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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07D
管理番号 1288320
審判番号 不服2012-25509  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-21 
確定日 2014-06-04 
事件の表示 特願2007-524162「ペンゾネート化合物,その合成方法、それを含む薬物複合物およびそれらの用途」拒絶査定不服審判事件〔平成18年3月9日国際公開、WO2006/024217、平成20年3月27日国内公表、特表2008-509094〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2005年8月5日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2004年8月6日、中国(CN))を国際出願日とする出願であって、平成23年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成24年5月22日に意見書が提出され、同年8月14日付けで拒絶査定がされ、同年12月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成25年4月30日付けで審尋がされ、同年11月7日に回答書が提出されたものである。

第2 平成24年12月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成24年12月21日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成24年12月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の請求項7?15を削除し、補正前の請求項1?6、16?24を補正後の請求項1?15としたものであって、
補正前の請求項1である、
「【請求項1】
一般式(I)が示す化合物、その異構造体(立体異性体)、薬(品使)用(可能)塩、溶剤化物(溶媒和物)、エステル及び前体薬物(プロドラッグ)
【化1】

そのうち、ALは水素、水酸基、ハロゲン原子 (F、Cl、Br、I)、3FCH、ニトリル基、硝(ニトロ)基、アミド基NR_(1)R_(2)(R_(1)、R_(2)=C_(1-6)アルキル)、C_(1-6)アルキル、C_(1-6)アルコキシル基、メチレンジオキシ、3,4-ジ- C_(1-6)アルコキシル基、3,4,5,-サン- C_(1-6)アルコキシ、3-メトキシル基-4-水酸基、3,4- メチレンジオキシ-5-メトキシル基、3-水酸基-4-メトキシル基;
n = 0、1、2 ;
YはC、N、Oより選んだ;
XはH、C_(1-6)アルキル基、COOR(R= H, C_(1-6)アルキル)、C(CH_(3))_(3)、置換或いは未置換のアリール、CO-Ph、CH_(2)Ph、CH_(2)CH_(2)OH、CONR_(1)R_(2 )(R_(1)、R_(2) = C_(1-6)アルキル)により選び。」
を、
「【請求項1】
一般式(I)が示す化合物、あるいはその立体異性体、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物
【化1】

そのうち、ALは水素、水酸基、ハロゲン原子 (F、Cl、Br、I)、トリフロオロメチル、ニトリル基、ニトロ基、アミノ基NR_(1)R_(2)(R_(1)、R_(2)=C_(1-6)アルキル)、C_(1-6)アルキル、C_(1-6)アルコキシル基;
n = 1、2 ;
YはCより選んだ;
XはC_(1-6)アルキル基、COOR(R= H, C_(1-6)アルキル)、C(CH_(3))_(3)、置換或いは未置換のアリール、CO-Ph、CH_(2)Ph、CH_(2)CH_(2)OH、CONR_(1)R_(2) (R_(1)、R_(2) = C_(1-6)アルキル)により選んだ。」
とする補正を含むものである。

2 目的要件について
本件補正は、請求項1の「一般式(I)が示す化合物」において、
「ALは水素、水酸基、ハロゲン原子 (F、Cl、Br、I)、3FCH、ニトリル基、硝(ニトロ)基、アミド基NR_(1)R_(2)(R_(1)、R_(2)=C_(1-6)アルキル)、C_(1-6)アルキル、C_(1-6)アルコキシル基、メチレンジオキシ、3,4-ジ- C_(1-6)アルコキシル基、3,4,5,-サン- C_(1-6)アルコキシ、3-メトキシル基-4-水酸基、3,4- メチレンジオキシ-5-メトキシル基、3-水酸基-4-メトキシル基」だったものを「ALは水素、水酸基、ハロゲン原子 (F、Cl、Br、I)、トリフロオロメチル、ニトリル基、ニトロ基、アミノ基NR_(1)R_(2)(R_(1)、R_(2)=C_(1-6)アルキル)、C_(1-6)アルキル、C_(1-6)アルコキシル基」とし、
「n = 0、1、2」だったものを「 n = 1、2」とし、
「YはC、N、Oより選んだ」だったものを「YはCより選んだ」とし、
「XはH、C_(1-6)アルキル基、COOR(R= H, C_(1-6)アルキル)、C(CH_(3))_(3)、置換或いは未置換のアリール、CO-Ph、CH_(2)Ph、CH_(2)CH_(2)OH、CONR_(1)R_(2 )(R_(1)、R_(2) = C_(1-6)アルキル)により選び」だったものを「XはC_(1-6)アルキル基、COOR(R= H, C_(1-6)アルキル)、C(CH_(3))_(3)、置換或いは未置換のアリール、CO-Ph、CH_(2)Ph、CH_(2)CH_(2)OH、CONR_(1)R_(2 )(R_(1)、R_(2) = C_(1-6)アルキル)により選んだ」
とする補正を含むところ、いずれも、択一的に記載されていた基の一部を削除するものであるから、「一般式(I)が示す化合物」を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本願補正発明」といい、本件補正後の明細書を「本願補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

3 独立特許要件について
(1)刊行物及び記載事項
刊行物aは次のとおりであり、以下の事項が記載されている。

刊行物a:TAYLOR, E. D.,Some Ketonic Mannich Bases,Journal of the American Pharmaceutical Association,Vol.49,No.5,1960年,p. 317-319
(原査定における引用文献13)

(a-1)(記載内容は、訳文で示す。)「表Iと表IIに挙がっている、型Iと型IIの化合物の合成は、マンニッヒ反応によった。すなわち、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドと、適当なケトンと、アミン塩酸塩とを反応させる方法である。この反応を以下に示す。


実験
実験 結果- p-フルオロアセトフェノン及びp-ヨードアセトフェノンは、ルッツの方法(10)により製造した。p-クロロベンザルアセトンは先述の方法(11)により合成した。N-メチルピペラジンは、アボット研究室のハロルド・ソーグ博士のご厚意により、供給していただいた。他のケトンとアミンは全て商業的に入手した。」(317頁右欄12?30行)

(a-2)「

」(318頁表I)

(2)刊行物aに記載された発明
刊行物aには、マンニッヒ反応により、表I、表IIに挙げられた化合物を製造したことが記載されている(摘示(a-1))。
そこで、表Iを見るに、表Iには、その第1行目に、

(以下、一般式(「一般式A」という。)が記載され、その下にNo.1?16の化合物について、R’基、NR_(2)基、収率、融点、化学式、炭素と水素の分析値が記載され、次いで、

(以下、「一般式B」という。)が記載され、その下にNo.17?18の化合物について、R’基、NR_(2)基、収率、融点、化学式、炭素と水素の分析値が記載されている(摘示(a-2))。
このように、具体的に、収率、融点が記載され、炭素と水素の分析値も実験的にも求められていることからすると、No.1?18の化合物は、いずれも、実際に合成されたものといえる。
そうすると、刊行物aには、No.18の化合物である、
「一般式B

において、R’がp-メトキシであり、NR_(2)が(2-メチル)ピペリジノである化合物」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
本願補正発明の「一般式(I)」でn=1の場合,引用発明の「一般式B」のNR_(2)がピペリジノで表されたものであるから、両者ともに、「5-ピペリジノ-1-フェニル-1-ペンテン-3-オン化合物」である点で一致し、次の(i)?(iii)の点で、一応相違している。

(i)「ピペリジノ」(ピペリジン環)に置換しているのが、本願補正発明においては「X」であるのに対し、引用発明においては「2-メチル」である点
(ii)「フェニル」に置換しているのが、本願補正発明においては「AL」であるのに対し、引用発明においては「p-メトキシ」である点
(iii)「化合物」が、本願補正発明においては「化合物、あるいはその立体異性体、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物」であるのに対し、引用発明においては「化合物」である点

(4)判断
一応の相違点(i)?(iii)について検討する。
ア 本願補正発明における「X」は、その「XはC_(1-6)アルキル基、COOR(R= H, C_(1-6)アルキル)、C(CH_(3))_(3)、置換或いは未置換のアリール、CO-Ph、CH_(2)Ph、CH_(2)CH_(2)OH、CONR_(1)R_(2) (R_(1)、R_(2) = C_(1-6)アルキル)により選んだ。」なる記載から、「C_(1-6)アルキル基」を含むものであり、アルキル基の置換位置は特定されていないから、「ピペリジノ」の「2-位に置換した」「C_(1)アルキル基」である「2-メチル」を含んでいる。
そうすると、本願補正発明においても、「ピペリジノ」に「2-メチル」が置換している場合があるから、相違点(i)は実質的に相違していない。

イ 本願補正発明における「AL」は、その「ALは水素、水酸基、ハロゲン原子 (F、Cl、Br、I)、トリフロオロメチル、ニトリル基、ニトロ基、アミノ基NR_(1)R_(2)(R_(1)、R_(2)=C_(1-6)アルキル)、C_(1-6)アルキル、C_(1-6)アルコキシル基」なる記載から、「C_(1-6)アルコキシル基」を含むものであり、アルコキシル基の置換位置は特定されていないから、「フェニル」の「p-位に置換した」「C_(1)アルコキシル基」である「p-メトキシ」を含んでいる。
そうすると、本願補正発明においても、「フェニル」に「p-メトキシ」が置換している場合があるから、相違点(ii)は実質的に相違していない。

ウ 引用発明の「化合物」は、一般式Bの記載(摘示(a-2))から、具体的には「HCl塩」であるところ、本願補正発明の「化合物、あるいはその立体異性体、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物」においても、本願補正発明を引用する本件補正後の請求項2では「HCl塩」であり、また、本願補正明細書の段落【0041】に「優先的に選択される薬用酸は、塩酸塩、・・・等」と記載され、同段落【0043】に「本発明の化合物或いはその塩酸塩は以下の方法で生成する」と記載されていること等からすると、本願補正発明の「化合物、あるいはその立体異性体、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物」は「HCl塩」を含んでいる。
そうすると、本願補正発明においても、「化合物」が「HCl塩」の場合があるから、相違点(iii)も実質的に相違していない。

エ まとめ
以上のとおり、一応の相違点(i)?(iii)はいずれも実質的に相違していないから、本願補正発明と引用発明とは同一である。

(5)まとめ
よって、本願補正発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、その余について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり、決定する。

第3 本願発明
平成24年12月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1?24に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項1】
一般式(I)が示す化合物、その異構造体(立体異性体)、薬(品使)用(可能)塩、溶剤化物(溶媒和物)、エステル及び前体薬物(プロドラッグ)
【化1】

そのうち、ALは水素、水酸基、ハロゲン原子 (F、Cl、Br、I)、3FCH、ニトリル基、硝(ニトロ)基、アミド基NR_(1)R_(2)(R_(1)、R_(2)=C_(1-6)アルキル)、C_(1-6)アルキル、C_(1-6)アルコキシル基、メチレンジオキシ、3,4-ジ- C_(1-6)アルコキシル基、3,4,5,-サン- C_(1-6)アルコキシ、3-メトキシル基-4-水酸基、3,4- メチレンジオキシ-5-メトキシル基、3-水酸基-4-メトキシル基;
n = 0、1、2 ;
YはC、N、Oより選んだ;
XはH、C_(1-6)アルキル基、COOR(R= H, C_(1-6)アルキル)、C(CH_(3))_(3)、置換或いは未置換のアリール、CO-Ph、CH_(2)Ph、CH_(2)CH_(2)OH、CONR_(1)R_(2) (R_(1)、R_(2 )= C_(1-6)アルキル)により選び。」

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「平成23年11月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-3によって、拒絶をすべきものである」というものであって、「備考」欄には、「引用文献2-16にも、依然として、本願の特許請求の範囲内に含まれる化合物及びその製造方法が記載されている。」とされている。
そこで、平成23年11月15日付け拒絶理由通知書をみると、
「理由1」として、
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」と記載され、
さらに、「理由1及び2について」として、
「引用文献13」について、
「G.請求項1,2,10,15,17,20,21
・引用文献等 13
・備考
引用文献13には、医薬に有用な化合物として、本願請求項1に記載の一般式(I)のnが0又は1、YがC、N又はOである化合物及びその製造方法が記載されている(引用文献13:Table I-IV, 第317頁右欄)。
したがって、請求項1,2,10,15,17,20,21に係る発明は引用文献13に記載された発明であるか、引用文献13の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものである。」
と記載されている。

そうすると、原査定の拒絶の理由は、
「引用文献13には、医薬に有用な化合物として、本願請求項1に記載の一般式(I)のnが0又は1、YがC、N又はOである化合物が記載されているから、請求項1に係る発明は引用文献13(刊行物a)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」
という理由を含むものである。

第5 当審の判断
1 本願発明について
ここで本願発明について検討すると、請求項1には、平成23年11月15日付け拒絶理由通知において指摘されている、「エステル及び前体薬物(プロドラッグ)」のような不明確な記載や、不明確な置換基名の記載はあるものの、明確に記載されているところもある。
すなわち、「AL」が「C_(1-6)アルコキシル基」を含むことや、「n」が「1」を含むことや、「Y」が「C」を含むことや、「X」が「C_(1-6)アルキル基」を含むことは明確であり、また、通常、「薬(品使)用(可能)塩」のようなカッコ付き記載は、カッコのある場合とカッコのない場合が互いに言い換えられる場合に使われるのであるから、この場合は、「薬用塩又は薬品使用可能塩」と読み替えることができる。
すると、請求項1に不明確な記載はあるものの、請求項1に、
『「AL」が「C_(1-6)アルコキシル基」であり、「n」が「1」であり、「Y」が「C」であり、「X」が「C_(1-6)アルキル基」である「化合物が薬用塩」』
なる発明が含まれることは明確であるといえる。

そうすると、本願発明には、
「一般式(I)において、ALがC_(1-6)アルコキシル基であり、nが1であり、YがCであり、XがC_(1-6)アルキル基である、一般式(I)が示す薬用塩化合物」
の発明(以下、「本願発明A」という。)が、包含されている。

2 刊行物及び記載事項
刊行物a及びその記載事項は、「第2 3(1)」に示したとおりである。

3 刊行物aに記載された発明
「第2 3(2)」に示したとおりである。

4 対比
本願発明Aと引用発明とを対比する。
本願発明Aは、「一般式(I)」でn=1であって,引用発明の「一般式B」のNR_(2)がピペリジノで表されたものであるから、両者ともに、「5-ピペリジノ-1-フェニル-1-ペンテン-3-オン化合物」である点で一致し、次の(i’)?(iii’)の点で、一応相違している。

(i’)「ピペリジノ」に置換しているのが、本願発明Aにおいては、「C_(1-6)アルキル基」であるのに対し、引用発明においては、「2-メチル」である点
(ii’)「フェニル」に置換しているのが、本願発明Aにおいては、「C_(1-6)アルコキシル基」であるのに対し、引用発明においては、「p-メトキシ」である点
(iii’)「化合物」が、本願発明Aにおいては、「薬用塩化合物」であるのに対し、引用発明においては、「化合物」である点

5 判断
(1)一応の相違点(i’)?(iii’)について
ア 本願発明Aにおける「C_(1-6)アルキル基」は、その置換位置は特定されていないから、「ピペリジノ」の「2-位に置換した」「C_(1)アルキル基」である「2-メチル」も含んでいる。
そうすると、本願発明Aにおいても、「ピペリジノ」に「2-メチル」が置換している場合があるから、相違点(i’)は実質的に相違していない。

イ 本願発明Aにおける「C_(1-6)アルコキシル基」は、その置換位置は特定されていないから、「フェニル」の「p-位に置換した」「C_(1)アルコキシル基」である「p-メトキシ」も含んでいる。
そうすると、本願発明Aにおいても、「フェニル」に「p-メトキシ」が置換している場合があるから、相違点(ii’)は実質的に相違していない。

ウ 引用発明の「化合物」は、一般式Bの記載から、具体的には「HCl塩」であるところ、本願発明Aの「薬用塩化合物」においても、請求項2では「HCl塩」であり、また、本願明細書の段落【0041】に「優先的に選択される薬用酸は、塩酸塩、・・・等」と記載され、同段落【0043】に「本発明の化合物或いはその塩酸塩は以下の方法で生成する」と記載されていること等からすると、本願発明Aの「薬用塩化合物」は「HCl塩」を含んでいる。
そうすると、本願発明Aにおいても、「薬用塩化合物」が「HCl塩」の場合があるから、相違点(iii’)も実質的に相違していない。

(2)まとめ
以上のとおり、一応の相違点(i’)?(iii’)はいずれも実質的に相違していないから、本願発明Aと引用発明とは同一である。
したがって、本願発明Aを包含する本願発明と引用発明も、同一である。

6 請求人の主張
請求人は、平成25年11月7日付け回答書において、特許請求の範囲の補正案を示すとともに、「審判請求人は、平成24年12月21日付で提出した審判請求書および手続補正書において、審尋にて指摘された事項について瑕疵があったことを認めるとともに、それらを正すための機会を賜りたいと強く願っております。」と主張する。

しかしながら、請求人が補正をすることができるのは、審判請求と同時に補正をする場合を除いては、審判合議体において、拒絶査定と異なる理由で拒絶すべき旨の審決をしようとする場合に限られるのであって、補正案の記載された回答書を提出したからといって、審判合議体において、請求人の提出した補正案の記載された回答書の内容を、当然に審理の対象として手続を進めなければならないものではない(知財高裁平成22年(行ケ)10190号参照)。
そうすると、請求人が提出した補正案を記載した回答書に基づいて補正の機会を与える必要はない。
よって、請求人の主張は採用できない。

7 まとめ
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2013-12-26 
結審通知日 2014-01-07 
審決日 2014-01-20 
出願番号 特願2007-524162(P2007-524162)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C07D)
P 1 8・ 113- Z (C07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早乙女 智美清水 紀子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 村守 宏文
中田 とし子
発明の名称 ペンゾネート化合物,その合成方法、それを含む薬物複合物およびそれらの用途  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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