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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K
管理番号 1288250
審判番号 不服2013-1272  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-23 
確定日 2014-05-28 
事件の表示 特願2009-501889「個人用セキュアカードの作成方法及びその動作過程」拒絶査定不服審判事件〔平成19年10月 4日国際公開,WO2007/110142,平成21年 9月 3日国内公表,特表2009-531752〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2007年3月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年3月27日,2007年3月1日,イタリア)を国際出願日とする出願であって,平成24年2月14日付けで拒絶理由が通知され,同年6月18日に手続補正がされ,同年9月18日付けで拒絶査定がされ,これに対して,平成25年1月23日に審判請求がされるとともに手続補正がされ,その後,同年5月16日付けで審尋がされ,同年8月7日に回答書が提出されたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年1月23日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであって,補正前の特許請求の範囲の請求項1?13及び補正後の特許請求の範囲の請求項1?12は以下のとおりである。

〈補正前〉
「【請求項1】
カードの厚さ内にすべて組み込まれた,少なくともユーザの生体情報のデータメモリとユーザの生体情報のレセプター(2)を備えた回路及びCPUプロセッサーを含有する電気接触部を備えたカード形の,電子カード,又はインテリジェントカード,又はスマートカード,又はマイクロチップカード,又はマイクロプロセッサーカードとしての個人用セキュアカードの動作方法であって,
前記カードに記憶された生体情報は,正規の動作を可能にするために使用時に入手した生体情報と比較するために用いられ,前記カードは2つのプロセッサーが与えられる個人用セキュアカードの動作方法において,
i)前記2つのプロセッサーは,
前記電気接触部(1)の下方の一側にある前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサーと,
前記電気接触部(1)の正反対の側にある,前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサーと,
から構成され,前記2つのマイクロプロセッサーは,何れも可撓性材料より成るバス(3)によって接続され,
ii)前記生体情報のレセプター(2)は,センサー手段(22)と連関したデジタル式指紋精巧化手段(21)と,メモリプロセッサー(23)とを備えるデジタル式指紋スキャナー(2)たる指紋走査型検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側に含まれたスキャナーの長方形窓上の指によって,横方向に走査動作が実行されることによって指紋を採取することができ,その反対の位置で前記CPUプロセッサー(CPU)の側部に前記電気接触部が取り付けられ,
iii)以下の各ステップ,
a)最初の使用時における1回限りの個人カードの有効化の際,
認定ユーザの前記生体情報の本人絶対識別用の情報作成を,前記生体情報が,前記カードの外部からその情報を読み取り,又は検知し,又は感知することを絶対に不可能にするように前記カードの内部へのみ保存された前記生体情報のメモリに記憶されるように実行し,および,ユーザの個人情報とそのアクセスコードの作成,及びその保存もまた実行するステップと,
b)それに続く再使用に際し,
使用の際に,前記電気接触部(1)の側部に前記カードの挿入後,横方向指紋スキャナーとして機能する前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に前記生体情報を入手できるように,ユーザのそれぞれの指の横断動作を実行すると,
前記生体情報は,その時の再読み取り情報が,以前記憶した生体情報と正確に一致するかどうかを照合確認するために,実際のユーザのその時の生体識別情報の再読み取り情報と,前記カードの内部でのみ比較され,前記以前記憶した生体情報と比較して,スマートカードの内部でのみ,前記照合確認が実行され,次に,前記個人情報及びアクセスコードの照合と本人識別が,正規の動作の操作を継続するために認可されるステップと,
が,動作に必要であることを特徴とする個人用セキュアカードの動作方法。
【請求項2】
カードの厚さ内にすべて組み込まれた,少なくともユーザの生体情報のデータメモリとユーザの生体情報のレセプター(2)を備えた回路及びCPUプロセッサーを含有する電気接触部を備えたカード形の,2つのプロセッサーが与えられた個人用カードであって,前記カードに記憶された生体情報は,使用時に入手した生体情報と比較するために用いられる個人用カードにおいて,
前記カード内にある可撓性を有するバス(3)によって,前記CPUプロセッサー(CPU)と接続された,ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記プロセッサーのうちの一方を備えた,少なくとも1つの横方向に走査する指紋読み取り装置を備え,
前記指紋読み取り装置は,アクセスを可能にする前に,その真正性を確認するために,又は,それぞれの外部サーバーとの電気接触部(1)による接続によって,サービス要求をユーザ本人のものであると確認するために,前記CPUプロセッサーとは反対側にあるメモリプロセッサー(23)に組み込まれた,ユーザの指紋を読み取るための生体識別センサーを備え,
ユーザの前記生体情報のレセプターは,センサー手段(22)と連関したデジタル式指紋精巧化手段(21)と,メモリプロセッサー(23)とを備えるデジタル式指紋スキャナー(2)であり,
前記個人用カードは,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報が記憶される外部から読み取り不可能なメモリをさらに備える,
ことを特徴とする請求項1に記載の動作方法と動作に必要なステップ過程を作動させるための個人用カード。
【請求項3】
前記電気接触部(1)は,データバス,VCC,CLKを通じて,前記CPUプロセッサーと接続することを特徴とする請求項2に記載の個人用カード。
【請求項4】
前記内部バスは,RAM,ROM,EPROMのメモリ接続を備えることを特徴とする請求項2に記載の個人用カード。
【請求項5】
前記カードは,層状化されずに,熱溶融成形によって完全に埋め込まれた前記装置を備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項6】
前記CPUマイクロプロセッサーは,エポキシ樹脂の溶融膜で予め覆われ,前記電気接触部(1)より下方にあることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項7】
前記メモリは,エポキシ樹脂の溶融膜で予め覆われることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項8】
前記個人用カードは,磁気メモリのストリップを有することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項9】
前記個人用カードは,少なくとも1つのRFIDのトランスポンダを備えることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項10】
前記接触部(1)は,入力供給部,クロックシリアル通信装置,又は半二重シリアル通信装置を有することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項11】
前記生体情報のレセプター(2)は,それぞれのDNA識別情報を分析及び分類するための手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の個人用セキュアカードの作成方法。
【請求項12】
前記生体情報のレセプター(2)は,さらに動作を可能にする前に両方の本人識別確認のため,前記DNA識別情報と,それぞれの指紋情報とを一緒に,比較することが可能なマイクロプロセッサー手段を備えることを特徴とする請求項1乃至11記載の個人用セキュアカードの作成方法。
【請求項13】
自律的動作のため内部電池を与えられることを特徴とする請求項1,11,12のいずれか1項に記載の動作方法と動作に必要なステップ過程を作動させるための個人用カード。」

〈補正後〉
「【請求項1】
少なくとも認定ユーザの個人生体情報が記憶される生体情報のデータメモリとユーザの生体情報のレセプター(2)を備えた回路を含有する電気接触部を備えたカード形の,2つのプロセッサーが与えられた個人用カードであって,
前記2つのプロセッサーは,
前記電気接触部(1)の下方の一側にある前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサーと,
前記電気接触部(1)の正反対の側(23)にある,前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサーと,から構成され,前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサーは,何れも可撓性材料より成るバス(3)によって直接接続され,
前記カードは,ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記第2のプロセッサー及び前記生体情報のメモリを備えた,少なくとも1つの横方向に走査する指紋読み取り装置を備え,前記ユーザの生体情報のレセプター(2)は,前記横方向に走査する指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成されるデジタル式指紋精巧化手段(21)を備えるデジタル式指紋スキャナー(2)であり,
前記横方向に走査する指紋読み取り装置は,指紋走査型検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側で第1のマイクロプロセッサーの側の電気接触部と反対側の位置に封入されたスキャナーの長方形窓上の指によって,横方向に走査動作が実行されることによって指紋を採取することができ,
前記生体情報のメモリは前記カードの外部から読み取り不可能であり,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報を記憶し,前記生体情報のメモリは新しい生体識別情報を作成すること又は作成し直すことは不可能であり,前記生体識別情報は前記生体情報のメモリの最初の登録後は更新することができず,
前記第1のマイクロプロセッサー,前記電気接触部,前記第2のマイクロプロセッサーを備えるデジタル式指紋スキャナーから構成される前記ユーザの生体情報のレセプター,及び前記生体情報のメモリは可撓性材料より成る前記バスと共にカードの厚さ内にすべて組み込まれ,
前記カードに記憶された生体情報は,前記生体情報のレセプターを用いて受信された生体情報と比較するために用いられ,カードの管理のための前記第1のマイクロプロセッサーの前記操作を可能にするカードの機能へのアクセスを可能にする前に,その真正性を確認するために,又は,それぞれの外部サーバーとの電気接触部(1)による接続によって,サービス要求をユーザ本人のものであると確認するために,前記比較は前記第2のマイクロプロセッサーを組み込む前記デジタル式指紋スキャナーによって発生し,
a)最初の使用時における1回限りの個人カードの有効化の際,認定ユーザの前記生体情報の本人絶対識別用の情報作成を,前記生体情報が,前記カードの外部からその情報を読み取り,又は検知し,又は感知することを絶対に不可能にするように前記カードの内部へのみ保存された前記生体情報のメモリに記憶されるように実行し,
および,ユーザの個人情報とそのアクセスコードの作成,及びその保存もまた実行するステップと,
b)それに続く再使用に際し,使用の際に,前記電気接触部(1)の側部に前記カードの挿入後,横方向指紋スキャナーとして機能する前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に前記生体情報を入手できるように,ユーザのそれぞれの指の横断動作を実行すると,
前記生体情報は,その時の再読み取り情報が,以前記憶した生体情報と正確に一致するかどうかを照合確認するために,実際のユーザのその時の生体識別情報の再読み取り情報と,前記カードの内部でのみ比較され,前記以前記憶した生体情報と比較して,スマートカードの内部でのみ,前記照合確認が実行され,次に,
前記個人情報及びアクセスコードの照合と本人識別が,正規の動作の操作を継続するために認可されるステップと,
が,動作に必要であることを特徴とする個人用カード。
【請求項2】
前記電気接触部(1)は,データバス,VCC,CLKを通じて,前記CPUプロセッサーと接続することを特徴とする請求項1に記載の個人用カード。
【請求項3】
前記内部バスは,RAM,ROM,EPROMのメモリ接続を備えることを特徴とする請求項1に記載の個人用カード。
【請求項4】
前記カードは,層状化されずに,熱溶融成形によって完全に埋め込まれた前記装置を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項5】
前記CPUマイクロプロセッサーは,エポキシ樹脂の溶融膜で予め覆われ,前記電気接触部(1)より下方にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項6】
前記メモリは,エポキシ樹脂の溶融膜で予め覆われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項7】
前記個人用カードは,磁気メモリのストリップを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項8】
前記個人用カードは,少なくとも1つのRFIDのトランスポンダを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項9】
前記接触部(1)は,入力供給部,クロックシリアル通信装置,又は半二重シリアル通信装置を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の個人用カード。
【請求項10】
前記生体情報のレセプター(2)は,それぞれのDNA識別情報を分析及び分類するための手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の個人用セキュアカードの作成方法。
【請求項11】
前記生体情報のレセプター(2)は,さらに動作を可能にする前に両方の本人識別確認のため,前記DNA識別情報と,それぞれの指紋情報とを一緒に,比較することが可能なマイクロプロセッサー手段を備えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の個人用セキュアカードの作成方法。
【請求項12】
自律的動作のため内部電池を与えられることを特徴とする請求項10,11のいずれか1項に記載の動作方法と動作に必要なステップ過程を作動させるための個人用カード。」

2 補正事項の整理
本件補正前の請求項1及び2についての本件補正の内容を整理すると以下のとおりとなる。

〈補正事項1〉
補正前の請求項1を削除すること。

〈補正事項2〉
補正前の請求項1を引用する形式で記載されていた補正前の請求項2について,独立形式に書き直して補正後の請求項1とするとともに,補正前の請求項2の「ことを特徴とする請求項1に記載の動作方法と動作に必要なステップ過程を作動させるための個人用カード。」を,補正後の請求項1の「ことを特徴とする個人用カード。」とすること。

〈補正事項3〉
補正前の請求項2の,
「カードの厚さ内にすべて組み込まれた,少なくともユーザの生体情報のデータメモリとユーザの生体情報のレセプター(2)を備えた回路及びCPUプロセッサーを含有する電気接触部を備えたカード形の,2つのプロセッサーが与えられた個人用カードであって,前記カードに記憶された生体情報は,使用時に入手した生体情報と比較するために用いられる個人用カードにおいて,
前記カード内にある可撓性を有するバス(3)によって,前記CPUプロセッサー(CPU)と接続された,ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記プロセッサーのうちの一方を備えた,少なくとも1つの横方向に走査する指紋読み取り装置を備え,
前記指紋読み取り装置は,アクセスを可能にする前に,その真正性を確認するために,又は,それぞれの外部サーバーとの電気接触部(1)による接続によって,サービス要求をユーザ本人のものであると確認するために,前記CPUプロセッサーとは反対側にあるメモリプロセッサー(23)に組み込まれた,ユーザの指紋を読み取るための生体識別センサーを備え,
ユーザの前記生体情報のレセプターは,センサー手段(22)と連関したデジタル式指紋精巧化手段(21)と,メモリプロセッサー(23)とを備えるデジタル式指紋スキャナー(2)であり,
前記個人用カードは,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報が記憶される外部から読み取り不可能なメモリをさらに備える,」

補正後の請求項1の,
「少なくとも認定ユーザの個人生体情報が記憶される生体情報のデータメモリとユーザの生体情報のレセプター(2)を備えた回路を含有する電気接触部を備えたカード形の,2つのプロセッサーが与えられた個人用カードであって,
前記2つのプロセッサーは,
前記電気接触部(1)の下方の一側にある前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサーと,
前記電気接触部(1)の正反対の側(23)にある,前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサーと,から構成され,前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサーは,何れも可撓性材料より成るバス(3)によって直接接続され,
前記カードは,ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記第2のプロセッサー及び前記生体情報のメモリを備えた,少なくとも1つの横方向に走査する指紋読み取り装置を備え,前記ユーザの生体情報のレセプター(2)は,前記横方向に走査する指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成されるデジタル式指紋精巧化手段(21)を備えるデジタル式指紋スキャナー(2)であり,
前記横方向に走査する指紋読み取り装置は,指紋走査型検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側で第1のマイクロプロセッサーの側の電気接触部と反対側の位置に封入されたスキャナーの長方形窓上の指によって,横方向に走査動作が実行されることによって指紋を採取することができ,」
「前記第1のマイクロプロセッサー,前記電気接触部,前記第2のマイクロプロセッサーを備えるデジタル式指紋スキャナーから構成される前記ユーザの生体情報のレセプター,及び前記生体情報のメモリは可撓性材料より成る前記バスと共にカードの厚さ内にすべて組み込まれ,
前記カードに記憶された生体情報は,前記生体情報のレセプターを用いて受信された生体情報と比較するために用いられ,カードの管理のための前記第1のマイクロプロセッサーの前記操作を可能にするカードの機能へのアクセスを可能にする前に,その真正性を確認するために,又は,それぞれの外部サーバーとの電気接触部(1)による接続によって,サービス要求をユーザ本人のものであると確認するために,前記比較は前記第2のマイクロプロセッサーを組み込む前記デジタル式指紋スキャナーによって発生し,」
とすること。

〈補正事項4〉
補正前の請求項1の「a)最初の使用時における1回限りの個人カードの有効化の際,認定ユーザの前記生体情報の本人絶対識別用の情報作成を,前記生体情報が,前記カードの外部からその情報を読み取り,又は検知し,又は感知することを絶対に不可能にするように前記カードの内部へのみ保存された前記生体情報のメモリに記憶されるように実行し,および,ユーザの個人情報とそのアクセスコードの作成,及びその保存もまた実行するステップと,b)それに続く再使用に際し,使用の際に,前記電気接触部(1)の側部に前記カードの挿入後,横方向指紋スキャナーとして機能する前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に前記生体情報を入手できるように,ユーザのそれぞれの指の横断動作を実行すると,前記生体情報は,その時の再読み取り情報が,以前記憶した生体情報と正確に一致するかどうかを照合確認するために,実際のユーザのその時の生体識別情報の再読み取り情報と,前記カードの内部でのみ比較され,前記以前記憶した生体情報と比較して,スマートカードの内部でのみ,前記照合確認が実行され,次に,前記個人情報及びアクセスコードの照合と本人識別が,正規の動作の操作を継続するために認可されるステップと,が,動作に必要であること」を,補正後の請求項1に加入すること。

〈補正事項5〉
補正前の請求項2に,新たに「前記生体情報のメモリは前記カードの外部から読み取り不可能であり,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報を記憶し,前記生体情報のメモリは新しい生体識別情報を作成すること又は作成し直すことは不可能であり,前記生体識別情報は前記生体情報のメモリの最初の登録後は更新することができず,」との文言を加入して補正後の請求項1とすること。

3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討

前記〈補正事項1〉は,本件補正前の請求項1を削除するものであるから,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第1号に掲げる請求項の削除に該当する。また,当該補正事項が,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであることは明らかである。

前記〈補正事項2〉は,補正前の請求項2が補正前の請求項1を引用する形式で記載されていたものを,〈補正事項1〉により補正前の請求項1を削除することに伴い,独立形式に書き直すとともに,補正後の請求項1の末尾を「ことを特徴とする個人用カード。」とするものであり,特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除,及び同条同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当する。また,当該補正事項が,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであることは明らかである。

前記〈補正事項3〉は,補正前の請求項1を引用する形式で記載されていた補正前の請求項2を独立形式に書き直すに伴い,補正前の請求項1に記載されていた事項を組み入れるとともに,
「前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサーは,何れも可撓性材料より成るバス(3)によって直接接続され,」
「前記横方向に走査する指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成されるデジタル式指紋精巧化手段(21)」
「前記横方向に走査する指紋読み取り装置は,指紋走査型検出器のセンサーであり,」
「第1のマイクロプロセッサーの側の電気接触部と反対側の位置に封入されたスキャナーの長方形窓」,及び
「前記カードに記憶された生体情報は,前記生体情報のレセプターを用いて受信された生体情報と比較するために用いられ,カードの管理のための前記第1のマイクロプロセッサーの前記操作を可能にするカードの機能へのアクセスを可能にする前に,その真正性を確認するために,又は,それぞれの外部サーバーとの電気接触部(1)による接続によって,サービス要求をユーザ本人のものであると確認するために,前記比較は前記第2のマイクロプロセッサーを組み込む前記デジタル式指紋スキャナーによって発生し,」
との各文言を追加するとともに,語句の順序を整理したものである。上記各文言は,それぞれ,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサー」,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「デジタル式指紋精巧化手段(21)」,補正前の請求項2に記載された発明特定事項である「横方向に走査する指紋読み取り装置」,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「スキャナーの長方形窓」,及び補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「カードに記憶された生体情報」について,技術的により限定するものである。よって,〈補正事項3〉は,特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除,同条同項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮,及び同条同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当する。また,上記各文言に係る事項は,それぞれ,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の,段落【0040】及び図3,段落【0038】及び図3,段落【0048】及び図1,段落【0032】及び図1,並びに段落【0026】及び【0032】に記載されているから,〈補正事項3〉は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであるといえる。

前記〈補正事項4〉は,補正前の請求項1を引用する形式で記載されていた補正前の請求項2を独立形式に書き直すに伴い,補正前の請求項1に記載されていた事項を組み入れることであるから,〈補正事項4〉は,特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除,及び同条同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当する。また,当該補正事項が,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであることは明らかである。

前記〈補正事項5〉は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「生体情報のメモリ」について,技術的により限定するものであるから,〈補正事項5〉は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。また,当該補正事項は,当初明細書等の段落【0024】及び【0027】に記載されているから,〈補正事項5〉は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであるといえる。

上記のとおり,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むから,以下,本件補正後の特許請求の範囲に記載された発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすか)どうかを,補正後の請求項1に係る発明について検討する。

4 独立特許要件についての検討
(1)本願補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりものである。(前記「1 本件補正の内容」〈補正後〉【請求項1】を参照。以下「本願補正発明」という。)

(2)刊行物に記載された発明
〈引用例1〉 特開2006-72890号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-72890号公報(以下「引用例1」という。)には,図1,4?6とともに以下の記載がある。

・「【0001】
本発明は,指紋センサを搭載したICカードに関する。」
・「【0005】
即ち,本発明のICカードは,静電容量型指紋センサ,表示素子,記憶部,及び演算処理部を具備し,前記記憶部には,認証指紋データ,特定情報,及び当該特定情報を利用するためのアプリケーションが記憶されており,前記演算処理部は,前記静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと,前記認証指紋データとを比較し,前記抽出指紋データと,前記認証指紋データとが一致した場合のみに,前記演算処理部は前記アプリケーションを起動し,前記表示素子は前記特定情報を表示することを特徴としている。
【0006】
本発明によれば,演算処理部において,静電容量型指紋センサから抽出された抽出指紋データと,記憶部に記憶された認証指紋データとを比較することによって,ICカードの利用者の個人認証を行うことができ,ICカードの利用者を限定することができる。従って,ICカードの悪用を防止することができ,セキュリティ性が高いICカードを実現できる。
・・・(後略)・・・」
・「【0018】
(ICカードの第1実施形態)
以下,本発明の第1実施形態に係るICカードについて図を参照して説明する。
図1は,本実施形態に係るICカードKを示す平面図である。
図1に示すように,ICカードKは,指紋センサ(静電容量型指紋センサ)10と,電気泳動表示デバイス(表示素子,Electro Phoretic Display,以下,EPDと称する。)11と,接続用IC端子(通信部)12と,画像消去スイッチ(画像消去手段)13と,を備えている。
また,ICカードKの内部には,2枚のプラスチック基材によって挟持されたICチップ等の集積回路が設けられている。そして,ICチップは,後述するように演算処理部(後述)と記憶部(後述)として機能するようになっている。」
・「【0029】
(接続用IC端子)
また,接続用IC端子12は,ICカードKと外部装置20との間で情報の入出力や送受信(通信)を行うためのものである。そして,当該接続用IC端子12は,ICカードKを使用する際に,外部装置20に設けられた端子に接続されるものである。また,接続用IC端子12は,ICカードKの内部に設けられたICチップに接続されており,外部装置とICチップとの間で入出力信号を送受信するようになっている。
・・・(後略)・・・。」
・「【0031】
(演算処理部,記憶部)
次に,図4を参照して,ICカードKに内蔵された演算処理部と記憶部16について説明する。
図4に示すように,ICカードは,ICチップ内に第1演算処理部14と,第2演算処理部15と,記憶部16とを備えており,更に,当該ICチップに電力を供給する電源部17を備えている。
【0032】
ここで,第1演算処理部14においては,ICカードKは別体の外部装置20が具備するリーダライタと,接続用IC端子12との間で特定情報の入出力が行われるようになっている。また,第1演算処理部14は,制御部,駆動用プログラムを記憶するマスクROM,入出力データや演算データを一時格納し出力側に引き渡す役割を有するRAM,及び演算部から構成されている。
【0033】
また,第2演算処理部15においては,指紋センサ10に入力された指紋情報を抽出指紋データとして入力されるようになっており,また,画像消去スイッチ13がON状態になった場合にON信号が入力されるようになっている。更に,第2演算処理部15は,制御指令に基づいて,記憶部16から特定情報を読み出して,EPD11に当該特定情報を表示されるようになっている。また,第2演算処理部15は,制御部,駆動用プログラムを記憶するマスクROM,指紋情報等の入出力データや演算データを一時格納し出力側に引き渡す役割を有するRAM,及び演算部から構成されている。
【0034】
また,記憶部16は,EEPROMを有しており,第1演算処理部14や第2演算処理部15において処理された様々な情報を記憶するようになっている。また,アプリケーションを動作させるためのプログラムが記憶されている。
本実施形態においては,アプリケーションとして運転免許証の表示プログラムが記憶されている。そして,記憶部16の記憶される特定情報としては,例えば,本人の運転免許証の名前,住所,番号,生年月日等が記憶されている。更に,記憶部16には,ICカードKの利用者を特定するために,利用者の指紋情報が認証指紋データとして記憶されている。」
・「【0036】
次に,利用者がICカードKを使用する形態について説明する。
図5は,ICカードKにおいて利用者の個人認証を行った後に,運転免許証を表示するアプリケーションを動作させるフローチャート図である。
【0037】
まず,利用者が指紋センサ10に指を押し当てると,第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納される(ステップS1)。そして,当該抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較される。そして,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合(ステップS2)に,運転免許証を表示するためのアプリケーションが起動し(ステップS3),記憶部16に格納されている運転免許証の名前,住所,番号,生年月日等がEPD11に表示される(ステップS4)。そして,運転免許証の表示をした後に,表示する必要がなくなった場合には,利用者の判断に基づいて,画像消去スイッチ13がONとなり,EPD11が表示している画像が消去される(ステップS5)。
【0038】
なお,本実施形態においては,運転免許証を表示するアプリケーションを限定するものではなく,他のアプリケーションを利用することも可能である。
例えば,本実施形態のICカードをクレジットカードやバンクカードとして利用することが可能である。
【0039】
このような場合,ICカードKは,EPD11を備えているので,使用金額や残高等の表示を行うことが可能となる。更に,外部装置20のリーダライタと接続用IC端子12とが接続されることで,ICカードKと外部装置20との間で通信可能となり,ICカードKに記憶されていた情報を更新することも可能となる。具体的には,クレジットカードの使用後にリーダライタによって第1演算処理部14のRAMに使用金額,残高情報等が書き込まれ,更に,記憶部16において記憶される。そして,第2演算処理部15において抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合,記憶部16に記憶された情報は,EPD11に表示される。従って,ICカードKにおいては,予め記憶された情報だけでなく,外部装置20から入力された更新情報も表示可能となる。
【0040】
なお,ICカードKにおいては,指紋認証後に接続用IC端子12が有効になるプログラムが第1演算処理部14のマスクROMに格納されてもよい。
このような場合,指紋センサ10で認証が行われなければ,当該ICカードKは使用不可能となるために,本人以外の使用が不可能となる。また,指紋照合が行われた結果,記憶部16に格納されている認証指紋データと一致しなかった場合はEPD11に使用不可の表示をしてもよい。更に,指紋認証は,ICカードK内のみで行われるため,外部に使用者の指紋情報が漏洩することも無い。従って,更に高いセキュリティ性を有するICカードKを実現できる。」
・「【0045】
(ICカードの第2実施形態)
次に,本発明の第2実施形態に係るICカードについて図を参照して説明する。
本実施形態においては,先に記載した第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し,同一構成には同一符号を付して説明を簡略化している。
図6は,本実施形態におけるICカードKの構成を説明するためのブロック図である。
【0046】
図6に示すように,本実施形態のICカードKにおいては,記憶部16が複数のEEPROMを備えた構成となっている。そして,複数のEEPROMの各々には,複数の異なる認証指紋データ,複数のアプリケーションを動作させるプログラム,各アプリケーションにおける個人情報等の特定情報が格納されている。具体的には,EEPROM1には利用者の必要な指の本数の認証指紋データが格納されており,EEPROM2には運転免許証の表示プログラムと使用情報が格納されており,EEPROM3にはクレジットカードのプログラムと使用情報が格納されており,EEPROM4にはバンクカードのプログラムと使用情報が格納されている。このようにICカードKの利用プログラム毎にそれぞれの対応したメモリ領域のEEPROMが記憶部15に設けられている。
・・・(後略)・・・」

ここで,段落【0018】の記載とともに,図1を参照すると,接続用IC端子12と指紋センサ(静電容量型指紋センサ)10は,ICカードの同じ面側における反対側の位置に設けられていることが見て取れる。
また,
段落【0018】及び【0031】の記載とともに図1及び図4を参照すると,ICカードKが備える,指紋センサ10,電気泳動表示デバイス11,接続用IC端子12,画像消去スイッチ13,並びに,第1演算処理部14,第2演算処理部15,及び記憶部16を備えるICチップは,全てICカードKの厚さ内に設けられていることが見て取れる。

段落【0032】及び【0033】の記載から,「第1演算処理部14」及び「第2演算処理部15」は,各々「演算部」を備えていることがわかる。

段落【0034】に記載された,「記憶部16の記憶される特定情報」である「本人の運転免許証の名前,住所,番号,生年月日等」は,個人情報といえるものである。それゆえ,記憶部16には利用者本人の個人情報が記憶されているといえる。また,段落【0037】に記載された,「記憶部16に格納されている運転免許証の名前,住所,番号,生年月日等がEPD11に表示される」ことは,個人情報が表示されるということができる。

以上を総合し,段落【0045】?【0046】に記載された「ICカードの第2実施形態」において,段落【0040】に記載された「指紋認証後に接続用IC端子12が有効になるプログラムが第1演算処理部14のマスクROMに格納され」たものに注目すると,引用例1には以下の発明が記載されているものと認められる。(以下「引用発明」という。)

「指紋センサを搭載したICカードKであって,
ICカードKには,指紋センサ10,電気泳動表示デバイス11,接続用IC端子12,及び画像消去スイッチ13,を備えられるとともに,第1演算処理部14,第2演算処理部15,及び記憶部16を備えるICチップが,全てICカードKの厚さ内に設けられており,
接続用IC端子12は,ICカードKを使用する際に,外部装置20に設けられた端子に接続されるものであり,また,接続用IC端子12は,ICカードKの内部に設けられたICチップに接続されており,
接続用IC端子12と指紋センサ10は,ICカードの同じ面側における反対側の位置に設けられており,
第1演算処理部14においては,演算部を備えて,ICカードKは別体の外部装置20が具備するリーダライタと,接続用IC端子12との間で特定情報の入出力が行われるようになっており,
第2演算処理部15においては,演算部を備えて,指紋センサ10に入力された指紋情報を抽出指紋データとして入力されるようになっており,
記憶部16は,複数のEEPROM1?4を有しており,第1演算処理部14や第2演算処理部15において処理された様々な情報を記憶するようになっていて,EEPROM1には利用者の必要な指の本数の認証指紋データが格納され,更に利用者本人の個人情報も格納されているものでなり,
利用者が指紋センサ10に指を押し当てると,第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納され,当該抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較されて,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合に,接続用IC端子12が有効となるとともに,記憶部16に格納された前記個人情報の表示ができるものであり,
指紋センサ10で認証が行われなければ,当該ICカードKは使用不可能となるために,本人以外の使用が不可能となるものであることにより,指紋認証が,ICカードK内のみで行われるため,外部に使用者の指紋情報が漏洩することも無く,高いセキュリティ性を有するICカードK。」

〈引用例2〉 特開2006-79181号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2006-79181号公報(以下「引用例2」という。)には,図1?4,8?14とともに以下の記載がある。
・「【0001】
本発明は,生体データを利用した認証を行う生体照合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワークを介した取り引きなどでユーザの正当性を認証するために,例えば,ユーザから指紋,静脈パターン,虹彩などの生体データを検出し,それを予め認証装置が保持した照合用生体データと比較するシステムがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで,このようなシステムでは,認証装置に予め取得した照合用生体データを提供する必要があり,認証装置を運用する事業者に高い信頼性が要求される。
しかしながら,ユーザは事業者の信頼性を正確に把握できず,自らの照合用生体データを事業者に提供したくないという要請がある。
また,近年,ネットワーク上でサーバを介さずに端末装置間で通信を行うP2P(Peer to Peer)通信が普及している。このようなP2P通信は,サーバを介さないため,上述した従来のシステムでは,生体認証を行うことができないという問題がある。
【0004】
本発明は,ユーザが自らの生体データを認証事業者に提供せずに,生体認証を利用できる生体照合装置を提供することを目的とする。」
・「【0006】
本発明の生体照合装置の作用は以下のようになる。
生体データ検出手段が,生体から生体データを取得する。
次に,制御手段が,前記生体データ検出手段が取得した前記生体データとメモリに記憶された前記照合用生体データとを比較して照合する処理をセキュアな状態で行う。
次に,前記制御手段が,前記比較処理において一致したと判断したことを条件にインタフェースを介して前記電子機器に所定の要求あるいは所定のデータを出力する処理をセキュアな状態で行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,ユーザが自らの生体データを認証事業者に提供せずに,生体認証を利用できる生体照合装置を提供することができる。」
・「【0009】
図1は,本発明の実施形態のデータ処理システム1の全体構成図である。
図1に示すように,データ処理システム1は,例えば,コンテンツ生成電子機器E_1,配信電子機器E_2,検索電子機器E_3,ライセンス発行電子機器E_4,再生電子機器E_5,決済装置5,ユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-L,BUM-Aを有する。
【0010】
以下,図1に示す各構成要素について詳細に説明する。
〔電子機器E〕
図2は,図1に示すコンテンツ生成電子機器E_1,配信電子機器E_2,検索電子機器E_3,ライセンス発行電子機器E_4,再生電子機器E_5(以下,電子機器Eとも記す)の構成図である。
図2に示すように,電子機器Eは,例えば,デ-タベース21,ROM22,RAM23,CPU24,インタフェース25,BUMインタフェース26,セキュアメモリ27およびセキュアチップ28を有する。
【0011】
デ-タベース21は,コンテンツデータCONTを記憶する。
ROM22は,CPU24およびセキュアチップ28で実行されるプログラム,並びにデータを記憶する。
RAM23は,CPU24およびセキュアチップ28で処理されるデータあるいは処理中のデータを記憶する。
CPU24は,電子機器Eの動作を統括的に制御する。
インタフェース25は,ネットワークなどを介して他の電子機器Eとの間で通信を行うために用いられる。
BUMインタフェース26は,その電子機器Eに対応したユーザのユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-L,BUM-Aを装着部に装着し,ユーザ生体処理モジュールとの間でデータ入出力を行う。
また,BUMインタフェース26は,ユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-L,BUM-Aとの間で赤外線による近距離無線通信を行ってもよい。」
・「【0013】
〔ユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-L,BUM-A〕
図3は,図1に示すユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-L,BUM-Aの構成図である。
図3に示すように,ユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-L,BUM-Aは,例えば,生体センサ31,インタフェース32,セキュアメモリ33およびセキュアチップ34を有する。
ユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-L,BUM-Aは,例えば,カ-ドや携帯型機器に組み込まれる可搬型の装置である。
【0014】
生体センサ31は,いわゆるバイオメトリクスセンサであり,ユーザの指紋,静脈パターン,虹彩などの生体データを検出する。
インタフェース32は,電子機器Eとの間で通信を行うために用いられる。
インタフェース32は,電子機器Eの装着部に装着され,電子機器Eとの間でデータ入出力を行う。
また,インタフェース32は,電子機器Eとの間で赤外線による近距離無線通信を行ってもよい。
セキュアメモリ33は耐タンパ性の電子回路であり,セキュアチップ34で用いられるデータをセキュアな状態で記憶する。
セキュアチップ34は,耐タンパ性の電子回路であり,ユーザ生体認証などに関する処理をセキュアな状態で行う。」
・「【0015】
図4は,データ処理システム1の動作概要の一例を説明するための図である。
図4に示すように,データ処理システム1では,例えば,配信電子機器E_2と再生電子機器E_5との間で機器認証が行われ,機器認証により正当性が確認されると,配信電
子機器E_2から再生電子機器E_5に暗号化されたコンテンツデータCONTが送信される。
また,ライセンス発行電子機器E_4と再生電子機器E_5との間で機器認証および生体認証を行い,これらの認証により正当性を確認したことを条件に,ライセンス発行電子機器E_4から再生電子機器E_5に,コンテンツデータCONTの利用許可を与えるライセンスデータを送信する。
再生電子機器E_5は,ライセンスデータに含まれるコンテンツ鍵データを基に,上記暗号化されたコンテンツデータを復号した後に再生等の処理を行う。
データ処理システム1では,電子機器Eの各々に対して機器の識別データD_ID,並びに機器公開鍵証明書データD_PKCが発行される。
電子機器Eは,相互間で通信を行う際に,公開鍵暗号基盤PKI(Public Key Infrastructure)による相互認証を行う。
また,データ処理システム1では,各ユーザに対してユーザの識別データU_ID,ユーザ公開鍵証明書データU_PKCおよびユーザ秘密鍵データU_SKが発行され,これらとユーザの照合用生体データR_BDがユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-A,BUM-Lのセキュアメモリ33にセキュアな状態で記憶される。
また,ユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-A,BUM-Lは,生体センサ31を備え,生体センサ31が検出した生体データBDと照合用生体データR_BDとの照合をユーザ生体処理モジュール内のセキュアチップ34でセキュアな状態で行う。」
・「【0017】
〔ユーザ登録処理ST2〕
図8および図9は,データ処理システム1によるユーザ登録処理ST2を説明するための図である。
ステップST41:
ユーザが電子機器Eを購入する。
ステップST42:
ユーザが電子機器Eをセットアップする。
ステップST43:
ユーザが,図2に示す電子機器EのBUMインタフェース26に,図3に示すユーザ生体処理モジュールBUMのインタフェース32を装着する。
ステップST44:
ユーザ生体処理モジュールBUMの生体センサ31が,ユーザの生体(指)から生体データBDを検出する。
ステップST45:
ユーザ生体処理モジュールBUMのセキュアチップ34が,例えば,所定の認証機関に要求を出し,当該ユーザのユーザ秘密鍵データU_SKおよびユーザ公開鍵データU_PKの発行を受け,これらをセキュアメモリ33に書き込む。
ステップST46:
ユーザ生体処理モジュールBUMのセキュアチップ34が,ステップST45で発行を受けたユーザ公開鍵データU_PK,並びに当該ユーザの個人データを含むユーザ登録要求をユーザ管理装置55に送信する。
【0018】
ステップST47:
ユーザ管理装置55は,ステップST46で受信したユーザ登録要求に応じて,当該ユーザを登録すべきか審査処理を行い,登録すべきと判断した場合にステップST48に進む。
ステップST48:
ユーザ管理装置55は,当該ユーザを登録し,ユーザ識別データU_IDを発行する。
・・・(中略)・・・
ステップST52:
ユーザ生体処理モジュールBUMのセキュアチップ34は,ステップST44で生成した生体データから抽出した特徴データを照合用生体データR_BDとしてセキュアメモリ33に書き込む。
また,セキュアチップ34は,ステップST51で受信したユーザ公開鍵証明書データU_PKCと識別データU_IDとをセキュアメモリ33に書き込む。」
・「【0019】
〔照合用生体データR_BDの登録処理〕
以下,図9に示すステップST44,ST52により,図3に示すセキュアメモリ33に照合用生体データR_BDを登録する処理を説明する。 図10?図12は,当該処理を説明するための図である。
図11に示す各ステップについて説明する。
ステップST61:
ユーザ生体処理モジュールBUMの生体センサ31が,ユーザの生体(指)から生体データBDを検出する。
当該ステップST61は,図9に示すステップST44に対応している。
ステップST62:
セキュアチップ34は,ステップST61で検出した生体データBDから特徴データを抽出する。
特徴データは,例えば,ユーザに固有の指紋パターン,血管パターン,声紋パターンなどである。
【0020】
ステップST63:
セキュアチップ34は,ステップST62で抽出した特徴データを基に,照合に実際に用いられる生体本体データを生成する。
ステップST64:
セキュアチップ34は,照合用生体データR_BDの識別データR_BD_IDを生成する。
セキュアチップ34は,例えば,生体センサ31の識別データと,所定の乱数とを組み合わせて識別データR_BD_IDを生成する。
なお,セキュアチップ34は,ユーザ生体処理モジュールBUMの識別データD_IDと,所定の乱数とを組み合わせて識別データR_BD_IDを生成してもよい。
【0021】
ステップST65:
セキュアチップ34は,図12に示すように,ステップST64で生成した識別データR_BD_IDと,ユーザの識別データU_IDと,ステップST63で生成した生体本体データとを含む照合用生体データR_BDを生成する。
ステップST66:
セキュアチップ34は,ステップST65で生成した照合用生体データR_BDを,図3に示すセキュアメモリ33に書き込む。」
・「【0022】
〔ログイン処理ST5〕
図13および図14は,電子機器Eへのログイン処理を説明するためのフローチャートである。
以下,図14に示す各ステップについて説明する。
ステップST71:
ユーザ生体処理モジュールBUM(BUM-A,BUM-L)の生体センサ31が,ユーザの生体(指)から生体データBDを検出する。
ステップST72:
セキュアチップ34は,ステップST71で検出した生体データBDから前述した特徴データを抽出し,当該特徴データを基に,照合に実際に用いられる特徴データを生成する。
ステップST73:
セキュアチップ34は,セキュアメモリ33から照合用生体データR_BDを読み出す。
ステップST74:
セキュアチップ34は,ステップST72で生成した特徴データと,ステップST73で読み出した照合用生体データR_BDの生体本体データとを比較して照合を行う。
ステップST75:
セキュアチップ34は,ステップST74における照合において,生体データBDが正当であると判断するとステップST76に進み,そうでない場合には処理を終了する(ログイン不許可通知を行う)。
【0023】
ステップST76:
セキュアチップ34は,セキュアメモリ33からユーザ秘密鍵データU_SK(BUM)を読み出す。
ステップST77:
セキュアチップ34は,インタフェース32を介して電子機器Eのセキュアチップ28にログイン要求を出力する。
ステップST78:
セキュアチップ34は,ステップST76で読み出したユーザ秘密鍵データU_SKを用いて,電子機器Eのセキュアチップ28との間で相互認証を行う。
ステップST79:
セキュアチップ34は,ステップST78の相互認証により互いの正当性を確認すると(成功すると)ステップST80に進み,そうでない場合には処理を終了する(ログイン不許可通知を行う)。
ステップST80:
ユーザ生体処理モジュールBUMが電子機器Eにログインする。」
・「【0040】
以上説明したように,データ処理システム1によれば,ユーザ生体処理モジュールBUM,BUM-A,BUM-L内が,当該モジュール内の生体センサ31において検出した生体データBDを,当該モジュール内のセキュアメモリ33に記憶された照合用生体データR_BDを用いてセキュアな状態で照合する。
そのため,ユーザは自らの照合用生体データR_BDを認証事業者に提供せずに生体認証を安心して利用できる。
・・・(後略)・・・」

以上を総合すると,引用例2には以下の発明が記載されているものと認められる。

「カ-ドや携帯型機器に組み込まれるユーザ生体処理モジュールBUMであって,
ユーザ生体処理モジュールBUMは,生体センサ31,インタフェース32,セキュアメモリ33およびセキュアチップ34を有し,
生体センサ31は,いわゆるバイオメトリクスセンサであり,ユーザの指紋,静脈パターン,虹彩などの生体データを検出するものであり,
セキュアメモリ33は耐タンパ性の電子回路であり,セキュアチップ34で用いられるデータをセキュアな状態で記憶するものであり,
ユーザの登録に当たっては,
ユーザ生体処理モジュールBUMの生体センサ31が,ユーザの生体(指)から生体データBDを検出し,
ユーザ生体処理モジュールBUMのセキュアチップ34が,例えば,所定の認証機関に要求を出し,当該ユーザのユーザ秘密鍵データU_SKおよびユーザ公開鍵データU_PKの発行を受け,これらをセキュアメモリ33に書き込み,
ユーザ生体処理モジュールBUMのセキュアチップ34が,発行を受けたユーザ公開鍵データU_PK,並びに当該ユーザの個人データを含むユーザ登録要求をユーザ管理装置55に送信し,
ユーザ生体処理モジュールBUMのセキュアチップ34は,生体データから抽出した特徴データを照合用生体データR_BDとしてセキュアメモリ33に書き込み,また,セキュアチップ34は,受信したユーザ公開鍵証明書データU_PKCと識別データU_IDとをセキュアメモリ33に書き込むものであり,
ログイン処理に当たっては,
ユーザ生体処理モジュールBUMの生体センサ31が,ユーザの生体(指)から生体データBDを検出し,
セキュアチップ34は,検出した生体データBDから前述した特徴データを抽出し,当該特徴データを基に,照合に実際に用いられる特徴データを生成し,
セキュアチップ34は,前記生成した特徴データと,読み出した照合用生体データR_BDの生体本体データとを比較して照合を行い,
セキュアチップ34は,前記照合において,生体データBDが正当であると判断すると,読み出したユーザ秘密鍵データU_SKを用いて,電子機器Eのセキュアチップ28との間で相互認証を行い,
セキュアチップ34が,前記相互認証により互いの正当性を確認すると, ユーザ生体処理モジュールBUMが電子機器Eにログインできるものである,
ユーザ生体処理モジュールBUM。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

・引用発明の「接続用IC端子12」は,本願補正発明の「電気接触部」に相当する。また,引用発明の「予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データ」における「登録されていた利用者の認証指紋データ」は,本願補正発明の「認定ユーザの個人生体情報」に相当し,引用発明の「記憶部16」は本願補正発明の「データメモリ」に相当する。また,引用発明の「指紋センサ10」は「利用者が」「指を押し当てる」ものであるから,本願補正発明の「ユーザの生体情報のレセプター」に相当する。また,引用発明において,「第1演算処理部14」及び「第2演算処理部15」は各々「演算部」を備えるとともに,ともに「ICチップ」として形成されているものであるから,前記「第1演算処理部14」の「演算部」及び「第2演算処理部15」の「演算部」は,いずれもマイクロプロセッサということができる。そして,引用発明においては「指紋センサ10,電気泳動表示デバイス11,接続用IC端子12,及び画像消去スイッチ13,を備えられるとともに,第1演算処理部14,第2演算処理部15,及び記憶部16を備えるICチップ」によって回路が構成されていることは明らかである。また,引用発明の「ICカードK」は個人で用いうることは明らかであるから,本願補正発明の「個人用カード」ということができる。
そうすると,引用発明の「ICカードKには,指紋センサ10,電気泳動表示デバイス11,接続用IC端子12,及び画像消去スイッチ13,を備えられるとともに,第1演算処理部14,第2演算処理部15,及び記憶部16を備えるICチップが,」「設けられており」,「第1演算処理部14においては,演算部を備えて」おり,「第2演算処理部15においては,演算部を備えて」おり,また,「記憶部16」には「予め」「利用者の認証指紋データ」が「登録され」るものは,本願補正発明の「少なくとも認定ユーザの個人生体情報が記憶される生体情報のデータメモリとユーザの生体情報のレセプター(2)を備えた回路を含有する電気接触部を備えたカード形の,2つのプロセッサーが与えられた個人用カード」に相当する。

・引用発明の「接続用IC端子12と指紋センサ10は,ICカードの同じ面側における反対側の位置に設けられて」いるところ,「利用者が指紋センサ10に指を押し当てる」ものであるから,引用発明の当該構成と,本願補正発明の「前記横方向に走査する指紋読み取り装置は,指紋走査型検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側で第1のマイクロプロセッサーの側の電気接触部と反対側の位置に封入されたスキャナーの長方形窓上の指によって,横方向に走査動作が実行されることによって指紋を採取することができ」る構成とは,「指紋読み取り装置は,指紋検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側で電気接触部と反対側の位置に封入された窓上の指によって,指紋を採取することができ」る点で一致する。

・上述のとおり,引用発明における「第1演算処理部14」の「演算部」は,マイクロプロセッサということができ,また,「第1演算処理部14においては,演算部を備えて,ICカードKは別体の外部装置20が具備するリーダライタと,接続用IC端子12との間で特定情報の入出力が行われるようになって」いることから,外部から信号を受けて,ICカードKの動作をつかさどるものということができる。よって,引用発明の「第1演算処理部14」の「演算部」と,本願補正発明の「前記電気接触部(1)の下方の一側にある前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサー」とは,「前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサー」である点で一致する。

・上述のとおり,引用発明における「第2演算処理部15」の「演算部」は,マイクロプロセッサということができ,また,「第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納され,当該抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較されて,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定」されるものであるから,引用発明の当該構成と,本願補正発明の「前記カードは,ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記第2のプロセッサー及び前記生体情報のメモリを備えた,少なくとも1つの横方向に走査する指紋読み取り装置を備え,前記ユーザの生体情報のレセプター(2)は,前記横方向に走査する指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成されるデジタル式指紋精巧化手段(21)を備えるデジタル式指紋スキャナー(2)であ」ることとは,「前記カードは,ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記第2のプロセッサー及び前記生体情報のメモリを備えた,少なくとも1つの指紋読み取り装置を備え,前記ユーザの生体情報のレセプター(2)は,前記指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成される指紋スキャナー(2)であ」る点で一致する。また,引用発明の「第2演算処理部15」の「演算部」と,本願補正発明の「前記電気接触部(1)の正反対の側(23)にある,前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサー」とは,「前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサー」である点で一致する。

・引用発明の「記憶部16は,複数のEEPROM1?4を有しており,第1演算処理部14や第2演算処理部15において処理された様々な情報を記憶するようになっていて,EEPROM1には利用者の必要な指の本数の認証指紋データが格納されているものでな」ることと,本願補正発明の「前記生体情報のメモリは前記カードの外部から読み取り不可能であり,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報を記憶し,前記生体情報のメモリは新しい生体識別情報を作成すること又は作成し直すことは不可能であり,前記生体識別情報は前記生体情報のメモリの最初の登録後は更新することができ」ないこととは,「前記生体情報のメモリは,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報を記憶」するものである点で一致する。

・引用発明の「ICカードKには,指紋センサ10,電気泳動表示デバイス11,接続用IC端子12,及び画像消去スイッチ13,を備えられるとともに,第1演算処理部14,第2演算処理部15,及び記憶部16を備えるICチップが,全てICカードKの厚さ内に設けられて」いることと,本願補正発明の「前記第1のマイクロプロセッサー,前記電気接触部,前記第2のマイクロプロセッサーを備えるデジタル式指紋スキャナーから構成される前記ユーザの生体情報のレセプター,及び前記生体情報のメモリは可撓性材料より成る前記バスと共にカードの厚さ内にすべて組み込まれ」こととは,「前記第1のマイクロプロセッサー,前記電気接触部,前記第2のマイクロプロセッサーを備える指紋スキャナーから構成される前記ユーザの生体情報のレセプター,及び前記生体情報のメモリは,カードの厚さ内にすべて組み込まれ」る点で一致する。

・引用発明の「利用者が指紋センサ10に指を押し当てると,第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納され,当該抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較されて,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合に,接続用IC端子12が有効となり,指紋センサ10で認証が行われなければ,当該ICカードKは使用不可能となる」ことにおいて,「接続用IC端子12が有効とな」ることは,「第1演算処理部14においては,演算部を備えて,ICカードKは別体の外部装置20が具備するリーダライタと,接続用IC端子12との間で特定情報の入出力が行われるようになって」おり,また,前述のとおり,引用発明の「第1演算処理部14」の「演算部」は,「前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサー」といえることから,本願補正発明の「カードの管理のための前記第1のマイクロプロセッサーの前記操作を可能にするカードの機能へのアクセスを可能にする」ことに相当する。
そうすると,引用発明の「利用者が指紋センサ10に指を押し当てると,第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納され,当該抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較されて,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合に,接続用IC端子12が有効となるとともに,記憶部16に格納された前記個人情報の表示ができるものであり, 指紋センサ10で認証が行われなければ,当該ICカードKは使用不可能となる」ことは,本願補正発明の「前記カードに記憶された生体情報は,前記生体情報のレセプターを用いて受信された生体情報と比較するために用いられ,カードの管理のための前記第1のマイクロプロセッサーの前記操作を可能にするカードの機能へのアクセスを可能にする前に,その真正性を確認するために,又は,それぞれの外部サーバーとの電気接触部(1)による接続によって,サービス要求をユーザ本人のものであると確認するために,前記比較は前記第2のマイクロプロセッサーを組み込む前記デジタル式指紋スキャナーによって発生」することに相当する。

・引用発明の「利用者が指紋センサ10に指を押し当てると,第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納され,当該抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較されて,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合に,接続用IC端子12が有効となるとともに,記憶部16に格納された前記個人情報の表示ができるものであり,指紋センサ10で認証が行われなければ,当該ICカードKは使用不可能となる」ことにおいて,「抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合に,接続用IC端子12が有効とな」るものであるから,当該判定時に「接続用IC端子12」が「外部装置20に設けられた端子に接続され」,「接続用IC端子12が有効とな」ったとき「ICカードKは別体の外部装置20が具備するリーダライタと,接続用IC端子12との間で特定情報の入出力が行われるようになって」いることは明らかである。また,「記憶部16に格納された前記個人情報の表示ができる」ことにより,個人情報の照合が可能となることは明らかである。この際,「接続用IC端子12」が「外部装置20に設けられた端子に接続され」るには,「接続用IC端子12」が設けられたICカードの面側に「外部装置20に設けられた端子」がくるように「外部装置20」に挿入させること,すなわち,「接続用IC端子12」の側部にカードを挿入することは当然である。
そうすると,引用発明の「利用者が指紋センサ10に指を押し当てると,第2演算処理部15のRAMに一時的に抽出指紋データが格納され,当該抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較されて,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致していると判定された場合に,接続用IC端子12が有効となるとともに,記憶部16に格納された前記個人情報の表示ができるものであり,指紋センサ10で認証が行われなければ,当該ICカードKは使用不可能となるために,本人以外の使用が不可能となるものであることにより,指紋認証が,ICカードK内のみで行われる」ことと,本願補正発明の「b)それに続く再使用に際し,使用の際に,前記電気接触部(1)の側部に前記カードの挿入後,横方向指紋スキャナーとして機能する前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に前記生体情報を入手できるように,ユーザのそれぞれの指の横断動作を実行すると,前記生体情報は,その時の再読み取り情報が,以前記憶した生体情報と正確に一致するかどうかを照合確認するために,実際のユーザのその時の生体識別情報の再読み取り情報と,前記カードの内部でのみ比較され,前記以前記憶した生体情報と比較して,スマートカードの内部でのみ,前記照合確認が実行され,次に,前記個人情報及びアクセスコードの照合と本人識別が,正規の動作の操作を継続するために認可されるステップと,が,動作に必要であること」とは,「使用の際に,前記電気接触部(1)の側部に前記カードの挿入後,指紋スキャナーとして機能する前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に前記生体情報を入手できるように,ユーザのそれぞれの指の指紋採取を実行すると,前記生体情報は,その時の読み取り情報が,以前記憶した生体情報と正確に一致するかどうかを照合確認するために,実際のユーザのその時の生体識別情報の読み取り情報と,前記カードの内部でのみ比較され,前記以前記憶した生体情報と比較して,スマートカードの内部でのみ,前記照合確認が実行され,次に,前記個人情報の照合と本人識別が認可されるステップと,が,動作に必要であること」である点で一致する。

以上から,引用発明と本願補正発明とは以下の点で一致する。
「 少なくとも認定ユーザの個人生体情報が記憶される生体情報のデータメモリとユーザの生体情報のレセプター(2)を備えた回路を含有する電気接触部を備えたカード形の,2つのプロセッサーが与えられた個人用カードであって,
前記2つのプロセッサーは,
前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサーと,
前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサーと,から構成され,
前記カードは,ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記第2のプロセッサー及び前記生体情報のメモリを備えた,少なくとも1つの指紋読み取り装置を備え,前記ユーザの生体情報のレセプター(2)は,前記指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成される指紋スキャナー(2)であり,
前記指紋読み取り装置は,指紋検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側で電気接触部と反対側の位置に封入された窓上の指によって,指紋を採取することができ,
前記生体情報のメモリは,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報を記憶するものであり,
前記第1のマイクロプロセッサー,前記電気接触部,前記第2のマイクロプロセッサーを備える指紋スキャナーから構成される前記ユーザの生体情報のレセプター,及び前記生体情報のメモリは,カードの厚さ内にすべて組み込まれ,
前記カードに記憶された生体情報は,前記生体情報のレセプターを用いて受信された生体情報と比較するために用いられ,カードの管理のための前記第1のマイクロプロセッサーの前記操作を可能にするカードの機能へのアクセスを可能にする前に,その真正性を確認するために,又は,それぞれの外部サーバーとの電気接触部(1)による接続によって,サービス要求をユーザ本人のものであると確認するために,前記比較は前記第2のマイクロプロセッサーを組み込む前記指紋スキャナーによって発生し,
使用の際に,前記電気接触部(1)の側部に前記カードの挿入後,指紋スキャナーとして機能する前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に前記生体情報を入手できるように,ユーザのそれぞれの指の指紋採取を実行すると,
前記生体情報は,その時の読み取り情報が,以前記憶した生体情報と正確に一致するかどうかを照合確認するために,実際のユーザのその時の生体識別情報の読み取り情報と,前記カードの内部でのみ比較され,前記以前記憶した生体情報と比較して,スマートカードの内部でのみ,前記照合確認が実行され,次に,
本人識別が,認可されるステップと,
が,動作に必要であることを特徴とする個人用カード。」

一方,両者は,以下の各点で相違する。

《相違点1》
本願補正発明は,「前記電気接触部(1)の下方の一側にある前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサー」を備えるのに対して,引用発明は,「前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサー」に対応する構成は備えるものの,当該「第1のマイクロプロセッサー」が「前記電気接触部(1)の下方の一側にある」ことまでは特定されていない点。

《相違点2》
本願補正発明は,「前記電気接触部(1)の正反対の側(23)にある,前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサー」を備えるのに対して,引用発明は「前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサー」に対応する構成は備えるものの,「前記電気接触部(1)の正反対の側(23)にある」ことまでは特定されていない点。

《相違点3》
本願補正発明は,「前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサーは,何れも可撓性材料より成るバス(3)によって直接接続され」る構成を備え,また,「可撓性材料より成る前記バス」が「カードの厚さ内に」「組み込まれ」る構成を備えるのに対して,引用発明は「前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサー」に対応する構成を備えるものの,「前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサー」が「何れも可撓性材料より成るバス(3)によって直接接続され」る構成は備えず,それに伴い,「カードの厚さ内に」「可撓性材料より成る前記バス」が「組み込まれ」る構成も備えない点。

《相違点4》
本願補正発明は,「ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記第2のプロセッサー及び前記生体情報のメモリを備えた,少なくとも1つの横方向に走査する指紋読み取り装置を備え,前記ユーザの生体情報のレセプター(2)は,前記横方向に走査する指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成されるデジタル式指紋精巧化手段(21)を備えるデジタル式指紋スキャナー(2)であり, 前記横方向に走査する指紋読み取り装置は,指紋走査型検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側で第1のマイクロプロセッサーの側の電気接触部と反対側の位置に封入されたスキャナーの長方形窓上の指によって,横方向に走査動作が実行されることによって指紋を採取することができ」るという構成を備えるが,引用発明は「ユーザの前記生体情報のレセプター(2)を実現する前記第2のプロセッサー及び前記生体情報のメモリを備えた,少なくとも1つの指紋読み取り装置を備え,前記ユーザの生体情報のレセプター(2)は,前記指紋読み取り装置を構成するセンサー手段(22)と連関した前記第2のマイクロプロセッサー及び前記生体情報のメモリから構成される指紋スキャナー(2)であり, 前記指紋読み取り装置は,指紋検出器のセンサーであり,同じ前記カードの同じ側で電気接触部と反対側の位置に封入された窓上の指によって,指紋を採取することができ」ることに対応する構成を備えるものの,「指紋読み取り装置」が「横方向に走査する」ものではなく,また,「指紋スキャナー」が「デジタル式指紋精巧化手段(21)を備えるデジタル式指紋スキャナー(2)」でもなく,さらに,「前記横方向に走査する指紋読み取り装置は,指紋走査型検出器のセンサーであ」るものでもなく,「第1のマイクロプロセッサーの側の電気接触部と反対側の位置に封入されたスキャナーの長方形窓上の指によって,横方向に走査動作が実行される」構成も備えない点。

《相違点5》
本願補正発明は,「前記生体情報のメモリは前記カードの外部から読み取り不可能であり,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報を記憶し,前記生体情報のメモリは新しい生体識別情報を作成すること又は作成し直すことは不可能であり,前記生体識別情報は前記生体情報のメモリの最初の登録後は更新することができ」ないという構成を備えるが,引用発明は,「前記生体情報のメモリは,認定ユーザのそれぞれの個人生体情報を記憶するものであ」ることに対応する構成は備えるものの,「前記生体情報のメモリは前記カードの外部から読み取り不可能であり,」「前記生体情報のメモリは新しい生体識別情報を作成すること又は作成し直すことは不可能であり,前記生体識別情報は前記生体情報のメモリの最初の登録後は更新することができ」ないということまでは特定されていない点。

《相違点6》
本願補正発明は,「a)最初の使用時における1回限りの個人カードの有効化の際,認定ユーザの前記生体情報の本人絶対識別用の情報作成を,前記生体情報が,前記カードの外部からその情報を読み取り,又は検知し,又は感知することを絶対に不可能にするように前記カードの内部へのみ保存された前記生体情報のメモリに記憶されるように実行し,」また,「b)それに続く再使用に際し,」「前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に」「入手した」「前記生体情報」が「再読み取り情報」であるのに対して,引用発明は,「a)最初の使用時における1回限りの個人カードの有効化の際,認定ユーザの前記生体情報の本人絶対識別用の情報作成を,前記生体情報が,前記カードの外部からその情報を読み取り,又は検知し,又は感知することを絶対に不可能にするように前記カードの内部へのみ保存された前記生体情報のメモリに記憶されるように実行」する構成は備えず,また,引用発明は「使用の際に,」「前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に」「入手」する「前記生体情報」が「読み取り情報」であることに対応する構成は備えるものの,当該「読み取り情報」は「再読み取り情報」ではない点。

《相違点7》
本願補正発明は,「ユーザの個人情報とそのアクセスコードの作成,及びその保存もまた実行するステップ」を備え,また,「前記個人情報及びアクセスコードの照合と本人識別が,正規の動作の操作を継続するために認可されるステップ」も備えるが,引用発明は「本人識別が認可されるステップ」に対応する構成は備えるものの,「ユーザ」「のアクセスコードの作成,及びその保存もまた実行するステップ」は備えず,また「前記アクセスコードの照合」が「正規の動作の操作を継続するために認可される」構成は備えない点。

(4)当審の判断

《相違点1について》
一般に,ICカードにおいて,内蔵するICチップの上面に接するように接続用IC端子を設けることは,例えば次の周知例1にも示されているように,周知の技術である。

周知例1: 特開2005-242649号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2005-242649号公報(以下「周知例1」という。)には,図1とともに以下の記載がある。
・「【0008】
以下,本発明のデバイスの実装方法及びICカードの実施形態について図を参照して説明する。
図1はICカードKを示す概略図であって,図1(a)は正面図,図1(b)は断面図である。
ICカードKは,ICチップ2と指紋センサ等のデバイス3が実装されたカード形のインレット1と,インレットの両面を保護する2つの保護層40とから構成される。
更に,ICカードKは,カード端末等の外部装置(不図示)との情報交換を行うインターフェイスとして,外部装置と直接接触する接触用IC端子2aと,外部装置と一定周波数の電波を受信・送信する非接触型IC用アンテナ(不図示)とを備える。接触用IC端子2aは,ICチップ2の上面に接触しつつ,ICカードKの表面に露出するように形成される。
・・・(後略)・・・」

引用発明における「第1演算処理部14」の「演算部」が,本願補正発明の「第1のマイクロプロセッサー」に対応するところ,当該「第1演算処理部14」は,引用発明における「ICチップ」が備えるものである。それゆえ,引用発明において上記周知技術を用いて,「第1演算処理部14」の「演算部」を備える「ICチップ」の上面に接するように接続用IC端子12を設けることにより,相違点1に係る,「前記電気接触部(1)の下方の一側にある前記カードの管理のための第1のマイクロプロセッサー」に対応する構成を備えるようにすることは当業者が適宜になし得たことである。
よって,相違点1は,当業者が適宜になし得た範囲に含まれる程度のものである。

《相違点2について》
一般に,ICカードに組み込む指紋センサについて,指紋センサと当該指紋センサによって得られた指紋情報を処理する部分を一体のものとして形成することは,以下の周知例2及び3にも示されているように,周知の技術である。

周知例2: 特開平10-323339号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-323339号公報(以下「周知例2」という。)には,図7とともに以下の記載がある。
・「【0006】
【発明の概要】本発明によれば,皮膚抵抗センシングアレイを使用する低価格指紋検出器が開示される。本発明の一実施例の教示によれば,指先の皮膚抵抗をサンプル軌跡(trajectory )信号に変換するための皮膚抵抗センシングアレイを含む指紋検出器が提供される。サンプル軌跡信号は,指先がセンシングアレイ表面を横切って運動する時の,指先のリッジ(隆起)及びバレー(谷)の関数である皮膚抵抗の導電率変化に対応する。センシングアレイは少なくとも1つのセンサを含み,このセンサは,指先を接触させるように位置決めされ,指先とセンサとを相対運動させることができるようになっている。センシングアレイはサンプリング回路に結合され,サンプリング回路はサンプル軌跡信号をディジタル信号に変換する。指紋検出器は,ディジタルサンプル軌跡信号を受けてそれを参照軌跡信号と比較し,そして照合アルゴリズムを実行するプロセッサをも含んでいる。」
・「【0008】
【実施例】以下の好ましい実施例の説明は単に例示のために過ぎず,本発明またはその応用または使用を制限するものではない。本発明は,特に,リッジ抵抗センシングアレイを,このセンシングアレイ表面を横切って指先を運動させることによって得られた電気信号を処理する技術と共に使用して,指紋を検出し,照合するデバイスに関する。アレイの簡易さは,アレイを横切って指をスワイプ( swiping ) させる技術と共に,低価格信号処理システムを実現可能にし,単一の集積回路パッケージ内に組み入れることを可能にする。得られた低価格チップは,限定するものではないが,クレジットカード,ドア錠,POS端末,及びコンピュータ端末キーボードのような他のデバイス内に組み込んで,識別または安全保護のための手段にすることができる。」
・「【0015】図7に,単一の集積回路パッケージ64に集積された完全な指紋検出器10を示す。このチップは,更にデータキャリヤカード50内に組み込むことができるように充分に小さいことが好ましい。
・・・(中略)・・・
図7は更に,集積回路パッケージ64及びモノリシック回路内に収容される機能のブロック線図をも示している。センシングアレイ20が複雑ではないことが主要な特色であり,これにより指紋検出器10を単一のモノリシックチップ内に組み込むことが可能になる。」

周知例3: 特開平11-19069号公報
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平11-19069号公報(以下「周知例3」という。)には,図2とともに以下の記載がある。
・「【0010】
【発明の実施の形態】図2は,本発明の指紋認識集積回路の基本構成を示す。同図に示す構成は,指紋を採取するセンサ装置110を集積回路チップ上に形成し,読み取ったデータを認識する認識装置130,認識する指紋の見本となる指紋メモリ120を同じチップ上に形成するものである。
【0011】また,センサ装置110は,大きさ数μmのセンサ回路111を複数並べたものであり,認識装置130は,通常の論理回路で構成された認識を行う回路である。この構成では,指紋認識システムを集積回路チップ上に構成でき,非常に小さい指紋認識システムが実現可能となる。このため,ICカードのような小さく薄いもの等,任意の場所に指紋認識システムを組み込むことが可能となる。
【0012】さらに,センサ装置110や認識装置130等が一つの集積回路チップ上にあるため,これらの装置間のデータ転送時にデータの改ざんが不可能になり,不正な認識を防ぐことが可能となる。」

ここで,「認識装置130」が「読み取ったデータ」を処理するプロセッサであることは明らかである。

引用発明における「指紋センサ10」については,「第2演算処理部15においては,演算部を備えて,指紋センサ10に入力された指紋情報を抽出指紋データとして入力されるようになって」いるところ,上記周知技術を参酌して,当該「指紋センサ10」及び「第2演算処理部15」を一体のものとして形成することにより,「接続用IC端子12と」「は,ICカードの同じ面側における反対側の位置に設けられて」いる「指紋センサ10」と同じ位置に「第2演算処理部15」が設けられて,相違点2に係る「前記電気接触部(1)の正反対の側(23)にある,前記生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサー」を備えるようにすることは,当業者が適宜になし得たことである。
よって,相違点2は,当業者が適宜になし得た範囲に含まれる程度のものである。

《相違点3について》
一般に,ICカードにおいて,悪意のあるアクセスの試みを阻止するために,プロセッサ間を専用の線によって接続することは,次の周知例4にも記載されているように,周知の技術である。
周知例4: 特表2006-501583号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特表2006-501583号公報(以下「周知例4」という。)には,図4とともに
以下の記載がある。
・「【0038】
オンボード整合ISOプロセッサインターフェースを備えたISOカードに対するカードアーキテクチャ
図4は,カード保持者の生物測定学的データの最初のロード期間中および遠隔地アプリケーションへのカード保持者のアイデンティティの検査期間中に使用される異なった物理的データ路を備えた例示的なISOスマートカードコンパチブル生物測定学的検査カード100または100’の機能ブロック図である。
【0039】
とくに,上述したISOプロセッサ112,セキュリティプロセッサ114,指紋センサ110,LED116a,116bおよびオプションのGPS受信機212に加えて,ISOプロセッサ112だけがISOスマートカードコンタクトパッド108を介してカード読取装置208に直接接続された状態で,分離したロードモジュール300および関連した一時的接続302が示されており,この一時的接続302は最初のユーザ登録期間中にセキュリティプロセッサ114との直接的な通信を提供する。ISOプロセッサ112はI/Oポート304,306によってセキュリティプロセッサ114と通信し,一方一時的なロード接続302は分離したI/Oポート308に接続されていることが認められる。セキュリティプロセッサは,取り扱いに注意を要する任意のセキュリティ関連データまたはソフトウェアがポート304および306からではなくポート308からのみアクセス可能であり,それによって接続302がディスエーブルされた後,これらの取り扱いに注意を要するデータへの悪意のあるアクセスの可能性を回避するようにプログラムされることが好ましい。
【0040】
入手可能な大部分のISOプロセッサは少なくとも2つのI/Oポートを有しており,いくつかは少なくとも3つのI/Oポートを備えている。外部ISOコンパチブルカード読取装置208への通常のISOスマートカード直列データ接続108に対して,これらのポートの1つ(I/O1)だけが示されている。余分な1または2つのI/Oポートは,ISOプロセッサ112とセキュリティプロセッサ114との間に専用ハードワイヤード通信を提供することが好ましく,それは,セキュリティプロセッサ114を再プログラムしようとする,あるいはセンサ110によって前に捕捉された,あるいはそうでなければセキュリティプロセッサ114内に記憶されている取り扱いに注意を要する情報にアクセスしようとする悪意のある試みを阻止するハードウェアファイヤウォールとして働く。
・・・(後略)・・・」

ここで,上記記載とともに図4を参照すると,指紋センサ110に接続されたセキュリティプロセッサ114とISOプロセッサ112とが「I/O2」及び「I/O3」と付された部分において直接接続されていることが見て取れる。

また,ICカード内における配線を,可撓性を有する材料により構成することは,例えば前記周知例1の下記の記載のように,周知の技術である。
すなわち,前記周知例1には,図1とともに更に次の記載がある。
・「【0009】
インレット1は,約0.6mm厚のプラスチック等の可撓性板部材である。インレット1に実装されるデバイス3は,例えば0.25mmであり,また複数でもよく,更に指紋センサに限らず電池等であってもよい。また,インレット1には,ICチップ2とデバイス3とを導通する電気配線4,デバイス3を収容する四角形の凹部5が形成される。
【0010】
・・・(中略)・・・
【0012】
そして,デバイス3を凹部5に収容した後に,インレット1の上面に不図示の液滴吐出装置から銀ペースト等の導電性材料(配線材料)4を吐出して,ICチップ2とデバイス3とを導通させる電気配線4を形成する。
・・・(後略)・・・」

上記記載から,可撓性の部材であるインレット1上に形成され,ICチップ2に接続される電気配線4が,インレット1と同じく可撓性を有することは明らかである。

また,ICカード技術において悪意のある内部へのアクセスを阻止することは,不断の課題ともいうべきものである。
それゆえ,前記《相違点2について》において検討したとおり,引用発明において,「指紋センサ10」及び「第2演算処理部15」を一体のものとして形成して,「生体情報の解析のための第2のマイクロプロセッサー」を備えるようにすることは,当業者が適宜になし得たことであるところ,上記各周知技術を勘案して,本願補正発明の「第1のマイクロプロセッサー」に相当する引用発明の「第1演算処理部14」を備えるICチップと,「指紋センサ10」及び「第2演算処理部15」を一体としたものとを,可撓性を有する材料により直接接続して,相違点3に係る,「前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサー」が「何れも可撓性材料より成るバス(3)によって直接接続され」る構成を備え,それに伴い,「カードの厚さ内に」「可撓性材料より成る前記バス」が「組み込まれ」る構成も備えるようにすることは,当業者が適宜になし得たことである。
よって,相違点3は,当業者が適宜になし得た範囲に含まれる程度のものである。

《相違点4について》
一般に,指紋読み取り技術において,横方向に走査して指紋を読み取るものにあって,指紋を読み取る部分が長方形の窓を備え,また,ディジタル技術を用いて読み取った指紋を抽出することは,例えば,前記周知例2の下記の記載,及び以下の周知例5においても示されているように,周知の技術である。
すなわち,前記周知例2には,図1,3,6?8とともに以下の記載がある。
・「【0012】
・・・(前略)・・・
図3に,例示データキャリヤカード50を指紋検出器10の機能ブロック線図と共に示す。センシングアレイ20は,データキャリヤ50の表面と同一面をなすように取付けられる。導電層22は絶縁層24と共にセンシングアレイ20の表面上に形成され,電線18はこの表面と同一面をなして露出されている。電線18はセンシングアレイ20の表面から下方に伸び,データキャリヤカード50のボディ内に達し,そこでサンプリング回路56に接続されている。好ましい実施例では,図7及び8に示すように,センシングアレイ20,サンプリング回路56,プロセッサ40,及びオプションとしてメモリ48を単一の集積回路パッケージ64内に集積する。
・・・(後略)・・・」
・「【0016】図8は,集積回路パッケージ64の側面図である。この図から,導電層22が絶縁層24上に形成されており,絶縁層24が主要なパッケージング材料となっていることが理解できよう。図8は,チップと外部回路との間の接続を可能にする集積回路パッケージ64のサイドに沿う接続ピンの位置どりを示している。接続ピン66をサイドに取付けることによって,集積回路パッケージ64を低プロファイルに維持できることに特に注目されたい。以下に,本発明の教示により指紋を検出し,照合する方法を説明する。アルゴリズムは,ユーザの指紋データが,記憶された参照データと一致するか否かを決定する。この技術は,露出型皮膚抵抗センシングアレイ20(指先12の指紋14をセンシングアレイ20に連続して接触させながら引くことができる)を有する指紋検出器10を提供することを含む。指先12をセンシングアレイ20にセンシング接触させた直後に,指紋検出器10内の回路が自動的に付勢される。当業者ならばこのような自動付勢が,表面圧力,またはデバイスを通る電流を感知することによって達成できることが理解されよう。指紋14の表面がセンシングアレイ20を横切る時にトレースされるセンシングアレイ通路58は,指紋14がセンシングアレイ20を横切って引かれる時のアラインメントまたは速度には依存しない。受入れ可能なサンプル軌跡信号を発生させるために唯一必要なことは,指紋14の相対中心が滑らかな連続運動でセンシングアレイ20を端から端まで横切るように指紋14を引かなければならないことである。センシングアレイ20を横切って指紋14を連続運動させると,センシングアレイ20は図6に示すような連続サンプル軌跡信号を発生する。得られる信号は,典型的には信号対雑音比が高く,広いダイナミックレンジもカバーしている。これらの両信号特性は,統計的相関アルゴリズム内に含まれる誤りの確率を大幅に低下させる。次いで,アナログサンプル軌跡信号は,A/D変換器34によってディジタルビットストリームに量子化され(図1),ディジタル信号プロセッサ40によって個人の指先リッジ及びバレーの記録である記憶されている参照軌跡信号と統計的に相関させることができる(図6)。現在,必要な統計的相関アルゴリズムを遂行するモノリシックディジタルプロセッサが,標準オフ・ザ・シェルフデバイスとして入手可能である。柔軟なアーキテクチャによって,参照軌跡信号をメモリ48,好ましくは読み出し専用メモリ(ROM)内に格納することができる。代替として,処理される前にデータインタフェースを通して参照軌跡信号を外部記憶デバイスから検索することができる。」
・「【0018】検出及び照合の方法は,サンプル軌跡信号を正規化する技術をも備えている。当業者ならば,サンプル軌跡信号を正規化すると,サンプルされたデータ点の連続的に最適化された数が供給されるために,デバイスの複雑さが減少することは理解されよう。正規化技術は,必要なデータ点の最適数を標準化し,初期サンプリングレートを与えることによって達成される。サンプル軌跡信号を検出した時に,処理アルゴリズムはサンプル軌跡信号周波数を計算する。サンプリングレートはサンプル軌跡信号周波数に正比例するように,処理アルゴリズムによって相関させなければならないことは当業者には明白であろう。従って,センシングアレイ20を横切る指先の速度が増加すれば,サンプリングレートは比例的に増加させられる。同様に,指先速度が低下すれば,サンプリングレートは比例的に低下させられる。正規化プロセスは最適化された数のデータ点を定常的に供給し,更に指先速度に無関係にされた指紋検出及び照合方法をも提供することによって説明中の本発明を更に簡易化する。サンプルされるデータの数が減少すると,低価格の処理回路を実現することが容易になり,また必要なメモリの量,及び回路を駆動する電力が少なくて済む。」

ここで,上記段落【0012】の記載とともに図3を参照すると,センシング素子16が配列されているセンシングアレイ20については,その外形がおおむね長方形であることが見て取れるから,指紋を読み取る部分が長方形部の窓部を備えるといえる。
また,上記段落【0014】の「指紋14の相対中心が滑らかな連続運動でセンシングアレイ20を端から端まで横切るように指紋14を引」くことは,「指紋読み取り装置」が「横方向に走査する」ものであって,「指紋走査型検出器のセンサーであ」ることに対応する。
また,上記段落【0018】には「検出及び照合の方法は,サンプル軌跡信号を正規化する技術をも備えている」と記載されているところ,「サンプル軌跡信号を正規化」することは,「指紋精巧化」に対応し,また,上記段落【0017】の「アナログサンプル軌跡信号は,A/D変換器34によってディジタルビットストリームに量子化され(図1),ディジタル信号プロセッサ40によって個人の指先リッジ及びバレーの記録である記憶されている参照軌跡信号と統計的に相関させることができる(図6)。現在,必要な統計的相関アルゴリズムを遂行するモノリシックディジタルプロセッサが,標準オフ・ザ・シェルフデバイスとして入手可能である」との記載から,ディジタル技術によって処理されていることは明らかであるから,上記「サンプル軌跡信号を正規化」することは,「デジタル式指紋精巧化手段」といえる。そうすると,前記「指紋読み取り装置」が「横方向に走査する」ものであることから,当該「指紋読み取り装置」は,「デジタル式指紋精巧化手段」を備える「指紋読み取りスキャナー」であって,「デジタル式指紋スキャナー」ということができる。

周知例5: 特開2004-280619号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-280619号公報(以下「周知例5」という。)には,図1?11とともに以下の記載がある。
・「【0034】
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して本発明に係る第1の実施の形態?第6の実施の形態を説明する。
【0035】
〔第1の実施の形態〕
図1?図11を参照して,本発明に係る第1の実施の形態の認証システム1Aを説明する。本実施の形態における認証システム1Aは,図1および図2に示すカード型デバイス2Aとこのカード型デバイス2Aが接続される電子機器5A(図6参照)とにより構成される。電子機器5Aは,カード型デバイス2Aを介して入力されるユーザの指紋データに基づいてユーザを認証することができ,さらにその認証結果に基づいて電子機器5Aの機能の一部を制限することができる。
【0036】
図1および図2にカード型デバイス2Aの外観構成例を示す。
図1および図2に示すように,カード型デバイス2Aは,カード型の筐体20Aと,筐体20Aの背面21に設けられる収容部22と,収容部22に着脱自在に収容される認証チップ3A(図3参照)と,筐体20Aの一端部23に設けられる指紋読取部4(図4参照)と,筐体20Aの背面21の他端部24に設けられる接続端子25Aとを含む。
【0037】
・・・(中略)・・・
【0043】
指紋読取部4は,図4に示すように,回転ローラ41,光源42,セルフォックレンズアレイ43,基板44,指紋センサ部45を含み,回転ローラ41の外周面41aの一部が筐体20Aの一端面23aに設けられたスリット23bから外部に突出している。
【0044】
回転ローラ41は円筒状を呈しており,アクリル樹脂,ポリカーボネイト,ホウケイ酸ガラス,石英ガラス等の透光性材料から構成される。スリット23bから露出した回転ローラ41の外周面41aに指100を圧接させて,その状態で指100を所定の方向に移動させると,回転ローラ41が回転する。
【0045】
・・・(中略)・・・
【0054】
指紋センサ部45は,回転ローラ41の外周面41aに当接される指100の一次元指紋データを取得するためのものであり,リニア型CCDイメージセンサ,リニア型CMOSイメージセンサ等の光電変換素子で構成される。その受光面55aはスリット23bに対向するように,回転ローラ41の軸心に沿って平行に設けられている。セルフォックレンズアレイ43等により受光面55aに結像された指紋の一次元像を電気信号としての一次元指紋信号に変換する。
【0055】
なお,指紋センサ部45および指紋読取部4は,上記した光学式に限定されるものではなく,静電容量式,感熱式,圧力式等,他の方式の指紋センサや,他の構造の小型指紋スキャナー装置で構成してもよい。
【0056】
次に,図5を参照してカード型デバイス2Aの機能的構成を説明する。図5に示すように,カード型デバイス2Aは,接続端子25A,入出力制御部26,メモリ27,暗号化処理部A,指紋画像信号処理部28,指紋読取部4,認証チップ3A,コネクタ22dを備えている。これら各構成要素は互いにバスで接続されている。
【0057】
入出力制御部26は,電子機器5Aとの間で指紋データを含む種々のデータ(情報)を所定のデータ伝送方式に従って伝送するものである。
【0058】
メモリ27は所定の記憶容量を有するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはフラッシュメモリ(Flash EPROM)等から構成される。
【0059】
指紋画像信号処理部28は,アナログ信号である一次元指紋信号をデジタル信号に変換して一次元指紋データを生成するとともに,二次元像としての指紋画像情報を生成する指紋読取処理を実行する。また,得られた指紋画像情報から特徴点を抽出する特徴点抽出処理を実行する。
【0060】
なお,指紋画像信号処理部28はCPU(図示略)等を備え,メモリ27等に記憶された指紋画像信号処理プログラムに従って,これらの指紋読取処理および特徴点抽出処理を行う。
【0061】
・・・(中略)・・・
【0063】
特徴点抽出処理では,指紋画像読取処理により合成された指紋の二次元像からその特徴点を抽出した特徴パラメータなどの指紋の特徴データが生成される。以下,指紋データと言った場合,特に断らない限りこの特徴データを含むこととする。」

ここで,上記段落【0036】,【0043】?【0044】の記載とともに図1及び図2を参照すると,「筐体20Aの一端部23に設けられる指紋読取部4」の回転ローラ41に指が圧接されるところ,当該回転ローラ41が露出する部分であるスリット23bは,長方形の窓部を構成することが見て取れる。

一方,引用発明においては,「接続用IC端子12と指紋センサ10は,ICカードの同じ面側における反対側の位置に設けられて」いるところ,前記《相違点1について》において検討したとおり,「第1演算処理部14」の「演算部」を備える「ICチップ」の上面に接するように接続用IC端子12を設けることは当業者が適宜になし得たことであり,また,「指紋センサ10」が「ICカードKの厚さ内に設けられて」いる,すなわち「封入」されているといえるものである。
それゆえ,引用発明において,上記の指紋読み取り技術を採用して,相違点4に係る,「指紋読み取り装置」が「横方向に走査する」ものであり,また,「指紋スキャナー」が「デジタル式指紋精巧化手段(21)を備えるデジタル式指紋スキャナー(2)」であって,さらに,「前記横方向に走査する指紋読み取り装置は,指紋走査型検出器のセンサーであ」り,「第1のマイクロプロセッサーの側の電気接触部と反対側の位置に封入されたスキャナーの長方形窓上の指によって,横方向に走査動作が実行される」構成を備えるようにすることは,当業者が適宜になし得たことである。
よって,相違点4は,当業者が適宜になし得た範囲に含まれる程度のものである。

《相違点5及び6について》
相違点5及び6は併せて検討する。

引用発明に係る指紋センサを搭載したICカードKにおいては,「抽出指紋データと,予め記憶部16に登録されていた利用者の認証指紋データとが第2演算処理部15の演算部において比較されて,演算部における比較の結果,抽出指紋データと認証指紋データとが一致している」か否かを「判定」するものであるから,何らかの方法で,「予め記憶部16に」「利用者の認証指紋データ」を登録する必要があることは明らかである。
一方,前記4(2)〈引用例2〉において記載したとおり,引用例2には,「カ-ドや携帯型機器に組み込まれるユーザ生体処理モジュールBUM」について,「ユーザの登録に当たっては, ユーザ生体処理モジュールBUMの生体センサ31が,ユーザの生体(指)から生体データBDを検出し,」「生体データから抽出した特徴データを照合用生体データR_BDとしてセキュアメモリ33に書き込み」,「ログイン処理に当たっては, ユーザ生体処理モジュールBUMの生体センサ31が,ユーザの生体(指)から生体データBDを検出し, セキュアチップ34は,検出した生体データBDから前述した特徴データを抽出し,当該特徴データを基に,照合に実際に用いられる特徴データを生成し, セキュアチップ34は,前記生成した特徴データと,読み出した照合用生体データR_BDの生体本体データとを比較して照合を行」うものであり,「照合用生体データR_BD」の登録及び「ログイン処理に当たって」「照合に実際に用いられる特徴データを生成」することを同じ「ユーザ生体処理モジュールBUM」で行うものである。
また,引用例2に記載されたものは,「照合用生体データR_BD」を「耐タンパ性の電子回路であ」る「セキュアメモリ33に書き込」むものであり,装置外部からの情報読み取りができないものとできるところ,以下の周知例6にも記載されているように,セキュアメモリには,いったんデータが書き込まれると,それ以降の書き換えができなくなる機能を有することが周知であり,更に以下の周知例7にも記載されているように,指紋データの登録を1回しかできないようにして,より安全な個人認証を実現する技術も周知である。

周知例6: 特開2004-164491号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2004-164491号公報(以下「周知例6」という。)には,図1とともに以下の記載がある。
・「【0022】
まず,セキュアLSI1は,書き換え不可領域11を含むセキュアメモリ(セキュアFlash)10を備えている。この書き換え不可領域11には,書き換え不可領域書き込みフラグ12が設けられている。書き換え不可領域書き込みフラグ12は,モードIDが一度セキュアメモリ10に書き込まれると,そのフラグ値が“可”から“済”になり,それ以降の書き換え不可領域への書き込みが不能になる。なお,本実施形態では,セキュアメモリ10および外部メモリ100はフラッシュメモリによって構成されているが,もちろんこれに限定されるものではなく,不揮発性のメモリであればどのようなものであってもかまわない。」

周知例7: 特開平10-208049号公報
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-208049号公報(以下「周知例7」という。)には,図4?7とともに以下の記載がある。
・「【0003】そこで,最近,個人の身体的特徴を用いた個人認証装置が開発されている。身体的特徴を用いた個人認証装置としては,たとえば,特開平2-178777号公報に示されるように,あらかじめ被照合用の身体的特徴情報(指に含まれる特徴情報など)を,携帯形記憶媒体としてのICカード内に記憶(登録)しておき,照合時に,ICカードから被照合用の身体的特徴情報を読出して,入力された被認証者の身体的特徴情報(指に含まれる特徴情報など)とICカードの外部で比較照合するものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし,上記した従来の個人認証装置では,照合時,辞書として登録してある被照合用の身体的特徴情報をICカードの外部へ読出す必要があるため,第三者に被照合用の身体的特徴情報を盗まれる危険性がある。また,身体的特徴情報の比較照合もICカードの外部で行なっているので,そのプログラムを解析されて,照合のアルゴリズム自体も盗まれる危険性があった。
【0005】そこで,本発明は,第三者に被照合用の身体的特徴情報および照合のアルゴリズムを盗まれる危険性が少なく,セキュリティ性に優れた個人認証システム,個人認証装置,携帯形記憶媒体を提供することを目的とする。」
・「【0021】ICカード12は,たとえば,図5に示すように構成されている。
・・・(中略)・・・
【0024】次に,上記のような構成において処理の流れについて説明する。処理は,大きく分けて「登録」と「照合」の2つがある。まず,登録の処理について説明する。
【0025】登録の処理は,個人認証装置11側とICカード12側の2つがある。まず,個人認証装置11側の登録処理の流れについて,図6に示すフローチャートを参照して説明する。
【0026】まず,ステップS1にて,パターン入力部13を用いて図4に示したような生の投影信号Vraw(i)を取込む。次に,ステップS2にて,ステップS1で取込んだ投影信号Vraw(i)に対して前処理であるBPF(バンド・パス・フィルタ)処理を施し,それを辞書情報(つまり,被照合用の特徴情報)Vd(i)とする。
・・・(中略)・・・
【0030】以上の例では,1枚のICカードに対して登録の処理を行なう回数を制限していないが,これを制限することで,より安全な個人認証システムを実現できる。すなわち,1枚のICカードに対して,ステップS5の辞書情報をデータメモリに記憶する処理を,たとえば,1回しか実行できないようにすることで,不正な辞書情報の書換えを防ぐことができる。
【0031】また,ステップS5で記憶したデータメモリの内容をICカードの外部に読出すことを禁止することで,辞書情報を第三者に盗まれることを防ぐことができ,より安全な個人認証システムを実現することができる。」

ICカード技術において,ICカードに記憶されたデータのより確実な保護とともに,より安全な個人認証を行うことは周知の課題である。よって,引用発明において「予め記憶部16に」「利用者の認証指紋データ」を登録するために,引用例2に係る技術を適用するとともに,上記各周知技術を勘案して,相違点5に係る,「前記生体情報のメモリは前記カードの外部から読み取り不可能であり,」「前記生体情報のメモリは新しい生体識別情報を作成すること又は作成し直すことは不可能であり,前記生体識別情報は前記生体情報のメモリの最初の登録後は更新することができ」ないようにするとともに,相違点6に係る,「a)最初の使用時における1回限りの個人カードの有効化の際,認定ユーザの前記生体情報の本人絶対識別用の情報作成を,前記生体情報が,前記カードの外部からその情報を読み取り,又は検知し,又は感知することを絶対に不可能にするように前記カードの内部へのみ保存された前記生体情報のメモリに記憶されるように実行」し,それに伴い,「使用の際に,」「前記生体情報のレセプター(2)により,前記カードの内部に」「入手」する「前記生体情報」が「再読み取り情報」であるようにすることは,当業者が適宜になし得たことである。
よって相違点5及び6は,ともに当業者が適宜になし得た範囲に含まれる程度のものである。

《相違点7について》
引用発明に係るICカードKの記憶部16には,利用者本人の個人情報が格納されるものであるから,当該ICカードKを利用する本人すなわちユーザが利用を開始するにあたり,ICカードKの記憶部16にユーザの個人情報を格納させることは当然のことである。
また,引用例2には,ユーザの登録にあたって,「当該ユーザのユーザ秘密鍵データU_SKおよびユーザ公開鍵データU_PKの発行を受け,これらをセキュアメモリ33に書き込み」,また,ログイン処理に当たっては,「読み出したユーザ秘密鍵データU_SKを用いて,電子機器Eのセキュアチップ28との間で相互認証を行い, セキュアチップ34が,前記相互認証により互いの正当性を確認すると, ユーザ生体処理モジュールBUMが電子機器Eにログインできるもの」であり,すなわち作成,保存した「当該ユーザのユーザ秘密鍵データU_SK」をアクセスコードとして認証を行ってログインして,その後の正常な動作を続ける技術が記載されているといえる。
そうすると,前記《相違点5及び6について》において検討したとおり,引用発明において引用例2に係る技術を適用することは当業者が適宜になし得たことであるところ,上記「当該ユーザのユーザ秘密鍵データU_SK」を作成,保存し,アクセスコードとして認証を行ってログインして,その後の正常な動作を続ける技術も併せて適用して,相違点7に係る,「ユーザ」「のアクセスコードの作成,及びその保存もまた実行するステップ」及び「前記アクセスコードの照合」が「正規の動作の操作を継続するために認可される」ことに対応する構成を備えるようにすることも,当業者が適宜になし得たことといえるものである。
よって,相違点7は,当業者が適宜になし得た範囲に含まれる程度のものである。

以上検討したとおり,本願補正発明は,引用発明に対して,引用例2に記載された技術とともに,カードの構造についての周知技術,指紋センサについての周知技術,及び個人カードのセキュリティ確保についての周知技術を単に寄せ集めたものであって,そのようにしたことによる相乗効果も見いだせない。

(5)小括
以上のとおり,本願補正発明は,周知技術を勘案して,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,本願補正発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 むすび
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成25年1月23日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成24年6月18日にされた手続補正により補正された明細書,特許請求の範囲及び図面の記載から見て,その請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(前記「1 本件補正の内容」〈補正前〉【請求項1】を参照。以下「本願発明」という。)

2 引用発明
引用発明は,前記第2の4「(2)刊行物に記載された発明」に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
前記第2「1 本件補正の内容」?第2「3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討」において記したように,本願補正発明は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記第1のマイクロプロセッサーと前記第2のマイクロプロセッサー」,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「デジタル式指紋精巧化手段(21)」,補正前の請求項2に記載された発明特定事項である「横方向に走査する指紋読み取り装置」,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「スキャナーの長方形窓」,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「カードに記憶された生体情報」,及び補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「生体情報のメモリ」について,技術的により限定するものである。言い換えると,本願発明は,本願補正発明から当該各限定を除いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである本願補正発明が,前記第2の4「(3)補正発明と引用発明との対比」?第2の4「(5)小括」において検討したとおり,周知技術を勘案して,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-20 
結審通知日 2013-12-24 
審決日 2014-01-15 
出願番号 特願2009-501889(P2009-501889)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北嶋 賢二  
特許庁審判長 藤原 敬士
特許庁審判官 近藤 幸浩
西脇 博志
発明の名称 個人用セキュアカードの作成方法及びその動作過程  
代理人 牛木 護  
代理人 牛木 護  

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