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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1287788
審判番号 不服2012-5383  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-03-22 
確定日 2014-05-14 
事件の表示 特願2009-516731「低デューティサイクルネットワークコントローラ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月27日国際公開、WO2007/149993、平成21年11月26日国内公表、特表2009-542123〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成19年6月21日(パリ条約による優先権主張 2006年6月21日(US)アメリカ合衆国、2007年6月20日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成23年11月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成24年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるたものである。
そして、平成25年4月4日付けで、当審により拒絶理由が通知された。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年12月26日付けの翻訳文提出書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「少なくとも1つの低デューティサイクル(LDC)コントローラを動作させて、通信ネットワーク上で動作する複数の低デューティサイクルターミナルと前記少なくとも1つの低デューティサイクルコントローラとの間の同期を、前記ネットワークのオーバーヘッドチャネルのみを用いて、前記ネットワークのプロトコル及びタイミングに準拠して維持することを含み、
前記複数の低デューティサイクルターミナルと前記少なくとも1つの低
デューティサイクルコントローラとの間の前記同期は、前記通信ネットワークの前記プロトコル及びタイミングとは別個に維持され、前記少なくとも1つの低デューティサイクルコントローラが、前記複数の低デューティサイクルターミナルのパワーダウン及びウェイクアップを、前記通信ネットワークの前記プロトコル及びタイミングで許容できるよりも長い期間、スケジュールすることを可能にする、方法。」

3.当審の拒絶理由
当審により平成25年4月4日付けで通知された拒絶理由の概要は、本願発明は、その優先日前日本国内において頒布された
特開2000-78305号公報(以下、「引用例1」という。)及び
特開平10-94053号公報(以下、「引用例2」という。)
に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

4.引用例
4-1.引用例1
引用例1には、図面とともに以下の記載がなされている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 センタと、センタに接続された公衆基地局と、機器に接続されたPHS端末機と、からなり、前記センタと前記各PHS端末機との間で通信を行う通信システムであって、
前記PHS端末機は、所定の時刻に立ち上がり、
前記センタは、前記PHS端末機が立ち上がる時刻に呼び出しを行うことを特徴とする通信システム。」

(2)「【0002】
【従来の技術】従来、PHSコードレス電話機を利用する自動検針システムにおいては、直接自動検針用PHS端末機を公衆事業者に契約し、ガスメータに取り付けている。センタから呼び出す場合には、公衆事業者の設置する公衆基地局経由で呼び出し、PHS端末機は常時待ち受けしており、着信動作を行い通信する。また、メータから発呼する場合には、PHS端末機が
メータからの発呼信号を受けて起動し、センタへ発呼する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のシステムでは、双方向通信を行うためには、PHS端末機が定期的に待ち受け動作を行う必要があ
る。図6は、従来のPHSコードレス電話機を利用するシステムのPHS端末機の受信動作を示す。図6に示すように、公衆事業者に対して通信が行えるようにPHS端末機を登録するために、通常1.2秒毎に立ち上がり受信動作を行う必要がある。このようにすると、電力を多く浪費する。低消費電力化のためには、待ち受け時間を伸ばすこともできるが、公衆事業者からの呼出信号に対してすぐに着信できなくなるため、公衆事業者の認定をとることができない。また、PHS端末機が発呼のみにすると、センタからの遮断や開栓などを行うことができず、サービス性が低下する。」

(3)「【0010】
【発明の実施の形態】以下に、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る通信システム1の概略構成図である。図1に示すように、この通信システム1は、センタ2、電話回線
5、公衆基地局6、複数のPHS端末機8-1、8-2、8-3、…、メータ9-1、9-2、9-3、…等から構成される。4-1、4-2、4-
3、…は需要家を示す。
【0011】センタ2と公衆基地局6との間は電話回線5を介して接続さ
れ、PHS端末機8-1、8-2、…に夫々メータ9-1、9-2、…が接続される。公衆基地局6とPHS端末機8-1、8-2、…とは互いに無線で通信を行う。メータ9-1、9-2、…は、ガスメータであるが、電気
メータや水道メータでもよい。
【0012】本実施の形態では、各PHS端末機8-1、8-2、…に夫々時計を内蔵し、各PHS端末機8-1、8-2、…は、通常はスリープ状態で、所定の時刻にだけ起動させる。センタ2からの呼び出し動作とPHS端末機8の受信動作を内蔵時計で同期させ、センタ2とPHS端末機8は最低1ヶ月に1度検針のための通信を行うため、その時に時刻合わせを行う。
【0013】このような本実施の形態の指定された時間にセンタ2から呼び出し動作とPHS端末機8の受信動作を行うシステムの通信手順を詳しく説明する。図2は、指定された時間にセンタ2から呼び出し動作とPHS端末機8の受信動作のタイミングを示す。図2に示すように、例えば、PHS端末機8の待ち受け時間を1時間毎で指定する場合、PHS端末機8は、5:00:00、6:00:00、7:00:00と1時間毎に待ち受け動作を行う(23,25,27)。センタ2からの呼出動作は、月に1回程度検針のための通信を行う。例えば、6:00:00に発呼して検針等の指令動作および時刻合わせを行う(21)。6:00:00のPHS端末機8の受信動作とセンタ2の呼出動作が同期しており、通信を行い、時計の時刻合わせを行う(21、25)。
【0014】このように本実施の形態によると、指定された時刻にセンタ2から呼び出し動作とPHS端末機8の受信動作を行うことにより、PHS端末機8は決まった時間だけ起動させるので、消費電力を低減でき、それに
よって電池容量が少なくて済むため、コストが抑えられる。また、PHS端末機8発呼のみの場合に比べて、双方向の通信が可能になるので、サービス性が向上する。」

したがって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

センタと、センタに接続された公衆基地局と、機器に接続された複数のPHS端末機と、からなり、前記センタと前記各PHS端末機との間で通信を行う通信システムにおいて、
従来のシステムでは、公衆事業者に対して通信が行えるようにPHS端末機を登録するために、通常1.2秒毎に立ち上がり受信動作を行う必要があるのに対して、
センタからの呼び出し動作とPHS端末機の受信動作を内蔵時計で同期させ、指定された時刻にセンタから呼び出し動作とPHS端末機の受信動作を行うことにより、例えば、PHS端末機の待ち受け時間を1時間毎で指定する場合、PHS端末機は、5:00:00、6:00:00、7:00:00と1時間毎に待ち受け動作を行うようにして、PHS端末機を決まった時間だけ起動させる
方法。

4-2.引用例2
引用例2には、図面とともに以下の記載がなされている。

(4)「【0017】
【課題を解決するための手段】第1の本発明は、複数のセルのそれぞれに基地局が設けられると共に、各セルに複数の移動局が存在し、該基地局と移動局が、スペクトラム拡散通信を行う符号分割多元接続方式を用いて通信を行う移動通信システムにおいて、該基地局から各移動局に対して、制御チャネルを利用して、設定した周期で着信情報を通知し、且つ、該着信情報の周期情報も通知する構成にした。
【0018】第2の本発明は、上記の着信情報と着信情報の周期情報を、連続して通知する様にした。第3の本発明は、移動局が、上記の周期情報に示された周期毎に受信系の電源を投入し、上記の周期情報と着信情報を検出する様にした。
……
【0022】つまり、移動局にとって、待ち受け時に必要な情報は着信情報である(その他、位置情報など様々な制御情報があるが本発明では言及しない)。基地局では移動局に情報を伝えるための制御チャネル(CCH) を有しており、制御チャネルで着信情報を周期的に伝送する。
【0023】移動局はその周期を知り、着信情報が伝送される時間にのみ、受信機を動作させると云う間欠受信をすることによって低消費電力化が可能となり、且つ、1系統の受信機(スペクトラム拡散方式の受信機)のみで構成が可能となる。
【0024】なお、受信が間欠的に行われるので、送信側もそのタイミングに種々の制御情報を送る様にする。」

(5)「【0040】
【発明の効果】上記で詳細説明した様に、制御チャネルで着信情報が周期的に送信されることを利用することによって、移動局を間欠動作させることが可能となる。
【0041】これにより、消費電力の削減が図れると云う効果がある。」

したがって、引用例2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

基地局から各移動局に対して、制御チャネルを利用して、周期情報を通知し、移動局が、上記の周期情報に示された周期毎に受信系の電源を投入し、受信が間欠的に行われるので、送信側もそのタイミングに種々の制御情報を送るようにする方法。

5.対比
引用発明1の「センタと、センタに接続された公衆基地局と、機器に接続された複数のPHS端末機と、からなり、前記センタと前記各PHS端末機との間で通信を行う通信システム」は、通信ネットワークといえる。
引用発明1は「従来のシステムでは、公衆事業者に対して通信が行えるようにPHS端末機を登録するために、通常1.2秒毎に立ち上がり受信動作を行う必要があるのに対して、……PHS端末機は、5:00:00、6:00:00、7:00:00と1時間毎に待ち受け動作を行うようにして、PHS端末機を決まった時間だけ起動させる」とするので、通信ネットワークである通信システムで許容できる、1.2秒よりも長い、例えば1時間毎に待ち受け動作を行うようにして、PHS端末機を決まった時間だけ起動させるので、その「センタ」および「PHS端末機」はそれぞれ、本願発明の「低デューティサイクル(LDC)コントローラ」及び「低デューティサイクルターミナル」に対応し、引用発明1も本願発明と同様な、少なくとも1つの低デューティサイクル(LDC)コントローラを動作させて、通信ネットワーク上で動作する複数の低デューティサイクルターミナルと前記少なくとも1つの低デューティサイクルコントローラとの間の同期を維持するものであって、複数の低デューティサイクルターミナルと少なくとも1つの低
デューティサイクルコントローラとの間の同期は、通信ネットワークのプロトコル及びタイミングとは別個に維持され、複数の低デューティサイクル
ターミナルのパワーダウン及びウェイクアップを、通信ネットワークのプロトコル及びタイミングで許容できるよりも長い期間、スケジュールすることを可能にするものといえる。

したがって、本願発明と引用発明1とを対比すると、次の点で一致する。

少なくとも1つの低デューティサイクル(LDC)コントローラを動作させて、通信ネットワーク上で動作する複数の低デューティサイクルターミナルと前記少なくとも1つの低デューティサイクルコントローラとの間の同期を維持することを含み、
前記複数の低デューティサイクルターミナルと前記少なくとも1つの低
デューティサイクルコントローラとの間の前記同期は、前記通信ネットワークの前記プロトコル及びタイミングとは別個に維持され、前記複数の低
デューティサイクルターミナルのパワーダウン及びウェイクアップを、前記通信ネットワークの前記プロトコル及びタイミングで許容できるよりも長い期間、スケジュールすることを可能にする、方法。

また次の点で相違する。

相違点
本願発明は、同期に関して、「前記ネットワークのオーバーヘッドチャネルのみを用いて、前記ネットワークのプロトコル及びタイミングに準拠し
て」維持するもので、それにより「低デューティサイクルコントローラ」が「複数の低デューティサイクルターミナル」をスケジュールすることを可能にするものであるのに対して、引用発明1では、「指定された時刻にセンタから呼び出し動作とPHS端末機の受信動作を行うことにより、……PHS端末機を決まった時間だけ起動させる」とあるように、スケジュールすることを可能にするものであるが、どのようにして時刻を指定するのか明らかでない点。

6.相違点に対する判断
引用発明2は、基地局から各移動局に対して、制御チャネルを利用して、周期情報を通知し、移動局が、上記の周期情報に示された周期毎に受信系の電源を投入し、受信が間欠的に行われるので、送信側もそのタイミングに種々の制御情報を送るようにするものであり、基地局から各移動局に対して、制御チャネルを利用して周期情報を通知することで、同期をとることが示されている。
引用発明1において、時刻の指定を、引用発明2のように制御チャネルを利用して行うことに格別な点はなく、引用発明1の通信システムに当然備
わっている制御チャネルを利用して送信するので、時刻の指定のための情報は、通信ネットワークといえる通信システムのプロトコル及びタイミングに適合して送信可能となる。
そして、制御チャネルはオーバーヘッドチャネルということもできるか
ら、引用発明1において、低デューティサイクルコントローラといえるセンタから、オーバーヘッドチャネルといえる制御チャネルのみを用いて時刻の指定のための情報を送信することで、同期を「少なくとも1つの低デュー
ティサイクルコントローラ」が「ネットワークのオーバーヘッドチャネルのみを用いて、前記ネットワークのプロトコル及びタイミングに準拠して維持すること」として相違点を本願発明と同様にすることは、当業者にとって、困難なことではない。
なお、請求人は、平成25年8月6日付けの意見書において、
「(i.)引用文献1および5は、たとえ審査官殿によって示唆された方法
で、組み合わされたとしても、特許請求されている本願発明に想到することはできません」、
「(ii.)審査官殿によって示唆された方法におけるCDMAシステムを備
えたPHSシステムの組み合わせは、実行不可能であり、実用的ではありません」、及び
「(iii.)審査官殿は、当業者が引用文献を組み合わせようとする動機も論理付けも提供していません」
とする意見を述べている。
通信チャネルが、制御情報を通信する、オーバーヘッドチャネルともいう制御チャネルと、通話等のデータを通信するトラフィックチャネルに大別されることは、多くの通信システムに共通することで、PHSにおいても同様である。
引用発明1において、そのPHSの制御チャネルを利用して、引用発明2の制御チャネルのような情報を送信するのであるから、その送信はPHS
ネットワークのプロトコルおよびタイミングに対応している。
PHSに制御情報を通信するためのチャネルがないというのであればともかく、そのためのチャネルが存在するのであるから、請求人の上記(i.)及び(ii.)のような主張は当を得ない。
また、上記相違点で示したとおり、引用発明1において、どのようにして時刻を指定するのか明らかでないので、同じように間欠的に動作を行うものに基づいて、そのような点を明らかにすることは、当業者であれば、当然になすべきことであるから、請求人の上記(iii.)の主張も採用することはできない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-28 
結審通知日 2013-12-03 
審決日 2013-12-25 
出願番号 特願2009-516731(P2009-516731)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 聡史  
特許庁審判長 加藤 恵一
特許庁審判官 水野 恵雄
近藤 聡
発明の名称 低デューティサイクルネットワークコントローラ  
代理人 村松 貞男  
代理人 竹内 将訓  
代理人 高倉 成男  
代理人 福原 淑弘  
代理人 白根 俊郎  
代理人 河野 直樹  
代理人 佐藤 立志  
代理人 岡田 貴志  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 砂川 克  
代理人 堀内 美保子  
代理人 野河 信久  
代理人 中村 誠  

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