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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1287332
審判番号 不服2013-14042  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-22 
確定日 2014-05-08 
事件の表示 特願2008-302375「キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 6月10日出願公開、特開2010-126190〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成20年11月27日の出願であって、平成24年11月21日付けで拒絶理由が通知され、平成25年4月25日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、同年7月22日に本件審判の請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされ、同年10月21日付けで審尋がなされたところ、同年12月13日に回答書が提出されたものである。

第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1-2は以下のとおり補正された。
(1)補正前
「【請求項1】
有底筒状をなし、内容物を収容する容器の口部に装着されるとともに、底壁部に前記内容物を注出する注出筒が立設されたキャップ本体と、
有頂筒状をなし、前記キャップ本体に着脱自在に装着された計量キャップと、を有するキャップであって、
前記注出筒の注出口は、前記キャップ本体の周壁部における開口端よりもキャップ軸方向の外側に突出し、
前記計量キャップの開口端に、前記注出筒の外周面を当接させ、かつ、前記計量キャップの外周面に、前記キャップ本体の周壁部における開口端を当接させた状態で、前記計量キャップの開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が、前記計量キャップの開口端の半径以下となることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップであって、
前記注出筒にキャップ軸方向に延びるスリットが形成され、
前記注出口において、キャップ軸を径方向で挟む前記スリットの反対側に位置する部分は、キャップ軸方向の外側に向かうに従い径方向外側に向けて張り出した先鋭部となっていることを特徴とするキャップ。」

(2)補正後
「【請求項1】
有底筒状をなし、内容物を収容する容器の口部に装着されるとともに、底壁部に前記内容物を注出する注出筒が立設されたキャップ本体と、
有頂筒状をなし、前記キャップ本体に着脱自在に装着された計量キャップと、を有するキャップであって、
前記注出筒の注出口は、前記キャップ本体の周壁部における開口端よりもキャップ軸方向の外側に突出し、
前記計量キャップには、有頂筒状に形成され、内部に内容物が計量されながら注入される本体筒と、前記本体筒のキャップ軸方向の中間部から径方向外側に向けて突設されたフランジ部と、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された装着筒と、が備えられ、
前記本体筒において、前記フランジ部よりもキャップ軸方向に沿った開口端側の部分は、キャップ軸方向に沿って開口端側へ向かうに連れ漸次拡径し、または漸次縮径し、
前記本体筒の開口端に、前記注出筒の外周面を当接させ、かつ、前記本体筒の外周面に、前記キャップ本体の周壁部における開口端を当接させた状態で、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が、前記計量キャップの開口端の半径以下となることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップであって、
前記注出筒にキャップ軸方向に延びるスリットが形成され、
前記注出口において、キャップ軸を径方向で挟む前記スリットの反対側に位置する部分は、キャップ軸方向の外側に向かうに従い径方向外側に向けて張り出した先鋭部となっていることを特徴とするキャップ。」

2.補正の適否
本件補正は、請求項1において、計量キャップについて「前記計量キャップには、有頂筒状に形成され、内部に内容物が計量されながら注入される本体筒と、前記本体筒のキャップ軸方向の中間部から径方向外側に向けて突設されたフランジ部と、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された装着筒と、が備えられ」及び「前記本体筒において、前記フランジ部よりもキャップ軸方向に沿った開口端側の部分は、キャップ軸方向に沿って開口端側へ向かうに連れ漸次拡径し、または漸次縮径し」という発明特定事項を付加し、注出筒の外周面を当接させ、注出筒の突出量の起点となる「計量キャップの開口端」を「本体筒の開口端」に限定し、キャップ本体の周壁部における開口端を当接させる「計量キャップの外周面」を「本体筒の外周面」に限定するものであって、補正前の請求項1-2に記載された発明と補正後の請求項1-2に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正の特許請求の範囲の請求項1-2についての補正は特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か(いわゆる独立特許要件)について検討する。

(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された明細書、特許請求の範囲、及び、図面の記載からみて、上記1.(2)の請求項1のとおりのものと認める。

(2)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由で引用された特開2007-168854号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【0008】
以下、本発明を適用したキャップ付き容器について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
先ず、図1及び図2に示す本発明を適用したキャップ付き容器1について説明する。
このキャップ付き容器1は、例えば液体として液体洗浄剤が収容された容器本体2と、この容器本体2に装着されたノズルキャップ(内側キャップ)3と、このノズルキャップ3に着脱自在に被せられた計量キャップ(外側キャップ)4とを備えている。」
「【0011】
ノズルキャップ3は、容器本体2の口元部2bを塞ぐように全体が略円筒状に形成された例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのプラスチック部材からなる。このノズルキャップ3の内周面には、容器本体2側のねじ山2cに螺合されるねじ山3aが形成されている。これにより、ノズルキャップ3は、容器本体2の口元部2bに装着されている。また、このノズルキャップ3の外周面には、後述する計量キャップ4を螺合により着脱自在とするためのネジ山3bが形成されている。
【0012】
このノズルキャップ3には、注ぎ口(第1の注出口)5aを形成する注出ノズル(第1のノズル)5と、この注出ノズル5の基端側に位置する液溜め部6と、この液溜め部6に溜まった液体洗浄剤を容器本体2内に戻す戻り口(開口部)7とが設けられている。このうち、注出ノズル5は、ノズルキャップ3の内側に位置し、且つ、このノズルキャップ3の内側を上下に隔てる隔壁8からノズルキャップ3の外側まで起立した状態で設けられている。また、この注出ノズル5は、注ぎ口5aを部分的に切り抜くスリット5bが形成されることによって樋状を呈しており、その先端部がスリット5bとは反対側に湾曲している。液溜め部6は、計量キャップ4を被せたときに、この計量キャップ4の内側に付着した液体洗浄剤を回収するため、隔壁8によって形成された底部がスリット5b側に向かって傾斜しており、戻り口7は、この隔壁8の下端部にスリット5bと連続した開口部を形成している。
【0013】
計量キャップ4は、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのプラスチック部材からなる。この計量キャップ4は、略円形状の底部4aと、この底部4aの周囲から立ち上がり形成された略円筒状の内筒部4bと、この内筒部4bの外側面の中途部から全周に亘って形成されたフランジ部4cを介して立ち上がり形成された外筒部4dとを有している。そして、この計量キャップ4の底部4aと内筒部4bとから液体洗浄剤を計り取る計量部9が構成されている。一方、外筒部4dの内周面には、上述したノズルキャップ3のねじ山3bとの螺合されるねじ山4eが形成されている。これにより、計量キャップ4は、ノズルキャップ3に対して着脱自在に被せることが可能となっている。」
「【0020】
一方、このキャップ付き容器1では、例えば図4に示すように、塗布ノズル11が収納凹部13に収納された状態にある計量キャップ4を注出キャップ3から取り外し、容器本体1をスクイズ操作して、注出ノズル5の注ぎ口5aから注出された液体洗浄剤を計量キャップ4の計量部9で計り取った後に、洗濯機に投入するといった操作を行うことができる。」
また、【図1】?【図4】から、有底筒状のノズルキャップ3と、有頂筒状の計量キャップ4とから、キャップが構成されており、計量キャップ4の外筒部4dはフランジ部4cの外周縁部から下方に向けて延設されており、内筒部4bの開口端に注出ノズル5の外周面を当接させた状態で、前記注出ノズル5が前記内筒部4bの開口端から径方向内方に向けて突出しており、前記内筒部4bの開口端からの径方向内方に向けた前記注出ノズル5の突出量が、前記計量キャップ4の開口端の直径以下となることが、了知できる。
したがって、上記記載事項、及び、【図1】?【図4】によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「有底筒状をなし、容器本体2の口元部2bに装着され、注出ノズル5が隔壁8から起立した状態で設けられているノズルキャップ3と、
有頂筒状をなし、ノズルキャップ3に対して着脱自在に被せることが可能となっている計量キャップ4と、を有するキャップであって、
注出ノズル5は、ノズルキャップ3の内側に位置し、且つ、ノズルキャップ3の外側まで起立した状態で設けられており、
計量キャップ4は、液体洗浄剤を計り取ることができる計量部9を構成する略円形状の底部4a及び内筒部4bと、この内筒部4bの外側面の中途部から全周に亘って形成されたフランジ部4cと、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された外筒部4dとを有しており、
内筒部4bの開口端に注出ノズル5の外周面を当接させた状態で、前記注出ノズル5が前記内筒部4bの開口端から径方向内方に向けて突出しており、前記内筒部4bの開口端からの径方向内方に向けた前記注出ノズル5の突出量が、前記計量キャップ4の開口端の直径以下となるキャップ。」

(3)対比
補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「容器本体2」は補正発明の「容器」に、刊行物1に記載された発明の「隔壁8」は補正発明の「底壁部」に、刊行物1に記載された発明の「注出ノズル5」は補正発明の「注出筒」に、刊行物1に記載された発明の「ノズルキャップ3」は補正発明の「キャップ本体」に、刊行物1に記載された発明の「計量キャップ4」は補正発明の「計量キャップ」に、それぞれ相当するから、刊行物1に記載された発明の「有底筒状をなし、容器本体2の口元部2bに装着され、注出ノズル5が隔壁8から起立した状態で設けられているノズルキャップ3と、有頂筒状をなし、ノズルキャップ3に対して着脱自在に被せることが可能となっている計量キャップ4と、を有するキャップ」は補正発明の「有底筒状をなし、内容物を収容する容器の口部に装着されるとともに、底壁部に前記内容物を注出する注出筒が立設されたキャップ本体と、有頂筒状をなし、前記キャップ本体に着脱自在に装着された計量キャップと、を有するキャップ」に相当し、刊行物1に記載された発明の「注出ノズル5は、ノズルキャップ3の内側に位置し、且つ、ノズルキャップ3の外側まで起立した状態で設けられており」は、補正発明の「前記注出筒の注出口は、前記キャップ本体の周壁部における開口端よりもキャップ軸方向の外側に突出し」という要件を満足する。
また、刊行物1に記載された発明の「略円形状の底部4a及び内筒部4b」は、液体洗浄剤を計り取ることができる計量部を構成するから、補正発明の「本体筒」に相当し、刊行物1に記載された発明の「フランジ部4c」は補正発明の「フランジ部」に、刊行物1に記載された発明の「外筒部4d」は補正発明の「装着筒」に、それぞれ相当するから、刊行物1に記載された発明の「計量キャップ4は、液体洗浄剤を計り取ることができる計量部を構成する略円形状の底部4a及び内筒部4bと、この内筒部4bの外側面の中途部から全周に亘って形成されたフランジ部4cと、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された外筒部4dとを有しており」は、補正発明の「前記計量キャップには、有頂筒状に形成され、内部に内容物が計量されながら注入される本体筒と、前記本体筒のキャップ軸方向の中間部から径方向外側に向けて突設されたフランジ部と、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された装着筒と、が備えられた」という要件を満足する。
さらに、刊行物1に記載された発明の「内筒部4bの開口端に注出ノズル5の外周面を当接させた状態で、前記注出ノズル5が前記内筒部4bの開口端から径方向内方に向けて突出しており、前記内筒部4bの開口端からの径方向内方に向けた前記注出ノズル5の突出量が、前記計量キャップ4の開口端の直径以下となる」は、補正発明の「前記本体筒の開口端に、前記注出筒の外周面を当接させ、かつ、前記本体筒の外周面に、前記キャップ本体の周壁部における開口端を当接させた状態で、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が、前記計量キャップの開口端の半径以下となる」と、本体筒の開口端に注出筒の外周面を当接させた状態で、前記注出筒が前記本体筒の開口端から径方向内方に向けて突出しており、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が前記計量キャップの開口端の直径以下となる限りにおいて、一致する。
そうすると、補正発明と刊行物1に記載された発明とは、
「有底筒状をなし、内容物を収容する容器の口部に装着されるとともに、底壁部に前記内容物を注出する注出筒が立設されたキャップ本体と、
有頂筒状をなし、前記キャップ本体に着脱自在に装着された計量キャップと、を有するキャップであって、
前記注出筒の注出口は、前記キャップ本体の周壁部における開口端よりもキャップ軸方向の外側に突出し、
前記計量キャップには、有頂筒状に形成され、内部に内容物が計量されながら注入される本体筒と、前記本体筒のキャップ軸方向の中間部から径方向外側に向けて突設されたフランジ部と、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された装着筒と、が備えられ、前記本体筒の開口端に前記注出筒の外周面を当接させた状態で、前記注出筒が前記本体筒の開口端から径方向内方に向けて突出しており、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が前記計量キャップの開口端の直径以下となるキャップ。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
補正発明では、「本体筒において、前記フランジ部よりもキャップ軸方向に沿った開口端側の部分は、キャップ軸方向に沿って開口端側へ向かうに連れ漸次拡径し、または漸次縮径している」のに対して、刊行物1に記載された発明では、その旨の特定がない点。
[相違点2]
補正発明では、「本体筒の開口端に、前記注出筒の外周面を当接させ、かつ、前記本体筒の外周面に、前記キャップ本体の周壁部における開口端を当接させた状態で、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が、前記計量キャップの開口端の半径以下となる」のに対して、刊行物1に記載された発明では、本体筒の開口端に注出筒の外周面を当接させた状態で、前記注出筒が前記本体筒の開口端から径方向内方に向けて突出しており、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が前記計量キャップの開口端の直径以下となる点。

(4)相違点の検討
[相違点1について]
計量キャップの本体筒に関して、開口端側へ向かうに連れ漸次拡径し、または漸次縮径する構成は、例えば実願昭54-45420号(実開昭55-145464号)のマイクロフィルム(特に、第2ページ第8-16行、第3-4図)、特開2007-91304号公報(特に段落【0024】、第3図)に示されるように周知であり、刊行物1に記載された発明において、注ぎ入れやすさ、溢れにくさ等を考慮して、上記周知の構造を選択することは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。
本願の明細書及び図面の記載を参酌しても、刊行物1に記載された発明に上記周知の構造を採択したことによって、特段の作用効果を生ずるものとは認められない。
[相違点2について]
刊行物1に記載された発明においては、注出筒の機能として、液体を容器から計量カップに注ぎ入れることが求められる。このとき、注出筒の突出量が大きすぎたり小さすぎたりしては、注ぎ入れる際の使いやすさを阻害することが明らかであり、容器から液体がある程度の勢いをもって流出してくるから、特に大きすぎた場合には、液体が計量キャップの容器反対側へこぼれる危険性が高まることが予想される。
一方、注ぎ入れ時に軽量キャップと注出筒の位置関係が変化すると、液体が軽量キャップの範囲を外れてこぼれやすいことが明らかであるから、本体筒の外周面にキャップ本体の周壁部開口端を当接させて位置決めすることは、例えば実願昭62-136534号(実開昭64-42257号)のマイクロフィルムに示されるように、使用者が通常採用する形態に過ぎない。
してみると、注出筒の突出量を決定する際に、上記のように位置決めし、液体が注出筒から流れ出る勢いを考慮して、注出筒の先端を、計量キャップ開口端の中心かやや手前とすることは、当業者が容易になし得た設計的事項といわざるを得ず、本願明細書及び図面の記載を参酌しても、上記相違点2に係る範囲に突出量を限定したことによって格別顕著な効果を生じるものとは認められない。
相違点1および2について総合判断しても、補正発明は、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
よって、補正発明は、刊行物1に記載の発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)審判請求人の主張について
請求人は、審尋回答書において、補正案を提示し
「(請求項1)
有底筒状をなし、内容物を収容する容器の口部に装着されるとともに、底壁部に前記内容物を注出する注出筒が立設されたキャップ本体と、
有頂筒状をなし、前記キャップ本体に着脱自在に装着された計量キャップと、を有するキャップであって、
前記注出筒の注出口は、前記キャップ本体の周壁部における開口端よりもキャップ軸方向の外側に突出し、
前記計量キャップには、有頂筒状に形成され、内部に内容物が計量されながら注入される本体筒と、前記本体筒のキャップ軸方向の中間部から径方向外側に向けて突設されたフランジ部と、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された装着筒と、が備えられ、
前記本体筒において、前記フランジ部よりもキャップ軸方向に沿った開口端側の部分は、キャップ軸方向に沿って開口端側へ向かうに連れ漸次拡径し、または漸次縮径し、
前記計量キャップの中心軸と前記キャップ本体のキャップ軸とを略直角に交差させるように配置するとともに、前記本体筒の開口端に、前記注出筒の外周面を当接させ、かつ、前記本体筒のうち、漸次拡径し、または漸次縮径する部分の外周面に、前記キャップ本体の周壁部における開口端を当接させた状態で、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が、前記計量キャップの開口端の半径以下となることを特徴とするキャップ。
・・・・引用文献1?3において当接状態に関する記載を確認しますと、例えば、引用文献1の第2図には、容器体1を傾けて、樋状ノズル8からキャップ9内に内容物を注入する状態が示されています。しかしながら、この文献には、樋状ノズル8からキャップ9内に内容物を注入するときに、注ぎ口3の中心軸とキャップ9の中心軸とを、意図的に特定の角度で交差させた状態にすることについて記載されておらず、この文献記載の発明に、前述の<イ>のような、計量キャップの中心軸とキャップ本体のキャップ軸とを略直角に交差させるように配置することに関する記載や示唆はないものと思料致します。そして引用文献2、3にも、計量キャップの中心軸とキャップ本体のキャップ軸とを略直角に交差させるように配置することは記載されておらず、引用文献1?3記載の各発明には、前述の<イ>に係る事項の記載や示唆がないものと思料致します。 」(第2頁8行?第7頁第5行)
等と述べている。
請求人が提示する補正案に法律上の根拠はないが一応検討する。
[相違点1][相違点2]とその判断については、上記第2.2.(4)のとおりである。
また、注ぎ口3の中心軸とキャップ9の中心軸とを交差させる角度についても、補正案の請求項1には、
「前記計量キャップの中心軸と前記キャップ本体のキャップ軸とを略直角に交差させるように配置するとともに、・・・・当接させた状態で、前記本体筒の開口端からの径方向内方に向けた前記注出筒の突出量が、前記計量キャップの開口端の半径以下となる」
と記載されるのみであり、キャップ軸と計量キャップの中心軸とを略直角に交差させて突出量を定義しても、使用形態において、使用者がキャップ軸と計量キャップの中心軸を略直角に交差させるとは限らない。
したがって、補正案の請求項1の記載のものでは、内容物を注入するときに、注ぎ口3の中心軸とキャップ9の中心軸とを意図的に特定の角度で交差させた状態にするという前提のもと、相違点の存在を主張する請求人の主張は、補正案の請求項1の記載に基づかない主張である。
よって、請求人が希望する補正を行ったとしても、本件補正発明が独立して特許を受けることができる発明になる訳ではない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1?2に係る発明は、補正前の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)の請求項1に示すとおりである。

2.刊行物等
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された刊行物及びその記載内容は上記第2.2.(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本願発明は、上記第2.2.で検討した補正発明において、「前記計量キャップには、有頂筒状に形成され、内部に内容物が計量されながら注入される本体筒と、前記本体筒のキャップ軸方向の中間部から径方向外側に向けて突設されたフランジ部と、前記フランジ部の外周縁部から下方に向けて延設された装着筒と、が備えられ」、及び、「前記本体筒において、前記フランジ部よりもキャップ軸方向に沿った開口端側の部分は、キャップ軸方向に沿って開口端側へ向かうに連れ漸次拡径し、または漸次縮径し」という要件を省き、「本体筒の開口端」との要件を「計量キャップの開口端」に拡張し、「本体筒の外周面」との要件を「計量キャップの外周面」に拡張したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を実質的に全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が、上記第2.2.(4)で示したとおり、刊行物1に記載の発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-03-06 
結審通知日 2014-03-11 
審決日 2014-03-26 
出願番号 特願2008-302375(P2008-302375)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 渡邊 真
熊倉 強
発明の名称 キャップ  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 志賀 正武  
代理人 仁内 宏紀  
代理人 鈴木 三義  

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