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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01N |
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管理番号 | 1288303 |
審判番号 | 不服2011-7359 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-07 |
確定日 | 2014-06-04 |
事件の表示 | 特願2006-500515「駆除剤」拒絶査定不服審判事件〔平成16年8月5日国際公開、WO2004/064522、平成18年7月13日国内公表、特表2006-516970〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2004年1月5日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年1月17日(DE)ドイツ〕を国際出願日とする出願であって、 平成22年3月15日付けの拒絶理由通知に対し、平成22年6月21日付けで意見書及び手続補正書の提出がなされ、 平成22年11月30日付けの拒絶査定に対し、平成23年4月7日付けで審判請求がなされるとともに手続補正書の提出がなされ、 平成24年5月24日付けの審尋に対し、平成24年11月27日付けで回答書の提出がなされ、 平成25年2月13日付けの審尋に対し、平成25年8月19日付けで回答書の提出がなされたものである。 第2 平成23年4月7日付けの手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 平成23年4月7日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 1.補正の内容 平成23年4月7日付けの手続補正は、補正前の請求項1における 「温血種において節足動物を駆除するための、節足動物のニコチン作動性アセチルコリン受容体のアゴニストと組み合わせたピレスロイドまたはピレトリンの使用。」 との記載を、補正後の請求項1における 「温血種においてマダニを駆除するための、イミダクロプリドと組み合わせたペルメトリンの使用。」 との記載に改める補正を含むものである。 2.補正の適否 (1)はじめに 上記請求項1についての補正は、補正前の請求項1の記載における「節足動物」並びに「節足動物のニコチン作動性アセチルコリン受容体のアゴニスト」及び「ピレスロイドまたはピレトリン」という発明特定事項を、補正後の請求項1の記載において「マダニ」並びに「イミダクロプリド」及び「ペルメトリン」に限定する補正からなるものであって、 当該補正により補正前後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が変更されるものでもない。 したがって、上記請求項1についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について検討する。 (2)引用刊行物及びその記載事項 ア.刊行物1(国際公開第02/043494号) 本願優先日前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由において「引用文献1」として引用された上記刊行物1には、和訳にして、次の記載がある。 摘記1a:請求項1 「ピレスロイド及びニコチニル化合物の組合せを含む寄生性の昆虫類(insects)及びダニ類(acarids)の防除(control)のための組成物。」 摘記1b:第10頁第31行?第11頁第14行及び第13頁第5?15行 「組成物もしくは調剤中の活性成分の濃度は、寄生性の昆虫類(insects)及びダニ類(acarids)の防除(control)に有効であるような濃度である。特定の濃度は調剤の型及び適用法に依存する。典型的には、ピレスロイドは使用に依存して(居住地又は哺乳類への皮膚的適用)0.1%?60%w/w、そして好ましくは哺乳類への皮膚的適用の場合40%?60%(w/w)の濃度で存在することができる。ニコチニル化合物は使用に依存して(居住地又は哺乳類への皮膚的適用)0.001%?60%(w/w)、そして好ましくは哺乳類への皮膚的適用の場合0.1%?25%(w/w)の濃度で存在することができる。最も好ましくは、組成物は少なくとも40%(w/w)のペルメトリン及び8?10%(w/w)のイミダクロプリドを含む。使用前に希釈される調製物は、0.1%(w/w)?90%(w/w)の濃度で活性物質を含有する。動物への皮膚的適用の場合、調剤は好ましくは0.1%(w/w)?25%(w/w)、好ましくは5%(w/w)?20%(w/w)を含有する。本明細書における記述を与えられ、哺乳類、特にネコに無毒であるピレスロイドの型及び濃度を選ぶことは熟練者の関与範囲内であろう。… 本発明の実施においては、いずれの簡便な方法でも組成物を適用することができる。例えば皮膚的適用の場合、小さいが有効な容積を動物上のある箇所で滴下することにより組成物を適用することができる。本発明の本態様の場合、活性成分を別の調剤として同時に適用する時、相乗的結果が得られる。1つの調剤中におけるピレスロイドとニコチニル化合物の組合せが好ましい。… 驚くべきことに、組合せはイヌ上のマダニ類(ticks)の種、デマセントル・バリアビリス及びリピセファルス・サンギネアスに対して特に有効であることが見出された。」 摘記1c:第14頁第29行?第15頁第8行 「実施例1 この研究の目的は、イヌに皮膚的に適用されるピレスロイド及びクロロニコチニル殺虫剤の組合せ適用のノミ及びマダニの防除を、30日の間隔を経て比較として決定することであった。この組合せをペルメトリンのみ、イミダクロプリドのみ、フィプロニル及びセラメクチンと比較した。後者の2つの化合物は現在マダニ及びノミの両方の防除に関してクレイムを有している製品中に存在する。 36匹のイヌを群当たりに6匹のイヌの6つの群に分けた。各イヌに45重量%のペルメトリンを含有するバイエル社から入手可能な製品の「キルティクス(Kiltix)」、9.1%w/wのイミダクロプリドを含有するバイエル社から入手可能な製品のアドバンテージ(Advantage^(R))、45%w/wのペルメトリン+9.1%w/wイミダクロプリドを含有するキルティクスとアドバンテージの組合せ、9.7%のフィプロニルを含有するメリアルから入手可能な製品のトップスポット(Top Spot^(R))又は12%w/vのセラメクチンを含有するファイザー社から入手可能な製品であるレボリューション(Revolution^(R))の1回の局所-適用処置を、適した投薬量及び種々の製品適用に関するラベル指示に従って施した。標準のイヌは未処置のままであった。すべての製品は商業的単位投薬量アプリケーターチューブで与えられた。」 摘記1d:第20頁第2?13行 「ペルメトリンとイミダクロプリドの組合せは、ペルメトリンのみ又はイミダクロプリドのみより、マダニ類の両方の種(D.バリアビリス及びR.サンギネアス)の殺害を生じた。組合せは、適用後2日までに82?86%のマダニ類の殺害ならびに適用後3日までにマダニ類の両方の種の約100%の殺害を与えた。ペルメトリンのみはマダニ類の100%の殺害に達するのに7日かかった。セラメクチンはD.バリアビリスのわずか83%の殺害に達するのに9日かかり、次いでこの化合物はその活性を失った。セラメクチンはR.サンギネアスのより早い殺害を生じたが(3日までに87%)、セラメクチンのマダニ殺害は急速に低下し、適用後16日まで作用しなくなった(negligent)。フィプロニルはペルメトリンとイミダクロプリドの組合せの殺害に類似のより早い殺害を生じた。」 イ.刊行物2(特開2001-139403号公報) 本願優先日前に頒布された刊行物であって、平成25年2月13日付けの審尋において「参考例D」として提示された上記刊行物2には、次の記載がある。 摘記2a:段落0005 「このような動物用外部寄生虫駆除剤のうち、液体製剤は体表面に局所的に滴下して用いるものであり、液体製剤の市販品として…イミダクロプリド製剤(商品名;アドバンテージ)などが知られている。」 摘記2b:段落0059、0061、0063?0065及び0067 「比較例2…ペルメトリン40部とケロシン60部とを混合し、比較例2の駆除剤を製造した。… 比較例4…イミダクロプリド10部、エタノール70部、ジメチルスルホキシド20部とを混合し、比較例4の駆除剤を製造した。… <効果確認試験>供試動物をネコ(…体重5kg)とし、予めネコノミの成虫をネコ1頭当たり100匹を接種し、…比較例の外部寄生虫駆除剤をネコの背中の被毛をかき分けて皮膚に直接滴下した。… 滴下量:…比較例2は、2ミリリットル/頭…比較例4は、0.4ミリリットル/頭… 上記試験の結果は、以下の(まる1)?(まる3)のように判定し、これらの結果を表1および表2に示した。 (まる1)寄生数:外部寄生虫駆除剤の滴下後、48時間後にノミ取り櫛を用いて毛を梳いて、梳き取られたノミの数を計数し、表中に+、-記号で評価した。 - 80?100匹 + 40? 79匹 ++ 6? 39匹 +++ 0? 5匹 … 【表2】 比較例 … 2 … 4 … (まる1)寄生数 … +++ … +++ 」 (審決注:摘記2bにおいて、○の中に数字の1を「まる1」で表す。他の○付き数字も同様。) ウ.刊行物3(カナダ特許公開第2443159号明細書) 本願優先日前に頒布された刊行物であって、平成25年2月13日付けの審尋において「参考例E」として提示された上記刊行物3には、和訳にして、次の記載がある。 摘記3a:第1頁第5?7行 「本発明は、ペルメトリン(permethrin)並びに動物のニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニスト(作動薬)またはアンタゴニスト(拮抗薬)を含んで成る動物の寄生虫を防除(controlling)するために皮膚に施用する皮膚に優しい液体組成物に関する。」 摘記3b:第15頁第3?5行 「好適な施用容積は処置を行うペットの体重1.0kg当たり0.075?0.25ml、好ましくは0.1?0.15mlである。」 摘記3c:第16頁第3?11行及び第23頁第6行 「実施例1 下記の成分を含んで成る均一なスポット・オン用溶液: 45g シス体40%及びトランス体60%を含むペルメトリン 10g バイエル社製のイミダクロプリド (1-[6-クロロ-3- ピリジン)メチル]-N-ニトロ-2-イミダゾリジニウム) 44.8g N-メチルピロリドン 0.1g クエン酸 0.1g BHT(ブチル化したヒドロキシトルエン)… B.イヌの上にいるマダニ(Rhipicefalus sanuineus)に対する効能」 エ.刊行物4(特表2002-539228号公報) 本願優先日前に頒布された刊行物であって、平成25年2月13日付けの審尋において「参考例H」として提示された上記刊行物4には、次の記載がある。 摘記4a:請求項3 「動物に対する有害生物を防除するための、請求項1に記載の式(I)の化合物とニコチン性アセチルコリン受容体の少なくとも1種のアゴニスト及び/又はアンタゴニストを含む相乗的に有効な混合物の使用。」 摘記4b:段落0003、0038及び0043 「ニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニスト類及びアンタゴニスト類は昆虫を防除するのに用い得ることもまた知れ渡っている。…ニコチン性アセチルコリン受容体のうち極めて特に好ましいアゴニスト及びアンタゴニストは、下記式の化合物…式(IIa)…の化合物が極めて特に好ましい。」 摘記4c:段落0057及び0106?0108 「混合物中の副成分の特に好ましい例は下記の化合物である:…イミダクロプリド(imidacloprid)…パーメスリン(permethrin)… これらの有害生物としては次のものが挙げられる:…ダニ目から、例えば…クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanfuineus)… 家庭用殺虫剤の分野では、…ピレスロイド類…と組み合わせた状態で用いる。… 虫よけ紙、虫よけにおい袋並びに虫よけゲルの形態で…施用を行う。」 オ.刊行物5(特開平8-208408号公報) 本願優先日前に頒布された刊行物である上記刊行物5には、次の記載がある。 摘記5a:段落0002?0004 「昆虫綱目の吸血性外部寄生虫としては、…マダニ類…等が挙げられ、多数の有用な恒温動物に寄生したり、又は襲ったりする。これら有用な恒温動物としては、…犬、猫のようなペット用動物が挙げられる。…従ってコントロール法としては、少なくとも3つの目標を有する。…第1は…寄生虫を殺すことであり、第2は、環境から新寄生虫の再寄生をコントロール又は阻止することであり、…マダニ類は、世界中の多くの人や動物の疾病の伝染や伝播の原因となる。」 摘記5b:段落0053及び0056 「実施例5:犬・猫のノミ・マダニに対するパーメトリンシャンプーの直接及び残留効力…次の3週間に新ノミ・マダニによる5回のくり返しの再寄生に対する連続した残留効力は、全体として意外であった。」 (3)刊行物1に記載された発明 摘記1aの「ピレスロイド及びニコチニル化合物の組合せを含む寄生性の昆虫類(insects)及びダニ類(acarids)の防除(control)のための組成物。」との記載、 摘記1bの「組成物…中の活性成分の濃度は、寄生性の昆虫類(insects)及びダニ類(acarids)の防除(control)に有効であるような濃度である。…ピレスロイドは…哺乳類への皮膚的適用の場合40%?60%(w/w)の濃度で存在することができる。ニコチニル化合物は…哺乳類への皮膚的適用の場合0.1%?25%(w/w)の濃度で存在することができる。最も好ましくは、組成物は少なくとも40%(w/w)のペルメトリン及び8?10%(w/w)のイミダクロプリドを含む。…組合せはイヌ上のマダニ類(ticks)…リピセファルス・サンギネアスに対して特に有効であることが見出された。」との記載、 摘記1cの「実施例1…各イヌに…45%w/wのペルメトリン+9.1%w/wイミダクロプリドを含有するキルティクスとアドバンテージの組合せ…の1回の局所-適用処置を、適した投薬量及び種々の製品適用に関するラベル指示に従って施した。」との記載、及び 摘記1dの「ペルメトリンとイミダクロプリドの組合せは、ペルメトリンのみ又はイミダクロプリドのみより、マダニ類の両方の種(D.バリアビリス及びR.サンギネアス)の殺害を生じた。」との記載からみて、刊行物1には、 『哺乳類(イヌ)上のマダニ類(R.サンギネアス)の防除(control)のためのピレスロイド(ペルメトリン)少なくとも40%(w/w)及びニコチニル化合物(イミダクロプリド)8?10%(w/w)を含む組成物の適用。』についての発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (4)対比 補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「哺乳類(イヌ)」及び「マダニ類(R.サンギネアス)」の各々は、補正発明の「温血種」及び「マダニ」の各々に相当し、 引用発明の「ピレスロイド(ペルメトリン)少なくとも40%(w/w)及びニコチニル化合物(イミダクロプリド)8?10%(w/w)を含む組成物の適用」は、補正発明の「イミダクロプリドと組み合わせたペルメトリンの使用」に相当する。 してみると、補正発明と引用発明は『温血種においてマダニを駆除又は防除するための、イミダクロプリドと組み合わせたペルメトリンの使用。』に関するものである点において一致し、 その「駆除又は防除」が、補正発明では「駆除」であるのに対して、引用発明では「防除(control)」である点においてのみ一応相違する。 (5)判断 ア.補正発明の「駆除」という発明特定事項について 上記一応の相違点について検討するに当たり、補正発明の「駆除」という発明特定事項の意味するところについて、本願明細書の記載及び請求人の説明を整理・確認する。 先ず、平成25年2月13日付けの審尋で指摘したように、本願明細書の段落0008には『非常に良好な駆除特性(very good repelling properties)を有することが判明した。これは、処置された動物と外寄生生物の相対的接触時間と、接触後100%の死亡率を達成する(achieving 100% mortality after contact)のに必要な接触時間との両方に関する。』との記載があり、 同段落0009には『本明細書で以下により詳しく説明するタイプの係る組合せ製剤は、既に動物を攻撃した寄生虫を制御する(controlling parasites)ことができるのみならず』との記載があり、 同段落0151には『駆除されたマダニが…殺され(repelled ticks are killed)』との記載がある。 (なお、本願の国際出願の原文はドイツ語であるが、括弧内の英語による表記は、対応する米国特許公開第2006/0211655号明細書の記載を参照した。) これに対して、平成25年8月19日付けの回答書において、請求人は『審尋事項(あ)…本願発明の「駆除」は、「repelling」の訳語として使用されており、…本来は「忌避」と翻訳するべきでありました。』との回答、及び『審尋事項(く)…本願明細書段落0009の記載は、…「驚くべきことに、急性攻撃を非常に効率的に防止し…」…を示したものであり、本願請求項1及び2に記載された「駆除」という発明特定事項は、引用文献1に記載された「制御」、即ち「殺虫」を含むことを意味しません。』という旨の回答をしている。 イ.第1の観点(駆除)からの検討 例えば、特開平10-338608号公報(参考例A)の段落0006?0008の『本発明防除剤には…ペルメトリン…等のピレスロイド系化合物、…イミダクロプリド…等のクロルニコチル系化合物…を適宜含有させ…動物(ネコ等のペット)の肩甲骨背部の皮膚等に…施用されることにより、外部寄生虫(オウシマダニ等のマダニ目害虫)等が効果的に駆除される他、忌避することもできる。』との記載にあるように、日本語としての「駆除」の意味は、必ずしも「忌避」を意味せず、むしろ「殺虫」を意味するのが普通であり、本願明細書の段落0008の『非常に良好な駆除特性…接触後100%の死亡率を達成する』との記載をも参酌すると、補正発明の「駆除」が「殺虫」を意味しない純粋な意味での「忌避」を意味するとは解せない。 このため、摘記1dの「適用後3日までにマダニ類の…約100%の殺害を与えた」という「殺虫」の効力を含めて意味する引用発明の「防除(control)」と、本願明細書の段落0008の「接触後100%の死亡率を達成する」との記載、及び同段落0151の「本発明による製剤は、駆除されたマダニ(repelled ticks)が明らかに1分未満の短い接触時間の後でさえ殺され(killed)、故に駆虫されたマダニ(repelled ticks)により他の宿主がもはや攻撃され得ないという事実により、さらなる保護を提供する。」との記載にある「殺虫」の効力を含めて意味する補正発明の「駆除」とに、実質的な差異があるとは認められない。 したがって、平成22年11月30日付けの拒絶査定の備考欄の『本願発明の「駆除するため」との用途について検討するに、「駆除」とは【0008】等の記載から、殺虫効果を含む効果を指すものと認められる』という旨の指摘は妥当であり、上記の一応の相違点は実質的な差異ではない。 ウ.第2の観点(防除)からの検討 例えば、摘記5aの「コントロール法としては、少なくとも3つの目標を有する。…第1は…寄生虫を殺すことであり、第2は、環境から新寄生虫の再寄生をコントロール又は阻止することであり」との記載、 特開平11-222463号公報(参考例B)の段落0007の「本発明において害虫防除剤は、殺虫及び害虫の忌避を目的とするものである。」との記載、並びに 特開2000-63220号公報(参考例C)の段落0012の『害虫に対する「防除」とは、殺虫のみならず忌避を含む意味に用いる。』との記載、及び同段落0047の「他の防虫剤としては、…パーメスリン…などのピレスロイド系化合物、イミダクロプリド…などのネオニコチノイド系化合物…などが挙げられる。」との記載にあるように、 引用発明の「防除(control)」という用語の意味には「殺虫」のみならず「忌避」という意味も含まれるのが普通である。 また、特開平4-247004号公報(参考例F)の段落0005の「害虫駆除剤の多くは、それ自体害虫忌避性を有しており」との記載、並びに 特開平10-139604号公報(参考例G)の段落0005の「これらの薬剤の中には害虫に対する忌避作用を有している場合が多く、忌避作用によって標的となる害虫が薬剤と十分に接触せずに逃げてしまう」との記載、及び同段落0024の「ペルメトリン…イミダクロプリド」との記載にあるように、 ペルメトリン〔パーメスリン(Permethrin)と同義〕やイミダクロプリドなどの害虫防除剤それ自体に忌避作用があることは、当業者にとって『通常の知識』の範囲内の技術常識にすぎないから、刊行物1に記載された『ピレスロイド(ペルメトリン)及びニコチニル化合物(イミダクロプリド)の組合せを含む寄生性の昆虫類(insects)及びダニ類(acarids)の防除(control)のための組成物』それ自体に忌避作用があることは、当業者にとって記載されているに等しい自明事項である。 してみると、刊行物1の英語原文の用語「control」又は「controling」の訳語としての引用発明の「防除(control)」の意味に「忌避」の意味が含まれることが明らかであるから、補正発明の「駆除」という発明特定事項を仮に「忌避(repelling)」の意味に善解したとしても、この点について実質的な差異があるとは認められない。 したがって、平成22年11月30日付けの拒絶査定の備考欄の『引用文献1記載の発明は、寄生昆虫及びダニを「制御(control)」する方法であって文言上は忌避効果も含まれ得る』という旨の指摘は妥当であり、上記の一応の相違点は実質的な差異ではない。 エ.第3の観点(用途)からの検討 例えば、摘記2bの「比較例2…ペルメトリン」及び「比較例4…イミダクロプリド」の「外部寄生虫駆除剤」についての効果確認試験の結果にあるように、寄生虫(但し「ネコノミ」であって「マダニ」ではない)の寄生数を減少させるという属性(この際に寄生虫の死亡は確認されていない)がペルメトリン及びイミダクロプリドの各々にあることは既知であり、 例えば、摘記4cの「副成分…イミダクロプリド…パーメスリン…虫よけ紙、虫よけにおい袋並びに虫よけゲルの形態で…施用を行う」との記載にあるように、イミダクロプリド及びパーメスリン(ペルメトリンと同義)は虫除け剤(忌避剤)の有効成分として周知慣用の常用成分となっている。 してみると、イミダクロプリド及びペルメトリンの忌避効果が、本願優先日前の技術水準において『未知の属性』であったとは認められない。 また、補正発明の具体的な使用形態は、本願明細書の段落0084及び0087の記載にあるように、45重量%のペルメトリンと10重量%のイミダクロプリドを含む配合組成の均質スポットオン液剤を、処置しようとする動物の体重1.0kg当たり0.075?0.25mlを施用するというものであって、刊行物3に記載された寄生虫を「防除」するための液体組成物の使用形態(摘記3b及び3c)と同様であり、 刊行物1に記載された「組成物は少なくとも40%(w/w)のペルメトリン及び8?10%(w/w)のイミダクロプリドを含む。使用前に希釈される調製物は、0.1%(w/w)?90%(w/w)の濃度で活性物質を含有する。…例えば皮膚的適用の場合、小さいが有効な容積を動物上のある箇所で滴下することにより組成物を適用することができる。」という使用形態(摘記1b)と同様である。 〔なお、刊行物1の段落0066の「表1」では、体重が20ポンド(約9kg)のイヌを例にとると、45%ペルメトリン0.16ml/kgと9.1%イミダクロプリド0.11ml/kgが施用されることになる。〕 してみると、イミダクロプリドとペルメトリンの組合せについて、仮に忌避効果という『未知の属性』が発見されたとしても、本願優先日前の技術水準を考慮すれば、その物の用途として新たな用途を提供したとはいえないから、補正発明の新規性は否定されるべきものである。 したがって、平成22年11月30日付けの拒絶査定の備考欄の『引用文献1記載の発明は、イヌ等の温血動物に、少量の薬剤を滴下して皮膚適用されるものであり、本願発明の適用方法と異なるものではない。よって、本願発明は、その物の用途として新たな用途を適用したといえず、かつ本願発明は引用文献1記載の発明と区別することができない。』という旨の指摘は妥当であり、上記の一応の相違点は実質的な差異ではない。 オ.小括 以上検討したように、上記の一応の相違点に実質的な差異があるとは認められないから、補正発明と引用発明とに実質的な差異はない。 したがって、補正発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.まとめ 以上総括するに、上記請求項1についての補正は、独立特許要件違反があるという点において同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、その余のことを検討するまでもなく、平成23年4月7日付けの手続補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成23年4月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成22年6月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は「この出願については、平成22年3月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、平成22年3月15日付け拒絶理由通知書には、 その理由1として「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由が示され、 その「記」には、『理由1、2;請求項1-6;引用文献1…引用文献1には、ピレスロイド及びニコチニル化合物(実施例では、ペルメトリン及びイミダクロプリド)を組み合わせた、寄生性昆虫及びダニ類の抑制のための組成物、並びに該組成物を哺乳類又は居住地に投与する方法が記載されている(特に、特許請求の範囲、実施例参照)。』との指摘がなされている。 3.引用文献及びその記載事項、並びに引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された「引用文献1」及びその記載事項は、前記『第2 2.(2)』の項の『ア.刊行物1(国際公開第02/043494号)』の項に示したとおりである。 また、引用文献1(刊行物1)には、前記『第2 2.(3)』の項に示したとおりの「引用発明」が記載されている。 4.対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、補正発明の「マダニ」並びに「イミダクロプリド」及び「ペルメトリン」という発明特定事項を、その上位概念としての「節足動物」並びに「節足動物のニコチン作動性アセチルコリン受容体のアゴニスト」及び「ピレスロイドまたはピレトリン」という発明特定事項に置き換えたものであって、本願発明は補正発明を包含するものである。 したがって、前記『第2 2.(4)?(5)』の項に示したのと同様の理由により、本願発明は引用文献1に記載された発明である。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。そして、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-26 |
結審通知日 | 2014-01-07 |
審決日 | 2014-01-20 |
出願番号 | 特願2006-500515(P2006-500515) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A01N)
P 1 8・ 575- Z (A01N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柿崎 美陶 |
特許庁審判長 |
中田 とし子 |
特許庁審判官 |
木村 敏康 村守 宏文 |
発明の名称 | 駆除剤 |
代理人 | 松谷 道子 |
代理人 | 橋本 諭志 |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 岩崎 光隆 |
代理人 | 山田 卓二 |