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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1287784
審判番号 不服2011-14544  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-06 
確定日 2014-05-14 
事件の表示 特願2000-355241「WEBページのコンテンツを取得する方法及び印刷システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月24日出願公開、特開2001-229160〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成12年11月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年11月29日、米国)を出願日とする出願であって、平成19年11月21日付けで審査請求がなされ、平成22年7月13日付けで拒絶理由通知(同年7月27日発送)がなされ、同年10月14日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成23年2月14日付けで拒絶査定(同年3月8日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」ことを請求の趣旨として、平成23年7月6日付けで本件審判請求がなされたものである。
そして、平成25年2月4日付けで当審により拒絶理由通知(同年2月5日発送)がなされ、同年4月24日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年8月13日付けで当審により拒絶理由通知(同年8月20日発送)がなされ、同年11月7日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記平成25年11月7日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「ネットワーク対応の印刷システムにおいてネットワークから得たページを、文書作成アルゴリズムにより生成された文書内に貼り付けるのに適した画像ファイルに変換する方法であって、
コンピュータのプロセッサにより、ネットワークから得たページをページ表現用のページ記述言語(PDL)ファイルに変換するステップと、
前記プロセッサにより、前記PDLファイルを直接印刷モジュールに転送することなく、前記PDLファイルを文書内に貼り付けるのに適したページ表現用の画像ファイルに変換するステップと、
前記プロセッサにより、前記画像ファイルを文書内に貼り付けて印刷モジュールに転送するステップと、
を含むことを特徴とする方法。」

3.平成25年8月13日付け拒絶理由の概要

平成25年8月13日付けで通知した拒絶の理由の概要は、

本願請求項1ないし3に係る発明は、本願の出願前に頒布された、特開平11-232267号公報、特開平11-194984号公報、及び、特開平11-105368号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

というものである。

4.先行技術

(1)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

(1-1)引用文献1

上記平成25年8月13日付けの当審による拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-232267号公報(平成11年8月27日出願公開、以下、「引用文献1」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【請求項1】 文書の意味論的マークアップ表現を該文書の物理的マークアップ表現へ変換する方法において、
文書内の全てのスクリーンオブジェクトをそれらの通常の寸法で表示するために必要とされる最小幅に等しい論理的最小幅を計算し、
前記文書の物理的マークアップ表現であって少なくとも前記物理的最小幅と同じ幅を有する物理的マークアップ表現を作成し、
前記物理的マークアップ表現をターゲット幅を含むターゲット寸法へ適合させ、その場合に前記論理的最小幅に対する前記ターゲット寸法の要素の比から派生されるスケーリング係数によって前記物理的マークアップ表現の幅をスケーリングさせる、上記各ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項2】 請求項1において、更に、前記物理的マークアップ表現を新たに作成した文書内に組込むことを特徴とする方法。
【請求項3】 請求項1において、更に、前記物理的マークアップ表現を既存の文書内に組込むことを特徴とする方法。
・・・(中略)・・・
【請求項18】 請求項1において、前記意味論的マークアップ表現がHTMLであることを特徴とする方法。
【請求項19】 請求項1において、前記物理的マークアップ表現がPDFであることを特徴とする方法。」

B 「【0012】上に説明したように、ブラウザによって表示されるHTML文書の究極的な様相は、通常、それが表示されるブラウザウインド(又はフレーム)の寸法に依存する。一般的に、ウエブブラウザは、HTML文書から一連のスクリーンオブジェクト(例えば、単語、イメージ、リスト、フレーム又はテーブル)を抽出し、且つそれらをスクリーン上において逐次的に行毎に配置させる。一つの行が満杯となると、次のオブジェクトはそれに続く行内に配置される。このプロセスは、HTML文書内の全てのスクリーンオブジェクトが配置されるまで継続して行われる。」

C 「【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の点に鑑みなされたものであって、上述した如き従来技術の欠点を解消し、HTMLなどの意味論的マークアップ言語で記載されている複数個のウエブ頁をPDFなどの物理的マークアップ言語で記載されている単一の頁付けした文書内へ統合させることを可能とした技術を提供することを目的とする。本発明の別の目的とするところは、頁付けした文書内における頁付けしていないハイパーテキストを捕獲する技術を提供することである。」

D 「【0027】
【発明の実施の形態】図11を参照すると、クライエントソフトウエアを稼動しているユーザコンピュータ100が、通信リンク102を介して、ウエブサーバ140のようなウエブサーバへ接続している。ウエブサーバは例えば頁144のようなウエブ頁を含むデータ格納部142のようなデータ格納部へリンクされている(静的又は動的)。クライエントソフトウエア(それは、1個又はそれ以上の別のプログラム、及びプラグインモジュール及びオペレーティングシステム拡張を包含することが可能)は、典型的に、モニタ104のようなディスプレイ装置上に情報を表示し且つキーボード(不図示)及びマウス106のようなカーソル位置決め装置からユーザの入力を受取る。コンピュータ100は、通常、マウス106のユーザによる移動がディスプレイ104上に表示されているカーソルグラフィックの対応した移動を発生させるようにプログラムされている。」

E 「【0060】次に、LayoutRegionデータ構造を作成する。LayoutRegionデータ構造は、特定のPDF文書を介しての固定幅ストライプを表わす。該LayoutRegionデータ構造は、更に、ポインタcurYを有しており、それはレイアウトが行われるべき文書内の現在の垂直位置を特定する。LayoutRegionデータ構造は、更に、それが参照するPDF頁の幅及び高さを表わす頁寸法情報を有している。LayoutRegionデータ構造は、更に、所謂「フローティングイメージ」のリストを有しており、該フローティングイメージはLayoutRegionの左側又は右側の端部における固定した垂直位置を占有すべく画定され、且つその周りに他のスクリーンオブジェクトがフロー即ち流れる。図16はテキスト840の幾つかのラインをレイアウトし且つ二つの相次ぐPDF頁860内に四つのイメージ850を配置するために使用されているレイアウト領域830を模式的に示している。」

そして、上記Aの記載からすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「文書の意味論的マークアップ表現を該文書の物理的マークアップ表現へ変換する方法において、
文書内の全てのスクリーンオブジェクトから、当該文書の物理的マークアップ表現を作成するステップと、
前記物理的マークアップ表現をターゲット寸法へ適合させ、その場合に前記物理的マークアップ表現をスケーリングさせるステップとを有し、
更に、前記物理的マークアップ表現を文書内に組込むステップを有することを特徴とする方法。」

(1-2)引用文献2

上記平成25年8月13日付けの当審による拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-194984号公報(平成11年7月21日出願公開、以下、「引用文献2」という。)には、関連する図面(特に、図5)とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

F 「【要約】
【課題】パーソナルコンピュータを操作しなくても、インターネット上の所望の情報を印刷された状態で無駄なく簡単に得る。
【解決手段】インターネットとLANを介して接続されたプリンタは、予め設定された、取り込むべき電子文書があるホームページから、予め設定された周期で文書をダウンロードする(ステップS507)。この文書をHTMLからPDLに変換し(ステップS508)、ラスタライズして(ステップS509)、ハードディスクに蓄積する(ステップS511)。このように蓄積された文書から所望の文書を指定して、印刷出力する。」

G 「【0023】ステップS507では設定されたURLからHTML文書をネットワーク104経由でダウンロードし、RAM205に格納する。ROM204にはHTML文書をPostScriptファイルに変換するプログラムが内蔵されており(この詳細はウェブブラウザおよびプリンタドライバという既存の技術で実現可能なものであり、ここでは説明しない)、このプログラムを実行することでRAM205上でHTML文書をPostScriptファイルに変換する(ステップS508)。そして、ステップS509でそのPostScriptファイルをラスタライズする。そして、ステップS510で、ステップS507で電子文書ダウンロードした元のURLと同じURLの古い文書が蓄積されていれば消去する。ステップS511で、新しい電子文書のラスタ画像をハードディスク207に蓄積する。この時に、情報を引き出した日時またはURLを画像データの片隅に重ねてもよい。・・・(後略)」

(1-3)引用文献3

上記平成25年8月13日付けの当審による拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平11-105368号公報(平成11年4月20日出願公開、以下、「引用文献3」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

H 「【要約】
【課題】 シート上に印刷装置によって印刷すべき1つ又はそれ以上の頁の頁記述言語記述をレンダリングする方法及び装置を提供する。
【解決手段】 本発明装置はアッセンブラーと、インタプリタと、レンダリングエンジンとを包含している。該アッセンブラーはレイアウト情報と頁識別情報とを包含するジョブチケットを入力として受取る。該アッセンブラーは該シート上に印刷装置によって印刷すべきオブジェクトの順番付けリストを発生する。該インタプリタは頁記述言語入力及び順番付けリストを受取り且つ順番付けリスト内の各オブジェクトに対して表示リストオブジェクトを発生する。該表示リストオブジェクトは表示リストメモリ内に格納することが可能である。該レンダリングエンジンは表示リストオブジェクトを受取り且つオブジェクトをレンダリングする。レンダリングされたオブジェクトはプリントエンジンによってシート上に印刷することが可能である。」

J 「【請求項1】 印刷装置によって印刷されるべき表面に対し画像データを組付け且つレンダリングさせる方法において、
媒体用紙の表面上に印刷されるべき複数個の頁を画定する1つ又はそれ以上の頁記述ファイルを受取り、
前記表面上における前記頁のレイアウトを画定するジョブチケットを受取り、
前記ジョブチケットから前記表面に対するオブジェクトの順番付けリストを構築し、
前記頁記述ファイルからのデータを解釈して表示データを発生し且つ前記表示データをレイヤー順にレンダリングさせてピクセルマップを形成し、
前記ピクセルマップを前記媒体用紙の表面上に印刷する、上記各ステップを有することを特徴とする方法。」

K 「【0005】頁記述言語入力に応答して出力を発生する印刷装置は広く使用されている。頁記述言語(PDL)は出力装置によって表示すべきオブジェクトを記述するためのハイレベル言語である。印刷装置はPDLファイルの形態で頁記述データを受取ることが可能である。完成したシート即ち用紙を作成するためには、印刷装置がPDLファイル内に含まれているデータを解釈し、該データ内のオブジェクトをビットマップへレンダリングし、且つ該用紙に対する全てのオブジェクトをレンダリングした後に、該用紙をプリント即ち印刷する。」

(2)参考文献に記載されている技術的事項

上記平成25年2月4日付けの当審による拒絶理由通知において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平10-254912号公報(平成10年9月25日出願公開、以下、「参考文献」という。)には、関連する図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

L 「【請求項1】 少なくとも1つのハイパー・メディア・ドキュメントからデータをフォーマットする方法であって、
少なくとも1つのハイパー・メディア・ドキュメントにアクセスするアクセス工程と、
前記ハイパー・メディア・ドキュメントからデータを、前記ハイパー・メディア・ドキュメントの構造に基づいて、抽出データ・ツリーへと取り出す取出し工程と、
この抽出データ・ツリーを線形ドキュメントに平坦化するための平坦化工程と、
その線形ドキュメントをフォーマット化されたドキュメントにフォーマットするためのフォーマット工程ととを具備することを特徴とするデータフォーマット方法。
【請求項2】 そのフォーマットされたドキュメントをプリントする工程をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のデータフォーマット方法。」

M 「【0070】データが線形ドキュメントの形に平坦化された後、そのデータはステップS802で、個人用ニュース・プロファイル19で示されるテンプレートに従ってフォーマットされる。このテンプレートの定義は、予め定義されたテンプレート、またはカスタムのテンプレート、のどちらの場合もすでに論じられている。最後にフォーマットされて完全に個人化された新聞は出力インターフェース40に送られる。このインターフェースは、プリンタ7に接続するプリンタインターフェース10、ディスプレイ2へ接続するディスプレイインターフェース11、またはモデム/ファックス・インターフェース6でも可能である。」

5.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)上記Cの「本発明は・・・HTMLなどの意味論的マークアップ言語で記載されている複数個のウエブ頁をPDFなどの物理的マークアップ言語で記載されている単一の頁付けした文書内へ統合させることを可能とした技術を提供することを目的とする」、上記Dの「クライエントソフトウエアを稼動しているユーザコンピュータ100が、通信リンク102を介して、ウエブサーバ140のようなウエブサーバへ接続している」との記載からすると、引用発明が、ネットワーク対応のシステムにおける発明であることは自明の事項である。

(2)引用発明の「文書の意味論的マークアップ表現」とは、上記Aの「前記意味論的マークアップ表現がHTMLである」との記載、上記Cの「HTMLなどの意味論的マークアップ言語で記載されている複数個のウエブ頁」との記載、上記Dの「クライエントソフトウエアを稼動しているユーザコンピュータ100が、通信リンク102を介して、ウエブサーバ140のようなウエブサーバへ接続している」、「ウエブサーバは例えば頁144のようなウエブ頁を含むデータ格納部142のようなデータ格納部へリンクされている(静的又は動的)」との記載からすると、本願発明の「ネットワークから得たページ」に相当する。

(3)引用発明の「(文書の)物理的マークアップ表現」とは、上記Aの「前記物理的マークアップ表現がPDFである」との記載、及び、本願発明の詳細な説明の段落【0023】の「図示されたプロダクション・エージェント26は第一の変換機能28を利用してWebページに関連付けられたHTMLデータをWebページ表現用のページ記述言語(PDL)ファイルに変換することができる。例えば、変換機能28はWebページをPDLファイルに変換/転換するためにAdobe SystemsのPostscript(登録商標)を利用してもよい。通常の知識を有する者はまた、他の種類のページ記述言語を用いてもWebページに関連付けられたHTMLデータをPDLファイルに変換できることを理解できよう。このような種類の言語の例としてEnvoy、PDFおよびPCLがある。本発明と合わせて利用するのに適したPDFフォーマット言語の例としてAdobe SystemsのAdobe Acrobat4.0がある」との記載からすると、本願発明の「ページ記述言語(PDL)ファイル」に相当するといえる。

(4)引用発明は、文書の意味論的マークアップ表現を、文書内に組み込む物理的マークアップ表現に変換するものであるが、当該変換の際に、何らかの文書作成アルゴリズムによって変換するものであることは、当業者にとって自明の事項である。

(5)引用発明の「前記物理的マークアップ表現をターゲット寸法へ適合させ、その場合に前記物理的マークアップ表現をスケーリングさせる」、「更に、前記物理的マークアップ表現を文書内に組込む」とは、作成した物理的マークアップ表現を文書内に組込むのに適したページ表現用のファイルに変換していることに他ならない。

(6)上記(1)ないし(5)の検討内容を踏まえると、引用発明と本願発明とは、“ネットワーク対応のシステムにおいてネットワークから得たページを、文書作成アルゴリズムにより生成された文書内に貼り付けるのに適したページ表現用のファイルに変換する方法”である点で共通するといえる。

(7)引用発明においても、当該方法を実施する主体が、コンピュータのプロセッサであることは、当業者にとって自明の事項である。

(8)引用発明の「文書内の全てのスクリーンオブジェクト」とは、上記Bに「一般的に、ウエブブラウザは、HTML文書から一連のスクリーンオブジェクト(例えば、単語、イメージ、リスト、フレーム又はテーブル)を抽出し、且つそれらをスクリーン上において逐次的に行毎に配置させる」と記載されるように、ウエブブラウザから得たHTML文書を構成する全ての要素(例えば、単語、イメージ、リスト、フレーム又はテーブル)を意味している。

(9)上記(2)、(3)、(7)、(8)等の検討内容を踏まえると、引用発明の「文書内の全てのスクリーンオブジェクトから、当該文書の物理的マークアップ表現を作成するステップ」は、本願発明の「コンピュータのプロセッサにより、ネットワークから得たページをページ表現用のページ記述言語(PDL)ファイルに変換するステップ」に相当するといえる。

(10)上記(3)、(5)、(7)等の検討内容を踏まえると、引用発明の「前記物理的マークアップ表現をターゲット寸法へ適合させ、その場合に前記物理的マークアップ表現をスケーリングさせるステップ」と、本願発明の「前記プロセッサにより、前記PDLファイルを直接印刷モジュールに転送することなく、前記PDLファイルを文書内に貼り付けるのに適したページ表現用の画像ファイルに変換するステップ」とは、“前記プロセッサにより、前記PDLファイルを文書内に貼り付けるのに適したページ表現用のファイルに変換するステップ”である点で共通するといえる。

(11)上記(5)、(7)等の検討内容を踏まえると、引用発明の「更に、前記物理的マークアップ表現を文書内に組込むステップ」と、本願発明の「前記プロセッサにより、前記画像ファイルを文書内に貼り付けて印刷モジュールに転送するステップ」とは、“前記プロセッサにより、前記文書内に貼り付けるのに適したページ表現用のファイルを文書内に貼り付けるステップ”である点で共通するといえる。

以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

「ネットワーク対応のシステムにおいてネットワークから得たページを、文書作成アルゴリズムにより生成された文書内に貼り付けるのに適したページ表現用のファイルに変換する方法であって、
コンピュータのプロセッサにより、ネットワークから得たページをページ表現用のページ記述言語(PDL)ファイルに変換するステップと、
前記プロセッサにより、前記PDLファイルを文書内に貼り付けるのに適したページ表現用のファイルに変換するステップと、
前記プロセッサにより、前記文書内に貼り付けるのに適したページ表現用のファイルを文書内に貼り付けるステップと、
を含むことを特徴とする方法。」

(相違点1)

本願発明が、「ネットワーク対応の印刷システム」における発明であるのに対して、引用発明は、ネットワーク対応のシステムにおける発明であると認められるが、印刷することについて記載されていない点。

(相違点2)

文書内に貼り付けるのに適したページ表現用のファイルに関して、本願発明が「ページ表現用の画像ファイル」であるのに対して、引用発明は、物理的マークアップ表現をスケーリングさせたものである点。

(相違点3)

本願発明が、「PDLファイルを直接印刷モジュールに転送する」ものではないのに対して、引用発明は、印刷することについて記載されていないため、文書の物理的マークアップ表現を直接印刷するか不明である点。

(相違点4)

本願発明が、「前記プロセッサにより、前記画像ファイルを文書内に貼り付けて印刷モジュールに転送するステップ」を有しているのに対して、引用発明は、物理的マークアップ表現を組込んだ文書を印刷することについて明記されていない点。

6.当審の判断

上記相違点1ないし相違点4について検討する。

(1)相違点1、相違点3、及び相違点4について

作成した文書を印刷することは、当該技術分野のみならず、広く一般的に行われている事項にすぎず、また、印刷する際に、印刷モジュールに送って印刷することについても、当該技術分野において、慣用的に行われている事項にすぎない(必要であれば、上記参考文献の上記L及びM等参照)。
そうすると、引用発明においても、作成した文書を印刷するように構成すること、すなわち、上記相違点1及び相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

また、引用発明においても、通常、最終成果物である物理的マークアップ表現が組み込まれた文書を印刷するものであって、中間的な生成物である「スクリーンオブジェクトから作成した物理的マークアップ表現」を印刷するものではないことは、当業者にとって自明の事項であるが、何を印刷するかについては、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
してみると、引用発明においても、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、引用文献3(上記H、J、及びK参照)に記載されるように、頁記述ファイル内のオブジェクトをビットマップへレンダリングして印刷する技術についても周知技術であり、画像ファイルが貼り付けられた文書を印刷モジュールに転送して印刷することについても、格別な技術的困難性は見いだせない。

よって、上記相違点1、相違点3、及び相違点4は格別のものではない。

(2)相違点2について

当該技術分野において、データのサイズをスケーリングさせる際に、イメージデータに変換してからスケーリングすることは、慣用的に行われている技術に過ぎない。
そして、引用文献2(上記F及びG参照)に記載されるように、HTML文書から、PDLファイルに変換し、その後、画像データに変換する技術は、周知技術である。
一方、上記引用文献1の上記Eにおいても、「図16はテキスト840の幾つかのラインをレイアウトし且つ二つの相次ぐPDF頁860内に四つのイメージ850を配置するために使用されているレイアウト領域830を模式的に示している」と記載されるように、文書内にイメージデータを組込む態様も示唆されている。
してみると、引用発明においても、物理的マークアップ表現をスケーリングさせる際に、イメージデータに変換してスケーリングするように構成すること、そして当該スケーリングしたイメージデータを文書内に組込むように構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、上記相違点2は格別のものではない。

(3)小括

上記で検討したごとく、上記相違点1ないし相違点4は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知慣用技術等の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知慣用技術等に基づいて、容易に発明できたものである。

7.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-03 
結審通知日 2013-12-10 
審決日 2013-12-24 
出願番号 特願2000-355241(P2000-355241)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今村 剛  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 田中 秀人
仲間 晃
発明の名称 WEBページのコンテンツを取得する方法及び印刷システム  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  

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