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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G10D
管理番号 1287370
審判番号 不服2012-24357  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-07 
確定日 2014-05-07 
事件の表示 特願2010- 28027「楽器用の改良弦」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 5月 6日出願公開、特開2010-102359〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、1996年9月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年11月22日、1996年4月2日、米国)に国際出願した特願平9-519691号の一部を平成18年8月21日に新たな特許出願とした特願2006-224652号の一部を平成22年2月10日に更にまた新たな特許出願としたものであって、原審において同年3月5日付けで手続補正され、平成23年10月11日付けで拒絶理由が通知され、平成24年4月18日付けで手続補正されたが、同年8月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月7日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、平成25年4月15日付けで当審より審尋がなされ、同年10月16日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年12月7日付けで手続補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「巻線を含みそして長手方向の軸線を有する巻き弦と、この巻き弦の周囲のカバーとを含む弦楽器用の弦であって、当該カバーが少なくとも一つのポリマー層を含み、このポリマーが当該弦の長手方向の軸線に沿って変形可能である、弦楽器用の弦。」

第3 引用発明
原審の拒絶理由に引用された実願昭53-8444号(実開昭54-112121号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

イ.「2.実用新案登録請求の範囲
芯線のまわりに金属線をコイル状に捲いたギター弦上に表面の滑らかなプラスチック層を密着被覆してなることを特徴とするノイズレスギター弦」(1頁4?7行)

ロ.「本考案はノイズレスギター弦に関する。」(1頁9行)

ハ.「従って本考案の目的は演奏のさい左手の指頭が接触しながら移動しても摩擦ノイズの発生することのないノイズレスギター弦を提供することである。」(2頁10?13行)

ニ.「以下本考案のノイズレスギター弦の一実施例を図面を参照して説明すると、図中、1は芯線であり、芯線1のまわりには金属線2がコイル状に巻かれている。芯線1はポリアミド(ナイロン)繊維の束からなり、金属線2は銅を主体とした材料よりなるのが好ましい。芯線1と金属線2の構成は従来の低音ギター弦と同様の構成である。芯線1と金属線2からなるギター弦上には表面の滑らかなプラスチック層3が密着被覆されている。プラスチック層3は芯線1と同様ポリアミド(ナイロン)で構成することが好ましいが、その他の材料、例えば、繊維素プラスチック、ポリ塩化ビニール、ポリエステル等も使用することができる。
従って本考案のノイズレスギター弦によれば、コイル状金属線が表面の滑らかなプラスチック層で被覆されているので左手の指頭が接触移動しても摩擦ノイズが発生することはなく、特殊な演奏技法を駆使することなくきわめて美しいギター音の流れを得ることができる。」(2頁14行?3頁12行)

上記引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ニ.における「本考案のノイズレスギター弦の一実施例を図面を参照して説明すると、図中、1は芯線であり、芯線1のまわりには金属線2がコイル状に巻かれている。」との記載、図1及び図2によれば、ノイズレスギター弦は、芯線(1)のまわりに金属線(2)がコイル状に巻かれている。
また、上記ニ.における「芯線1と金属線2からなるギター弦上には表面の滑らかなプラスチック層3が密着被覆されている。」との記載、図1及び図2によれば、ノイズレスギター弦は、芯線(1)と金属線(2)からなるギター弦上に表面の滑らかなプラスチック層(3)が密着被覆されている。
また、上記ニ.における「プラスチック層3は芯線1と同様ポリアミド(ナイロン)で構成することが好ましい」との記載によれば、前述のプラスチック層(3)は、ポリアミド層からなることが読み取れる。

したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「芯線(1)のまわりに金属線(2)をコイル状に巻いたギター弦上に表面の滑らかなプラスチック層を密着被覆してなるノイズレスギター弦であって、プラスチック層(3)がポリアミド層からなる、ノイズレスギター弦。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「芯線(1)のまわりに金属線(2)をコイル状に巻いたギター弦」は、引用発明の「金属線(2)」は、「コイル状に巻いて」いるから、「巻線」といえ、また、引用発明の「芯線(1)」の中心軸は、「長手方向の軸線」といえるから、「巻線を含みそして長手方向の軸線を有する巻き弦」ということができる。
b.引用発明の「ギター弦上に表面の滑らかなプラスチック層を密着被覆してなる」は、引用発明の「表面の滑らかなプラスチック層」は、「ギター弦上に」「密着被覆して」いるから、「周囲のカバー」といえ、また、上記a.の対比を考慮すれば、「ギター弦」は、「巻き弦」であるから、「この巻き弦の周囲のカバーとを含む」ということができる。
c.引用発明の「ポリアミド層」は、「ポリマー層」に含まれる。
d.引用発明の「ノイズレスギター弦」は、「弦楽器用の弦」の一種である。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「巻線を含みそして長手方向の軸線を有する巻き弦と、この巻き弦の周囲のカバーとを含む弦楽器用の弦であって、当該カバーが少なくとも一つのポリマー層を含む、弦楽器用の弦。」

<相違点>
「ポリマー」に関し、
本願発明は、「このポリマーが当該弦の長手方向の軸線に沿って変形可能である」のに対し、引用発明は、「このポリマーが当該弦の長手方向の軸線に沿って変形可能である」か不明な点。

第5 判断
(1)第29条第2項についての検討
上記相違点について検討する。
弦楽器用の弦は、周期的に振動し楽音を発生するためのものである以上、ある程度変形できなければならないことは技術常識である。
そして、上記引用例の上記ニ.における「プラスチック層3は芯線1と同様ポリアミド(ナイロン)で構成することが好ましいが、その他の材料、例えば、繊維素プラスチック、ポリ塩化ビニール、ポリエステル等も使用することができる。」との記載によれば、引用発明の「プラスチック層(3)」は、ポリアミド以外にも、ポリエステル等も使用することができるものである。一方、本願明細書の段落【0029】には、カバーとして使用するのに好適な材料として、「ポリアミド」、「ポリエステル」も記載されている。
そうすると、引用発明は、「ポリアミド」であるところ、弦楽器用の弦として用いる以上、「プラスチック」として、ある程度変形可能なものを採用することは明らかである。その際、弦の振動といえども弦の長手方向の軸線に沿った変形も伴うのは当然であるから、本願発明のように「このポリマーが当該弦の長手方向の軸線に沿って変形可能である」ことは格別のことではない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

(2)第29条第1項第3号についての検討
上記相違点について検討する。
弦楽器用の弦は、周期的に振動し楽音を発生するためのものである以上、ある程度変形できなければならないことは技術常識である。
そうすると、引用発明は、「ポリアミド」であるところ、ある程度変形可能であることは明らかである。その際、弦の振動といえども弦の長手方向の軸線に沿った変形も伴うのは当然であるから、上記相違点は実質的なものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたもの又は引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第2項又は第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-02 
結審通知日 2013-12-03 
審決日 2013-12-16 
出願番号 特願2010-28027(P2010-28027)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G10D)
P 1 8・ 121- Z (G10D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 間宮 嘉誉小宮 慎司  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 酒井 伸芳
萩原 義則
発明の名称 楽器用の改良弦  
代理人 青木 篤  
代理人 石田 敬  
代理人 胡田 尚則  
代理人 出野 知  
代理人 古賀 哲次  
代理人 三間 俊介  

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