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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1288490 |
審判番号 | 不服2013-7608 |
総通号数 | 175 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2014-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-04-25 |
確定日 | 2014-06-12 |
事件の表示 | 特願2006-114978「電界発光表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月 9日出願公開、特開2006-309223〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成18年4月18日(パリ条約による優先権主張2005年4月26日、2005年7月5日、韓国)の出願であって、平成23年9月7日及び平成24年6月21日に手続補正がなされたが、平成25年1月9日付けで上記平成24年6月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされた。 これに対し、同年4月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 その後、同年6月12日付けで、審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年7月19日付けで回答書が提出された。 第2 平成25年4月25日付けの手続補正の補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成25年4月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正発明 平成25年4月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として以下のように補正する補正事項を含む。 「基板上に複数のピクセルが形成されたピクセル回路部と、 前記ピクセル回路部の一側部に形成されて、各ピクセルにデータ信号を供給するデータ駆動部と、 前記ピクセル回路部の外側部に形成されて、各ピクセルにスキャン信号を供給するスキャン駆動部と、 前記基板外部に位置した外部回路と接続されており、少なくとも1つ以上は、前記データ駆動部と前記ピクセル回路部との間と、前記データ駆動部の外郭縁の一部に形成された複数の配線と を含み、 前記電界発光表示装置の前記ピクセル回路部には、有機発光層が形成され、 前記複数の配線は、グラウンドライン(GND)及び電源供給ライン(VDD)である電界発光表示装置。」 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 2.引用刊行物 引用文献1:特開平11-223832号公報 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0035】(液晶装置の構成)液晶装置の実施の形態の構成について図1から図6に基づいて説明する。図1は、液晶装置の実施の形態におけるTFTアレイ基板上に設けられた各種配線、周辺回路等の構成を示す平面図であり、図2は、図1のより詳細な2次元的レイアウトを示す平面図であり・・・」 (2)「【0036】図1において、液晶装置200は、例えば石英基板、ハードガラス等からなるTFTアレイ基板1を備えている。TFTアレイ基板1上には、マトリクス状に設けられた複数の画素電極11と、X方向に複数配列されており夫々がY方向に沿って伸びるデータ線35と、Y方向に複数配列されており夫々がX方向に沿って伸びる走査線31と、各データ線35と画素電極11との間に夫々介在すると共に該間における導通状態及び非導通状態を、走査線31を介して夫々供給される走査信号に応じて夫々制御するスイッチング素子の一例としての複数のTFT30とが形成されている。またTFTアレイ基板1上には、後述の蓄積容量(図6参照)のための配線である容量線31’(蓄積容量電極)が、走査線31と平行に形成されている。 【0037】TFTアレイ基板1上には更に、データ信号供給手段の一例を構成するサンプリング回路301及びデータ線駆動回路101と、走査線駆動回路104とが形成されている。また、複数の画素電極11により規定される画像表示領域(即ち、実際に液晶の配向状態変化により画像が表示される液晶装置の領域)の上辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられており、画像表示領域の四隅には、TFTアレイ基板1と対向基板との間で電気的導通をとるための上下導通端子106が設けられている。以下図1から図3の説明において、TFTアレイ基板1の下辺に沿って複数設けられた外部入力端子102を介して入力される信号名称と、その信号配線とは、説明の容易化のために同一のアルファベット記号を信号及び配線の後に夫々付加して参照する(例えば、信号名称である“クロック信号CLX”に対し、その信号配線を“配線CLX”と呼ぶ)ことにする。 【0038】走査線駆動回路104は、外部制御回路から外部入力端子102並びに配線VSSY及びVDDYを介して供給される、走査線駆動回路用の負電源VSSY及び正電源VDDYを電源として用いて、走査線駆動回路用のスタート信号DYの入力により内蔵シフトレジスタ回路をスタートさせる。そして、外部入力端子102並びに配線CLY及びCLY’を介して供給される、走査線駆動回路用の基準クロック信号CLY及びその反転クロック信号CLY’に基づく所定タイミングで、走査線31に走査信号をパルス的に線順次で印加する。 【0039】データ線駆動回路101は、外部制御回路から外部入力端子102並びに信号配線VSSX及びVDDXを介して供給される、データ線駆動回路用の負電源VSSX及び正電源VDDXを電源として用いて、データ線駆動回路用のスタート信号DXの入力により内蔵シフトレジスタ回路をスタートさせる。そして、外部入力端子102並びに配線CLX及びCLX’を介して供給されるデータ線駆動回路用の基準クロック信号CLX及びその反転クロック信号CLX’に基づき、走査線駆動回路104が走査信号を印加するタイミングに合わせて、外部入力端子102及び配線VID1?VID6を介して供給される例えば6相にシリアル-パラレル変換された画像信号VID1?VID6夫々について、データ線35毎にサンプリング回路駆動信号をサンプリング回路301にサンプリング回路駆動信号線306を介して所定タイミングで供給する。」 (3)「【0042】本実施の形態では特に、図1及び図2に示すように、TFTアレイ基板1には、負電源VSSX用の配線VSSXを兼ねた定電位の導電線(以下、シールド線と称す)80及び正電源VDDX用の配線VDDXを兼ねた定電位のシールド線82が配線されている。これらのシールド線80及び82により、配線VID1?VID6は、配線CLX及びCLX’から電気的にシールドされている。従って、クロック信号CLXの周波数が高い場合でも、配線CLX及びCLX’から配線VID1?VID6への高周波のクロックノイズの飛び込みを低減できる。」 (4)「【図2】 」 (5)図2からは、データ線駆動回路101が画像表示領域の一側部に形成されているのが見てとれる。 (6)同様に、図2からは、走査線駆動回路104が、複数の画素電極11により規定される画像表示領域の外側部に配置されているのが見てとれる。 (7)同様に、図2からは、負電源VSSX用の配線VSSXが、複数の画素電極11により規定される画像表示領域とデータ線駆動回路101との間を、データ線駆動回路101の外郭縁に沿って配置されているのが見てとれる。 これらの記載事項を含む引用文献1全体の記載及び当業者の技術常識を総合すれば、引用文献1には、以下の発明が記載されている。 「TFTアレイ基板(1)上に、データ信号供給手段を構成するサンプリング回路(301)及びデータ線駆動回路(101)と、走査線駆動回路(104)とが形成されており、複数の画素電極(11)により規定される画像表示領域の上辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路間をつなぐための複数の配線(105)が設けられており、 データ線駆動回路が画像表示領域の一側部に形成されており、 走査線駆動回路は、上記画像表示領域の外側部に配置されており、 データ線駆動回路は、外部制御回路から外部入力端子(102)並びに信号配線(VSSX及びVDDX)を介して供給される、データ線駆動回路用の負電源及び正電源を電源として用い、 負電源用の配線が、上記画像表示領域とデータ線駆動回路との間を、データ線駆動回路の外郭縁に沿って配置されている、 液晶装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 補正発明と引用発明を対比する。 (1)引用発明の「TFTアレイ基板」は補正発明の「基板」に相当する。 また、引用発明の「液晶装置」と補正発明の「電界発光表示装置」は、ともに「表示装置」である点で共通する。 (2)引用発明の「複数の画素電極」は補正発明の「複数のピクセル」に相当する。 したがって、引用発明の「画像表示領域」は補正発明の「ピクセル回路部」に相当する。 (3)引用発明の「データ線駆動回路」は補正発明の「データ駆動部」に相当する。 したがって、引用発明の「データ線駆動回路が画像表示領域の一側部に形成されて」いる構成は、補正発明の「ピクセル回路部の一側部に形成されて」いる構成に相当する。 (4)引用発明の「画像表示領域の外側部に配置されて」いる「走査線駆動回路」は、補正発明の「ピクセル回路部の外側部に形成されて、各ピクセルにスキャン信号を供給するスキャン駆動部」に相当する。 (5)引用発明の「負電源用の配線」は補正発明の「電源供給ライン」に相当する。 したがって、引用発明の「負電源用の配線が、上記画像表示領域とデータ線駆動回路との間を、データ線駆動回路の外郭縁に沿って配置されている」構成は、補正発明の「前記データ駆動部と前記ピクセル回路部との間と、前記データ駆動部の外郭縁の一部に形成された電源供給ライン」に相当する。 引用発明の「データ線駆動回路」は外部制御回路から電源供給されるから、基板外部に位置した外部回路と接続されている。 また、引用発明は負電源用の配線に加えて正電源用の配線を有するから複数の配線を有する。 してみると両者は、 「基板上に複数のピクセルが形成されたピクセル回路部と、 前記ピクセル回路部の一側部に形成されて、各ピクセルにデータ信号を供給するデータ駆動部と、 前記ピクセル回路部の外側部に形成されて、各ピクセルにスキャン信号を供給するスキャン駆動部と、 前記基板外部に位置した外部回路と接続されており、少なくとも1つ以上は、前記データ駆動部と前記ピクセル回路部との間と、前記データ駆動部の外郭縁の一部に形成された複数の配線と を含み、 前記複数の配線の一つは電源供給ラインである表示装置。」 の点で一致し、次の各点で相違している。 (相違点1) 表示装置が、補正発明では「ピクセル回路部に有機発光層が形成された電界発光表示装置」であるのに対して、引用発明では「液晶装置」である点。 (相違点2) 補正発明が、複数の配線として「グラウンドライン」を有するのに対して、引用発明がグラウンドラインを有しているかどうか不明な点。 4.判断 上記各相違点について検討する。 (相違点1について) 本願の優先日当時、ピクセル回路部に有機発光層が形成された電界発光表示装置は、液晶装置とともに、ピクセル回路部を有する表示装置としてよく知られた周知のものである。 そして、引用発明の各配置を当該周知の電界発光表示装置で実現することに、格別の阻害要因も技術的困難性もない。 してみると、引用発明に上記相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になしうる事項である。 (相違点2について) 補正発明や引用発明のように基板上に複数の素子や電極、回路配線を有する装置においては、回路配置の自由度や配線の容易性向上等のために、グラウンドラインを設けることはごく普通に行われている周知技術である。 してみると、引用発明に上記相違点2に係る構成を採用することは、その必要に応じて当業者が適宜選択し得る事項である。 (効果について) そして、補正発明全体の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.小括 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 平成25年4月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成23年9月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「基板上に複数のピクセルが形成されたピクセル回路部と、 前記ピクセル回路部の一側部に形成されて、各ピクセルにデータ信号を供給するデータ駆動部と、 前記ピクセル回路部の外側部に形成されて、各ピクセルにスキャン信号を供給するスキャン駆動部と、 前記基板外部に位置した外部回路と接続されており、少なくとも1つ以上は、前記データ駆動部と前記ピクセル回路部との間と、前記データ駆動部の外郭縁の一部に形成された複数の配線と を含む電界発光表示装置。」(以下「本願発明」という。) 1.引用刊行物 原査定に引用され、本願出願前に頒布された刊行物及びその記載内容は、前記「第2」の「2.」に記載したとおりである。 2.対比 本願発明は、前記「第2」で検討した補正発明から、「前記電界発光表示装置の前記ピクセル回路部には、有機発光層が形成され、前記複数の配線は、グラウンドライン(GND)及び電源供給ライン(VDD)である」という事項を削除することにより拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する補正発明が、前記「第2」の「4.」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2014-01-08 |
結審通知日 | 2014-01-14 |
審決日 | 2014-01-29 |
出願番号 | 特願2006-114978(P2006-114978) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松岡 智也 |
特許庁審判長 |
神 悦彦 |
特許庁審判官 |
伊藤 昌哉 土屋 知久 |
発明の名称 | 電界発光表示装置 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 吉田 潤一郎 |