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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B44C
管理番号 1288894
審判番号 無効2012-800079  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-05-18 
確定日 2013-09-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4324721号発明「装飾体の製造法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続きの経緯
本件無効審判事件に関する手続の経緯は、以下のとおりである。
平成14年 4月10日 本件特許出願(特願2002-107740号)
平成20年 2月15日 手続補正書の提出
平成21年 6月19日 特許登録(特許第4324721号)
平成24年 5月18日 無効審判請求(無効2012-800079号)
平成24年 8月 6日 答弁書の提出
平成24年 9月 6日 審理事項通知書
平成24年10月 5日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人・被請求人)
平成24年10月18日 通知書(口頭審理延期)
平成24年10月18日 無効理由通知書・職権審理結果通知書
平成24年11月20日 意見書の提出(請求人)
平成24年11月21日 意見書・訂正請求書の提出(被請求人)
平成24年12月11日 審理事項通知書
平成25年 2月 7日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人・被請求人)
平成25年 2月21日 第1回口頭審理
平成25年 3月 8日 上申書の提出(被請求人)
平成25年 3月26日 上申書の提出(請求人)
平成25年 4月 4日 審決の予告
平成25年 6月 7日 訂正請求書・上申書の提出(被請求人)
平成25年 7月18日 審判事件弁駁書の提出(請求人)

第2.本件発明について
1.訂正請求書について
本件特許については、特許後の平成24年11月21日付け訂正請求書が提出され、審決の予告後の平成25年6月7日付け訂正請求書が提出されているが、前者の訂正請求書は、特許法第134条の2第6項の規定する先の訂正の請求に該当し、取り下げられたものとみなされることとなった。
したがって、平成25年6月7日付け訂正請求書に係る訂正の適否について、以下検討する。

2.訂正事項
上記、平成25年6月7日付け訂正請求書による訂正事項を詳述すると、特許請求の範囲及び明細書についての訂正事項は、訂正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

2-1.訂正事項(1)
請求項1の記載、
「【請求項1】
装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フィルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を予め装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基板3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させることを特徴とする装飾体の製造法。」を、
「【請求項1】
装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法。」と訂正する。

2-2.訂正事項(2)
請求項2の記載、
「【請求項2】
装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フィルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を予め装飾片2が配置された基板3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基板3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...通して排出させ、微細な凹凸模様111.111...を溶融平坦化させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させることを特徴とする装飾体の製造法。」を、
「【請求項2】
装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させ、微細な凹凸模様111.111...を溶融平坦化させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法。」と訂正する。

2-3.訂正事項(3)
請求項4を削除する。

2-4.訂正事項(4)
段落【0003】の記載、
「しかしながら、この押花被覆フイルムで形成された押花シ-トは、その表面に筆記することが出来るが、この押花被覆フイルムを使用して押花シ-トを製造する場合、薄葉紙の裏面にラミネ-トされた透明な熱可塑性合成樹脂フイルムが非通気性であるため、台紙の上に押花を配置してその上に押花被覆フイルムを被覆し、これをアイロン等で加熱加圧して押花被覆シ-トと台紙とを熱溶着する際、押花被覆フイルムと台紙間に空気が介在密封されていた。このため押花被覆フイルムと押花と台紙間の溶着が阻害されるとともに、介在密封された空気によって押し花が短期間に変色していた。特に押花が厚手で立体的なものである場合は、押花に隣接して図8に示すように、押花被覆シ-トと台紙間に空気だまりが形成され、押花の形状に沿って押花被覆シ-トと台紙とを溶着することが出来なかった。このため空気だまりにより押花の立体感が著しく阻害されるとともに押花が短期間に急速に変色してしまう欠点があった。従って従来の押花被覆フイルムを使用して押花シ-トを製造する場合、押花としては花びら、葉等の比較的に薄手のものを部分的に選定し組み合わせて使用しなければならず、種々の押花を自由自在に台紙に配置し、その上に押し花被覆フイルムを被覆溶着して、変化に富んだ立体感に優れた押花シ-トを形成することは不可能であつた。」を、
「しかしながら、この押花被覆フイルムで形成された押花シートは、その表面に筆記することが出来るが、この押花被覆フイルムを使用して押花シートを製造する場合、薄葉紙の裏面にラミネートされた透明な熱可塑性合成樹脂フイルムが非通気性であるため、台紙の上に押花を配置してその上に押花被覆フイルムを被覆し、これをアイロン等で加熱加圧して押花被覆シートと台紙とを熱溶着する際、押花被覆フイルムと台紙間に空気が介在密封されていた。このため押花被覆フイルムと押花と台紙間の溶着が阻害されるとともに、介在密封された空気によって押花が短期間に変色していた。特に押花が厚手で立体的なものである場合は、押花に隣接して図8に示すように、押花被覆シートと台紙間に空気だまりが形成され、押花の形状に沿って押花被覆シートと台紙とを溶着することが出来なかった。このため空気だまりにより押花の立体感が著しく阻害されるとともに押花が短期間に急速に変色してしまう欠点があった。従って従来の押花被覆フイルムを使用して押花シートを製造する場合、押花としては花びら、葉等の比較的に薄手のものを部分的に選定し組み合わせて使用しなければならず、種々の押花を自由自在に台紙に配置し、その上に押花被覆フイルムを被覆溶着して、変化に富んだ立体感に優れた押花シートを形成することは不可能であつた。」と訂正する。

2-5.訂正事項(5)
段落【0007】の記載、
「【課題を解決するための手段】
この発明は、装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フィルムからなる装飾片被覆フイルム11を、その凹凸模様111.111...面を予め装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、その凹凸模様111.111...を通して排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させることを特徴とする装飾体の製造法を請求項1の発明とし、装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フィルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を予め装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、その凹凸模様111.111...を通して排出させ、微細な凹凸模様111.111...を溶融平坦化させて、装飾片被覆フイルム11と基材3とを溶着させることを特徴とする装飾体の製造法を請求項2の発明とし、請求項1又は2記載の発明において、微細な凹凸模様111.111...の粗さが80?800メッシュであることを特徴とする装飾体の製造法を請求項3の発明とし、請求項1?3いずれかに記載の発明において、装飾片2が押花であることを特徴とする装飾体の製造法を請求項4の発明とするものである。」を、
「【課題を解決するための手段】
この発明は、装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹詣で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法を請求項1の発明とし、装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させ、微細な凹凸模様111.111...を溶融平坦化させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法を請求項2の発明とし、請求項1又は2記載の発明において、微細な凹凸模様111.111...の粗さが80?800メッシュであることを特徴とする装飾体の製造法を請求項3の発明とするものである。」と訂正する。

2-6.訂正事項(6)
段落【0008】の記載、
「【発明の実施形態】
この発明において、装飾片被覆フイルム1は、装飾片2が例えば押花のように熱変色性のものである場合は、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、EVA系等のポリオレフィン系フイルム、アイオノマ-、エチレンメタアクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー等のアクリル系フイルム、あるいはこれらの2種以上のラミネートフイルム等で、熱接着温度が70℃?150℃の低温ヒートシール性の透明性熱溶着フイルム11で構成されていることが好ましい。そしてその厚みについては特に限定はない。そして必要によっては、この低温ヒートシール性の透明性熱溶着フイルム11にポリ塩化ビニール等のビニール系のフイルム、ナイロン等のポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系等の透明性フイルム、透明性の薄用紙等の可撓性材からなる補強材12を上貼りして装飾片被覆フイルム1を構成しても良い。そしてこれらの透明性熱溶着性フイルム11の片面、即ち装飾片被覆面10には、艶消し模様、エンボス模様、梨地模様等の微細な凹凸模様111.111...が形成されている。」を、
「【発明の実施形態】
この発明において、装飾片被覆フイルム1は、装飾片2が例えば押花のように熱変色性のものである場合は、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、EVA系等のポリオレフィン系フイルム、アイオノマー、エチレンメタアクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー等のアクリル系フイルム、あるいはこれらの2種以上のラミネートフイルム等で、熱接着温度が70℃?150℃の低温ヒートシール性の透明性熱溶着性フイルム11で構成されていることが好ましい。そしてその厚みについては特に限定はない。そして必要によっては、この低温ヒートシール性の透明性熱溶着性フイルム11にポリ塩化ビニール等のビニール系のフイルム、ナイロン等のポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系等の透明性フイルム、透明性の薄用紙等の可撓性材からなる補強材12を上貼りして装飾片披覆フイルム1を構成しても良い。そしてこれらの透明性熱溶着性フイルム11の片面、即ち装飾片被覆面10には、艶消し模様、エンボス模様、梨地模様等の微細な凹凸模様111.111...が形成されている。」と訂正する。

2-7.訂正事項(7)
段落【0010】の記載、
「この発明において装飾片2としては、押花、紙片、布片等種々のものが使用される。装飾片2が押花である請求項4の発明において、押し花として、装飾片被覆フイルム1と相融性のある樹脂で表面処理したものを使用すれば、加熱加圧時に装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2が相互溶着されるので、装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性を強化できる。」を、
「この発明において装飾片2としては、押花が使用される。押花として、装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理したものを使用すれば、加熱加圧時に装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2が相互溶着されるので、装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性を強化できる。」と訂正する。

2-8.訂正事項(8)
段落【0011】の記載、
「この発明において、基材3としては和紙、用紙、印刷紙、筆記用紙、板紙等の紙類、織布、編布、不織布等の布帛類、皮革、合成樹脂シ-ト等の可撓性材料またはこれらの積層体で構成されていてもよいし、木材、合成樹脂、金属、ガラス、陶磁器の固形材によって構成されていてもよい。必要によっては基材3の表面に透明性熱溶着性フイルム31(11)を上貼りしておけば、装飾片2と基材3ととの接着性を増強することも出来る。装飾片2として押花のような厚みのある立体的なものを使用し、基材3として木材、合成樹脂、金属、陶磁器等の固形材を使用する場合、基材3表面に上貼りする透明性熱溶着性フイルム31(11)として厚手のものを使用すれば、装飾体成形時の加熱加圧によって、装飾片2を透明性熱溶着性フイルム31(11)中に、偏平化することなく立体的に埋設することが出来、好都合である。」を、
「この発明において、基材3としては和紙、用紙、印刷紙、筆記用紙、板紙等の紙類、織布、編布、不織布等の布帛類、皮革、合成樹脂シート等の可撓性材料またはこれらの積層体で構成されていてもよいし、木材、合成樹脂、金属、ガラス、陶磁器の固形材によって構成されていてもよい。必要によっては、基材3の表面に透明性熱溶着性フイルム31(11)を上貼りしておけば、装飾片2と基材3との接着性を増強することも出来る。装飾片2として押花のような厚みのある立体的なものを使用し、基材3として木材、合成樹脂、金属、陶磁器等の固形材を使用する場合、基材3表面に上貼りする透明性熱溶着性フイルム31(11)として厚手のものを使用すれば、装飾体成形時の加熱加圧によって、装飾片2を透明性熱溶着性フイルム31(11)中に、扁平化することなく立体的に埋設することが出来、好都合である。」と訂正する。

2-9.訂正事項(9)
段落【0015】の記載、
「【実施例1】
装飾片被覆フイルム1を、装飾片被覆面10に粗さが200メッシュの多数の微細な凹凸模様111.111...有するポリプロピレンフィルムからなる透明性フイルム11と、補強材12として坪量が20g/m^(2)のレ-ヨン100%の薄用紙とをラミネ-トしたもので構成し、基材3としてもこの装飾片被覆フイルム1と同様なものを使用し、この装飾片被覆フイルム1と1(3)とを微細な凹凸模様111.111...、111.111...、が形成された面10と10とを相対向させ、その間に百日草を乾燥した押花装飾片2を介在させて、家庭用のウレタンフォ-ム張りのアイロン台上で、120℃で5秒間加熱加圧して、装飾片被覆フイルム1と1との間に介在された空気を、微細な凹凸模様111.111...と111.111...とを通して、その開放端縁112と112(312)から排出させて装飾片被覆フイルム1と基材3(1)とを溶着させて障子紙用の押花装飾体を製造した。この押花装飾体において、押花装飾片2に隣接して装飾片被覆フイルム1.1間に空気だまりが形成されることなく、装飾片被覆フイルム押花被覆シート1.1とを、押花装飾片2の形状に沿って密着させて、押花装飾片2を押し花被覆フイルム1と1間に溶着密封した。このようにして表裏両面から押花装飾片2を立体的に鮮明に透視できる障子紙用の押花装飾体シ-トを製造することができた。」を、
「【実施例1】
装飾片被覆フイルム1を、装飾片被覆面10に粗さが200メッシュの多数の微細な凹凸模様111.111...有するポリプロピレンフイルムからなる透明性熱溶着性フイルム11と、補強材12として坪量が20g/m^(2)のレーヨン100%の薄用紙とをラミネートしたもので構成し、基材3としてもこの装飾片被覆フイルム1と同様なものを使用し、この装飾片被覆フイルム1と1(3)とを微細な凹凸模様111.111...、111.111...、が形成された面10と10とを相対向させ、その間に百日草を乾燥した押花装飾片2を介在させて、家庭用のウレタンフォーム張りのアイロン台上で、120℃で5秒間加熱加圧して、装飾片被覆フイルム1と1との間に介在された空気を、微細な凹凸模様111.111...と111.111...とを通して、その開放端縁112と112(312)から排出させて装飾片被覆フイルム1と基材3(1)とを溶着させて障子紙用の押花装飾体を製造した。この押花装飾体において、押花装飾片2に隣接して装飾片被覆フイルム1.1間に空気だまりが形成されることなく、装飾片被覆フイルム押花被覆シート1.1とを、押花装飾片2の形状に沿って密着させて、押花装飾片2を押花被覆フイルム1と1間に溶着密封した。このようにして表裏両面から押花装飾片2を立体的に鮮明に透視できる障子紙用の押花装飾体シートを製造することができた。」と訂正する。

2-10.訂正事項(10)
段落【0016】の記載、
「【実施例2】
ポリプロピレンフィルムとEVAフイルムとのラミネートフイルムで透明性フイルム11を構成し、EVAフイルム側である装飾片被覆面10に粗さ400メッシュの多数の微細な凹凸模様111.111...を形成した装飾片被覆フイルム1を準備した。そしてこれを、その表面に押し花装飾片2が配置され、しかも表面に正目の木目模様(基材模様)32を有する厚みが5cmの桐板からなり、その表面に粗さ400メッシュの微細な凹凸模様111.111(311.311)...面を有するEVA製の透明性熱溶着性フイルム31を貼り合わせた基材3に、微細な凹凸模様111.111...面と111.111(311.311)...面とを相対向させ、その間に百日草を乾燥した押花装飾片2を介在させて重層し、これを加熱プレスによって110℃で、プレス圧2kg/平方cmで加熱加圧して、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、微細な凹凸模様111.111...111.111...を通して開放端縁112と312とから排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させた。このようにして、押花装飾片2と基材模様32とを組み合わせた模様を鮮明に透視できる押花装飾片2入り装飾体ボードを製造することができた。」を、
「【実施例2】
ポリプロピレンフイルムとEVAフイルムとのラミネートフイルムで透明性熱溶着性フイルム11を構成し、EVAフイルム側である装飾片被覆面10に粗さ400メッシュの多数の微細な凹凸模様111.111...を形成した装飾片被覆フイルム1を準備した。そしてこれを、その表面に押花装飾片2が配置され、しかも表面に正目の木目模様(基材模様)32を有する厚みが5cmの桐板からなり、その表面に粗さ400メッシュの微細な凹凸模様111.111(311.311)...面を有するEVA製の透明性熱溶着性フイルム31を貼り合わせた基材3に、微細な凹凸模様111.111...面と111.111(311.311)...面とを相対向させ、その間に百日草を乾燥した押花装飾片2を介在させて重層し、これを加熱プレスによって110℃で、プレス圧2kg/平方cmで加熱加圧して、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、微細な凹凸模様111.111...と111.111...を通して開放端縁112と312とから排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させた。このようにして、押花装飾片2と基材模様32とを組み合わせた模様を鮮明に透視できる押花装飾片2入り装飾体ボードを製造することができた。」と訂正する。

2-11.訂正事項(11)
段落【0017】の記載、
「【発明の効果】
この発明は以上のように構成されているので、装飾片被覆フイルム1の装飾片被覆面10を基材3に面させて、装飾片被覆フイルム1と基材3間に装飾片2を介在させて加熱加圧する際、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、装飾片被覆フイルム1形成された多数の微細な凹凸111.111...を通して、その側面11から排出させて、装飾片被覆フイルム1を装飾片2の形状に沿って軟化密着させて溶着できる。したがって、装飾片花2が厚手で立体的なものであっても、装飾片2に隣接して、装飾片被覆フイルム1と基材3間に空気が封入されることなく、装飾片2に対する保形性、保持性が良好で立体感に優れた装飾体を提供できる。このようにして請求項1?4のいずれかによって提供される装飾体は、障子紙、提灯、電灯の笠張り等のインテリア商品としては勿論、ハガキ、便箋、封筒等の筆記可能な書紙、カ-ド、シ-ル、ボード等の装飾品としても有用である。」を、
「【発明の効果】
この発明は以上のように構成されているので、装飾片被覆フイルム1の装飾片被覆面10を基材3に面させて、装飾片被覆フイルム1と基材3間に押花装飾片2を介在させて加熱加圧する際、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、装飾片被覆フイルム1に形成された多数の微細な凹凸111.111...を通して、その側面11から排出させて、装飾片被覆フイルム1を装飾片2の形状に沿って軟化密着させて溶着できる。したがって、押花装飾片2が厚手で立体的なものであっても、押花装飾片2に隣接して、装飾片被覆フイルム1と基材3間に空気が封入されることなく、押花装飾片2に対する保形性、保特性が良好で立体感に優れた装飾体を提供できる。このようにして請求項1?3のいずれかによって提供される装飾体は、障子紙、提灯、電灯の笠張り等のインテリア商品としては勿論、ハガキ、便箋、封筒等の筆記可能な書紙、カード、シール、ボード等の装飾品としても有用である。」と訂正する。

3.訂正の目的

3-1.訂正事項(1)について

3-1-1.誤記の訂正
訂正事項(1)のうち、「透明性熱溶着性フィルム11からなる」を「透明性熱溶着性フイルム11からなる」とした点、及び、「基板3間に介在された」を「基材3間に介在された」と訂正した点は、他の記載に合わせて用語の統一をしたものであって、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-1-2.特許請求の範囲の減縮
訂正事項(1)のうち、装飾片被覆フイルム1の加熱加圧に関して、訂正前には、「その凹凸模様111.111...面を予め装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し」という記載を、「その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し」と訂正した点についてみると、この点は、基材3に予め配置された「装飾片2」が、「装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2」であることを発明特定事項として加入するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
同様に、「装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させる」という記載を、「装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させる」と訂正した点についてみると、この点は、「溶着」に関して、「装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させる」ことを発明特定事項として加入するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

3-2.訂正事項(2)について

3-2-1.誤記の訂正
訂正事項(2)のうち、「透明性熱溶着性フィルム11からなる」を「透明性熱溶着性フイルム11からなる」とした点、「基板3に対向させて」を「基材3に対向させて」とした点、及び、「基板3間に介在された」を「基材3間に介在された」と訂正した点は、他の記載に合わせて用語の統一をしたものであって、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-2-2.特許請求の範囲の減縮
訂正事項(2)のうち、装飾片被覆フイルム1の加熱加圧に関して、訂正前には、「その凹凸模様111.111...面を予め装飾片2が配置された基板3に対向させて重ねて加熱加圧し」という記載を、「その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し」と訂正した点についてみると、この点は、基材3に予め配置された「装飾片2」が、「装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2」であることを発明特定事項として加入するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
同様に、「装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させる」という記載を、「装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させる」と訂正した点についてみると、この点は、「溶着」に関して、「装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させる」ことを発明特定事項として加入するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

3-3.訂正事項(3)について
訂正事項(3)は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。

3-4.訂正事項(4)について
訂正事項(4)は、段落【0003】に記載の「押し花が短期間に変色」を、「押花が短期間に変色」と訂正し、「その上に押し花被覆フイルム」を「その上に押花被覆フイルム」と訂正したものであり、他の記載に合わせて用語の統一をしたものであるから、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-5.訂正事項(5)について
訂正事項(5)は、特許請求の範囲の訂正に伴って、【課題を解決するための手段】を説明する段落【0007】の記載を、特許請求の範囲の記載に合わせたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものに該当する。

3-6.訂正事項(6)について
訂正事項(6)は、段落【0008】に記載の「透明性熱溶着フイルム11」を「透明性熱溶着性フイルム11」と訂正したものであり、他の記載に合わせて用語の統一をしたものであるから、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-7.訂正事項(7)について
訂正事項(7)の、段落【0010】に記載の「この発明において装飾片2としては、押花、紙片、布片等種々のものが使用される。」を「この発明において装飾片2としては、押花が使用される。」と訂正し、また、「押し花として、装飾片被覆フイルム1と相融性のある樹脂で表面処理したものを使用」を「押花として、装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理したものを使用」と訂正したものであり、段落【0010】の記載を、特許請求の範囲の記載に合わせたものであるから、誤記の訂正、及び、明瞭でない記載の釈明を目的としたものに該当する。

3-8.訂正事項(8)について
訂正事項(8)は、段落【0011】に記載の「必要によっては基材3の表面」を「必要によっては、基材3の表面」と訂正し、また「装飾片2と基材3ととの接着性を増強することも出来る。」を「装飾片2と基材3との接着性を増強することも出来る。」と訂正したものであり、いずれも、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-9.訂正事項(9)について
訂正事項(9)は、段落【0015】に記載の「ポリプロピレンフィルムからなる透明性フイルム11」を「ポリプロピレンフイルムからなる透明性熱溶着性フイルム11」と訂正し、また、「押花装飾片2を押し花被覆フイルム1と1間に」を「押花装飾片2を押花被覆フイルム1と1間に」と訂正したものであり、いずれも、他の記載に合わせて用語の統一をしたものであるから、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-10.訂正事項(10)について
訂正事項(10)のうち、段落【0016】に記載の「ラミネートフイルムで透明性フイルム11を構成し」を「ラミネートフイルムで透明性熱溶着性フイルム11を構成し」と訂正し、「ポリプロピレンフィルム」を「ポリプロピレンフイルム」と訂正した点は、他の記載に合わせて用語の統一をしたものであるから、誤記の訂正を目的としたものに該当する。また、同じく、「微細な凹凸模様111.111...111.111...を通して」を「微細な凹凸模様111.111...と111.111...を通して」と訂正した点は、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-11.訂正事項(11)について
訂正事項(11)のうち、段落【0017】に記載の「装飾片2」あるいは「装飾片花2」を「押花装飾片2」に訂正した点は、他の記載に合わせて用語の統一をしたものであるから、誤記の訂正を目的としたものに該当する。また、同じく、「装飾片被覆フイルム1形成された」を「装飾片被覆フイルム1に形成された」に訂正した点は、誤記の訂正を目的としたものに該当する。

3-12.訂正の目的についてのまとめ
以上のとおり、訂正事項(1)ないし(11)は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、又は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであるから、特許法第134条の2第1項各号の規定に適合する。

4.新規事項の有無について
訂正事項(1)及び(2)に係る訂正事項のうち、「予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2」の点、及び、「装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させる」点は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、これらの訂正事項は、願書に添付した明細書の段落【0010】に「この発明において装飾片2としては、押花、紙片、布片等種々のものが使用される。装飾片2が押花である請求項4の発明において、押し花として、装飾片被覆フイルム1と相融性のある樹脂で表面処理したものを使用すれば、加熱加圧時に装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2が相互溶着されるので、装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性を強化できる。」として記載されていた事項である。
したがって、これらの訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内で訂正したものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
また、訂正事項(1)及び(2)に係る訂正事項のうち、誤記の訂正を目的とした訂正事項、並びに、訂正事項(4)、(6)ないし(11)に係る訂正事項は、願書に最初に添付した明細書に記載されていた事項である。
したがって、これらの訂正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内で訂正したものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

5.訂正による実質的拡張または変更について
訂正事項(1)ないし(11)は、いずれも、特許請求の範囲を実質的拡張または変更したものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

6.請求人の主張について

6-1.審判事件弁駁書の主張

訂正事項(1)のうちの1-2、及び訂正事項(10)に関して、請求人は平成25年7月18日付け審判事件弁駁書で以下のように主張している。

「(1)訂正事項1-2について
被請求人は、【請求項1】について、『その凹凸模様111.111...面を予め装飾片が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し』との記載を、『その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて加熱加圧し』と訂正し、また、『装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させる』との記載を、『装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させる』と訂正した上、当該訂正事項は、『発明特定事項を直列的に付加するものであり、発明の目的や効果を異ならせるものではなく、第三者に不利益を与えないので、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではない。』と述べる。
ここで、上記の訂正によって付加された事項は、段落【0010】の『装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性を強化できる。』との記載にあるとおり、装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性の強化を、その目的及び効果とするものである。
一方、訂正前の【請求項1】に係る発明はそもそも、装飾片被覆フイルム1の凹凸模様111.111...から、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を排出させることをその目的及び効果としたものである。これは、被請求人提出に係る平成24年8月6日付審判事件答弁書や、平成25年3月8日付上申書等、被請求人が本件審判事件において一貫して主張してきたことであり、これ以外の目的及び効果についての言及はこれまでなされていない。
してみれば、上記の訂正は、『装飾片被覆フイルム1の凹凸模様111.111...から、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を排出させる』ことをその目的及び効果とする本件特許発明に対し、『装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性の強化』という新たな別の目的及び効果を付加するものであって、実質上、本件特許発明を異ならせることになる。したがって、このような差異を生ぜしめる上記の訂正は、特許請求の範囲を実質上変更するものとして許されないものと解する。
(2)訂正事項10について
被請求人は、段落【0016】の『微細な凹凸模様111.111...111.111...を通して』を『微細な凹凸模様111.111...と111.111...を通して』に訂正し、これが認められるべき理由として、『微細な凹凸模様111.111...面と111.111...面とを相対向させて』いることから、本来、二つの面の『微細な凹凸模様111.111...』を区切る『と』が抜けているのを、追加したものであるから、誤記の訂正を目的としたものである、と述べる。
しかしながら、客観的に見れば、『微細な凹凸模様111.111...111.111...を通して』との記載が本来、被請求人が言う通り、二つの面の『微細な凹凸模様111.111...』を意図したものなのか、『111.111...』を誤って二重に記載しただけで、片側の『微細な凹凸模様111.111...を通して』を意図したものなのか、判然としない。
少なくとも、『微細な凹凸模様111.111...面と111.111...面とを相対向させて』いるからといって、このことが即ち、二つの面の『微細な凹凸模様111.111...』を通して空気が排出されるという構成を一義的に導くとは考えられない。
したがって、かかる訂正は誤記の訂正を目的としたものとはいえず、妥当でない。」(審判事件弁駁書第2ページ第3行?第3ページ第9行)

6-2.審判事件弁駁書の主張に対する当審の判断

(1)訂正事項1-2に関して

訂正事項1-2は、上記3-1-2.でも述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するものである。
また、「この発明が解決しょうとする問題点は、装飾片被覆フイルムと基材間に空気を介在密封させることなく、装飾片を装飾片の凹凸に沿って簡単に立体的に被覆でき、さらにはこの装飾片被覆フイルムを使用して基材独自の模様と装飾片とを組み合わせた立体感に優れた装飾模様も表現できる装飾体を提供しようとするものである。」(段落【0006】)という、発明が解決しようとする課題は、訂正後の明細書においても変更はない。
そして、新たな発明特定事項の付加によって特許請求の範囲を減縮する場合、その新たな発明特定事項に伴う目的・効果を、願書に添付した明細書に記載の範囲内において付加することは、特許請求の範囲を実質的に変更するものとはいえず、「装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性を強化できる。」との事項は、願書に添付した明細書に記載されていた事項である。
したがって、訂正事項1-2に関する請求人の主張は採用できない。

(2)訂正事項10に関して

願書に最初に添付した明細書の段落【0016】の記載、及び、関連する図5の記載によれば、実施例2として記載されている事項は、まとめると、以下の各点からなる。

1.装飾片被覆フイルム1は、微細な凹凸模様111.111...を形成している。
2.基材3は、桐板の表面に、微細な凹凸模様111.111(311.311)...面を有する透明性熱溶着性フイルム31を貼り合わせている。
3.装飾片被覆フイルム1と、基材3は、装飾片2を介在させ、微細な凹凸模様111.111...面と111.111(311.311)...面とを相対向させて、重層している。
4.装飾片被覆フイルム1の凹凸模様111.111...の開放端縁は112である。
5.基材3の凹凸模様111.111(311.311)...の開放端縁は312である。

そして、本実施例2は、重層にするにあたって、「微細な凹凸模様111.111...面と111.111(311.311)...面とを相対向」(上記3.参照。)させているのであり、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気は、凹凸模様を通ってその開放端縁から排出するのであるから、訂正事項を検討するするにあたって、前後の文脈を併せて考慮すると、「装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、微細な凹凸模様111.111...と111.111...を通して開放端縁112と312とから排出させて」という記載の意味するところは、「装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、装飾片被覆フイルム1側では、微細な凹凸模様111.111...を通して開放端縁112から排出させ、基材3側では、微細な凹凸模様111.111(311.311)...を通して開放端縁312から排出させる」ことであると理解できる。
してみれば、訂正事項に係る「微細な凹凸模様111.111...と111.111...を通して」の意味するところは、二つの面の「微細な凹凸模様111.111...」と「微細な凹凸模様111.111(311.311)...」を通して空気が排出されると理解でき、訂正前の「微細な凹凸模様111.111...111.111...を通して」が誤記であったことは明らかである。
したがって、訂正事項10に関する請求人の主張は採用できない。

7.訂正についてのむすび

以上のとおりであるから、訂正事項(1)ないし(11)による訂正は、訂正の要件をすべて満たしている。
また、特許無効審判の請求されていない請求項はないから、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項を適用すべき請求項もない。
よって、当該訂正を認める。

第3.訂正後の請求の範囲
平成25年6月7日付け訂正請求書によって訂正された特許請求の範囲は、同日に提出された上申書による分説を用いて表すと、以下のとおりである。

「【請求項1】
A. 装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、
B. その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、
C. この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させて、
D. 装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする
E. 装飾体の製造法。
【請求項2】
F. 装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、
G. その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、
H. この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させ、
I. 微細な凹凸模様111.111...を溶融平坦化させて、
J. 装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする
K. 装飾体の製造法。
【請求項3】
L. 微細な凹凸模様111.111...の粗さが80?800メッシュであることを特徴とする請求項1又は2記載の装飾体の製造法。
【請求項4】(削除)」

以下、請求項1に係る発明を「訂正発明1」、請求項2に係る発明を「訂正発明2」、請求項3に係る発明を「訂正発明3」という。

第4.請求人の主張の概要
請求人は、証拠方法として甲第1?9号証を提出し、特許査定時の特許請求の範囲請求項1ないし4に記載された発明は、甲第1ないし第9号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであると主張した。

請求人の示した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証 特開平11-60292号公報
甲第2号証 特開平6-24810号公報
甲第3号証 特開2000-247690号公報
甲第4号証 特開平11-78398号公報
甲第5号証 特開2002-37648号公報
甲第6号証 特開2001-18598号公報
甲第7号証 特開2001-226154号公報
甲第8号証 実願昭61-168362号(実開昭63-74679号)のマイクロフィルム
甲第9号証 エスレックネオミュートフィルム(遮音性合わせガラス用中間膜)技術資料、積水化学工業株式会社、1992年1月、表紙、第1頁、第12頁、第14頁、第16頁、奥付の写し

第5.当審が通知した無効理由の概要
平成24年10月18日付けで当審が通知した無効理由は、引用刊行物1ないし5を引用し、特許査定時の特許請求の範囲請求項1ないし4に記載された発明は、引用刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるというものである。

引用刊行物1 特許第2928406号公報
引用刊行物2 特開平11-60292号公報(請求人の提出した甲第1号証である。)
引用刊行物3 特開平6-24810号公報(請求人の提出した甲第2号証である。)
引用刊行物4 特開2000-247690号公報(請求人の提出した甲第3号証である。)
引用刊行物5 特開2002-37648号公報(請求人の提出した甲第5号証である。)

第6.審決の予告の概要
平成25年4月4日付けで当審が予告した審決は、平成24年11月21日付け訂正請求書によって訂正された特許請求の範囲請求項1及び3に記載の発明は、平成24年10月18日付け無効理由で引用した、下記の、引用刊行物1ないし5に記載の発明に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであるというものである。

引用刊行物1 特許第2928406号公報
引用刊行物2 特開平11-60292号公報
引用刊行物3 特開平6-24810号公報
引用刊行物4 特開2000-247690号公報
引用刊行物5 特開2002-37648号公報

第7.当審の判断

1.訂正後の請求の範囲
訂正後の特許請求の範囲の記載は、前記第3.に述べたとおりである。

2.引用刊行物
無効理由通知書に引用された刊行物とその記載内容は以下のとおりである。

2-1.引用刊行物1
引用刊行物1である特許第2928406号公報には、「乾燥押し花密封品の製造法」に関して、以下の事項が記載されている。

ア.【特許請求の範囲】
「【請求項1】柔軟基材上にホットメルトフィルムを載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、柔軟基材上にホットメルトフィルムを密着固定する第1工程と、第1工程を終わったホットメルト空気遮断性フィルムの上に、乾燥押し花、及びその上にホットメルトフィルムを載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、乾燥押し花をホットメルトフィルムで密封固定する第2工程を行うことを特徴とする乾燥押し花密封品の製造法。
【請求項2】柔軟基材上にホットメルトフィルムを載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、柔軟基材上にホットメルトフィルムを密着固定する第1工程と、第1工程を終わったホットメルト空気遮断性フィルムの上に、乾燥押し花、及びその上にカバーフィルムを載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、乾燥押し花をカバーフィルムで密封固定する第2工程を行うことを特徴とする乾燥押し花密封品の製造法。
【請求項3】柔軟基材上にホットメルトフィルムを載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、柔軟基材上にホットメルトフィルムを密着固定する第1工程と、第1工程を終わったホットメルト空気遮断性フィルムの上に、乾燥押し花、及びその上にホットメルトフィルムとカバーフィルムとを重ねて載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、乾燥押し花をホットメルトフィルムとカバーフィルムを重ねて密封固定する第2工程を行うことを特徴とする乾燥押し花密封品の製造法。
【請求項4】請求項1、2又は3記載の乾燥押し花密封品の製造法において、最外層を形成しているホットメルトフィルム又はカバーフィルムに、フィルム状の樹脂を載せ加熱加圧溶融するか、または、溶融した樹脂を塗布或は吹き付けることで樹脂被覆する第3工程を行うことを特徴とする乾燥押し花密封品の製造法。
【請求項5】柔軟基材上にホットメルトフィルムを載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、柔軟基材上にホットメルトフィルムを密着固定する第1工程と、第1工程を終わったホットメルト空気遮断性フィルムの上に、乾燥押し花、及びその上にフィルム状の樹脂を載せ加熱加圧溶融するか、または、乾燥押し花を載せ溶融した樹脂を塗布或いは吹き付け樹脂被覆することにより乾燥押し花を密封固定する第2工程を行うことを特徴とする乾燥押し花密封品の製造法。」

イ.段落【0007】-【0011】
「以下図面を用いて詳細説明する。図1は、本発明乾燥押し花密封品の製造法の、第1工程説明図である。図2は、同じく第2工程の説明図である。図3は、本発明製造法の図1、図2とは別の実施態様を説明する工程説明図である。図4は図1乃至図3とは別の実施態様における本発明製造法の製品の断面図である。1は柔軟基材、2は空気遮断性フィルム、3は乾燥押し花、4はホットメルトフィルム、5はカバーフィルム、6は被覆樹脂である。 柔軟基材1は、例えば紙、各種繊維からなる布帛等の柔軟性を持つ材料より形成されている。これらの材料よりなる基材は、それ自体として柔軟であり、形態保持が困難であるのみならず、空気を又は水分を通し、或は時に空気や水分を自ら保持してしまったりする。乾燥押し花を使用するに当たって、外部から揉まれたりする機械的な力が加わったり、水分と接触したりすることは、最も好ましくない環境である。柔軟な基材の使用はこの点からは好ましい条件ではないが、繊維製品や紙製カードと共に使用して、ブラウス等をより美しくし或はカードをより華やかにする必要性からは、避けて通れない事項である。
空気遮断性フィルム2は、柔軟基材1と接着し易いものであり、気密性があれば、広く選択することができる。従って、例えば、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステル、等、安定なものであれば材質は何でもよく、いわゆるホットメルトフィルムとよばれる低融点フィルムであってもよい。厚さも比較的自由に柔軟基剤の状態や乾燥押し花の大きさ等の条件にあわせて選ぶことができる。第2工程において乾燥押し花の上にホットメルトフィルム4を用いる場合は、透明であることが必要である。また、紫外線を吸収する性質を付与されていることは好ましいことである。このため、紫外線吸収剤をフィルム中に混入したり、フィルムに塗布したりしてあることは、好ましいことである。
ホットメルトフィルム4の材質も厚さも、上記の性質を持つ範囲で、広い範囲から選択することができる。しかしながら、ホットメルトフィルム4の場合は、花の種類にもよるが、融けたとき花を空気遮断性フィルムと共に十分に包み込むだけの厚さが必要である。さらに、比較的早く融けるものであることは、花に取って好ましいことである。もし、空気遮断性フィルムにホットメルトフィルムを用いた場合、空気遮断性フィルムであるホットメルトフィルムの表面が融けた状態になったとき、素速く融けて上下が一体になるような性質を持っているものの中の範囲で選ぶべきである。
乾燥押し花3の製造法は特に限定されない。一般的には、シリカゲルの如き乾燥剤を入れた箱の中に、生花を紙で挾んで、通気性のクッション材と共に重ねておき、箱内の空気を抜きながら、2乃至7日経た後、取り出すことで製造が行われる。この場合、得られた乾燥押し花は、水分が減少しているが、乾燥が不十分であると、密封しても変色し易く、あまり乾燥が進みすぎると、取扱いが困難となるが製品の変色を避けるためには、水分は少ないほど好ましい。したがって、乾燥押し花を工程に投入する前に十分乾燥させることが必要であり、乾燥機に一日程度入れたものを取り出した後直ちに工程に投入するのがよい。」
以上によれば、引用刊行物1には、
「柔軟基材1上にホットメルトフィルム2を載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、柔軟基材1上にホットメルトフィルム2を密着固定する第1工程と、第1工程を終わったホットメルト空気遮断性フィルム2の上に、乾燥押し花3、及びその上にホットメルトフィルム4を載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、乾燥押し花3をホットメルトフィルム4で密封固定する第2工程を行うことを特徴とする乾燥押し花密封品の製造法。」
との発明(以下、「引用刊行物発明1」という。)が開示されていると認められる。

2-2.引用刊行物2
引用刊行物2である特開平11-60292号公報には、「合わせガラスの製造方法」に関して、以下の事項が記載されている。

ウ.【特許請求の範囲】の【請求項1】
「両面にエンボスを有する樹脂シートをガラス板間に介在させた積層体の周面部を粘着剤付テープで養生した後、前記積層体を密閉袋に入れて減圧脱気しながら、搬送設備内蔵の加熱炉を通すことにより、前記積層体の前端側から後端側へ向け順次予備圧着と本圧着とを行い、合わせガラスを製造することを特徴とする合わせガラスの製造方法。」

エ.段落【0009】
「【課題を解決するための手段】本発明は、両面にエンボスを有する樹脂シートをガラス板間に介在させた積層体の周面部を粘着剤付テープで養生した後、前記積層体を密閉袋に入れて減圧脱気しながら、搬送設備内蔵の加熱炉を通すことにより、前記積層体の前端側から後端側へ向け順次予備圧着と本圧着とを行い、合わせガラスを製造することを特徴とする合わせガラスの製造方法にかかるものである。」

オ.段落【0038】
「前述のような方法によって製造できる合わせガラスの種類としては、ガラス板2,2間に樹脂シート1を介在させた、いわゆる合わせガラスだけでなく、樹脂シート1が少なくとも2枚の樹脂シート間に少なくとも1枚のフィルムを挟んだ複合シートであるものを用いた合わせガラス(いわゆる装飾合わせガラス)も含まれる。装飾合わせガラスに用いられるフィルムとしては図柄やデザインを施したもの、着色したもの、金属や金属酸化物をなんらかの方法でコーティングしたもの、または透明なものでも差し支えない。この場合のフィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレンなども好適に用いることができる。」

2-3.引用刊行物3
引用刊行物3である特開平6-24810号公報には、「合わせガラスの製造方法」に関して、以下の事項が記載されている。

カ.【特許請求の範囲】の【請求項1】
「両面に2?20μ深さの均等なエンボスを有し、かつあらゆる部分の厚み偏差が10μ以下である樹脂シートをガラス板間に介在させた積層体を、圧着ロールの少なくとも1対と、搬送ロール内蔵の加熱炉の少なくとも1台を有する合わせガラス製造装置に通すことによって得られることを特徴とする合わせガラスの製造方法。」

キ.段落【0018】
「本発明において用いられる樹脂シートは両面に2?20μ深さの均等なエンボスを有することが必要で、この要素は本発明の目的達成に極めて重要である。」

ク.段落【0019】
「まず、このエンボス深さは2?20μであり、合わせガラス製造工程の条件設定面から考えた場合、2?10μが好ましく、2?6μがさらに好適である。この数値範囲について述べると、樹脂シートのエンボス深さは部位により、値を異にするのが普通であるが、浅いものを下限とし深いものを上限として、この範囲が上記の数値限定の中に含まれることを意味する。図1は樹脂シートの任意の部位、任意の方向において、ある長さにおけるエンボス深さの一例を示し、エンボス深さの意味を理解するため概念的に表したものである。エンボス深さの浅いものすなわち山から谷までの最も浅いギャップをG_(L)で、深いものすなわち山から谷までの最も深いギャップをG_(H)で表す。従ってエンボス深さが2?20μとはG_(L)が2μ以上で、G_(H)が20μ以下であることを示している。ここでG_(L)が2μより小さいと樹脂シートがガラスに密着してしまって十分脱気が行われず、G_(H)が20μより大きいと予備圧着工程をニップロールによって連続的に行う場合にロール圧力による脱気が十分でなく、いずれも合わせガラスとした場合の外観特性不良の原因となる。」

ケ.段落【0026】
「本発明によって製造できる合わせガラスの種類としてはガラス板間に樹脂シートのみを介在させた、いわゆる透明合わせガラスだけでなく、樹脂シートが少なくとも2枚の樹脂シート間に少なくとも1枚のフィルムを挟んだ複合シートであるものを用いた合わせガラス、いわゆる装飾合わせガラスも含まれる。装飾合わせガラスに用いられるフィルムとしては図柄やデザインを施したもの、着色したもの、金属や金属酸化物を何らかの方法でコーティングしたもの、又は透明なものでも差し支えない。この場合のフィルムの材質としては、ポリエチレンテレフテレート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等も好適に用いることができ、特に制約はない。」

2-4.引用刊行物4
引用刊行物4である特開2000-247690号公報には、「合わせガラス用接着性中間膜および合わせガラス」に関して、以下の事項が記載されている。

コ.【特許請求の範囲】の【請求項1】
「エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物またはその酸変性体100重量部、ロジン類2?20重量部および可塑剤0.5?10重量部を含有してなる合わせガラス用接着性中間膜。」

サ.段落【0010】
「本発明による中間膜を製造するには、通常エキストルーダー、ニーダー等により各成分を十分メルトブレンドした後にT-ダイ等を用いてシート化する。当該シート化時の温度条件は、エキストルーダーによるペレット化では通常100?150℃程度、T-ダイによるフィルム化では、100?180℃程度で行われる。また、カレンダーロールを用いてシート化してもよい。このシート化そのものは公知の手段で行うことができる(特開昭60-171253号)。シートの厚みは通常50?2,000μm、好ましくは100?1,000μmである。シートの表面は合わせガラス製造時に気泡の残存を防止するために凹凸状になっている方が好ましく、エンボスロール等により梨地模様、エンボス模様を入れておくとよい。合わせガラスの製造は通常公知の方法、例えば真空加熱圧着法、熱圧着法、オートクレーブを使用する方法等が好適に使用できる。本発明における合わせガラスとは、無機ガラス、型板ガラス、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等のガラス様透明体を接着性合成樹脂中間膜により接着したものである。また、重ね合わせるもののうち1つが透明樹脂フィルムであるものも含む。その際合わせガラスは平板でも曲面を有するものでもよい。また装飾性、機能性等を有する機能膜を封入した合わせガラスも含まれる。この場合中間膜はガラスと機能膜あるいは機能膜と機能膜との間に使用され、たとえば合わせガラスの構成はガラス/中間膜/機能膜/中間膜/ガラスとなる。かかる装飾性、機能性を付与する機能膜としては非常に多種類開発されており、たとえば各種の印刷をされたポリエステルフィルム、樹皮(つき板)、布地、紙、金網、液晶膜、偏光膜、導電膜、シリコーン素子等が挙げられる。」

2-5.引用刊行物2ないし4のまとめ
引用刊行物2ないし4は、いずれも「合わせガラス」の製造に使われる樹脂シートに関するものであり、合わせガラスは、製品としてできあがったときにその内部に気泡として空気が入っておらず、透明であるのは自明事項であるから、引用刊行物2ないし4には、いずれにも、「合わせガラス」の製造に使われる「樹脂シート」であって、「樹脂シート間に少なくとも1枚のフィルムを挟んだ複合シート」の製造に用いる「樹脂シート」であり、「溶着時に空気を排出するために樹脂シートの溶着面に凹凸模様を設けること」、及び、溶着により「樹脂シートが透明になること」が記載されている。
したがって、引用刊行物2ないし4の記載によれば、「合わせガラス」の製造において、「2枚のガラス板の間に設けられる樹脂シート間に少なくとも1枚のフィルムを挟んだ合わせガラスを製造するにあたって、積層して溶着する樹脂シートの溶着面に凹凸模様を設け、この凹凸模様を通して溶着面に介在された空気を排出し、溶着により樹脂シートは透明になること」は、周知の事項である。

2-6.引用刊行物5
引用刊行物5である特開2002-37648号公報には、「合わせガラス用中間膜及び合わせガラス」に関して、以下の事項が記載されている。

シ.【特許請求の範囲】の【請求項1】
「熱可塑性樹脂シートの両面に凹溝からなる刻線状エンボスが設けられた合わせガラス用中間膜であって、該凹溝が略規則的に配置されており、該凹溝の配置間隔(ピッチ)、幅又は深さの少なくともいずれか1種が、熱可塑性樹脂シートの一方の面と他方の面とで異なることを特徴とする合わせガラス用中間膜。」

ス.段落【0004】
「上記中間膜には、透明性、接着性、耐貫通性、耐候性等の基本性能が良好であることのほかに、保管中に中間膜同士がブロッキングしないこと、ガラス板の間に中間膜を挟む際の取扱い作業性が良好であること、さらに空気の巻き込みによる気泡の発生を無くすために、予備圧着工程での脱気性が良好であること等が要求される。」

セ.段落【0005】
「このような要求を満たすために、通常、中間膜の両面には微細な凹凸形状からなる多数のエンボス模様が形成されている。上記微細な凹凸形状の形態としては、例えば、多数の凸部とこれらの凸部に対する多数の凹部とからなる各種の凹凸形状や、多数の凸条とこれらの凸条に対する多数の凹溝とからなる各種の凹凸形状について、粗さ、配置、大きさ等の形状因子が開示されている(特公平1-32776号公報)。しかしながら、規則的に配置されたエンボス模様が両面に付与された中間膜は、互いの光回折面の干渉により、一般的にモアレ現象と呼称される縞状の回折像が出現する。」

ソ.段落【0017】
「上記凹溝により形成される凸部の寸法は、特に限定されるものではないが、一般的には、凸部の配置間隔(ピッチ)は10?2000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50?1000μmの範囲である。また、凸部の高さは概ね5?500μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは20?100μmの範囲である。さらに、凸部の底辺の長さは概ね30?1000μmの範囲であることが好ましい。」

3.甲各号証
請求人が審判請求書と共に提出した甲各号証とその記載内容は以下のとおりである。

3-1.甲第1号証
甲第1号証は、引用刊行物2と同じであり、その記載内容は、上記2-2.引用刊行物2のとおりである。

3-2.甲第2号証
甲第2号証は、引用刊行物3と同じであり、その記載内容は、上記2-3.引用刊行物3のとおりである。

3-3.甲第3号証
甲第3号証は、引用刊行物4と同じであり、その記載内容は、上記2-4.引用刊行物4のとおりである。

3-4.甲第4号証
甲第4号証である特開平11-78398号公報には、「押し花密封品」に関して、以下の事項が記載されている。

タ.【特許請求の範囲】
「【請求項1】基板の片面に、乾燥された押し花品が溶融樹脂により密封された中間層と、その上部の透明フィルム表面層とが積層一体化されている押し花密封品であって、中間層は、溶融性多孔質樹脂フィルムが真空減圧下に加熱加圧され、溶融した樹脂が押し花品に密着してこれを密封したものであるとともに、溶融した樹脂により基板および透明フィルム表面層に固着されていることを特徴とする押し花密封品。
【請求項2】溶融性多孔質樹脂フィルムは、3次元の多孔連通構造を有している請求項1の押し花密封品。
【請求項3】溶融性多孔質樹脂フィルムは、平均孔径が1.0mm以下である請求項1または2の押し花密封品。
【請求項4】溶融性多孔質樹脂フィルムは、110℃以下で溶融する請求項1ないし3のいずれかの押し花密封品。
【請求項5】溶融性多孔質樹脂フィルムの溶融により押し花品が密着密封されている中間層の厚みは、4000μm以下である請求項1ないし4のいずれかの押し花密封品。
【請求項6】中間層は、真空乾燥された押し花品を実質的にその周辺に気泡がないように密封している請求項1ないし5のいずれかの押し花密封品。
【請求項7】透明フィルム表面層は、300μm以下である請求項1の押し花密封品。
【請求項8】透明フィルム表面層は、多層積層フィルムである請求項1または7の押し花密封品。
【請求項9】透明フィルム表面層は、最外表面層としてハードコート層を有している請求項8の押し花密封品。
【請求項10】基板は、ガラス、セラミックス、樹脂、紙、木質材、金属、またはこれらの複合体、もしくはこれらの積層体である請求項1の押し花密封品。
【請求項11】基板は、樹脂積層シートであって、カラー印刷層またはカラー練込み層が設けられている請求項10の押し花密封品。
【請求項12】カラー印刷層またはカラー練込み層は、最外層、中間層、もしくはその両者として設けられている請求項11の押し花密封品。
【請求項13】カラー印刷層は、白色フィルム層とともに設けられている請求項11または12の押し花密封品。
【請求項14】樹脂積層シートは、反りの抑えられたシートである請求項11ないし13のいずれかの押し花密封品。
【請求項15】積層樹脂シートは、厚みが3000μm以下である請求項11ないし14のいずれかの押し花密封品。」

チ.段落【0001】
「【発明の属する技術分野】この出願の発明は、押し花密封品に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、ガラス、食器、家具、鏡、時計、家電製品、メッセージボードやシート、名札、メモリアルカード、文具、葉書、電報、写真等々の様々な対象に対しての自然の草花の美しさをそのまま長期にわたって装飾品として使用することのできる、乾燥押し花を用いた押し花密封品に関するものである。」

ツ.段落【0009】
「【課題を解決するための手段】この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、基板の片面に、乾燥された押し花品が溶融樹脂により密封された中間層とその上部の透明フィルム表面層とが積層一体化されている押し花密封品であって、前記中間層は、溶融性多孔質樹脂フィルムが真空減圧下に加熱加圧され、溶融した樹脂が押し花品に密着してこれを密封したものであるとともに溶融した樹脂により基板および透明フィルム表面に固着されていることを特徴とする押し花密封品(請求項1)を提供する。」

テ.段落【0012】-【0014】
「【発明の実施の形態】この出願の発明は、以上のとおりの構成を特徴としているが、改めて、図面に沿って説明すると、図1のA-A断面を示した図4のように、基板(1)の片面に、乾燥された押し花品(2)が溶融樹脂(50)により密封された中間層(5)と、その上部の透明フィルム表面層(6)とが積層一体化されている押し花密封品であって、中間層(5)は、溶融性多孔質樹脂フィルムが真空減圧下に加熱加圧され、溶融した樹脂(50)が押し花品に密着してこれを密封したものであるとともに、溶融した樹脂(50)により基板(1)および透明フィルム表面層(6)に固着されていることを特徴とする押し花密封品を提供するものである。
ここで、重要なことは、溶融した樹脂(50)は、押し花品(2)の花弁、葉、茎、実等の表裏面の微細な凹凸や、その繊維形状等に沿ってくまなく密着し、空気溜りや気泡を存在させずに押し花品(2)を中間層(5)に埋め込んでいることと、基板(1)と透明フィルム表面層(6)に密着してこれらに硬化状態として固着されていることである。
以上のことは、この発明において、溶融性多孔質樹脂フィルムを使用し、このものを真空減圧下に加熱加圧して溶融した樹脂(50)を硬化させることによって実現される。溶融性多孔質樹脂フィルムは、これを構成する微細孔によって、真空減圧下に溶融される際に、押し花品(2)の周囲とその表面の空気、湿気を、この微細孔を通じて外部へと排出し、しかも押し花品(2)に密着することを可能としている。このことは、従来のラミネート構造においては全く考慮されていなかったことである。より具体的には、溶融性多孔質樹脂フィルムの配設部位の全体を通じて効果的に空気、湿気を排出させるためには、3次元の多孔連通構造を持つものであることが好ましい。そして、その種類によって若干の差異はあるものの、乾燥した押し花の色合い、形状、組織を破壊することなしに埋め込むことを可能とするためには、適度な溶融性をも備えていることが必要である。」

ト.段落【0018】
「エチレン・酢酸ビニルコポリマーは好適なものの一つであるが、その部分ケン化物、たとえば約10当量%以下のケン化物は押し花品との親和性において良好でもある。これらの溶融性多孔質樹脂フィルム(なお、フィルムの用語については、シートと呼んでも実質的な差異はない)によって、押し花品(2)を埋め込んで密封することで中間層(5)を形成するには、たとえば図4において、基板(1)上に押し花品(2)を載置し、その上に溶融性多孔質樹脂フィルムと、透明フィルム表面層(6)を形成する非溶融性の樹脂フィルムを順次置いて、高真空減圧下で加熱加圧するか、あるいは、基板(1)の上にまず溶融性多孔質樹脂フィルムを置き、その上に押し花品(2)を置き、さらに再度溶融性多孔質樹脂フィルムを置いて、上記と同様にして非溶融性の透明樹脂フィルムを置いた後に高真空減圧下に加熱加圧するのが適当である。より好ましくは、後者の手段を採用するのがよい。

ナ.段落【0019】
「なお、この差異には、押し花品(2)の表面や近接周面には、溶融性多孔質樹脂フィルムと同種の樹脂の微粉末をあらかじめ散布して加熱加圧してもよい。より厚みのある押し花品(2)の場合には、この微粉末の散布は有効でもある。この場合の粒径としては0.5mm以下、0.05mm以上のものであることが適当である。」
なお、上記、「なお、この差異には、押し花品(2)の表面や近接周面には」の記載は、「なお、この際には、押し花品(2)の表面や近接周面には」の誤記と認められる。

ニ.段落【0020】
「また、溶融性多孔質樹脂フィルム、さらには上記の微粉末は、溶融硬化して中間層(5)を形成するものとしては透明性の高いものとするのが適当である。これは、密封した押し花品(2)がその美しい自然の色をより鮮明に見せるためである。もちろん、所望によっては、色素等の添加によって中間層(5)が特有の色合いを持つ、押し花品(2)とともに相乗的にその美しさを発現するようにしてもよい。この場合にも透明度が高いことが適当であることは言うまでもない。」

ヌ.段落【0041】
「【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の発明においては、前記のとおりの溶融性多孔質樹脂シートを用いることで、押し花品(2)の密封に際して、真空減圧下に、押し花品(2)の周囲、その表面近傍に空気溜りや気泡を残すことなしにこれらを効果的に外部に排出することができ、溶融した樹脂を押し花品(2)のすべての表面にくまなく密着させてこれを埋め込み密封することを可能としている。このため、残存する空気中の酸素や、湿気によって押し花品(2)が劣化して変退色することを長期にわたって防止し、自然の鮮明な色合いを保つことを可能とする。」

3-5.甲第5号証
甲第5号証は、引用刊行物5と同じであり、その記載内容は、上記2-5.引用刊行物5のとおりである。

3-6.甲第6号証
甲第6号証である特開2001-18598号公報には、「写真等の装飾スタンド」に関して、以下の事項が記載されている。

ネ.【特許請求の範囲】
「【請求項1】板面方向に湾曲させた透明な表ガラス板と裏板とをその間に薄い装飾品を挟んで中間膜で接合することにより湾曲形状の合わせガラス本体を形成し、該本体に写真等を保持するホルダーを設けたことを特徴とする写真等の装飾スタンド。
【請求項2】装飾品が押し花である請求項1に記載の写真等の装飾スタンド。」

ノ.段落【0001】-【0005】
「【発明の属する技術分野】本発明は、写真や絵画を飾るために使用するスタンドに関するものである。
【従来の技術】写真、絵画、版画等は、額縁に入れて建物の壁面等に飾りつけるか、スタンド式の枠(写真スタンド等と呼ばれている)に入れてテーブル、サイドボード等の上に飾るのが一般的である。
【発明が解決しようとする課題】上記スタンド式の枠(以下「装飾スタンド」と呼ぶ)は、背面側に斜めの支脚を設けて、額縁状の枠体を若干傾斜した状態で起立させるものである。この種の装飾スタンドには、その枠部に着色や彫刻等の意匠を施したものがあるが、構造的に単純であるから、外観的に変化の少ない単調なものとなっていた。
そこで、本発明は、従来のものに比べて、より美的な意匠を備えた変化に富んだ写真、絵画等の装飾スタンドを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明はつぎのような構成を採用した。すなわち、本発明にかかる写真等の装飾スタンドは、板面方向に湾曲させた透明な表ガラス板と裏板とをその間に薄い装飾品を挟んで中間膜で接合することにより湾曲形状の合わせガラス本体を形成し、該本体に写真等を保持するホルダーを設けたことを特徴としている。」

ハ.段落【0006】
「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。図1は本発明の装飾スタンドの1実施形態を表すもので、この装飾スタンド1は、透明な表ガラス板2と、該表ガラス板に重ね合わされて中間膜4(4a,4b)で接合一体化された裏板3とを有する合わせガラスを本体5としており、この本体5は板面方向に湾曲している。上記表ガラス板2と裏板3との間の中間膜4には、厚みの薄い装飾品7として押し花が挟み込まれている。厚みの薄い装飾品7としては、図示例の押し花の他に、木の葉、布、写真、版画、絵画等、合わせガラスに挟み込むことができる厚さのものを適宜採用することができる。この装飾品7は、第1の中間膜4aと、第2の中間膜4bとの間に介装される。なお、表ガラス板2は、この装飾品7が外から見えるように、透明なガラス板であるが、裏板3は透明又は不透明なガラス板でもよく、例えばPET等のプラスチック板でもよい。裏板3として透明板を用いると、裏面側からも内部の装飾品が透けて見えることになるので美観上好ましい。」

ヒ.段落【0009】
「中間膜4としては、合わせガラス用中間膜として従来公知のもの、たとえば、PVB(ポリビニールブチラール),EVA等が用いられる。合わせガラス用の中間膜としては、通常、透明なものが使用されている。特に、第1の中間膜4aとしては、装飾品が透けて見えるように、透明のものを使用する。第2の中間膜を不透明なものとする場合は、少なくとも枠体10に対応する部分は削り取っておく必要があろう。なお、第1の中間膜4a及び第2の中間膜4bの厚さは、それぞれ0.3?0.8mm程度とするのが好ましいが、特に限定されるものではない。」

フ.段落【0017】
「【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の装飾スタンドは、写真、絵画等を表面から見えるように取り付けて飾ることができるものであるが、透明な表ガラス板と裏板との間に押し花等の薄い装飾品を挟み込んでおくことができるので、美観に富んだものとなった。この押し花等は、中間膜によって真空状態で挟み込まれているので、天然物であっても変色、変質等が生じにくい。しかも、合わせガラスからなる本体が板面方向に湾曲しており、それ自体をテーブル等の平面に起立させることができるので、特別な支持装置が不要であり、簡潔な構造でコンパクトなものとなった。」

3-7.甲第7号証
甲第7号証である特開2001-226154号公報には、「新規な合わせガラス構造体」に関して、以下の事項が記載されている。

ヘ.【特許請求の範囲】
「【請求項1】少なくとも2枚のガラス層と、このガラス層間にはさみ込まれた織布および/または繊維のみからなる層とを備え、織布および/または繊維のみからなる層が透けて見える構造を有しており、かつ織布および/または繊維のみからなる層とその両面のガラス層とを透明な接着剤で積層したことを特徴とする新規な合わせガラス構造体。
【請求項2】織布および/または繊維のみからなる層が、織物部分と繊維のみからなる部分とを連結して一体的に形成されている請求項1に記載の新規な合わせガラス構造体。
【請求項3】織布および/または繊維のみからなる層が、その複数層を積層して形成されている請求項1または2に記載の新規な合わせガラス構造体。
【請求項4】織布および/または繊維のみからなる層が、緊張状態もしくは弛緩状態でガラス層間に積層されている請求項1ないし3のいずれかに記載の新規な合わせガラス構造体。」

ホ.段落【0001】
「【発明の属する技術分野】この発明は住宅等の建築物の窓や出入口のドアに使用する化粧ガラス、自動車のウインドガラス、あるいは食器棚その他の家具の化粧ガラス等として使用される合わせガラス構造体に関し、ファッション性に優れ、かつ紫外線を遮断したり、破損時のガラス片の飛散の防止することのできる新規な合わせガラス構造体を提供しようとするものである。」

マ.段落【0003】-【0004】
「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、いずれのものも基本的にはガラス素材のみを使用しているために素材中に含有させた顔料等で着色を施しているだけであり、これらの化粧ガラス、自動車のウインドガラス、あるいは食器棚その他の家具の化粧ガラス等に優れたファッション性を持たせることは困難であった。
この発明の新規な合わせガラス構造体は従来例の上記欠点を解消しようとするものであり、ファッション性に優れ、かつ紫外線を遮断したり、破損時のガラス片の飛散の防止することのできる新規な合わせガラス構造体を提供することを目的とするものである。」

ミ.段落【0012】-【0013】
「図1および図2においてこの発明の合わせガラス構造体1は、少なくとも2枚のガラス層2,3と、このガラス層2,3間にはさみ込まれた繊維層4とを備えている。そしてこの繊維層4は、織布部分5と繊維のみからなる部分6とを交互に配列した構造を有している。上記織布部分5および繊維のみからなる部分6のいずれも繊維の密度を低くしたり、繊維の太さを調整することによって、透けて見える構造としてある。
上記織布部分5としては種々の織柄のものが適用可能である。例えば図3のような絵巻風の図柄や、図4のような花鳥風月の図柄としたり、風景画、その他の織柄とすることが可能である。また例えば、抽象的な図柄、無地に近いもの、その他の織柄であってもよいことはもちろんである。この織布部分5は、合わせガラス構造体1の全体に適用しても、繊維のみからなる部分6と組み合わせて使用してもよい。」

ム.段落【0023】-【0024】
「【発明の効果】この発明の新規な合わせガラス構造体によれば、従来に例のないファッション性を発揮させることが可能であることはもちろん、紫外線を遮断したり、破損時のガラス片の飛散の防止することのできる新規な合わせガラス構造体を提供することが可能である。
またこの発明の新規な合わせガラス構造体によれば、従来の合わせガラスの製造工程とほぼ同様の製造工程で、種々のバリエーションを持ったファッション性に優れた合わせガラス構造体を作製することができ、しかもそれほど大幅なコストアップをきたすことなく新規な合わせガラス構造体を提供することができるようになった。」

3-8.甲第8号証
甲第8号証である実願昭61-168362号(実開昭63-74679号)のマイクロフィルムには、「押し花絵」に関して、以下の事項が記載されている。

メ.実用新案登録請求の範囲
「1.予め平坦化乾燥してなる天然押し花の集合模様を薄葉物上に配列し、同薄葉物の上下から梨地状の薄ラミネート材を密着積層してなることを特徴とする押し花絵。」

モ.公報第1ページ第9?12行
「〔産業上の利用分野〕
本考案は掛け軸,屏風,色紙,短冊用の絵柄として、紙に描いた絵柄同様に使用する押し花絵に関する。」

ラ.公報第3ページ第10?20行
「本願考案者は、押し花絵を掛軸、短冊用の絵模様にするに当たっての天然花の色彩,色調の永続性のための条件として、乾燥状態の維持と空気遮断の点に着目し、熱可塑性プラスチック薄板による加圧ラミネートに着目した。
しかしながら、単に、ラミネート処理を施しただけでは掛軸等の絵柄模様としての要件を満たすことができない。
本考案の目的は、押し花を用いて掛軸,短冊等へ適用のための上記諸条件を満たした形態を有する絵模様を完成することにある。」

リ.公報第4ページ第1行?第5ページ第7行
「〔問題点を解決するための手段〕
本考案の押し花絵は、予め平坦化乾燥してなる天然押し花の集合模様を薄葉物上に配列し、同薄葉物の上下から梨地状の薄ラミネート材を密着積層してなるものである。
本考案の対象となる天然の花としては、利用目的が掛軸,短冊,屏風等であり、この下地に貼り付けたのち、通常の日本画,墨絵のように厚みを感じさせないものが望ましく、桜花、菫、パンジー、露草等が良いが、他の草花等も適用でき、通常の押し花のように、平坦化し乾燥した状態で使用する。
また、下地の薄葉材としては、ラミネート後の厚みと、草花等との馴染を考慮して良質の薄和紙や日本画用布材が良い。
さらに、ラミネート材の選択が本考案の絵模様を完成するためには極めて重要な要素であり、ラミネート材は、押し花部分への空気の進入が完全に防止できる密封性を維持できるように相互の密着性が良好であることは勿論、完成品が和紙の感覚が失われない程度の柔軟性と薄さを有することが必要である。これに加えて、ラミネート後、表面光沢があっては掛軸等に貼り付けた後、掛軸との違和感がある。
このため、本考案では、ラミネート材として厚みが20μm以下で、表面を梨地加工した塩化ビニール,ポリエステル系等の樹脂材が適当である。」

ル.公報第6ページ第10?13行
「第1b図に示した押し花絵4は、内部に押し花の集合模様2を挾持しているにもかかわらず、略平坦で滑らかであり、無光沢で反射面が和紙程度であった。」

レ.公報第7ページ第5?8行
「〔考案の効果〕
本考案の押し花絵は、天然押し花の褪色がなく長期間にわたる保存に耐え、短冊,色紙,軸物用として好適である。」

3-9.甲第9号証
甲第9号証である「エスレックネオミュートフィルム(遮音性合わせガラス用中間膜)技術資料」には、「エスレックネオミュートフィルム」に関して、以下の事項が記載されている。

ロ.第1ページ
「1性状 表面がエンボス加工されている無色のシートです。
(エンボス加工されている為に半透明に見えますが、熱圧着で合わせガラスになった後は透明になります。)
2組成 (1)■■■特殊樹脂(2)可塑剤(3)添加剤 から成っています。」

ワ.第16ページ
「3 特殊合わせについての注意事項
●フロートガラス以外の組み合わせや、2枚の中間膜の間に装飾フィルム等の物をはさむ場合は、中間膜に含まれる可塑剤の影響を受けない材料を選択してください。(ポリエステルフィルム等)」

4.対比・判断

4-1.本件発明1について
本件発明1と引用刊行物発明1とを比較すると、後者は、「乾燥押し花密封品の製造法」であるから、前者の「押花である装飾片」を被覆した「装飾体の製造法」と共通の分野に属するものということができ、さらに、ホットメルトフィルム4に関して、ホットメルトとは熱溶着のことにほかならず、後者の「ホットメルトフィルム4」は、前者の「透明性熱溶着性フィルム11」に相当するということができる。
そして、後者の「柔軟基材1上にホットメルトフィルム2を載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、柔軟基材1上にホットメルトフィルム2を密着固定する第1工程」により製造された、「第1工程を終わったホットメルト空気遮断性フィルム2」は、その基材としての機能からみて、前者の「基材3」に相当することが明らかである。
また、後者の、「ホットメルト空気遮断性フィルム2の上に、乾燥押し花3、及びその上にホットメルトフィルム4を載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧」する点は、前者の、「装飾片被覆フイルム1」を「押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧」する点に相当する。
さらに、後者の「第2工程」に関して、この工程において、「第1工程を終わったホットメルト空気遮断性フィルム2の上に、乾燥押し花3、及びその上にホットメルトフィルム4を載せ、雰囲気を減圧状態にして加熱加圧し、乾燥押し花3をホットメルトフィルム4で密封固定」するということは、ホットメルトフィルム4とホットメルト空気遮断性フィルム2を溶着させているといい換えることができ、前者において、装飾片被覆フイルムを、押花である装飾片が配置された基材に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルムと基材間に介在された空気を排出させて、装飾片被覆フイルムと基材とを溶着することに相当する。
してみれば、両者の一致点は以下のとおりである。

<一致点>
「熱溶着性フイルムからなる装飾片被覆フイルムを、押花である装飾片が配置された基材に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルムと基材間に介在された空気を排出させて、装飾片被覆フイルムと基材とを溶着させる装飾体の製造法。」
そして、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明1の「透明性熱溶着性フイルム」は、「装飾片被覆面に多数の微細な凹凸模様を有する」ものであり、その「微細な凹凸模様面」を「押花である装飾片が配置された基材に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルムと基材間に介在された空気をその凹凸模様を通して排出させて」、装飾片被覆フイルムと基材とを溶着させるものであるのに対して、引用刊行物発明1に係るホットメルトフィルムは、透明であるか不明であって、微細な凹凸模様面を有しないから、微細な凹凸模様面を通して空気の排出をするものではない点。

<相違点2>
本件発明1は、装飾片が「予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花」であり、加熱加圧により装飾片被覆フイルムと基材とを溶着させる際、「装飾片被覆フイルムと押花である装飾片とを相互溶着させる」ものであるのに対して、引用刊行物発明1に係る「乾燥押し花」は、そのような表面処理がされていないものであり、したがって、加熱加圧によっても装飾片被覆フイルムと押花である装飾片は相互溶着しないものである点。

<相違点1>についての判断
相違点1について検討すると、前記2-5.引用刊行物2ないし4のまとめで述べたとおり、「2枚のガラス板の間に設けられる樹脂シート間に少なくとも1枚のフィルムを挟んだ合わせガラスを製造するにあたって、積層して溶着する樹脂シートの溶着面に凹凸模様を設け、この凹凸模様を通して溶着面に介在された空気を排出すること」は、「合わせガラス」の製造において、周知の事項であり、また、「樹脂シート」が溶着により透明になることも明らかである。
そして、相違点1に係る、「装飾片被覆フイルムと基材間に介在された空気を透明性熱溶着性フイルムの凹凸模様を通して排出させる」ということは、「フイルムの凹凸模様を通して空気を排出させる」という観点では前記周知事項と全く同じ作用である。
そして、特に引用刊行物4をみると、前記摘記事項サ.に「また装飾性、機能性等を有する機能膜を封入した合わせガラスも含まれる。この場合中間膜はガラスと機能膜あるいは機能膜と機能膜との間に使用され、たとえば合わせガラスの構成はガラス/中間膜/機能膜/中間膜/ガラスとなる。かかる装飾性、機能性を付与する機能膜としては非常に多種類開発されており、たとえば各種の印刷をされたポリエステルフィルム、樹皮(つき板)、布地、紙、金網、液晶膜、偏光膜、導電膜、シリコーン素子等が挙げられる。」と記載され、中間膜間に挟まれるものは必ずしも平坦でないし、厚手で立体的な場合もあるというべきであり、当業者であれば、立体的な厚みのある装飾片である押花が配置された基材に対向させて重ねて加熱加圧しても、空気は排出されるものと予測できるし、前記合わせガラスの製造における周知事項を、ホットメルトフィルムを溶着させて乾燥押し花を密封固定している引用刊行物発明1に適用するにあたっての阻害事由もなんら見いだせない。
してみれば、相違点1は引用刊行物発明1に引用刊行物2ないし4に記載の周知事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得た事項である。

<相違点2>についての判断
相違点2に関しては、引用刊行物1ないし5、甲第1号証ないし第9号証のいずれにも、押花である装飾片を、装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理することは記載されていない。
前記甲第4号証に係る摘記事項ナ.ニ.には
「押し花品(2)の表面や近接周面には、溶融性多孔質樹脂フィルムと同種の樹脂の微粉末をあらかじめ散布して加熱加圧してもよい。」
「上記の微粉末は、溶融硬化して中間層(5)を形成するものとしては透明性の高いものとするのが適当である。」
とあるが、ここにおいても、「押し花品(2)の表面」に、「溶融性多孔質樹脂フィルムと同種の樹脂の微粉末をあらかじめ散布」することが示されているに止まり、当該微粉末は、多孔質樹脂フィルムを加熱加圧する際に溶融して押花の表面を覆うことになるから、甲第4号証には押花を「予め」樹脂で表面処理することが示されているとはいえない。
また、押花である装飾片を予め装飾片被覆フイルムと相溶性のある樹脂で表面処理することが周知事項であるとする証拠も発見しない。

したがって、装飾片が予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花であり、加熱加圧により装飾片被覆フイルムと基材とを溶着させる際、装飾片被覆フイルムと押花である装飾片とを相互溶着させるものであるという相違点2に関して、本件発明1が、引用刊行物1ないし5、あるいは甲第1号証ないし第9号証に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるとすることはできない。

4-2.本件発明2について

本件発明2は、その分説F.G.H.が、本件発明1の分説A.B.C.と同じであり、同様に分説J.K.が、分説D.E.と同じであるから、本件発明2は、本件発明1に分説I.に係る事項を加えたものであり、本件発明2は、上記一致点と同様の一致点で引用刊行物発明1と一致し、上記相違点1、2に加えて、同分説I.に係る、以下の相違点3をさらに備えている。

<相違点3>
本件発明1の透明性熱溶着性フイルムは、「装飾片被覆面に多数の微細な凹凸模様を有する」ものであり、その「微細な凹凸模様を溶融平坦化させて」、装飾片被覆フイルムと基材とを溶着させるものであるのに対して、引用刊行物発明1に係るホットメルトフィルムは微細な凹凸模様面を有しないから、「微細な凹凸模様を溶融平坦化させ」るものではない点。

<相違点3>についての判断
相違点3について検討すると、溶融平坦化しないと、樹脂シートは透明にはならないから、引用刊行物2ないし4に記載の周知事項においても、同様に樹脂シートを溶融平坦化しているものである。
よって、相違点3は、引用刊行物2ないし4に記載の周知事項であり、相違点3は、引用刊行物発明1に、引用刊行物2ないし4に記載の周知事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得た事項である。

しかしながら、本件発明2は、本件発明1と同様に、相違点2を備えるものであるから、本件発明2が、引用刊行物1ないし5、あるいは甲第1号証ないし第9号証に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるとすることはできない。

4-3.本件発明3について

本件発明3は、本件発明1又は2に記載された発明に分説L.に係る事項を加えたものであるから、本件発明3は、上記一致点と同様の一致点で引用刊行物発明1と一致し、上記相違点1ないし3に加えて、同分説L.に係る、以下の相違点4をさらに備えている。

<相違点4>
本件発明3は、微細な凹凸模様の「粗さが80?800メッシュである」のに対して、引用刊行物発明1に係る「ホットメルトフィルム」は、溶着面に「微細な凹凸模様」を備えていないから、模様の粗さについても何ら記載がない点。

<相違点4>についての判断
相違点4について検討すると、<相違点1>についての判断で述べたとおり、溶着時に空気を排出するために樹脂シートに凹凸模様を設けること自体は、引用刊行物2ないし4に記載の周知事項である。
そして、引用刊行物5には、空気排出のために凹溝を備え、その「凹溝により形成される凸部の寸法は、特に限定されるものではないが、一般的には、凸部の配置間隔(ピッチ)は10?2000μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50?1000μmの範囲である。」(前記摘記事項ソ.)との記載があり、これは、Tylerメッシュに換算すると、「およそ9?1400メッシュの範囲であることが好ましく、より好ましくは、およそ16?270メッシュの範囲である。」となり、相違点4に係る「80?800メッシュ」と重なる範囲にあるといえる。
したがって、相違点4は、引用刊行物5に記載の事項であり、相違点4は、引用刊行物発明1に、引用刊行物2ないし4に記載の周知事項、及び、引用刊行物5に記載の事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得た事項である。

しかしながら、本件発明3は、本件発明1又は2を引用することにより、本件発明1又は2と同様に、相違点2を備えるものであるから、本件発明3が、引用刊行物1ないし5、あるいは甲第1号証ないし第9号証に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるとすることはできない。

第8.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3についての特許は、特許法第29条第2項の規定によっては特許を受けることができないものとすることはできない。
また、他に、本件発明1ないし3を無効とするべき理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
装飾体の製造法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法。
【請求項2】
装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させ、微細な凹凸模様111.111...を溶融平坦化させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法。
【請求項3】
微細な凹凸模様111.111...の粗さが80?800メッシュであることを特徴とする請求項1又は2記載の装飾体の製造法。
【請求項4】(削除)
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
装飾体の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特公平5-68358号によって半透明の薄葉紙の裏面に透明な熱可塑性合成樹脂フイルムをラミネ-トした押花被覆フイルムが提案されている。
【0003】
しかしながら、この押花被覆フイルムで形成された押花シ-トは、その表面に筆記することが出来るが、この押花被覆フイルムを使用して押花シ-トを製造する場合、薄葉紙の裏面にラミネ-トされた透明な熱可塑性合成樹脂フイルムが非通気性であるため、台紙の上に押花を配置してその上に押花被覆フイルムを被覆し、これをアイロン等で加熱加圧して押花被覆シ-トと台紙とを熱溶着する際、押花被覆フイルムと台紙間に空気が介在密封されていた。このため押花被覆フイルムと押花と台紙間の溶着が阻害されるとともに、介在密封された空気によって押花が短期間に変色していた。特に押花が厚手で立体的なものである場合は、押花に隣接して図8に示すように、押花被覆シ-トと台紙間に空気だまりが形成され、押花の形状に沿って押花被覆シ-トと台紙とを溶着することが出来なかった。このため空気だまりにより押花の立体感が著しく阻害されるとともに押花が短期間に急速に変色してしまう欠点があった。従って従来の押花被覆フイルムを使用して押花シ-トを製造する場合、押花としては花びら、葉等の比較的に薄手のものを部分的に選定し組み合わせて使用しなければならず、種々の押花を自由自在に台紙に配置し、その上に押花被覆フイルムを被覆溶着して、変化に富んだ立体感に優れた押花シ-トを形成することは不可能であつた。
【0004】
さらにまた特許第2798185号によって、透明な合成樹脂フイルム間に紙や布のような通気性基材を介在させて、押花を封入した装飾体の製造法が提案されている。
【0005】
しかしながら、介在された通気性基材に吸収されている空気によって押花が変色されたり、木目模様等基材独自の模様と押花とを組み合わせて表現しようとする場合は、通気性基材によって基材独自の模様が遮蔽されてしまい、基材独自の模様と押花とを組み合わせた変化に富んだ装飾体模様を表現出来なかった。
【0006】
【発明が解決しょうとする課題】
この発明が解決しょうとする問題点は、装飾片被覆フイルムと基材間に空気を介在密封させることなく、装飾片を装飾片の凹凸に沿って簡単に立体的に被覆でき、さらにはこの装飾片被覆フイルムを使用して基材独自の模様と装飾片とを組み合わせた立体感に優れた装飾模様も表現できる装飾体を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法を請求項1の発明とし、装飾片被覆面10に多数の微細な凹凸模様111.111...を有する透明性熱溶着性フイルム11からなる装飾片被覆フイルム1を、その凹凸模様111.111...面を、予め装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理した押花である装飾片2が配置された基材3に対向させて重ねて加熱加圧し、この装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気をその凹凸模様111.111...を通して排出させ、微細な凹凸模様111.111...を溶融平坦化させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させると共に装飾片被覆フイルム1と押花である装飾片2とを相互溶着させることを特徴とする装飾体の製造法を請求項2の発明とし、請求項1又は2記載の発明において、微細な凹凸模様111.111...の粗さが80?800メッシュであることを特徴とする装飾体の製造法を請求項3の発明とするものである。
【0008】
【発明の実施形態】
この発明において、装飾片被覆フイルム1は、装飾片2が例えば押花のように熱変色性のものである場合は、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、EVA系等のポリオレフィン系フイルム、アイオノマ-、エチレンメタアクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー等のアクリル系フイルム、あるいはこれらの2種以上のラミネートフイルム等で、熱接着温度が70℃?150℃の低温ヒートシール性の透明性熱溶着性フイルム11で構成されていることが好ましい。そしてその厚みについては特に限定はない。そして必要によっては、この低温ヒートシール性の透明性熱溶着性フイルム11にポリ塩化ビニ-ル等のビニ-ル系のフイルム、ナイロン等のポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、熱可塑性ゴム系等の透明性フイルム、透明性の薄用紙等の可撓性材からなる補強材12を上貼りして装飾片被覆フイルム1を構成しても良い。そしてこれらの透明性熱溶着性フイルム11の片面、即ち装飾片被覆面10には、艶消し模様、エンボス模様、梨地模様等の微細な凹凸模様111.111...が形成されている。
【0009】
この発明において、凹凸模様111.111...の粗さと深さについては特に制限はないが、その凹凸模様111.111...がエンボス模様である場合は、介在される空気の排出という観点からして、好ましくはその粗さが30?1000メッシュ、特に好ましくは80?800メッシュのものが使用される。
この発明において、凹凸模様111.111...の粗さが80?800メッシュのものを使用すれば加熱加圧時において、装飾片被覆フイルム1と基材3との間に介在された空気の排出と、凹凸模様111.111...の溶融平坦化による透明化を同時に行うことが出来好都合である。というのは粗さがそれ以下となれば、装飾体を製造する際、基材3の上に装飾片2を配置して、装飾片被覆フイルム1でこれを被覆して加熱加圧する場合、凹凸模様111.111...を完全には溶融消失できず、装飾片被覆フイルム1の透明性が阻害されるきらいがあり、さらにまた装飾片被覆フイルム1と基材3との溶着面積が小さくなり、装飾片2に対する保形性と支持性が低下するきらいがある。またその粗さがそれ以上となれば、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を凹凸模様111.111...通して充分には排出、即ち脱気することができず、装飾片2の形状に沿って装飾片被覆フイルム1を充分にはなじませることが出来ず、装飾片2の立体感が低下するきらいがあり、特に装飾片2が押花である場合は、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気によって押花が変色される惧れがある。
【0010】
この発明において装飾片2としては、押花が使用される。押花として、装飾片被覆フイルム1と相溶性のある樹脂で表面処理したものを使用すれば、加熱加圧時に装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2が相互溶着されるので、装飾片被覆フイルム1と押花装飾片2との接着性を強化できる。
【0011】
この発明において、基材3としては和紙、用紙、印刷紙、筆記用紙、板紙等の紙類、織布、編布、不織布等の布帛類、皮革、合成樹脂シ-ト等の可撓性材料またはこれらの積層体で構成されていてもよいし、木材、合成樹脂、金属、ガラス、陶磁器の固形材によって構成されていてもよい。必要によっては、基材3の表面に透明性熱溶着性フイルム31(11)を上貼りしておけば、装飾片2と基材3との接着性を増強することも出来る。装飾片2として押花のような厚みのある立体的なものを使用し、基材3として木材、合成樹脂、金属、陶磁器等の固形材を使用する場合、基材3表面に上貼りする透明性熱溶着性フイルム31(11)として厚手のものを使用すれば、装飾体成形時の加熱加圧によって、装飾片2を透明性熱溶着性フイルム31(11)中に、扁平化することなく立体的に埋設することが出来、好都合である。
【0012】
この発明において基材3として装飾片被覆フイルム1を使用し、この装飾片被覆フイルム1と1の凹凸模様111.111...面と111.111...面とを相対向させて、装飾片被覆フイルム1,1間に装飾片2を介在させて、これを加熱加圧すれば、対向された凹凸模様111.111...面と111.111...面との双方からそれらの装飾片被覆フイルム1、1間に介在された空気を排出でき、空気の排出が極めて容易であり、しかも成形された装飾体は装飾片2がその表裏両面から装飾片被覆フイルム1,1に溶着されているため、接着性が増強され、その保形性、支持性が強化されるとともにその表裏両面から装飾片2を透視でき、障子紙、電灯の笠張り等インテリア材としても利用できる。
【0013】
この発明において加熱加圧はアイロン、ゴムロ-ル、真空プレス、加熱プレス等適宜手段によって行うことができる。加熱加圧は装飾片2が押花のように立体的で熱変色性のものである場合は70℃?150℃で、1?10kg/cm^(2)で行うことが好ましい。基材3として和紙、用紙、印刷紙、筆記用紙、板紙等の紙類、織布、編布、不織布等の布帛類、皮革、合成樹脂シ-ト等の可撓性材料を使用する場合、アイロンを使用して、加熱加圧を行えば、手軽で簡単である。アイロンで加熱加圧を行う場合、通常家庭で使用されているクッション材を上張りしたアイロン台上に、基材3、装飾片2、次に装飾片被覆フイルム1の凹凸模様111.111...面を基材3と装飾片2に対向させて、装飾片被覆フイルム1を重ね、必要によってはさらにその上に離型し離形紙、クッション材を重ね、その上からアイロンで加熱加圧すれば、加圧の際、基材3を介して装飾片2を、アイロン台のクッション性を利用してアイロン台中に沈み込ませた状態で位置させて、装飾片被覆フイルム1を平坦に位置させて、アイロン掛けが出来るので便利である。しかもこの場合アイロンの加圧を解除すれば、アイロン台のクッション性によって軟化状態の装飾片被覆フイルム1を押花装飾片2に対応して押し上げて突出させて、装飾片2を装飾片被覆フイルム1に立体的に固定して、装飾片被覆フイルム1と装飾片2と基材3とを積層できる。
【0014】
この発明において、必要によりさらにこの装飾片被覆フイルム1の上面に透明性のガラス、透明性合成樹脂板等の固形板を積層しておいてもよい。
【0015】
【実施例1】
装飾片被覆フイルム1を、装飾片被覆面10に粗さが200メッシュの多数の微細な凹凸模様111.111...有するポリプロピレンフイルムからなる透明性熱溶着性フイルム11と、補強材12として坪量が20g/m^(2)のレ-ヨン100%の薄用紙とをラミネ-トしたもので構成し、基材3としてもこの装飾片被覆フイルム1と同様なものを使用し、この装飾片被覆フイルム1と1(3)とを微細な凹凸模様111.111...、111.111...、が形成された面10と10とを相対向させ、その間に百日草を乾燥した押花装飾片2を介在させて、家庭用のウレタンフォ-ム張りのアイロン台上で、120℃で5秒間加熱加圧して、装飾片被覆フイルム1と1との間に介在された空気を、微細な凹凸模様111.111...と111.111...とを通して、その開放端縁112と112(312)から排出させて装飾片被覆フイルム1と基材3(1)とを溶着させて障子紙用の押花装飾体を製造した。この押花装飾体において、押花装飾片2に隣接して装飾片被覆フイルム1.1間に空気だまりが形成されることなく、装飾片被覆フイルム押花被覆シ-ト1.1とを、押花装飾片2の形状に沿って密着させて、押花装飾片2を押花被覆フイルム1と1間に溶着密封した。このようにして表裏両面から押花装飾片2を立体的に鮮明に透視できる障子紙用の押花装飾体シ-トを製造することができた。
【0016】
【実施例2】
ポリプロピレンフイルムとEVAフイルムとのラミネートフイルムで透明性熱溶着性フイルム11を構成し,EVAフイルム側である装飾片被覆面10に粗さ400メッシュの多数の微細な凹凸模様111.111...を形成した装飾片被覆フイルム1を準備した。そしてこれを、その表面に押花装飾片2が配置され、しかも表面に正目の木目模様(基材模様)32を有する厚みが5cmの桐板からなり、その表面に粗さ400メッシュの微細な凹凸模様111.111(311.311)...面を有するEVA製の透明性熱溶着性フイルム31を貼り合わせた基材3に、微細な凹凸模様111.111...面と111.111(311.311)...面とを相対向させ、その間に百日草を乾燥した押花装飾片2を介在させて重層し、これを加熱プレスによって110℃で、プレス圧2kg/平方cmで加熱加圧して、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、微細な凹凸模様111.111...と111.111...を通して開放端縁112と312とから排出させて、装飾片被覆フイルム1と基材3とを溶着させた。このようにして、押花装飾片2と基材模様32とを組み合わせた模様を鮮明に透視できる押花装飾片2入り装飾体ボードを製造することができた。
【0017】
【発明の効果】
この発明は以上のように構成されているので、装飾片被覆フイルム1の装飾片被覆面10を基材3に面させて、装飾片被覆フイルム1と基材3間に押花装飾片2を介在させて加熱加圧する際、装飾片被覆フイルム1と基材3間に介在された空気を、装飾片被覆フイルム1に形成された多数の微細な凹凸111.111...を通して、その側面11から排出させて、装飾片被覆フイルム1を装飾片2の形状に沿って軟化密着させて溶着できる。したがって、押花装飾片2が厚手で立体的なものであっても、押花装飾片2に隣接して、装飾片被覆フイルム1と基材3間に空気が封入されることなく、押花装飾片2に対する保形性、保持性が良好で立体感に優れた装飾体を提供できる。このようにして請求項1?3のいずれかによって提供される装飾体は、障子紙、提灯、電灯の笠張り等のインテリア商品としては勿論、ハガキ、便箋、封筒等の筆記可能な書紙、カ-ド、シ-ル、ボード等の装飾品としても有用である。
【0018】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における装飾片被覆フイルムの見取り図である。
【図2】実施例1における装飾体の成形状態を示す要部断面図である。
【図3】実施例1によって成形された装飾体の要部断面である。
【図4】実施例1によって成形された装飾体の平面である。
【図5】実施例2における装飾体の成形状態を示す要部断面図である。
【図6】実施例2によって成形された装飾体の要部断面である。
【図7】実施例2によって成形された装飾体の平面である。
【図8】従来例によって成形された装飾体の要部断面である。
【符号の説明】
1.装飾片被覆フイルム。10...装飾片被覆面。
11...透明性熱溶着性フイルム。111...微細な凹凸模様。
112...開放端縁。12.補強材。2.装飾片。3.基材。
31...透明性熱溶着性フイルム。
311.微細な凹凸模様。312...開放端縁。32.基材模様。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-07-29 
結審通知日 2013-07-31 
審決日 2013-08-19 
出願番号 特願2002-107740(P2002-107740)
審決分類 P 1 113・ 121- YAA (B44C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 正博金澤 俊郎  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 刈間 宏信
菅澤 洋二
登録日 2009-06-19 
登録番号 特許第4324721号(P4324721)
発明の名称 装飾体の製造法  
代理人 清水 喜幹  
代理人 鷺 健志  
代理人 野村 明代  
代理人 粕川 敏夫  
代理人 野村 明代  
代理人 鷺 健志  

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