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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J |
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管理番号 | 1288294 |
審判番号 | 不服2013-17031 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-09-04 |
確定日 | 2014-06-06 |
事件の表示 | 特願2010-505777「バイオディーゼル燃料用成形体」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月1日国際公開、WO2009/119747〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成21年3月26日(優先権主張 平成20年3月27日)を国際出願日とする特許出願であって,平成25年1月21日付けで拒絶理由が通知され,同年4月1日に意見書とともに手続補正書が提出されたが,同年5月30日付けで拒絶査定がなされ,それに対して,同年9月4日に拒絶査定不服審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?4に係る発明は,平成25年4月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,「本願明細書等」という。)の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。 「【請求項1】 バイオディーゼル燃料と接する面が含フッ素エチレン性樹脂であり, 前記含フッ素エチレン性樹脂は,室温(25℃)以上の温度範囲において融解,および,結晶化ピークを有することを特徴とするバイオディーゼル燃料用成形体(但し,フッ素樹脂層と熱可塑性樹脂層とからなる積層構造を有し少なくとも2個以上に分割された部品を一体としたものであり,少なくとも前記フッ素樹脂層同士が接合されて,前記フッ素樹脂層が内面を構成するものであり,熱可塑性樹脂層は,ポリオレフィン樹脂層と変性ポリオレフィン樹脂層とからなる2層構造,又は,ポリオレフィン樹脂層/変性ポリオレフィン樹脂層/ポリアミド樹脂層の3層構造であることを特徴とする燃料用タンク,並びに,本体と,前記本体の内側に収容され,燃料量に応じて内容積が変化する袋状の燃料貯留部とからなる燃料用タンクであって,前記燃料貯留部は,フッ素樹脂層と熱可塑性樹脂層とからなる複層構造を有し,金属フィルムを含まず,前記フッ素樹脂は,接着性官能基を有し,前記接着性官能基は,カーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基であることを特徴とする燃料用タンクを除く)。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の理由とされた,平成25年1月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2の概要は,以下のとおりである。 「1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内において,頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 2 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内において,頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1-4 ・引用文献等 1-5 引用文献等一覧 1.特表2006-513304号公報 2.特開2006-44201号公報 3.特開平11-207840号公報 4.特開平8-252891号公報 5.特開平5-8353号公報」 第4 当審の判断 1.引用文献の記載事項 引用文献2(特開2006-44201号公報)には,以下の事項が記載されている。 摘示事項ア 「【請求項1】 (A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層,(B)全ジアミン単位に対して,キシリレンジアミン及び/又はナフタレンジメチルアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と,全ジカルボン酸単位に対して,炭素数8?13の脂肪族ジカルボン酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位よりなる半芳香族ポリアミドからなる(b)層を含む,少なくとも2層以上からなることを特徴とする積層構造体。 【請求項2】 前記積層構造体において,(A)脂肪族ポリアミドが,ポリカプロアミド(ポリアミド6),ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66),ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612),ポリウンデカンアミド(ポリアミド11),ポリドデカンアミド(ポリアミド12)よりなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体,又はこれらを形成する原料モノマーを数種用いた共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。 【請求項3】 前記積層構造体において,(B)半芳香族ポリアミドが,全ジアミン単位に対して,メタキシリレンジアミン,1,5-ナフタレンジメチルアミン,2,6-ナフタレンジメチルアミンよりなる群より選ばれる少なくとも1種の単位を60モル%以上含むジアミン単位と,全ジカルボン酸単位に対して,スベリン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカンジカルボン酸よりなる群より選ばれる少なくとも1種の単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位とからなるポリアミドであることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の積層構造体。 【請求項4】 前記積層構造体において,(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層が最外層に配置され,(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層が(a)層に対して内側に配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層構造体。 【請求項5】 請求項4記載の積層構造体において,(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層が最内層に配置されることを特徴とする積層構造体。 【請求項6】 請求項4記載の積層構造体において,さらに,(C)アミノ基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層を含み,該(c)層が最内層に配置されることを特徴とする積層構造体。 【請求項7】 前記積層構造体が,共押出成形により製造されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層構造体。 【請求項8】 請求項1から7のいずれかに記載の積層構造体からなることを特徴とする,フィルム,ホース,チューブ,ボトル,タンクからなる群より選ばれる積層成形品。 【請求項9】 薬液搬送用チューブ又はホースであることを特徴とする請求項8に記載の積層成形品。」(特許請求の範囲) 摘示事項イ 「本発明における積層構造体においては,(B)半芳香族ポリアミドからなる(b)層が,(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層に対して内側に配置された積層構造体において,さらに,(C)アミノ基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層を含み,該(c)層が最内層に配置された層構成の積層構造体も好ましい実施様態である。 本発明において使用される,(C)アミノ基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体は,反応性を有する官能基を分子構造内に有している含フッ素系重合体を指す(以下,(C)含フッ素系重合体と称する場合がある。)。 (C)含フッ素系重合体とは,少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体(単独重合体又は共重合体)である。熱溶融加工可能な含フッ素系重合体であれば特に限定されるものではない。例えば,ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリフッ化ビニル(PVF),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルエーテル共重合体(PFA),テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP),エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE),エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体,フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体,フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体,フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン共重合体,テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV),フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体,フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体,エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE),フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体やこれら混合物が使用され得る。 ・・・・ また,(C)含フッ素系重合体は,含フッ素単量体及びその他の単量体の種類,組成比等を選ぶ事によって,重合体の融点,ガラス転移点を調節することができる。 (C)含フッ素系重合体の融点は,目的,用途,使用方法により適宜選択されるが,前記(A)脂肪族ポリアミド,(B)半芳香族ポリアミド等と共押出する場合,当該ポリアミドの成形温度に近いことが好ましい。そのため,前記含フッ素単量体及びその他の単量体及び後述の官能基含有単量体の割合を適宜調節し,(C)含フッ素系重合体の融点を最適化することが好ましい。 本発明の(C)含フッ素系重合体は,アミノ基に対して反応性を有する官能基を分子構造内に有しており,官能基は,(C)含フッ素系重合体の分子末端又は側鎖又は主鎖のいずれに含有されていても構わない。また,官能基は,(C)含フッ素系重合体中に単独,又は2種類以上のものが併用されていてもよい。その官能基の種類,含有量は,(C)含フッ素系重合体に,積層される相手材の種類,形状,用途,要求される層間接着性,接着方法,官能基導入方法等により適宜決定される。 アミノ基に対して反応性を有する官能基としては,カルボキシル基,酸無水物基もしくはカルボン酸塩,ヒドロキシル基,スルホ基もしくはスルホン酸塩,エポキシ基,シアノ基,カーボネート基,及びカルボン酸ハライド基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に,カルボキシル基,酸無水物基もしくはカルボン酸塩,ヒドロキシル基,エポキシ基,カーボネート基,及びカルボン酸ハライド基から選ばれる少なくとも1種が好ましい。 ・・・・ 以上のように,本発明において使用される(C)含フッ素系重合体は,アミノ基に対して反応性を有する官能基が導入された含フッ素系重合体である。上述の通り,官能基が導入された(C)含フッ素系重合体は,それ自体,含フッ素系重合体特有の耐熱性,耐水性,低摩擦性,耐薬品性,耐候性,防汚性,薬液透過防止性等の優れた特性を維持することが可能であり,生産性,コストの面で有利である。 さらに,官能基が分子鎖中に含有されることにより,積層構造体において,前記(A)脂肪族ポリアミド等との層間接着性が不充分又は不可能であった種々の材料に対し,表面処理等特別な処理や接着性樹脂の被覆等を行なわず,直接,他の基材との優れた層間接着性を付与することができる。」(段落【0057】?【0089】) 摘示事項ウ 「本発明の積層構造体からなる積層成形品は,自動車部品,内燃機関用途,電動工具ハウジング類等の機械部品,工業材料,産業資材,電気電子部品,事務機器用部品,家庭用品,医療,食品,建材関係部品,家具用部品等各種用途に使用される。より具体的には,自動車燃料配管用チューブ又はホース,自動車ラジエーターチューブ又はホース,ブレーキチューブ又はホース,エアコンチューブ又はホース等の薬液搬送用チューブ又はホース,,電線被覆材,光ファイバー被覆材等のチューブ,ホース類,農業用フィルム,ライニング,建築用内装材(壁紙等),ラミネート鋼板等のフィルム,シート類,自動車ラジエータータンク,薬液ボトル,薬液タンク,バック,薬液容器,ガソリンタンク等のタンク類等が挙げられる。中でも,薬液搬送用チューブ又はホースとして有用である。 薬液としては,例えば,ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール,ペンタノール,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,フェノール,クレゾール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール等のアルコール,フェノール系溶媒,ジメチルエーテル,ジプロピルエーテル,メチル-t-ブチルエーテル,ジオキサン,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒,クロロホルム,塩化メチレン,トリクロロエチレン,二塩化エチレン,パークロルエチレン,モノクロルエタン,ジクロルエタン,テトラクロルエタン,パークロルエタン,クロルベンゼン等のハロゲン系溶媒,アセトン,メチルエチルケトン,ジエチルケトン,アセトフェノン等のケトン系溶媒,ガソリン,灯油,ディーゼルガソリン,含アルコールガソリン,メチル-t-ブチルエーテル,含酸素ガソリン,含アミンガソリン,サワーガソリン,ひまし油ベースブレーキ液,グリコールエーテル系ブレーキ液,ホウ酸エステル系ブレーキ液,極寒地用ブレーキ液,シリコーン油系ブレーキ液,鉱油系ブレーキ液,パワーステアリングオイル,含硫化水素オイル,ウインドウオッシャ液,エンジン冷却液,尿素溶液,医薬剤,インク,塗料等が挙げられる。」(段落【0104】?【0105】) 2.引用文献に記載された発明 引用文献2には,摘示事項アの請求項1,4及び6の記載からみて,「(A)脂肪族ポリアミドからなる(a)層が最外層に配置され,(B)全ジアミン単位に対して,キシリレンジアミン及び/又はナフタレンジメチルアミン単位を60モル%以上含むジアミン単位と,全ジカルボン酸単位に対して,炭素数8?13の脂肪族ジカルボン酸単位を60モル%以上含むジカルボン酸単位よりなる半芳香族ポリアミドからなる(b)層が(a)層に対して内側に配置され,さらに,(C)アミノ基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(c)層が最内層に配置される,少なくとも3層以上からなることを特徴とする積層構造体。」に係る発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 摘示事項イの記載及び本願明細書等の段落【0014】?【0017】,【0023】?【0113】の記載からみて,引用発明の「(C)アミノ基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体」は,本願発明の「室温(25℃)以上の温度範囲において融解,および,結晶化ピークを有する,含フッ素エチレン性樹脂」と重複一致する。(この点については,後記するように,審判請求人も審判請求書で認めている。) そして,引用発明の積層構造体は,摘示事項アの請求項7?9及び摘示事項ウの記載並びに本願明細書等の段落【0129】?【0175】等の記載からみて,本願発明の成形体に相当するものである。 一方,本願発明の「バイオディーゼル燃料と接する面」とは,本願明細書等の段落【0023】,【0152】?【0176】等の記載からみて,最内層と言える。 そうすると,両者は, 「最内層が含フッ素エチレン性樹脂であり, 前記含フッ素エチレン性樹脂は,室温(25℃)以上の温度範囲において融解,および,結晶化ピークを有することを特徴とする成形体(但し,フッ素樹脂層と熱可塑性樹脂層とからなる積層構造を有し少なくとも2個以上に分割された部品を一体としたものであり,少なくとも前記フッ素樹脂層同士が接合されて,前記フッ素樹脂層が内面を構成するものであり,熱可塑性樹脂層は,ポリオレフィン樹脂層と変性ポリオレフィン樹脂層とからなる2層構造,又は,ポリオレフィン樹脂層/変性ポリオレフィン樹脂層/ポリアミド樹脂層の3層構造であることを特徴とする燃料用タンク,並びに,本体と,前記本体の内側に収容され,燃料量に応じて内容積が変化する袋状の燃料貯留部とからなる燃料用タンクであって,前記燃料貯留部は,フッ素樹脂層と熱可塑性樹脂層とからなる複層構造を有し,金属フィルムを含まず,前記フッ素樹脂は,接着性官能基を有し,前記接着性官能基は,カーボネート基及び/又はカルボン酸ハライド基であることを特徴とする燃料用タンクを除く)。」である点で一致し,以下の相違点で相違するものである。 <相違点> 本願発明では,成形体は「バイオディーゼル燃料用」と特定されており,その最内層はバイオディーゼル燃料と接する面と特定されているのに対し,引用発明ではかかる特定はなされていない点 4.相違点に対する判断 まず,本願発明のバイオディーゼル燃料について,本願明細書等の段落【0010】には,「本明細書において,バイオディーゼル燃料とは,バイオマスを原料としてそれを加工,及び/又は,精製することにより得られたディーゼル機関用燃料を含むものをいう。バイオディーゼル燃料としては,油脂を精製した燃料,油脂をアルキルエステル化した脂肪族アルキルエステル,油脂に水素添加した燃料(BHD),バイオマスから発生したメタン等を原料に合成した液体燃料(BTL-FT燃料),これらの燃料を既存の化石燃料(軽油)と混合した燃料等が挙げられる。」と記載されている。 一方,引用文献2には,「本発明の積層構造体からなる積層成形品は,・・・・。より具体的には,自動車燃料配管用チューブ又はホース,自動車ラジエーターチューブ又はホース,ブレーキチューブ又はホース,エアコンチューブ又はホース等の薬液搬送用チューブ又はホース,・・・・自動車ラジエータータンク,薬液ボトル,薬液タンク,バック,薬液容器,ガソリンタンク等のタンク類等が挙げられる。中でも,薬液搬送用チューブ又はホースとして有用である。」(摘示事項ウ)と記載されており,最内層は薬液と接する面を構成するものと認められる。 そして,その薬液としては,「例えば,ベンゼン,トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒,メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール,ペンタノール,エチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,フェノール,クレゾール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール等のアルコール,フェノール系溶媒,ジメチルエーテル,ジプロピルエーテル,メチル-t-ブチルエーテル,ジオキサン,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒,クロロホルム,塩化メチレン,トリクロロエチレン,二塩化エチレン,パークロルエチレン,モノクロルエタン,ジクロルエタン,テトラクロルエタン,パークロルエタン,クロルベンゼン等のハロゲン系溶媒,アセトン,メチルエチルケトン,ジエチルケトン,アセトフェノン等のケトン系溶媒,ガソリン,灯油,ディーゼルガソリン,含アルコールガソリン,メチル-t-ブチルエーテル,含酸素ガソリン,含アミンガソリン,サワーガソリン,ひまし油ベースブレーキ液,グリコールエーテル系ブレーキ液,ホウ酸エステル系ブレーキ液,極寒地用ブレーキ液,シリコーン油系ブレーキ液,鉱油系ブレーキ液,パワーステアリングオイル,含硫化水素オイル,ウインドウオッシャ液,エンジン冷却液,尿素溶液,医薬剤,インク,塗料等が挙げられる。」(摘示事項ウ)と記載されている。 上記のように,引用発明は,種々の物性を有する広範な薬液に対して使用することを想定しており,その具体例としてひまし油ベースブレーキ液が挙げられていること,また,含アルコールガソリンとしては,バイオエタノール等のバイオマス由来のものが周知されていることからみて,当該薬液としてバイオマス由来のものをことさら排除するものとは認められない。そうであれば,当該薬液として挙げられているディーゼルガソリンには,バイオディーゼル燃料をも想定されているものと認められる。 仮に,当該ディーゼルガソリンに,バイオディーゼル燃料が包含されないものであるとしても,上記薬液としては,種々の物性の自動車燃料が挙げられていることからみて,引用文献1(特表2006-513304号公報)に記載されているようなバイオディーゼル燃料に対して用いてみることは,この技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が適宜試みることに過ぎない。 また,その効果も,フッ素樹脂が本来有している特性からみて,予測される程度のものに過ぎない。 したがって,本願発明は,引用発明と同一であるか,または引用発明及び引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.まとめ 以上のとおり,本願発明は,引用文献2に記載された発明,もしくは,引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,または,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 第5 請求人の主張について 請求人は,審判請求書において, 「(3)引用例2?5に記載された発明との対比 審査官殿は,『本願発明と引用例2-5の各々に記載された発明とは依然として区別がつかない。』とご指摘になりました。 しかし,引用例2?5には,含フッ素エチレン性樹脂がバイオディーゼル燃料に対する耐久性を有することは記載されておらず,バイオディーゼル燃料用成形体という用途は開示されていません。 そうである以上,請求項1に係る発明は,少なくともその用途において引用例2?5に記載された発明と相違するといえ,したがって,引用例2?5に記載されたものではありません。 また,引用例2?5にはバイオディーゼル燃料用成形体という用途は開示も示唆もされていないため,請求項1に係る発明は,引用例2?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではありません。 審査官殿はまた,『本願発明は,引用例2-5の各々に記載された発明および引用例1に記載された発明から,当業者が容易になしえたものと認められる。』とご指摘になりました。 引用例2?5には,フッ素樹脂を含む成形体は記載されていますが,フルオロエラストマーについての記載はありません(なお,引用例2には『含フッ素系重合体』が『樹脂』であるとは明記されていませんが,段落〔0074〕に該含フッ素系重合体が融点を有する旨の記載があることから,『樹脂』であることは明らかです。)。」と主張している。 しかしながら,上記第4の4で述べたように,引用文献2には,薬液としてバイオディーゼル燃料が想定されているか,あるいは,バイオディーゼル燃料に対して使用してみることは当業者が適宜なし得る事項にすぎない。 したがって,上記請求人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明についての原査定の理由とされた,平成25年1月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由1及び2は妥当なものである。したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願はこの理由により拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-03-25 |
結審通知日 | 2014-04-01 |
審決日 | 2014-04-14 |
出願番号 | 特願2010-505777(P2010-505777) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08J)
P 1 8・ 113- Z (C08J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大熊 幸治 |
特許庁審判長 |
田口 昌浩 |
特許庁審判官 |
富永 久子 小野寺 務 |
発明の名称 | バイオディーゼル燃料用成形体 |
代理人 | 特許業務法人 安富国際特許事務所 |