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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C09D |
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管理番号 | 1287764 |
審判番号 | 訂正2014-390029 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2014-02-04 |
確定日 | 2014-05-12 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5293987号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5293987号に係る特許請求の範囲及び明細書を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める。 |
理由 |
1.事件の経緯 本件訂正審判に係る特許第5293987号の経緯は次のとおりである。 平成19年7月19日 特願2007-188016号の出願 平成21年2月5日 出願公開(特開2009-24072号公報) 平成25年5月14日 特許査定 平成25年6月21日 本件特許権の設定登録 平成25年9月18日 特許掲載公報発行 平成26年2月4日付け 本件訂正審判の請求 平成26年4月11日付け 手続補正書(訂正審判請求書)の提出 平成26年4月11日付け 上申書の提出 2.審判請求の趣旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5293987号の特許請求の範囲及び明細書を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり一群の請求項ごとに訂正することを認める、との審決を求めるものである。より詳細には以下のとおりである。 (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に記載の『前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕』を、『前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕』に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2?11も同様に訂正する。 (イ)訂正事項2 明細書の〔0008〕に記載の『前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕』を、 『前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表わす。〕』に訂正する。 (ウ)訂正事項3 明細書の〔0011〕に記載の『前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕』を、 『前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕』に訂正する。 (エ)訂正事項4 明細書の〔0083〕に記載の『h(色相角(°))は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求めた。』を、『h(色相角(°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求めた。』に訂正する。 (オ)訂正事項5 明細書の〔0105〕に記載の『h(色相角(°))は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0の場合)により求めた。』を、『h(色相角(°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求めた。』に訂正する。 3.当審の判断 (1)訂正の目的について(特許法第126条第1項ただし書) 訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及びそれを直接的ないし間接的に引用する請求項2?11において、色相角(∠H°)について、「a^(*)<0の場合」と「a^(*)>0の場合」の2通りに分けて記載していたところを、訂正後の特許請求の範囲の請求項1において、「a^(*)>0の場合」を「a^(*)>0かつb^(*)<0の場合」と「a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合」との2通りに分け、全体で「a^(*)<0の場合」、「a^(*)>0かつb^(*)<0の場合」、「a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合」の3通りに分けて記載するように訂正するものである。 ここで、色相角(∠H°)と、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数a^(*)、b^(*)が、以下の図1で表される関係にあり、色相角(∠H°)の大きさが、0?90(第1象限)、90?180(第2象限)、180?270(第3象限)、270?360(第4象限)のいずれの範囲にあるかによって、 ・第1象限(∠H°=0?90、a^(*)>0、b^(*)≧0)の場合は、 ∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))。 (tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、0?90の値をとるため、補正不要。) ・第2象限(∠H°=90?180、a^(*)<0、b^(*)≧0)の場合は、 ∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180。 (tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、-90?0の値をとるため、第2象限の∠H°(90?180)に補正するために180の加算が必要。) ・第3象限(∠H°=180?270、a^(*)<0、b^(*)<0)の場合は、 ∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180。 (tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、0?90の値をとるため、第3象限の∠H°(180?270)に補正するために180の加算が必要。) ・第4象限(∠H°=270?360、a^(*)>0、b^(*)<0)の場合は、 ∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360。 (tan^(-1)(b^(*)/a^(*))は、-90?0の値をとるため、第4象限の∠H°(270?360)に補正するために360の加算が必要。) と表されることは、技術常識と認められる(平成26年4月11日付け手続補正書(訂正審判請求書)の図2及びそれに関連する記載も参照のこと。)。 よって、色相角(∠H°)は、補正するために加算する角度が、同じ180°である第2象限の場合と第3象限の場合とをまとめて1つの式としたうえで、訂正事項1の記載の順番にならって表すと、次の式で表されることが、技術常識からみて、明らかと認められる。 ・a^(*)<0(第2、3象限)の場合 ∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180 ・a^(*)>0、b^(*)<0(第4象限)の場合 ∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360 ・a^(*)>0、b^(*)≧0(第1象限)の場合 ∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*)) そうすると、訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及びそれを直接的ないし間接的に引用する請求項2?11において、a^(*)>0、b^(*)≧0(第1象限)の場合が、a^(*)>0、b^(*)<0(第4象限)の場合と、まとめて、「∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360」と、あたかも360の加算が必要であるかのように誤って記載されていたところを、訂正後の特許請求の範囲の請求項1において、「∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))」と、上記の技術常識と整合するように記載して、上記請求項における色相角(∠H°)についての記載全体を、 『前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕』 とする訂正事項であって、誤記の訂正に該当するものと認められる。 したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものと認められる。 また、訂正事項2?5は、明細書中にも、訂正事項1と同様な誤記があったため、それらについても同様に訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものと認められる。 (2)新規事項の追加、特許請求の範囲の拡張・変更、独立特許要件について(特許法第126条第5?7項) 上記(1)に記載したとおり、色相角(∠H°)がa^(*)>0、b^(*)≧0(第1象限)の場合∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))と表されることは技術常識であり、当業者にとって明らかなことと認められるから、訂正事項1?5は、何ら新たな技術的事項を導入するものではなく、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてしたものであって、特許法第126条第5項の規定に適合するものと認められる。 また、上記(1)に記載したとおりの誤記の訂正に該当すると認められる訂正事項1?5が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとは認められないから、訂正事項1?5は、特許法第126条第6項の規定に適合するものと認められる。 そして、訂正事項1?5によって訂正された本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及びそれを引用する各請求項に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとは認められないから、訂正事項1?5は、特許法第126条第7項の規定に適合するものと認められる。 (3)まとめ よって、訂正事項1?5は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項?7項の規定に適合するものである。 4.むすび 以上のとおりであって、本件訂正審判の請求に係る訂正事項はいずれも、特許法第126条第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項?7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 インクセット、インクジェット記録方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、インクセットに関し、特に、記録した際の粒状性抑制、擬似輪郭抑制、虹光抑制、色再現性、及び光沢性を満足できるインクセットに関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、カラーインクジェット記録用のインクセットとして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、及びシアン(C)のインクを備えた3色インクセットや、さらにブラック(K)のインクを加えた4色インクセットが提供されている。また、得られる記録物における色再現性を高めるために、YMCインクに加えて、レッド(R)及び/又はバイオレット(V)のインクを備えたインクセットが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、YMCインクに加えて、オレンジ(Or)及びグリーン(Gr)の2色の特色インクを備えたインクセットも提案されている(例えば、特許文献2を参照)。 【0003】 【特許文献1】国際公開第02/100959号パンフレット 【特許文献2】国際公開第99/05230号パンフレット 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、特許文献1のインクセットを用いた記録では、光沢性は優れるが、干渉色(ブロンジング)のさらなる抑制が望まれる。また、特許文献2のインクセットを用いた記録では、顔料固形分が3重量%以上であるために、印画紙ベースの光沢メディア(例えば、写真用紙<光沢>(製品番号KA420PSK)(セイコーエプソン社製))上において、さらなる光沢性の向上が望まれる。 【0005】 そして、従来のインクセットでは、記録サンプルにおける人肌色の階調性が十分実現されていなかった。すなわち、従来のインクセットでは、人肌色の暗部の色再現において、粒状性が劣化してしまう問題、擬似輪郭が発生してしまう問題、色再現のために記録されるCインクのドットとYインクのドットが局所的に重なって人肌色の暗部が緑味に転ぶ現象(緑転び)が発生してしまう問題、Cインクの顔料固形分濃度が3重量%以下になると赤味の干渉色を発生させるために、人肌色の暗部においてドット重なりの緑と干渉色の赤とが混在し、虹色に光る現象(虹光)が強くなる問題、等がある。このような問題は、露出等が不適切に撮影された乳幼児の顔写真において、顕著である。 【0006】 そこで、本発明は、記録した際の粒状性抑制、擬似輪郭抑制、虹光抑制、色再現性、及び光沢性を満足できるインクセットを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のYMCインク、特定のインク(A)、及び特定のインク(B)を備えたインクセットが、記録した際の粒状性抑制、擬似輪郭抑制、虹光抑制、及び色再現性の向上を満足できることを知見し、本発明を完成するに至った。 【0008】 すなわち、本発明は、(1)少なくとも、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が約80°?約110°の範囲であるイエローインク、該色相角∠H°が約330°?約360°の範囲であるマゼンタインク、及び該色相角∠H°が約230?約260°の範囲であるシアンインクの3色のインクと、下記インク(A)及び下記インク(B)と、を備えるインクセット インク(A):前記色相角∠H°が約0°?約80°の範囲であるインク インク(B):前記色相角∠H°が約0°?約80°の範囲であるインク 〔前記インク(A)は前記マゼンタインクよりも高彩度かつ低明度であり、前記インク(B)は前記マゼンタインクよりも高彩度かつ高明度であり、前記イエローインクよりも高彩度かつ低明度である。前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+180(a*<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+360(a*>0かつb*<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b*/a*)(a*>0かつb*≧0の場合)により求められる。a*及びb*は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕; (2)前記イエローインクと前記シアンインクが錯体顔料を含む、前記(1)に記載のインクセット; (3)前記イエローインクは、C.I.ピグメントイエロー74と、C.I.ピグメントイエロー129と、を顔料として含み、前記シアンインクは、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:3の群から選ばれる1種または2種を顔料として含む、前記(1)に記載のインクセット; (4)前記シアンインクが白色顔料を含む、前記(1)?(3)の何れかに記載のインクセット; (5)前記マゼンタインクがγ型C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド202の固溶体を顔料として含む、前記(1)?(4)の何れか1に記載のインクセット; (6)前記インク(A)はレッドインクである、前記(1)?(5)の何れか1に記載のインクセット; (7)前記インク(A)は、C.I.ピグメントレッド177及び/又はC.I.ピグメントレッド179を顔料として含むレッドインクである、前記(1)?(6)の何れか1に記載のインクセット; (8)前記インク(B)はオレンジインクである、前記(1)?(7)の何れか1に記載のインクセット; (9)前記インク(B)は、C.I.ピグメントオレンジ43及び/又はC.I.ピグメントレッド242を顔料として含むオレンジインクである、前記(1)?(8)の何れか1に記載のインクセット; (10)前記インク(B)は、C.I.ピグメントオレンジ43と、C.I.ピグメントレッド242との混合比が、4:1?2:1である、前記(1)?(9)の何れか1に記載のインクセット; (11)さらに、C.I.ピグメントブルー15:1及び/又はC.I.ピグメントバイオレット23を顔料として含むブルーインクを備える、前記(1)?(10)の何れか1に記載のインクセット; (12)前記各インク中の顔料固形分濃度が3重量%未満である、前記(1)?(11)の何れか1に記載のインクセット; (13)さらに、ブラックインクを備え、該ブラックインクはC.I.ピグメントブラック7を顔料として含む、前記(1)?(12)の何れか1に記載のインクセット; (14)さらに、ブラックインクを備え、該ブラックインクの顔料固形分濃度が1重量%以下である、前記(1)?(13)の何れか1に記載のインクセット; (15)さらに、クリアインクを備える、前記(1)?(14)の何れか1に記載のインクセット; (16)炭素数5?10の分岐を有してもよいアルカンジオールを3重量%以上15重量%以下含む、前記(1)?(15)の何れか1に記載のインクセット; (17)界面活性剤として、ポリオルガノシロキサンを含む、前記(1)?(16)の何れか1に記載のインクセット; (18)界面活性剤として、下記一般式で表されるポリオルガノシロキサンを含む、前記(1)?(17)の何れか1に記載のインクセット 【化1】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは7?11の整数を表し、mは20?70の整数を表し、nは2?5の整数を表す。); (19)界面活性剤として、さらに、下記一般式で表されるポリオルガノシロキサンを含む、前記(18)に記載のインクセット 【化2】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは9?13の整数を表し、mは2?4の整数を表し、nは1?2の整数を表す。);を提供する。 【発明の効果】 【0009】 本発明によれば、記録した際の粒状性抑制、擬似輪郭抑制、虹光抑制、及び色再現性、及び光沢性を満足できるインクセットを提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 次に、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。 【0011】 本発明のインクセットは、少なくとも、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が約80°?約110°の範囲であるイエローインク、該色相角∠H°が約330°?約360°の範囲であるマゼンタインク、及び該色相角∠H°が約230?約260°の範囲であるシアンインクの3色のインクと、下記インク(A)及び下記インク(B)と、を備える。 インク(A):前記色相角∠H°が約0°?約80°の範囲であるインク インク(B):前記色相角∠H°が約0°?約80°の範囲であるインク 〔前記インク(A)は前記マゼンタインクよりも高彩度かつ低明度であり、前記インク(B)は前記マゼンタインクよりも高彩度かつ高明度であり、前記イエローインクよりも高彩度かつ低明度である。 前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+180(a*<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+360(a*>0かつb*<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b*/a*)(a*>0かつb*≧0の場合)により求められる。a*及びb*は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕 【0012】 「記録媒体」は、好ましくはインクジェット記録方法等において通常用いられる記録媒体であり、特に、PM写真用紙(セイコーエプソン株式会社製)であることが好ましい。 【0013】 各インクの色材は顔料インクであることが好ましい。 【0014】 このような構成としたことにより、記録した際の粒状性抑制、擬似輪郭抑制、虹光抑制、色再現性、及び光沢性を満足することができる。すなわち、上記構成としたことにより、光沢性を維持しつつ、記録サンプルにおける人肌色の階調性が改善される。 【0015】 人肌色の暗部の色再現において、粒状性が劣化することを抑制でき、擬似輪郭の発生を抑制でき、インクの顔料固形分濃度が低い場合に生じる虹光りを軽減することができる。 【0016】 また、a*>0の場合において、高明度、中明度、低明度領域における色再現性が一層向上する。 【0017】 前記インク(A)がMインクよりも高彩度かつ低明度であるが、Yインクの明度が低いので、粒状性を劣化させることがなく、さらに、Mインクの彩度が高くインク(B)の彩度が高いので、擬似輪郭を抑制することができるので、人肌色において同一色相で明度を低下させることができる。 【0018】 前記インク(B)がMインクよりも高彩度かつ高明度であり、Yインクよりも高彩度かつ低明度であるので、インク(B)を積極的に発生させても粒状性が劣化することがない。このため、Yインクの代替としてインク(B)を使用できるので、CインクのドットとYインクのドットが重なる頻度を効果的に低減でき、緑転びを抑制することができる。 【0019】 また、Cインクに対してインク(B)の色相角の差がほぼ180度なので、Cインクが発生した場合でも緑転びすることなく、効果的に明度を低下させることができる。 【0020】 前記イエローインクは錯体顔料を含むことが好ましい。 【0021】 前記イエローインクに含まれる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(PY)1,2,3,12,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,147,150,151,154,155,180,185等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 【0022】 前記イエローインクは、特に、C.I.ピグメントイエロー74(PY74)と、C.I.ピグメントイエロー129(PY129)と、を顔料として含むことが好ましい。 【0023】 前記シアンインクは錯体顔料を含むことが好ましい。 【0024】 前記シアンインクに含まれる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(PB)1,2,3,15:3,15:4,15:34,16,22,60;C.I.バットブルー4,60,C.I.ピグメントブルー76(PB76)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 【0025】 前記シアンインクは、特に、C.I.ピグメントブルー15:4(PB15:4)、C.I.ピグメントブルー15:3の群から選ばれる1種または2種を顔料として含むことが好ましい。 【0026】 前記シアンインクは、さらに白色顔料を含むことが好ましい。白色顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニア等の第IV族元素酸化物が挙げられる。シアンインクが白色顔料を含むことにより、干渉色の赤光が抑制され、虹光を抑制することができる。 【0027】 前記マゼンタインクに含有される顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(PR)5,7,12,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,112,122,123,168,184,202,209;C.I.ピグメントバイオレット19(PV19)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 【0028】 前記マゼンタインクは、特に、γ型C.I.ピグメントバイオレット19(PV19)及びC.I.ピグメントレッド202(PR202)の固溶体を顔料として含むことが好ましい。「γ型C.I.ピグメントバイオレット19と、C.I.ピグメントレッド202と、の固溶体」とは、γ型PV19と、PR202とが固体で互いに溶けた状態をなす結晶を意味する。上記固溶体のγ型PV19とPR202との量比は本発明の範囲内で適宜調整できるが、γ型PV19の重量がPV202の重量よりも大きいことが好ましい。 【0029】 前記固溶体の好適な例の粉末X線回折分析の結果を図1に示す。本分析においては、PaNalytical X’PertProを用いて、深さ0.5mmのガラスセルに試料を詰めて測定した。 【0030】 上記好適なマゼンタインクは、上記固溶体に加えて、PV19、PV32等のその他のマゼンタ系顔料をさらに含んでいてもよい。 【0031】 前記インク(A)はレッドインクであることが好ましい。 【0032】 前記インク(A)に含まれる顔料としては、C.I.ピグメントレッド(PR)17,49:2,112,149,177,178,179,188,254,255及び264からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好適に用いられる。 【0033】 前記インク(A)は、特に、C.I.ピグメントレッド177(PR177)及び/又はC.I.ピグメントレッド179(PR179)を顔料として含むレッドインクであることが好ましい。 【0034】 前記インク(B)はオレンジインクであることが好ましい。 【0035】 前記インク(B)に含まれる顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ5,43,36,62,242からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好適に用いられる。 【0036】 前記インク(B)は、特に、C.I.ピグメントオレンジ43(POr43)及び/又はC.I.ピグメントレッド242(PR242)を顔料として含むオレンジインクであることが好ましい。C.I.ピグメントオレンジ43(POr43)及びC.I.ピグメントレッド242(PR242)を顔料として含む場合、耐光性と発色性を兼ね備えたインクを得る観点から、前記C.I.ピグメントオレンジ43と、C.I.ピグメントレッド242との混合比は、4:1?2:1であることが好ましい。 【0037】 インクセットは、さらに、C.I.ピグメントブルー76(PB76)、C.I.ピグメントブルー15:1(PB15:1)、ニッケルフタロシアニン及び/又はC.I.ピグメントバイオレット23(PV23)を顔料として含むブルーインクを備えていてもよい。 【0038】 前記各インク中の顔料固形分濃度は、3重量%未満であることが好ましい。 【0039】 インクセットは、さらに、ブラックインクを備え、該ブラックインクはC.I.ピグメントブラック7を顔料として含んでいてもよい。 【0040】 インクセットが、さらに、ブラックインクを備える場合、該ブラックインクの顔料固形分濃度は1重量%以下であることが好ましい。 【0041】 ブラックインクに含有される顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄顔料等の無機顔料;アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料等が挙げられる。特に、カーボンブラックを用いることが好ましく、好ましいカーボンブラックの例として、三菱化学製のNo.2300,No.900,MCF88,No.33,No.40,No.52,MA7,MA8,MA100,No.2200B等、コロンビア製のRaven5750,Raven5250,Raven5000,Raven3500,Raven1255,Raven700等、キャボット社製のRegal 400R,Regal 400R,Regal 1660R,Mogul 1,Monarch700,Monarch800,Monarch880,Monarch900,Monarch1000,Monarch1100,Monarch1300,Monarch1400等、テグッサ社製のColor Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex 35,Printex U,Printex V,Printex 140U,Specil Black 6,Specil Black5,Specil Black 4A,Specil Black 4等が挙げられる。 【0042】 インクセットは、さらに、着色剤を含まないクリアインクを備えていてもよい。クリアインクを備えることにより、光沢性、発色性、耐擦性、及び保存安定性に優れた記録画像が得られる。 【0043】 各インクは、顔料の分散安定性を高めるために分散剤を含有させることが好ましい。好適な分散剤の例としては、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤、界面活性剤が挙げられる。 【0044】 アニオン性分散剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体、酢酸ビニル-エチレン共重合体、酢酸ビニル-脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル-クロトン酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体等が挙げられる。 【0045】 ノニオン性分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。 【0046】 分散剤としての界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のノニオン性界面活性剤、が挙げられる。特に、顔料の分散安定性を高める観点から、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体を用いることが好ましい。 【0047】 分散剤は、各インク中、固形分換算で好ましくは、0.1?10重量%、更に好ましくは、0.3?6重量%含有される。 【0048】 各インクは、炭素数5?10の分岐を有してもよいアルカンジオールを3重量%以上15重量%以下含むことが好ましい。特に、水溶性の1,2-アルカンジオールを8?15重量%含むことが好ましい。あるいは、水溶性の両末端アルカンジオールを3?8重量%含むことが好ましい。4-メチル-1,2-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、4,4-ジメチル-1,2-ペンタンジオール、5-メチル-1,2-ヘキサンジオール,1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオールが好ましい。さらには、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールが好ましい。 【0049】 各インクは、湿潤剤として、多価アルコール類、糖類、エチレンオキサイド鎖を有する多価アルコール類を1種又は2種以上含むことが好ましい。このような湿潤剤を加えることによって、インクジェット記録用に用いた場合に、インクの乾燥を防いでインクジェットプリンタのヘッドでの目詰まりが抑制される。 【0050】 湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類;糖アルコール等の糖類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレンオキサイド鎖を有する多価アルコール類;等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 【0051】 湿潤剤は、各インク中、固形分換算で好ましくは3?16重量%含有される。 【0052】 各インクは、浸透剤として、ラクトン類、ラクタム類(ピロリドン類)、アルカンジオール類、グリコールエーテル類を1種又は2種以上含んでもよい。浸透剤を加えることによって、記録媒体への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。 【0053】 浸透剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類(ピロリドン類);1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等のアルカンジオール等;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;が挙げられる。 【0054】 浸透剤は、各インク中、固形分換算で好ましくは8?15重量%含有される。 【0055】 各インクは、界面活性剤として、アセチレングリコール類、ポリシロキサン類を1種又は2種以上含んでもよい。界面活性剤を加えることによって、記録媒体への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。 【0056】 各インクは、界面活性剤として、ポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。 【0057】 本発明のマゼンタインク組成物がポリオルガノシロキサンを含む場合、一種のポリオルガノシロキサンを含んでもよいし、又は二種以上のポリオルガノシロキサンを含んでもよい。 【0058】 各インクは、界面活性剤として、下記一般式で表されるポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。 【化3】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは7?11の整数を表し、mは20?70の整数を表し、nは2?5の整数を表す。) 【0059】 このような好適な構成とすることにより、光沢感が一層向上した記録物を得ることができる。 【0060】 又は、各インクは、界面活性剤として、上記一般式で表されるポリオルガノシロキサンに加えて、さらに、下記一般式で表されるポリオルガノシロキサンを含むことが好ましい。 【化4】 (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、aは9?13の整数を表し、mは2?4の整数を表し、nは1?2の整数を表す。) 【0061】 このような好適な構成とすることにより、印刷本紙に記録した際の凝集むらを抑制することができる。 【0062】 各インクは、インクの乾燥時間を短縮する観点から、低沸点有機溶媒を含んでもよい。該低沸点有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロプルアルコール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、iso-ブタノール、n-ペンタノール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。特に、一価アルコールが好ましい。 【0063】 各インクは、前述した顔料、分散剤、湿潤剤、低沸点有機溶媒、浸透剤、界面活性剤等の成分を含有し、バランスとして水を含有することが好ましい。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生が防止されるので好ましい。 【0064】 各インクには、更に必要に応じて、水溶性ロジン類等の定着剤、安息香酸ナトリウム等の防黴剤・防腐剤、アロハネート類等の酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、pH調整剤等の添加剤を含有させることができ、これらの1種又は2種以上が用いられる。 【0065】 pH調整剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等を挙げることができる。pH調整剤の添加量は目的とするpHに応じて決定される。 【0066】 本発明のインクセットは、ノズルからインクの液滴を吐出させ、該液滴を記録媒体に付着させて文字や図形等の画像を形成する記録方法であるインクジェット記録方法に用いられることが好ましく、特にオンデマンド型のインクジェット記録方法に用いられることが好ましい。オンデマンド型のインクジェット記録方法としては、例えば、プリンターヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法、プリンターヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法等が挙げられ、何れのインクジェット記録方法にも好適に使用できる。 【実施例】 【0067】 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例のみならず様々な変更を加えて実施することが可能であり、かかる変更も本特許請求の範囲に包含される。 【0068】 〔実施例1〕 マゼンタインクとして、γ型PV19とPR202との固溶体(以下、固溶体という)であってγ型PV19の重量がPR202の重量よりも大きい固溶体を含むマゼンタイク組成物を以下の配合により調製した。また、以下の配合によるイエローインク、シアンインク、レッドインク、オレンジインク、ブラックインクをそれぞれ調製し、インクセットを得た。 【0069】 <マゼンタインク組成物;実施例1> 固溶体 2.2重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0070】 <イエローインク組成物;実施例1> PY74 1.5重量% PY129 0.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0071】 <シアンインク組成物(1);実施例1> PB15:4 1.5重量% 二酸化チタン 0.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0072】 <レッドインク組成物;実施例1> PR177 2.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 1.0重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0073】 <オレンジインク組成物;実施例1> POr43 2.0重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0074】 <ブラックインク組成物;実施例1> PCB7 1.5重量% PB15:4 0.2重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0075】 〔比較例1〕 比較例1のインクセットとしては、以下の配合によるマゼンタインク、イエローインク、シアンインク、ブルーインク組成物をそれぞれ調製し、さらに実施例1のものと同組成のレッドインク及びブラックインクを備えるインクセットとした。 【0076】 <マゼンタインク組成物;比較例1> PV19 2.0重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0077】 <イエローインク組成物;比較例1> PY 74 3.0重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 1.2重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0078】 <シアンインク組成物;比較例1> PB15:4 1.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0079】 <ブルーインク組成物;比較例2> PV23 1.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0080】 上記のようにして調製した各インク組成物を、インクジェットプリンタ(商品名「MC-2000」、セイコーエプソン(株)製)のインクカートリッジに装着し、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン(株)製)に、1440×1440dpiの解像度で、Duty(%)を変化させて記録を行い、各記録物について、L*値、a*値、b*値を測定した。 【0081】 「duty」は、Duty=(実印字ドット数)/(縦解像度×横解像度)×100(%)で定義される。 【0082】 L*値、a*値、b*値及びC*値の測定は、分光光度計GRETAG MACBETH SPM50(GRETAG製)を用いて行った。具体的には、光源D50、光源フィルタなしで、白色標準は絶対白とし、視野角は2°とした。 【0083】 h(色相角(°)は、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+180(a*<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+360(a*>0かつb*<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b*/a*)(a*>0かつb*≧0の場合)により求めた。 【0084】 実施例1のインクセットの結果を表1、2に示す。 【0085】 【表1】 【0086】 【表2】 【0087】 比較例1のインクセットの結果を表3、4に示す。 【0088】 【表3】 【0089】 【表4】 【0090】 〔実施例2〕 マゼンタインクとして、γ型PV19とPR202との固溶体(以下、固溶体という)であってγ型PV19の重量がPR202の重量よりも大きい固溶体を含むマゼンタインク組成物を以下の配合により調製した。また、以下の配合によるイエローインク、シアンインク、レッドインク、オレンジインク、ブラックインクをそれぞれ調製し、インクセットを得た。 【0091】 <マゼンタインク組成物;実施例2> 固溶体 2.2重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0092】 <イエローインク組成物;実施例2> PY74 1.5重量% PY129 0.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0093】 <シアンインク組成物;実施例2> PB15:4 1.5重量% 二酸化チタン 0.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0094】 <レッドインク組成物;実施例2> PR177 2.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 1.0重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0095】 <オレンジインク組成物;実施例2> POr43 1.5重量% POr242 0.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0096】 <ブラックインク組成物;実施例2> PCB7 1.5重量% PB15:4 0.2重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0097】 〔比較例2〕 比較例2のインクセットとしては、以下の配合によるマゼンタインク、イエローインク、シアンインク、ブルーインクをそれぞれ調製し、さらに実施例2のものと同組成のレッドインク及びブラックインクを備えるインクセットとした。 【0098】 <マゼンタインク組成物;比較例2> PV19 2.0重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0099】 <イエローインク組成物;比較例2> PY 74 3.0重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 1.2重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0100】 <シアンインク組成物;比較例2> PB15:4 1.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0101】 <ブルーインク組成物;比較例2> PV23 1.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 1,2-ヘキサンジオール 8.0重量% 1,5-ペンタンジオール 3.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0102】 上記のようにして調製した各インク組成物を、インクジェットプリンタ(商品名「MC-2000」、セイコーエプソン(株)製)のインクカートリッジに装着し、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン(株)製)に、1440×1440dpiの解像度で、Duty(%)を変化させて記録を行い、各記録物について、L*値、a*値、b*値を測定した。 【0103】 「duty」は、Duty=(実印字ドット数)/(縦解像度×横解像度)×100(%)で定義される。 【0104】 L*値、a*値、b*値及びC*値の測定は、分光光度計GRETAG SPM(GRETAG社製)を用いて行った。具体的には、光源D50、光源フィルタなしで、白色標準は絶対白とし、視野角は2°とした。 【0105】 h(色相角(°)は、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+180(a*<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b*/a*)+360(a*>0かつb*<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b*/a*)(a*>0かつb*≧0の場合)により求めた。 【0106】 実施例2のインクセットの結果を表5、6に示す。 【0107】 【表5】 【0108】 【表6】 【0109】 比較例2のインクセットの結果を表7、8に示す。 【0110】 【表7】 【0111】 【表8】 【0112】 表1?8のデータを用いてグラフ化したものを図2?6及び図8?10に示す。 【0113】 図2は、実施例1のインクセットを用いて記録した記録物のa*値とb*値の関係を示すグラフである。図2に示すように、実施例1のオレンジインクとシアンインクがほぼ正反対の色相であることが分かった。 【0114】 図8は、実施例1のオレンジインクと実施例2のオレンジインクを用いて記録した記録物のa*値とb*値の関係を示すグラフである。図8に示すように、実施例1のオレンジインクの色相と実施例2のオレンジインクの色相に大きな違いがないことがわかった。 【0115】 図3は、実施例1及び比較例1のイエローインクを用いて記録した記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。図3に示すように、実施例1のイエローインクが比較例1のイエローインクよりも、同一彩度において明度が低いことが分かった。 【0116】 図4は、実施例1及び比較例1のマゼンタインクを用いて記録した記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。図4に示すように、実施例1のマゼンタインクが比較例1のマゼンタインクよりも、同一明度において彩度が高いことが分かった。 【0117】 図5は、実施例1に係る記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。図5に示すように、実施例1において、オレンジインクはマゼンタインクよりも、同一彩度において高明度であった。また、オレンジインクはイエローインクよりも、同一彩度において低明度であった。また、レッドインクはマゼンタインクよりも同一彩度において低明度であった。 【0118】 図9は、実施例1のオレンジインクと実施例2のオレンジインクを用いて記録した記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。図9に示すように、実施例1のオレンジインクの色相と実施例2のオレンジインクの色相に大きな違いがないことがわかった。 【0119】 図6は、実施例1に係る記録物のDutyと明度の関係を示すグラフである。図6に示すように、実施例1において、同一インク付着量において、オレンジインクはマゼンタインクよりも高明度であった。また、同一インク付着量において、オレンジインクはイエローインクよりも低明度であった。また、同一インク付着量において、レッドインクはマゼンタインクよりも低明度であった。 【0120】 図10は、実施例1のオレンジインクと実施例2のオレンジインクを用いて記録した記録物のDutyと明度の関係を示すグラフである。図10に示すように、実施例1のオレンジインクと実施例2のオレンジインクとの間で同一インク付着量における明度に大きな違いがないことがわかった。 【0121】 さらに、粒状性、擬似輪郭、虹光、及び色再現性の評価を行った。 【0122】 <粒状性の評価> PX-G900に実施例又は比較例のインクセットを充填し、同一のインク重量制限値でLUTを作成した。その後、「JIS N1 グラスと女性」の画像と任意に選択した40種類の乳幼児の画像を写真用紙<光沢>に14440×720dpiと720×720dpiとで記録し、肌の粒状性を観察した。 A:粒状性が、14440×720dpiと720×720dpiで大きく変化せず、720×720dpiでも特に気にならない。 B:粒状性が、14440×720dpiと720×720dpiで大きく変化があり、720×720dpiでは粒状性が気になる。 【0123】 <虹光の評価> PX-G900に実施例又は比較例のインクセットを充填し、同一のインク重量制限値でLUTを作成した。その後、「JIS N1 グラスと女性」の画像と40種類の乳幼児の画像を写真用紙<光沢>に14440×1440dpiで記録し、F11光源を記録物から10cmまたは50cm離して、様々な角度から観察した。 A:10cmでは緑色や赤光が少なく、50cmでは緑色や赤光が全く感じられない。 B:10cmでは緑色や赤光が目立ち、50cmでは緑色や赤光が感じられ、気になる。 【0124】 <擬似輪郭の評価> PX-G900に実施例又は比較例のインクセットを充填し、同一のインク重量制限値でLUTを作成した。その後、任意に選択した40種類の朝陽と夕陽の画像を写真用紙<光沢>に14440×1440dpiで記録し、黄色から赤色まで日輪の輪郭の階調性を観察した。 A:日輪が階調性よく、再現されている。 B:日輪が黄色の輪、赤の輪に分断して観られる記録物があり、階調性よく、再現されていない。 【0125】 <色再現性(ガマット体積)の評価> PX-G9000に実施例又は比較例のインクセットを充填し、同一のインク重量制限値でLUTを作成した。その後、最大の色再現を計測できる画像を写真用紙<光沢>に解像度14440×720dpiにて記録し、記録物を得た。 上記のようにして測定して得られたL*値、a*値、b*値から、CIEで規定するL*値、a*値、b*値が全て1であるときのガマット体積を1として、ガマット体積を算出し、以下の基準で評価した。 A:ガマット体積が75万以上 B:ガマット体積が75万未満 【0126】 上記の評価結果を表9に示す。 【0127】 【表9】 【0128】 表9に示すように、実施例1及び2のインクセットは、粒状性抑制、擬似輪郭抑制、虹光抑制、及び色再現性を満足できることが分かった。 【0129】 実施例1及び比較例1のインクセットのパッチパターンを図7(a)?(i)に、実施例2及び比較例2のインクセットのパッチパターンを図11(a)?(i)に示す。図7及び図11において、(a)は高明度部(L*値=90)における色再現面積を比較した図であり、(b)は、高明度部(L*値=80)における色再現面積を比較した図であり、(c)は、高明度部(L*値=70)における色再現面積を比較した図であり、(d)は、中明度部(L*値=60)における色再現面積を比較した図であり、(e)は、中明度部(L*値=50)における色再現面積を比較した図であり、(f)は、中明度部(L*値=40)における色再現面積を比較した図であり、(g)は、低明度部(L*値=30)における色再現面積を比較した図であり、(h)は、低明度部(L*値=20)における色再現面積を比較した図であり、(i)は、低明度部(L*値=10)における色再現面積を比較した図である。 【0130】 考察するに、実施例1及び2のインクセットにおいては、比較例1及び2のインクセットに比べて以下の点で優れている。 (1)イエローインクの明度が低いので、肌色において、明度を低下させるためにシアンインクを発生させる量が低減できるので、ドットが重なった場合の緑転びを抑制できる。 (2)マゼンタインクの彩度が高いので、オレンジインクやレッドインクの発生を効果的に制御できるので、擬似輪郭を抑制できる。 (3)シアンインクが二酸化チタンを含むので、干渉色の赤光が抑制でき、(1)の効果と相乗して、虹光を抑制できる。 (4)オレンジインクがマゼンタインクよりも高明度かつ高彩度、かつ、イエローインクよりも高彩度かつ低明度なので、オレンジインクを積極的に発生させても粒状性が劣化することがない。よって、イエローインクの代替としてオレンジインクを使用できるので、シアンインクのドットとイエローインクのドットが重なる頻度を効果的に低減でき、緑転びを抑制できる。また、シアンインクに対して、オレンジインクの色相角の差がほぼ180度であるので、シアンインクが発生した場合、緑転びすることなく効果的に明度を低下させることができる。 (5)レッドインクがマゼンタインクよりも高彩度かつ低明度であるが、イエローインクの明度が低いので粒状性を劣化させることがなく、及び/又は、マゼンタインクの彩度が高く、及び/又は、オレンジインクの彩度が高いので、擬似輪郭を抑制しつつ、レッドインクを発生させることができるので、肌色において、同色相で明度を低下させることができる。 (6)図11に示すように、比較例2(細実線)は暗部のブルーの色再現性に優れるが、暗部のイエローの色再現性に劣る。そのため、高明度部から低明度部にかけての擬似輪郭が発生しやすくなるという問題が発生する可能性がある。これに対し、実施例2(塗り潰し)はそのような問題は発生しない。 【0131】 〔実施例3〕 以下の配合によるシアンインク(2)を調製した。 <シアンインク組成物(2)> PB15:3 1.5重量% 二酸化チタン 0.5重量% スチレンアクリル酸共重合樹脂 0.8重量% グリセリン 10.0重量% 4-メチル-1,2-ペンタンジオール 8.0重量% トリエタノールアミン 0.9重量% BYKUV3510(ビッグケミー社) 0.1重量% 純水 残量 計 100.0重量% 【0132】 実施例1と同様にして記録を行い、シアンインク組成物(2)のL*値、a*値、b*値を測定した。その結果を表10に示す。 【0133】 【表10】 【0134】 さらに、シアンインク組成物(1)とシアンインク組成物(2)に代えた以外は実施例1と同様にして実施例3のインクセットを得た。 実施例1と実施例3のインクセットのパッチパターンを図12に示す。 図12に示すように、実施例3のインクセットも実施例1のインクセットと同様に優れていた。 【図面の簡単な説明】 【0135】 【図1】マゼンタインクに含まれる固溶体の好適な例の粉末X線回折分析の結果を示すグラフである。 【図2】実施例1のインクセットを用いて記録した記録物のa*値とb*値の関係を示すグラフである。 【図3】実施例1及び比較例1のイエローインクを用いて記録した記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。 【図4】実施例1及び比較例1のマゼンタインクを用いて記録した記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。 【図5】実施例1に係る記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。 【図6】実施例1に係る記録物のDutyと明度の関係を示すグラフである。 【図7】実施例1及び比較例1のインクセットのパッチパターンについて、色再現面積を比較した図である。 【図8】実施例1のオレンジインク組成物と実施例2のオレンジインク組成物に係る記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。 【図9】実施例1のオレンジインク組成物と実施例2のオレンジインク組成物に係る記録物の彩度と明度の関係を示すグラフである。 【図10】実施例1のオレンジインク組成物と実施例2のオレンジインク組成物に係る記録物のDutyと明度の関係を示すグラフである。 【図11】実施例2及び比較例2のインクセットのパッチパターンについて、色再現面積を比較した図である。 【図12】実施例1及び実施例3のインクセットのパッチパターンについて、色再現面積を比較した図である。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも、記録媒体上でのCIELAB色空間において定義される色相角∠H°が80°?110°の範囲であるイエローインク、該色相角∠H°が330°?360°の範囲であるマゼンタインク、及び該色相角∠H°が230?260°の範囲であるシアンインクの3色のインクと、下記インク(A)及び下記インク(B)と、を備え、 前記イエローインクは、少なくともC.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,128,129,138,139,147,150,151,154,155,180,及び185からなる群より選択される一種以上を含み、 前記シアンインクは、少なくともピグメントブルー15:3を含み、 前記マゼンタインクは、少なくともC.I.ピグメントレッド5,7,12,48(Ca),48(Mn),57:1,112,122,123,168,184,202,209,及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群より選択される一種以上を含み、 前記インク(A)は、少なくともC.I.ピグメントレッド17,49:2,112,149,177,178,179,188,254,255,及び264からなる群より選択される一種以上を含み、 前記インク(B)は、少なくともC.I.ピグメントオレンジ5,43,36,62,及び242から選択される一種以上を含む、インクセット。 インク(A):前記色相角∠H°が0°?80°の範囲であるインク インク(B):前記色相角∠H°が0°?80°の範囲であるインク 〔前記インク(A)は前記マゼンタインクよりも彩度の最大値が高く、且つ同一インク付着量において低明度であり、前記インク(B)は前記マゼンタインクよりも彩度の最大値が高く、且つ同一インク付着量において高明度であり、前記イエローインクよりも彩度の最大値が高く、且つ同一インク付着量において低明度である。 前記色相角(∠H°)は、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+180(a^(*)<0の場合)、∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))+360(a^(*)>0かつb^(*)<0の場合)又は∠H°=tan^(-1)(b^(*)/a^(*))(a^(*)>0かつb^(*)≧0の場合)により求められる。a^(*)及びb^(*)は、CIELAB色空間において定義される知覚色度指数を表す。〕 【請求項2】 前記イエローインクは、C.I.ピグメントイエロー74及びC.I.ピグメントイエロー129を顔料として含む、請求項1に記載のインクセット。 【請求項3】 前記シアンインクが白色顔料を含む、請求項1又は2に記載のインクセット。 【請求項4】 前記マゼンタインクがγ型C.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド202の固溶体を顔料として含む、請求項1?3の何れか1項に記載のインクセット。 【請求項5】 前記インク(A)は、C.I.ピグメントレッド177及び/又はC.I.ピグメントレッド179を顔料として含むレッドインクである、請求項1?4の何れか1項に記載のインクセット。 【請求項6】 前記インク(B)は、C.I.ピグメントオレンジ43及び/又はC.I.ピグメントレッド242を顔料として含むオレンジインクである、請求項1?5の何れか1項に記載のインクセット。 【請求項7】 さらに、C.I.ピグメントブルー15:1及び/又はC.I.ピグメントバイオレット23を顔料として含むブルーインクを備える、請求項1?6の何れか1項に記載のインクセット。 【請求項8】 前記各インク中の顔料固形分濃度が3重量%未満である、請求項1?7の何れか1項に記載のインクセット。 【請求項9】 さらに、ブラックインクを備え、該ブラックインクはC.I.ピグメントブラック7を顔料として含む、請求項1?8の何れか1項に記載のインクセット。 【請求項10】 さらに、クリアインクを備える、請求項1?9の何れか1項に記載のインクセット。 【請求項11】 請求項1?10の何れか1項に記載のインクセットを用いて画像を形成する、インクジェット記録方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2014-05-01 |
出願番号 | 特願2007-188016(P2007-188016) |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Y
(C09D)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂井 哲也 |
特許庁審判長 |
新居田 知生 |
特許庁審判官 |
菅野 芳男 山田 靖 |
登録日 | 2013-06-21 |
登録番号 | 特許第5293987号(P5293987) |
発明の名称 | インクセット、インクジェット記録方法 |
代理人 | 宮坂 一彦 |
代理人 | 上柳 雅誉 |
代理人 | 渡辺 和昭 |
代理人 | 上柳 雅誉 |
代理人 | 渡辺 和昭 |
代理人 | 宮坂 一彦 |