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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1288005
審判番号 不服2013-3101  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-18 
確定日 2014-05-21 
事件の表示 特願2010-127743「無線装置を用いて非常情報を通信する方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年10月21日出願公開、特開2010-239647〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年1月16日(パリ条約に基づく優先権主張 2003年1月16日 米国、 2003年5月20日 米国)を国際出願日とする国際出願である特願2006-501006号の一部を平成22年6月3日に特願2010-127743号として新たな特許出願としたものであって、平成24年5月15日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成24年9月18日に手続補正がなされ、平成24年10月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成25年2月18日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成24年9月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
イベント検知システムから受信したイベントメッセージを電気的に処理するように構成された通報システムであって、前記イベントメッセージは車両内に設置された前記イベント検知システムが前記車両内における車両イベントを検知した後に前記イベント検知システムによって一組の予めプログラムされたメッセージの中から選択され、前記イベント検知システムは前記車両内部に設置された非常通報ボタンが押されたことを前記車両イベントとして検知するように構成され、前記通報システムは移動無線装置内に含まれる、と、
前記通報システムに電気的に結合され、この通報システムからの要求に応じて位置情報を出力する位置決めシステムと、
前記通報システムに電気的に結合された双方向移動無線通信システム、とを具備し、
前記双方向移動無線通信システムは前記通報システムからの要求に応じて非常応答サービスに通報して、この通報の間に前記イベントメッセージに基づいて前記位置情報とイベント通知メッセージとを含むデータ送信を行うように構成される、
移動無線装置。」


第3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(米国特許第6340928号明細書)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(a)第2欄第5行-第3欄第7行
「 Referring to FIG. 1, an exemplary embodiment of an emergency assistance system 10, in accordance with the present invention, is shown. The system 10 includes a vehicle crash sensing system 40 of a type well known in the art. The sensing system 40 includes a crash sensor (not shown) for sensing a vehicle crash condition. From a crash sensor output signal, the system 40 determines a crash metric value (e.g. crash acceleration, crash velocity, crash displacement, etc.) and uses the crash metric value in a crash algorithm to determine if a deployment crash condition is occurring, i.e., a crash condition in which an actuatable restraint would be actuated. The crash sensing system 40 also senses and stores occupant information, such as occupant identification, weight, number of occupants, etc.
The system 10 further includes a portable device, such as a cellular phone 12. The cellular phone 12 includes an input/output circuit 14 including a microphone to send and receive voice signals to a controller 16. Circuit 14 would also include a keypad. A person of ordinary skill in the art will appreciate that the controller 16 can take several forms including a combination digital or analog circuits or packaged as an application specific integrated circuit (ASIC).
The cellular phone 12 further includes a communication interface 20 operatively connected to the controller 16. The communication interface 20 allows for communication between the controller 16 and an emergency station 26 via an antenna 22. The communication interface 20 permits analog, digital, and/or modem communications with the emergency station 26 or any other cellular device or interface, e.g., other cellular phones, base stations, etc.
Further, the emergency system 10 includes an automatic position locating system (i.e., a global positioning system ("GPS")) 30. The GPS 30 and associated antenna 36 are integrated as part of the cellular phone 12 and operatively connected to the controller 16. The GPS 30 determines vehicle position information in a manner well known in the art.
A Bluetooth^(TM) wireless connectivity port 32 (i.e., radio link) is included in the cellular phone 12 and another Bluetooth^(TM) port 42 is included in the crash sensing system 40 to transmit data between the system 40 and phone 12, particularly during a vehicle crash event. Bluetooth^(TM) 32, 42 is a commercially available short-range, cable replacement, radio link technology.
Bluetooth^(TM) 32, 42 operates in a multi-user environment to allow wireless communication between a cellular phone, a computer, and other personal electronic devices within a specific radius of each other. Devices 12, 40 are set up so that they can automatically exchange encoded information with one another using the Bluetooth^(TM) technology.
Upon detecting a vehicle crash condition, the vehicle crash sensing system 40 sends a signal indicative of the crash condition through the Bluetooth^(TM) port 42 to the Bluetooth^(TM) port 32 in the cellular phone 12 via respective antennas 44, 34. The signal received from the crash sensing system 40 wakes-up (i.e., activates, if necessary) the cellular phone 12 and instructs the phone 12 to automatically dial the telephone number of the emergency station 26 previously stored in memory (not shown).
The controller 16 formats a data string to be transmitted to the emergency station 26 using a modem signal via the communication interface 20. The data string includes vehicle occupant information, crash severity, and type of crash received from system 40 as well as vehicle position determined by GPS 30. Once communication is established between the cellular phone 12 and the emergency station 26, the controller 16 transmits the data string through the communication interface 20 to the emergency station 26. 」
(当審訳:
図1に関して、緊急支援システム10の例示的な具体化が、この発明に基づいて示される。システム10は、よく知られているタイプの車衝突検知システム40を含む。検知システム40は、車衝突状態を検知するための(図示されていない)衝突センサーを含む。衝突センサー出力信号から、システム40は衝突メトリック値(例えば衝突加速度、衝突速度、衝突変位など)を決定して、そして衝突メトリック値を衝突アルゴリズムで使用して、実装衝突状態(すなわち、作動可能な制限が始動させられるであろう衝突状態)が生じているかどうか決定する。また、衝突検知システム40は、乗車者ID、体重、乗車者の数などのような、乗車者情報を検知して、そしてストアする。
システム10は更に携帯電話機12のような、ポータブル装置を含む。携帯電話機12はコントローラー16に音声シグナルを送受信するための、マイクロホンを含む入出力回路14を含む。また、回路14は、キーパッドを含むであろう。通常の技術を備えた人は、デジタルあるいはアナログ回路あるいはアプリケーションに特定された集積回路(ASIC)としてパッケージされた組み合わせを含めて、コントローラー16がいくつかの形態を取り得ることを理解するであろう。
更に、携帯電話機12は、コントローラー16に動作可能に接続された通信インタフェース20を含む。通信インタフェース20は、アンテナ22を通して、コントローラー16と緊急ステーション26の間の通信を可能にする。通信インタフェース20は、緊急ステーション26、あるいは他のいかなるセルラー装置あるいはインタフェース(例えば、他の携帯電話機、基地局など)との間の、アナログ、デジタル、及び/又はモデム通信を許可する。
更に、緊急システム10は、自動的に位置を定めるシステム30(すなわち、世界的な測位システム(”GPS”))を含む。GPS30及び関連づけられたアンテナ36は、携帯電話機12の一部として統合されて、そして動作可能にコントローラー16と接続されている。GPS30は、よく知られている方法で車位置情報を決定する。
ブルートゥース無線通信ポート32(すなわち、ラジオリンク)が、携帯電話機12に含められる。そして特に車衝突イベントの時に、システム40と携帯電話機12との間にデータを伝達するために、もう1つのブルートゥースポート42が、衝突検知システム40に含められる。ブルートゥース32、42は、商業的に狭い範囲で利用可能な、ケーブルの代わりとなる、ラジオリンク技術である。
ブルートゥース32、42は、お互いの特定の半径以内で、携帯電話機、コンピュータと他のパーソナルな電子装置との間に無線通信を許すように、マルチユーザの環境で稼働する。装置12、40は、ブルートゥース技術を用いて、コード化された情報を自動的に互いに交換できるように、セットアップされる。
車衝突状態を検出するや否や、車衝突検知システム40は、各アンテナ44、34を用いて、ブルートゥースポート42を通して、携帯電話機12内のブルートゥースポート32に、衝突状態を示すシグナルを送る。衝突検知システム40から受信された信号は、携帯電話機12を目覚めさせ(すなわち、必要なら活性化させ)、そして前もって(図示されていない)メモリにストアしておいた、緊急ステーション26の電話番号を、携帯電話機12に自動的にダイアルさせる。
コントローラー16は、通信インタフェース20を通して、変調信号を用いて、緊急ステーション26に伝達されるデータ列をフォーマットする。データ列は、GPS30によって決定された車の位置と同様に、車乗車者情報、衝突の重大さ、そしてシステム40から受信した衝突のタイプを含む。一度、携帯電話機12と緊急ステーション26の間に通信が確立されると、コントローラー16は、通信インタフェース20を通して緊急ステーション26にデータ列を伝達する。)

したがって、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「緊急支援システム10は、よく知られているタイプの車衝突検知システム40を含み、車衝突検知システム40は、車衝突状態を検知するための衝突センサーを含み、衝突センサー出力信号から、車衝突検知システム40は衝突メトリック値(例えば衝突加速度、衝突速度、衝突変位など)を決定して、そして衝突メトリック値を衝突アルゴリズムで使用して、実装衝突状態(すなわち、作動可能な制限が始動させられるであろう衝突状態)が生じているかどうか決定し、また、車衝突検知システム40は、乗車者ID、体重、乗車者の数などのような、乗車者情報を検知して、そしてストアしており、
車衝突システム10は更に携帯電話機12のような、ポータブル装置を含み、
携帯電話機12は、コントローラー16に動作可能に接続された通信インタフェース20を含み、通信インタフェース20は、アンテナ22を通して、コントローラー16と緊急ステーション26の間の通信を可能にし、通信インタフェース20は、緊急ステーション26、あるいは他のいかなるセルラー装置あるいはインタフェース(例えば、他の携帯電話機、基地局など)との間の、アナログ、デジタル、及び/又はモデム通信を許可し、
更に、緊急支援システム10は、自動的に位置を定めるシステム30(すなわち、世界的な測位システム(”GPS”))を含み、GPS30は、動作可能にコントローラー16と接続されており、
車衝突検知システム40のブルートゥースポート42と、携帯電話機12のブルートゥース無線通信ポート32により、車衝突イベントの時に、車衝突検知システム40と携帯電話機12との間にデータを伝達し、
車衝突検知システム40と携帯電話機12は、ブルートゥース技術を用いて、コード化された情報を自動的に互いに交換できるように、セットアップされ、
車衝突状態を検出するや否や、車衝突検知システム40は、ブルートゥースポート42を通して、携帯電話機12内のブルートゥースポート32に、衝突状態を示すシグナルを送り、車衝突検知システム40から受信された信号は、携帯電話機12を目覚めさせ、そして前もってメモリにストアしておいた、緊急ステーション26の電話番号を、携帯電話機12に自動的にダイアルさせ、
コントローラー16は、通信インタフェース20を通して、変調信号を用いて緊急ステーション26に伝達されるデータ列をフォーマットし、該データ列は、GPS30によって決定された車の位置と同様に、乗車者情報、衝突の重大さ、そして車衝突検知システム40から受信した衝突のタイプを含み、一度、携帯電話機12と緊急ステーション26の間に通信が確立されると、コントローラー16は、通信インタフェース20を通して緊急ステーション26にデータ列を伝達する、
緊急支援システム10。」


第4.本願発明と引用発明の一致点・相違点

引用発明の車衝突検知システム40が、本願発明の「イベント検知システム」に相当する。
引用発明における次の(イ)?(ホ)は、車が衝突した時に、車衝突検知システム40からブルートゥースを介して携帯電話機12で受信される信号又は情報であり、いずれも本願発明の「イベントメッセージ」に相当する。

(イ)車衝突イベントの時に、車衝突検知システム40と携帯電話機12との間で伝達されるデータ。
(ロ)車衝突検知システム40と携帯電話機12が、ブルートゥース技術を用いて、自動的に互いに交換する、コード化された情報。
(ハ)車衝突状態を検出するや否や、車衝突検知システム40が、ブルートゥースポート42を通して、携帯電話機12内のブルートゥースポート32に送る、衝突状態を示すシグナル。
(ニ)上記(ハ)の結果、車衝突検知システム40から受信された信号。
(ホ)コントローラー16がフォーマットするデータ列の内の、乗車者情報、衝突の重大さ、そして車衝突検知システム40から受信した衝突のタイプ。

引用発明のコントローラー16は、緊急ステーション26に伝達されるデータ列をフォーマットするから、イベントメッセージを処理しており、本願発明の「イベント検知システムから受信したイベントメッセージを電気的に処理するように構成された通報システム」に相当する。

引用発明の車衝突検知システム40は、車衝突状態を検知するための衝突センサーを含むから、車内に設置されていることは明らかである。
引用発明におけるイベントメッセージは、上記(ハ)のように、「車衝突状態を検出するや否や、車衝突検知システム40が、ブルートゥースポート42を通して、携帯電話機12内のブルートゥースポート32に送る、衝突状態を示すシグナル。」であるから、引用発明の衝突が、本願発明の「前記車両内における車両イベント」に相当し、本願発明と引用発明とは、「前記イベントメッセージは車両内に設置された前記イベント検知システムが前記車両内における車両イベントを検知した後に、決定される」点で一致している。
引用発明では、携帯電話機12はコントローラー16を含むから、引用発明の携帯電話機12が、本願発明の「移動無線装置」に相当し、本願発明と引用発明とは、「前記通報システムは移動無線装置内に含まれる」点で一致している。

引用発明のGPS30と本願発明の位置決めシステムとは、「前記通報システムに電気的に結合され、位置情報を出力する」点で一致している。

引用発明では、通信インタフェース20は、緊急ステーション26、あるいは他のいかなるセルラー装置あるいはインタフェース(例えば、他の携帯電話機、基地局など)との間の、アナログ、デジタル、及び/又はモデム通信を許可する。また、引用発明では、車衝突状態を検出した車衝突検知システム40から受信された信号は、携帯電話機12を目覚めさせ、そして前もってメモリにストアしておいた、緊急ステーション26の電話番号を、携帯電話機12に自動的にダイアルさせる。そして、コントローラー16がフォーマットしたデータ列は、通信インタフェース20を通して、変調信号を用いて緊急ステーション26に伝達される。これらの事項から判断すれば、通信インタフェース20は、携帯電話機12が本来備えている、基地局経由で他の電話機と通信する機能である。携帯電話機12が本来備えている、基地局経由で他の電話機と通信する機能が、双方向に通信する機能であることは周知の技術常識である。
また、通信インタフェース20は、コントローラー16に動作可能に接続されている。したがって、引用発明の通信インタフェース20は、本願発明の「前記通報システムに電気的に結合された双方向移動無線通信システム」に相当する。

引用発明では、GPS30によって決定された車の位置、乗車者情報、衝突の重大さ、及び衝突のタイプを、コントローラ-16が、データ列にフォーマット化し、該データ列を通信インタフェース20を通して、変調信号を用いて緊急ステーション26に伝達する。
したがって、引用発明の緊急ステーション26が、本願発明の「非常応答サービス」に相当し、引用発明のGPS30によって決定された車の位置、乗車者情報、衝突の重大さ、及び衝突のタイプが、本願発明の「前記位置情報とイベント通知メッセージ」に相当し、本願発明と引用発明とは、「前記双方向移動無線通信システムは前記通報システムからの要求に応じて非常応答サービスに通報して、この通報の間に前記イベントメッセージに基づいて前記位置情報とイベント通知メッセージとを含むデータ送信を行うように構成される」点で一致している。

よって、本願発明と引用発明の携帯電話機12との一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「イベント検知システムから受信したイベントメッセージを電気的に処理するように構成された通報システムであって、前記イベントメッセージは車両内に設置された前記イベント検知システムが前記車両内における車両イベントを検知した後に決定され、前記通報システムは移動無線装置内に含まれる、と、
前記通報システムに電気的に結合され、位置情報を出力する位置決めシステムと、
前記通報システムに電気的に結合された双方向移動無線通信システム、とを具備し、
前記双方向移動無線通信システムは前記通報システムからの要求に応じて非常応答サービスに通報して、この通報の間に前記イベントメッセージに基づいて前記位置情報とイベント通知メッセージとを含むデータ送信を行うように構成される、
移動無線装置。」である点。

[相違点1]
イベントメッセージが、本願発明では、「イベント検知システムによって一組の予めプログラムされたメッセージの中から選択され」るのに対して、引用発明では、かかる特徴は記載されていない点。

[相違点2]
イベント検知システムにより検出される車両イベントが、本願発明では、「車両内部に設置された非常通報ボタンが押されたこと」であるのに対して、引用発明では、車の衝突である点。

[相違点3]
本願発明では、位置決めシステムは、「通報システムからの要求に応じて位置情報を出力する」のに対して、引用発明のGPS30は、コントローラー16からの要求に応じて車の位置を出力するのか、それともコントローラー16からの要求がなくとも、車の位置を出力するのか、不確かな点。


第5.相違点についての検討

[相違点1について]
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(特開平1-298856号公報)の第2頁左下欄第18行-右下欄第1行に「7は遠隔地の場所や状況に応じたメッセージが予め記憶されており、このメッセージを音声合成によって出力する音声合成装置、」と記載され、第3頁右上欄第15行-左下欄第1行に「一方、ステップS3の判断結果が「火災情報」の場合は、ステップS6に進む。ステップS6では、音声合成装置7に予め記憶されている火災情報メッセージ(例えば、ただいまA社で火災が発生しています。)を選択し、音声合成装置7と通信制御装置6を接続した後、ステップS7へ進む。」と記載されている。

また、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物3(特開平11-231929号公報)の段落番号【0026】に「メッセージ作成部105は、常に待機状態にあり、監視装置101からの異常通知を監視する。このメッセージ作成部105は監視装置101から異常通知を受信すると、フォーマットに従って異常通知信号を解釈し事故や異常の発生場所、発生時刻、機器、警報レベル、警報内容などに対応したメッセージをメッセージデータベース109から取り出し、警報メッセージを作成する。」と記載されている。

このように、「予め装置に格納された複数のメッセージの中から、発生したイベントに対応するメッセージを選択すること。」は、周知である。したがって、引用発明において、予めメモリに格納された複数のメッセージの中から、発生した車両イベントに対応するメッセージを選択して、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。


[相違点2について]
特開平11-245853号公報の段落番号【0004】に、
「以下、車両緊急情報システムの車両制御装置の機能の概要を説明する。
(1)通信機能(サービスセンターとの通信):携帯電話機を用い、携帯電話の通話可能地域であれば通信可能である。9600bpsのデータ通信と音声通話が可能である。データ通信と音声通話を自動的に切り換える。自動切換機能をもつシングルダイバーシティアンテナを持つ。
(2)位置検出機能(自車両の位置検出):GPSにより位置検出を行なう。ジャイロを持ち、GPSの使用できないトンネルなどでも、位置を記録できる。車速センサーやリバースやブレーキの使用状態を記録する。
(3)緊急検出機能(自車両の緊急検出):衝突検出装置センサーと横転センサーを持ち、どのような事故が発生したかを検出する。
(4)車両緊急情報通報機能(サービスセンターへの緊急通報):衝突検出装置センサーと横転センサーの検知による自動通報を行なう。車両緊急情報通報ボタンの押下による手動通報もできる。」と記載されている。

また、特開平11-339183号公報の段落番号【0003】に、
「車両に搭載する緊急通報装置は、次のような機能を備えている。
(1)通信機能:携帯電話機と同様の通信機能を持ち、9600bpsのデータ通信と音声通話との自動切換えを可能にする。
(2)位置検出機能:車両位置検出用のデータとして、GPSやジャイロなどの自車位置データを記録する。
(3)緊急検出機能:衝突位置検出センサーや横転センサーを持ち、どのような事故が発生したかを検出する。
(4)車両緊急情報通報機能:衝突位置検出センサーや横転センサーの検知によって緊急通報を開始し、記録された自車位置データの自動送信を行なう。車両緊急情報通報ボタンの押下による手動通報も可能にする。」と記載されている。

このように、「車両に搭載する緊急通報装置において、センサーの検知によりサービスセンターへの緊急通報を開始することだけでなく、車両緊急情報通報ボタンを押下することにより、手動で通報すること。」が周知である。
したがって、引用発明において、車衝突検知システム40に車両緊急情報通報ボタンを設け、該車両緊急情報通報ボタンが押されたことを、車両イベントとすることにより、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。


[相違点3について]
引用発明におけるGPS30からコントローラー16への車の位置の出力については、当業者ならば、(甲)コントローラー16からのリクエストに応えて出力する方法と、(乙)コントローラー16からのリクエストがなくても出力する方法の二通りの方法が考えられることは明らかであるから、各方法に基づいた二通りの携帯電話機12が容易に想到できたと認められる。


そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-13 
結審通知日 2013-12-17 
審決日 2014-01-08 
出願番号 特願2010-127743(P2010-127743)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北川 純次伊東 和重  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 近藤 聡
吉田 隆之
発明の名称 無線装置を用いて非常情報を通信する方法と装置  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  
代理人 中村 誠  
代理人 砂川 克  
代理人 赤穂 隆雄  
代理人 堀内 美保子  
代理人 白根 俊郎  
代理人 井関 守三  
代理人 佐藤 立志  
代理人 峰 隆司  
代理人 竹内 将訓  
代理人 岡田 貴志  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 福原 淑弘  
代理人 河野 直樹  

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