• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1288569
審判番号 不服2012-24749  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-12-13 
確定日 2014-06-10 
事件の表示 特願2006-167550「ハブを介してモータ軸とギアとを連結するクランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年1月25日出願公開、特開2007-16993〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年6月16日(パリ条約による優先権主張2005年7月6日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成24年8月6日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月14日)、これに対し、平成24年12月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 平成25年12月13日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成25年12月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成24年2月10日付け手続補正)の請求項1に、

「【請求項1】
ギア伝導軸、太陽歯車又は軸継手から成るギアの構成部品とモータ軸とをハブ(3)を介して連結するために、少なくとも1つの引張部材(7)を取り付けたクランプ(R_(1)、R_(2))であって、
クランプ(R_(1)、R_(2))がハブ(3)に対して径方向の捩れ及び軸方向のずれを防止するように、引張部材(7)が形成され、
引張部材(7)はクランプ(R_(1)、R_(2))を径方向に貫通し、内円筒面(6)から径方向に突出していることを特徴とするハブを介してモータ軸とギアとを連結するクランプ。」
とあったものを、

「【請求項1】
ギア伝導軸、太陽歯車又は軸継手から成るギアの構成部品と、円柱状のモータ軸とをハブ(3)の内円筒面(6)を介して連結するために、基部(1)に少なくとも1つの引張部材(7)を取り付けたクランプ(R_(1)、R_(2))であって、
ハブ(3)に対する基部(1)の径方向の捩れ及び軸方向のずれを防止するように、引張部材(7)が形成され、
引張部材(7)は、ハブ(3)の空洞(9)に沿ってクランプ(R_(1)、R_(2))を径方向に貫通し、ハブ(3)のフランジ部(2)に挟持された前記モータ軸を締め付けるように取り付けられていることを特徴とするハブを介してモータ軸とギアとを連結するクランプ。」
と補正(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)するものである。

ここで、請求項1に記載された「径方向の捩れ」は、平成25年11月14日付け回答書の「本願当初明細書には、クランプがハブ(3)に対する基部(1)の周方向の捩れを防止するという明確な記載はないが、円筒形状のハブ(3)と、そのハブ(3)の周囲にある基部(1)との間で存在する捩れとは、『周方向』に発生することは明らかである。また、この点は前置報告書において審査官によって指摘されているように『径方向の捩れ』の記載は明らかに誤記であり、技術的な意義を考慮すると、この基部(1)とハブ(3)との間で捩れが生じるのは『周方向』であることは一義的に理解できるものと思料する。」(4頁8行?15行)との記載並びに本願明細書及び図面からみて、「周方向の捩れ」と解される。

上記補正は、発明を特定するために必要な事項である「モータ軸とをハブ(3)を介して」を「円柱状のモータ軸とをハブ(3)の内円筒面(6)を介して」と限定し、同「少なくとも1つの引張部材(7)を取り付けた」を「基部(1)に少なくとも1つの引張部材(7)を取り付けた」と限定し、同「クランプ(R_(1)、R_(2))がハブ(3)に対して径方向の捩れ及び軸方向のずれを防止する」を「ハブ(3)に対する基部(1)の径方向の捩れ及び軸方向のずれを防止する」と限定し、同「引張部材(7)はクランプ(R_(1)、R_(2))を径方向に貫通し、内円筒面(6)から径方向に突出している」を「引張部材(7)は、ハブ(3)の空洞(9)に沿ってクランプ(R_(1)、R_(2))を径方向に貫通し、ハブ(3)のフランジ部(2)に挟持された前記モータ軸を締め付けるように取り付けられている」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された特開平5-71550号公報(以下「刊行物1」という。)には、「機械的駆動部材用固着装置」に関して、図面(特に、図1?図3参照。)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機械的駆動部材を有する機械に係り、特に、回転駆動部材が高度の繰返し性の停止および進行作動に従う場合の挿入機械に関する。」

イ 「【0003】プーリ、スプロケットまたはギアのような機械的駆動部材が駆動軸上で滑ることを防止するために種々の方法が用いられている。よく知られた方法の一つは部材を通過するセットねじまたは部材のハブの細長い部分を通過するセットねじを用いて部材を駆動軸に固着することである。セットねじは部材を適当に固着するために駆動軸に対して締められる。この方法の変形例は“D“シャフトを用いるものであり、これによってねじは軸の平たい部分に対して締め付けられる。典型的には、部材の“D“孔は軸の“D“形状の大きさであって適合し軸全体に渡ってわずかに滑るようになっている。このような方法は部材を駆動軸に固着するのに適するけれども、実験によれば組み立てられた部材は軸に対してゆるみ、規定の横位置から動くことを防止できないことが示されている。(以下略)」

ウ 「【0005】この分野における他の問題点は、市販の製造された駆動部材は通常丸い孔で製造されることである。部材が“D“シャフト上に用いられることになる場合には、特殊な部品が注文されねばならないか、または“D“孔を有するハブが部材にある孔の挿入されなければならない。(以下略)」

エ 「【0011】
【実施例】本発明の完全な理解は添付する図面を参照して好適な実施例の以下の記載に従って得られ、ここで種々の図において同じ参照符号は同様の部材を示す。
【0012】図において本発明の実施例が示され、ハブ10とクランプカラ30は、市販のタイミング用プーリのような機械的駆動部材を駆動軸40に固着するために用いられる。
【0013】図1は溝のある拡張部材12とひだのあるハブ部材14とを有するハブ10を示す。溝つき部材12は一つの溝に位置する位置決めリブ16を有する。本発明の好適な実施例において、ハブ10は、駆動軸40の“D“形状部分に固着するための“D“形状の孔18を有する高密度の粉末金属からなる。クランプカラ30はハブ10の溝つき部材12を滑るスプリトカラクランプである。クランプカラ30はクランプ30のスプリット部分34を通過するセットねじ32を有する。ハブ10のリブ16はカラ30のスプリット部分34と係合し、このようにすることによってセットねじ32が締められたときカラ30とハブ10との間の方向を維持する。
【0014】位置決めリブのある溝つき部材を有し、かつ軸の形状に適合する孔を有するハブは、スプリトカラクランプによって適当に固着され、繰り返し性の停止進行動作によって通常経験される軸の磨滅を顕著に減少させることができるということが見出だされた。本発明は丸い軸を含め種々の形状をした軸に有効であることが見出された。
【0015】図2および図3において、ハブ10はプーリ20の孔へ挿入され、カラ30はハブ10の溝つき部材12にかぶらされている。本発明の好適な実施例において、プーリ20は嵌合または押しつけによってハブ10のひだつき部材に固着されている。ハブ10とプーリ20との間の押し付けは、繰り返し性の停止進行動作によってゆるむことが知られていたセットねじよりも、より高い信頼性で締めることが見出だされた。プーリ20をハブ10へ結合する他の方法もまた用いることができるは理解できる。例えば、ウレタンのようなより柔らかい材料からなる部材に対しては、二つの材料の間の結合を強めるために押し付ける間エポキシを加えることができる。」

オ 「【0017】本発明は駆動軸によって駆動される任意の機械的駆動部材に適するということは、当業者によって理解できる。例えば、ハブ10とカラ30はギア、スプロケットまたはカムを固着するのに用いることができる。」

カ 上記エの段落【0013】の「クランプカラ30はハブ10の溝つき部材12を滑るスプリトカラクランプである。クランプカラ30はクランプ30のスプリット部分34を通過するセットねじ32を有する。ハブ10のリブ16はカラ30のスプリット部分34と係合し、このようにすることによってセットねじ32が締められたときカラ30とハブ10との間の方向を維持する。」との記載及び図1ないし図3からみて、スプリトカラクランプは、ハブ10に対するクランプカラ30の周方向の捩れを防止するように形成されているといえる。

キ 図1ないし図3には、クランプカラ30がハブ10の溝つき部材12を受け入れる円周内面を備え、セットねじ32が径方向と並行にクランプカラ30を貫通することが図示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「タイミング用プーリのような機械的駆動部材と、D形状の駆動軸40とをハブ10のD形状の孔18の内面を介して連結するために、クランプカラ30に少なくとも1つのセットねじ32を取り付けたスプリトカラクランプであって、
ハブ10に対するクランプカラ30の周方向の捩れを防止するように形成され、
セットねじ32は、スプリトカラクランプを径方向と並行に貫通し、ハブ10の溝つき部材12に挟持された前記駆動軸40を締め付けるように取り付けられている、ハブ10を介して駆動軸40と機械的駆動部材とを連結するスプリトカラクランプ。」

(2)本願の優先権主張の日前に頒布された特開2003-269479号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面(特に、FIG.1及びFIG.2参照。)と共に次の事項が記載されている。

ア 「【0002】
【従来の技術】シャフトは多くの適用に利用され、一般的に、シャフトと二次構成部品との間に相互連結を要求する。二次構成部品は、シャフトが中間シャフトとして役立つように、独立の構成部品又は二次シャフトである場合がある。両方の例では、シャフト20の前方端22が連結要素10と相互連結され、連結要素10は二次連結部品(図示せず)と相互連結される。
【0003】多くの異なる連結要素を、本発明で利用することができ、例示的な連結要素10を図1に示す。連結要素10は、シャフト受け及び保持スロット12と、保持ボルト16と、を有し、保持ボルト16は、連結要素10の貫通ボア14に通され、かつ、貫通ボア14内に固定される。典型的には、シャフト20は、シャフト20の前方端に隣接して、ノッチ、環状溝、又は、他の形態のボルト受け凹部24を有する。シャフト20の前方端22は、先ず、ボルト受け凹部24を貫通ボア14と整合させて、(図1中の矢印1によって示すように)スロット12の中に位置決めされる。その後、保持ボルト16は(図1中の矢印2によって示すように)、貫通ボア14及びボルト受け凹部24に滑り込まされ、コッターピン又はナット等によって固定される。ボルト受け凹部24を貫いて延びる保持ボルト16はシャフト20を連結要素10に恒久的に固定する。」

イ FIG.1には、シャフト20を受け入れる連結要素10の保持スロット12が円周内面からなり、保持ボルト16は径方向と並行に連結要素10を貫通することが図示されている。

ウ 上記アの「ボルト受け凹部24を貫いて延びる保持ボルト16はシャフト20を連結要素10に恒久的に固定する」との記載並びにFIG.1及びFIG.2からみて、前記「恒久的に固定する」が連結要素10とシャフト20との周方向及び軸方向の相対的な動きを防止することは明らかである。

上記記載事項及び図示内容を総合すると、刊行物2には、次の技術的事項(以下「刊行物2に記載された事項」という。)が記載されている。

「保持ボルト16は、シャフト20のボルト受け凹部24に沿って連結要素10を径方向と並行に貫通することによって、シャフト20に対する連結要素10の周方向及び軸方向の相対的な動きを防止し、シャフト20を連結要素10に恒久的に固定すること。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「駆動軸40」は前者の「モータ軸」に相当し、以下同様に、「ハブ10」は「ハブ(3)」に、「クランプカラ30」は「基部(1)」に、「セットねじ32」は「引張部材(7)」に、「スプリトカラクランプ」は「クランプ(R_(1)、R_(2))」に、「溝つき部材12」は「フランジ部(2)」にそれぞれ相当し、また、前者の「径方向の捩れ」が前記「1 本願補正発明」で述べたとおり解されることを踏まえると、後者の「周方向の捩れ」は前者の「径方向の捩れ」に相当し、また、本願明細書に添付された図2(b)を踏まえると、後者の「径方向と並行に貫通し」は前者の「径方向に貫通し」にそれぞれ相当する。

また、後者の「タイミング用プーリのような機械的駆動部材」と前者の「ギア伝導軸、太陽歯車又は軸継手から成るギアの構成部品」とは、「機械的構成部品」という限りで一致し、後者の「D形状の孔18の内面」と前者の「内円筒面(6)」とは、「内面」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「機械的構成部品と、モータ軸とをハブの内面を介して連結するために、基部に引張部材を取り付けたクランプであって、
ハブに対する基部の径方向の捩れを防止するように形成され、
引張部材は、クランプを径方向に貫通し、ハブのフランジ部に挟持された前記モータ軸を締め付けるように取り付けられているハブを介してモータ軸と機械的構成部品とを連結するクランプ。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
機械的構成部品について、本願補正発明は、「ギア伝導軸、太陽歯車又は軸継手から成るギアの構成部品」であって、モータ軸と「ギア」とを連結するのに対し、
引用発明は、タイミング用プーリのような機械的駆動部材であって、駆動軸40と機械的駆動部材とを連結する点。

〔相違点2〕
ハブの内面について、本願補正発明は、モータ軸が「円柱状」であり、ハブの内面が「内円筒面(6)」であるのに対し、
引用発明は、駆動軸40がD形状であり、ハブ10の内面がD形状の孔18の内面である点。

〔相違点3〕
本願補正発明は、引張部材が「ハブ(3)の空洞(9)に沿って」クランプ(R_(1)、R_(2))を径方向に貫通し、ハブ(3)に対する基部(1)の径方向の捩れ「及び軸方向のずれ」を防止するように形成されるのに対し、
引用発明は、ハブ10に対するクランプカラ30の周方向の捩れを防止するように形成される点。

4 当審の判断
そこで、各相違点を検討する。
(1)相違点1について
刊行物1には、機械的駆動部材について「プーリ、スプロケットまたはギアのような機械的駆動部材」との記載(段落【0003】)、及び「本発明は駆動軸によって駆動される任意の機械的駆動部材に適するということは、当業者によって理解できる。例えば、ハブ10とカラ30はギア、スプロケットまたはカムを固着するのに用いることができる。」との記載(段落【0017】)がある。
これらの記載からみて、引用発明の「タイミング用プーリのような機械的駆動部材」を「ギア伝導軸、太陽歯車又は軸継手から成るギアの構成部品」とし、モータ軸と連結することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
刊行物1には、「部材の“D“孔は軸の“D“形状の大きさであって適合し軸全体に渡ってわずかに滑るようになっている。このような方法は部材を駆動軸に固着するのに適するけれども、実験によれば組み立てられた部材は軸に対してゆるみ、規定の横位置から動くことを防止できない」との記載(段落【0003】)、及び「この分野における他の問題点は、市販の製造された駆動部材は通常丸い孔で製造されることである。部材が“D“シャフト上に用いられることになる場合には、特殊な部品が注文されねばならないか、または“D“孔を有するハブが部材にある孔の挿入されなければならない。」との記載(段落【0005】)がある。
これらの記載によれば、引用発明の「駆動軸40がD形状であり、ハブ10の内面がD形状である」ことについて技術的及び製造上の不都合があることが分かるから、引用発明において、通常の態様である、モータ軸を「円柱状」とし、ハブの内面を「内円筒面」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
刊行物2に記載された事項は、刊行物2において「従来の技術」の欄に記載された事項に基づくもので、刊行物2の「シャフトは多くの適用に利用され、一般的に、シャフトと二次構成部品との間に相互連結を要求する。」との記載(段落【0002】)及び「多くの異なる連結要素を、本発明で利用することができ、例示的な連結要素10を図1に示す。」との記載(段落【0003】)からみて、本願の優先権主張の日前に周知の技術的事項といえる。

ところで、引用発明のクランプカラ30は、径方向と並行に貫通するねじ部材によってその円周内面に受け入れた相手方部材を固定するものであり、刊行物2に記載された事項の連結要素10は、径方向と並行に貫通する保持ボルト16によって相手方部材(シャフト20)を固定するものであるから、クランプカラ30と連結要素10とは、相手方部材を固定するという機能で共通するものである。また、引用発明のクランプカラ30が、スプリット部分34に相手方部材であるハブ10のリブ16を係合させることによって周方向の捩れを防止するものであり、刊行物2に記載された事項の連結要素10が、保持ボルト16を相手方部材であるシャフト20のボルト受け凹部24に沿って貫通させることによって周方向及び軸方向の相対的な動きを防止するものであるから、引用発明と刊行物2に記載された事項は、相手方部材の少なくとも周方向の相対的な動きを防止するという技術的課題においても共通する。

そうすると、相手方部材の相違があるとしても、引用発明に刊行物2に記載された事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。そして、その適用の際に、前記技術的課題の共通性からみて、刊行物1のリブ16をスプリット部分34に係合させることに替えて、刊行物2の保持ボルト16をシャフト20のボルト受け凹部24に沿って連結要素10を径方向と並行に貫通させることを適用して、引用発明において、「引張部材は、『ハブ(3)の空洞(9)に沿って』クランプ(R1、R2)を径方向に貫通し、ハブ(3)に対する基部(1)の径方向の捩れ『及び軸方向のずれ』を防止する」ように形成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)効果について
本願補正発明が奏する効果は、全体としてみても、引用発明及び刊行物2に記載された事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

なお、審判請求人は、平成25年11月14日付け回答書において補正案を示し、「引用文献1(審決注:本審決の刊行物1)又は2(審決注:同刊行物2)の何れの文献にも、『引張部材(7)の一部は、基部(1)の壁を貫通し基部(1)によって実質的に囲まれた領域内に露出してハブ(3)の空洞(9)に沿って空洞(9)と係合』させる構成、即ち引張部材(7)を、基部(1)の内側に形成されたハブ(3)の壁の途中まで至らせる技術的思想について記載されていない。よって上記請求項1にかかる発明は引用文献1又は2に基づいて容易に想到し得たものではない。」(「4.本発明の内容」の欄の最後から8行?2行)と主張しているが、前記「(3)相違点3について」で述べたように、刊行物1のリブ16に替えて刊行物2のボルト受け凹部24を用いれば、刊行物1の溝つき部材12には刊行物2のボルト受け凹部24による凹みが生じ、それに係合するように、セットネジ32の一部がクランプカラ30の円周内面内に露出することになるから、前記補正案のように補正されたとしても、上記判断に影響はない。

5 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成24年2月10日付けの手続補正書の請求項1ないし13に記載された事項により特定されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明における前記「第2〔理由〕1」で示した各限定を省いたものである。

そうしてみると、本願発明の発明特定事項をすべて含んだものに実質的に相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕3及び4」に記載したとおり、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-08 
結審通知日 2014-01-15 
審決日 2014-01-29 
出願番号 特願2006-167550(P2006-167550)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16D)
P 1 8・ 575- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 島田 信一
冨岡 和人
発明の名称 ハブを介してモータ軸とギアとを連結するクランプ  
代理人 井野 砂里  
代理人 辻居 幸一  
代理人 松下 満  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 吉野 亮平  
代理人 弟子丸 健  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 丹羽 宏之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ