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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  H04Q
審判 一部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H04Q
審判 一部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  H04Q
審判 一部無効 2項進歩性  H04Q
管理番号 1288031
審判番号 無効2010-800219  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-02 
確定日 2014-06-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第2588498号発明「無線アクセス通信システムおよび呼トラヒックの伝送方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2588498号の請求項6及び請求項11に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯

平成3年7月9日 優先権主張の基礎出願(米国特許出願727,4 98号)

平成4年7月3日 日本国特許庁へ出願

平成6年9月9日 出願公開(特開平6-253364号公報)

平成8年1月30日 拒絶理由通知

平成8年7月31日 手続補正書(請求項1,6,14,19,26及 び段落番号【0034】が補正された。)

平成8年9月3日 特許査定

平成8年12月5日 特許登録

平成21年1月7日 訂正審判請求(訂正2009-390003)

平成21年3月18日 訂正審判審決(請求項11と請求項24が訂正さ れた。)

平成22年12月2日 本無効審判請求(請求項6と請求項11の無効を 求めるもの)

平成23年3月22日 答弁書

平成23年7月5日 口頭審理陳述要領書(請求人)

平成23年7月5日 口頭審理陳述要領書(被請求人)

平成23年7月19日 口頭審理


第2.本件特許発明
本件特許の請求項6に係る発明は、特許権の設定登録時の明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項6に記載された次のとおりのもの(以下、「本件特許発明1」という。)と認められる。

「【請求項6】
サービス地域に位置する無線電話に無線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のセルと、
前記の各セルに少なくとも1つは接続されるように前記複数のセルに接続された複数の通信リンクと、
前記複数のリンクに接続されていて、前記セルとの間で前記リンクを介して無線電話の呼トラヒックを双方向に伝える少なくとも1つの交換システムとを備え、
各セルが、
無線電話から入って来る音声の呼トラヒックの無線受信に応じて、個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを、統計的に多重化された形式で、前記の接続された少なくとも1つのリンクに送り、さらに無線電話に出て行く音声の呼トラヒックの無線送信のために、接続された少なくとも1つのリンク上で個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第1の手段を備え、
さらに各交換システムが、
セルによってサービスされる無線電話に向かって出て行く音声呼トラヒックを受け取り、これに応じて個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上に送り出し、さらに前記の入トラヒックをその着信先に送るために、前記セルに接続された少なくとも1つのリンク上の個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶパケットを統計的に多重化された形式で受信する第2の手段を備え、当該第2の手段は、
当該交換システムが送信する送信パケットの着信先であるユーザ端末にサービスするセルにおいて所定のウィンドウ時間内に当該送信パケットが受信されるように出トラヒックを運ぶパケットを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段と、
入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段とからなることを特徴とする無線電話通信システム。」


本件特許の請求項11に係る発明は、訂正審判請求書に添付された明細書及び図面(以下、「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項11に記載された次のとおりのもの(以下、「本件特許発明2」という。)と認められる。

「時として複数のセルが、無線電話呼のサービスを1つの共通の移動無線電話に同時に与えることがあり;さらに交換システムの前記第2の手段が、前記の1つの移動無線電話に向かう出接続呼トラヒックの受信に応じて、前記呼の出トラヒックのコピーをそれぞれ運ぶパケットを、前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々に送り、また前記の1つの移動無線電話に前記サービスを同時に与えている前記セルの各々からその呼の入トラヒックを運ぶパケットを受信し、このとき異なるセルから受信した各パケットにはその入トラヒックのコピーが入っていて、さらに送信先に送るために前記の入トラヒックの受信されたコピーの中の1つのみを選択する第3の手段を備えたことを特徴とする請求項6記載のシステム。」


第3.当事者の主張及び証拠方法

1.請求人の主張の趣旨及び証拠方法

(無効理由1)
本件特許は、平成8年7月31日付け補正が要旨変更に当たるから、その出願日が当該補正の提出日まで繰り下がることになる。本件特許発明1及び2は、本件特許の対応米国特許5,195,090号(特許日1993年5月16日)に記載された発明ないし該発明に基づいて容易に想到できた発明である。したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号ないし特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、旧特許法第123条第1項第1号に該当し、無効とされるべきである。

(無効理由2)
本件特許発明1及び2は、旧特許法第36条第5項第1号に規定の要件を満たしておらず、旧特許法第123条第1項第3号の規定により無効とされるべきである。

(無効理由3)
本件特許発明1及び2は、旧特許法第36条第4項に規定の要件を満たしておらず、旧特許法第123条第1項第3号の規定により無効とされるべきである。

そして、請求人は証拠方法として次の甲各号証を提出している。

甲第1号証: 米国特許5,195,090号明細書
甲第2号証: 特許第2588498号特許公報
甲第3号証: 平成21年3月18日付け審決(訂正2009-390003)
甲第4号証: 本件特許願
甲第5号証: 平成8年1月30日付け拒絶理由通知書
甲第6号証: 平成8年7月31日付け手続補正書
甲第7号証: 平成8年7月31日付け意見書
甲第8号証: 米国特許4,562,572号明細書
甲第9号証: 米国特許4,587,652号明細書
甲第10号証: 米国特許4,726,014号明細書
甲第11号証: 特開昭59-171337号公報(甲第8号証の対応)
甲第12号証の1: オランダ判決(オランダ語)
甲第12号証の2及び抄訳:オランダ判決(英語)
甲第13号証:電子通信用語辞典、コロナ社、1984年、215頁
甲第14号証:EXPERT DECLARATION OF RICHARD A. CHANDLER, RICHARD A. CHANDLER,2010年、1月28日
甲第15号証: DECLARATION OF CHRSTIAN BLONDIA, CHRSTIAN BLONDIA,2010年、5月14日
甲第16号証及び抄訳: DECLARATION OF MICHEAL B. SPIROの抜粋、MICHEAL B. SPIRO,2009年、4月23日


2.被請求人の主張の趣旨
被請求人は、答弁書において、請求人が主張する無効理由1?3は、いずれも理由がない旨,主張する。

そして、被請求人は証拠方法として次の乙各号証を提出している。

乙第1号証: 2010年12月24日付けドイツ判決
乙第2号証: Jay Strater and Steve Nikola, Engineering CMTS and HFC for VoIP with Capital and Operating Expenses in Mind(2004),2?3頁
乙第3号証: ITU TELECOMMUNICATION STANDARDIZATION SECTOR “STUDY GROUP 12-DELAYED CONTRIBUTION 98”, 9頁
乙第4号証: ITU-T G.1020 “Performance parameter definitions for quality of speech and other voiceband applications utilizing IP networks”(2006)、Annex C 1?2枚目
乙第5号証: 米国特許出願第2008/165766
乙第6号証: Visualware社、 My VoIPSpeed Server Features、2頁


第4.請求及び答弁の理由の概要

1.請求人の理由の概要
(1)無効理由1(要旨変更による新規性進歩性否定)
本件特許発明1を分説して、構成要件「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムから送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムで受信されるように入トラヒックを当該交換システムが送信する時刻を制御する手段とからなる」を構成要件F2と呼ぶことにする。
本件特許発明2は、本件特許発明1に従属しているから、本件特許発明2も構成要件F2を有している。
F2に「当該交換システムから送信される」と記載されているが、これが、「交換システム」から「交換システムの外部へ送信する」ことを意味することは明らかである。当初明細書に記載された入トラヒックについての制御は、「交換システム」に含まれる「音声符号器モジュールSCM220」内の「音声処理ユニットSPU264」の構成要素である、「プロセッサ602」から「ボコーダ604」への、入トラヒックの送信時刻の制御である。そして、当初明細書には「交換システム」から「交換システムの外部へ」の送信時刻の制御に関する記載は一切存在しない。
したがって、当初明細書においては、構成要件F2が開示されていない。また、構成要件F2が、当初明細書の記載から自明でもない。

以上のとおりであるから、構成要件F2を加入した平成8年7月31日付けの補正は、要旨変更であり、本件特許発明1及び2の出願日は、同補正日である平成8年7月31日に繰り下がる。
甲第1号証の対応米国特許には、本件特許発明1及び2の全ての構成が記載されているから、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号ないし 特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2)無効理由2(サポート要件違反)
本件明細書には構成要件F2が開示されていないから、本件特許発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、旧特許法第36条第5項第1号に規定の要件を満たしていない。

(3)無効理由3(実施可能要件違反)
本件明細書には構成要件F2が開示されていないから、本件明細書に、出願時の技術常識から見て、構成要件F2を正確に理解でき、再現できる程度の記載があるとは認められず、本件特許発明1及び2は、旧特許法第36条第4項違反の無効理由を有する。


2.被請求人の答弁の理由の概要

(1)無効理由1について
本件当初明細書の段落番号【0088】の記載及び図面を併せ見れば、プロセッサ602からボコーダ604へ送信された呼トラヒックは、当該ボコーダ604にて終端するのではなく、本件の図5及び図6に記載されているように、ボコーダ604からTDMBUS130を介して、交換システムの構成要素であるDS1インターフェース132を通じて、トランク106を介して公衆電話網100に送信されることは、本件当初明細書または図面に記載されていることが明らかである。
特許請求の範囲の文言及び当初明細書の記載によれば、「送信の時刻を制御する」という構成要件F2の技術的事項は、公衆電話網へ向けての送信タイミングを、入トラヒックの送信タイミングのために交換システムの内部調整によって決定すること、すなわち、入トラヒックを運ぶパケットを交換システムでそれ以降の送信に先行して確実に受信するために、入トラヒックの送信タイミングを交換システムにおける内部調整によって決定することを含むのである。
特許請求の範囲の文言と当初明細書の記載によれば、構成要件F2は、交換システムの内部における調整を包含するものと解釈することが適切である。
したがって、平成8年7月31日付けの補正は、要旨変更に当たらない。

(2)無効理由2について
上記「無効理由1について」に記載した理由と同様の理由により、請求人の主張は理由がない。

(3)無効理由3について
上記「無効理由1について」に記載した理由と同様の理由により、請求人の主張は理由がない。


第5.当審の判断

1.無効理由1についての判断
(1)東京から大阪へ移動した時に、「日本から移動した。」と表現する人はいない。すなわち、日本の内部において移動をした時に、「日本から移動した」とは言わない。「日本から」には、「日本の外へ」という意味が含まれていると認められる。
同様に「交換システムから送信する」と表現する場合には、送信されたものは送信後には交換システムの外部に出てしまっていると解される。送信されるものは、入トラヒックである。すると、「当該交換システムから送信される時刻」とは、「当該交換システムの外に入トラヒックが出される時刻」という意味になる。

(2)「交換システム」は、交換するという機能を有していなければならないという観点から判断すれば、実施例の「デジタル・セルラ交換機DCS201」が本件特許発明1及び2の「交換システム」の候補となることは、当事者双方に異論のないところである。また、合議体もそのように判断する。してみると、問題となるのは、「はたして、実施例の「デジタル・セルラ交換機DCS201」は、構成要件F2の「交換システム」としての要件を満たしているのか否か」である。

(3)上記(1)、(2)の検討結果をF2に適用すれば、F2は次のF2′のように言い替えることができる。

F2′
「入トラヒックがデジタル・セルラ交換機DCS201の外に出される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に、入トラヒックを運ぶパケットが当該デジタル・セルラ交換機DCS201で受信されるように、入トラヒックを当該デジタル・セルラ交換機DCS201の外に出す時刻を制御する手段とからなる」

しかしながら、本件明細書の段落暗号【0088】において、図20を用いて説明されているのは、プロセッサ602からボコーダ604へ送信する時刻についてであって、「入トラヒックをデジタル・セルラ交換機DCS201の外に出す時刻」についてではない。

したがって、構成要件F2は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されたものでなく、また当初明細書等から自明な事項でもない。

(4)なお、被請求人は、口頭審理陳述要領書の第6頁下から1行-第7頁第7行において、「他方でもし、合議体の見解が、「交換システムのどこで」パケットが受信され、トラヒックが送信されるかということについて、交換システムとその外部との「接続点(交換システムの入口、出口)」に限られるという趣旨で上記見解を採っているのだとすると、これに対しては、被請求人としては異論のあるところである。というのは、分説事項F2は、「交換システムから送信される時刻」、「交換システムが送信する時刻を制御」、「交換システムで受信されるように」と規定しているだけであって、「交換システムのどこで」「交換システムのどこから」に関しては限定はないからである。」と説明している。

被請求人の主張どおり、「「交換システムのどこで」パケットが受信され、トラヒックが送信されるかということについて、交換システムとその外部との接続点(交換システムの入口、出口)に限られないとしても、「交換システムから送信される時刻」と言った時に、「交換システムのどこから」送信するかは限定していないのであるから、「交換システムの出口から」送信することも含めて、本件特許発明1及び2は、請求していることは明らかである。
してみれば、本件特許発明1及び2の内、構成要件F2のように、交換システムの入口で受信し、交換システムの出口で送信するものは、当初明細書等に記載されたものでなく、また当初明細書等から自明な事項でもない。

(5)また、被請求人は口頭審理陳述要領書の12頁第5-16行において、
「もっとも、分説事項F2の「交換システムから」「交換システムが」という文言について、「交換システムがその出口から」を意味すると理解した場合でも、クレームはなお整合的に理解することができる。なぜなら、ボコーダより前に行われた送信時刻の制御に応じて、ボコーダ以降の、決定論的なトラヒックの送信を行う回路やインタフェースから送られるトラヒックの送信時刻も、間接的に制御されることになる(特定トラヒックに着目した場合、例えば当該トラヒックのボコーダへの送信時刻が遅らされた場合には、当該トラヒックのボコーダ又はそれ以降の回路等からの送信時刻も自ずと同じだけ遅れる)からである。ある入トラヒックについて、「ウィンドウ時間」の後の送信時刻の制御があれば、それ以降の場所でも、当該特定の入トラヒックについては、送信時刻の制御がなされているといえるのであり、これらの送信時刻の制御はいずれも、分説事項F2の「送信する時刻を制御する」に該当する。」と説明している。

しかしながら、本件明細書の段落番号【0097】に
「 この状態を補償するために、プロセッサ602は、回路611に命じて、図21および22にそれぞれ示したこのサービス回路612に対する信号TX_INT_XおよびRX_INT_Xに時間転移を起こさせるようにすると同時に、プロセッサ602は、この同じサービス回路612のボコーダ604に命じて、そのPCM出力から1つのPCM標本バイトを落とすようにさせ、さらにそのPCM入力において付加的に1つのPCM標本バイトを生成させる。ボコーダ604がこれらを行うと、この場合も結果として、ボコーダ604のトラヒック・フレームの入力および出力の動作が、PCM標本の出力および入力の動作にそれぞれ揃うようになる。」と記載されている。

プロセッサ602は、この同じサービス回路612のボコーダ604に命じて、そのPCM出力から1つのPCM標本バイトを落とすようにさせ、さらにそのPCM入力において付加的に1つのPCM標本バイトを生成させるのであるから、被請求人の主張するように、「当該トラヒックのボコーダ又はそれ以降の回路等からの送信時刻も自ずと同じだけ遅れる」わけではない。また交換システムの出口から入トラヒックが送信される前のウィンドウ時間内に、交換システムの入口でパケットを受信するようにする点についても、「ボコーダより前に行われた送信時刻の制御」から明らかであるとは言えない。

(6)以上のように、構成要件F2は、当初明細書等に記載されたものでなく、また当初明細書等から自明な事項でもない。したがって、平成8年7月31日付けの手続補正は、本件特許発明1及び2の要旨を変更するものであり、出願日は、当該補正の平成8年7月31日まで繰り下がる。

(7)甲第1号証である米国特許第5,195,090号明細書(特許日 1993年5月16日)の請求項6に、次のように記載されている。(以下、甲第1号証の請求項6に記載されている発明を、「引用発明1」という。)

「6.A radio-telephone communication system comprising
a plurality of cells each providing radio-telephone call services to radio telephones located in a zone served by the cell;
a plurality of communications links connected to the plurality of cells, at least one link connected to each cell;
at least one switching system connected to the plurality of links for conveying radio-telephone call traffic to and from the cells over the links;
each cell including first means responsive to radio reception of incoming voice call traffic from radio telephones, for transmitting packets carrying the incoming traffic of individual calls on the connected at least one link in statistically-multiplexed form, and further for receiving packets carrying outgoing voice call traffic of the individual calls on the connected at least one link in statistically-multiplexed form for radio transmission of the outgoing traffic to the radio telephones; and
each switching system including second means responsive to receipt of outgoing voice call traffic destined for radio telephones served by a cell, for transmitting packets carrying the outgoing traffic of the individual calls in statistically-multiplexed form on the at least one link connected to the cell, and further for receiving packets carrying incoming voice call traffic of the individual calls in statistically-multiplexed form on the at least one line connected to the cell for transmission of the incoming traffic to destinations of the incoming traffic,
the second means including
means for controlling time instants of switching system transmission from the switching system of the packets carrying the outgoing traffic to ensure receipt of the transmitted packets, at a cell serving a user terminal for which the transmitted packets are destined, within predetermined windows of time, and
means for controlling time instants of switching system transmission from the switching system of the incoming traffic to ensure that the packets carrying the incoming traffic will have been received at the switching system within predetermined windows of time prior to the time instants of their transmission from the switching system. 」
(当審訳:
6.(a)セルによってサービスされるゾーンに位置する無線電話に対して、無線電話の呼サービスをそれぞれ提供する複数のセルと、
(b)各セルに少なくとも一つの通信リンクが接続されるように、複数のセルに対して接続された複数の通信リンクと、
(c)前記リンクを介して、セルへ、あるいはセルからの無線電話呼トラヒックを運ぶ、複数のリンクに接続された、少なくとも一つの交換システムと、
を備えた無線電話通信システムであって、
(d)各セルは第1の手段を有しており、
該第1の手段は、無線電話から入来する音声呼トラヒックの無線受信に応答し、個々の呼の入トラヒックを運ぶパケットを、統計的に多重された形式で、接続された少なくとも一つのリンクへ送信し、更に、無線電話へ出て行くトラヒックの無線送信のために、個々の呼の出音声呼トラヒックを運ぶパケットを、統計的に多重された形式で、接続された少なくとも一つのリンク上で受信する手段であり、
(e)各交換システムは第2の手段を有しており、
該第2の手段は、セルによってサービスされる無線電話行きの出音声呼トラヒックの受信に応答し、個々の呼の出トラヒックを運ぶパケットを、統計的に多重された形式で、セルに接続された少なくとも一つのリンクへ送信し、更に、入トラヒックの行き先へ入トラヒックを送信するために、個々の呼の入来する音声呼トラヒックを運ぶパケットを、統計的に多重された形式で、セルに接続された少なくとも一つのライン上で受信する手段であり、
(f1)当該第2の手段は、
送信されるパケットの行き先のユーザにサービスしているセルにおいて、予め決められた時間窓内に、送信されたパケットが確実に受信されるように、出トラヒックを運ぶパケットを、交換システムが当該交換システムから送信する時刻を制御する手段と、
(f2)交換システムからの送信に先行する予め決められた時間窓内に、入トラヒックを運ぶパケットを交換システムが確実に受信するように、交換システムが当該交換システムから入トラヒックを送信する時刻を制御する手段とを含む、
(g)無線電話通信システム。)((a)?(g)の見出しは、便宜のため当審が付加した。)

また、甲第1号証の請求項21に、次のように記載されている。(以下、甲第1号証の請求項21に記載されている発明を、「引用発明2」という。)

「21.The system of claim 20 wherein;
a plurality of the cells occasionally simultaneously provide radio-telephone call services to a common one mobile radio-telephone; and
each third means include
means responsive to receipt of outgoing call traffic of the handled call and destined for the one mobile radio-telephone, for replicating the received outgoing call traffic, packetizing each replica of the outgoing call traffic, and addressing the packets of each replica to a different one of the cells that are simultaneously providing the services to the one mobile radio-telephone, and further for receiving packets carrying incoming call traffic of the handled call from each one of the calls that are simultaneously providing the services to the one mobile radio telephone, the packets received from different cells each carrying a copy of the incoming traffic, depacketizing the packets received from the different cells, and selecting only one of the depacketized copies of the incoming traffic for transmission to the destination. 」
(当審訳:
21.請求項20のシステムであって、ここで、
時として、複数のセルが、同時に一つの共通の移動無線電話に対して、無線電話呼サービスを提供し、
各第3の手段は、一台の移動無線電話に向かう、取り扱われている呼の出呼トラヒックの受信に応答し、受信した出呼トラヒックのレプリカを作成し、出呼トラヒックの各レプリカをパケット化し、前記一台の移動無線電話へのサービスを同時に提供している複数のセルの各々へ、各レプリカのパケットを送り、更に、前記一台の移動無線電話へのサービスを同時に提供している複数のセルの各々からの、取り扱われている呼の入呼トラヒックを運ぶパケットを受信し、ただし、複数の異なるセルから受信したパケットは、各々、入トラヒックのコピーを運んでおり、そして、異なったセルからの受信したパケットを非パケット化し、行き先へ送るために入トラヒックの非パケット化されたコピーから一つだけ選択する、
システム。)

(8)本件特許発明1が引用発明1と同一であることは明らかである。したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、本件特許発明1に係る特許は、平成11年法律第41号附則第2条でなお従前の例によるとされる旧特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

また、引用発明2の第3の手段を引用発明1の第2の手段が備えるようにすることは、容易に想到できたことである。したがって、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された引用発明1及び引用発明2から容易に発明することができたものあるから、本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。


2.無効理由2についての判断
本件の発明の詳細な説明に対する補正は、平成8年7月31日付けの手続補正によって、段落番号【0034】における先行技術文献の記載が変更されたのみであり、本件明細書の発明の詳細な説明は、実質的に出願当初の発明の詳細な説明の記載内容と同じである。
したがって、本件特許発明1及び2の構成要件F2は、発明の詳細な説明に記載のない事項であるから、本件特許発明1及び2は、平成6年法律第116号附則第6条でなお従前の例によるとされる旧特許法第36条第5項第1号に規定の要件を満たしておらず、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。


3.無効理由3についての判断
本件の発明の詳細な説明に対する補正は、平成8年7月31日付けの手続補正によって、段落番号【0034】における先行技術文献の記載が変更されたのみであり、本件明細書の発明の詳細な説明は、実質的に出願当初の発明の詳細な説明の記載内容と同じである。
したがって、本件特許発明1及び2の構成要件F2は、発明の詳細な説明に記載のない事項であり、本件の発明の詳細な説明は、本件特許発明1及び2を容易に実施できる程度に記載されていないから、本件特許発明1及び2は、平成6年法律第116号附則第6条でなお従前の例によるとされる旧特許法第36条第4項に規定の要件を満たしておらず、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。


第6.むすび
以上のとおり、無効理由1?3はいずれも理由があり、本件特許発明1及び2は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-07-27 
出願番号 特願平4-198953
審決分類 P 1 123・ 121- Z (H04Q)
P 1 123・ 534- Z (H04Q)
P 1 123・ 531- Z (H04Q)
P 1 123・ 113- Z (H04Q)
最終処分 成立  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 青木 健
清水 稔
登録日 1996-12-05 
登録番号 特許第2588498号(P2588498)
発明の名称 無線アクセス通信システムおよび呼トラヒックの伝送方法  
代理人 萩原 誠  
代理人 小林 純子  
代理人 奥村 直樹  
代理人 服部 誠  
代理人 辻居 幸一  
代理人 谷口 信行  
代理人 黒川 恵  
代理人 渡辺 光  
代理人 那須 威夫  
復代理人 岡本 尚美  
代理人 片山 英二  
代理人 西島 孝喜  
代理人 市川 英彦  

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