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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 B65G 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65G |
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管理番号 | 1287455 |
審判番号 | 不服2013-16588 |
総通号数 | 174 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-08-28 |
確定日 | 2014-05-27 |
事件の表示 | 特願2009-164666「果菜搬送送出方法、果菜搬送送出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月26日出願公開、特開2009-274878、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成19年9月19日(優先権主張平成18年9月19日)に出願した特願平2008-535376号(以下、「原出願」という。)の一部を平成21年7月13日に新たな特許出願としたものであって、平成22年9月17日に手続補正書が提出され、平成24年9月10日付けで拒絶理由が通知され、平成24年11月19日に手続補正書が提出され、平成24年11月26日に意見書が提出され、平成25年2月21日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成25年4月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成25年5月20日付けで平成25年4月30日に提出された手続補正書による手続補正が却下されるとともに同日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成25年8月28日に拒絶査定に対する審判請求がされると同時に、明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、さらに当審において、平成25年11月20日付けで書面による審尋が行われたものである。 第2 平成25年8月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否 1.補正の内容 (1)補正事項1 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関し、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年11月19日提出の手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項1の下記(a)を、下記(b)とする補正(以下、「補正事項1」という。)を含んでいる。 (a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 搬送中の果菜を判別部において判別項目別に自動的に判別し、判別済みの果菜を判別内容別に搬送方向側方に送り出す果菜搬送送出方法において、 無端走行体に取付けられた多数の往復回転式のベルトコンベアによる果菜載せ体を無端走行体の移動により移動させて、果菜載せ体の上の果菜を搬送し、その搬送中に当該果菜を判別部において判別し、果菜搬送中の果菜載せ体を果菜の送り出し速度を減速させる方向に回転又は移動させて果菜を果菜載せ体の先方に送り出すことを特徴とする果菜搬送送出方法。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「 【請求項1】 搬送中の果菜を判別部において判別項目別に自動的に判別し、判別済みの果菜を判別内容別に搬送方向側方に送り出す果菜搬送送出方法において、 無端走行体に、往復回転式のベルトコンベアを備えた果菜載せ体が多数取付けられ、夫々の果菜載せ体はその送り出し側が無端走行体の搬送方向斜め後方に向けて取付けられており、 前記果菜載せ体を無端走行体の移動により移動させて果菜載せ体の上の果菜を搬送し、その搬送中に当該果菜を判別部において等階級に判別し、 判別後の搬送中の果菜を、前記ベルトコンベアを果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動させることにより、送り出し速度を減速させて、前記ベルトコンベアの先方に送り出す、 ことを特徴とする果菜搬送送出方法。」(下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。) (2)補正事項2 本件補正は、特許請求の範囲の請求項5に関し、本件補正により補正される前の(すなわち、平成24年11月19日提出の手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項6の下記(a)を、下記(b)とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含んでいる。 (a)本件補正前の特許請求の範囲の請求項6 「 【請求項6】 果菜搬送体の途中に、搬送中の果菜を判別項目別に自動的に判別する判別部を設け、判別部よりも先方で、判別済みの果菜を判別項目別に搬送方向側方に送り出して、果菜搬送体の側方に配置された果菜受体に送り出す果菜搬送送出装置において、 果菜搬送体は、往復回転式のベルトコンベアによる果菜載せ体が無端走行体に多数取付けられ、当該果菜載せ体は無端走行体の走行により走行して果菜を搬送し、果菜搬送中に果菜載せ体を果菜の送り出し速度が減速する方向に回転又は移動させて、果菜載せ体の側方に配置されている果菜受体に直に、又は果菜受体の手前に配置されている減速体を介して間接的に送り出すことができることを特徴とする果菜搬送送出装置。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲の請求項5 「 【請求項5】 果菜搬送体の途中に、搬送中の果菜を判別項目別に自動的に判別する判別部を備え、判別済みの果菜を判別部よりも先方において判別項目別に搬送方向側方に送り出して、果菜搬送体の側方に配置された果菜受体に送り出す果菜搬送送出装置において、 果菜搬送体は、往復回転式のベルトコンベアによる果菜載せ体が無端走行体に多数取付けられ、 夫々の果菜載せ体はその送り出し側が無端走行体の搬送方向斜め後方に向けて取付けられ、 その果菜載せ体は無端走行体の走行により走行して果菜を搬送し、果菜搬送中に果菜載せ体の前記ベルトコンベアが果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動して果菜を斜め後方に送り出して、その送り出し速度を減速させることができ、送り出される果菜を、果菜載せ体の側方に配置されている果菜受体に直に又は果菜受体の手前に配置されている減速体を介して間接的に送り出すことができる、 ことを特徴とする果菜搬送送出装置。」(下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。) 2.補正の適否 本件補正のうち補正事項1は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「果菜載せ体」及び「判別部」について、それぞれ「夫々の果菜載せ体はその送り出し側が無端走行体の搬送方向斜め後方に向けて取り付けられて」いる旨及び「等階級に判別」する旨を限定するとともに、「果菜搬送中の果菜載せ体を果菜の送り出し速度を減速させる方向に回転又は移動させて果菜を果菜載せ体の先方に送り出す」ことについて、「判別後の搬送中の果菜を、前記ベルトコンベアを果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動させることにより」行われる旨を限定するものである。そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、本件補正のうち補正事項2は、請求項5に記載された発明を特定するために必要な事項である「判別済みの果菜を判別項目別に搬送方向側方に送り出」すことに関し、「判別部よりも先において」行われることを限定し、「果菜載せ体」について、「夫々の果菜載せ体はその送り出し側が無端走行体の搬送方向斜め後方に向けて取付けられ」ている旨を限定するとともに、「果菜搬送中の果菜載せ体を果菜の送り出し速度を減速する方向に回転又は移動させ」ることについて、「ベルトコンベアが果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動して果菜を斜め後方に送り出」すことにより行われる旨を限定するものである。そして、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項5に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 さらに、本件補正において、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)及び本件補正後の前記請求項5に記載された発明(以下、「補正発明2」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)引用発明1及び2 原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-164811号公報(以下、「刊行物1」という。)には、【特許請求の範囲】の【請求項1】、段落【0001】及び【0010】ないし【0019】並びに図面の記載からみて、次の発明が記載されているものと認められる。 「 搬送中の果菜を計測部Bにおいて等階級を判定し、判定済みの果菜を判定内容別に搬送方向側方に送り出す果菜を自動選別し、搬送送出する方法において、 チェーン(無端搬送体)1に、往復駆動することができる搬送ベルト15を備えた果菜受け体2が多数取付けられ、夫々の果菜受け体2はその送出側がチェーン1の搬送方向の側方に向けて取付けられており、 前記果菜受け体2をチェーン1の移動により移動させて果菜受け体2の上の果菜3を搬送し、その搬送中に当該果菜3を計測部Bにおいて等階級を判定し、 判定後の搬送中の果菜3を、前記搬送ベルト15を果菜搬送方向の側方に向けて移動させることにより、前記搬送ベルト15の先方に送り出す、 ことを特徴とする果菜を自動選別し、搬送送出する方法。」(以下、「引用発明1」という。) 「 搬送ラインの途中に、搬送中の果菜3の等階級を自動選別する計測部Bを備え、判定済みの果菜3を計測部Bよりも先方において判定内容別に搬送方向側方に送り出して、搬送ライン側方に送り出して、搬送ラインの側方に配置された果菜引受け体2に送り出す果菜自動選別装置において、 搬送ラインは、往復駆動することができる搬送ベルト15が掛け渡された果菜受け体2がチェーン1に多数取付けられ、 夫々の果菜受け体2はその送出し側がチェーン1の搬送方向の側方に向けて取付けられ、 その果菜受け体2はチェーン1の走行により走行して果菜3を搬送し、果菜3搬送中に果菜受け体2の搬送ベルト15が果菜搬送方向側方に回転して果菜3を側方に送り出して、送り出される果菜3を果菜受け体2の側方に設けられたプール用ベルトコンベア4に送り出すことができる果菜自動選別装置。」(以下、「引用発明2」という。) (2)引用技術 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-191635号公報(以下、「刊行物2」という。)には、段落【0001】及び【0063】並びに図面の記載からみて、次の技術(以下、「引用技術」という。)が記載されているものと認められる。 「物品仕分け装置において、キャリア2によって搬送する物品Gを、無端ベルト207を用いて搬送方向に対して側方のシュート7に払出すにあたり、無端ベルト207を斜め後方に向けて駆動して、シュート7に対する物品Gの相対速度を低めるようにするという技術。」 (4)補正発明1と引用発明1との対比 補正発明1と引用発明1とを対比すると、本願の明細書に記載された実施例において「判別部6」は、「カメラ、糖度センサ、重量計等、判別に必要な各種装置を備え、搬送されてくる果菜1の形状、サイズ、重量、色、糖度等を計測し、自動的に規格を判別できるものである」(明細書の段落【0043】)のに対し、引用発明1における「計測部B」は、果菜3の形状や色、傷の有無などを計測する画像処理装置と、糖度を検出する糖度計測装置とを含んでおり、画像処理装置から出力される情報と糖度計測装置から出力される情報とを総合的に判断して果菜3の等階級を判定するものである計測・制御手段を備えるものである(刊行物1の段落【0010】及び【0016】)から、引用発明1における「計測部B」は、その機能及び技術的意義からみて、補正発明1における「判別部」に相当する。 そして上記したように、引用発明1は、果菜3の形状や色、傷の有無などを計測し、糖度を検出して、「果菜を自動選別」するものであるから、引用発明1において「等階級を判定」することは、その技術的意義からみて、補正発明1において「判別項目別に自動的に判別」することに相当し、以下同様に、「判定済み」は「判別済み」に、「判定内容別に」は「判別内容別に」に、「果菜を自動選別し、搬送送出する方法」は「果菜搬送送出方法」に、それぞれ相当する。 また、引用発明1における「チェーン(無端搬送体)1」及び「チェーン1」は、その機能、構造又は技術的意義からみて、補正発明1における「無端走行体」に相当し、以下同様に、「往復駆動することができる搬送ベルト15」及び「搬送ベルト15」は「往復回転式のベルトコンベア」及び「ベルトコンベア」に、「果菜受け体2」は「果菜載せ体」に、「送出側」は「送り出し側」に、「果菜3」は「果菜」に、それぞれ相当する。 したがって、補正発明1と引用発明1とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点>で相違する。 <一致点> 「 搬送中の果菜を判別部において判別項目別に自動的に判別し、判別済みの果菜を判別内容別に搬送方向側方に送り出す果菜搬送送出方法において、 無端走行体に、往復回転式のベルトコンベアを備えた果菜載せ体が多数取付けられており、 前記果菜載せ体を無端走行体の移動により移動させて果菜載せ体の上の果菜を搬送し、その搬送中に当該果菜を判別部において等階級に判別し、 判別後の搬送中の果菜を、前記ベルトコンベアの先方に送り出す、 ことを特徴とする果菜搬送送出方法。」 <相違点> 補正発明1においては、夫々の果菜載せ体はその送り出し側が無端走行体の搬送方向斜め後方に向けて取付けられており、ベルトコンベアを果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動させることにより、送り出し速度を減速させて、果菜をベルトコンベアの先方に送り出すのに対し、 引用発明1においては、夫々の果菜受け体2はその送出側がチェーン1の搬送方向の側方に向けて取付けられており、搬送ベルト15を果菜搬送方向の側方に向けて移動させることにより、果菜3を搬送ベルト15の先方に送り出す点(以下、「相違点1」という。)。 (5)判断1 上記相違点1について検討する。 まず、補正発明1と引用技術とを対比すると、引用技術における「無端ベルト207」は、その構成からみて、補正発明1における「ベルトコンベア」に相当する。また、「搬送物」という限りにおいて、引用技術における「物品G」は補正発明における「果菜」に相当する。 そして、引用技術において、「無端ベルト207を斜め後方に向けて駆動し」たときには、無端ベルト207は、物品Gの搬送方向斜め後方に移動させることになり、「シュート7に対する物品Gの相対速度を低めるように」することは、物品Gの送り出し速度を減速させることとなる。 したがって、「ベルトコンベアを搬送物の搬送方向斜め後方に移動させることにより、送り出し速度を減速させて、ベルトコンベアの先方に送り出す」という限りにおいて、引用技術において「無端ベルト207を用いて搬送方向に対して側方のシュート7に払い出すにあたり、無端ベルト207を斜め後方に向けて駆動して、シュート7に対する物品Gの相対速度を低める」ことは、補正発明1において「搬送中の果菜を、前記ベルトコンベアを果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動させることにより、送り出し速度を減速させて、前記ベルトコンベアの先方に送り出す」ことに相当する。 そこで、引用発明1に引用技術を組み合わせることによって、当業者が容易に補正発明1を発明することができるか否かについて検討する。 「搬送物」について検討すると、引用発明1における搬送物は「果菜」であるのに対し、引用技術における搬送物は「物品G」である。 そして、引用発明1における「果菜」に関し、刊行物1の段落【0001】に例示されているトマト等の果菜が、搬送時に傷つき易いことは常識である。 これに対し、引用技術における「物品G」については、刊行物2の【従来の技術】の説明において「例えばトラックから卸された物品」と記載されている(段落【0002】及び【0003】)ほかは、「物品」が具体的に何であるかは示されていない。そして、刊行物2には、「無端ベルト207は……物品Gをシュート7Aへ払出す。」(段落【0018】)、「ところで、キャリヤ2への物品の移載であるが、……第一の方法は、投入コンベヤ5により物品を無端ベルト207上に放込むことである。この場合には、投入コンベヤ5をかなり高速で走行させねばならず、放込まれた物品が無端ベルト207から反対側に落下しないように、この反対側に受け板を設ける必要がある。」(段落【0051】及び【0052】)、「この第二の方法は第一の方法より実用的であるということができるが、物品Gは上方から無端ベルト207上へ落下されるので、物品Gに落下による衝撃が加わるのを回避することはできない。」(段落【0056】)、「かかる衝撃を回避すると共に、物品を安定した位置に移載する方法として、図14および図15に示す方法が考えられる。……この第三の方法は、……上述した払出しのための機構を利用するものである。……無端軌道3の側方から無端ベルト207上に物品を移載するように配設される。……物品は投入コンベヤ5と同期して駆動される無端ベルト207により、積極的に無端ベルト207上に引込まれるので、上述の第一の方法や第二の方法のように移載時に物品に衝撃が加わることはなく、また、物品は安定した位置に移載される。この意味で、本発明を実施する際のキャリヤ2への物品移載方法として、この第三の方法が最も優れていると言える。」(段落【0057】ないし【0062】)と記載されている。 これらの記載によれば、引用技術における「物品G」は、「第三の方法」によって、投入コンベア5により無端ベルト207上に「放込む」際及び放込まれた物品が「受け板」に接触する際に生じる衝撃を回避すべきものであると認められる。しかし、該「第三の方法」が払出しのための機構を利用するものであることを考えれば、該払出しのための機構についての「物品Gをシュート7Aへ払出す」との記述や図2の記載等からみて、引用技術における「物品G」は引用発明1における「果菜」ほど、搬送時における傷つき易さについて注意しなければならないものであるとは認められない。 したがって、引用技術において、物品Gの「相対速度を低める」ことは、果菜のように傷つき易い物品を傷つかないようにすることではない。 上記のとおり、引用発明1は果菜を自動選別し、搬送送出する方法に関するものであるのに対し、引用技術は物品仕分け装置に関するものであって、物品を搬送するという点では共通するものの、その搬送対象は、前者においては傷つき易い果菜であるのに対し、後者においては果菜のようなに傷つき易い物品ではないから、両者の技術分野が関連しているとまでいうことはできない。 また、課題の共通性に関し、引用発明1において傷つき易い果菜を傷つかないように搬送することが内在する課題であるとはいえるが、上記したように引用技術において物品Gの「相対速度を低める」ことは、果菜のように傷つき易い物品を傷つかないようにするものではないから、引用発明1と引用技術は解決すべき課題を共通にするということもできない。 さらに、作用、機能の共通性に関しても、引用発明1は、果菜を傷つかないように搬送する機能を当然に有するとはいえるが、引用技術において物品Gが傷つかないようにするものではないから、引用発明1と引用技術は作用、機能を共通にするということもできない。 以上から、引用発明1に引用技術を適用する動機づけがあるとは認められない。 また、例え引用発明1に引用技術を適用する動機づけが存在するとしても、補正発明1は、本願の明細書の段落【0018】に記載されるように「物品が果菜であっても、送出し時に横転したり、他の果菜に衝突して損傷したりすることが殆どなくなり、損傷の心配もない」との作用効果を奏するものと認められるところ、該作用効果は、引用発明1と引用技術の組み合わせによる効果と比較して有利な効果であって、果菜のように傷つき易い物品を搬送送出するものにおいて特有のものである。 よって、引用発明1及び引用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 したがって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (6)補正発明2と引用発明2との対比 次に補正発明2と引用発明2とを対比すると、引用発明2における「搬送ライン」は、その構成、機能および技術的意義からみて、補正発明2における「果菜搬送体」に相当し、以下同様に、「チェーン(無端搬送体)1」及び「チェーン1」は「無端走行体」に、「往復駆動することができる搬送ベルト15」及び「搬送ベルト15」は「往復回転式のベルトコンベア」及び「ベルトコンベア」に、「果菜受け体2」は「果菜載せ体」に、「送出側」は「送り出し側」に、「果菜3」は「果菜」に、「プール用ベルトコンベア4」は「果菜受体」に、それぞれ相当する。 また、上記(4)に記載したように、本願の明細書に記載された実施例において「判別部6」は、「カメラ、糖度センサ、重量計等、判別に必要な各種装置を備え、搬送されてくる果菜1の形状、サイズ、重量、色、糖度等を計測し、自動的に企画を判別できるものである」のに対し、引用発明2における「計測部B」は、果菜3の形状や色、傷の有無などを計測する画像処理装置と、糖度を検出する糖度計測装置とを含んでおり、画像処理装置から出力される情報と糖度計測装置から出力される情報とを総合的に判断して果菜3の等階級を判定するものである計測・制御手段を備えるものであるから、引用発明2における「計測部B」は、その機能及び技術的意義からみて、補正発明2における「判別部」に相当する。 そして上記したように、引用発明2は、果菜3の形状や色、傷の有無などを計測し、糖度を検出して、「果菜を自動選別」するものであるから、引用発明2において「等階級を自動選別」することは、その技術的意義からみて、補正発明2において「判別項目別に自動的に判別」することに相当し、以下同様に、「判定済み」は「判別済み」に、それぞれ相当する。 さらに、引用発明2において「送り出される果菜3を果菜受け体2の側方に設けられたプール用ベルトコンベア4に送り出す」ことは、果菜受け体2からプール用別とコンベア4に果菜3を直に送り出すものといえるから、補正発明2において「送り出される果菜を、果菜載せ体の側方に配置されている果菜受体に直に又は果菜受体の手前に配置されている減速体を介して間接的に送り出す」ことは、引用発明2において「送り出される果菜3を果菜受け体2の側方に設けられたプール用ベルトコンベア4に送り出す」ことを包含するものである。 また、引用発明2における「果菜自動選別装置」は、果菜3を搬送し送出するものであることは明らかであるから、補正発明における「果菜搬送送出装置」に相当する。 したがって、補正発明2と引用発明2とは、以下の<一致点>で一致し、<相違点>で相違する。 <一致点> 「 果菜搬送体の途中に、搬送中の果菜を判別項目別に自動的に判別する判別部を備え、判別済みの果菜を判別部よりも先方において判別項目別に搬送方向側方に送り出して、果菜搬送体の側方に配置された果菜受体に送り出す果菜搬送送出装置において、 果菜搬送体は、往復回転式のベルトコンベアによる果菜載せ体が無端走行体に多数取付けられ、 その果菜載せ体は無端走行体の走行により走行して果菜を搬送し、果菜搬送中に果菜載せ体の前記ベルトコンベアが果菜搬送方向斜め後方に回転して果菜を送り出して、送り出される果菜を、果菜載せ体の側方に配置されている果菜受体に直に又は果菜受体の手前に配置されている減速体を介して間接的に送り出すことができる、 ことを特徴とする果菜搬送送出装置。」 <相違点> 補正発明2においては、夫々の果菜載せ体はその送り出し側が無端走行体の搬送方向斜め後方に向けて取付けられており、果菜搬送中に果菜載せ体の前記ベルトコンベアが果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動して果菜を斜め後方に送り出して、その送り出し速度を減速させることができるのに対し、 引用発明2においては、夫々の果菜受け体2はその送出し側がチェーン1の搬送方向の側方に向けて取付けられており、搬送ベルト15が果菜搬送方向側方に回転して果菜3を側方に送り出すことができるものである点(以下、「相違点2」という。)。 (7)判断2 上記相違点2について検討する。 まず、補正発明2と引用技術とを対比すると、引用技術における「無端ベルト207」は、その構成からみて、補正発明2における「ベルトコンベア」に相当する。また、「搬送物」という限りにおいて、引用技術における「物品G」は補正発明における「果菜」に相当する。 そして、引用技術において、「無端ベルト207を斜め後方に向けて駆動し」たときには、無端ベルト207は、物品Gの搬送方向斜め後方に移動させることになり、「シュート7に対する物品Gの相対速度を低めるように」することは、物品Gの送り出し速度を減速させることとなる。 したがって、「ベルトコンベアを搬送物の搬送方向斜め後方に移動させることにより、送り出し速度を減速させて、ベルトコンベアの先方に送り出す」という限りにおいて、引用技術において「無端ベルト207を用いて搬送方向に対して側方のシュート7に払い出すにあたり、無端ベルト207を斜め後方に向けて駆動して、シュート7に対する物品Gの相対速度を低める」ことは、補正発明1において「搬送中の果菜を、前記ベルトコンベアを果菜搬送方向斜め後方に回転又は移動させることにより、送り出し速度を減速させて、前記ベルトコンベアの先方に送り出す」ことに相当する。 そこで、引用発明2に引用技術を組み合わせることによって、当業者が容易に補正発明2を発明することができるか否かについて検討すれば、上記(5)における補正発明1に対する検討と同様に、引用発明2に引用技術を適用する動機づけは認められない。 また、引用発明2に引用技術を適用する動機づけが存在するとしても、補正発明2は、本願の明細書の段落【0018】に記載されるように「物品が果菜であっても、送出し時に横転したり、他の果菜に衝突して損傷したりすることが殆どなくなり、損傷の心配もない」との作用効果を奏するものと認められるところ、該作用効果は、引用発明2と引用技術の組み合わせによる効果と比較して有利な効果であって、果菜のように傷つき易い物品を搬送送出するものにおいて特有のものである。 よって、引用発明2及び引用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、本件補正の補正事項2は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 そして、本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第6項に違反するところはない。 (8)むすび 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし10に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1及び5に係る発明は、上記第2の1.(1)(b)及び(2)(b)にそれぞれ記載のとおりのものである。 そして、本願の請求項1及び5に係る発明は、上記第2のとおり、引用発明1及び2並びに引用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、本願の請求項2ないし4に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て有しているものであり、本願の請求項6ないし10に係る発明は、請求項5に係る発明の発明特定事項を全て有しているものであるから、同様に、引用発明1及び2並びに引用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2014-05-15 |
出願番号 | 特願2009-164666(P2009-164666) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WY
(B65G)
P 1 8・ 121- WY (B65G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石川 太郎 |
特許庁審判長 |
林 茂樹 |
特許庁審判官 |
中村 達之 金澤 俊郎 |
発明の名称 | 果菜搬送送出方法、果菜搬送送出装置 |
代理人 | 小林 正英 |
代理人 | 小林 正治 |