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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B01D |
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管理番号 | 1287888 |
審判番号 | 不服2012-14756 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-08-01 |
確定日 | 2014-05-14 |
事件の表示 | 特願2008-524154「空気からの二酸化炭素除去」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 2月 8日国際公開、WO2007/016271、平成21年 1月29日国内公表、特表2009-502483〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成18年7月28日(パリ条約による優先権主張:2005年7月28日 米国(4件)、2005年8月2日 米国、2005年10月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成23年2月7日付けで拒絶理由が通知され、同年5月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年5月31日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月6日付けで意見書が提出されたが、平成24年3月26日付けで平成23年5月31日付けの拒絶理由によって拒絶査定がなされた。 これに対し、平成24年8月1日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正書が提出され、平成25年1月8日付けで審査官の前置報告に基づく審尋が送付されたが、回答書は提出されなかったものである。 第2 平成24年8月1日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成24年8月1日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のように補正する補正を含むものである。 (補正前) 「【請求項1】 環境空気からCO_(2)を除去するための工程であって、 (a)環境空気を陰イオン交換材料に接触するように送気して、空気流からCO_(2)を捕獲するステップ; (b)ステップ(a)で捕獲された前記CO_(2)を前記陰イオン交換材料から分離するステップ;及び (c)ステップ(b)で分離された前記CO_(2)を回収するステップ; を含む工程。」(以下、「本願発明」という。) (補正後) 「【請求項1】 屋外の環境空気からCO_(2)を除去するための工程であって、 (a)屋外の環境空気を、アミンを含む固体吸着剤に接触するように送気して、屋外の環境空気からCO_(2)を捕獲するステップ; (b)ステップ(a)で捕獲された前記CO_(2)を、前記アミンを含む固体吸着剤から分離するステップ;及び (c)ステップ(b)で分離された前記CO_(2)を回収するステップ; を含む工程。」(以下、「本願補正発明」という。) 2.補正の適否 本件補正は、補正前の「環境空気を陰イオン交換材料に接触するように送気して」との事項を、補正後の「屋外の環境空気を、アミンを含む固体吸着剤に接触するように送気して」との事項にする補正を含むものである。 しかしながら、補正後の「アミンを含む固体吸着剤」とは、アミンとともに、アミン以外のイオン交換基、例えば陽イオン交換基も付着させたもの、つまり両性イオン交換材料(固体吸着剤)も含むものであって、「陰イオン交換材料」に該当しないものまで含むものである。 そうすると、補正後の「屋外の環境空気を、アミンを含む固体吸着剤に接触するように送気して」との事項にする補正は、補正前の「環境空気を陰イオン交換材料に接触するように送気して」との事項を限定するものではなく、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものとはいえない。 また、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定された、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当するものであるとも認められない。 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない補正を含むものであり、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成24年8月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし30に係る発明は、平成23年5月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし30に記載された事項により特定され、そのうち、請求項1に係る発明は、上記「第2 1.」に本願発明として記載したとおりのものである。 2.刊行物の記載事項 これに対して、原査定において引用文献2として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-200720号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「炭素酸化物除去装置」について、図面とともに下記の事項が記載されている。 ア「1.炭素酸化物を吸着し加熱下に該炭素酸化物を脱着させ得る吸着剤を収容した吸着剤槽と、室内の空気を吸着剤槽に導入する室内空気導入手段と、炭素酸化物吸着済の空気を室内に還流する還流手段と、脱着用の熱流体を吸着剤槽に供給する熱流体供給手段と、脱着された炭素酸化物を室外に排出する排出手段とを備えていることを特徴とする炭素酸化物除去装置。」(特許請求の範囲請求項1) イ「本発明は、室内(家屋および車両等の内部空間を意味する)における一酸化炭素または二酸化炭素等の炭素酸化物を除去する炭素酸化物除去装置に関するものである。」(2頁左上欄8?11行) ウ「第1図に示すように、本実施例の炭素酸化物除去装置は、例えば、ビルディングまたは車両等の空調設備の一環として設けることができるものであって、炭素酸化物、つまり、一酸化炭素および二酸化炭素を含む室内の空気を本炭素酸化物除去装置に導く室内空気導入手段としての導入配管1を備えている。 導入配管1は、・・・・導入側第1および第2切換バルブ3・4に導かれる。 一方、導入側第1および第2切換バルブ3・4には、熱流体供給手段5から、加熱空気またはスチーム等の熱流体が供給される。・・・・ 導入側第1および第2切換バルブ3・4は、それぞれ上記の室内空気または熱流体のいずれか一方を第1および第2吸着剤槽6・7内に供給するか、或いは室内空気および熱流体の供給を停止することができるようになっている。 第1および第2吸着剤槽6・7内には、それぞれ一酸化炭素を吸着する第1吸着剤と、二酸化炭素を吸着する第2吸着剤と、脱臭剤とが混合状態で収容されている。そして、室内空気が第1および第2吸着剤槽6・7内に供給されると、一酸化炭素および二酸化炭素が吸着され、かつ、悪臭が除去される。一方、熱流体が第1および第2吸着剤槽6・7内に供給されると、温度上昇に伴って、一酸化炭素および二酸化炭素が脱着され、かつ、脱臭剤からの臭い粒子の放出により脱臭剤が再生されるようになっている。」(3頁右上欄下から6行?同右下欄7行) エ「また、二酸化炭素吸着用の第2吸着剤としては、分子中に1級又は2級のアミノ基を有するイオン交換樹脂、特に、1級又は2級のアミノ基がポリアルキレンポリアミノ基からなる弱塩基性のイオン交換樹脂を好適に用いることができる。より具体的には、市販のイオン交換樹脂、例えば、スミカイオンKA-890、スミカイオンKA-860(以上、住友化学社製)、ダイヤイオンWA-21(三菱化成社製)を用いることができる。」(4頁右上欄末行?同左下欄8行) オ「・・・・炭素酸化物の吸着運転の開始時には、第2図に示すように、例えば、第1吸着剤槽6にて吸着を行うように制御部16で制御する。すなわち、室内から導かれ、前処理部2で除塵等の前処理が施された室内空気が、導入側第1切換バルブ3を介して第1吸着剤槽6に送り込まれる。 第1吸着剤槽6内で一酸化炭素および二酸化炭素が吸着され、かつ、脱臭された空気は、排出側第1切換バルブ8により還流配管11側に供給され、還流配管11を介して室内に還流される。 また、第1吸着剤槽6における炭素酸化物の吸着と並行して、必要により、第2吸着剤槽7において炭素酸化物の脱着を行うことができる。すなわち、熱流体供給手段5からの熱流体が、導入側第2切換バルブ4を介して第2吸着剤槽7に供給され、この熱流体により第2吸着剤槽7内の第1および第2吸着剤と脱臭剤とが加熱される。 これにより、第2吸着剤槽7内の第1および第2吸着剤に吸着された一酸化炭素および二酸化炭素が脱着されるとともに、脱臭剤に吸着された臭い粒子が放出される。 脱着された一酸化炭素および二酸化炭素と臭い粒子とを含む脱着ガスは、排出側第2切換バルブ9を介して排出配管12側に供給され、排出配管12により屋外に排出される。その際、脱着側ガスセンサ15により、排出ガス中の炭素酸化物濃度が検出され、炭素酸化物濃度が所定以下になると、制御部16が第2吸着剤槽7への熱流体の供給を停止させるようにすることができる。なお、二酸化炭素を含む脱着ガスは、各種植物を栽培する温室等へ導くようにしても良い。」(4頁右下欄4行?5頁左上欄下から6行) 上記の摘記事項によれば、刊行物1には下記の発明が記載されている。 「室内空気を、二酸化炭素を吸着し得る1級又は2級のアミノ基を有する弱塩基性のイオン交換樹脂からなる第2吸着剤を収容した吸着剤槽に導入して二酸化炭素を吸着すること、脱着用の熱流体を該吸着剤槽に供給して二酸化炭素を第2吸着剤から脱着すること、脱着された二酸化炭素を各種植物を栽培する温室等に導くこと、を含む方法。」(以下、「引用発明」という。) 3.対比・判断 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「室内空気」は、本願発明の「環境空気」と「空気」であることで一致し、引用発明の二酸化炭素を「吸着」、「脱着」することは、本願発明のCO_(2)を「捕獲」、「分離」することに相当する。 また、引用発明の「1級又は2級のアミノ基を有する弱塩基性のイオン交換樹脂」は、本願発明の「陰イオン交換材料」に相当し、引用発明の「室内空気を、二酸化炭素を吸着し得る1級又は2級のアミノ基を有する弱塩基性のイオン交換樹脂からなる第2吸着剤を収容した吸着剤槽に導入して二酸化炭素を吸着すること」と、本願発明の「環境空気を陰イオン交換材料に接触するように送気して、空気流からCO_(2)を捕獲するステップ」は、「空気を陰イオン交換材料に接触するように送気して、空気流からCO_(2)を捕獲するステップ」であることで一致する。 さらに、引用発明の「脱着用の熱流体を該吸着剤槽に供給して二酸化炭素を吸着剤から脱着すること」は、本願発明の「捕獲されたCO_(2)を陰イオン交換材料から分離するステップ」に相当し、引用発明の「脱着された二酸化炭素を各種植物を栽培する温室等に導くこと」は、本願発明の「分離された前記CO_(2)を回収するステップ」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明は、 「空気からCO_(2)を除去するための工程であって、 (a)空気を陰イオン交換材料に接触するように送気して、空気流からCO_(2)を捕獲するステップ; (b)ステップ(a)で捕獲された前記CO_(2)を前記陰イオン交換材料から分離するステップ;及び (c)ステップ(b)で分離された前記CO_(2)を回収するステップ; を含む工程」で一致し、下記の点で相違する。 〈相違点〉 本願発明がCO_(2)を「環境空気」から捕獲するのに対し、引用発明は「室内空気」から吸着する点。 以下、上記相違点について検討する。 処理対象の室内空気のことを「環境空気」と表現することは一般的であり(例えば、特開2005-30754号公報(「一方、再生工程では、室内の中温・高湿の環境空気を取り込み、・・・・」(段落【0004】))、特開平10-6430号公報(「・・・・室内の環境空気が前記薬剤と接触して吸湿等の作用が発現するようにしている。・・・・」(段落【0003】))、特開平6-156050号公報(「・・・・自動車の客室内の環境空気に空気調和された空気を・・・・」(段落【0006】))参照。)、引用発明の「室内空気」は「環境空気」ともいえるから、上記相違点は、実質的に相違点とはいえないものである。 よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。 なお、請求人は、審判請求書において、引用発明が二酸化炭素を除去するのは室内空気であり、屋外の空気ではない旨主張している。 しかし、屋外の空気から二酸化炭素を除去することは周知の技術的事項(例えば、特開平3-245811号公報(「本発明は、地球温暖化の原因といわれている大気中の炭酸ガスを大気中から効率よく除去し、これを濃縮して固定化する方法に関するものである。」(1頁右下欄6?8行))参照。)である。 また、引用発明において、二酸化炭素を除去する室内空気には、換気等により、屋外の空気を含み得ることは明らかであり、引用発明の方法では屋外の空気から二酸化炭素を除去することができないものでもないことから、引用発明の方法により、屋外の空気から二酸化炭素を除去することは、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明により奏される効果は、引用発明及び周知の技術的事項から容易に予測できるものである。 よって、本願発明の「環境空気」が屋外の空気を意味するものだとしても、本願発明は、引用発明及び周知の技術的事項から容易に発明をすることができたものである。 4.むすび したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定、または同条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-06 |
結審通知日 | 2013-12-10 |
審決日 | 2013-12-26 |
出願番号 | 特願2008-524154(P2008-524154) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B01D)
P 1 8・ 113- Z (B01D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神田 和輝 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
鈴木 正紀 井上 茂夫 |
発明の名称 | 空気からの二酸化炭素除去 |
代理人 | 清水 英雄 |
代理人 | 小椋 正幸 |
代理人 | 秋庭 英樹 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 高木 祐一 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 重信 和男 |