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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1287372
審判番号 不服2012-25203  
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-19 
確定日 2014-05-07 
事件の表示 特願2008-520242「可変時間レポートデルタおよび構成可能グルコース目標範囲を使用する適応性の高いグルコース分析」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 1月11日国際公開、WO2007/005170、平成21年 1月 8日国内公表、特表2009-500744〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年6月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年6月29日、米国)を国際出願日とする出願あって、平成23年12月2日付けで拒絶理由通知が通知され、平成24年4月5日付けで意見書、補正書が提出されたが、平成24年8月31日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成24年12月19日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願請求項25に係る発明は、平成24年4月5日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項25に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「【請求項25】
食事事象の前後のグルコース挙動をコンピューティングデバイスによって分析するための方法であって、
前記コンピューティングデバイスにおいて、一定期間に複数のグルコース読み取り値を受け取るステップと、
前記コンピューティングデバイスにおいて、第1の時間範囲を第1の食事事象に対する食前分析期間として受け取るステップと、
前記コンピューティングデバイスにおいて、第2の時間範囲を前記第1の食事事象に対する食後分析期間として受け取るステップと、
前記コンピューティングデバイスにおいて、前記食前分析期間、前記食後分析期間、および前記食前分析期間と前記食後分析期間に対応する前記複数のグルコース読み取り値をハイライト表示する表示出力を生成するステップとを含む方法。」

3.引用例発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である2003年12月17日に頒布された「欧州特許出願公開第1372102号明細書」(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「

」(下線は、当審による。)
(日本語訳)
(1)「[0026]図1を参照すると、対話式の患者データレポート生成を提供する、本発明に従った患者データ管理システム10の一実施形態が示されている。このシステム10は、1或いは複数の患者コンピュータ12a?患者コンピュータ12nを含む。(中略)
[0027]患者コンピュータ12a?患者コンピュータ12nは、そのメモリにインストールされたUNIX(登録商標)、WINDOWS(登録商標)98、WINDOWS(登録商標)ME、WINDOWS(登録商標)2000等のオペレーティングシステム(図示せず)を含み得る。患者コンピュータ12a?患者コンピュータ12nは更に、そのメモリにインストールされたNETSCAPE NAVIGATOR(登録商標)、INTERNET EXPLORER(登録商標)、AOL(登録商標)、または同様の患者コンピュータ用のブラウザソフトウエア等のウェブ閲覧プログラム(図示せず)を含み得る。(中略)
[0028]システム10はまた、1或いは複数の患者データサーバ即ちファイルサーバ16を含む。ファイルサーバ16として、ミニコンピュータ、マイクロコンピュータ、UNIX(登録商標)マシン、メインフレームマシンや、INTEL(登録商標)系プロセシングコンピュータ或いはそのクローン、APPLE(登録商標)コンピュータ或いはそのクローン、またはSUN(登録商標)ワークステーション等のパーソナルコンピュータ(PC)、または他の好適なコンピュータ等、標準的なデータ処理装置即ちコンピュータが挙げられる。(中略)
[0030]患者コンピュータ12a?患者コンピュータ12nは、患者データサーバ16と通信するために患者データサーバ16と機能的に接続されている。このような通信には、インターネット、イントラネット、LAN、WAN(図示せず)、或いはDSL(デジタル加入者回線)を用いる他のコンピュータネットワークや、インターネットサービスプロバイダ(ISP)を介した電話回線及びモデムを用いた電話接続、無線接続、サテライト接続、赤外線接続、またはインターネットへの接続を確立するための他の手段を用いることができる。(中略)
[0031]システム10は、患者コンピュータ12a?患者コンピュータ12nに関連して用いる1或いは複数の試料読取り装置20を含み得る。試料読取り装置20は、測定して患者データを記録することができ、例えば血液、尿、及び痰等の体液の形態である患者の試料を受取るインターフェイス(図示せず)、並びに試料読取り装置20がその試料に関連した患者データを記録しストアできるようにするハードウエア及び/またはソフトウエア(図示せず)を含み得る。(中略)
[0032]システム10はまた、図示されているように測定及び患者データの記録ができるネットワークで利用可能となる試料読取り装置即ち測定器24を含む。この試料読取り装置24は、患者試料を受取るインターフェイス(図示せず)、試料読取り装置20を用いて上記した方法と同様の方法で試料に関連した患者データを記録しストアするべく試料読取り装置24を利用可能にするハードウエア及び/またはソフトウエア(図示せず)を含む。(中略)」
(2)「

」(下線は、当審による。)
(日本語訳)
「[0064]最も単純な形態のログブックは、患者が主なでき事を簡単に記録できるようにしたレコードブックである(血中グルコースの測定値、投薬、運動等)。患者データは表形式で表示されるか、或いは1日単位にして食事や主なでき事によってグループ分けされる。糖尿病ログブックに従った典型的なデータ表示形式或いはレポート形式が表1に示されている(頭字語「BGM」は、「血中グルコース測定値(Blood Glucose Measurement)」を表す)。
表1
(表は省略)
表1は、糖尿病ログブック形式がコンピュータディスプレイ上のビジュアルインターフェイスにより利用者に表示される1つの方法を表し、食事の前後(朝食、昼食、及び夕食)、就寝時、及びその他の時間に測定された血中グルコースレベルに従ってデータ入力される欄即ちフィールドを提供する一連の行及び列を含む。患者のコメント欄もある。フィールドにはデータを記入されていない。これにより表1が、上記した事象120で選択されたデータ表示形式がどのようなものであるかを利用者に示している。表1のデータ表示形式は、月曜日及び火曜日しか含まれていないが、多くの実施形態では1週間或いはそれより長い期間を含むように伸長しても良い。
[0065]表1のデータ表示形式に関連した糖尿病患者を監視するための或る典型的な選択可能なデータフィーチャには、例えば、特定の日付、その日付における特定のデータ入力、データの行、データの列、及びデータのブロックが含まれる。利用者が、例えば食後の血中グルコース検査に関連したデータを選択するには、表示上のこれらのデータポイントをハイライトする、或いは夕食後の血液検査用の夕食後ヘッディングを選択する、或いはマウスやキーボードでカーソルを適切に操作して行うことができる。(中略)
[0067]表2は、データ表示即ちレポーティングの特定の例、並びに4つの異なったシナリオについての関連した記載を示す。これらのシナリオは、図2の事象に関連した本発明を用いた患者の糖尿病状態の監視及び血中グルコースレベルについての患者データレポートの生成時に起こる。後述する図3A?図5Bは、表2に示されている事象に関連し得る例示的なビジュアルインターフェイスを示し、これらが表2に引用されている。
表2

表2のシナリオ2に記載されているようなターゲット範囲のパイチャート並びに対応するパイチャートを生成するための例示的な表の入力が図3A及び図3Bに示されている。図3Aはビジュアルインターフェイス表示の例であって、本発明のプログラミングによりシナリオ2のために生成され、上記した表1のデータ表示形式特性を含み、行202と列204により複数のセル206が画定されており、それぞれのセル206が選択可能なデータフィーチャである。図3Aには、利用者が、この場合は夕食前及び夕食後の列である目的のヘッダー210(後にハイライトされる)を選択して夕食前及び夕食後の列200を選択する方法が例示されている。この選択は、コンピュータのマウス或いは他のユーザーインターフェイスを用いて従来の「クリックとドラッグ」の操作で行うことができる。
[0068]夕食前及び夕食後の列200を選択すると、図3Bに示されているように、ポップアップウィンドウ220が生成されて表形式のログブックデータ表示上に表示され、そのポップアップディスプレイウィンドウ220内には生成・展開された夕食前パイチャート230及び夕食後パイチャート240が表示される。パイチャート230及びパイチャート240は、患者のターゲット範囲に一致したチャートであり、患者の血中グルコースのターゲットの範囲内及び範囲外のパーセンテージを示す。図3A及び図3Bのビジュアルインターフェイス表示に関連して、一貫した直観的な色付けを行うことができる。例えば、血中グルコース測定値の「ターゲットの範囲外」のレベルには赤色を用い、「ターゲットの範囲内」のレベルには緑色を用いることができる。パイチャートを表示するウィンドウ220は、該当するアイコン(図示せず)をクリックして従来の方式で閉じる或いは最小化することができる。パイチャート230及びパイチャート240の特定の領域を選択して、別のポップアップウィンドウにその領域の詳細なデータを表示することができる。」
(3)「

」(下線は、当審による。)
(日本語訳)
「[0089]図7に示されている実施形態では、患者の血中グルコースレベルに関連した検出可能なデータ評価パラメータも設けられている。フィールド434により、利用者が「グルコース平均値」を数値で入力することができ、フィールド436により、利用者が「ターゲット範囲内のパーセント」を数値で入力することができる。フィールド438により、利用者はターゲットのタイプを入力することができ、フィールド440により、利用者が血中グルコースレベルの「食事前ターゲット」等の特定のターゲットに対する数値範囲を選択することができる。利用者は、希望通りにこれらのパラメータを選択して変更し、選択された閾値或いは範囲に従って「ターゲットよりも高い」、「ターゲットよりも低い」または「低血糖」として選択的に患者データを表示することができる。ターゲット値或いは範囲の外の血中グルコース測定値は、直観的方式で色付けしてハイライトすることができる。」
さらに、図3Aの「Pre」「Post」及び「5-9」「9-11」等の記載から明らかなように、食前食後については、グルコースを測定する所定期間、すなわち、朝食前であれば、5時から9時、朝食後であれば9時から11時というように設定されている。

これらの記載事項によると、引用例には、
「患者の糖尿病状態の監視及び血中グルコースレベルについての患者データレポートを生成するための方法であって、
食事の前後に測定されたグルコースの測定値が入力され、
食事の前後の所定の期間で、
食前食後の所定期間のグルコースの測定値がターゲット範囲内か範囲外かをハイライト表示する方法」の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。

4.対比
引用例発明は、「患者データレポートを生成する方法」は、摘記事項(1)からも明らかなように、コンピューティングデバイスによる方法であり、食事の前後のグルコースの測定値がターゲット範囲内か範囲外かを分析しているから、本願発明の「食事事象の前後のグルコース挙動をコンピューティングデバイスによって分析するための方法」に相当する。
引用例発明の「食事の前後に測定されたグルコースの測定値が入力され」は、測定器24からグルコースの測定値を受け取ることであるから、本願発明の「コンピューティングデバイスにおいて、一定期間に複数のグルコース読み取り値を受け取るステップ」に相当する。
引用例発明の「食事の前後の所定の期間」は、食前食後のグルコースレベルの分析のための期間であるから、本願発明の「第1の時間範囲を第1の食事事象に対する食前分析期間」「第2の時間範囲を前記第1の食事事象に対する食後分析期間」に相当する。
引用例発明の「食前食後の所定期間のグルコースの測定値がターゲット範囲内か範囲外かをハイライト表示すること」は、測定値のハイライト表示であるから、本願発明の「コンピューティングデバイスにおいて、前記食前分析期間、前記食後分析期間、および前記食前分析期間と前記食後分析期間に対応する前記複数のグルコース読み取り値をハイライト表示する表示出力を生成するステップ」に相当する。
してみると、両発明の一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「食事事象の前後のグルコース挙動をコンピューティングデバイスによって分析するための方法であって、
前記コンピューティングデバイスにおいて、一定期間に複数のグルコース読み取り値を受け取るステップと、
第1の時間範囲を第1の食事事象に対する食前分析期間とするステップと、
第2の時間範囲を前記第1の食事事象に対する食後分析期間とするステップと、
前記コンピューティングデバイスにおいて、前記食前分析期間、前記食後分析期間、および前記食前分析期間と前記食後分析期間に対応する前記複数のグルコース読み取り値をハイライト表示する表示出力を生成するステップとを含む方法。」
[相違点]
本願発明は、「第1の時間範囲を第1の食事事象に対する食前分析期間」および「第2の時間範囲を前記第1の食事事象に対する食後分析期間」をコンピューティングデバイスが受け取っているのに対して、引用例発明の「食事の前後の所定の期間」は、コンピューティングデバイスが受け取る構成になっていない点。

5.当審の判断
相違点について
引用例発明の「食事の前後の所定の期間」は、患者レポートの生成処理に備えてシステムが保持している情報であって、レポートの生成処理が実行された際に、システムがその情報を受け取っていることは明らかであり、引用例発明の「食事の前後の所定の期間」を受け取るように構成して、相違点の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
さらに、本願発明の「受け取る」が、ユーザ設定入力の意味であると解したとしても、「食事前後の所定の期間」がユーザの生活習慣に応じて異なることは当然であり、また、ユーザによって異なることが想定される情報をユーザが設定入力できるようにすることは、コンピュータの技術分野において周知事項に過ぎないところから、この期間をコンピュータデバイスが受け取ることは何ら困難ではない。
例えば、特開2000-60803号公報の段落番号0029,0035に記載されているように、患者がシステムに対して食前食後の時間範囲を入力すること、換言すれば、システムが食前食後の時間範囲を受け取ることは、周知事項であることから、当該周知事項を引用例発明に適用して、相違点の構成とすることも、当業者が容易になし得ることである。
以上のとおりであるから、相違点にかかる発明の構成は、引用例発明および周知事項から当業者が容易に想到することができたものである。
そして、本願発明の効果も引用例発明及び周知事項から当業者が推測できる範囲のものである。

6.むすび
本願発明は引用例発明および周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-28 
結審通知日 2013-12-03 
審決日 2013-12-16 
出願番号 特願2008-520242(P2008-520242)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩間 直純  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 石川 正二
須田 勝巳
発明の名称 可変時間レポートデルタおよび構成可能グルコース目標範囲を使用する適応性の高いグルコース分析  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  

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