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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q |
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管理番号 | 1288468 |
審判番号 | 不服2012-5948 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-04-03 |
確定日 | 2014-06-12 |
事件の表示 | 特願2005-366467「資源使用に対する課金増減額の算出システム、算出方法、及び算出用コンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-172133〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成17年12月20日の特許出願であって,平成23年1月13日付けの拒絶理由通知に対して,平成23年3月23日に意見書の提出とともに手続補正がなされ,平成23年12月22日付けの拒絶査定に対して平成24年4月3日に審判請求がなされるとともに手続補正がなされ,平成24年10月10日付けの当審の審尋に対して,平成24年12月14日に回答書が提出され。平成25年5月8日付けで当審より拒絶理由を通知したところ,平成25年7月1日に意見書の提出とともに手続補正がなされたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成25年7月1日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。 「コンピュータによって実現される資源使用に対する課金の増減額を算出するシステムに関し, 一定期間内における,秒,分,又は時のいずれかで定義される単位時間毎に測定された複数の使用量を表すデータを外部から取り込む使用量取込部と, 前記複数の使用量を表すデータの平均値を求めて,前記一定期間内における資源の使用量に関する基準値を表すデータとする第1の算出部と, 前記複数の使用量を表すデータの夫々と前記基準値を表すデータとの差分値を算出する第2の算出部と, 前記単位時間毎の使用量のそれぞれに対する増減額を,前記一定期間における総額が一定となるように算出できる,線形性を有する関数を格納する記憶部と, 前記差分値を前記記憶部が格納する関数に与えて前記複数の使用量を表すデータの夫々に対応する単位時間毎の課金増減額を算出する第3の算出部と を備えることを特徴とする資源使用に対する課金増減額算出システム。」 第3 当審における拒絶の理由について 当審における平成25年5月8日付けで通知した拒絶理由の【理由1】の概要は,以下のとおりである。 『この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 <<引用文献等一覧>> 引用例1:特開2005-149319号公報 ・請求項1 ・引用例1 ・備考 (以下略)』 第4 当審の判断 (1)引用例1について。 当審の拒絶理由通知で引用した引用例1(特開2005-149319号公報)には,以下の記載がある。 (以下「引用例1摘記事項」という。) (ア)「【0001】 本発明は,ネットワークに接続された共有機器の使用に対する課金処理を行う課金システム,課金装置,課金方法,記録媒体及びプログラムに関する。」 (イ)「【0003】 このようにして共有された機器(共有機器)の使用に対する課金方法としては,例えば,共有機器,又は共有機器を管理するサーバー等に,共有機器を使用するユーザーの使用履歴を記録する記録手段を設けて,当該記録手段に記録された使用履歴と,予め定められた機器の使用単価とを乗じて課金を行う課金システムが提供されている。」 (ウ)「【0012】 本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,ネットワークを介して共有される共有機器の稼働効率を向上させ,充分な対費用効果が得られるようにすることを目的とする。また,本発明は,共有機器の稼働状況を最適化し,管理コストの増加を抑制でき るようにすることを目的とする。」 (エ)「【0024】 (第1の実施形態) 以下,本発明の第1の実施形態について説明する。 第1の実施形態は,図4に示すようなプリント機能を備えたプリンタを共有機器200として用いたものである。 【0025】 図4は,第1の実施形態にて共有機器200として用いられるプリンタ200の構成例を示すブロック図である。この図4において,図3に示したブロック等と同一の機能を有するブロック等には同一の符号を付し,重複する説明は省略する。 プリンタ200は,ネットワークインターフェース部32と,情報処理部33と,プリント機能の実体的な処理を行うプリント処理部41とを備える。プリンタ200は,ネットワークインターフェース部32,情報処理部33,及びプリント処理部41の連携動作により,ユーザーとの通信や,送信されてきたデータを印刷する一連の処理を行う。 【0026】 プリンタ200は,さらに監視部42と,課金ポイント発行部43と,記録部44とを備える。 監視部42は,プリンタ200の稼働状況を特徴付ける状態変数xを監視,計測して保持する。課金ポイント発行部43は,監視部42により得られる稼働状況を示す状態変数xに連動して変動可能な課金ポイントを生成する。記録部44は,課金ポイント発行部43で生成された課金ポイントの変動履歴を記録するとともに,実際にプリンタ200を使用したユーザーの識別情報と,そのときの課金ポイントとからなる課金情報を使用履歴として記録する。 【0027】 ここで,課金ポイントは,共有機器200の使用に伴って発行される仮想的な価値単位であり,これと現実の金銭授受を伴う課金とをどのように関連づけるかは,特に限定されるものではない。 【0028】 第1の実施形態においては,一例として,一定期間中(時間,曜日,日時等)に発行された総課金ポイントにおける各ユーザーの課金ポイントの累計値が占める割合に応じて,プリンタ200の総稼働コストを分配し,それを課金額として請求するものとした。 したがって,プリンタ200が稼働状況に応じて課金ポイントを変動させて発行することで,大きな課金ポイントが発行される状況下で,プリンタ200を使用してプリント動作を行わせると,小さな課金ポイントが発行される状況下で同じ動作を行わせたときと比較して,コンピュータ100?104のユーザーに対して,より多く課金されることになり,最終的に請求される課金額が異なってくることになる。 【0029】 次に,コンピュータ100からの指示によりプリンタ200を使用し,課金処理が行われるまでの一連の流れについて図5に基づいて説明する。 (a)見積もり処理 コンピュータ100は,ユーザーによる入出力装置22の操作により見積もり要求を受けると(S1),予め登録,設定されたプリンタ200に,予定している印刷の条件(印刷ページ数,部数,解像度,及びステイプル処理等)を通知するととともに,その使用に対する現在の課金ポイントを問い合わせる(S2)。 【0030】 一方,プリンタ200では,随時,プリンタ200の稼働状況を特徴付ける状態変数xが監視部42により計測され,計測された状態変数xに基づいた課金ポイントが課金ポイント発行部43により発行されている。プリンタ200は,コンピュータ100からの現在の課金ポイントの問い合わせに対して,その時の課金ポイントをコンピュータ100に通知する(S3)。 【0031】 ここで,上記状態変数xは,プリンタ200の稼働状況を特徴付けるものであれば,どのような指標を用いても良い。本実施形態のプリンタ200においては,例えば,プリント処理部41で使用されている印刷イメージ処理プロセッサの稼働率や,その積分値,展開された印刷イメージデータの全部ないしは一部を一時保管するためのバッファー・メモリの使用率,プリンタ全体ないしはその一部(例えば,プリント処理部41)の消費電力や,その積分値等が好適に採用される。なお,これらを単独で用いるのみならず,複数組み合わせて用いることも可能である。 【0032】 また,上記課金ポイント発行部43での課金ポイントの発行については,共有機器200の使用を抑制する場合には大きな課金ポイントを発行し,共有機器200の使用を促す場合には小さな課金ポイントを発行することが望ましい。 本実施形態のプリンタ200においては,プリント処理部41で使用されている印刷イメージ処理プロセッサの稼働率を状態変数xとして用い,これを測定することでプリンタ200の稼働負荷を監視している。そして,稼働負荷と課金ポイントとが,図6に示すような(実質的に)正の相関を有するように課金ポイントを変動させる。 【0033】 図6に示すように,課金ポイント発行部43は,プリンタ200の稼働負荷が所定の基準値以上の場合(すなわち,状態変数xに関して,x≧pとなる場合)には,コンピュータ100?104からの新たな印刷要求を抑制するために,より大きな課金ポイントを発行する。逆に,課金ポイント発行部43は,プリンタ200の稼働負荷が所定の基準値未満の場合(すなわち,状態変数xに関して,x<pとなる場合)には,コンピュータ100?104からの印刷要求を促すために,低い課金ポイントを発行する。なお,図6に示した例は一例であり,稼働負荷と課金ポイントとが正の相関を有してさえいれば,基準値の数,及び課金ポイントの変動割合等は任意である。」 (オ)「【0037】 本実施形態では,プリンタ200を使用しようとするユーザーに対して,その使用に対する課金レベルを認知させるために,例えば図7(a),(b)に示すようなダイアログ71により課金レベルを表示部21にて表示する。 【0038】 図7(a)に示すダイアログ71では,その中央部72において所定部分が強調表示され,プリンタ200から通知された課金ポイントに基づく現在の印刷に係る課金レベルが,「非常に高価です」であることが示されている。 一方,図7(b)に示すダイアログ71では,その中央部の上半分部75においてプリンタ200から通知された課金ポイントがそのまま表示されるとともに,下半分部76において通知された課金ポイントが,課金レベルのどの段階であるか(図中では,「mid」レベル)が示されている。 【0039】 また,図7(a),(b)に示すダイアログ71では,次ステップでの操作を行うための,「今,印刷する」と「キャンセル」との2つのボタン73,74が下部に表示されている。」 (カ)「【0049】 具体的には,プリンタ200を使用しようとするユーザーに対して,課金ポイント発行部43が発行する課金ポイントに基づいて見積もった,現在のプリンタ200の使用により生じる課金の課金レベルを示し,機器を使用するか否かの意志決定を促す。」 (キ)図6には,稼働負荷と課金ポイントとの相関を示すものであって,稼働負荷がpより大きい場合には課金ポイントが線形に上昇し,稼働負荷がpからqまでは課金ポイントが一定であり,稼働負荷がqより小さい場合には課金ポイントが一段低下することが開示されている。 (ク)図7(a)には,課金レベル示すためのダイアログの一例であって,『現在の印刷の相場』は,『非常に高価です』『高価です』『平均的です』『安価です』の表示と『今,印刷する』『キャンセル』のボタン表示が開示されている。」 (2)引用発明について。 上記引用例1摘記事項によれば,引用例1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ネットワークに接続された共有機器であるプリンタを使用するユーザーの使用履歴を記録し,記録された使用履歴と予め定められ使用単価とを乗じて課金を行う課金システムであって, プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xに連動して変動可能な課金ポイントを生成し, 発行された総課金ポイントにおける各ユーザーの課金ポイントが占める割合に応じて課金額として請求するものであって, プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xを計測し,状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求を抑制するために,より大きな課金ポイントを発行し,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求を促すために,低い課金ポイントを発行し,稼働負荷と課金ポイントとが正の相関を有するように課金ポイントを変動させる, 課金システム。」 2.対比 (1)引用発明と,本願発明とを対比する。 なお,以下,「夫々」は,公用文表記に従い,「それぞれ」と表記する。 ア 引用発明は,「プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xを計測し,状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求を抑制するために,より大きな課金ポイントを発行し,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求を促すために,低い課金ポイントを発行」するものであり,ユーザーは,「発行された総課金ポイントにおける各ユーザーの課金ポイントが占める割合に応じて課金額として請求」されるから,状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求が抑制され,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求が促され,結果,共有される機器であるプリンタの稼働効率が向上し,管理コストの増加が抑制できるという作用効果が得られることとなる(引用例1摘記事項(ウ)参照)。 他方,本願発明は,資源管理者の収入を一定に保つとともに,「短期間毎の資源の使用頻度に応じて料金の割引や割増を算出することにより,料金が割高な時間帯の資源利用を利用者に控えさせ,資源利用の集中を簡単に緩和できるようにした課金増減額算出の手法を提供すること」(【0009】)及び「使用頻度による割引や割増のための詳細なデータを保持することなく,少ない記憶領域を使って課金増減額の算出を行なえる手法を提供すること」(【0010】)を課題とした発明であり,特許請求の範囲の請求項1に記載された構成とした発明である。これにより,「資源使用の集中を緩和」できるとともに,「割増や割引料金の算出には基準値と関数を保持」すればよいことから,「記憶領域を節約」することができるという作用効果が得られることとなる(【0031】,【0032】)。 引用発明と本願発明とは,少なくとも,資源利用の集中を緩和すること,換言すれば,資源の稼動効率の向上を解決課題としている点で共通する。 イ そうすると,プロセッサの稼働率の状態変数xによって特徴付けられる「プリンタの稼働状況」は本願発明の「コンピュータによって実現される資源使用」に相当し,引用発明の「所定の基準値p」と本願発明の「複数の使用量を表すデータの平均値」である「基準値を表すデータ」とは,後記する点で相違するものの,「基準値」である点で共通する。 また,引用発明は,「プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xを計測」し,「状態変数xに連動して変動可能な課金ポイントを生成」するものであり,「状態変数x」は,本願発明における,「秒,分,又は時のいずれかで定義される単位時間毎に測定された使用量を表すデータ」に対応するデータであり,両者は,後記する点で相違するものの,「外部から取り込まれた資源の使用量に連動した値」である点で共通する。 引用発明において,状態変数xに基づいて発行される「課金ポイント」は,「所定の基準値p」より大きければ大きいほど大きく課金され,逆に,小さければ小さいほど小さく課金されることから,本願発明における,「差分値」を「単位時間毎の使用量のそれぞれに対する増減額を,一定期間における総額が一定となるように算出できる,線形性を有する関数」に与えることにより算出される「課金増減額」に対応するものであり,引用発明と本願発明とは,後記する点で相違するものの,「基準値と,資源の使用量に連動した値との差分値に応じて,資源使用に対する課金を正の相関で増減」している点で共通する。 ウ 以上のことから,引用発明と本願発明は,「コンピュータによって実現される資源使用に対する課金を増減する,システム」である点で共通する。 (2)以上のことから,引用発明と本願発明は,以下の点で一致し,また相違する。 [一致点] 「コンピュータによって実現される資源使用に対する課金を増減するシステムに関し, 外部から取り込まれた資源の使用量に連動した値と基準値との差分値に応じて,資源の使用に対する課金を正の相関で増減する,システム。」 [相違点1] 「資源の使用に対する課金を正の相関で増減する」に当たり,本願発明は,資源の使用量に連動した値と基準値との「差分値」を,「複数の使用量のそれぞれに対する増減額を,総額が一定となるように算出できる,線形性を有する関数」に与えることにより算出しているのに対して,引用発明は,「プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xを計測し,状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求を抑制するために,より大きな課金ポイントを発行し,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求を促すために,低い課金ポイントを発行」するものである点。 [相違点2] 「基準値」が,本願発明は,「複数の使用量を表すデータの平均値」であるのに対して, 引用発明は,「状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求を抑制するために,より大きな課金ポイントを発行し,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求を促すために,低い課金ポイントを発行」するための「所定の基準値p」である点。 [相違点3] 本願発明は,「複数の使用量を表すデータのそれぞれの差分値を算出し増減額を算出して総額を一定」とするのに対して,引用発明は,そのような構成になっていない点。 [相違点4] 「資源の使用量に連動した値」が,本願発明は,「一定期間内における,秒,分,又は時のいずれかで定義される単位時間毎に測定された複数の使用量を表すデータ」であるのに対して,引用発明は,そのような構成になっていない点。 [相違点5] 「システム」が,本願発明は,データを外部から取り込む「使用量取込部」と,基準値を求める「第1の算出部」と,差分値を算出する「第2の算出部」と,関数を格納する「記憶部」と,課金増減額を算出する「第3の算出部」とから構成された,「資源使用に対する課金増減額算出システム」であるのに対して,引用発明は,「課金システム」であり,本願発明に記載されているような構成要素は特定されていない点。 3.判断 (1)相違点1ないし相違点3について 相違点1ないし相違点3は,関連することからまとめて検討する。 ア 引用発明は,上記2.(1)アのとおり,「プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xを計測し,状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求を抑制するために,より大きな課金ポイントを発行し,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求を促すために,低い課金ポイントを発行」するものであり,ユーザーは,「発行された総課金ポイントにおける各ユーザーの課金ポイントが占める割合に応じて課金額として請求」されるから,状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求が抑制され,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求が促されることとなる。すなわち,「資源の使用に対する課金を正の相関で増減する」ことにより,共有機器であるプリンタの稼働効率が向上し,管理コストの増加が抑制できるものである。 イ 一般に,課徴と報償を組み合わせた課金設定により共有機器の稼働効率を最適化し,管理コストの増加を抑制することは,例えば,電力料金の設定において,力率が所定値85%を下回る場合は基本料金を割増(課徴)し,所定値を上回る場合は基本料金を割引(報償)することが知られているように,周知の技術手段であり,課徴と報償を演算式,例えば「線形性を有する関数」により規定することは,当業者が適宜なし得る設計事項である。 また,引用発明は,上記のとおり,課徴と報償を組み合わせて課金を設定したものであるところ,課徴と報償との分岐点である「所定の基準値p」は,課金にあたってのユーザーと管理者との間における取決めであり,「所定の基準値p」を,計測された状態変数xの「平均値」とすることは,当事者が適宜なし得る設計的事項である。そして,「平均値」を「所定の基準値p」として採用すれば,状態変数xと「所定の基準値p」との差分値の累計は一定値「0」となり,「複数の使用量のぞれぞれの増減額の総額は一定」となる。 ウ 以上のことから,引用発明において,「プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xを計測し,状態変数xが所定の基準値p以上(x≧p)の場合は,新たな印刷要求を抑制するために,より大きな課金ポイントを発行し,逆に,状態変数xが所定の基準値p未満(x<p)の場合は,印刷要求を促すために,低い課金ポイントを発行」する,すなわち,課徴と報償を組み合わせて課金を設定するに当たり,課徴と報償を「線形性を有する関数」により規定すること,及び「所定の基準値p」を計測された状態変数xの「平均値」とし,「複数の使用量を表すデータのそれぞれの差分値を算出し増減額を算出して総額を一定」とすることは,当事者が容易に想到し得たことである。 そして,この結果,「資源使用の集中を緩和」できるとともに,課徴と報償を演算式で規定することとなり,課金ポイントを発行するに当たり,前記基準値と演算式を保持すれば良いこととなるのであるから,「記憶領域を節約」することができるという作用効果が得られることは,必然である。 (2)相違点4について 引用発明は,上記のとおり,「プリンタの稼働状況を特徴付ける状態変数xを計測」し,課金ポイントを発行するものであるところ,資源使用に対する課金において,単位期間ごとに清算する構成とすることは常套手段であり,測定間隔は,当業者が適宜設定できる設計事項であることに鑑みれば,引用発明において,状態変数xを状態変数等の計測対象を,「一定期間内における,秒,分,又は時のいずれかで定義される単位時間毎に測定された複数の使用量を表すデータ」とすることは当業者が容易に想到することができたものである。 (3)相違点5について 所定の処理を行うシステムを,入力手段,記憶手段,処理手段等を組み合わせて構成することは,当業者であれば当然に考えることである。 引用発明の「課金システム」を,「使用量取込部」,「算出部」,「記憶部」等から構成することは,当業者であれば直ちになし得ることである。 相違点5は,格別のことではない。 (4)そして,本願発明の作用効果も,引用発明,設計的事項及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明は,引用発明及び周知の技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-04-08 |
結審通知日 | 2014-04-15 |
審決日 | 2014-04-28 |
出願番号 | 特願2005-366467(P2005-366467) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 辻本 泰隆 |
特許庁審判長 |
清田 健一 |
特許庁審判官 |
手島 聖治 西山 昇 |
発明の名称 | 資源使用に対する課金増減額の算出システム、算出方法、及び算出用コンピュータプログラム |
代理人 | 下坂 直樹 |
代理人 | 机 昌彦 |