• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1287779
審判番号 不服2011-4776  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-03-02 
確定日 2014-05-14 
事件の表示 特願2006-509249「CBH1相同体及び変異体CBH1セルラーゼ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月31日国際公開、WO2005/028636、平成19年11月29日国内公表、特表2007-534294〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年(2004年)3月19日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2003年3月21日、2003年3月27日 米国)とする出願であって、その請求項3に係る発明は、平成22年9月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項3】
配列番号3の配列を持つ単離核酸。」(以下、「本願発明」という。)

第2 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由で文献1として引用された本願優先日前に頒布された刊行物であるNucleic Acids Research,1990,Vol.18, No.18,p.5559(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。下線は、当審で付与した。)。

(ア)「糸状菌であるトリコデルマ・ビリデは、数種のセルロース分解酵素を大量に分泌している。我々はここで、総セルラーゼ量の65%以上を占めているエキソ-セロビオヒドロラーゼ(CBH)をコードする遺伝子の核酸配列を報告する。この遺伝子は、トリコデルマ・リーゼイの報告されたCBHI遺伝子配列に基づいた30merのオリゴヌクレオチドを用いてトリコデルマ・ビリデのゲノムライブラリーから単離された。その核酸配列から推定されるアミノ酸配列は、トリコデルマ・リーゼイCBHI遺伝子のそれと高度に相同である(95%)。」(5559頁左欄1行?9行)

(イ)「

CBHの核酸配列。推定されるアミノ酸配列は、遺伝子のコード領域の下に示されており、成熟酵素のアミノ末端(Gln)からの番号を左側に付した。」(5559頁下段)

そうすると、引用例1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「トリコデルマ・ビリデ由来のセロビオヒドロラーゼ(CBH)をコードする単離核酸。」(以下、「引用発明」という。)

第3 対比
本願発明と引用発明を対比する。
本願明細書の段落【0220】には、「図3はH.オリエンタリスCBH1(配列番号3)のゲノムDNA配列である。」と記載されており、ここで、「H.オリエンタリス」とは、「ヒポクレア・オリエンタリス」のことであり(段落【0013】参照)、「CBH1」とは、「セロビオヒドロラーゼ1」のことであるから(段落【0005】及び【0007】参照)、本願発明の配列番号3は、ヒポクレア・オリエンタリス由来のセロビオヒドロラーゼをコードする核酸配列である。
そうすると、両者は、セロビオヒドロラーゼをコードする単離核酸である点で一致し、下記の点で相違する。
相違点:単離核酸の核酸配列が、本願発明は配列番号3であるのに対し、引用発明では、そのような核酸配列は特定されていない点。

ところで、上記のとおり、本願発明の配列番号3は、ヒポクレア・オリエンタリス由来のセロビオヒドロラーゼの核酸配列であるから、上記相違点は、セロビオヒドロラーゼをコードする単離核酸の由来が、本願発明はヒポクレア・オリエンタリスであるのに対し、引用発明は、トリコデルマ・ビリデである点に起因するといえる。

第4 当審の判断
一般に、有用な活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が取得された場合に、当該遺伝子が由来する生物に近縁の生物から相同な遺伝子を得ることは、本願優先日前の当業者に周知の課題であり、かつ、当該遺伝子の核酸配列に基づき、適当なプライマーあるいはプローブを設計して、当該近縁の生物から調製されたDNAライブラリーから相同な遺伝子をクローニングする手法は、本願優先日前既に周知技術であった。
ところで、トリコデルマ属とは無性胞子時代の呼称であり、同じ菌の有性胞子時代はヒポクレア属と呼ばれるものであることは、本願優先日前における技術常識である(例えば、特開昭53-44338号公報の右下欄2行?5行参照)。
そうしてみると、引用例1に接した当業者は、トリコデルマ属の有性胞子時代であるヒポクレア属に属する種として周知であるヒポクレア・オリエンタリス(例えば、Mycol. Res., Vol.106, No.7, 2002, p.757-767の特にp.759表1、NEW ZEALAND JOURNAL OF BOTANY, 2000, Vol.38, No.4, p. 635-720の特にp.646及び、Curr. Genet., 2002, Vol.41, p.89-98の特にp.91表1参照。)からセロビオヒドロラーゼをコードする遺伝子を取得しようと自然に動機付けられ、引用例1に記載されたトリコデルマ・ビリデのセロビオヒドロラーゼをコードする核酸配列に基づいて、ヒポクレア・オリエンタリスのセロビオヒドロラーゼをコードする配列番号3の単離核酸を得ることは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の配列番号3の配列を持つ単離核酸が、当業者であれば困難なく取得できるものであることは、本願発明のヒポクレア・オリエンタリス由来のセロビオヒドロラーゼの核酸配列である配列番号3と、引用例1に記載のトリコデルマ・ビリデ由来のセロビオヒドロラーゼの核酸配列は、88%相同性であることからもうかがえる。

本願発明の効果について、審判請求人は審判請求の理由において、本願発明の核酸がコードするヒポクレア・オリエンタスのCBHIは、ヒポクレア・ジェコリナのCBHIと比較して、0.3℃高い耐熱温度を有していることを主張するが(表2)、この程度の差は当業者の予想を超える顕著な効果であるとは認められない。

したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-04 
結審通知日 2013-12-10 
審決日 2013-12-24 
出願番号 特願2006-509249(P2006-509249)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 悠美子  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 冨永 みどり
植原 克典
発明の名称 CBH1相同体及び変異体CBH1セルラーゼ  
代理人 山崎 行造  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ