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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1287825 |
審判番号 | 不服2013-4347 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-03-06 |
確定日 | 2014-05-15 |
事件の表示 | 特願2009-170177「光90°ハイブリット干渉計」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日出願公開、特開2011- 27773〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
理 由 1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成21年7月21日の出願であって、平成23年4月19日付けで拒絶理由が通知され、同年6月14日付けで手続補正がなされ、同年12月20日付けで拒絶理由が通知され、平成24年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年3月6日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、その後、当審において同年6月4日付けで審尋がなされ、同年8月6日付けで回答書が提出されたものである。 そして、本願の請求項に係る発明は、平成25年3月6日付け手続補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項によって特定されるものと認められる。 「信号光が入力され、該信号光を分岐して第1及び第2の信号光を出力する第1の光カプラと、 ローカル光が入力され、該ローカル光を分岐して第1及び第2のローカル光を出力する第2の光カプラと、 前記第1の光カプラから出力された前記第1の信号光と、前記第2の光カプラから出力された前記第1のローカル光とを結合して出力する第3の光カプラと、 前記第1の光カプラから出力された前記第2の信号光と、前記第2の光カプラから出力された前記第2のローカル光とを結合して出力する第4のカプラとを有し、 前記第1及び第2の信号光の導波路長と前記第1及び第2のローカル光の導波路長との少なくともいずれか1つが他の導波路長よりもπ/2長いか、もしくは短く、前記第1の光カプラから前記第4の光カプラまでの導波路と、前記第2の光カプラから前記第3の光カプラまでの導波路とが交差する光90°ハイブリット干渉計において、 前記第1の光カプラから前記第3の光カプラまでの導波路と、前記第2の光カプラから前記第4の光カプラまでの導波路のそれぞれに、前記第1の光カプラから前記第4の光カプラまでの導波路と前記第2の光カプラから前記第3の光カプラまでの導波路とが交差することによって生じる損失を補償する損失補償手段を有し、 前記損失補償手段は、前記第1の光カプラから前記第3の光カプラまでの導波路と、前記第2の光カプラから前記第4の光カプラまでの導波路のそれぞれに対して、前記第1の光カプラから前記第4の光カプラまでの導波路と前記第2の光カプラから前記第3の光カプラまでの導波路との交差角度と等しい角度で交差する導波路であることを特徴とする光90°ハイブリット干渉計。」(以下「本願発明」という。) 2 引用刊行物の記載事項 (1)引用刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物であるIEEE International Conference on Indium Phosphide & Related Materials 2009(IPRM '09) TuB2.2 p.167-170(以下「引用刊行物1」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている(括弧書きで和訳を付した。)。 ア 「Abstract-A monolithically integrated InP 90°hybrid incorporating waveguide balanced photodiodes is presented.」(167頁左欄1、2行) (概要-導波路とバランスの取れたフォトダイオードを結合したモノリシックに集積されたInP90°ハイブリッドが示されている。) イ 「II. DESIGN AND FABRICATION For laboratory purposes, a 90°optical hybrid has traditionally been constructed using two 3dB-beam splitters and two beam combiners and one 90°phase shifter. Optical hybrids can be implemented using free-space, all-fiber or planar waveguide technologies. In an integrated-optical solution, multimode interference couplers(2x2 MMI)can be utilized as the essential element. Optical waveguides connect the MMIs. to the optical input facet and to the photodiodes. The required 90°phase shift is adjusted by one of the two phase shifting elements shown in Fig.2a.」(167頁左欄下から4行?同頁右欄7行) (II.デザインと製造 実験の目的で、従来から、二つの3dBビームスプリッターと二つのビームコンバイナーと一つの90°位相シフターを用いて90°光学ハイブリッドが組み立てられている。光学ハイブリッドは、自由空間、全ファイバーあるいは平板導波路技術を用いることにより実現される。集積光学法においては、マルチモード干渉カプラー(2×2MMI)が本質的素子として利用され得る。光導波路はMMIを光学入力面とフォトダイオードに結合する。必要な90°位相シフトは図2aに示される二つの位相シフト素子の一つにより調節される。) ウ 「Fig.2:Arrangements of the investigated 90°-Hybrid OEIC with four 2x2 MMI(a)….」(167頁右欄下から9行?下から8行) (図2:四つの2×2MMI(a)を備える研究された90°ハイブリッドOEICの配置…。) エ 上記ア?ウに照らして図2a)をみると、図2a)に示された「90°ハイブリッドOEIC」は、 (ア)四つの「2×2MMI(2×2マルチモード干渉カプラー)」を備えること、 (イ)図2左上の「2×2MMI」(以下「第1の2×2MMI」という。)には、入力側に「E_(SIG)」(信号光)が入力する一本の光導波路が結合され、また、出力側に二本の光導波路が結合されており、前記二本の光導波路のうちの一本の光導波路は「第1の位相シフターΦ」(図2中央上のもの)を通って図2右上の「2×2MMI」(以下「第3の2×2MMI」という。)に結合されており、前記二本の光導波路のうちの他の一本の光導波路は図2右下の「2×2MMI」(以下「第4の2×2MMI」という。)に結合されていること、 (ウ)図2左下の「2×2MMI」(以下「第2の2×2MMI」という。)には、入力側に「E_(LO)」(ローカル光)が入力する一本の光導波路が結合され、また、出力側に二本の光導波路が結合されており、前記二本の光導波路のうちの一本の光導波路は前記「第3の2×2MMI」に結合されており、前記二本の光導波路のうちの他の一本の光導波路は「第2の位相シフターΦ」(図2中央下のもの)を通って前記「第4の2×2MMI」に結合されていること、 (エ)「(第1の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第4の2×2MMIに結合されている)他の一本の光導波路」と、「(第2の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第3の2×2MMIに結合されている)一本の光導波路」とは、交差していること、 (オ)「第3の2×2MMI」及び「第4の2×2MMI」の出力側には、それぞれ、二本の光導波路が結合されていること、 が見て取れる。 オ 上記イに照らして、図2に示された「第1の位相シフターΦ」(図2中央上のもの)及び「第2の位相シフターΦ」(図2中央下のもの)は、90°位相シフトするものであるといえる。 よって、上記の記載を総合すると、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「四つの2×2MMI(2×2マルチモード干渉カプラー)を備える90°ハイブリッドOEICであって、 第1の2×2MMIには、入力側にE_(SIG)(信号光)が入力する一本の光導波路が結合され、また、出力側に二本の光導波路が結合されており、前記二本の光導波路のうちの一本の光導波路は第1の位相シフターΦを通って第3の2×2MMIに結合されており、前記二本の光導波路のうちの他の一本の光導波路は第4の2×2MMIに結合されており、 第2の2×2MMIには、入力側にE_(LO)(ローカル光)が入力する一本の光導波路が結合され、また、出力側に二本の光導波路が結合されており、前記二本の光導波路のうちの一本の光導波路は前記第3の2×2MMIに結合されており、前記二本の光導波路のうちの他の一本の光導波路は第2の位相シフターΦを通って前記第4の2×2MMIに結合されており、 第1の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第4の2×2MMIに結合されている他の一本の光導波路と、第2の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第3の2×2MMIに結合されている一本の光導波路とは、交差しており、 第3の2×2MMI及び第4の2×2MMIの出力側には、それぞれ、二本の光導波路が結合され、 前記第1の位相シフターΦ及び第2の位相シフターΦは、90°位相シフトするものであり、必要な90°位相シフトは二つの位相シフト素子の一つにより調節される、90°ハイブリッドOEIC。」 (2)引用刊行物2 同じく、特開2004-233619号(以下「引用刊行物2」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、光ファイバ通信において使用されるルーティングデバイスである光スイッチ及び光波長ル一タに関する。」 イ 「【0025】 【課題を解決するための手段】 …上記課題を解決する本発明に係る光スイッチは、平面光波回路上に構成されたものであり、入力された光波の分岐を行う入力分岐部と、光波の合分岐を行う出力合分岐部と、入力分岐部と出力合分岐部に挟まれ、光波の位相を変調する位相シフタ部とからなり、入力分岐部は、少なくとも1本の入力部入力導波路と、N本の入力部出力導波路と、1本の入力部入力導波路から入力された光波を、N本の入力部出力導波路の全てに等強度に分岐するための入力部分岐手段とを有するものであり、出力合分岐部は、N本の出力部入力導波路と、N本の出力部出力導波路と、N本の出力部入力導波路のうち任意の1本に入力された光波を、N本の出力部出力導波路の全てに等強度に分岐するための出力部合分岐手段とを有するものであり、位相シフタ部は、N本の入力部出力導波路とN本の出力部入力導波路とを1対1に接続する位相シフタ導波路と、位相シフタ導波路のそれぞれに設けられた位相変調手段とを有するものであることを特徴とする。 なお、上記Nは1より大きい整数とする。」 ウ 「【0035】 (実施例1) 図1は、本発明に係る実施形態の一例を示す光スイッチの概略図であり…。 【0036】 本実施例の1×4ch光スイッチは、石英系光導波路1等の平面光波回路を用いて構成され…。 【0037】 図1に示すように、本実施例の1×4ch光スイッチは、入力分岐部2A、出力合分岐部3A及び位相シフタ部4Aから構成される。 入力分岐部2Aは、光波を入力する入力部入力導波路となる入力導波路5と、入力導波路5に接続され、1×2光分岐器である第1段光方向性結合器6と、第1段光方向性結合器6に接続された接続導波路7、8と、第1段光方向性結合器6に接続導波路7、8を介して接続された第2段光方向性結合器9、10とを有している。入力分岐部2Aでは、入力導波路5から入力された光波は、入力部分岐手段となる第2段光方向性結合器9、10により4個の入力部出力導波路に等分配(等強度に分割)される。 【0038】 位相シフタ部4Aは、4本の位相シフタ導波路11、12、13、14と、それらの上部に配置された薄膜ヒ一タ15、16、17、18とを有している。入力分岐部2からの4個の出力は、それぞれ位相シフタ導波路11、12、13、14に接続される。ここでは、位相変調手段として、薄膜ヒータ15?18を用いることで、熱光学効果による位相変調器を構成している。 【0039】 出力合分岐部3Aは4個の出力部入力導波路を有し、それらは位相シフタ部4Aの位相シフタ導波路11、12、13、14に接続される。ここでは、位相シフタ導波路11及び12は、第3段光方向性結合器19の2つの入力に接続され、位相シフタ導波路13及び14は、第3段光方向性結合器20の2つの入力に接続される。第3段光方向性結合器19の一方の出力と第3段光方向性結合器20の一方の出力は、接続導波路21及び23を介して第4段光方向性結合器27の2つの入力に接続される。又、第3段光方向性結合器19の他方の出力と第3段光方向性結合器20の他方の出力は、接続導波路22及び24を介して第4段光方向性結合器28の2つの入力に接続される。最後に、第4段光方向性結合器27及び28は、出力部出力導波路となる出力導波路29、30、31、32に接続される。上記構成の出力合分岐部3Aでは、任意の1本の出力部入力導波路に入力された光波は、出力部合分岐手段を構成する第3段光方向性結合器19、20と、接続導波路22?24と、交差導波路25、26と、第4段光方向性結合器27、28とにより、4個の出力導波路29?32へ等分配(等強度に分割)される。 【0040】 ここで、接続導波路21、22、23、24はすべて等長になるように設定されるとともに、接続導波路22及び23の交差角θと同じ角度θで交差するように、交差導波路25及び26が接続導波路21及び24に対して配置される。…交差導波路25及び26をこのような角度θに配置することで、各パスでの損失のばらつきを低減でき、消光比の改善を図ることができる。」 よって、上記の記載を総合すると、引用刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「入力分岐部2A、出力合分岐部3A及び位相シフタ部4Aから構成される1×4ch光スイッチであって、 入力分岐部2Aは、光波を入力する入力部入力導波路となる入力導波路5と、入力導波路5に接続され、1×2光分岐器である第1段光方向性結合器6と、第1段光方向性結合器6に接続された接続導波路7、8と、第1段光方向性結合器6に接続導波路7、8を介して接続された第2段光方向性結合器9、10とを有しており、入力導波路5から入力された光波は、入力部分岐手段となる第2段光方向性結合器9、10により4個の入力部出力導波路に等分配(等強度に分割)され、 位相シフタ部4Aは、4本の位相シフタ導波路11、12、13、14と、それらの上部に配置された薄膜ヒ一タ15、16、17、18とを有しており、入力分岐部2からの4個の出力は、それぞれ位相シフタ導波路11、12、13、14に接続され、位相変調手段として、薄膜ヒータ15?18を用いることで、熱光学効果による位相変調器を構成しており、 出力合分岐部3Aは4個の出力部入力導波路を有し、それらは位相シフタ部4Aの位相シフタ導波路11、12、13、14に接続されは、位相シフタ導波路11及び12は、第3段光方向性結合器19の2つの入力に接続され、位相シフタ導波路13及び14は、第3段光方向性結合器20の2つの入力に接続され、第3段光方向性結合器19の一方の出力と第3段光方向性結合器20の一方の出力は、接続導波路21及び23を介して第4段光方向性結合器27の2つの入力に接続され、又、第3段光方向性結合器19の他方の出力と第3段光方向性結合器20の他方の出力は、接続導波路22及び24を介して第4段光方向性結合器28の2つの入力に接続され、最後に、第4段光方向性結合器27及び28は、出力部出力導波路となる出力導波路29、30、31、32に接続され、任意の1本の出力部入力導波路に入力された光波は、出力部合分岐手段を構成する第3段光方向性結合器19、20と、接続導波路22?24と、交差導波路25、26と、第4段光方向性結合器27、28とにより、4個の出力導波路29?32へ等分配(等強度に分割)され、ここで、接続導波路21、22、23、24はすべて等長になるように設定されるとともに、接続導波路22及び23の交差角θと同じ角度θで交差するように、交差導波路25及び26が接続導波路21及び24に対して配置され、交差導波路25及び26をこのような角度θに配置することで、各パスでの損失のばらつきを低減でき、消光比の改善を図ることができる、1×4ch光スイッチ。」 3 対比 本願発明と引用発明1を対比する。 (1)引用発明1の「第1の2×2MMI」は、「入力側にE_(SIG)(信号光)が入力する一本の光導波路が結合され、また、出力側に二本の光導波路が結合されて」なるものであるから、本願発明の「(信号光が入力され、該信号光を分岐して第1及び第2の信号光を出力する)第1の光カプラ」に相当する。 (2)引用発明1の「第2の2×2MMI」は、「入力側にE_(LO)(ローカル光)が入力する一本の光導波路が結合され、また、出力側に二本の光導波路が結合されて」なるものであるから、本願発明の「(ローカル光が入力され、該ローカル光を分岐して第1及び第2のローカル光を出力する)第2の光カプラ」に相当する。 (3)引用発明1の「第3の2×2MMI」は、「第1の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの一本の光導波路を(第1の位相シフターΦを通って)結合され」るとともに、「第2の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの一本の光導波路を結合され」てなるものであるから、本願発明の「(前記第1の光カプラから出力された前記第1の信号光と、前記第2の光カプラから出力された前記第1のローカル光とを結合して出力する)第3の光カプラ」に相当する。 (4)引用発明1の「第4の2×2MMI」は、「第1の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの他の一本の光導波路を結合され」るとともに、「第2の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの他の一本の光導波路を(第2の位相シフターΦを通って)結合され」てなるものであるから、本願発明の「(前記第1の光カプラから出力された前記第2の信号光と、前記第2の光カプラから出力された前記第2のローカル光とを結合して出力する)第4の光カプラ」に相当する。 (5)引用発明1は、「第1の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第4の2×2MMIに結合されている他の一本の光導波路と、第2の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第3の2×2MMIに結合されている一本の光導波路とは、交差して」なるものであるから、本願発明の「前記第1の光カプラから前記第4の光カプラまでの導波路と、前記第2の光カプラから前記第3の光カプラまでの導波路とが交差する」との事項を備える。 (6)引用発明1の「90°ハイブリッドOEIC」は、本願発明の「光90°ハイブリット干渉計」に相当する。 よって、本願発明と引用発明1とは、 「信号光が入力され、該信号光を分岐して第1及び第2の信号光を出力する第1の光カプラと、 ローカル光が入力され、該ローカル光を分岐して第1及び第2のローカル光を出力する第2の光カプラと、 前記第1の光カプラから出力された前記第1の信号光と、前記第2の光カプラから出力された前記第1のローカル光とを結合して出力する第3の光カプラと、 前記第1の光カプラから出力された前記第2の信号光と、前記第2の光カプラから出力された前記第2のローカル光とを結合して出力する第4のカプラとを有し、 前記第1の光カプラから前記第4の光カプラまでの導波路と、前記第2の光カプラから前記第3の光カプラまでの導波路とが交差する光90°ハイブリット干渉計。」 の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。 a 本願発明は、「第1及び第2の信号光の導波路長」と「第1及び第2のローカル光の導波路長」との少なくともいずれか1つが「他の導波路長」よりもπ/2長いか、もしくは短」いのに対し、引用発明1は、必要な90°位相シフトを、「(第1の2×2MMIの出力側と第3の2×2MMIとの間に配置され、90°位相シフトする)第1の位相シフターΦ」と「(第2の2×2MMIの出力側と第4の2×2MMIとの間に配置され、90°位相シフトする)第2の位相シフターΦ」の二つの位相シフト素子の一つにより調節される点(以下「相違点1」という。)。 b 本願発明は、「第1の光カプラ」から「第3の光カプラ」までの導波路と、「第2の光カプラ」から「第4の光カプラ」までの導波路のそれぞれに、「(『第1の光カプラ』から『第4の光カプラ』までの導波路と『第2の光カプラ』から『第3の光カプラ』までの導波路とが交差することによって生じる損失を補償する)損失補償手段」を有し、前記「損失補償手段」が、「(『第1の光カプラ』から『第3の光カプラ』までの導波路と、『第2の光カプラ』から『第4の光カプラ』までの導波路のそれぞれに対して、『第1の光カプラ』から『第4の光カプラ』までの導波路と『第2の光カプラ』から『第3の光カプラ』までの導波路との交差角度と等しい角度で交差する)導波路」であるのに対し、引用発明1は、そのような「損失補償手段」を備えていない点(以下「相違点2」という。)。 4 判断 上記相違点につき検討する。 (1)相違点1について 引用発明1は、「(第1の2×2MMIと第3の2×2MMIの間の一本の光導波路に配置される)第1の位相シフターΦ」及び「(第2の2×2MMIと第4の2×2MMIの間の他の一本の光導波路に配置される)第2の位相シフターΦ」が「90°位相シフト」するものであって、「必要な90°位相シフトは(前記)二つの位相シフト素子の一つにより調節される」ものであるところ、必要な90°シフトを得るために、そのような「(90°位相シフトする)位相シフト素子」に換えて、前記「(『第1の2×2MMI』と『第3の2×2MMI』の間の)一本の光導波路」の導波路長もしくは前記「(『第2の2×2MMI』と『第4の2×2MMI』の間の)他の一本の光導波路」の導波路長を、他の光導波路の導波路長よりπ/2(90°)長いか、もしくは短いものとなして、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜になし得ることである。 (2)相違点2について 二本の導波路が交差する交差部において光の損失が生じることは本願の出願時点で周知であり(必要なら、国際公開第2009/088089号([0154])、特開平4-330421号公報(【0010】)、特開平3-75707号公報(2頁右上欄1行?同頁左下欄2行)、特許第3201554号公報(【0005】)参照。)、引用発明1のように、「(『(第1の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第4の2×2MMIに結合されている)他の一本の光導波路』と『(第2の2×2MMIの出力側に結合された二本の光導波路のうちの、第3の2×2MMIに結合されている)一本の光導波路』とが交差する)交差部」を有するものが、当該「交差部」において損失を生じ、当該損失により、「第3の2×2MMI」の出力側に結合された二本の光導波路、及び、「第4の2×2MMI」の出力側に結合された二本の光導波路からの出力光にばらつきが生じることは当業者において明らかであるところ、上記2(2)によれば、引用刊行物2には、「各パスでの損失のばらつきを低減」し、「消光比の改善を図る」ために、「(交差角θで交差する)接続導波路22及び23の交差角θと同じ角度θで交差するように、交差導波路25及び26」を「接続導波路21及び24に対して配置」する発明(引用発明2)が記載されているから、引用発明1において、前記「交差部」における損失により生じる「第3の2×2MMI」の出力側に結合された二本の光導波路、及び、「第4の2×2MMI」の出力側に結合された二本の光導波路からの出力光のばらつきを防ぐために、損失補償手段として、「第1の2×2MMI」から「第3の2×2MMI」までの光導波路と、「第2の2×2MMI」から「第4の2×2MMI」までの光導波路のそれぞれに対して、「(『第1の2×2MMI』から『第4の2×2MMI』までの)光導波路と、(『第2の2×2MMI』から『第3の2×2MMI』までの)光導波路との交差角と等しい角度で交差する)交差導波路」を配置して、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明の奏する効果が、引用発明1、2及び前記周知技術から当業者が予測困難な程の格別顕著なものということはできない。 よって、引用発明1において、上記相違点1、2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得ることである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-12 |
結審通知日 | 2014-03-18 |
審決日 | 2014-03-31 |
出願番号 | 特願2009-170177(P2009-170177) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河原 正 |
特許庁審判長 |
吉野 公夫 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 黒瀬 雅一 |
発明の名称 | 光90°ハイブリット干渉計 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 宮崎 昭夫 |
代理人 | 緒方 雅昭 |