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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B25B |
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管理番号 | 1288359 |
審判番号 | 不服2012-13611 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-07-17 |
確定日 | 2014-06-05 |
事件の表示 | 特願2006-518590「ねじ継手の締付け特性の保証方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月13日国際公開、WO2005/002798、平成19年 8月 2日国内公表、特表2007-521148〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.主な手続の経緯 本願は、2004年7月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2003年7月7日、スウエーデン王国(SE))を国際出願日とする出願であって、平成23年3月28日付け拒絶理由通知書に対して同年9月30日付けで意見書および手続補正書が提出されたが、平成24年3月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審から平成24年11月30日付けの拒絶理由通知がなされ、これに対して平成25年6月6日付けで意見書が提出されたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成23年9月30日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。 「トルク供給動力工具によってねじ継手を必要な締付け力レベル(F_(N))に締付ける際にねじ継手の締付け結果の特性を保証する方法において、 ねじ継手の幾何学的形状、予期された摩擦状態、動力工具の動作特性、選択した締付け計画、及び少なくとも一つの締付けパラメーターの適用可能値に関するプログラムされたデータを用いて、上記必要な締付け力レベル(F_(N))を得るために特定のアルゴリズムに基きねじ継手締付け工程の一回以上シミュレーション操作を行なって、シミュレートした締付け力レベル(F_(S))を得ること、 上記選択した締付け計画に従って動力工具を制御し、上記特定のアルゴリズムと共に上記ねじ継手の幾何学的形状、上記動力工具の動作特性及び上記シミュレーション操作で得られた締付けパラメーター値に関するプログラムされたデータを用いて、ねじ継手締付け操作を実施し、それにより実施した締付け力レベル(F_(P))を得ること、 上記実施した締付け力レベル(F_(P))を上記シミュレートした締付け力レベル(F_(S))と比較すること、及び 特性の許容又は拒絶を行うため上記比較の結果を評価すること ことを特徴とするねじ継手の締付け結果の特性の保証方法。」(以下、請求項1に記載の発明を「本願発明」という。) 第3.引用刊行物 ○引用刊行物1 当審で通知した拒絶の理由に引用された特開2001-54875号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「プロセスシュミレーションによる最適ねじ継手締め付けパラメータ値の決定方法」に関して、図面とともに、以下のとおり記載されている。 ア.【特許請求の範囲】【請求項1】 「最適動作制御パラメータ値を用いたプログラム可能な制御システムによって制御される動力レンチで行われるネジ締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法において、 a)締め付けるべき実際のネジ継手に特有のパラメータ値及び、実際に使用される動力レンチに特有の動作パラメータ値を用いて、ネジ継手締め付けプロセスを、数学的にシュミレーションすること、 b)所望の特性を有する締め付けプロセスをもたらす最適動作制御パラメータ値を、予定の評価規準に基づいて決めること及び、 c)生産締め付けパラメータ値として用いるため、上記システムにおいて、上記最適動作制御パラメータ値を維持すること、を特徴とする動力レンチで行われるネジ継手締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法。」 イ.【特許請求の範囲】【請求項5】 「最適動作制御パラメータ値を用いたプログラム可能な制御システムによって制御される動力レンチで行われるネジ継手締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法において、 a)実際の型式のネジ継手に特有の基本パラメータ値及び、実際に使用される動力レンチに特有の動作パラメータ値を上記制御システムに記憶すること、 b)上記制御システムに、ネジ継手締め付けプロセスの許容結果をもたらすように、見積もった予め選択した動作制御パラメータ値を設けること、 c)上記予め選択した動作制御パラメータ値、実際の型式のネジ継手に特有の上記パラメータ値及び、実際に使用される上記動力レンチに、特有の上記動作パラメータ値を用いて、ネジ継手締め付けプロセスを数学的にシュミレーションすること、 d)予定の評価規準に基づいて、上記シュミレーションした締め付けプロセスの結果を、評価して、 I)上記シュミレーションした締め付けプロセスの結果を許容し、且つ生産締め付けパラメータ値として用いるため、上記最適動作制御パラメータ値を維持するかまたは、 II)上記シュミレーションした締め付けプロセスの結果を拒否し、そして上記シュミレーションした締め付けプロセスの結果を許容できるまで、毎回予め選択した動作制御パラメータ値を変更して使用し、ネジ締め付けプロセスのシュミレーションを、一回以上再始動すること、 e)生産締め付けパラメータ値として用いるため、上記制御システムにおいて、上記変更して予め選択した動作制御パラメータ値を維持すること、 を特徴とする動力レンチで行われるネジ継手締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法、 及び、c)生産締め付けパラメータ値として用いるため、上記制御システムにおいて、上記最適動作制御パラメータ値を維持すること、を特徴とする動力レンチで行われるネジ継手締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法、」 ウ.段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、最適な動作制御パラメータ値を決定する方法に関するものであり、その様に決められた最適な動作制御パラメータ値によるプログラム可能な制御システムによって制御される動力レンチが、ネジ継手の締め付けプロセスを行う。」 エ.段落【0002】 「【従来の技術】プログラム可能な制御システムによって制御される動力レンチは、通常製造作業、特に組立ライン動作に使用されており、動力レンチを利用すること及び製造効率について、重要性を持つ。制御システムのプログラム及び、最適なパワーレンチ動作特性の決定は、通常同時に行われる。現在行われている方法は通常、目的とする締め付けプロセスに適すると考えられるパラメータ値を、制御システムにプログラムして、多数の締め付け動作が行われている。その結果、パラメータ値を調節し、別の一連の締め付け動作を行う。この動作は通常殆どが、あまり長時間を費やさないため、規則的な組立作業の間に組立ラインをスローダウンさせるか、止めて行われている。」 オ.段落【0003】 「【発明が解決しようとする課題】しかし、最も好ましい制御パラメータを得るための相互作用プロセスの型式は、本質的に時間の浪費だけでなく、しばしば再調整して、同じ場合でプログラミング処理の間、締め付けられて傷ついたネジ継手を交換することもある。一番最初の、多少なりともランダムに選ばれた値で、最適な締め付けパラメータを得るための確率は、非常に小さく、これのことは“試験的”締め付けを多く行わなければならないことを意味する。」 カ.段落【0004】 「また動力レンチは、プログラミング及び締め付けテストのため、生産をやめて持ち上げられ得る。しかし、これによって動力レンチの利用しやすさ及び製造効率が、望ましくないほど大きく減少することは明らかである。」 キ.段落【0005】 「【課題を解決するための手段】プログラミング処理の速度を上げ且つ、プログラミング処理の間、締め付けられたネジ継手の再調整を実質的に避けるため、本発明は、所望の特性を有する締め付けプロセスを得るのに、許容締め付け目標の精度を含んだ、最適動作制御パラメータ値を計算する方法を備える。」 ク.段落【0006】-【0013】 「【発明の実施の形態】その方法は、実際の型式のネジ継手特有のパラメータ値の使用と、実際に使用される動力レンチ特有の動作パラメータ値の使用を含んだ、締め付けの数学的なシュミレーションから成る。 【実施例】更に、本発明による方法の目的及び利点は、以下の説明から明らかになる。 添付図面を参照して、本発明を更に詳細に説明する。 本発明による方法は、制御システムに接続された電動レンチによって、適切に実施される。制御システムは、適切な駆動電圧を動力レンチに供給する駆動手段を有する。この運転手段の電圧出力は、動力レンチのトルク出力及び速度を変える電圧量と、可変周波数を有し得る。また制御システムは、プログラム可能なデータ処理手段及び、蓄積手段とから成り得る。この目的に適した制御システムは、POWER FOCUS 2000の名称でAtlas Copco ABによって、販売されている。 本発明による方法は、図1のフローチャートに図示された本発明による方法は、プログラムユニット10が、データベース11に蓄積され且つ、締め付けられるネジ継手特有のパラメータ値と、データベース12に蓄積され且つ、使用される動力レンチ特有の動作パラメータ値と、データベース13に蓄積された非常に多数の値から選択された動作制御パラメータを供給する。 シュミレーション段階において、締め付けプロセスは、データベース11及び12から提供されたネジ継手及び動力レンチ特徴付けパラメータ値をベースとし、且つデータベース13から提供される動作制御パラメータ値を基本にして、データ処理ユニット14で、数学的に実行される。最適締め付けプロセス制御パラメータ値を決定する方法は、その様な締め付けプロセスの容認結果をもたらすため評価される制御パラメータ値が、データベース13から予め選ばれ、第一シュミレーションで使用される。 シミュレーションの結果は、比較器16によって評価され、実際の締め付けプロセスのために選ばれた所望の規準値を示し且つ、メモリー17に蓄積されるデータが、シュミレーション結果と比較される。その様な評価規準は、締め付け目標値に関する締め付けの精度、締め付けプロセス持続時間、人間工学的に好ましい反動力などであり得る。 第一シュミレーションの結果が、所望の評価規準値に基づいて、許容される場合、予め選ばれたプロセス制御パラメータ値は、制御ユニットのメモリーに保持され、締め付けを実施するのに利用される。」 以上によれば、引用刊行物1には、 「最適動作制御パラメータ値を用いたプログラム可能な制御システムによって制御される動力レンチで行われるネジ締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法において、 a)締め付けるべき実際のネジ継手に特有のパラメータ値及び、実際に使用される動力レンチに特有の動作パラメータ値を用いて、ネジ継手締め付けプロセスを、数学的にシュミレーションすること、 b)所望の特性を有する締め付けプロセスをもたらす最適動作制御パラメータ値を、予定の評価規準に基づいて決めること及び、 c)生産締め付けパラメータ値として用いるため、上記システムにおいて、上記最適動作制御パラメータ値を維持すること、 を行う動力レンチで行われるネジ継手締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法。」 との発明(以下、「引用刊行物発明」という。)が開示されていると認められる。 第4.対比・判断 本願発明と引用刊行物発明とを比較すると、後者は、「ネジ継手締め付けプロセスの最適動作制御パラメータ値を決定する方法」であり、ねじ継手の締付けに関するものということができるから、本願発明と技術分野において共通している。 さらに、後者の「a)締め付けるべき実際のネジ継手に特有のパラメータ値及び、実際に使用される動力レンチに特有の動作パラメータ値を用いて、ネジ継手締め付けプロセスを、数学的にシュミレーションすること」についてみると、このうち、「ネジ継手に特有のパラメータ値」は、前者の「ねじ継手の幾何学的形状、予期された摩擦状態」に対応しており、また、「実際に使用される動力レンチに特有の動作パラメータ値」は、前者の、「動力工具の動作特性、選択した締付け計画」に対応するものである。 そして、「ネジ継手締め付けプロセスを、数学的にシュミレーションすること」は、前者の、「必要な締付け力レベル(F_(N))を得るために特定のアルゴリズムに基きねじ継手締付け工程の一回以上シミュレーション操作」を行なうことに対応しており、その際、「必要な締付け力レベル(F_(N))を得るために特定のアルゴリズムに基」づくのは自明な事項であり、このようなシミュレーションによって、「シミュレートした締付け力レベル(F_(S))を得る」ことも自明な事項である。 また、必要なパラメーターに関するデータをプログラムにより自動生成して準備すること、さらに、そのデータをパラメーターの適用可能値の範囲内にすることも、数学的なシミュレーションを実施する際にごく普通に行われる、当業者にとっての周知事項にすぎない。 したがって、後者の上記a)の点は、前者の「ねじ継手の幾何学的形状、予期された摩擦状態、動力工具の動作特性、選択した締付け計画、及び少なくとも一つの締付けパラメーターの適用可能値に関するプログラムされたデータを用いて、必要な締付け力レベル(F_(N))を得るために特定のアルゴリズムに基きねじ継手締付け工程の一回以上シミュレーション操作を行なって、シミュレートした締付け力レベル(F_(S))を得ること」に相当している。 してみれば、両者の一致点は以下のとおりである。 <一致点> 「ねじ継手の幾何学的形状、予期された摩擦状態、動力工具の動作特性、選択した締付け計画、及び少なくとも一つの締付けパラメーターの適用可能値に関するプログラムされたデータを用いて、上記必要な締付け力レベル(F_(N))を得るために特定のアルゴリズムに基きねじ継手締付け工程の一回以上シミュレーション操作を行なって、シミュレートした締付け力レベル(F_(S))を得る」点。 そして、以下の点で相違している。 <相違点> 本願発明は、「トルク供給動力工具によってねじ継手を必要な締付け力レベル(F_(N))に締付ける際にねじ継手の締付け結果の特性を保証する方法」であって、「選択した締付け計画に従って動力工具を制御し、特定のアルゴリズムと共にねじ継手の幾何学的形状、動力工具の動作特性及びシミュレーション操作で得られた締付けパラメーター値に関するプログラムされたデータを用いて、ねじ継手締付け操作を実施し、それにより実施した締付け力レベル(F_(P))を得ること、実施した締付け力レベル(F_(P))をシミュレートした締付け力レベル(F_(S))と比較すること、及び特性の許容又は拒絶を行うため比較の結果を評価する」点を備えているのに対して、引用刊行物発明は、そのような段階を備えたものではない点。 <相違点>について検討する。 引用刊行物には、その引用刊行物発明の前提となる従来技術において、「現在行われている方法は通常、目的とする締め付けプロセスに適すると考えられるパラメータ値を、制御システムにプログラムして、多数の締め付け動作が行われている。その結果、パラメータ値を調節し、別の一連の締め付け動作を行う。」(第3.摘記事項エ.参照)、「しかし、最も好ましい制御パラメータを得るための相互作用プロセスの型式は、本質的に時間の浪費だけでなく、しばしば再調整して、同じ場合でプログラミング処理の間、締め付けられて傷ついたネジ継手を交換することもある。一番最初の、多少なりともランダムに選ばれた値で、最適な締め付けパラメータを得るための確率は、非常に小さく、これのことは“試験的”締め付けを多く行わなければならないことを意味する。」(第3.摘記事項オ.参照)と記載されている。 これらの記載は、取りも直さず、試験的な締め付け動作の後、実際の締め付け状態を検知し、目標とする締め付け状態と比較し、さらに、実際の締め付けの結果を評価することが従来から行われていることを示しているものであり、また、実際の締め付けの結果を評価することを示唆しているものである。 さらにいうなれば、このような「結果の評価」は、社会一般においても、何らかの操作の「結果」が、その操作の後に続く事象に重大な影響を与えるものであるならば、その「結果」を評価するのは当然のことであり、当業者のみならず、一般常識として、自明な事項にすぎない。 してみれば、相違点に係る発明特定事項の違いは、引用刊行物発明の示唆に基づき、当業者が容易に想到し得たものである。 また、平成24年11月30日付けの当審からの拒絶理由通知の2.では、「本件出願に係る発明の技術的意義、この発明による有利な効果が明細書等の記載によっては不明である。上記1.の理由にも述べたとおり、締め付けた結果を検証するのは通常行われていることであるから、本願発明によっては、『シミュレートした締付け力レベル(F_(S))』が適切であったか否かが分かるというだけのことであり、これだけでは格別有利な効果とはいえない。また、この点に技術的意義は見いだせない。」と述べ、本願発明に格別な技術的意義、有利な効果をただしたにもかかわらず、同拒絶理由通知に対する意見書では、 「本願発明と引用文献の発明とは、シミュレーション処理が行われる点において類似しています。 本願発明では、このシミュレーション処理は、必要な締め付け力レベル(F_(N))に容認可能に近似するシミュレーション締付け力レベル(F_(S))を測定するために行われます。 この必要な締め付け力レベル(F_(N))は、例えば継ぎ手が十分に締め付けられることを保証するために必要とされる把持力に一致するものです。 しかしながら、本願発明にはさらに、実際にねじ継手を締め付ける工程及び実用処理された締め付け力レベル(F_(P))をシミュレーション締め付け力レベル(F_(S))と比較及評価する工程も含まれます。締付け力レベル(F_(P))が許容範囲内に収まるならば、その締め付けは品質上受け入れられます。操作中、前記品質についての受け入れ可否は、例えば、工具のディスプレイ上のグリーンライトによって受け入れが、あるいはレッドライトによって拒絶がオペレータに知らされます。 引用文献1の発明では、いずれの処理された締め付け操作に対するいかなる品質チェックについても何ら言及されておりません。 締め付けに対し品質チェックを行うことは自明であると指摘されております。品質チェックを行うことが既知であったことは事実だと思われます。 しかしながら、品質チェックは多くの方法により仮定的に行うことが可能です。例えば、特定の目標トルクに適合するように制御可能なトルクメータによって制御することが可能です。 しかしながら、創意性を満たす品質保証方法は先行技術に対して明らかに新規であり、かつ有益です。実際の実用における締め付け操作が高品質であ ることを検証するために、成功を収めているシミュレーションによるシミュレーション締め付け力レベル(F_(S))を用いることは新規な方法です。実用処理された締め付け力レベル(F_(P))をシミュレーション締め付け力レベル(F_(S))と比較することには、品質保証の信頼性が向上される利点があります。例えば、先行技術におけるような目標トルクに対して品質保証が為される場合、多数のパラメータによって結果に影響が及ぶ可能性があります。」と述べ、シミュレーション締め付け力レベル(F_(S))を用いることは新規な方法であるとしているが、この点は、引用刊行物発明が「ネジ継手締め付けプロセスを、数学的にシュミレーションすること」によって、シミュレーション締め付け力レベルが得られるのは自明な事項であるから、なんら新規ではない。 また、同意見書では、 「この創意性を満たす方法においては、処理された締め付け力レベル(F_(P))がシミュレーション締め付け力レベル(F_(S))に対して評価されることにより、何かについてそれが正しくないか否かが明らかにされます。すなわち、シミュレーションを行って特定の締め付けに役に立つ方策を見出すことにより、その特定の締め付けに対して品質チェックが為されたこと保証されるのです。従来技術においては、用いる特定の締め付け方策によって明示される品質保証方法はありませんでした。 従いまして、本願発明に係る品質保証方法はどの先行技術よりも信頼性の高いものです。さらに、本願発明に係る品質保証方法は先行技術から自明とされる方法ではありません。」 とも述べているが、これは、引用刊行物発明に「品質チェック(結果の評価)」が示されていないというにとどまり、引用刊行物発明に周知事項を適用することの容易性についてはなんら反論していないし、本願発明に格別な技術的意義、有利な効果についてもなんら述べていない。 したがって、同意見書の主張を採用することはできない。 第5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は、その余の請求項に係る発明についてみるまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2013-12-20 |
結審通知日 | 2014-01-08 |
審決日 | 2014-01-23 |
出願番号 | 特願2006-518590(P2006-518590) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 八木 誠 |
特許庁審判長 |
千葉 成就 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 菅澤 洋二 |
発明の名称 | ねじ継手の締付け特性の保証方法 |
代理人 | 浜野 孝雄 |