント配線板1の一辺が位置決めされる基準レール、8はプリント配線板1の一辺が位置決めされる可動レールである。10はテーブル、4はプリント配線板1の端部が突き当たって位置決めされる角ストッパb、6はプリント配線板1が取り付けられていることを検出するセンサである。ハッチングで示す部分1bはプリント配線板1の裏面である。Aはプロジェクタ2によりプリント配線板1の表面に表示された部品の実装情報である。本発明では、プリント配線板1の全面に同時に部品の実装情報が表示される。」 (こ)「【0032】 このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。 【0033】 先ず、作業者81が装置のそばに座る(図1の(a)参照)。そして、プリント配線板1の表面を位置決め手段に取り付ける。具体的には、プリント配線板1の端部を各ストッパaに突き当てて基準位置をとる。次に、可動レール8を案内棒71,72に沿って手前側に移動させる。そして、可動レール8がプリント配線板1の一辺に当接した状態で蝶ネジ74,75で締め付ける。これで、テーブル10にプリント配線板1が固定されたことになる。 【0034】 このようにプリント配線板1を取り付けた状態で、該プリント配線板1上にプロジェクタ2から部品実装情報を投影する。プリント配線板1の全面にわたり、部品実装情報が表示されるので、作業者81はどのような部品がどの場所に取り付けられるかを認識することができる。一方、ディスプレイ12上には、前述したプリント配線板1の設置方向や、表裏情報、位置決め手段の回転角等の情報が表示される。このように構成すれば、ディスプレイ12に前述したような種々の情報を表示させることで、作業に必要な情報を作業者81が認識でき、作業の効率化が図れる。 【0035】 図7は本発明の一実施の形態例の動作の一例を示すフローチャートである。先ず、パソコン14はCAMデータからプリント配線板の位置データを読み出す(S1)。次に、パソコン14はセンサ5,6のオン状態を調べる(S2)。若し、表面を示すセンサ5がオンになっている場合、パソコン14は角度検出用のエンコーダ13の出力を受けてプリント配線板1の回転角度を検出する(S3)。 【0036】 回転角度が検出されたら、今度は回転角度に基づく部品実装データの位置データの変換を行なう(S4)。次に、ディスプレイ12を用いてプリント配線板1上に部品実装する際の情報を投影する(S5)。そして、作業者81はこの状態でプロジェクタ2で投影されたプリント配線板1上に部品を取り付けていく。そして、部品の取り付けが終了したら、該当プリント配線板1を外すので、センサ5はオフになる(S6)。」 (3)対比 本願発明1と引用例1発明とを対比すると、 後者の「プリント配線板」は前者の「電子回路基板」に相当し、同様に、「湿気に対する電気的保護のため」の「絶縁性の塗布剤」は「防湿剤」に、「湿気に対する電気的保護のために必要部品群全体に絶縁性の塗布剤を塗布する際の」は「防湿剤を塗布する際の」に、「塗布剤塗布範囲」は「防湿剤塗布エリア」に、「塗布作業補助装置」は「防湿剤塗布補助装置」に、それぞれ相当する。 後者の「前記プリント配線板面上に、塗布剤塗布範囲を指示する印刷表示が設けられている」と前者の「電子回路基板面上に、防湿剤塗布エリアおよび防湿剤塗布禁止エリアを映し出す投影手段」は、「電子回路基板面上に防湿剤塗布エリアを示す」という点で一致する。 したがって、本願発明1の用語に倣って整理すると、両者は、 「回路部品を搭載した電子回路基板へ防湿剤を塗布する際の防湿剤塗布補助装置であって、 電子回路基板面上に防湿剤塗布エリアを示す防湿剤塗布補助装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願発明1は、 「前記回路基板を搭載固定する固定台と、 前記固定台に固定された電子回路基板面上に、防湿剤塗布エリアおよび防湿剤塗布禁止エリアを映し出す投影手段と、 を含む」のに対し、 引用例1発明は、 「前記プリント配線板面上に、塗布剤塗布範囲を指示する印刷表示が設けられている」点。 (4)判断 (4-1)相違点について まず、引用例1発明において、プリント配線板を搭載固定する固定台を設けることは当然のことであって、格別のことではない。少なくとも、適宜の設計事項である。 引用例1発明は、プリント配線板面上に塗布剤塗布範囲を指示する印刷表示が設けられ、これにより、防湿剤の塗布作業の作業性の向上等を図るものであるが、引用例1の特に「【0005】【考案が解決しようとする課題】従来のプリント配線板には前記後加工についての表示がないので、この後加工をするに際して、プリント配線板の板面と作業指導書とをいちいち見比べながら作業をしなければならないから、作業性が悪いとともに作業間違いの恐れも高いという問題がある。」という記載をみると、プリント配線板面上に塗布作業のための情報を示して、作業者が該情報に基づいて作業することができれば足り、そのような情報を示す手段が上記の「印刷表示」に限られるものでないことは当業者に明らかである。 引用例2には、プリント基板への部品実装等の作業の効率化等に関するものではあるが、プロジェクタ2によりプリント配線板1の全面表面に部品の実装情報を投影し、作業者が該情報に基づいて部品取付け等の作業を行い得るようにすることが記載されている。 引用例2の上記事項は、電子回路基板への作業の際に、作業者に対して、基板面上に作業情報を表示し指示するという点で、引用例1発明と通底しているとともに、引用例1には、例えば「【0006】本考案の目的は、後加工の作業間違いを少なくできるとともに、この後加工の作業性…を…向上できる」と記載されている一方、引用例2には、「【0026】このように、発明によれば、プリント配線板上に部品の配置情報がプロジェクタから投影されるので、一度に表示できる情報が多く、作業ミスの低減が図れる。プリント配線板を回転させても、これに自動的に追随して実装作業表示を行なうことができるため、配線の変更作業やハンダ付け両面での短絡作業では作業の効率化が図れる。」と記載されており、引用例1発明と引用例2の上記事項は、作業間違い・作業ミスや作業性の向上・効率化という点で課題及び効果を通有しているといえる。以上からすれば、引用例1発明に引用例2の上記事項を適用して、プリント配線板面上に投影手段により塗布剤塗布範囲を表示・指示するという構成に想到することに格別の創作性・困難性があると認められない。 また、一般に、基板に防湿剤を塗布するにあたって、塗布領域、塗布禁止領域、及び「それ以外の領域」があること、「それ以外の領域」は、塗布液が多少付着しても構わないが,塗布液の消費量の観点からは付着しないことが望ましい領域であるという程度のことは広く知られており、技術常識にすぎない(例えば、特開2009-28658号公報の特に【0028】参照)。そして、上記のように投影手段により塗布剤塗布範囲(塗布領域)を表示・指示する場合、同時に、塗布禁止領域も表示・指示されれば、作業者は、それらの領域間に塗布液が多少付着しても構わない「それ以外の領域」が介在すること、及びその「それ以外の領域」の範囲を明確に了解することができ、塗布禁止領域が表示・指示されない場合と比べて、塗布の作業性等の点で相応の効果を期待し得ることは明々白々であって、投影手段により塗布剤塗布範囲(塗布領域)に加えて塗布禁止領域も表示・指示するように構成することは、適宜なし得る設計的事項にすぎない。 (4-2)効果について 本願発明1の効果は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が予測し得る程度のものである。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.結語 以上のとおり、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願発明1(本願の請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-06 |
結審通知日 | 2014-03-11 |
審決日 | 2014-03-25 |
出願番号 | 特願2010-114841(P2010-114841) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 飯星 潤耶 |
特許庁審判長 |
山岸 利治 |
特許庁審判官 |
森川 元嗣 島田 信一 |
発明の名称 | 防湿剤塗布補助装置 |
代理人 | 家入 健 |