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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1287892
審判番号 不服2012-16521  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-24 
確定日 2014-05-14 
事件の表示 特願2007-554186「物品処理装置および関連方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月10日国際公開、WO2006/083967、平成20年 8月 7日国内公表、特表2008-529595〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2006年2月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年2月4日、米国。以下「優先日」という。)を国際出願日とする出願であって、平成23年8月22日付けで拒絶理由が通知されたが意見書又は手続補正書の提出はなく、平成24年4月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年8月24日に審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、当審により平成25年1月15日付けで審尋がされたが回答書の提出がなかったものである。

第2 平成24年8月24日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年8月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成24年8月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1である、
「筐体を規定するハウジング、
前記筐体に配置され且つ空洞を規定する回転可能なドラム、
前記空洞と流体で通じる少なくとも1つの開口、
前記少なくとも1つの開口を覆い実質的にそれを通す流体を防ぐように構成される少なくとも1つのドア、
空洞内で空気の温度を上げるように構成される加熱装置、
前記空洞にマイクロ波エネルギーを提供するように構成されるマイクロ装置、
前記空洞に紫外線光を提供するように構成される複数の紫外線光照射装置、及び、
前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器を有することを特徴とする物品処理装置。」
を、
「筐体を規定するハウジング、
前記筐体に配置され且つ空洞を規定する回転可能なドラム、
前記空洞と流体で通じる少なくとも1つの開口、
前記少なくとも1つの開口を覆い実質的にそれを通す流体を防ぐように構成される少なくとも1つのドア、
前記空洞内の空気の温度を上げるように構成される加熱装置、
前記空洞にマイクロ波エネルギーを提供するように構成されるマイクロ波装置、
前記空洞に紫外線光を提供するように構成される複数の紫外線光照射装置であって、各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成され、且つ、少なくとも1つは実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライトである少なくとも2つのパルス紫外線光ライトを含み、約190ナノメートル及び2000ナノメートルの間の波長を有する紫外線光を照射するように構成される紫外線光照射装置、及び、
前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器を有することを特徴とする物品処理装置。」
とする補正を含むものである。

2 補正の適否
(1)目的要件
上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の紫外線光照射装置」について、「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成され、且つ、少なくとも1つは実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライトである少なくとも2つのパルス紫外線光ライトを含み、約190ナノメートル及び2000ナノメートルの間の波長を有する紫外線光を照射するように構成される」点を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。また、本件補正後の明細書を「本件補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(請求項1についての補正が、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるか否か)を、検討する。

(2-1)明確性について
本件補正発明における、「複数の紫外線光照射装置」についての特定事項である、「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成され、且つ、少なくとも1つは実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライトである少なくとも2つのパルス紫外線光ライトを含み」という記載における、「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成され」た「複数の紫外線光照射装置」とは、「複数の紫外線光照射装置」がどのような速度で照射するのか不明であり、しかも、「少なくとも1つは実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライトである少なくとも2つのパルス紫外線光ライト」という記載において、「実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライト」は「パルス紫外線光ライト」とはいえないものであるから、「実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライト」を包含するような「パルス紫外線光ライト」とはどのようなものであるのか不明である。
よって、本件補正発明は明確であるとはいえず、補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。

一方、紫外線光照射装置について、本件補正明細書の段落【0069】ないし【0072】及び【0084】には、次の記載がある(下線部は当審により付与した。)。
「【0069】
紫外線光は、少なくとも1つの紫外線光装置550を介して筐体504の中のドラム513に配置される物品に適用されうる。少なくとも1つの紫外線光を放射する装置550は、筐体504及び外部ドラム513の中に配置され、さらに或いは代替的にハウジング506a及び/又は筐体504aの内部及び/又は外部に配置される。少なくとも1つの紫外線光を放射する装置550は、第1の紫外線光を放射する装置551及び第2の紫外線光を放射する装置552を含む。
【0070】
紫外線光を放射する装置550、551、552は、各々が汚染生物を殺菌し及び/又は少なくともいくらかの化学汚染物質を十分に失活する紫外線光の範囲を提供するように構成され得る。第1の紫外線光を放射する装置551及び第2の紫外線光を放射する装置552は、実質的に同じ技術特徴を有し、又は、異なる技術特徴を有して、広い範囲の汚染物質を殺菌及び/又は失活する。第1の紫外線光を放射する装置551及び第2の紫外線光を放射する装置552によって放射される紫外線光は、より効果的に広い範囲の汚染物質を殺菌及び/又は失活するために、空洞514にある液体及び/又は化学物質に干渉するように構成され、例えば、第1クラスの外部層に照射することで、そこに含まれる汚染物質を殺菌及び/又は失活する。
【0071】
例えば、第1の紫外線光を放射する装置551は、各々が60ワット、周波数約50Hz、及び/又は、約190?2000ナノメートルの間の波長のパルス状の紫外線光を放出する2つのパルスライト553、554を有しても良い。そのようなパルスライトは、第1セットの汚染物質を殺菌及び/又は失活する上で効果的である。第1の紫外線光を放射する装置551は、パルス紫外線ライト553、554を有し、たった1つのパルスライトである場合よりも、空洞514内にパルスライトが十分に分散されるように空洞514の中で配置される。
【0072】
別な実施例では、第2の紫外線光を放射する装置552は、1平方センチに付き約150マイクロワット、及び/又は、約249?254ナノメートルの間の波長で一定の紫外線光を放射する。そのような一定の光は、第1セットの汚染物質と異なる又は実質的に同じ第2セットの汚染物質を殺菌及び/又は失活するのに有効である。」
「【0084】
プロセッサ112は、紫外線光照射装置550を起動し及び/又は電源を供給できる。例えば、プロセッサ512は、第1の紫外線光照射装置551及び第2の紫外線光照射装置552を起動し及び/又は電源を供給できる。プロセッサ512は、パルスライト553、554に、波長が約190?2000ナノメートルの間のパルス状紫外線光を照射させる。紫外線光のパルスのタイミングは、適切な時間間隔であり、波長は変化しても良い。パルスライト553、554は、例えば、ハウジング506a及び/又は筐体504aの異なる場所に配置することによって、筐体504a及び/又は空洞514の異なる部分に紫外線光を照射する。一定の光552は、約249?254ナノメートルの間の波長で紫外線光を照射し、及び/又は、1平方センチに付き150マイクロワットの電源出力を有するように構成される。紫外線光照射装置550は、全体サイクル(例えば、約30分)又はサイクルの一部分の間に物品に紫外線光を適用しても良い。」

そして、本件補正発明は、以上の記載におけるパルス状紫外線光を照射する第1の紫外線光照射装置及び一定の紫外線光を照射する第2の紫外線光照射装置を有する紫外線照射光装置を包含するものと認められるから、本件補正発明の紫外線光照射装置の、
「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成され、且つ、少なくとも1つは実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライトである少なくとも2つのパルス紫外線光ライトを含」むことは、
「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成される少なくとも2つのパルス紫外線光ライト、及び、実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される少なくとも1つの一定紫外線光ライトを含」むことを包含すると解することができる。

また、「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成され、且つ、少なくとも1つは実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライトである少なくとも2つのパルス紫外線光ライトを含み、約190ナノメートル及び2000ナノメートルの間の波長を有する紫外線光を照射するように構成される」点は、当初明細書の請求項7及び8に係る発明特定事項であり、本願に係る国際公開(国際公開第2006/083967号)の請求項7及び8には、次のように記載されている。
「7. The article processing apparatus of claim 1 , wherein the plurality of ultraviolet light emitting apparatuses includes at least two pulsed ultraviolet lights each configured to emit ultraviolet light at an intermittent rate and at least one constant ultraviolet light configured to emit ultraviolet light at a substantially constant rate.
8. The article processing apparatus of claim 1 , wherein the plurality of ultraviolet light emitting apparatuses are configured to emit ultraviolet light having a wavelength between about 190 nanometers and 2000 nanometers.」
これは、次のように翻訳することができる。
「7.複数の紫外線光照射装置は、各々が断続的な割合で紫外線光を照射するように構成された少なくとも2つのパルス紫外線光ライトと、実質的に一定の割合で紫外線光を照射する少なくとも一つの一定紫外線光ライトとを含んでいる請求項1記載の物品処理装置。
8.複数の紫外線光照射装置は、約190nm及び2000nmの間のいずれかの波長を有する紫外線光を照射するように構成されている請求項1記載の物品処理装置。」

これらを総合勘案すると、本件補正発明は、次のように認定することができる可能性があるので、以下、このようなものとして認定した本件補正発明’について、進歩性について検討する。
本件補正発明’:「筐体を規定するハウジング、
前記筐体に配置され且つ空洞を規定する回転可能なドラム、
前記空洞と流体で通じる少なくとも1つの開口、
前記少なくとも1つの開口を覆い実質的にそれを通す流体を防ぐように構成される少なくとも1つのドア、
前記空洞内の空気の温度を上げるように構成される加熱装置、
前記空洞にマイクロ波エネルギーを提供するように構成されるマイクロ波装置、
前記空洞に紫外線光を提供するように構成される複数の紫外線光照射装置であって、
各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成される少なくとも2つのパルス紫外線光ライト、及び、実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される少なくとも1つの一定紫外線光ライトを含み、
約190nm及び2000nmの間のいずれかの波長を有する紫外線光を照射するように構成される紫外線光照射装置、及び、
前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器を有することを特徴とする物品処理装置。」

(2-2)進歩性について
ア 刊行物
1.米国特許出願公開第2004/0022665号明細書
2.特開2003-284763号公報
3.国際公開第03/39608号
4.国際公開第03/61382号
(以下、それぞれ、「刊行物1」、「刊行物2」、「刊行物3」、「刊行物4」という。刊行物1?4は、平成23年8月22日付けの拒絶理由における引用文献1?4である。)

イ 刊行物に記載された事項
(ア)刊行物1
その出願優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物1には、以下の事項が記載されている。なお、刊行物1における摘示箇所を段落番号で示し、当審による和訳を記載した。
1a 「[0008]郵便物の部分を殺菌及び/又は汚染除去する別なアプローチは、電子ビーム技術を用いて郵便物に放射線を当てることである。例えば、郵便物のバルク量は、電子銃で生成される高エネルギー電子のビームによって照射される。そのような技術は、食料の中のバクテリアを殺すために使用され、類似の技術は、郵便物の部分上又は中の炭疽菌のようなバクテリアを殺すためにも使用される。
[0009]しかしながら、このアプローチも、そのような放射線機器が伝統的に高価であるという点で不利でもある。さらに、そのような放射線機器の効果は、郵便物の部分のような物品が、様々な生物及び/又は化学因子の1つ以上で汚染されるので、制限される。例えば、電子ビーム技術を使用する放射線機器は、炭疽菌胞子を殺すときに効果的であるが、HIVやO157、天然痘、インフルエンザ、ペスト、ボツリヌス中毒症のような他の汚染生物を破壊することはできない。」
1b 「[0010]それゆえ、郵便物の部分のような物品を殺菌及び/又は汚染除去するシステム及び方法を有することが望ましい。そのようなシステムは、様々な生物及び/又は化学汚染物質に晒される物品を殺菌及び/又は汚染除去するために効果的である。また、小型で、使用が容易で、相対的に低価格な殺菌及び/又は汚染除去システムを有することが望ましい。」
1c 「[0012]ある実施例では、郵便物の部分のような物品を殺菌及び/又は汚染除去するシステムは、ドア付の筐体を有するメールボックスプロセッサ、少なくとも1つの入力口、少なくとも1つの出力口、郵便物回転ドラム、少なくとも1つの放射線ビーム源及び照射器、少なくとも1つの電磁波源及び照射器、少なくとも1つの紫外線源及び照射器、少なくとも1つの化学汚染物除去ユニット、及び状態指示器を有する。」
1d 「[0013]…放射線ビーム、電磁波、紫外線放射、化学汚染除去が所定の時間及び所定の組合せ及び順番で回転ドラム内の多くの郵便物に適用される。さらに、回転ドラムは、郵便物の各々が十分に、ビーム、電磁波、放射線、化学汚染除去にさらされ、それにより、郵便物の部分に又は中にある全ての生物学的ウイルス、バクテリア、胞子、炭疽菌、爆弾を本質的に失活させることを確実にするために、所定の速さと向きで回転する。メールボックスプロセッサの入力及び出力口は、人間及び動物に有害な汚染物質が含まれ及び筐体内で失活するため、漏れ量を最小化するように構成される。
[0014]安全に保管された筐体内で郵便物の部分を殺菌及び/又は汚染除去することができる放射線ビーム、電磁場、紫外線放射、化学汚染除去のような技術を使用するメールボックスプロセッサを提供することによって、郵便物の上又は内にある様々な生物汚染及び/又は化学汚染物質を、デバイスの近くに居る人間に健康リスクを最小化する一方で、失活させる。」
1e 「[0023]本発明に係る郵便物を殺菌及び/又は汚染除去するシステムの実施例を、図1を用いて説明する。図解される実施例では、システム100は、(図の明確性のため破線で表される)ドア103付の筐体102、郵便物回転ドラム110、消毒処理進行中/完了状態指示器119、入力ポート120、出力ポート112を含むメールボックスプロセッサ101を備える。メールボックスプロセッサ101は、さらに、放射線ビーム源及び照射器104、電磁波源及び照射器106、紫外線(「UV」)源及び照射器108、及び化学汚染物除去ユニット116を有する。しかしながら、代替例では、メールボックスプロセッサ101は、X線、ガンマ線、広帯域光ビーム、酸化技術のような他の適切な殺菌/汚染除去イオン技術を用いても良い。

[0027]好ましい実施例では、…郵便物回転ドラム110の全表面、及びドア103を有する筐体102の全内部表面は、汚染除去処理の間に郵便物に適用される光線による消毒エネルギーを拡大するように高い反射性があることが好ましい。」
1f 「[0031]図2は、(図1参照)郵便物を殺菌及び/又は汚染除去するためのシステム100のブロック図200である。図2に表されるように、システム200は、メールボックスプロセッサ101、入力及び出力ポート120及び112、及び化学汚染除去ユニット116を含む。システム200は、さらに、電源ユニット202、プログラミングユニット203、対流温風ユニット204、保湿/化学汚染除去強化ユニット206、分析ユニット208を有する。

[0033]対流温風ユニット204は、メールボックスプロセッサ101の中に引き込まれる大気を任意でプレヒートするために、入力ポート120と連動して使用される。代替的な実施例では、対流温風ユニット204は、放射線ビーム、電磁場、及び/又はUV照射器104、106及び108(図1参照)と連動して使用される赤外線照射消毒機能を提供するようにも構成される。例えば、電磁場源及び照射器106は、回転ドラム110の中で潜在的に汚染された郵便物にマイクロ波エネルギーを適用するように構成される。」
1g 「[0037]…そして、UV照射源及び照射器108は、汚染生物を殺すために、UV-CバンドのUV照射、又は他の適切なタイプのUV照射を提供するように構成される。さらに、化学汚染除去ユニット116は、郵便物から化学汚染物質を除去するために、他の適切な化学汚染除去を適用するように構成される。例えば、化学汚染除去ユニット116は、化学汚染除去の適用を容易にするために、1つ以上の化学品バックを使用する。メールボックスプロセッサ101は、郵便物の部分又は他の適切な物品を殺菌/汚染除去処理するように使用されることを考慮いただきたい。」
1h 「


1i 「


1j 「ドア103付きの筐体102」([0023])という記載及びFig.1から、筐体102は、ドア103によって閉じられる開口を有していることが理解できる。。

(イ)刊行物2
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
2a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定雰囲気に設定された室内側と室外側とに面してそれぞれ扉を有する箱体からなり、該箱体を介して室内外間の物品の受け渡しを行うパスボックスであって、前記箱体の少なくとも4面側から前記物品に対して紫外線が照射されるように、前記箱体内に長手方向を前記物品の通過方向に揃え、該物品を取り囲むことができるトンネル状に配列された殺菌灯を備えることを特徴とするパスボックス。」
2b 「【0004】従来のパスボックスは、紫外線照射用の殺菌灯が箱体の天井部や側壁部などの特定箇所に設置され、この特定箇所から箱体内に向けて紫外線を照射するように構成されている。物品を箱体内に入れた状態で殺菌灯を駆動しても、殺菌灯とは反対側の物品表面(いわゆる陰側表面)や箱体内に載せた面(いわゆる裏面)に紫外線が直接照射されないことになる。これを解消するために、箱体内に反射鏡を配置して紫外線の照射方向を変えることも考えられるが、物品の全表面に対して紫外線を適切に照射することは難しく、いずれにせよ物品に対する適切な殺菌処理が施されず、雑菌がクリーンルーム内に取り込まれ、クリーンルーム内が汚染される可能性が高いといった問題点を有している。」
2c 「【0014】…また、前記殺菌灯ランプ20としては波長253.7nmの紫外線を豊富に発生する殺菌ランプを使用することができるが、必ずしも前記したものに限定されるものではない。」
2d 「【0017】
【発明の効果】このように、本発明によれば所定雰囲気に設定された室内側と室外側とに面してそれぞれ扉を有する箱体からなり、該箱体を介して室内外間の物品の受け渡しを行うパスボックスであって、前記箱体の少なくとも4面側から前記物品に対して紫外線が照射されるように、前記箱体内に長手方向を前記物品の通過方向に揃え、該物品を取り囲むことができるトンネル状に配列された殺菌灯を備えることを特徴とするため、箱体内に入れた物品はその表面がトンネル状に配列された殺菌灯の紫外線照射により全表面が確実に殺菌されるため、物品の全表面に対する殺菌処理を効率よく行うことができ、物品の全表面に対する殺菌処理を効果的かつ短時間で殺菌することができる。」
2e「図6



(ウ)刊行物3
刊行物3には、以下の事項が記載されている。なお、当該摘示箇所を和訳にて示す。
3a 「発明の分野
この発明は、封筒、小包、容器のような、郵便又は宅配業者によって送られた物品を殺菌するための装置に関する。具体的には、封筒や容器の表面や内部に存在するバクテリアやウィルスのような汚染物を殺すためのガスとともに、高エネルギーのマイクロ波と紫外線とを用いる装置に関する。

発明の概要
従来の装置の上述の欠点は、本発明の複数物品の消毒装置が提供されることによって、克服される。その装置は、消毒ゾーンを囲むハウジングを備え、そのハウジングは、気体又は液体の漏れを防止するためのシール;消毒ゾーンに抗菌性液体を導入するためのポンプ;前記消毒ゾーンから液体を吸引するためのポンプを有する。その装置はまた、少なくとも1つの高電力マイクロ波源及び少なくとも一つの紫外線照射源、又はさらに紫外線をも発生させるマイクロ波源を含む。好ましくは、気体は、臭素、塩素等のハロゲン原子、又はヨウ素であるか、塩素または臭素イオンを含む気体又は液体であるが、オゾンや細菌、微生物、ウイルス、および他の病原体を殺す他のガスとすることができる。液体はまた、噴霧した液滴、又は、気化した次亜塩素酸ナトリウム、又は類似の防腐剤であることができる。」(1頁3行?2頁17行)
3b 「紫外光ライト源は、パルス紫外線の単色ビーム又は約240から280nmの波長を有する紫外レーザ放射とすることができる。20nmの紫外線放射、又は低強度(0.10から10W/m^(2))連続波多色(広帯域)の紫外線放射をする水銀ランプを含め、病原体を殺すために十分なエネルギーを生成する紫外光源の任意のタイプを用い得る。低強度(0.10から10W/m^(2))連続波多色(広帯域)の紫外線放射(4.88eV)が望ましい。193nm(6.42eV)のパルス(20ナノ秒)紫外レーザー放射は、特定の条件下で使用することができる。」(7頁下から3行?8頁5行)

(エ)刊行物4
刊行物4には、以下の事項が記載されている。なお、摘示箇所を和訳にて示す。
4a 「背景
例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis)による汚染の防止は、例えば郵便物及びキーボードのような、一般的な身の回り品を含めた物体に関する重要な問題である。バシラス種及びクロストリジウム種によって産生される細菌胞子は、様々な形態の光線並びに他の物理的及び化学的作用剤に非常に耐性であることが知られている。」(1頁6?11行)
4b 「発明の概要
本発明は、慣用的な汚染除去方法に最も耐性な微生物の1つであるように人為的に製造され、細菌戦(biowarfare)の胞子と同様であると考えられる、生物学的インジケーターを不活化することで実証されるような、生物兵器に用いられる病原体を上首尾に汚染除去することができる、方法及びパルス化UVシステムを包含する。」(2頁1?6行)
4c 「詳細な説明
細菌は強力パルス化紫外(UV)光の使用によって非活性化することができる。パルス化システム形式のキセノンランプが発生するUV光は、病原性(疾患誘発性)微生物を迅速にかつ効果的に繁殖不能にする。1秒間に2又は3パルスが、細菌胞子の全て又は非常に大きな割合を殺すために充分であることが実証されている。」(2頁13?18行)
4d 「具体的な設定及び位置は、以下の実施例に記載するが、本出願のために、該デバイスの構成は変更することが可能である。実施例はリニア・ランプを用いたが、ランプの他の形状(スパイラル状)、ランプ数及び設定を用いることができる:
操作パラメータの範囲
パルス持続時間:1/3ピークエネルギーで測定して、0.1?1,000マイクロ秒
パルス当りのエネルギー:1?2,000ジュール
パルス発生頻度:単回パルス又は1?1,000パルス/秒
照射間隔:0.1?1000秒間、又は単回パルス、若しくは連続パルシング
ランプ構成:(形状):リニア、ヘリカル又はスパイラル設計
スペクトル出力:100?1,000ナノメーター
ランプ冷却:周囲空気、強制空気又は水
波長選択:(ランプ外):広帯域又は光学フィルター選択
ランプハウジング窓:スペクトル透過のための石英、スプラシル(suprasil)又はサファイア
順序付け(sequencing):バースト・モード、同期化バースト・モード、又は連続ランニング」(4頁6?25行)

ウ 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「郵便物の部分のような物品を殺菌及び/又は汚染除去するシステム及び方法」(摘示1b)であって、「様々な生物及び/又は化学汚染物質に晒される物品を殺菌及び/又は汚染除去するために効果的である」(摘示1b)システム及び方法に関して記載するものである。
具体的には、図1、2(摘示1h,1i)等に示された「郵便物の部分のような物品を殺菌及び/又は汚染除去するシステム」であって「ドア103付の筐体102、郵便物回転ドラム110、…を含むメールボックスプロセッサ101を備える。メールボックスプロセッサ101は、さらに、放射線ビーム源及び照射器104、電磁波源及び照射器106、紫外線(「UV」)源及び照射器108、及び化学汚染物除去ユニット116を有する」システム(摘示1e)が記載されている。
また、「電磁波源及び照射器106」は、回転ドラム110の中で潜在的に汚染された郵便物にマイクロ波エネルギーを照射するものである(摘示1f)。
さらに、図2(摘示1i)によれば、「メールボックスプロセッサ101の中に引き込まれる大気を任意でプレヒートするために、入力ポート120と連動して使用される。代替的な実施例では、対流温風ユニット204は、放射線ビーム、電磁場、及び/又はUV照射器104、106及び108(図1参照)と連動して使用される赤外線照射消毒機能を提供する」(摘示1f)ものであるから、刊行物1に記載された「郵便物の部分のような物品を殺菌及び/又は汚染除去するシステム」には、メールボックスプロセッサ101内の空気の温度を上昇させる「対流温風ユニット204」が設けられている。
また、引用発明の「電磁波源及び照射器」及び「紫外線(「UV」)源及び照射器」は、郵便物回転ドラム110内の郵便物を殺菌するものであるから、郵便物回転ドラム110内の郵便物に対して、電磁波又は紫外線を照射するものであることは明らかである。

そうすると、刊行物1には、
「ドア付の筐体、郵便物回転ドラム、を含むメールボックスプロセッサであっては、メールボックスプロセッサはさらに、放射線ビーム源及び照射器、電磁波源及び照射器、紫外線(「UV」)源及び照射器、及び化学汚染物除去ユニットを有するとともに、赤外線照射消毒機能を提供する対流温風ユニットを有する、メールボックスプロセッサ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

エ 本件補正発明’と引用発明との対比
(ア)本件補正発明’と引用発明とを対比する。

(イ)引用発明における「ドア103付の筐体102」について、「筐体102」、(摘示1j)の「開口」、及び「ドア」は、本件補正発明’における「筐体を規定するハウジング」、「前記空洞と流体で通じる少なくとも1つの開口」及び「前記少なくとも1つの開口を覆い実質的にそれを通す流体を防ぐように構成される少なくとも1つのドア」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「郵便物回転ドラム110」は、本件補正発明’における「前記筐体に配置され且つ空洞を規定する回転可能なドラム」に相当する。
引用発明における「電磁波源及び照射器」及び「紫外線(「UV」)源及び照射器」、「赤外線照射消毒機能を提供する対流温風ユニット」は、本件補正発明’における「前記空洞にマイクロ波エネルギーを提供するように構成されるマイクロ波装置」、「前記空洞に紫外線光を提供するように構成される紫外線光照射装置」及び「前記空洞内の空気の温度を上げるように構成される加熱装置」にそれぞれ相当する。
さらに、引用発明における「化学汚染物除去ユニット」も、本件補正発明’における「前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器」も、ともに、化学物質を用いた汚染物除去装置である点で同じであるといえる。
そして、引用発明の各種構成を「有するメールボックスプロセッサ」は、本件補正発明’における各種構成を「有する」「物品処理装置」に相当する。
そうすると、本件補正発明’と引用発明とは、
「筐体を規定するハウジング、
前記筐体に配置され且つ空洞を規定する回転可能なドラム、
前記空洞と流体で通じる少なくとも1つの開口、
前記少なくとも1つの開口を覆い実質的にそれを通す流体を防ぐように構成される少なくとも1つのドア、
前記空洞内の空気の温度を上げるように構成される加熱装置、
前記空洞にマイクロ波エネルギーを提供するように構成されるマイクロ波装置、
前記空洞に紫外線光を提供するように構成される紫外線光照射装置、及び、
化学物質を用いた汚染物除去装置を有する物品処理装置。」
において点で一致し、以下の相違点A及び相違点Bにおいて相違する。

相違点A:紫外線光照射装置が、本件補正発明’は、「複数」の紫外線光照射装置であり、さらに、「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成される少なくとも2つのパルス紫外線光ライト、及び、実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される少なくとも1つの一定紫外線光ライト、を含み、約190ナノメートル及び2000ナノメートルの間のいずれかの波長を有する紫外線光を照射するように構成される」紫外線光照射装置であるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか明らかではない点。
相違点B:化学物質を用いた汚染物除去装置が、本件補正発明’は、「前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器」であるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか明らかではない点。

オ 相違点についての判断
(ア)相違点Aについて
物品の殺菌及び/又は汚染除去をする装置における「紫外線光照射装置」として、「約190ナノメートル及び2000ナノメートルの間のいずれかの波長を有する紫外線光を照射するように構成される紫外線光照射装置」について、「パルス紫外線光ライト」又は「一定紫外線光ライト」を用いることは周知である(必要であれば、両者について刊行物3(摘示3b)、前者について刊行物2(摘示2c)、後者について刊行物4(摘示4d)等を参照)。
さらに、刊行物4により、「スペクトル出力:100?1,000ナノメーター」(摘示4d)のパルス紫外線光ライトを使用することにより、「様々な形態の光線並びに他の物理的及び化学的作用剤に非常に耐性であることが知られている」、「バシラス種及びクロストリジウム種によって産生される種類の細菌胞子」(摘示4a)等の「生物兵器に用いられる病原体を上首尾に汚染除去することができる」(摘示4b)ことが、さらに刊行物2により、複数の紫外線光ライトを用いることにより、「物品の全表面に対する殺菌処理を効率よく行うことができ」(摘示2d)ること、がそれぞれその優先日前において知られたことである。

引用発明は、「筐体内で郵便物の部分を殺菌及び/又は汚染除去することができる」各種の技術を併用して「郵便物の上又は内にある様々な生物汚染及び/又は化学汚染物質を、デバイスの近くに居る人間に健康リスクを最小化する一方で、失活させる」(摘示1b)ことを目的とするメールボックスプロセッサ(摘示1d【0013】)である。そして、引用発明が記載される刊行物1には、引用発明で採用した各種の殺菌及び/又は汚染除去技術のほか、「X線、ガンマ線、広帯域光ビーム、酸化技術のような他の適切な殺菌/汚染除去イオン技術を用いても良い」(摘示1g)ことも記載されているから、引用発明においては、他の適切な殺菌/汚染除去イオン技術を必要に応じて代替ないし追加して適用され得るものである。
さらに、引用発明の紫外線光照射装置について、「少なくとも1つの紫外線源及び照射器」(摘示1c【0011】)と、1以上の紫外線源及び照射器を用い得ること、「汚染生物を殺すために、UV-CバンドのUV照射、他の適切なタイプのUV照射を提供するように構成」する(摘示1g)、と適切なタイプのUV照射を用いる得ることも記載されている。
そうすると、様々な生物汚染及び/又は化学汚染物質を除去する装置を提供するという課題を有し、各種の殺菌及び/又は汚染除去技術を併用するものである引用発明において、「紫外線光照射装置」として、より「様々な生物汚染及び/又は化学汚染物質を除去」し、かつ、物品の全表面に対する殺菌処理を効率よく行うために、各種の紫外線光ライト、すなわち、パルス紫外線光ライト及び一定紫外線光ライトを複数併用することは、上記の技術常識を有する当業者にとって、適宜なし得ることに過ぎない。
そして、この点により、本件補正発明’が、格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

(イ)相違点Bについて
引用発明の「化学汚染物除去ユニット」については、刊行物1には、「郵便物から化学汚染物質を除去するために、他の適切な化学汚染除去を適用するように構成される」(摘示1g)と記載される。
そうすると、引用発明の「化学汚染物除去ユニット」としては、優先日当時に「適切な化学汚染除去」として使用される装置が適宜使用され得るといえる。
そして、優先日当時の郵便物などの物品の殺菌及び/又は汚染除去をする装置における「適切な化学汚染除去」として使用される装置として、刊行物3には、次亜塩素酸ナトリウム、又は類似の防腐剤の液体を噴霧する装置、すなわち、「化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器」(摘示3a)が用いられていることが認められる。
そうすると、引用発明における「化学汚染物除去ユニット」として、「前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器」とすることは、当業者が適宜なし得ることと認められる。
そして、この点により、本件補正発明’が、格別顕著な効果を奏するものとも認められない。

進歩性についてのまとめ
そうすると、本件補正発明’は、その優先日前に頒布された刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明’を含む本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2-3)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものとはいえない。

3 むすび
以上によれば、請求項1についての補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものではないから、その余について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、その補正前の特許請求の範囲の記載は、当初明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1は、第2の1に示したとおりの、
「筐体を規定するハウジング、
前記筐体に配置され且つ空洞を規定する回転可能なドラム、
前記空洞と流体で通じる少なくとも1つの開口、
前記少なくとも1つの開口を覆い実質的にそれを通す流体を防ぐように構成される少なくとも1つのドア、
空洞内で空気の温度を上げるように構成される加熱装置、
前記空洞にマイクロ波エネルギーを提供するように構成されるマイクロ装置、
前記空洞に紫外線光を提供するように構成される複数の紫外線光照射装置、及び、
前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器を有することを特徴とする物品処理装置。」
である(以下、「本願発明」という。)。

第4 原査定の理由の概要
原査定は、「この出願については、平成23年 8月22日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」というものである。その「理由」の1つである理由「3.」は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明…に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
そこにおける「下記の請求項」は、「請求項1、2、17」であり、「下記の刊行物」は、「引用文献1-4」すなわち、
1.米国特許出願公開第2004/0022665号明細書
2.特開2003-284763号公報
3.国際公開第03/39608号
4.国際公開第03/61382号
である。
この上記拒絶理由通知の「引用文献1-4」は、前記第2の2(2)(2-2)の項における刊行物1ないし4と同じである(以下、同様に「刊行物1」、「刊行物2」、「刊行物3」、「刊行物4」ということとする。)

第5 当審の判断
当審は、原査定のとおり、本願発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 刊行物、刊行物に記載された事項及び刊行物に記載された発明
刊行物1ないし4は上記第4のとおりであり、刊行物1ないし4に記載された事項は、前記第2の2(2)(2-2)の項イ(ア)ないし(エ)にそれぞれ記載したとおりである。
そして、刊行物1に記載された発明は、同項ウに記載したとおりのもの(以下、同様に「引用発明」という。)である。

2 本願発明と引用発明との対比・相違点についての判断
本願発明は、前記第2の2(1)において示したとおり、本件補正発明における「複数の紫外線光照射装置」について「各々が断続的な速度で紫外線光を照射するように構成され、且つ、少なくとも1つは実質的に一定の割合で紫外線光を照射するように構成される一定紫外線光ライトである少なくとも2つのパルス紫外線光ライトを含み、約190ナノメートル及び2000ナノメートルの間の波長を有する紫外線光を照射するように構成される紫外線光照射装置」との限定がないものに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比したときの一致点・相違点は、両者の相違点が以下の相違点B’のみとなるほかは、本件補正発明’と引用発明とを対比したときと同じとなる。

相違点B’
化学物質を用いた汚染物除去装置が、本願発明は、「前記空洞に化学物質を配置するように構成される化学物質塗布器」であるのに対して、引用発明は、そのようなものであるか明らかではない点

この相違点B’は、前記第2の2(2)(2-2)項エに記載した本件補正発明’と引用発明との相違点Bと同じものであるから、この相違点B’について、同項オ(イ)に記載したのと同様の判断ができる。
そうすると、本願発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

3 まとめ
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許を受けることができないものであるから、その余について検討するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-11-19 
結審通知日 2013-11-26 
審決日 2013-12-26 
出願番号 特願2007-554186(P2007-554186)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
P 1 8・ 575- Z (A61L)
P 1 8・ 537- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 川端 修
特許庁審判官 真々田 忠博
吉水 純子
発明の名称 物品処理装置および関連方法  
代理人 青木 篤  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 健一  
代理人 河合 章  
代理人 南山 知広  

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