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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1288493
審判番号 不服2013-9507  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-05-23 
確定日 2014-06-12 
事件の表示 特願2007-336789「包装容器のシート蓋」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月16日出願公開、特開2009-154935〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、平成19年12月27日の出願であって、平成24年5月8日付けで拒絶理由が通知され、同年7月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月25日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日付けで意見書が提出され、平成25年3月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年5月23日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において同年10月3日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して同年12月2日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成24年7月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。

「【請求項1】
カップ状容器の開口周囲のフランジ部(6)に除去可能に接着されて、当該開口を封止するシート蓋であって、
当該シート蓋は、カット線(21)が形成された基材層(20)の裏面に、上記フランジ部(6)に接着される熱接着層(40)を有してなり、
基材層(20)と熱接着層(40)との間において、上記フランジ部(6)の少なくとも一部分と対向する領域に導電性発熱層(30)を配置したことを特徴とする、シート蓋。」

3.刊行物の記載事項
当審拒絶理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-119064号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。(審決注:下線は当審による。)

1a「【請求項1】
開口部にフランジ部を有する有底状容器本体と、該有底状容器本体の前記開口部を前記フランジ部で熱接着して密封した摘み部を有する蓋体とからなる電子レンジ加熱用密封容器において、前記フランジ部を覆う導電性発熱層が前記蓋体に形成されていることを特徴とする電子レンジ加熱用密封容器。」
1b「【0001】
本発明は、密封容器内に食品等の内容物を収納した状態で電子レンジを用いて内容物を加熱調理する際に発生する蒸気を放出するための開封口が自動的に形成されて、蒸気を放出して内容物の吹き出しや密封容器が変形したり破裂することがない電子レンジ加熱用密封容器に関するものである。」

1c「【0010】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳述する。
図1は本発明にかかる電子レンジ加熱用密封容器の一実施例を示す(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図、図2は図1に示す本発明にかかる電子レンジ加熱用密封容器の蓋体に設けた導電性発熱層と有底状容器本体のフランジ部との関係を説明する図、図3は本発明にかかる電子レンジ加熱用密封容器の他の実施例を示す図2に対応する図であり、図中の1,1’は電子レンジ加熱用密封容器、10,10’は有底状容器本体、11,11’はフランジ部、20,20’は蓋体、21は摘み部、Aは熱接着部、A’は帯状熱接着部、Bは導電性発熱層、L,Xは導電性発熱層の幅、Pは仮想交点、Qは仮想接線をそれぞれ示す。
【0011】
図1は本発明にかかる電子レンジ加熱用密封容器の一実施例を示す(a)は正面図、(b)は(a)の縦断面図であって、電子レンジ加熱用密封容器1は食品等の内容物を収納するための円形状開口部にフランジ部11を有する有底状容器本体10および該有底状容器本体10の前記円形状開口部を覆うための摘み部21を備えた蓋体20から構成され、有底状容器本体10の前記フランジ部11で前記蓋体20が熱接着されて密封されたものである。
【0012】
図2は図1に示す本発明にかかる電子レンジ加熱用密封容器の蓋体に設けた導電性発熱層と有底状容器本体のフランジ部との関係を説明する図であって、電子レンジ加熱用密封容器1は円形状開口部にフランジ部11を有する有底状容器本体10の前記フランジ部11で蓋体20を熱接着して密封したものであり、前記蓋体20は前記有底状容器本体10の前記フランジ部11の全面が熱接着された熱接着部Aとなっている。導電性発熱層Bは摘み部21と対向する側に設けられ、前記摘み部21と円形状開口部の中心点を結ぶ線の延長線が前記摘み部21と対向する側の前記フランジ部11の外周と交差する仮想交点Pが接点となる仮想接線Q(図上、一点鎖線で表示した)を想定した際に、前記仮想接線Q方向に前記仮想交点Pが中心となる長さ(幅)Lで前記フランジ部11を覆うように矩形状に設けられているものである。なお、前記長さ(幅)Lは前記フランジ部の外周寸法の4.5%以上であって前記フランジ部の外周の直径以下の長さが好ましいものである。
・・・(中略)・・・
【0015】
・・・(中略)・・・
また、前記蓋体20,20’としては、基材層と熱接着性樹脂層とを少なくとも備えた積層体からなるものであって、基材層としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、特にこれらの2軸方向に延伸したフィルムが好適である。また、前記熱接着性樹脂層としては、前記有底状容器本体10,10’の内面を構成する樹脂と熱圧により接着する樹脂であれば特に制限はなく、前記有底状容器本体10,10’の内面を構成する樹脂により適宜選択して用いればよいものである。
・・・(中略)・・・
【0016】
また、前記導電性発熱層Bは蓋体20、あるいは、20’を構成する上記した基材層と熱接着性樹脂層との間に設けられるが、前記基材層表面に設けられていてもよいものである。また、前記導電性発熱層Bを矩形状としたが、形状はこれに限るものではなく、図2に示す前記長さ(幅)Lの上記した条件、あるいは、図3に示す前記長さ(幅)Xの上記した条件を満足すれば、台形状、三角形状等の多角形状、扇形状、楕円形状等の適宜の形状であってもよいものである。
【0017】
前記導電性発熱層Bはマイクロ波を受けて発熱し、前記導電性発熱層Bを設けた領域の前記熱接着部A,A’が加熱溶融され、内容物の加熱で上昇した内圧により加熱溶融した熱接着部A,A’が開封して内圧を逃がすものである。前記導電性発熱層Bはマイクロ波を吸収して発熱する物質であればよいのであって、特に限定するものではないが、インキ化するということを考慮すると、カーボンブラック、銀、アルミニウム、ITO(酸化インジウム錫)等々が適当であり、容易にグラビア印刷用インキとすることができる点からカーボンブラックが好適である。表面抵抗率としては10Ω/□以上10^(7)Ω/□以下が望ましい。この理由としては、10Ω/□未満ではマイクロ波が反射するために発熱量が低下し、10^(7)Ω/□超では抵抗が大きすぎて発熱量が低下するためである。なお、実施例においては、前記導電性発熱層Bを摘み部と対向する位置に設けたものを示したが、これは電子レンジで加熱し、前記導電性発熱層Bを設けた領域の前記熱接着部A,A’が加熱溶融し、内容物の加熱で上昇した内圧により加熱溶融した熱接着部A,A’が開封して内圧を逃がすために、この部位が熱せられる。よって摘み部21としてはこの部位から離れた位置に設けるのが好ましいものであり、前記導電性発熱層Bと対向する位置に限るものではない。また、前記導電性発熱層Bを設ける位置は1箇所に限るものではなく、複数箇所であってもよいものである。」

1d 上記1aないし1cを参照しつつ図1及び図2によれば、カップ状の有底状容器本体10の開口周囲のフランジ部11にシート状の蓋体20が熱接着部Aで熱接着され、有底状容器本体10の開口が蓋体20で封止されていること、及び導電性発熱層Bは上記フランジ部11の一部分と対向する領域に配置されていることが見てとれる。

上記1aないし1dから、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

「カップ状の有底状容器本体10の開口周囲のフランジ部11に熱接着されて、当該開口を封止するシート状の蓋体20であって、
当該シート状の蓋体20は、摘み部21を有し、基材層とフランジ部11に熱接着される熱接着性樹脂層とを備えた積層体からなり、前記基材層と前記熱接着性樹脂層との間に導電性発熱層Bが設けられ、導電性発熱層Bはフランジ部11の一部分と対向する領域に配置された、シート状の蓋体20。」

4.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明の「カップ状の有底状容器本体10」、「フランジ部11」、「熱接着され」、「基材層」、「フランジ部11に熱接着される熱接着性樹脂層」及び「導電性発熱層B」は、それぞれ本願発明における「カップ状容器」、「フランジ部(6)」、「接着され」、「基材層(20)」、「フランジ部(6)に接着される熱接着層(40)」及び「導電性発熱層(30)」に相当する。
刊行物1発明において、熱接着性樹脂層はフランジ部11に熱接着されるから、当該熱接着性樹脂層は基材層のフランジ部11側の面に設けられている。そして、前記「基材層のフランジ部11側の面」は、本願発明における「基材層(20)の裏面」に相当する。
刊行物1発明のシート状の蓋体20で開口が封止されたカップ状の有底状容器本体10は、食品等の内容物を収納した状態で電子レンジを用いた加熱調理に使用されるものであるから(上記3.1b参照)、加熱調理後に内容物が取り出されることが予定されているものであるといえる。そして、シート状の蓋体20は摘み部21を有しており、この摘み部21は内容物を取り出すに際して蓋体20を有底状容器本体10から剥離除去するための摘み部であると認められる。したがって、刊行物1発明において、シート状の蓋体20はフランジ部11に「除去可能に」接着されているといえる。
刊行物1発明における「前記基材層と前記熱接着性樹脂層との間に導電性発熱層Bが設けられ、導電性発熱層Bはフランジ部11の一部分と対向する領域に配置され」という事項は、本願発明における「基材層(20)と熱接着層(40)との間において、上記フランジ部(6)の少なくとも一部分と対向する領域に導電性発熱層(30)を配置した」という事項に相当する。
刊行物1発明の「シート状の蓋体20」と本願発明の「シート蓋」は、「シート蓋」という概念で共通する。
したがって、本願発明と刊行物1発明とは、次の[一致点]で一致し、次の[相違点]で相違する。

[一致点]
「カップ状容器の開口周囲のフランジ部に除去可能に接着されて、当該開口を封止するシート蓋であって、
当該シート蓋は、基材層の裏面に、上記フランジ部に接着される熱接着層を有してなり、
基材層と熱接着層との間において、上記フランジ部の少なくとも一部分と対向する領域に導電性発熱層を配置したことを特徴とする、シート蓋。」

[相違点]
基材層について、本願発明においては、「カット線が形成された」基材層という限定がされているのに対して、刊行物1発明においては、そのような限定はされていない点。

5.判断
上記相違点について検討する。
刊行物1発明のシート状の蓋体20で開口が封止されたカップ状の有底状容器本体10は、電子レンジを用いた加熱調理に使用されるものである(上記3.1b段落0001参照)。そして、刊行物1発明において、導電性発熱層Bが、フランジ部11の一部分と対向する領域に配置されるのは、前記導電性発熱層Bがマイクロ波を受けて発熱し、前記導電性発熱層Bを設けた領域の熱接着部が加熱溶融され、内容物の加熱で上昇した内圧により加熱溶融した熱接着部が開封して内圧を逃がすという内圧逃がし手段を構成するためである(上記3.1c段落0017参照)。
一方、電子レンジを用いた加熱調理に使用される容器を封止するシート蓋において、内圧逃がし手段として、シート蓋の基材層にカット線を設けることは、例えば、当審拒絶理由で引用した特開平11-147559号公報(段落0037?0045、図1?4)及び特開2000-289784号公報(段落0012?0022、図1)に記載されており、本願出願前に周知の事項である。
そして、一般に、密閉された容器について、内圧が上昇することによる弊害を確実に防止するために、内圧を逃がす手段を複数箇所に設けることは周知の事項である。例えば、刊行物1にも「前記導電性発熱層Bを設ける位置は1箇所に限るものではなく、複数箇所であってもよいものである。」(上記3.1c段落【0017】参照)と記載されている。さらに、内圧を逃がす手段として、互いに構造の異なる複数の手段を設けることも、本願出願前に周知の事項である。例えば、当審拒絶理由で引用した実願昭63-63247号(実開平1-168481号)のマイクロフィルムに、「また、従前のように電子レンジにかける前に予め容器の一部を開封しておいても差し支えない」(6頁10?12行)と記載されており、導電性発熱層と熱接着層とからなる内圧逃がし手段を具備することに加えて、他の内圧逃がし手段を併用することが示唆されている。また、実願平3-54429号(実開平5-68424号)のCD-ROMにも、電子レンジ用容器において「圧力調整部材12」と「防爆部材17」という2種類の内圧逃がし手段を設けることが記載されている(段落0005?0009、第1図及び第2図)。
刊行物1発明において、内容物の吹き出しや容器の破裂という内圧上昇よる弊害の防止を確実なものとすることは当業者が普通に想起し得る課題であり、当該課題を解決するために、導電性発熱層Bを設けることに加えて、周知の内圧逃がし手段であるカット線を基材に形成するという手段を併用することは、上記した周知の事項を考慮して当業者が容易に想到し得ることである。

そして、本願発明によって、当業者が予期し得ない格別顕著な効果が奏されるとは認められない。

以上のことから、本願発明は、刊行物1発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.請求人の主張について
請求人は、平成25年12月2日付け意見書において、次の主張をしている。
[請求人の主張]
「導電性発熱層およびカット線を組み合わせることで、調理時間全体に渡って安定した蒸通を達成するというアイデア」に本願発明の特徴があり、組み合わせることの動機付けが各引用文献には存在しない。
「予め容器の一部を開封しておく」ことは「他の蒸気逃がし手段」とはいえない。それは、単に消費者に開封作業を求めているに過ぎない。本願明細書「0004」でも説明しているように、「そのような開封の手間を無くす」ために本願発明の構成がある。引用文献1?4を組み合わせることについて積極的な動機付けは存在しない。

上記請求人の主張について検討する。

上記5.に記載したとおり、容器の内圧が上昇することによる弊害を確実に防止するために、内圧逃がし手段を複数箇所に設けることや、互いに構造の異なる複数の内圧逃がし手段をを設けることは、本願出願前に周知の事項である。そして、刊行物1発明の蓋材も、導電性発熱層の大きさ等の設定によっては、前記弊害の防止は完全ではないから(刊行物1段落0020?0033のNo.1、2及び8の例参照)、内圧上昇による弊害の防止をより確実なものとするために、導電性発熱層Bを設けることに加えて、周知の内圧逃がし手段であるカット線を基材に形成するという手段を併用することについて、当業者が容易に想到し得るというべきである。そして、開封の手間を無くすという点は、内圧逃がし手段を併用することから当業者が予期し得る効果にすぎない。よって、動機付けが存在しないとの請求人の主張は当たらない。
また、本願発明において、導電性発熱層による内圧逃がし手段と、カット線による内圧逃がし手段とについて、それぞれの蒸通のし易さは、基材層、熱接着層及び導電性発熱層の材料や、カット線の形成態様、容器フランジ部との接着力等の種々の条件により異なると考えられるところ、本願発明において当該条件について何ら限定されていないから、「調理時間全体に渡って安定した蒸通を達成する」という点が本願発明の特徴であるということはできない。
以上のことから、請求人の前記主張は採用できない。

7.まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2014-04-08 
結審通知日 2014-04-15 
審決日 2014-04-30 
出願番号 特願2007-336789(P2007-336789)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾形 元渡邊 真  
特許庁審判長 河原 英雄
特許庁審判官 熊倉 強
紀本 孝
発明の名称 包装容器のシート蓋  
代理人 大塚 雅晴  
代理人 西下 正石  
代理人 田中 光雄  
代理人 山崎 宏  

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