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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G01F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G01F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01F
管理番号 1288607
審判番号 不服2013-3190  
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-19 
確定日 2014-07-01 
事件の表示 特願2008- 2488「摺動式液面レベルセンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 7月23日出願公開、特開2009-162694、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年1月9日の出願であって、明細書及び特許請求の範囲について平成24年12月3日付けで補正がなされ、同年12月14日付け(送達:同年12月18日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成25年2月19日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、明細書及び特許請求の範囲について補正がなされた(以下、「本件補正」という。)ものである。
その後、当審より、平成25年11月7日付けで審尋をしたところ、請求人より、同年12月16日付けで回答書の提出があった。

第2 本件補正について
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のように補正するものである。
(補正前)
「【請求項1】
絶縁基板上の摺動部を構成する電極上を、燃料の液面を浮遊するフロートの変位に連動する摺動体に設けられた接点が摺動することにより、燃料タンク内における燃料の残量を検知する摺動式液面レベルセンサの製造方法において、
一つの絶縁基板上の複数個所に、各摺動式液面レベルセンサの前記摺動部を構成する導電性材料からなる複数条の電極を形成する工程と、
前記電極の表面に金または金合金からなる塊を押し付けながら摺動させ、前記電極の微細な凹部に金または金合金が押し込まれるように、金または金合金を転着させる工程と、
前記絶縁基板を、個々の摺動式液面レベルセンサ用に分割する工程と
を含むことを特徴とする摺動式液面レベルセンサの製造方法。」
(補正後)
「【請求項1】
抵抗体の絶縁基板上の摺動部を構成する電極上を、燃料の液面を浮遊するフロートの変位に連動する摺動体に設けられた接点が摺動することにより、燃料タンク内における燃料の残量を検知する摺動式液面レベルセンサの製造方法において、
前記抵抗体の形成は、
一つの絶縁基板上の複数個所に、各摺動式液面レベルセンサの前記摺動部を構成する導電性材料からなる複数条の電極を形成する工程と、
前記電極の表面に金または金合金からなる塊を押し付けながら摺動させ、前記電極の微細な凹部に金または金合金が押し込まれるように、金または金合金を転着させる工程と、
前記絶縁基板を、個々の摺動式液面レベルセンサ用に分割する工程とを含み、
前記接点は、金または金合金でメッキされていない導電性材料からなる
ことを特徴とする摺動式液面レベルセンサの製造方法。」(下線は、補正箇所。)

2.補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲についてした補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「絶縁基板上」及び「前記接点」について、それぞれ「抵抗体の絶縁基板上」及び「前記接点は、金または金合金でメッキされていない導電性材料からなる」との限定を付加するものであり、また、「一つの絶縁基板上の複数個所に、各摺動式液面レベルセンサの前記摺動部を構成する導電性材料からなる複数条の電極を形成する工程と、前記電極の表面に金または金合金からなる塊を押し付けながら摺動させ、前記電極の微細な凹部に金または金合金が押し込まれるように、金または金合金を転着させる工程と、前記絶縁基板を、個々の摺動式液面レベルセンサ用に分割する工程」が「抵抗体の形成」における工程であるとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-287456号公報(発明の名称:「液面検出装置」、出願人:日本精機株式会社、公開日:平成15年10月10日、以下、「刊行物1」という。)には、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。
(a)「【0013】【発明の実施の形態】本発明の液面検出装置は、フロートの変動によって摺動接点5が摺動する固定電極3と、この固定電極3に接続される抵抗体4とを備えた液面検出装置1において、固定電極3を少なくとも銀(Ag)とパラジウム(Pd)とガラス成分とから構成し、銀(Ag)とパラジウム(Pd)との重量構成比率を銀(Ag)が80重量%以上でパラジウム(Pd)が20重量%以下とするとともに、摺動接点5が摺動する固定電極3の摺動部7を金(Au)を含んだ合金8にて覆ったものである。このように構成したことにより、コスト上昇を抑えながら、劣化や腐食に強い液面検出装置1を提供することができる。」(段落【0013】)
(b)「【0021】【実施例】本発明の一実施例を添付図面とともに説明する。なお、本実施例では、自動車などの車両の液面検出装置に適用した場合に基づいて説明する。
【0022】この液面検出装置1は、セラミックなどの絶縁性の回路基板2と、この回路基板2上に設けられる複数の固定電極3と、複数の固定電極3に跨った状態で設けられる抵抗体4と、固定電極3上を摺動する摺動接点5を備えた摺動子6と、摺動接点5が摺動する固定電極3の摺動部7上に設けられる金(Au)を含んだ合金8と、抵抗体4の抵抗値を調整する調整用抵抗体9とから構成されている。」(段落【0021】?【0022】)
(c)「【0028】摺動接点5は摺動子6と一体に形成されている。摺動接点5はプレス加工などによって接点を形成されている。摺動接点5と摺動子6の材質としては、銅(Cu)・ニッケル(Ni)・亜鉛(Zn)合金(洋白若しくは洋銀)が適切である。これは、加工がしやすく、硫化などにも強く、加えて安価であるため適切である。」(段落【0028】)
(d)「【0031】摺動接点5は、燃料の液面に浮く図示しないフロートの変動によって固定電極3の摺動部7上を摺動するものであり、固定電極3の摺動部7上には、金を含んだ合金8が形成されている。この金を含んだ合金8は摺動部7を覆うように形成されている。」(段落【0031】)

上記記載(d)によれば、摺動接点5はフロートの変動によって摺動し、また、上記記載(c)から、摺動接点5と摺動子6とは一体に形成されているから、摺動子6はフロートの変動によって摺動するものと認められる。
また、上記記載(d)において、液面が検出される燃料は何らかの容器に入れられているものと認められる。
さらに、液面検出装置が何らかの方法により製造されることは明らかであるから、上記記載(a)ないし(d)より、
ア「抵抗体4の回路基板2上の摺動部7を構成する固定電極3上を、燃料の液面を浮遊するフロートの変動によって摺動する摺動子6に設けられた摺動接点5が摺動することにより、容器内における燃料の液面を検出する摺動式液面検出装置の製造方法」との技術事項が読み取れる。
上記記載(a)によれば、固定電極3は、少なくとも銀(Ag)とパラジウム(Pd)とガラス成分とから構成されるから、固定電極3は導電性材料からなるものと認められ、また、上記記載(b)及び【図1】より、固定電極3は回路基板2上に複数条設けられているから、上記記載(a)、(b)、及び【図1】より、
イ「回路基板2上に、摺動式液面検出装置の摺動部7を構成する導電性材料からなる複数条の固定電極3を形成する」との技術事項が読み取れる。
上記記載(a)には、固定電極3の摺動部7を金を含んだ合金8で覆うことが記載されているから、上記記載(a)より、
ウ「固定電極3の表面を金を含んだ合金8で覆う」との技術事項が読み取れる。
上記記載(c)によれば、摺動接点5の材質として、銅・ニッケル・亜鉛合金(洋白若しくは洋銀)が用いられているから、上記記載(c)より、
エ「摺動接点5は、導電性材料からなる」との技術事項が読み取れる。
そして、技術事項イ及びウは抵抗体4を形成するための工程であり、以上の技術事項アないしエを総合勘案すると、刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる。
「抵抗体4の回路基板2上の摺動部7を構成する固定電極3上を、燃料の液面を浮遊するフロートの変動によって摺動する摺動子6に設けられた摺動接点5が摺動することにより、容器内における燃料の液面を検出する摺動式液面検出装置の製造方法において、
抵抗体4の形成は、
回路基板2上に、摺動式液面検出装置の摺動部7を構成する導電性材料からなる複数条の固定電極3を形成する工程と、
固定電極3の表面を金を含んだ合金8で覆う工程とを含み、
摺動接点5は、導電性材料からなる
摺動式液面検出装置の製造方法」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
補正発明と引用発明とを、主たる構成要件毎に順次対比する。
ア 引用発明における「回路基板2」、「固定電極3」、「摺動接点5」、「容器」、及び「摺動式液面検出装置」は、補正発明の「絶縁基板」、「電極」、「接点」、「燃料タンク」及び「摺動式液面レベルセンサ」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明では、摺動子6はフロートの変動によって摺動しており、これはフロートの変位に連動しているといえる。また、引用発明では、燃料の液面を検出しているところ、液面は燃料の量、即ち残量に他ならないから、上記相当関係を踏まえると、引用発明における「抵抗体4の回路基板2上の摺動部7を構成する固定電極3上を、燃料の液面を浮遊するフロートの変動によって摺動する摺動子6に設けられた摺動接点5が摺動することにより、容器内における燃料の液面を検出する摺動式液面検出装置の製造方法」は、補正発明の「抵抗体の絶縁基板上の摺動部を構成する電極上を、燃料の液面を浮遊するフロートの変位に連動する摺動体に設けられた接点が摺動することにより、燃料タンク内における燃料の残量を検知する摺動式液面レベルセンサの製造方法」に相当するといえる。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「抵抗体の絶縁基板上の摺動部を構成する電極上を、燃料の液面を浮遊するフロートの変位に連動する摺動体に設けられた接点が摺動することにより、燃料タンク内における燃料の残量を検知する摺動式液面レベルセンサの製造方法において、
前記抵抗体の形成は、
絶縁基板上に、摺動式液面レベルセンサの前記摺動部を構成する導電性材料からなる複数条の電極を形成する工程と、
電極の表面を金を含んだ合金で覆う工程とを含み、
前記接点は、導電性材料からなる
摺動式液面レベルセンサの製造方法。」
(相違点1)
補正発明では、「一つの絶縁基板上の複数個所に、各摺動式液面レベルセンサの前記摺動部を構成する導電性材料からなる複数条の電極を形成する工程と、…前記絶縁基板を、個々の摺動式液面レベルセンサ用に分割する工程とを含み」とあるように、一つの絶縁基板上の複数個所に電極を形成するとともに、絶縁基板を、個々の摺動式液面レベルセンサ用に分割する工程を有しているのに対し、引用発明では、当該工程を有していない点。
(相違点2)
電極の表面に金合金を設ける方法が、補正発明では、電極の表面に金または金合金からなる塊を押し付けながら摺動させ、前記電極の微細な凹部に金または金合金が押し込まれるように、金または金合金を転着させているのに対し、引用発明では、電極の表面を金を含んだ合金で覆うようにしている点。
(相違点3)
接点の材料が、補正発明では金または金合金でメッキされていない導電性材料からなるのに対し、引用発明では導電性材料であるとしているにとどまる点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)原審で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2005-503012号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0001】本発明は、一般に、ある容器内の液面位の測定用、特に燃料量の測定用のシステムに使用される抵抗素子(抵抗体)に関し、更に詳しくは、燃料タンク内への設置用に設計された液中で作動可能なセンサー構造に使用され得る抵抗素子に向けられる。」(段落【0001】)
「【0008】図1の先行技術抵抗素子の製造に一般的に用いられる種々の処理工程が、図2に示される。慣例的に、多くの抵抗素子が、一般に単一の基板上に製造される。後の分割を容易にするため、セラミック基板は、例えばレーザースクライブ法により、最初に溝が付けられ(スクライブされ)る(201)。慣用の厚膜スクリーン印刷法を用いて導電性トラックが付着させられる(202)。該トラックは、オーブン内で乾燥させられ、次いで炉内で焼かれる(203)。次に、抵抗材料が、慣用の厚膜印刷法を用いて導電性トラック上及び該トラック間に付着させられる(204)。該抵抗材料は、次にオーブン内で乾燥させられ、その後炉内で焼かれる(205)。該抵抗は、次に、該抵抗に沿う適切な個所において該抵抗に一連のカットを設けることにより、必要な抵抗値までレーザートリミングされる(206)。カットの位置及び寸法は、抵抗値からなる測定値を参照して決定され、導電性トラックで形成された一連のテストパッド108によって容易にされる。
【0009】先に溝付けしたセラミックは、先の溝付け線に沿って割ることにより、個々の抵抗素子へと分割され(207)、最終的に、個々の素子は、検査され、包装され、消費者へと輸送される(単一の工程208で示される)。」(段落【0008】?【0009】)

(イ)以上のとおり、液面位測定用の抵抗素子を製造する際に、単一の基板上に多くの抵抗素子を製造し、基板を割ることにより個々の抵抗素子へと分割することは、刊行物2に記載のとおり、出願当時周知の技術であり、当該周知技術を引用発明に適用し、一つの絶縁基板上の複数個所に電極を形成するとともに、絶縁基板を、個々の摺動式液面レベルセンサ用に分割して抵抗体を形成するようにすることに格別の困難性はない。

イ 相違点2について
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-202179号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0052】このように構成した本変形例において、上記実施形態にて述べたと同様に、接点62が、コンタクトプレート61の回動に応じて各電極50の表面を摺動すると、抵抗層40のうち接点62の摺動量で決まる電極50と抵抗層40の右端部41との間に位置する抵抗部の抵抗値でもって、ガソリンの残量が検出される。
【0053】ここで、上述のごとく、複数の電極50はガラス入り銀パラジウム合金材料により形成され、また、接点62は金材料により形成されている。このため、上述のように接点62が各電極50の表面を摺動すると、各電極50の表面のうち接点62との各摺動部位が、接点62を形成する金材料でもって、あたかも金めっきされたかのように膜状に被覆される。これは、各電極50のガラス入り成分に起因して、接点62を形成する金材料が各電極50の表面のうち接点62との各摺動部位に薄く膜状に付着することによるものである。これにより、ガソリンに含まれる硫化成分による絶縁膜が接点と各電極との摺動面に発生したりすることなく耐硫化性を確保しつつ、接点62の電極50との電気的接触が常に良好に維持され得る。その他の作用効果は、接点62の耐摩耗性に伴う作用効果を除き、上記実施形態と同様である。」(段落【0052】?【0053】)

(イ)刊行物3には、金材料により形成される接点が電極表面を摺動すると、電極表面のうち接点との摺動部位が、あたかも金メッキされたかのように膜状に被覆されることが記載されているものの、これは、ガソリン残量検出時、即ち液面レベルセンサ使用時の現象・作用効果であり、液面レベルセンサ製造時の電極の被覆を意図するものではないから、刊行物3に記載の被覆方法を液面レベルセンサ製造時の製造方法として適用することは、当業者が容易になし得るものではない。
また、仮に液面レベルセンサの製造方法に適用したとしても、刊行物3に記載の被覆方法は、電極の微細な凹部に金または金合金が押し込まれるように塊を押し付けながら摺動させるものとまではいえないから、結局、相違点2に係る構成を得ることはできない。
そして、補正発明は、相違点2に係る構成を備えることにより、「金または金合金をメッキした場合に比べて付着が多く、耐久性に優れる。また、金または金合金が各摺動部の表面に点状に散在するため、使用量が少なくて済む」という作用効果が認められる(本願明細書段落【0022】)。

したがって、補正発明は、相違点3について検討するまでもなく、引用発明、刊行物2に記載の技術事項、及び刊行物3に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、本件補正の補正事項は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
本件補正のその余の補正事項についても、特許法第17条の2第3項ないし第5項に違反するところはない。

3.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明について
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2014-06-16 
出願番号 特願2008-2488(P2008-2488)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01F)
P 1 8・ 575- WY (G01F)
P 1 8・ 572- WY (G01F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石井 哲  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 武田 知晋
新川 圭二
発明の名称 摺動式液面レベルセンサの製造方法  
代理人 木津 正晴  
代理人 本多 弘徳  

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