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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A01N
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A01N
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01N
管理番号 1288897
審判番号 無効2012-800116  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-07-24 
確定日 2014-02-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4092591号発明「農薬の省力的施用方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は,平成18年5月12日(優先権主張 平成17年6月1日,平成18年4月21日)に,名称を「農薬の省力的施用方法」とする発明について特許出願(特願2006-133554号)されたものであって,平成20年3月14日に,特許第4092591号として設定登録がなされた(請求項の数6。以下,その特許を「本件特許」といい,その明細書を「本件明細書」といい,特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」といい,特許権者である日産化学工業株式会社を「被請求人」という。)。
本件特許について,石原産業株式会社(以下,「請求人」という。)から,本件無効審判の請求がなされた。その手続の経緯は以下のとおりである。

平成24年 7月24日 審判請求書・甲第1?22号証提出(請求人)
平成24年10月19日 審判事件答弁書(被請求人)
同日 訂正請求書(被請求人)
平成24年10月31日 手続補正書(被請求人)
平成24年12月10日 審判事件弁駁書(請求人)
平成25年 1月18日 審理事項通知書
平成25年 2月12日 口頭審理陳述要領書・乙第1?2号証提出
(被請求人)
平成25年 2月15日(差出日,書面の日付は平成25年2月12日)
口頭審理陳述要領書・甲第26?29,32?
36号証提出,甲第5号証の1,
第6号証の3,第17号証再提出(請求人)
平成25年 2月22日(差出日,書面の日付は平成25年2月20日)
上申書・甲第23?25,30,31号証提出
(請求人)
平成25年 2月22日 上申書(被請求人)
平成25年 2月26日 上申書・甲第9号証再提出(請求人)
平成25年 2月26日 口頭審理
同日 補正許否の決定
平成25年 3月 1日 上申書・甲第37号証提出,甲第2号証再提出
(請求人)
平成25年 3月12日 上申書(被請求人)
平成25年 4月 2日 審決の予告

平成25年 6月10日 訂正請求書(被請求人)
同日 上申書(被請求人)
平成25年 7月22日 審判事件弁駁書(請求人)
平成25年 8月20日 無効理由通知書
平成25年 9月 2日 職権審理結果通知書
平成25年 9月24日 訂正請求書(被請求人)
同日 意見書(被請求人)
平成25年10月 4日 意見書(請求人)
平成25年11月14日 審判事件弁駁書(請求人)

第2 訂正の可否についての当審の判断
1 訂正の内容
被請求人は,審判長が特許法第153条第2項の規定により無効理由を通知し,被請求人が意見書を提出するために指定した期間内である平成25年9月24日に訂正請求書を提出して,本件明細書及び本件特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり一群の請求項ごとに訂正することを求めた(以下,「本件訂正」という。)。
なお,平成24年10月19日付け,平成25年6月10日付けの訂正請求は,特許法第134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなす。
訂正の内容は,以下のとおりである。

(1)訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1について,
「【請求項1】
3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミドおよびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、該農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。」を,
「【請求項1】
3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミドおよびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、該農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。」と訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項5について
「【請求項5】
苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?600mlの容量で、農薬の有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布することを特徴とする請求項1または2に記載の防除方法。」を,
「【請求項5】
98株の苗あたり500ml?1000mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?600mlの容量で、農薬の有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布することを特徴とする請求項1または2に記載の防除方法。」と訂正する。

(3)訂正事項3
本件特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(4)訂正事項4
本件特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5
本件明細書の段落【0023】の記載について,
「〔16〕 農薬有効成分が根こぶ病菌に対して防除活性を持つものである上記〔1〕いし〔12〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。」を,
「〔16〕 農薬有効成分が根こぶ病菌に対して防除活性を持つものである上記〔1〕ないし〔12〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。」と訂正する。

3 判断
上記訂正事項の適否について検討する。

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は,本件特許請求の範囲の請求項1において,「該農薬有効成分の施用量」を「100株の苗あたり0.1g?5g」から,「100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5g」と訂正するとともに,「該農薬有効成分の施用量」を「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量」から,「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」と訂正するものであって,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項
訂正事項1のうち,「該農薬有効成分の施用量」を「100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5g」とする訂正事項については,願書に最初に添付した明細書の【0046】に,「上記農薬有効成分の施用量は、限定されるものではないが、100株の苗あたり通常・・・さらに好ましくは0.1?5gである。また、1800cm^(2)あたりでは、通常・・・さらに好ましくは0.1?5gである。」と記載されていたことから,願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
また,訂正事項1のうち,「該農薬有効成分の施用量」を「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」とする訂正事項は,願書に最初に添付した特許請求の範囲の【請求項7】に,「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の施用方法。」と記載され,さらに,願書に最初に添付した明細書の【0045】には,「1800cm^(2)あたりの薬液施用量は、・・・より好ましくは20?1100ml」と記載され,【0066】?【0071】には,「以下の実施例で用いた供試土壌(汚染土壌)及び供試植物、並びに化合物Aの顆粒水和剤の製造例は以下の通りである。
・・・
供試植物:セルトレイ(苗98株/トレイ、1800cm^(2)/トレイ)内で3?4葉期まで育成したハクサイ(品種:無双)
・・・

表1に示すとおり、化合物A顆粒水和剤またはシアゾファミド懸濁剤のいずれの薬剤を用いた場合でも、散布薬液量を0.5L/トレイとしたものが最も発病度が低く、優れた防除価を示した。」と記載されているから,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500mlの容量とすることが記載されているといえる。
そうすると,「該農薬有効成分の施用量」を「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」とすることも,願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
よって,訂正事項1は,願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲の変更又は拡張
訂正事項1は,上記アで述べたように,請求項1において,特許請求の範囲を減縮するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は,訂正後の請求項1を引用する請求項5において,
「農薬有効成分の施用量」を「98株の苗あたり500ml?1000mlの容量」とする発明特定事項を追加するとともに,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?600mlの容量」を「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?600mlの容量」と訂正するものであって,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項
訂正事項2の「農薬有効成分の施用量」を「98株の苗あたり500ml?1000mlの容量」及び「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?600mlの容量」とすることについては,願書に最初に添付した明細書の【0045】には,「1800cm^(2)あたりの薬液施用量は、・・・更に好ましくは20?600ml」と記載され,【0066】?【0071】には,「以下の実施例で用いた供試土壌(汚染土壌)及び供試植物、並びに化合物Aの顆粒水和剤の製造例は以下の通りである。
・・・
供試植物:セルトレイ(苗98株/トレイ、1800cm^(2)/トレイ)内で3?4葉期まで育成したハクサイ(品種:無双)
・・・

表1に示すとおり、化合物A顆粒水和剤またはシアゾファミド懸濁剤のいずれの薬剤を用いた場合でも、散布薬液量を0.5L/トレイとしたものが最も発病度が低く、優れた防除価を示した。」と記載されているから,苗98株あたり500ml及び1000mlの容量とすること,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500mlの容量とすることが記載されているといえる。
そうすると,「農薬有効成分の施用量」を「98株の苗あたり500ml?1000mlの容量」及び「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?600mlの容量」とすることも,願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。
よって,訂正事項2は,願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲の変更又は拡張
訂正事項2は,上記アで述べたように,請求項5において,特許請求の範囲を減縮するものであるから,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3
訂正事項3は,訂正前の請求項6を削除するものであるから,特許請求の範囲を減縮しようとするものであって,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
さらに,訂正事項3は,明らかに,願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4
訂正事項4は,訂正前の請求項4を削除するものであるから,特許請求の範囲を減縮しようとするものであって,特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
さらに,訂正事項4は,明らかに,願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5
訂正事項5は,本件明細書の段落【0023】の「上記〔1〕いし〔12〕のうちいずれか1項」を「上記〔1〕ないし〔12〕のうちいずれか1項」とするものであって,「〔1〕いし〔12〕」が「〔1〕ないし〔12〕」の誤記であったことは,本件明細書の段落【0011】?【0022】,【0025】,【0026】において,すべて「ないし」と記載されていることから明らかであって,特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当し,また,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。
さらに,訂正事項5は,明らかに,願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第134条の2第1項の規定に適合し,特許法第134条の2第9項の規定によって準用する特許法第126条第5,6項の規定に適合するので,訂正を認める。

第3 本件発明
上記「第2」で述べたとおり,本件訂正が認められたので,本件特許の請求項1?3,5に係る発明(以下,「本件発明1」?「本件発明3」,「本件発明5」といい,合わせて「本件発明」という。)は,訂正後の特許請求の範囲の請求項1?3,5に記載された事項によって特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミドおよびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、該農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。
【請求項2】
農薬有効成分の水溶液または水性分散液が、農薬製剤を水で希釈して調製したものである請求項1に記載の防除方法。
【請求項3】
100株の苗あたり20ml?600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する請求項1または2に記載の防除方法。
【請求項5】
98株の苗あたり500ml?1000mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する請求項1または2に記載の防除方法。」

第4 請求の趣旨並びにその主張の概要及び請求人が提出した証拠方法
1 審判請求書,平成24年12月10日付け審判事件弁駁書,口頭審理陳述要領書,上申書,平成25年7月24日付け審判事件弁駁書,同年10月4日付け意見書,同年11月14日付け審判事件弁駁書に記載した無効理由の概要

請求人が主張する請求の趣旨は,
特許第4092591号の特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明についての特許を無効にする。審判請求費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」と認める(審判請求書,第1回口頭審理調書「請求人 1」参照)。
そして,請求人が審判請求書で主張していた無効理由1?3,5のうち,本件優先日前に公然実施された発明に基づく無効理由については,口頭審理において,取り下げられ,被請求人もこの取下げに同意した(第1回口頭審理調書「請求人 3」,「被請求人 3」参照)ので,口頭審理の時点で請求人が主張する無効理由1?8は,概略以下のとおりであった。

(1)無効理由1
訂正後の本件請求項6に係る発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,
よって,訂正後の本件請求項6に係る発明についての特許は,同法第29条の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(2)無効理由2
訂正後の本件請求項6に係る発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであり,
よって,訂正後の本件請求項6に係る発明についての特許は,同法第29条の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3
訂正後の本件請求項1ないし3,5に係る発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
よって,訂正後の本件請求項1ないし3,5に係る発明についての特許は,同法第29条の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(4)無効理由4
訂正後の本件請求項1ないし3,5,6に係る発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第8号証,甲第9号証(いずれかが主引用発明)及び甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
よって,訂正後の本件請求項1ないし3,5,6に係る発明についての特許は,同法第29条の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(5)無効理由5
訂正後の本件請求項1ないし3,5,6に係る発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2,8,9号証(いずれかが主引用発明),甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証,甲第11?14号証,甲第16号証の2,3,甲第22号証の1?5に記載された発明及び本件優先日前に電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第17号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
よって,訂正後の本件請求項1ないし3,5,6に係る発明についての特許は,同法第29条の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(6)無効理由6
訂正後の本件請求項1ないし3,5に係る発明は,本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第18号証(主引用発明)及び甲第2,4,8,9,19号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,
よって,訂正後の本件請求項1ないし3,5に係る発明についての特許は,同法第29条の規定に違反してされたものであって,同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。

(7)無効理由7
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,使用する土壌,薬剤量と薬液量との関係,使用する苗育成用容器,薬剤濃度,本件明細書記載の試験例の観点で,当業者が訂正後の本件請求項1ないし3,5,6に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから,特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく,
よって,本件の特許が同法第36条第4項第1号の要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであって,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

(8)無効理由8
本件特許請求の範囲の記載は,使用する土壌,薬剤量と薬液量との関係,使用する苗育成用容器,薬剤濃度,本件明細書記載の試験例の観点で,訂正後の本件請求項1ないし3,5,6の特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではないから,特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく,
よって,本件の特許が同法第36条第6項の要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであって,同法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

口頭審理を経て審決予告がなされた後に,被請求人から平成25年6月10日付けで訂正請求がなされ,当審からの無効理由通知に対して,さらに,被請求人から同年9月24日付けで訂正請求がなされた。
そして,審決予告後に,請求人が提出した平成25年7月22日付けの審判事件弁駁書,同年10月4日付けの意見書,同年11月14日付けの審判事件弁駁書の内容からして,請求人は,訂正後の請求項1?3,5に対して,依然として無効理由3?8の無効理由を主張しているものと認める。

2 請求人の提出した証拠方法
請求人の提出した証拠方法は,以下のとおりである。

(1)審判請求書で提出した証拠方法
甲第1号証の1 ランマンフロアブル農薬登録票 登録番号第20624号,平成13年12月20日付け交付
甲第1号証の2 ランマンフロアブル農薬登録票 登録番号第20624号,平成14年12月24日付け交付
甲第2号証 石原の農薬 2003年度版,石原産業株式会社,はじめに,目次,第48?49頁
甲第3号証 佐藤博之著,セル苗生産と課題,シンポジウム セル成型苗と病害虫防除対策 講演要旨,平成13年1月12日,社団法人日本植物防疫協会,第1?16頁
甲第4号証 農薬適用一覧表 2004年度版,平成16年10月28日,社団法人日本植物防疫協会,第56?67,70?74,158?159,164?165,190?191,232?233,350?351,374?375,414?415,418?419,584?593,598?599頁
甲第5号証の1 平成16年度試験研究成績書(農業環境),神奈川県農業総合研究所,平成17年3月(平成17年8月23日 国立国会図書館受入),第33?34頁
甲第5号証の2 スタークル○R(審決注:「○文字内にR」,以下同じである。)/アルバリン○R剤のハモグリバエ類防除への利用方法,今月の農業 12月号,2004年,第50?51頁
甲第5号証の3 豊嶋悟郎著,セル成型苗における害虫の発生と防除対策,今月の農業 2月号,2003年,第59?63頁
甲第6号証の1 機械移植栽培におけるキャベツ根朽病のセルトレイ消毒及び薬剤散布による発病防止,平成10年度近畿中国農業研究成果情報,平成11年8月20日(平成11年9月17日 国立国会図書館受入),近畿中国農業試験研究推進会議,中国農業試験場,第125?126頁
甲第6号証の2 山内智史著,キャベツのセル成型苗の育苗中に発生する病害 ○2病害の防除技術,今月の農業 1月号,1999年,第117?121頁
甲第6号証の3 中野智彦著,セル成型苗の育苗におけるセルトレイの殺菌および薬剤処理によるキャベツ根朽病の防除,関西病害虫研究会報,第41号,1999年,第47?48頁
甲第6号証の4 中野智彦著,ハクサイ炭そ病とキャベツ根朽病のセル成型苗における発生と薬剤および耕種的防除,今月の農業 9月号,2001年,第32?37頁
甲第6号証の5 山内智史ら著,水管理および薬剤処理によるキャベツセル成型苗の立枯症状の抑制,北日本病虫研報,第49号,1998年,第57?60頁
甲第6号証の6 須永哲央ら著,蛍光性Pseudomonasによるレタスの生育促進と病害防除,栃木県農業試験場研究報告,第46号,1997年,第37?41頁
甲第6号証の7 窪田昌春ら著,キャベツに適用できる殺菌剤の黒すす病防除効果,関西病害虫研究会報,第44号,2002年,第1?5頁
甲第7号証 竹川昌宏ら著,育苗時のわい化剤処理が越冬初夏どりキャベツのわき芽発達に及ぼす影響,近畿中国農業研究,第102号,平成13年9月,第22?26頁
甲第8号証 特開2005-82479号公報
甲第9号証 Sigeru Mitani etc., Effects of cyazofamid against Plasmodiophora brassicae Woronin on Chinese cabbage, Pest Managemet Science, Vol.59, 2003, p.287-293
甲第10号証 吉井博作成,実験成績証明書,平成24年6月7日
甲第11号証 小林政信著,水稲における施用技術の開発の現状,シンポジウム 水稲病害虫防除戦略の現状と展望,平成13年1月11日,社団法人日本植物防疫協会,第1?7頁
甲第12号証 清水寛二ら著,カブ根こぶ病の防除法の改善に関する研究(第2報)薬剤による防除,滋賀県農業試験場研究報告,第23号,1981年12月,第63?69頁
甲第13号証の1 平成9年度 農薬委託試験計画書,平成9年2月,社団法人日本植物防疫協会,第122頁(審決注:甲第13,14号証の枝番は当審が付した。以下同じである。)
甲第13号証の2 平成10年度 農薬委託試験計画書,平成10年2月,社団法人日本植物防疫協会,第115頁
甲第13号証の3 平成11年度 農薬委託試験計画書,平成11年2月,社団法人日本植物防疫協会,第122頁
甲第13号証の4 平成12年度 農薬委託試験計画書,平成12年2月,社団法人日本植物防疫協会,第106,162頁
甲第13号証の5 平成13年度 農薬委託試験計画書,平成13年2月,社団法人日本植物防疫協会,第151頁
甲第14号証の1 平成10年度 農薬委託試験計画書,平成10年2月,社団法人日本植物防疫協会,第122頁
甲第14号証の2 平成11年度 農薬委託試験計画書,平成11年2月,社団法人日本植物防疫協会,第85頁
甲第15号証 水稲稚苗育成時における立枯病防止に関する試験成績:試験研究成果一覧,一般課題S45(S44年度)
甲第16号証の1 農薬ガイド,No.106/B,2003年8月30日
甲第16号証の2 田中文夫著,北海道における病害虫防除の課題と対策,シンポジウム 防除と農薬をめぐる最近の話題 講演要旨,平成15年9月2日,社団法人日本植物防疫協会,第26?36頁
甲第16号証の3 藪哲男ら著,粒剤セル育苗箱処理と液剤高濃度少量散布によるブロッコリー害虫の省力防除,石川県農林水産研究成果集報,第3号(通巻13号),平成13年3月,(平成13年7月31日 国立国会図書館受入),石川県農林水産技術会議,第64?65頁
甲第17号証 標準技術集(農薬製剤技術)データベース,特許庁,2001年8月28日更新,http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijyutsu/nouyaku/0032.html
甲第18号証 特開2004-323460号公報
甲第19号証 特開平8-71号公報
甲第20号証 南部哲男著,ペーパーポット育苗・移植技術の現状,シンポジウム セル成型苗と病害虫防除対策 講演要旨,平成13年1月12日,社団法人日本植物防疫協会,第39?52頁
甲第21号証 吉井博作成,実験成績証明書,平成24年6月7日
甲第22号証の1 木村和夫ら著,PCNB剤によるハクサイ根瘤病防除試験,北日本病害虫研究会年報,第13号,1962年,第154?155頁
甲第22号証の2 茂木静夫ら著,PCNB乳剤・水和剤によるハクサイ根瘤病防除効果,北日本病害虫研究会年報,第14号,1963年,第136?137頁
甲第22号証の3 佐藤靖男ら著,PCNB乳剤・水和剤によるハクサイ根瘤病防除試験(第2報),北日本病害虫研究会年報,第15号,1964年,第166?167頁
甲第22号証の4 農薬ハンドブック 1992年版,平成4年7月30日,財団法人日本植物防疫協会,第242?243頁
甲第22号証の5 農薬の手引 1994年版,化学工業日報社,第255頁
なお,甲第2号証,甲第5号証の1,甲第6号証の1,甲第16号証の3,甲第17号証は再提出され,甲第9号証の翻訳文が全文として再提出された。
また,甲第15号証及び甲第16号証の1は撤回された(第1回口頭審理調書「別紙2 5(1)」参照)。

(2)口頭審理陳述要領書(平成25年2月15日付け)で提出した証拠方法
甲第5号証の1 同上(再提出)
甲第6号証の1 同上(再提出)
甲第16号証の3 同上(再提出)
甲第17号証 同上(再提出)
甲第26号証 平成14年度 農薬効果確認ほ成績検討会資料(殺虫・殺菌剤関係実施実績書),平成14年12月18日,19日,岡山県植物防疫協会,第1,63?64,76頁
甲第27号証の1 平成14年度 病害虫防除・生育調節剤技術確認ほ調査成績書,第10?12頁(審決注:甲第27,29号証の枝番は当審が付した。以下同じである。)
甲第27号証の2 平成15年度 病害虫防除・生育調節剤技術確認ほ調査成績書,第30頁
甲第28号証 JA全農 肥料農業部農薬技術・安全課編,クミアイ農薬総覧2005,平成16年12月1日,株式会社全国農村教育協会,第1020?1021頁
甲第29号証の1 農薬取締法(第1?3条,第6条,第6条の7,第7条,第9条,第10条,第11条及び第12条)
甲第29号証の2 農薬取締法施行規則(第4条の3及び第7条)
甲第29号証の3 農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(第2条及び第9条)
甲第32号証 平成16年度 新農薬実用化試験成績(稲・野菜等)-病害防除-(I 北海道地域),平成16年11月10日,社団法人日本植物防疫協会,第20?21頁
甲第33号証 平成19年度 新農薬実用化試験成績(稲・野菜等)-病害防除-(V 近畿・中国地域),平成19年11月15日,社団法人日本植物防疫協会,第5?6,125?126,129?130,133?136頁
甲第34号証 根こぶ病対象セル苗灌注処理効果試験まとめ,平成19年度 新農薬実用化試験成績(近畿・中国地域)
甲第35号証 行本峰子ら著,原色 作物の薬害,1985年8月20日,株式会社全国農村教育協会,第90?91,124?125,146?147,170?171頁
甲第36号証 「農薬散布技術」編集委員会編,農薬散布技術,平成10年3月2日,社団法人日本植物防疫協会,第124?127,202?207頁
なお,甲第26号証,甲第27号証の1?2,甲第28号証は,口頭審理時の無効理由1?3,5において,公然実施された発明を証明するための証拠(口頭審理陳述要領書第3頁第4?18行参照)であり,公然実施された発明に基づく主張は取り下げられた(第1回口頭審理調書「請求人 3」,「被請求人 3」参照)ので,これらの証拠も撤回されたものと認める。

また,甲第32号証?甲第34号証については,無効理由5において,本件発明の効果の顕著性を否定するための補強証拠として,平成25年2月26日付けの補正許否の決定により,証拠の追加が許められた(第1回口頭審理調書「補正許否の決定 2」参照)。
さらに,甲第32号証?甲第35号証については,無効理由7,8において,その主張を補強する証拠として,平成25年2月26日付けの補正許否の決定により,証拠の追加が許められた(第1回口頭審理調書「補正許否の決定 3」参照)。

(3)上申書(平成25年2月22日付け)で提出した証拠方法
甲第23号証 石原バイオサイエンス株式会社普及部員の営業日誌報告,2003年4月15日作成
甲第24号証 石原バイオサイエンス株式会社普及部発信文書,平成22年8月30日
甲第25号証の1 ランマンフロアブル500mlのラベルの第2版及び第3版(審決注:甲第25号証の枝番は当審が付した。以下,同じである。)
甲第25号証の2 上記ラベルの検収確認書
甲第25号証の3 上記ラベルを使用して製造されたランマンフロアブル500mlに係る請求書
甲第30号証 石原産業株式会社研究部門の従業員間のE-mail文書,2005年2月1日
甲第31号証 石原バイオサイエンス株式会社普及部作成文書「所管推進上の技術課題について」,2003年5月13日
なお,甲第25号証の1?3は,口頭審理時の無効理由1?3,5において,公然実施された発明を証明するための証拠(口頭審理陳述要領書第3頁第4?18行参照)であり,公然実施された発明に基づく主張は取り下げられた(第1回口頭審理調書「請求人 3」,「被請求人 3」参照)ので,これらの証拠も撤回されたものと認める。

(4)上申書(平成25年2月26日付け)で提出した証拠方法
甲第9号証 同上(翻訳文を全文として再提出)

(5)上申書(平成25年3月1日付け)で提出した証拠方法
甲第2号証 同上(再提出)
甲第37号証 処理ムラを説明するための模式図

(6)意見書(平成25年10月4日付け)で提出した証拠方法
参考資料1 秋谷良三編著,蔬菜園芸ハンドブック-増改訂版-,昭和53年7月1日,株式会社養賢堂,第62?63頁
参考資料2 竹川昌宏ら著,キャベツセル成型苗の徒長防止のための生育調節剤利用,兵庫県農業技術センター研究報告[農業編],第44号,1996年,第35?38頁
参考資料3 信岡尚ら著,セル苗利用による野菜の接ぎ木生産の効率化に関する研究(第2報),奈良県農業試験場研究報告,第26号,1995年,第17?22頁
参考資料4 平成10年度 春夏作試験成績概要,1999年3月,福島県農業試験場いわき支場,第5?6頁
参考資料5 星川清親著,水稲の育苗,昭和62年1月5日,社団法人家の光協会,第64?65頁
参考資料6 松田明著,野菜の土壌病害-原因と対策,昭和56年3月5日,社団法人農山漁村文化協会,第288?289頁

第5 当審が通知した無効理由
平成25年8月20日付けの無効理由通知書で,当審が通知した無効理由の概要は,以下のとおりである。

[無効理由A]発明の詳細な説明の記載は,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり100?2500株の苗が存在する態様を含む,本件発明1?3,5を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく,特許法第36条第4項第1号に適合しないから,特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してなされたものであって,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

[無効理由B]特許請求の範囲の記載は,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり100?2500株の苗が存在する態様を含む,本件発明1?3,5が,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,特許法第36条第6項第1号に適合しないから,特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してなされたものであって,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきである。

第6 答弁の趣旨並びにその主張の概要及び被請求人が提出した証拠方法
1 審判事件答弁書,口頭審理陳述要領書,平成25年2月22日付けの上申書,同年3月12日付けの上申書,同年6月10日付けの上申書,同年9月24日付けの意見書でした答弁の趣旨並びにその主張の概要
被請求人が主張する答弁の趣旨は,「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」であると認める(審判事件答弁書,第1回口頭審理調書「被請求人 1」参照)。
そして,被請求人は,審決予告の後に,2回の訂正請求をするとともに,平成25年6月10日付けの上申書,同年9月24日付けの意見書を提出して,訂正後の請求項1?3,5に係る発明については,請求人が主張する無効理由3?8,及び当審が通知した無効理由A,Bについては,いずれも理由がない旨の主張をしていると認める。

2 被請求人が提出した証拠方法
被請求人が提出した証拠方法は,以下のとおりである。

(1)口頭審理陳述要領書(平成25年2月12日付け)で提出した証拠方法
乙第1号証 宍戸孝ら編,農薬科学用語事典,平成6年6月15日,社団法人日本植物防疫協会,第50,103,154,196頁
乙第2号証の1 本件明細書の試験例で用いられた「セルトレイ(苗98株/トレイ,1800cm^(2)/トレイ)」を撮影した写真
乙第2号証の2 ハクサイの苗が育成されている,本件明細書の試験例で用いたセルトレイの状態を撮影した写真
乙第2号証の3 本件明細書の試験例1で為された「薬液を各トレイごとに供試植物の苗の株元に噴霧散布する様子」を撮影した写真及び本件明細書の試験例2で為された「薬液をセルトレイに潅注する様子」を撮影した写真
乙第2号証の4 本件明細書の試験例1に用いたスプレーガンを撮影した斜視図及びスプレーガンのノズルからの噴霧の様子を示すモデル図

第7 無効理由についての当審の判断
1 無効理由3について
(1)刊行物等の記載事項
ア 甲第2号証について
(ア)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には,以下の事項が記載されている。
(2a)「平素は弊社農薬をご愛用いただき、ありがとうございます。
ここに2003年度版「石原の農薬」をお届けいたしますので、ご活用くださいますよう、お願い申し上げます。
なお、本書は、2003年3月10日現在登録の品目について、下記の内容で取りまとめております。」(「はじめに」第1?5行)
(2b)「

」(第48頁第1?2行と枠)
(2c)「2)低い処理濃度ですぐれた病害防除効果
実用処理濃度は、50?100ppm(2,000?1,000倍希釈)です。これは、既存のべと・疫病剤と比較して低い処理濃度です。」(第48頁枠の下を第1行として,第4?6行)
(2d)「

」(第49頁「●適用病害と使用方法」の表)

(イ)甲第2号証が本件優先日前に頒布された刊行物であるかについて
甲第2号証の「はじめに」において,「平素は弊社農薬をご愛用いただき、ありがとうございます。
ここに2003年度版「石原の農薬」をお届けいたしますので、ご活用くださいますよう、お願い申し上げます。」(摘記2a参照)と記載されるように,甲第2号証は,石原産業株式会社が製造する農薬を販売するためのカタログであると推認することができる。そして,カタログは広く一般の需用者に頒布するために作られることが社会通念上の常識であるといえ,この「2003年度版「石原の農薬」」は,「本書は、2003年3月10日現在登録の品目について、下記の内容で取りまとめております。」と記載されている(摘記2a参照)ので,遅くとも2003年度末の平成16年3月までに,頒布されたものと推認することができる。
また,甲第2号証に記載されている「適用病害と使用方法」の内容(摘記2d参照)が,平成14年12月24日付けで書替交付された農薬登録票(甲第1号証の2)の「別記」の内容と一致していること,さらに,独立行政法人農薬検査所が監修し,平成16年10月28日に発行された「農薬適用一覧 2004年度版」(甲第4号証)にも,同様の内容が記載されている(第158?159頁,「シアゾファミド水和剤【ランマンフロアブル】」の項参照)ことからすれば,「シアゾファミド水和剤 ランマンフロアブル」が,平成14年12月24日付けで農薬登録されたことを受けて,販売のためのカタログである「石原の農薬 2003年度版(平成15年度)」(甲第2号証)にその内容が記載され,その甲第2号証は遅くとも平成15年度末の16年4月までに一般需用者に頒布され,平成16年10月28日に発行された甲第4号証に,その内容が記載されたとするのが自然である。
よって,甲第2号証は,本件優先日である平成17年6月1日以前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であると認める。

なお,被請求人は,請求人は,不特定多数の者が甲第2号証を見得るような状態におかれたことを何ら証明していないから,甲第2号証は本件優先日前に頒布されたものであるとはいえないと主張している(平成25年2月22日付け上申書第3頁第15?23行)。
しかしながら,上述のとおり,甲第2号証,甲第1号証の2及び甲第4号証の記載内容及び社会通念上の常識から判断して,甲第2号証は本件優先日前に頒布されたものと推認でき,また,この認定を否定する証拠を被請求人は何も示していない。
よって,被請求人の上記主張は採用できない。

イ 甲第3号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第3号証には,以下の事項が記載されている。
(3a)「セル容量はトレイ当たりのセル数に応じて少なくなり,小さいもので1.5mlから最大約40mlまでの幅があって,主に花きでは200セル以上,果菜類では30?200穴,葉菜類は100?300穴程度のトレイがそれぞれ用いられている。」(第4頁下から第4行?末行)
(3b)「

」(第5頁表5)
(3c)「(5)灌水技術
大量の苗を管理するセル苗生産では灌水装置の導入により省力化が図られる。現在市販されている装置は上面散水方式と底面給水方式に分けられ(表10),タイマー,PFセンサー等による制御の他,機種によっては液肥の農薬の同時散布が可能である。灌水量は通常,トレイ当たり100?400mlの範囲で調整されるが,実際にはセルサイズ,作物の大きさ,天候,培地の種類などに応じて変化し,管理者の判断によるところが大きい。さらに,セル苗は培地の微妙な混合・充填の違いでセルごとの乾燥むらが出やすく,人手による補正が必要であり,その管理は難しい。」(第7頁下から第3行?第8頁第7行)
(3d)「(2)セル苗用培地
セル苗は搬送性向上のために軽量化が望まれ,また限られた根域で管理されるために培地の水分,pHや養分などの変動が大きいことから,培地の品質が重要となる(表6)。セル苗生産者は培地を自家配合で作製できるが,調整の手間や病害,品質不良による生産ロスの危険性を考えると,信頼できる業者から購入した方が結果としては安定生産につながり有利である。
近年は,品質管理された多種多様なセル苗用培地が市販されており,材料としては比重の小さいピートモスを主体に,バーミキュライト,パーライトなどの土壌改良材や山土を一定割合で混合し,保水性,通気性など物理性の改善や移植床や圃場での活着促進を図っている。」
(3e)「



ウ 甲第4号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第4号証には,以下の事項が記載されている。
(4a)「キャベツ,メキャベツ
農薬名 使用時期 希釈倍数使用量
【商品名】 【使用回数】 【処理量】
・・・
シアゾファミド水和剤 定植前日?定植当日 500倍
【ランマンフロアブル】 【1回】 【2l/セル成型
育苗トレイ
(30×60cm)】
・・・
ジノテフラン水溶剤 定植時 50?100倍
【・・・(省略)・・・】 【1回】 0.5l/セル成型
育苗トレイ(30×
59×4.4cm・
使用土壌約3l)1箱】」(第158頁「シアゾファミド水和剤」,「ジノテフラン水溶剤」の項)
(4b)「キャベツ,メキャベツ
農薬名 使用時期 希釈倍数使用量
【商品名】 【使用回数】 【処理量】
・・・
ベンフラカルプ
マイクロカプセル剤 定植時 100倍
【・・・(省略)・・・】 【1回】 【0.5l/セル成型
育苗トレイ(30×
59×4.4cm・
使用土壌約3l)1箱】
・・・
ポリオキシン水溶剤 は種覆土後 1000倍
【・・・(省略)・・・】 【1回】 【500ml/希釈液
/箱】
子葉展開期以降 2500倍
【2回以内】 【500ml/希釈液
/箱】」(第164頁「ベンフラカルプマイクロカプセル剤」,「ポリオキシン水溶剤」の項)
(4c)「はくさい
農薬名 使用時期 希釈倍数使用量
【商品名】 【使用回数】 【処理量】
・・・
ベンフラカルプ 定植時 100倍
マイクロカプセル剤 【1回】 【0.5l/セル成型
【・・・(省略)・・・】 育苗トレイ(30×
59×4.4cm・
使用土壌約3l)1箱】
」(第190頁「ベンフラカルプマイクロカプセル剤」の項)

エ 甲第5号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第5号証の1?3には,以下の事項が記載されている。
(5a)「(1)新農薬の実用化試験
ク ハクサイのハイマダラノメイガに対するフィプロニル水和剤及びアセタミプリド粒剤の育苗トレイ施用での防除効果の検討」(甲第5号証の1:第33頁枠内の第2?4行)
(5b)「3 結果の概要
(本年度の結果)
(1)フィプロニルフロアブル(50倍、0.5L/箱、定植直前セルトレイ灌注)は、処理15、21日後の密度指数で、無処理区と比較して効果が高く、PAP乳剤(1,000倍)と比較して効果がまさっていた(表1)。
(2)フィプロニルフロアブル(100倍、0.5L/箱、定植直前セルトレイ灌注)は、処理15、21、28日後の密度指数で、無処理区と比較して効果があり、PAP乳剤(1,000倍)と比較して効果がまさっていた(表1)。」(甲第5号証の1:第33頁第22?28行)
(5c)「特に、現地で要望が高いレタスのナモグリバエに対する防除方法として、スタークル○R/アルバリン○R顆粒水溶剤のセルトレー灌注処理が、登録申請中です(平成十六年十月現在)。
これは顆粒水溶剤の希釈液(五〇倍ないし一〇〇倍)を、セルトレー当たり五〇〇cc定植時に灌注するという処理方法です。」(甲第5号証の2:第51頁第1段第1行?第3段第3行)
(5d)「葉菜類のうち、アブラナ科のキャベツ・ハクサイとレタスについてセル成型苗での害虫の発生と防除対策について述べたい。」(甲第5号証の3:第59頁第1段第24?末行)
(5e)「多量の粒剤をセルトレイ一枚に処理すると、数ミリメートルの厚さで粒剤がトレイ上に散布された状態になり、使用者は処理量に対して不安感を持ったようである。・・・
そこで、現在、農薬登録の取得がはじまっている処理方法が、セルトレイへの灌注による処理である。規定希釈倍数の薬液を定植日前日あるいは当日にセルトレイ一箱当たり五〇〇ミリリットル灌注する処理方法である。この処理で薬剤成分をセル苗培土に吸収させ、粒剤をセル苗の株元に処理したのと同じ状態にする。・・・
現在、この処理方法で既登録の薬剤はベンフラカルプマイクロカプセル剤である(第四表、第五表参照)。使用方法は、本剤の一〇〇倍液を定植時にセル成型育苗トレイ一箱当たり五〇〇ミリリットルを灌注する。」(甲第5号証の3:第61頁第1段第5行?第62頁第1段第10行)

オ 甲第6号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第6号証の1?7には,以下の事項が記載されている。
(6a)「機械移植栽培におけるキャベツ根朽病のセルトレイ消毒及び薬剤散布による発病抑止
[要約]キャベツ機械移植栽培において問題となるキャベツ根朽病はセルトレイの温湯消毒ならびに薬剤散布によって育苗期での発病を抑えることができる。」(甲第6号証の1:第125頁枠内第1?3行)
(6b)「3.育苗期間中の薬剤処理の効果はチオファネートメチル水和剤を1セルトレイあたり100ml散布するのが有効である。」(甲第6号証の1:第125頁枠の下から第12?13行)
(6c)「試験一
・・・
○3接種五日後にバリダマイシン液剤の八〇〇倍液をセルトレイ一枚当たり六〇〇ミリリットル潅注処理(普通量潅水)した区を設け発病状況を調査した。」(甲第6号証の2:第118頁第1段第7行?第2段第11行)
(6d)「試験三
・・・
○3接種二、八日後にヒドロキシイソキサゾール液剤の一〇〇〇倍液をセルトレイ一枚当たり六〇〇ミリリットル潅注処理(普通量潅水)した区を設けた。」(甲第6号証の2:第119頁第1段第7行?第2段第11行)
(6e)「薬剤処理は病原菌接種の当日・7日後・14日後の3回,供試薬剤を1セルトレイあたり100ml散布し,ミスト灌水施設で管理した。薬剤処理の30日後に草丈と発病率,発病度を調査した。」(甲第6号証の3:第48頁左欄第3?6行)
(6f)「

」(甲第6号証の3:第48頁第3表)
(6g)「3)育苗期間中の薬剤処理の効果
・・・接種直後、七日後、一四後の三回、各供試薬剤を1セルトレイ当たり一〇〇ミリリットルを散布し、三〇日後に草丈と発病株率、発病度を調査した。潅水はミスト施設で管理した。」(甲第6号証の4:第34頁第4段第24行?第35頁第2段第1行)
(6h)「

」(甲第6号証の4:第35頁第6表)
(6i)「キャベツのセル成型苗生産において発生するRhizoctonia solaniおよびPythium aphanidermatumによる苗立枯症状(苗立枯病)と苗育苗期間中の水管理および薬剤処理との関係について検討した。R. solaniによる苗立枯病の防除には,育苗時に潅水量を制限するか,バリダマイシン液剤の800倍液をセルトレイ1枚当たり600ml潅注処理するのが有効であると考えられた。また,P. aphanidermatumの場合は潅水量を制限しても発病を抑えることはできなかったが,播種直後から2?3回,ヒドロキシイソキサゾール液剤の1000倍液をセルトレイ1枚当たり600ml潅注処理するのが有効と考えられた。」(甲第6号証の5:第57頁第5?11行)
(6j)「本研究は,レタス根面に定着性が高く抗菌活性を持つ蛍光性シュードモナスを用いてレタスの苗の生育促進とレタスすそ枯病の病害防除を試験したところ,いくつかの知見が得られたので報告する.」(甲第6号証の6:第38頁左欄第30?24行)
(6k)「4.潅注接種によるレタスセル苗の生育促進
ハルジョオンの根面から分離した5168,5171,5172,5174菌株を供試した.・・・滅菌水に懸濁した菌株の懸濁液(109cfu/ml,200mlに調製)を,セルトレーの苗の上から潅注した.」(甲第6号証の6:第38頁右欄第24?31行)
(6l)「5.潅注接種によるレタスすそ枯病防除
ハルジョオンの根面から分離した5168,5171,5172,5174菌株及びレタスの根面から分離した6035,6038,6043菌株を供試した.メトロミックス350を詰めた128穴セルトレーにレタスの種子を播種し,2日後に菌株の懸濁液(109cfu/ml,200mlに調製)を潅注した.」(甲第6号証の6:第38頁右欄第34?40行)
(6m)「2.キャベツのセル成型苗における各薬剤の防除効果
・・・黒すす病菌接種の1日前または2日後に,各薬剤(第1表)をセルトレイ1枚あたり約80ml噴霧した。接種の9日後に子葉の病徴を調査した。」(甲第6号証の7:第2頁左欄第4?15行)
(6n)「

」(甲第6号証の7:第2頁第1表)

カ 甲第7号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第7号証には,以下の事項が記載されている。
(7a)「実験1)わい化剤および根巻防止剤塗布トレイ使用がわき芽発達に及ぼす影響
・・・
わい化剤処理は,キャベツ苗の本葉1枚展開時に,茎葉全体にウニコナゾールPの5ppm溶液を1トレイ当たり15ml散布処理した.」(第22頁右欄第4行?第23頁左欄第3行)

キ 甲第17号証の記載事項
本件優先日前に電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第17号証には,以下の事項が記載されている。
(17a)「農薬の施用散布における標的となる病害虫、雑草もしくは非標的である作物とで選択性が存在することが必要である。図1に農薬の使用量と病原生物、害虫、雑草に対する防除効果および発生頻度との関係が示されている。防除効果を100%発揮する最小薬量と作物に薬害を生じない最大薬量との間(実用上の選択幅)が開いておれば、薬剤として防除対象に選択性があることになる。この選択性は栽培、気象、環境、散布条件により影響をうけるとともに、薬剤の種類により選択性と散布の方式は変わってくる。」(【技術分類】F-1-1(1)作物薬害低減化)

(2)甲第2号証に記載された発明(引用発明2)
甲第2号証には,
「有効成分」として「シアゾファミド」である「4-クロロ-2-シアノ-N,N-ジメチル5-p-トリルイミダゾール-1-スルホンアミド」が「9.4%(w/w)[10.0%(w/V)]」含まれた「シアゾファミド水和剤」(摘記2b参照)を,「はくさい」又は「キャベツ」を「適用作物」とし,「根こぶ病」を「適用病害」とし,「希釈倍数」を「500倍」とし,「使用量」が「セル成型育苗トレイ(30×60cm)」に「2l」であり,「使用時期」が「定植前日?当日」であり,「使用方法」が「灌注」である「シアゾファミド水和剤」の使用方法が記載されている(摘記2d参照)。
これを整理して記載すると,甲第2号証には,
「シアゾファミド(4-クロロ-2-シアノ-N,N-ジメチル5-p-トリルイミダゾール-1-スルホンアミド)を有効成分として10.0%(w/V)含むシアゾファミド水和剤を希釈倍数500倍として、セル成型育苗トレイ(30×60cm)に定植前日から当日に2l灌注で使用する、はくさい又はキャベツの根こぶ病の防除方法」の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1に対して
ア 対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「シアゾファミド(4-クロロ-2-シアノ-N,N-ジメチル5-p-トリルイミダゾール-1-スルホンアミド)を有効成分として10.0%(w/V)含むシアゾファミド水和剤」,「セル成型育苗トレイ」,「はくさい又はキャベツ」は,それぞれ,本件発明1の「シアゾファミドの農薬有効成分の水溶液または水性分散液」,「苗育成区画」,「畑作物」に相当する。
そうすると,本件発明1と引用発明2とを対比すると,両者は,
「3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミド(以下,「化合物A」と略称する。)およびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。」である点で一致し,
(i)前者が,「農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,後者が,
「農薬有効成分として10.0%(w/V)の水和剤の希釈倍数が500倍であって、セル成型育苗トレイ(30×60cm)に2l灌注で使用する」ものである点(以下,「相違点(i)」という。)で相違していることになる。

イ 相違点の検討
(ア)相違点(i)の実質的な相違点について
引用発明2の「セル成型育苗トレイ(30×60cm)」について具体的な記載が甲第2号証にはないが,甲第3号証には,「セル容器はトレイ当たりのセル数に応じて少なくなり,・・・葉菜類は100?300穴程度のトレイがそれぞれ用いられている。」(摘記3a参照),「セル苗の育苗トレイ標準規格(農林水産省)」として「128セル」,「200セル」,「288セル」の「セルタイプ」があり,その外枠は,いずれも「長辺」が「586mm」又は「590mm」で,「短辺」が「300mm」であることが記載されており(摘記3b参照)から,引用発明2の「セル成型育苗トレイ(30×60cm)」と育苗トレイ標準規格の外枠の長辺と短辺がほぼ一致しており,「はくさい又はキャベツ」は「葉菜類」であることからみて,引用発明2の「セル成型育苗トレイ(30×60cm)」は,「短辺」30cm,「長辺」60cmの「100?300穴」を持つセル苗育成トレイを使用していると推認できる。
そして,引用発明2においては,「農薬の有効成分」が10.0%(w/V)含まれている水和剤が500倍に希釈されているので,容量1に対して0.1/500,すなわち,2lの溶液には,0.4gのシアゾファミドが含まれており,これが100?300株の苗を植えることのできる「セル成型育苗トレイ(30×60cm)」に潅注されていることになる。
そうすると,引用発明2は,本件発明1の記載に合わせて整理すると,「農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.13?0.4gかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.4g」であり,「100株の苗あたり666?2000mlの容量」で,かつ,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2000mlの容量で」「潅注する」ものであるから,上記相違点(i)は,
農薬有効成分の施用量が,本件発明1が「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,引用発明2が,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2000mlの容量で」「潅注する」点で,少なくとも相違している。

(イ)引用発明2の薬液容量を変更する点に関して
引用発明2は,農薬登録された農薬の使用方法である。
そして,農薬取締法第7条及び農薬取締法施行規則第7条によれば,「農薬の登録に係る適用病害虫の範囲及び使用方法」として,「適用農作物等の種類ごとに」,「単位面積当たりの使用量の最高限度及び最低限度」,「希釈倍数(農薬の希釈をした場合におけるその希釈の倍数をいう。)の最高限度及び最低限度」,「含有する有効成分の種類ごとの総使用回数」を表示することが定められている(甲第29号証の1,2参照)。
また,農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令第2条によれば,農薬使用者は,農薬の使用時に適用作物以外に当該農薬を使用しない,特定の算式によって算出される量を超えて当該農薬を使用しない,最低限度を下回る希釈倍数で当該農薬を使用しないという基準を遵守することが定められている(甲第29号証の3参照,以下,農薬取締法及び農薬取締法施行規則,農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令を合わせて「農薬取締法等」という。)。
そして,甲第17号証の「防除効果を100%発揮する最小薬量と作物に薬害を生じない最大薬量との間(実用上の選択幅)が開いておれば、薬剤として防除対象に選択性があることになる。この選択性は栽培、気象、環境、散布条件により影響をうけるとともに、薬剤の種類により選択性と散布の方式は変わってくる。」(摘記17a参照)との記載からみれば,農薬登録された,引用発明2の根こぶ病の防除方法は,シアゾファミドという農薬有効成分を,根こぶ病という適用病害虫に対して,キャベツ,ハクサイという適用作物に用いた場合,薬害を及ぼさない範囲で,農薬有効成分が防除効果を発揮する,単位面積当たりの使用量,希釈倍数が定められたものということができ,ここで定められた「適用農作物」以外への適用や「単位面積当たりの使用量」,「希釈倍数」,「使用回数」を変更する動機付けがない。
むしろ,使用する薬剤量を変えずに単位面積当たりの薬液の容量を減らすと,結果的に,最低限度を下回る希釈倍数(より高い濃度)で当該農薬を使用することになるから,最低限度を下回る希釈倍数で当該農薬を使用を禁ずる農薬取締法等の点からみても,相違点(i)の構成を採用することには,阻害要因があったものといえる。
また,上記の農薬取締法等の規定や甲第17号証の記載によれば,農薬有効成分が異なる場合には,単位面積当たりの薬液の使用量(施用量)及び希釈倍数から算出される薬液の容量を,それ以外の農薬有効成分に,そのまま適用することができないのであるから,シアゾファミドや化合物Aではない農薬有効成分を用いて,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で潅注または散布する」ことが知られていたとしても,そのことによって,引用発明2の有効成分であるシアゾファミドの,苗育成区画面積1800cm^(2)あたりの容量を,2lから500ml?1100mlの範囲に変更することができる根拠とはならない。

(ウ)甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証の記載からの検討
請求人が引用する甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証の記載から,引用発明2において,苗育成区画面積1800cm^(2)あたりの薬液の容量を,2lから500ml?1100mlに変更することが当業者に容易であったと請求人が主張している点について,さらに検討する。

甲第4号証には,キャベツやハクサイにおいて,農薬を「セル成型育苗トレイ(30×59×4.4cm・使用土壌約3l)1箱」に,500mlの施用量で用いた例が記載されている(摘記4a?4c参照)。しかしながら,これらの使用例は,農薬有効成分が「シアゾファミド」でも,化合物Aでもない,別の農薬有効成分である。
また,甲第4号証には,請求人は,上記摘示の他にも,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」で用いた数多くの例が記載されているとしているが,これらのいずれも,「シアゾファミド」でも化合物Aでもない。

甲第5号証の1又は甲第5号証の2にも,「セルトレイ」あたり500mlの施用量で農薬有効成分の希釈液を使用することについて記載されている(摘記5a?5c参照)ものの,これらについても,農薬有効成分は,「フィプロニルフロアブル」,「スタークル○R」,「アルバリン○R」であって,「シアゾファミド」でも,化合物Aでもない。
甲第5号証の3には,「葉菜類のうち、アブラナ科のキャベツ・ハクサイとレタスについてセル成型苗での害虫の発生と防除対策」(摘記5d参照)において,「現在、農薬登録の取得がはじまっている処理方法が、セルトレイへの灌注による処理である。規定希釈倍数の薬液を定植日前日あるいは当日にセルトレイ一箱当たり五〇〇ミリリットル灌注する処理方法である」との記載がある(摘記5e参照)が,その前段の「多量の粒剤をセルトレイ一枚に処理すると、数ミリメートルの厚さで粒剤がトレイ上に散布された状態になり、使用者は処理量に対して不安感を持ったようである。」との記載(摘記5e参照)からすれば,従来,キャベツ・ハクサイとレタスについてセル成型苗での害虫の発生の防除方法として,粒剤の農薬を使用したが,それを農薬有効成分の薬液の潅注処理に切り替えるということを示唆するのみであって,ここで使用される農薬有効成分は,「ベンフラカルプマイクロカプセル剤」しか記載されていない(摘記5e参照)。

甲第6号証の1?7にも,セルトレイあたり80ml?800mlの施用量で農薬有効成分の溶液,懸濁液を用いた例が記載されている(摘記6a?6n参照)ものの,使用される農薬有効成分は,「チオファネートメチル水和剤」,「バリダマイシン」,「ヒドロキシイソキサゾール」,「トリフロホスメチル水和剤」,「ポリオキシン水和剤」,「イミノクタジンアルビシル酸塩」,「蛍光性シュードモナス」などであって,「シアゾファミド」でも化合物Aでもない。

甲第7号証には,「わい化剤処理」として,「キャベツ苗の本葉1枚展開時に,茎葉全体にウニコナゾールPの5ppm溶液を1トレイ当たり15ml散布処理した」ことが記載されている(摘記7a参照)のみである。

そうすると,甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証のいずれにも,「シアゾファミド」あるいは「化合物A」でもない農薬有効成分を「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが記載されるにとどまり,このような施用量で他の農薬有効成分も同様に使用できることを示唆する記載もないから,「シアゾファミド」を農薬有効成分として「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2000mlの容量で」「潅注する」引用発明2において,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者にとって容易になし得たということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから,効果について検討するまでもなく,本件発明1は甲第2号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない。

(3-2)本件発明2,3,5に対して
本件発明2,3,5は,いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含み,さらに限定したものであるから,本件発明1が甲第2号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない以上,本件発明2,3,5も同様に甲第2号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない。

(4)請求人の主張
ア 甲第4号証及び甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に基づく主張
請求人は,有効農薬成分,使用時期,希釈倍数,対象作物,対象となる病気にかかわらず,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者の技術常識であることは,甲第4号証によって立証されていると主張している。
そして,甲第4号証の記載によれば,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?2000mlの容量で」「潅注または散布する」例が162例あるうち,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」例が160例を占める(ただし,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」例は151例である。)ことから,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2000mlの容量」を「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」とすることは,当業者であれば極めて常識的な変更であり,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証の記載もこの事実を裏付けていると主張している(審判請求書第21頁第18行?第22頁第7行,平成24年12月10日付け審判事件弁駁書第4頁第12行?第5頁第6行,口頭審理陳述要領書第9頁第5?27行)。
また,農薬登録の取得には,申請対象となる有効成分が最も防除効果を発揮する使用方法(使用量や希釈倍数)が要求されるわけでなく,有効成分の薬効については,「当該農薬の薬効が著しく劣り、農薬としての使用価値がないと認められるとき」(農薬取締法第3条第1項第9号(甲第29号証参照))以外は登録が留保される要件とはなっておらず,甲第5号証の3の記載のように,既存の農薬登録の内容を拡大したり,甲第4号証の記載のように,希釈倍数を変えることで薬液容量をセルトレイに合わせた例もあるから,農薬登録された使用方法である引用発明2で定められた「適用作物」以外への適用や「単位面積当たりの使用量」,「希釈倍数」,「使用回数」を変更することの阻害要因にはならないと主張している(平成25年7月22日付け審判事件弁駁書第8頁第5行?第9頁第20行)。

しかしながら,上記(3)(3-1)イ(イ)(ウ)で述べたとおり,引用発明2において,薬液の容量を変更する動機付けはなく,農薬登録である引用発明2においては,結果的に,農薬の希釈倍数を引き下げる(濃度を高める)ことになる相違点(i)の構成を採用することは,むしろ,最低希釈倍数以下の使用を禁ずる農薬取締法等の観点からみて阻害要因があるといわざるをえない。
請求人が主張するように,農薬取締法等では,有効成分の薬効については,「当該農薬の薬効が著しく劣り、農薬としての使用価値がないと認められるとき」以外は登録が留保される要件とはなっていないとしても,そのことは,当該農薬を農薬登録された条件以外でも登録された条件と同様に使用できることを意味するものではない。むしろ,薬剤の種類,適用作物によりその選択性(農薬の薬効)が異なるとの技術常識(甲第17号証参照)を踏まえれば,農薬登録された条件以外では,薬効がそのまま発揮されるかわからないというだけではなく,薬害を起こすなどの農薬登録できない可能性があると,農薬の使用者のみならず,当業者も想起するのが自然といえる。
また,農薬取締法等の規定が当業者にとっての阻害要因ではないとしても,上記(3)(3-1)イ(イ)(ウ)で述べたとおり,農薬有効成分が異なれば,その薬液の容量をそのまま,他の農薬有効成分の使用に適用できないのであって,甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証には,「シアゾファミド」あるいは「化合物A」でもない農薬有効成分を「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことを記載するにとどまるから,「シアゾファミド」あるいは「化合物A」の使用において,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」として,薬害を起こさずに使用できることを当業者に動機付ける根拠とはならず,このような容量の変更が極めて常識的な変更であるということはできない。
さらにいえば,甲第4号証には,他の農薬有効成分が「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが記載されているにもかかわらず,「シアゾファミド」を使用する場合は,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2000mlの容量で」「潅注する」ことのみが記載され(摘記5a参照),これ以外の容量での使用について何ら記載されていないことからすれば,「シアゾファミド」の場合に,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2lの容量」を他の農薬有効成分のような500?1100mlの容量に変更することが容易とはいえないことを裏付けるものといえる。

イ 農薬の混合使用について(甲第30,31号証に基づく主張)
請求人は,甲第30,31号証を提出して,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2000mlの容量」を「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」とすることは,当業者であれば極めて常識的な変更であると主張している(口頭審理陳述要領書第9頁第28?34行)。
また,甲30号証の記載は,ランマンの薬液容量は農薬登録で2L/セルトレイで,スタークルの薬液容量は農薬登録での薬液量500ml/セルであることから,農薬の使用者は混用しないことを意味しているだけで,技術的な困難性を示しているわけではなく,薬液容量が同じであれば,混用して使用するニーズがあることは甲第31号証にも記載されているから,シアゾファミドの薬液容量を変更する必要性を示唆するものであって,希釈倍数を変えて農薬登録の変更を行うことは当業者が容易に考え得る(実際に,請求人は2005年11月22日に,250倍500ml/セルトレイの社内実験を行っていた。)と主張している(平成25年7月22日審判事件弁駁書第9頁第21行?第10頁第20行)。

まず,甲第30,31号証のいずれも,請求人の社内の電子メール,社内文書であって,その内容が公然知られたものとする証拠もないから,本件優先日時点の当業者の技術常識を証明する証拠として採用できるものではない。
また,仮に,甲第30号証及び甲第31号証が,請求人の主張するように,ランマン(シアゾファミド)とスタークルと混用して使用するニーズがあることを示すものであるとしても,そのことが,直ちに,シアゾファミドの薬液容量を減らす動機付けを示唆するものとはいえない(スタークルの薬液容量を増やすことも考えられる)し,ましてや,シアゾファミドの薬液容量を500?1100mlとすることについては全く示唆されていない。
さらに,請求人は2005年11月22日に,250倍500ml/セルトレイの社内実験を行っていたと主張するが,そのような事実を示す証拠は何ら示されていないし,そのような事実が存在したとしても,その事実から本件発明1の容易想到性を直ちに導き出せるわけではない。
よって,請求人の主張は,いずれも採用できない。

ウ 本件発明の効果について
請求人は,本件発明1の「農薬有効成分の施用量は同一であっても,単位株数又は単位面積あたりの農薬有効成分の水溶液又は水性分散液の容量を少なくするほど防除効果が高まる」との効果は,条件によってはほとんど認められないものであり,顕著な効果とはいえず,また,本件発明1は,「有効成分の施用量が同一であっても」という前提が発明特定事項として反映されておらず,従来の農薬濃度をそのままにして,単位堆積当たりの容量を2000mlから500?1100mlとしたにすぎない構成も含むとなっており,そのようなものは,薬液濃度を高めない限り,防除効果が高まるとは認められないと主張している(審判事件弁駁書第5頁第7行?末行,口頭審理陳述要領書第10頁第12行?第11頁第12行)。
しかしながら,そもそも,引用発明2において,甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載から,本件発明1を構成することは当業者が容易に想到し得ないのであるから,本件発明1の効果の顕著性について検討するまでもない。
さらにいえば,本件発明1には,例えば,引用発明2における「農薬有効成分として10.0%(w/V)の水和剤の希釈倍数が500倍」とした希釈液を,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり1000mlにした構成も含まれているが,このような構成でも,農薬有効成分の施用量が同一である希釈倍数が1000倍とした希釈液を2l用いた場合と比べて,防除効果が高まれば本件発明1の効果を奏するといえるのであって,農薬有効成分の施用量が異なる,希釈倍数が500倍とした希釈液を2l用いた場合と比べて防除効果が高まっている必要はなく,その際に,「有効成分の施用量が同一であっても」という発明特定事項を本件発明1が含んでいる必要もない。
そして,本件発明1の「有効成分の施用量は同一であっても,単位株数及び単位面積あたりの農薬有効成分の水溶液又は水性分散液の容量を少量にするほど防除効果が高まる」との効果は,本件明細書の記載(【0071】参照)によって裏付けられるものであって,この効果は,当業者が予測し得る範囲のものと認めることができない。
そうすると,請求人の主張はいずれも採用できない。

(5)小括
以上のとおりであるから,本件発明1?3,5は,甲第2号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができず,上記理由及び証拠によっては,本件発明1?3,5についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。

2 無効理由4について
(1)刊行物等の記載事項
ア 甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証の記載事項
上記1(1)ウ?カに記載したとおりである。

イ 甲第8号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第8号証には,以下の事項が記載されている。
(8a)「【0097】
次にスルファモイル化合物の具体的な例を、第1表に示す。但し、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、表中の記号はそれぞれ次のような意味を表わす。
【0098】
Me:メチル基、Et:エチル基、nPr:ノルマルプロピル基、iPr:イソプロピル基、cPr:シクロプロピル基、nBu:ノルマルブチル基、iBu:イソブチル基、sBu:セカンダリーブチル基、tBu:ターシャリーブチル基、nHex:ノルマルヘキシル基、cHex:シクロヘキシル基、Ph:フェニル基
第1表
【0099】
【化3】

【0100】
No. R^(3) R^(4) R^(5) R^(6) R^(7) R^(8) Y 物性値
・・・
195 Me Br H H F H H 119.5-121.0℃」
(8b)「【0105】
スルファモイル化合物の施用方法としては、農園芸用殺菌剤として使用する場合は、茎葉散布、土壌処理、種子消毒、土壌混和、株元灌注等があげられるが、通常当業者が利用する一般的な方法においても有効である。根こぶ病防除剤として使用する場合は、例えば、土壌混和または株元灌注が好ましい。土壌混和の方法としては、例えば、定植前日に30kg/10aの割合で全面土壌混和するといった方法が挙げられ、その際、通常は粉剤を用いる。株元灌注の方法としては、スルファモイル化合物のフロアブル剤を水で希釈して適当な濃度、例えば200ppmに調製した薬液を、アブラナ科野菜定植直後の株元または定植直前の株穴に、1株あたり適当な量、例えば250ml灌注するといった方法が挙げられる。」
(8c)「【0124】
試験例1 アブラナ科野菜根こぶ病防除効果試験
セル苗トレイ(98穴/育苗箱)で育成(98株/育苗箱)したハクサイ(品種:無双)に、スルファモイル化合物のフロアブル剤を水で希釈して200ppmに調製した薬液を育苗箱当たり2L灌注処理した。翌日、薬剤処理した苗を圃場に定植した。
定植後、ハクサイ根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)の胞子懸濁液(1×10^(5) 個/ml)を株元に散布した。定植45日後に根部の根こぶ着生程度別株数を調べた。下記の式に従い、発病度を算出した。
発病度=<Σ(程度別発病株数×発病指数)/(調査した株数×3)>×100
防除価=100-発病度
発病指数 0:根こぶの着生なし 1:側根に小さな根こぶを着生 2:側根に大きな根こぶ着生 3:根の全体にこぶを着生
その結果、以下の化合物が60%以上の防除価を示した。
スルファモイル化合物No.;165、195」

ウ 甲第9号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第9号証には,日本語に訳して以下の事項が記載されている。なお,訳文は請求人が提出したものである。
(9a)「抄録:シアゾファミド(4-クロロ-2-シアノ-N,N’-ジメチル-5-p-トリルイミダゾール-1-スルホンアミド)は、卵菌類および根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae Woronin)に対して高レベルの活性を有する新規な殺菌剤である。」(第287頁,抄録の第1?2行)
(9b)「いくつかの試験では、種子は、事前に育苗箱(幅30×60cm^(2)、深さ4cm、1トレイあたり128穴、Up-plug-tray128(登録商標)日泉化学株式会社、日本)に分けた、育苗コンポストTM-1(N:P:K=150:560:100mg/kgのコンポスト、タキイ種苗株式会社、日本)に播いた。」(第288頁左欄下から7行?末行)
(9c)「2.4 休眠胞子からの発芽に対する効果
P brassicaeの休眠胞子の発芽を、高橋の方法6によって評価した。休眠胞子を、水で懸濁して(1mlあたり1×10^(6)個の休眠胞子)、20℃で10日間、カブの種苗の根に接種した・・・。100g/1リットルのシアゾファミドSCを、この懸濁液に接種の開始時点で添加して、0.1、0.3および1mgAI/リットルの最終濃度を得た。休眠胞子の発芽は顕微鏡・・・で観察し、休眠胞子発芽の割合を算出した。」(第288頁右欄第32?35行)
(9d)「2.8.2 育苗箱施用
シアゾファミド100mg/リットルSCの2リットルの水性希釈液を、100および200mgAI/リットル(最終濃度)で、移植の24時間前にジョウロを使って育苗箱にドレンチさせた(1箱あたり200および400mgAI、苗は5葉の段階)。育苗を感染した土壌に移し(1gの乾燥土壌あたり1×10^(5)の休眠胞子、2000cm^(2)のポットあたり6個の苗)、40?50日間成長させた。)」(第289頁左欄下から13行?7行)
(9e)「

」(第289頁右欄表1)
(9f)「

」(第290頁左欄表2)
(9g)「

」(第291頁表3)
(9h)「2リットルの希釈のシアゾファミド100g/リットルSCを100または200mgAI/リットルで、移植の24時間前にジョウロを用いて育苗箱にドレンチさせた(1箱あたり200または400mgAI)時、シアゾファミドは、何ら植物毒性なしで良好な病害抑制をもたらした(図3)。」(第290頁右欄第22?28行)

(2)甲第8号証及び甲第9号証に記載された発明
ア 甲第8号証に記載された発明
甲8号証には,「No.195」の化合物として,


」において,「R^(3)」が「Me」,「R^(4)」が「Br」,「R^(5)」が,それぞれ,「H」,「R^(6)」が「H」,「R^(7)」が「F」,「R^(8)」が「H」,「Y」が「H」で表されるスルファモイル化合物が記載され(摘記8a参照),No.195の化合物の化合物名は,「3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾ-ル-1-スルホンアミド」になる。
そして,試験例1においては,「セル苗トレイ(98穴/育苗箱)で育成(98株/育苗箱)したハクサイ(品種:無双)に、スルファモイル化合物のフロアブル剤を水で希釈して200ppmに調製した薬液を育苗箱当たり2L灌注処理し」,「翌日、薬剤処理した苗を圃場に定植し」,「定植後、ハクサイ根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)の胞子懸濁液(1×10^(5) 個/ml)を株元に散布し」,「定植45日後に根部の根こぶ着生程度別株数を調べ」,「発病度を算出した」ところ,「スルファモイル化合物No.195」が「60%以上の防除価を示した」ことが記載されている(摘記8c参照)。
そうすると,甲第8号証には,
「No.195のスルファモイル化合物(3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾ-ル-1-スルホンアミド(化合物A))を水で希釈し200ppmに調製した薬液を、セル苗トレイ(98株/育苗箱)に、定植前に2L灌注処理する根こぶ病の防除方法」の発明(引用発明8)が記載されているといえる。

イ 甲第9号証に記載された発明
甲第9号証には,「シアゾファミド100mg/リットルSCの2リットルの水性希釈液を、100および200mgAI/リットル(最終濃度)で、移植の24時間前にジョウロを使って育苗箱にドレンチさせた(1箱あたり200および400mgAI、苗は5葉の段階)。」ことが記載され(摘記9d参照),「育苗箱」は「幅30×60cm^(2)、深さ4cm、1トレイあたり128穴」のものであることも記載され(摘記9b参照),「シアゾファミド・・・は、・・・根こぶ病菌・・・に対して高レベルの活性を有する新規な殺菌剤である」ことも記載されている(摘記9a参照)。そして「ジョウロを使って育苗箱にドレンチさせ」ることは「潅注する」ことである(乙第1号証第50頁「潅注」の項参照)。
そうすると,甲第9号証には,
「シアゾファミドを100mg及び200mgAI/リットルに希釈した水性液2リットルを幅30×60cm^(2)、128穴のプラグ苗トレイに、定植前に潅注する根こぶ病の防除方法」の発明(以下,「引用発明9」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1に対して
ア 引用発明8を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明1と引用発明8とを対比する。
引用発明8の「化合物Aを水で希釈し200ppmに調製した薬液」「2L」には,200×10^(-6)×2000=0.4gの化合物が含まれ,98株あたり0.4g潅注していることになる。また,引用発明8の「セル苗トレイ(98株/育苗箱)」は,ハクサイを育てている(摘記8c参照)ので,本件発明1の「畑作物の苗育成区画」に相当する。
そうすると,本件発明1と引用発明8とは,
「化合物Aおよびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gになるように、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。」である点で一致し,
(ii)農薬有効成分の施用量が,前者が「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,後者が,農薬有効成分の施用量が「98株の苗あたり2Lで、セル成型育苗トレイに2L灌注する」点(以下,「相違点(ii)という。)で相違している。

(イ)相違点の検討
甲第8号証には,「株元灌注の方法としては、スルファモイル化合物のフロアブル剤を水で希釈して適当な濃度、例えば200ppmに調製した薬液を、アブラナ科野菜定植直後の株元または定植直前の株穴に、1株あたり適当な量、例えば250ml灌注するといった方法が挙げられる。」と記載される(摘記8b参照)ように,苗100株あたりの化合物Aの200ppmに調製した薬液は,25000mlとなる。そうすると,苗98株あたり2000mlを使用した例が記載されているとしても,この容量を20?1100mlとすることについて甲第8号証には記載がない。また,甲第8号証には,使用するセル成型育苗トレイの面積についても記載がない。

そして,上記1(3)(3-1)イ(イ)(ウ)で述べたように,農薬取締法等の規定や甲第17号証の記載によれば,農薬有効成分や適用作物が異なる場合には,単位面積当たりの薬液の使用量,希釈倍数及び使用量と希釈倍数から算出される容量を,それ以外の農薬有効成分や作物に,そのまま適用することができないところ,甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証は,化合物Aと異なる農薬有効成分を「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことを記載するにとどまり,化合物Aでも同様の容量で使用できることを示唆する記載はないから,「化合物A」を農薬有効成分として「苗98株あたり2000lの容量で」「潅注する」引用発明8において,甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証の記載から,少なくとも化合物Aを農薬有効成分とする施用量を「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者にとって容易になし得たということはできない。

イ 引用発明9を主引用発明とした場合
(ア)対比
本件発明1と引用発明9とを対比する。
引用発明9の「シアゾファミドを100mg及び200mgAI/リットルに希釈した水性液2リットル」には,0.2g又は0.4gの「シアゾファミド」が含まれ,農薬有効成分として苗100株あたり0.2×100/128=0.16g,0.4×100/128=0.31gが使用され,容量として2/128=1560ml潅注されていることになる。
また,引用発明9の「プラグ苗トレイ」は 「幅30×60cm^(2)」であるから「面積1800cm^(2)」であり,また,引用発明9の「プラグ苗トレイ」は,ハクサイを育てている(摘記9f,9g参照)ので,本件発明1の「畑作物の苗育成区画」に相当する。
そうすると,本件発明1と引用発明9とは,
「化合物Aおよびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。」である点で一致し,
(iii)農薬有効成分の施用量が,前者が「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,後者が「100株の苗あたり1560mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2リットル潅注する」点(以下,「相違点(iii)という。」)で相違している。

(イ)相違点の検討
上記1(3)(3-1)イ(イ)(ウ)で述べたように,農薬取締法等の規定や甲第17号証の記載によれば,農薬有効成分や適用作物が異なる場合には,単位面積当たりの薬液の使用量,希釈倍数及び使用量と希釈倍数から算出される容量を,それ以外の農薬有効成分に,そのまま適用することができないところ,甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証は,シアゾファミドと異なる農薬有効成分を「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことを記載するにとどまり,「シアゾファミド」でもこのような容量で使用できることを示唆する記載はないから,「シアゾファミド」を農薬有効成分として「100株の苗あたり1560mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2リットル潅注する」引用発明9において,甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証の記載から,少なくともシアゾファミドを農薬有効成分とする施用量を「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者にとって容易になし得たということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから,効果について検討するまでもなく,本件発明1は甲第8,9号証(主引用発明)及び甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない。

(3-2)本件発明2,3,5に対して
本件発明2,3,5は,いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含み,さらに限定したものであるから,本件発明1が甲第8,9号証(主引用発明)及び甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない以上,本件発明2,3,5も同様に甲第8,9号証(主引用発明)及び甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない。

(4)請求人の主張
無効理由4についての主張は,本件発明1と引用発明8との相違点(ii)及び本件発明1と引用発明9との相違点(iii)が,ともに,本件発明1と引用発明2との相違点(i)を含むものであって,これらの相違点を各引用発明において構成することが容易とする証拠が無効理由3と同じであって,上記1(4)ア?ウで述べた無効理由3についての主張と同じ趣旨といえる(審判請求書第23頁第14?31行,口頭審理陳述要領書第12頁第17?26行,第13頁第13?22行)から,上記1(4)で検討したとおり,採用することができない。

(5)小括
以上のとおりであるから,本件発明1?3,5は,甲第8,9号証(主引用発明)及び甲第4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができず,上記理由及び証拠によっては,本件発明1?3,5についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。

3 無効理由5について
(1)刊行物等の記載事項
ア 甲第2?4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7?9号証,甲第17号証の記載事項
甲第2号証,甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7,17号証の記載事項は,上記1(1)ア?キに記載したとおりであり,甲第8,9号証号証の記載事項は,上記2(1)イ,ウで述べたとおりである。

イ 甲第11号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第11号証には,以下の事項が記載されている。
(11a)「(2)液剤の育苗箱灌注処理
省力化が重要視される一方で,大規模な育苗施設向けに,より低コストで薬剤処理を行うシステムも考案されている。すでにイミダクロプロリド水和剤が登録を取得しており,また,カルプロパミド・イミダクロプリド顆粒水和剤,カルボンスルファンFL剤などが委託試験中である。これらの薬剤はいずれも水で100倍程度に希釈し,箱当り500mlを潅注するという処理方法である。小規模な個々の農家がこのような方法を用いると,薬液調製に手間がかかり,また,散布器具も必要となるため,省力化にはならない。むしろ,大規模な育苗施設等が薬剤処理のシステム化をはかり,かつ低コスト化も実現するためのものであると考えられる。実用化のためには,育苗箱に灌注を行うため,有効成分が流亡する可能性もあるので,その対策をとっておくこと,低コスト化をはかることの2点が必要と考えられる。」(第5頁第16?24行)

ウ 甲第12号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第12号証には,以下の事項が記載されている。
(12a)「1 有効薬剤のスクリーニング
場内ガラス室で直径18cmの素焼鉢に汚染土をつめ,殺菌剤50薬剤、殺虫剤40薬剤、除草剤30薬剤を供試し床土1lにつき粉剤、粒剤は0.5?2g混和、水和剤、乳剤、液剤等は250?1000倍液を50cc灌注、ガス剤は1cc注入した。」(第63頁左欄下から第3行?右欄第4行)

エ 甲第13号証の1?5の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第13号証の1?5には,以下の事項が記載されている。
(13a)「有効成分・量・・・
アセフェート・・・・50%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
テンサイ:テンサイトビハムシ 育苗期 50倍 潅注
2.5L/3冊・m^(2)」(甲第13号証の1:第122頁)
(13b)「有効成分・量・・・
アセフェート・・・・50%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
テンサイ:テンサイトビハムシ 育苗期 50倍 潅注
2.5L/3冊・m^(2)」(甲第13号証の2:第115頁)
(13c)「有効成分・量・・・
アセフェート 95%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
てんさい:トビハムシ類 100倍、200倍、育苗期苗床
灌注処理(1冊当り1l灌注)」(甲第13号証の3:第122頁)
(13d)「有効成分・量・・・
アセフェート 95%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
てんさい:トビハムシ類 200倍、育苗期苗床灌注
処理(1冊当り1l灌注)」(甲第13号証の4:第106頁)
(13e)「有効成分・量・・・
アセフェート・・・・50%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
てんさい:テンサイトビハムシ 育苗期 100倍 潅注
2.5L/3冊・m^(2)」(甲第13号証の4:第162頁)
(13f)「有効成分・量・・・
アセフェート・・・・50%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
てんさい:テンサイトビハムシ 育苗期 100倍灌注
2.5L/3冊・m^(2)」(甲第13号証の5:第151頁)

オ 甲第14号証の1,2の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第14号証の1,2には,以下の事項が記載されている。
(14a)「薬剤名・剤型 NC-1110フロアブル
有効成分・量・・・
既知化合物20%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
キャベツ:コナガ、アオムシ 育苗期後半処理
20倍300ml/箱」(甲第14号証の1:第122頁)
(14b)「薬剤名・剤型 NC-1110フロアブル
有効成分・量・・・
カルボスルファン20%
・・・
試験対象作物・病害虫名等 希望する処理方法
・・・
キャベツ:コナガ 散布×50、100 500ml/箱
セル苗かん注」(甲第14号証の2:第85頁)

カ 甲第16号証の2,3の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第16号証の2,3には,以下の事項が記載されている。
(16a)「ここでは北海道の病害虫防除の課題として,(1)てんさいの主要病害虫に対する地上液剤少量散布の防除効果,(2)小麦の主要病害虫に対する地上液剤少量散布の防除効果,(3)春まき小麦のDON汚染低減に向けた当面の対策,について紹介したい。」(甲第16号証の2:第26頁第22?24行)
(16b)「(2)試験方法
○1 少量散布の液量を25l(慣行の3倍濃度)?50l(慣行の2倍濃度)/10aとし,慣行散布(100l/10a)との防除効果の比較を行った。」(甲第16号証の2:第29頁第13?14行)
(16c)「

」(甲第16号証の2:第29頁表3)
(16d)「

」(甲第16号証の2:第30頁表4)
(16e)「

」(甲第16号証の2:第31頁表5)
(16f)「2)防除効果
○1 ムギキモグリバエに対する少量散布(25l?50l/10a)の防除効果は,慣行100l/10a散布に比べやや劣った。・・・
○2 うどんこ病に対する少量散布の防除効果は,高圧25l?50l/10a散布では慣行とほぼ同等の防除効果を示し,薬害も認められず実用可能な防除技術であると考えられる。・・・
○3 赤かび病に対する少量散布の防除効果は,50l/10a散布では慣行と同等?やや劣る防除効果を示し,薬害も認められず実用可能な防除技術であると考えられる。しかし,25l/10a散布では効果が不安定であった(表5)。」(甲第16号証の2:第31頁表5の下第1行?末行)
(16g)「乗用管理機に装着した液剤散布機によるエマメクチン安息香酸塩乳剤(250倍、25l/10a)の高濃度少量散布は、採集した葉片を室内でオオタバコガ3齢幼虫に給餌したところ、即効的で高い死虫率が得られている。」(甲第16号証の3:第64頁第9?11行)
(16h)「1)散布労力が低減される。特に、散布水量は1/6に低減可能である。」(甲第16号証の3:第64頁第14行)

キ 甲第22号証の1?5の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第22号証の1?5には,以下の事項が記載されている。
(22a)「

」(甲第22号証の1:第154頁左欄第1表)
(22b)「液剤の場合は150倍にうすめた液を500ccあて播つぼ(径約15cm)に灌注した後播種した。」(甲第22号証の1:第154頁左欄下から第9?7行)
(22c)「

」(甲第22号証の1:第154頁右欄第2表,第3表)
(22d)「なお,液剤処理については高い防除効果が認められたが,使用濃度,灌注量,土性など未解決の問題が多いのでさらに検討を要するものと考えられる。」(甲第22号証の1:第158頁右欄第1?3行)
(22e)「

」(甲第22号証の2:第136頁左欄第1表)
(22f)「乳剤・水和剤は所定の濃度にうすめた液を播つぼ(径約15cm,深達距離約12?15cm)に1lあて灌注したのち播種した。粉剤の場合は所定量の薬剤を約径20cm,深さ12cmの土と良く混和したのち灌水,播種した。」(甲第22号証の2:第136頁右欄下から第3行?第137頁左欄第2行)
(22g)「

」(甲第22号証の2:第136頁右欄第2表,第137頁左欄第3表)
(22h)「以上の結果からPCNB乳剤・水和剤の潅注処理は粉剤処理と同等またはそれ以上の効果がみられた。濃度間では粉剤植穴当りPCNB成分量400mgを標準にして,液剤の約270mgおよび約530mgとの間に顕著な差は認められないが,概して高濃度の場合に発病,収量の点からすぐれている傾向があった。」(甲第22号証の2:第137頁右欄第11?16行)
(22i)「一方ハクサイが枯死または不結球に終る発病程度の甚しいものは播種後間もなくの早い時期から発病がみられるものに多いので生育初期の発病を抑える目的で立毛中の灌注効果について,また液剤の使用濃度について知るために試験をした。」(甲第22号証の3:第166頁左欄第7?11行)
(22j)「

」(甲第22号証の3:第166第1表)
(22k)「

」(甲第22号証の3:第166頁第2表)
(22l)「以上のことからPCNB乳剤,水和剤は粉剤に比べて根瘤病に対しては防除効果が優り,乳剤は水和剤よりも効果優る。また立毛中の灌注効果は乳剤形態においてわずかに効果のある傾向が認められたが,差はほとんどなかった。濃度については乳剤で750倍,有効成分量266mg以上が必要であると思われる。しかし水和剤では約200mg?530mgとの間に明らかな結果は得られなかった。」(甲第22号証の3:第167頁右欄第2?9行)
(22m)「4 PCNB剤・・・
・・・
(使用上の注意)
薬害:作物の幼芽が高濃度の本剤と接触すると生育が阻害されるので,土との混和を十分にする。
・・・
PCNB乳剤(PCNB乳剤,プラシサイド乳剤) PCNB:20%含有。アブラナ科野菜の根こぶ病に対して750倍液を播種,移植時に土壌灌注する。
適用病害 キャベツ、ハクサイ:根こぶ病」(甲第22号証の4:第242頁)
(22n)「アースサイド水和剤(PCNB剤)
○1PCNB75.0%・・・[白菜]根こぶ病・・・
【適正使用基準】 白菜=○一使用方法・・・散布,○二使用時期・・・播種後,○三使用回数・・・1回」(甲第22号証の5:第255頁第1?4行)

(2)刊行物に記載された発明
甲第2号証には,上記1(3)で述べたとおり,引用発明2が記載されている。
甲第8号証には,上記2(2)アで述べたとおり,引用発明8が記載されている。
甲第9号証には,上記2(2)イで述べたとおり,引用発明9が記載されている。

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1に対して
ア 引用発明2を主引用発明とした場合
本件発明1と引用発明2とを対比すると,上記1(3)(3-1)アで述べたとおり,相違点(i)で相違する。
そして,相違点(i)は,実質的に,
農薬有効成分の施用量が,本件発明1が「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,引用発明2が,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2lの容量で」「潅注する」点である。

(ア)容量を減らしてみることの容易性
甲第11号証には,「液剤の育苗箱灌注処理」において,「育苗箱に灌注を行うため,有効成分が流亡する可能性もある」ことが記載され(摘記11a参照),有効成分が流亡すれば防除効果が低くなることは,当業者にとって一応予測し得ることとはいえる。
しかしながら,農薬有効成分が流亡するにもかかわらず,農薬有効成分が同一量を施用するのであれば高濃度の薬液量を使用したほうがよいとは必ずしもいえない。
すなわち,上記1(3)(3-1)イ(イ)で述べたように,農薬の使用者は,農薬の有効成分の濃度に対応する「希釈倍数」の最低限度を下回って用いることができず,引用発明2のシアゾファミドの使用方法は,薬害を及ぼさない範囲で,農薬有効成分が防除効果を発揮する,単位面積当たりの使用量,希釈倍数が定められたものということができ,このような「単位面積当たりの使用量」,「希釈倍数」を変更をする動機付けはなく,最低の希釈倍数を下回る(濃度を高める)ようにして薬液量を減らすことには,むしろ,阻害要因があったものといえる。
また,甲第9号証には,表1において,シアゾファミドの濃度が高いと,Plasmodiophora brassicae(根こぶ菌)の休眠胞子の発芽を阻害することが記載されている(摘記9e参照)が,この実験は,「休眠胞子を、水で懸濁して(1mlあたり1×10^(6)個の休眠胞子)、20℃で10日間、カブの種苗の根に接種した・・・。100g/1リットルのシアゾファミドSCを、この懸濁液に接種の開始時点で添加して、0.1、0.3および1mgAI/リットルの最終濃度を得た。休眠胞子の発芽は顕微鏡・・・で観察し、休眠胞子発芽の割合を算出した。」(摘記9c参照)と記載されるように,休眠胞子をカブ苗の根に接種するに際して,休眠胞子の懸濁液中のシアゾファミドの濃度を0.1?1mgAI/リットルにしたところ,シアゾファミド濃度の高いものが休眠胞子の発芽をより抑制することを意味するだけであって,苗トレイへのシアゾファミドを潅注する場合に,同一の施用量でも高濃度にして少容量で散布するほうが防除効果が高まることを示唆するものではない。
また,甲第9号証の表2,表3には,土壌中のシアゾファミドの濃度が高いと,根こぶ菌の根毛感染,根こぶ形成を抑制できることが記載されている(摘記9f,9g参照)が,これは,土壌に含まれるシアゾファミドの濃度,すなわち施用量そのものを高くした結果であって,潅注する際のシアゾファミドの溶液の濃度を,同一の施用量でも高濃度にして少容量で散布するほうが防除効果が高まることを示唆するものではない。
そうすると,甲9,11号証の記載から,引用発明2におけるシアゾファミドの希釈液を,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことは当業者が容易になし得たものとはいえない。

(イ)土壌量の観点からの容易性
甲第12号証には,根こぶ病の防除に有効な薬剤のスクリーニングとして,「床土1lにつき・・・水和剤、乳剤、液剤等は250?1000倍液を50cc灌注」することが記載されている(摘記12a参照)が,使用する有効成分は,シアゾファミドでも化合物Aでもなく,単位面積あたりどの程度の容量で潅注するのがよいことを示唆するものでもない。
請求人は,甲第4号証の記載から,引用発明2における育苗箱の土壌量を5lとし,それを甲第12号証の農薬有効成分の使用方法に当てはめれば,苗育成区画1800cm^(2)あたり250mlが潅注されていることになると主張しているが,上記(ア)でも述べたとおり,引用発明2のシアゾファミドの使用方法の「単位面積当たりの使用量」,「希釈倍数」を変更をする動機付けはなく,むしろ,阻害要因があったものである。また,農薬有効成分も適用する単位面積あたりの容量も異なる甲第12号証の記載から,引用発明2におけるシアゾファミドの希釈液を,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことは当業者が容易になし得たものとはいえない。

(ウ)所望の効果を発揮させる観点からの容易性
甲第13号証の1?5には,いずれも,農薬有効成分が「アセフェート」の希釈液を,「てんさい」を対象作物として「トビハムシ類」を防除するために,育苗期苗床に灌注することが記載され(摘記13a?13f参照),また,甲第14号証の1,2には,「NC-1110フロアブル」(有効成分カルボスルファン)の溶液を「キャベツ」を対象作物として,「コナガ、アオムシ」を防除するために,育苗期後に潅注処理することが記載されている(摘記14a,14b参照)が,農薬有効成分は,シアゾファミドでも化合物Aでもなく,単位面積あたりどの程度の容量で潅注するのがよいことを示唆するものでもない。
甲第4号証には,TPN水和剤を,400?600倍液を500mlで潅注する場合と1000倍液を1l潅注する場合と,1000?2000倍液を1l潅注する場合と500?1000倍液を500ml潅注する場合が記載されているが,有効成分として,シアゾファミド,化合物Aを用いるものではない。
甲第22号証の1には,PCNBを有効成分とする750倍溶液を500cc潅注し根こぶ病を防除すること,また,PCNBを有効成分とする1400倍溶液を1l潅注することにより,根こぶ病を防除することが記載されている(摘記22a?22h参照)が,農薬有効成分として,シアゾファミド,化合物Aを用いるものではないし,両者の防除効果を対比して,濃度を高くして少量潅注するほうが,良好な効果を得られることを示唆するものでもない。
また,甲第22号証の3にも,「ペンタゲン水和剤」,「プラシサイド乳剤」を有効成分として用いる根こぶ病の防除方法が記載されているにすぎず(摘記2i?2l参照),甲第22号証の4,5にも「PCNB乳剤」を有効成分として使用する根こぶ病の防除方法が記載されている(摘記2m,2n参照)にすぎない。
そして,上記(ア)でも述べたとおり,引用発明2のシアゾファミドの使用方法の「単位面積当たりの使用量」,「希釈倍数」を変更をする動機付けはなく,むしろ,阻害要因があったものであり,農薬有効成分の異なる甲第13号証の1?5,甲第14号証の1,2及び甲第4号証,甲第22号証の1?5の記載から,引用発明2におけるシアゾファミドの希釈液を,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことは当業者が容易になし得たものとはいえない。

(エ)高濃度少量散布の観点からの容易性
甲第16号証の2には,「少量散布の液量を25l(慣行の3倍濃度)?50l(慣行の2倍濃度)/10aとし,慣行散布(100l/10a)との防除効果の比較を行った。」(摘記16b参照)ことが記載されているが,使用される薬剤は,「PAP乳剤」,「テプコナゾール乳剤」,「クレソキシムメチル水和剤F」,「クレソキシムメチル水和剤F」に関するものである(摘記16c?e参照)。
甲第16号証の2には,農薬有効成分を高濃度にして少量散布することは記載されてはいるが,それによって得られる防除効果は,「ムギキモグリバエに対する少量散布(25l?50l/10a)の防除効果は,慣行100l/10a散布に比べやや劣った。」,「うどんこ病に対する少量散布の防除効果は,高圧25l?50l/10a散布では慣行とほぼ同等の防除効果を示し,薬害も認められず実用可能な防除技術であると考えられる。」,「赤かび病に対する少量散布の防除効果は,50l/10a散布では慣行と同等?やや劣る防除効果を示し,薬害も認められず実用可能な防除技術であると考えられる。しかし,25l/10a散布では効果が不安定であった」と記載される(摘記16f参照)ように,農薬有効成分を高濃度少量散布したからといって,同一施用量の低濃度大量散布に比して防除効果が高まったり,同等の効果が得られてはいない。
また,甲第16号証の3には,「エマメクチン安息香酸塩乳剤(250倍、25l/10a)の高濃度少量散布」が,「オオタバコガ」の防除において有効で,「散布水量は1/6に低減可能である。」ことが記載されている(摘記16g,16h参照)が,他の農薬有効成分でも同様に高濃度少量散布が有効であることが記載されているわけではない。
そうすると,ある特定の農薬有効成分を,特定の適用作物と対象病害虫について使用した場合は,農薬有効成分を高濃度少量散布することで防除効果が高まったり,同程度となることもあるが,逆に防除効果が劣ることもあることが理解できる。
よって,甲第16号証の2,3には,特定の農薬有効成分について,高濃度少量散布が特定の病害虫に対する防除効果を高めることが記載されているとしても,他の農薬有効成分でも同様に高濃度少量散布によってそれ以外の病害虫に対する防除効果を高めるとはいえないから,農薬有効成分の異なる甲第16号証の2,3の記載から,引用発明2におけるシアゾファミドの希釈液を,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことは当業者が容易になし得たものとはいえない。

(オ)最適化の観点からの容易性
上記1(3-1)イ(イ)で述べたように,甲第17号証には,「農薬の施用散布における標的となる病害虫、雑草もしくは非標的である作物とで選択性が存在することが必要である。・・・防除効果を100%発揮する最小薬量と作物に薬害を生じない最大薬量との間(実用上の選択幅)が開いておれば、薬剤として防除対象に選択性があることになる。この選択性は栽培、気象、環境、散布条件により影響をうけるとともに、薬剤の種類により選択性と散布の方式は変わってくる。」と記載される(摘記17a参照)ように,引用発明2のシアゾファミドの使用方法は,薬害を及ぼさない範囲で,農薬有効成分が防除効果を発揮する,単位面積当たりの使用量,希釈倍数が定められたものということができ,「単位面積当たりの使用量」,「希釈倍数」を変更をする動機付けはなく,むしろ,希釈倍数以下の使用(すなわち,高濃度での使用)については阻害要因があったものといえる。
そして,甲第9号証には,上記(ア)で述べたように,苗トレイへのシアゾファミドを潅注する場合に,同一の施用量でも高濃度にして少容量で散布するほうが防除効果が高まることを示唆する記載はなく,その観点で,農薬有効成分の単位面積あたりの容量の最適化を図ることが容易であるということはできない。
よって,甲第9,17号証の記載から,引用発明2におけるシアゾファミドの希釈液を,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことは当業者が容易になし得たものとはいえない。

(カ)効果について
上記(ア)?(オ)で述べたとおり,本件発明1の効果を検討するまでもなく,引用発明2において,甲第4号証,甲第9,11,12号証,甲第13号証の1?5,甲第14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5の記載から,本件発明1の構成を想到することが容易であったとはいえないが,念のため,本件発明1の効果についても検討する。
本件発明1は,農薬有効成分が同一施用量であっても,単位株数及び単位面積あたりの農薬有効成分の水溶液または水性分散液の容量が特定の範囲にすることにより,防除効果が高まるという効果があるものであり,このことは本件明細書【0071】の記載された試験例1によって裏付けられるものである。
甲第10号証は,本件発明1の再現の実験としているが,土壌に保持できる薬液量を超えた薬液は,セル成型苗トレイから溢れ出たり,下部から漏出して(オーバーフロー)して,本来の処理量以下の有効成分しか土壌に保持できず,500ml散布(ジョロによる)のほうが2l散布のものよりも土壌中の有効成分の濃度が高まるという実験結果を示している。
この実験結果は,本件明細書に示された本件発明1の効果と矛盾するものではなく,また,甲第10号証は,本件優先日後に実施されたものであるから,本件優先日前に上記効果が当業者に予測できるとする根拠にはならない。
また,甲第11号証には,「育苗箱に灌注を行うため,有効成分が流亡する可能性もある」とは記載されている(摘記11a参照)ものの,高濃度少量散布によって,同一の施用量であっても防除効果が高まることまで記載されているわけではなく,このことが予測可能とはいえないことは,上記(ア)で述べたとおりである。
甲第21号証においては,本件明細書の試験例1と,定植後の土壌の生育条件を変えると,同じ施用量であっても,0.5L/トレイで潅注した場合の防除価が2L/トレイで潅注したときの防除価よりも高くならないことを示しているが,本件明細書の試験例1とは散布の方式も,定植後の土壌での生育条件も異なるのであるから,本件明細書の試験例1で裏付けられる本件発明1の効果を否定するものではない。
甲第32号証は,農薬有効成分のランマンフロアブル(シアゾファミド)を高濃度少量散布をした試験結果であるが,対象病害虫が疫病であるから,本件発明1とは無関係である。
甲第33号証(甲第34号証も含む)は,高濃度少量散布をシアゾファミドで実施したもので,NC-244顆粒水和剤(化合物A)の200倍溶液を0.5l/箱で処理した場合,シアゾファミド500倍溶液を2.0l/箱で処理した場合より防除効果がほぼ同じであることが記載されている(第126頁3.試験成績参照)が,同一の施用量であっても高濃度少量散布で防除効果が高まるか否かについては,同じ農薬有効成分どうしで比較しなければ意味がないから,上記本件発明1の効果を否定するものではない。
また,甲第33号証には,適用作物をブロッコリーとして根こぶ病の防除を,ランマンフロアブルを農薬有効成分として使用した試験では,ランマンフロアブル250倍溶液を0.5l/箱で処理した場合が,ランマンフロアブル500倍溶液を2.0l/箱で処理した場合のほうが.施用量は1/2であるにもかかわらず,より高い防除価が得られることも記載されている(第135頁3.試験成績参照)から,むしろ,本件発明1の上記効果が得られることを裏付けているものといえる。
いずれにしても,甲第10,11,21,32,33,34号証によって,上記本件発明1の効果が否定されるものでもなく,また,上記本件発明1の効果が本件優先日前に当業者が予測し得るものであったことを示唆するものでもない。

(キ)まとめ
以上のとおりであるから,上記1(3-1)で述べたように,引用発明2において,甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証の記載から,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者にとって容易になし得たということはできないし,また,上記(ア)?(オ)で述べたように,引用発明2において,甲第4号証,甲第9,11,12号証,甲第13号証の1?5,甲第14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5の記載から,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者にとって容易になし得たということはできない。

イ 引用発明8を主引用発明とした場合
本件発明1と引用発明8とを対比すると,上記2(3)(3-1)ア(ア)で述べたとおり,相違点(ii)で相違する。
(ii)農薬有効成分の施用量が,前者が「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,後者が,農薬有効成分の施用量が「98株の苗あたり2Lで、セル成型育苗トレイに2L灌注する」点
そして,相違点(ii)は,上記相違点(i)を実質的に含んでいるから,上記アで述べたとおり,引用発明8において,甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証,甲第9号証,甲第11,12号証,甲第13号証の1?5,甲14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5の記載から,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者にとって容易になし得たということはできない。

ウ 引用発明9を主引用発明とした場合
本件発明1と引用発明9とを対比すると,上記2(3)(3-1)イ(ア)で述べたとおり,相違点(iii)で相違する。
(iii)農薬有効成分の施用量が,前者が「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,後者が「100株の苗あたり1560mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2リットル潅注する」点
そして,相違点(iii)は,上記相違点(i)を実質的に含んでいるから,上記アで述べたとおり,引用発明9において,甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証,甲第9号証,甲第11,12号証,甲第13号証の1?5,甲14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5の記載から,「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」ことが当業者にとって容易になし得たということはできない。

エ まとめ
以上のとおりであるから,本件発明1は甲第2,8,9号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証,甲第11,12号証,甲第13号証の1?5,甲14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない。

(3-2)本件発明2,3,5に対して
本件発明2,3,5は,いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含み,さらに限定したものであるから,本件発明1が甲第2,8,9号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証,甲第11,12号証,甲第13号証の1?5,甲14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない以上,本件発明2,3,5も同様には甲第2,8,9号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証,甲第11,12号証,甲第13号証の1?5,甲14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない。

(4)請求人の主張
ア 審判請求書及び平成24年12月10日付け審判事件弁駁書での主張
請求人は,容量を減らしてみることの容易性,土壌量の観点からの容易性,所望の効果を発揮させる観点からの容易性,高濃度少量散布の観点からの容易性,最適化からの観点からの容易性について,審判請求書(第24頁第12行?第28頁第14行)及び平成24年12月10日付け審判事件弁駁書(第6頁第1行?第8頁第2行,第8頁第28行?第9頁第6行)において主張しているが,これらの主張は,上記(3-1)ア(ア)?(オ)で述べたとおり,いずれも採用できない。

イ 口頭審理陳述要領書での主張
請求人は,甲第16号証の2,3から高濃度少量散布の考え方が本件優先日前に存在し,甲第32号証に示されるようにシアゾファミドでも本件優先日前に同一の施用量で容量を少なくした高濃度少量散布が実施されており,同一の施用量であれば高濃度少量散布によって高い防除効果が得られることは推定できたと主張している(口頭審理陳述要領書第15頁下から第7行?第16頁第9行)。
しかしながら,甲第32号証は,本件の効果を顕著性の有無に関する証拠であって(第1回口頭審理調書「別紙2 3」参照),シアゾファミドでも本件優先日前に同一の施用量で容量を少なくした高濃度少量散布が実施されていたことを証明する証拠ではない。
また,甲第32号証の記載内容をみても,馬鈴薯を対象作物として,疫病を防除するためにシアゾファミドを375倍の25l/10a少量散布の防除効果が1500倍の100l/10a散布と同等の効果が得られたことが記載されている(第20頁4.考察○81参照)が,本件発明1とは,対象とする病害虫が異なるものであり,農薬の有効成分が同じでも対象病害虫が異なれば,適用できる使用方法が異なることは,甲第17号証に記載される農薬の選択性に関する記載(摘記17a)からみて当然のことである。
よって,請求人の主張は採用できない。

請求人は,甲第9号証には,シアゾファミドが高濃度になるほど防除効果が高まることが記載されているので,高濃度少量散布,施用容量の最適化の観点から,施用量を少なくすることは当業者が容易に想到し得ると主張する(口頭審理陳述要領書第16頁第10行?末行)。
しかしながら,上記(3)(3-1)ア(エ)でも述べたように,甲第9号証には,同一の施用量でも高濃度少量散布によって防除効果が高まることは示唆されていないから,請求人の主張は採用できない。

請求人は,甲第10号証,甲第21号証,甲第33号証からみて,本件明細書の試験例1で示される効果は得られないと主張している(口頭審理陳述要領書第17頁第1行?第18頁第3行)。
しかしながら,上記(3)(3-1)ア(カ)で述べたように,甲第10号証,甲第21号証,甲第33号証の記載事項は,本件明細書の試験例1で示される本件発明の効果を否定するものではないから,請求人の主張は採用できない。

(5)小括
以上のとおりであるから,本件発明1?3,5は,甲第2,8,9号証(主引用発明)及び甲第3,4号証,甲第5号証の1?3,甲第6号証の1?7,甲第7号証,甲第11,12号証,甲第13号証の1?5,甲14号証の1,2,甲第16号証の2,3,甲第17号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができず,上記理由及び証拠によっては,本件発明1?3,5についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。

4 無効理由6について
(1)刊行物等の記載事項
ア 甲第2,4,8,9号証,甲第22号証の1?5の記載事項
甲第2,4号証の記載事項は,上記1(1)ア,ウに記載したとおりであり,甲第8,9号証の記載事項は,上記2(1)イ,ウに記載したとおりであ,甲22号証の1?5の記載事項は,上記3(1)キに記載したとおりである。

イ 甲第18号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第18号証には,以下の事項が記載されている。
(18a)「【0037】
そして、得られたLM-キチンを1mg/mlとなるように水に懸濁して懸濁液(以下、LM-キチン懸濁液という)とし、これを以下の実施例で、植物病害防除剤として用いた。なお、主要成分は非水溶性であることから、植物体や土壌に施用する際には、直前に十分かき混ぜて主要成分をできるだけ均一に分散させてから用いた。」
(18b)「【0046】
実施例2
キャベツ根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)の汚染圃場から土壌を採取し、2,000分の1aポットに詰めた。
【0047】
一方、キャベツ種子を、育苗培土を詰めた72穴セルトレイに播種し、約1ヶ月間温室で育苗した。これらの苗を汚染圃場に移植する前日に、上記LM-キチン懸濁液をキャベツ苗1個体当たり約3mlずつ苗の根元の土壌に灌注した。その翌日、苗を汚染ポットに植え付け、植え付け約1ヶ月後に同懸濁液をキャベツ1株当たり約5mlずつ根元の土壌に1回灌注した。そして、発病経過を観察するとともに、根の発病や発根程度を調査した。」
(18c)「【0051】
上記実施例2及び比較例4?6の根の状態(汚染ポットに移植後40日目)を図2に示す。図2から、LM-キチン(図中、「キチン分解物」)を施与したキャベツは、根こぶ病菌汚染ポットに移植しても、根こぶ病の発病が抑制され、健全な根が生長していることが分かる。一方、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖を施与しても根こぶ病の発病は抑制できないことが分かる。」

ウ 甲第19号証の記載事項
本件優先日前に頒布された刊行物である甲第19号証には,以下の事項が記載されている。
(19a)「【請求項1】アブラナ科作物の育苗方法であって、定植前の苗の根に根こぶ病防除薬の水和剤またはフロアブル剤の潅注処理または浸漬処理を行なうことによって、根の表面に前記根こぶ病防除薬の被膜を形成することを特徴とする育苗方法。」
(19b)「【0014】
【課題を解決するための手段と作用】本願の発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、定植前の苗の根に直接根こぶ病防除処理を施すことにより、高い防除効果が得られることを見出だし、本願発明の完成に至った。」
(19c)「【0019】実施例1・比較例1
定植前のハクサイ(品種:無双)の苗床に、PCNB水和剤(ペンタゲン水和剤75、北海三共(株)製)・フルアジナム水和剤(フロンサイド水和剤、石原産業(株)製)・TPN水和剤(ダコニール水和剤、武田薬品工業(株)製)の各水和剤(市販薬剤)を水で500倍・750倍・1000倍・1500倍の濃度に希釈したものを苗1株当たり15mlずつ潅注処理し、処理後の苗を汚染土を入れたプランターに定植した。比較例として、連結育苗鉢(プラグトレー)に播種する直前に、PCNB粉剤(ペンタゲン粉剤、三共(株)製)・フルアジナム粉剤(フロンサイド粉剤、石原産業(株)製)・TPN粉剤(ダコソイル、武田薬品工業(株)製)・フルスルファミド剤(ネビジン粉剤、三井東圧化学(株)製)の各粉剤を表1に示した濃度(土1リットル当たりの混和量)で育苗培土に混和処理した。この苗を、実施例と同様に汚染土を入れたプランターに定植した。」

(2)甲第18号証の記載された発明
甲第18号証には,「LM-キチンを1mg/mlとなるように水に懸濁して懸濁液(以下、LM-キチン懸濁液という)とし、これを以下の実施例で、植物病害防除剤として用いた。」(摘記18a参照),「キャベツ種子を、育苗培土を詰めた72穴セルトレイに播種し、約1ヶ月間温室で育苗した。これらの苗を汚染圃場に移植する前日に、上記LM-キチン懸濁液をキャベツ苗1個体当たり約3mlずつ苗の根元の土壌に灌注した。」(摘記18b参照),「LM-キチン(図中、「キチン分解物」)を施与したキャベツは、根こぶ病菌汚染ポットに移植しても、根こぶ病の発病が抑制され、健全な根が生長していることが分かる。」(摘記18c参照)と記載されている。
そうすると,甲第18号証には,
「LM-キチンを1mg/mlとなるように水に懸濁したLM-キチン懸濁液を72穴トレイの苗1株当たり、定植前に3mlずつ苗の根元の土壌に潅注する根こぶ病の防除方法」の発明(以下,「引用発明18」という。)が記載されているといえる。

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1に対して
ア 対比
引用発明18の「水に懸濁したLM-キチン懸濁液」は,本件発明1の「農薬有効成分の水性分散液」に相当する。
引用発明18の「LM-キチンを1mg/mlとなるように水に懸濁したLM-キチン懸濁液」を「定植前に3mlずつ苗の根元の土壌に潅注する」ことは,本件発明1の「農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.3gになるように,100株の苗あたり300mlの容量で」「潅注する」ことに相当する。また,引用発明18は,キャベツの苗を用いている(摘記18b参照)から,「72穴のトレイ」は,本件発明1の「畑作物の苗育成区画」に相当する。
そうすると,本件発明1と引用発明18とを対比すると,
「1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。」である点で一致し,以下の点で相違している。
(iv)農薬有効成分が,前者は「化合物Aおよびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液」であるのに対して,後者は「LM-キチン」である点
(v)農薬有効成分の施用量が,前者は「苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように、かつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」「潅注または散布する」のに対して,後者は,単位面積当たりの薬剤量や潅注量が明確ではない点

イ 相違点の検討
相違点(iv)について検討する。
上記1(1),上記2(1)に記載したとおり,甲第2,4,9号証には,シアゾファミドが根こぶ病の防除方法に用いられる農薬有効成分であることが記載されており,甲第8号証には,化合物Aが根こぶ病の防除方法に用いられる農薬有効成分であることが記載されている。
しかしながら,上記1(3)(3-1)イ(イ)で述べたように,農薬有効成分や適用作物が異なる場合には,単位面積当たりの薬液の使用量,希釈倍数及び使用量と希釈倍数から算出される容量を,それ以外の農薬有効成分や作物に,そのまま適用することができないのであるから,引用発明18の農薬有効成分である「LM-キチン」を甲第2,4,9号証に記載されるシアゾファミドや甲第8号証に記載される化合物Aに置き換えるに当たっては,「LM-キチン」の単位苗当たりまた単位面積あたりの使用量や希釈倍数及び両者によって算出される容量をそのまま適用するすることができない。
また,甲第19号証には,「定植前の苗の根に根こぶ病防除薬」を「潅注処理」するに際して,「根こぶ病防除薬」を防除「水で500倍・750倍・1000倍・1500倍の濃度に希釈したものを苗1株当たり15mlずつ潅注処理」ことが記載されている(摘記19a,19b参照)が,農薬有効成分として,シアゾファミドや化合物Aを用いることは記載されておらず,また,潅注する容量も100株の苗あたり1500mlとなるから,本件発明1とも,引用発明18ともその容量と範囲が異なるものである。
また,甲第22号証の1?5には,根こぶ病の防除方法として,農薬有効成分を苗育成区画に潅注することは記載されているが,農薬有効成分として,シアゾファミドや化合物Aを用いることは記載されていない。
そうすると,甲2,4,8,9号証にシアゾファミド又は化合物Aが根こぶ病の防除方法に用いられる農薬有効成分であることが記載されていたとしても,また,根こぶ病の防除方法として苗育成区画に農薬有効成分を潅注することが記載されていたとしても,農薬有効成分として「LM-キチン」を用いる引用発明18において,「農薬有効成分の施用量」や「容量」を同じままにして,農薬の有効成分をシアゾファミドや化合物Aに変更することが当業者が容易になし得たことと認めることができない。

ウ まとめ
よって,本件発明1は,その余の相違点や効果を検討するまでもなく,本件発明1は甲第18号証(主引用発明)及び甲第2,4,8,9,19号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3-2)本件発明2,3,5に対して
本件発明2,3,5は,いずれも本件発明1の発明特定事項をすべて含み,さらに限定したものであるから,本件発明1が甲第18号証(主引用発明)及び甲第2,4,8,9,19号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない以上,本件発明2,3,5も同様に甲第18号証(主引用発明)及び甲第2,4,8,9,19号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができない。

(4)請求人の主張
請求人は,無効理由6について,審判請求書(第28頁下から第2行?第29頁第10行),平成24年12月10日付け審判事件弁駁書(第9頁第14?33行)で主張していたところ,当審から審理事項通知として,「甲第18号証記載の農薬はキチン加水分解物であり、本件発明の農薬は化合物A又はシアゾファミドです。キチン加水分解物がどの程度の施用量で用いられても、農薬が異なれば、それに適する苗100株あたり、また、苗育成区画面積1800cm^(2)あたりの容量も変わると思われ、化合物Aやシアゾファミドについて、甲18号証に記載される水溶液の容量をそのまま適用できるとは考えられないと解されます。
この点に関して、意見があれば、証拠の引用箇所を摘記の上、なぜ、化合物Aやシアゾファミドについても、農薬が異なる甲18号証の水溶液の容量をそのまま適用できるのか明確に説明してください。」と通知した。
これに対して,請求人は,審判請求書で主張したとおりと回答し(口頭審理陳述要領書第19頁第1?4行),これ以上の主張はないとしている(第1回口頭審理調書「別紙2 6」)。
そうすると,請求人の無効理由6に関する審判請求書での主張は,上記(3-1)イで述べたとおり,採用できない。

(5)小括
以上のとおりであるから,本件発明1?3,5は,甲第18号証(主引用発明)及び甲第2,4,8,9,19号証,甲第22号証の1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができず,上記理由及び証拠によっては,本件発明1?3,5についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえない。

5 無効理由7及び無効理由A
(1)請求人の主張する無効理由7
請求人の主張する無効理由7は,要約すると以下のとおりである(審判請求書第29頁第11行?第33頁第34行,平成25年11月14日付けの審判事件弁駁書第2頁第20行?第5頁第31行)。

ア 土壌について
本件明細書の発明の詳細な説明には,「薬液の容量」と密接な関係のある苗育成用容器に使用される土壌についての十分な記載がなく,当業者が本件発明の実施をすることができる程度に記載されていない。

イ 薬剤量(施用量)と薬液量(容量)の関係について
本件明細書の発明の詳細な説明には,本件特許の効果が確認される薬液量(容量)の下限値は98株あたり500mlかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500mlとしてしか記載されておらず,本件発明で規定される薬液量の下限値付近では効果が発揮できるとは認められない。
また,当業者が,本件発明を実施するにあたり,本件発明で規定される薬剤量(施用量)と薬液量(容量)の組み合わせは無数に存在し,本件発明の効果が発揮されるように本件発明を実施するには,当業者に過度の試行錯誤を強いるものである。

ウ 苗育成用容器について
本件明細書の発明の詳細な説明には,98穴トレイを使用して農薬有効成分の一つの施用量での試験結果(試験例1)が記載されているのみであって,実用に適するようにセルトレイの穴数を変更した場合には,本件発明の効果を再現するためには,薬剤量,薬液濃度,薬液容量において,無数の組み合わせを検討する必要があるが,これらと使用する苗育成用容器との関係についての記載も,使用される苗育成用容器の十分な記載がなく,当業者が本件発明を実施することができる程度に,発明の詳細な説明が記載されていない。

エ 薬剤濃度について
本件発明で規定される薬剤量(施用量)及び薬液量(容量)から計算される薬液濃度は91?250000ppmとなり,非常に広い濃度範囲となり,実施可能な範囲を逸脱している。本件発明を実施するには,投下薬液量(施用量)と薬液量(容量)だけではなく,薬剤濃度も重要であるにもかかわらず,発明の詳細な説明には当該関係について十分な記載がなく,当業者が本件発明を実施することができる程度に,発明の詳細な説明が記載されていない。

オ 試験例1の試験方法について
本件明細書の発明の詳細な説明には,試験例1として,有効成分をトレイに噴霧散布し,噴霧散布翌日に汚染土壌に定植し,更にその4週間後健全土壌に移植し,移植3週間後に発病度及び防除価を評価したことが記載されている。しかしながら,汚染土壌に定植後,さらに健全土壌に移植することは通常行われず,健全土壌に移植することなく発病度と防除価を評価すると,本件発明の効果が得られない(甲第21号証参照)。
したがって,本件発明の効果は,有効成分をセルトレイに噴霧散布し,噴霧散布翌日に汚染土壌に定植し,更にその4週間後健全土壌に移植するという,一連の工程を経ることによってのみ生じるものである。
そして,本件発明の効果が発揮されるには,このような一連の工程が必要であるにもかかわらず,発明の詳細な説明には,当該事項について十分な記載がなく,当業者が本件発明を実施することができる程度に,発明の詳細な説明が記載されていない。

(2)当審が通知した無効理由A
当審が通知した無効理由Aは,要約すると以下のとおりである(無効理由通知書参照)。
本件発明1?3,5においては,「農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、・・・100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布する」との発明特定事項を含むものであるから,苗が苗育成区画面積1800cm^(2)あたり100?2500株存在する態様を含むものとなるが,発明の詳細な説明には,1800cm^(2)あたり2500株ないしはそれに近い株数の苗を高密度に植生させる態様については記載されていないし,このような高密度で苗を植生させるための手法が,当業者の出願時の技術常識として知られていたとも認められないから,発明の詳細な説明には,本件発明1?3,5を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

(3)特許法第36条第4項の解釈
特許法第36条第4項は,「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その第1号で,「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。特許法第36条第4項第1号は,明細書のいわゆる実施可能要件を規定したものであって,方法の発明では,その方法を実施する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか,そのような記載がない場合には,明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき,当業者が過度の試行錯誤を行う必要なく,その方法を実施することができなければならないと解される。

(4)発明の詳細な説明の記載
本件明細書の発明の詳細な説明に,以下の事項が記載されている。
(a)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、粉剤の土壌混和処理よりも省力的であり、環境と施用作業者に対して安全性の高い農薬の施用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究した結果、畑作物の苗に対して農薬有効成分の水溶液または水性分散液を施用することによって、従来行われてきた土壌混和処理に比べて優れた土壌病害の防除効果を発現させることができ、且つ、作業労力や環境汚染を軽減化し、施用作業者に対する安全性を高めることができることを見出した。
【0006】
特に本発明者らは、単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の水溶液または水性分散液の施用量が少なくなるほど、土壌病害の防除効力が高まることを見出し、本発明を完成させた。」
(b)「【発明の効果】
【0028】
本発明方法によれば、従来行われてきた土壌混和処理に比べて優れた土壌病害の防除効果を発現させることができる。また、作業労力や環境汚染を軽減化し、施用作業者に対する安全性を高めることができる」
(c)「【0030】
本発明において用いられる畑作物の苗育成用容器とは、苗箱、プラスチックポット、セルトレイ、セル苗トレイ、プラグトレイ、ペーパーポット(登録商標、日本甜菜製糖(株))およびチェーンポット(登録商標、日本甜菜製糖(株))に代表される畑作物の苗を育成するために用いられる容器である。」
(d)「【0043】
薬液の潅注または散布は、如露や噴霧器等の適当な器具を使用して行うことができる。」
(e)「【0044】
単位株数の苗あたりの薬液施用量は特に制限されないが、通常100株の苗あたり20?2100mlである。単位株数の苗あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位株数の苗あたりの薬液施用量が少なくなる程土壌病害の防除効力が高まることから、100株の苗あたりの薬液施用量は、好ましくは20?1600ml、より好ましくは20?1100ml、更に好ましくは20?600mlである。
【0045】
畑作物の苗育成区画または畑作物の苗育成用容器の単位面積あたりの薬液施用量は特に制限されないが、通常1800cm^(2)あたり20?2100mlである。単位面積あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位面積あたりの薬液施用量が少なくなる程土壌病害の防除効力が高まることから、1800cm^(2)あたりの薬液施用量は、好ましくは、20?1600ml、より好ましくは20?1100ml、更に好ましくは20?600mlである。その他の薬液施用量の例としては、20?2000ml、20?1500ml、20?1000mlおよび20?500mlが挙げられる。
【0046】
上記農薬有効成分の施用量は、限定されるものでないが、100株の苗あたり通常0.05?20g、好ましくは0.1?10gであり、さらに好ましくは0.1?5gである。また、1800cm^(2)あたりでは、通常0.05?20g、好ましくは0.1?10gであり、さらに好ましくは0.1?5gである。」
(f)「【実施例】
【0065】
本発明の有用性について、以下の試験例において具体的に説明する。但し、本発明はこれらのみに制限されるものではない。
【0066】
なお、以下の実施例で用いた供試土壌(汚染土壌)及び供試植物、並びに化合物Aの顆粒水和剤の製造例は以下の通りである。
・供試土壌:健全土壌にアブラナ科根こぶ病菌休眠胞子を2×10^(5)個/gの割合にて添加
・供試植物:セルトレイ(苗98株/トレイ、1800cm^(2)/トレイ)内で3?4葉期まで育成したハクサイ(品種:無双)
・化合物Aの顆粒水和剤:
〔配合組成〕
(1)化合物A 50.0質量部
(2)アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 3.0質量部
(3)リグニンスルホン酸ナトリウム 15.0質量部
(4)硫酸アンモニウム バランス
上記(1)?(4)を混合粉砕した後、造粒水を加えて混練した。0.8mmのスクリーンをつけた押出造粒機にて造粒後、乾燥、整粒して顆粒水和剤を得た。
〔試験例1〕 散布薬液量別:ハクサイ根こぶ病防除効果試験
前記化合物Aの顆粒水和剤を水で希釈し、化合物Aの投下薬量が同量となるように濃度を調整した薬液を、前記供試植物の各セルトレイごとに5ml、10mlまたは20mlの散布薬液量で株元に噴霧散布した。シアゾファミド懸濁剤(ランマンフロアブル〔商品名〕、石原産業(株)製)も水で希釈して薬液を調製し、化合物Aと同様に処理した。
【0067】
噴霧散布翌日、セルトレイから苗を抜き取り、直径10cmのポットに前記供試土壌を用いて定植した。
【0068】
温室内(20℃調整)で4週間植物を育成後、ポットより土壌ごと植物を取り出し、健全土壌を入れた4寸鉢内に移植した。移植3週間後に根部の根こぶの着生程度を調べ、発病度及び防除価を評価した。
【0069】
なお発病度及び防除価は下記の式に従い算出した。
【0070】
発病度=〔Σ(程度別発病株数×発病指数)/(調査した株×3)〕×100
防除価=〔1-(処理区発病度/無処理区発病度)〕×100
[発病指数]
0 :根こぶの着生なし
0.5 :側根に根こぶを形成
1 :主根に小さな根こぶを形成
2 :主根に大きな根こぶを形成
3 :主根と側根に根こぶを形成
試験例1より得られた結果を表1に示す。
【0071】

表1に示すとおり、化合物A顆粒水和剤またはシアゾファミド懸濁剤のいずれの薬剤を用いた場合でも、散布薬液量を0.5L/トレイとしたものが最も発病度が低く、優れた防除価を示した。
〔試験例2〕 処理方法別:ハクサイ根こぶ病防除効果試験
(1)セル苗潅注法
前記供試植物に、前記化合物Aの顆粒水和剤を水で500倍に希釈した薬液をセルトレイ当り0.5L潅注した。翌日、薬剤処理した苗をアブラナ科根こぶ病汚染圃場に定植した。
(2)土壌混和法
化合物Aの土壌混和処理は、定植当日に化合物Aの粉剤を30kg/10aとなるように薬剤を前記アブラナ科根こぶ病汚染圃場の土壌表面に散布し、よく混和した後にセル苗を定植した。
【0072】
定植60日後に根部の根こぶの着生程度別株数を調べた。下記の式に従い、発病度を算出した。
【0073】
発病度=〔Σ(程度別発病株数×発病指数)/(調査した株×4)〕×100
防除価=〔1-(処理区発病度/無処理区発病度)〕×100
[発病指数]
0:根こぶの着生なし
1:全体の25%以下に根こぶ形成
2:全体の25-50%に根こぶ形成
3:全体の50-75%に根こぶ形成
4:全体の75%以上に根こぶ形成
得られた結果を表2に示す。
【0074】

表2に示すとおり、処理方法としてセル苗潅注法を採用すると、土壌混和法と比べて薬剤の処理量を約1/10も少なくでき、且つ、防除価に優れるとする結果が得られた。」

(5)判断
ア 土壌に関して
本件明細書の発明の詳細な説明には,使用する土壌についての一般的な記載はなく,また,実施例にも「供試土壌:健全土壌にアブラナ科根こぶ病菌休眠胞子を2×10^(5)個/gの割合にて添加」(摘記f参照)と記載されているだけで,どのような土壌を用いたかについては記載されていない。
一方,本件出願日前に頒布された甲第3号証には,「セル苗用培地」として,「セル苗は・・・限られた根域で管理されるために培地の水分,pHや養分などの変動が大きいことから,培地の品質が重要となる(表6)」と記載され(摘記3d参照),表6では,「セル苗用培地の好ましい品質(JA全農,葉菜類用)」として,「全孔隙率」,「はっ水性」,「pH」などの項目の内容が記載されており(摘記3e),全孔隙率,はっ水性は,明らかに土壌の保水性に関する品質を定めたものであるから,セル用培地としては,表6で示されるような「全孔隙率」,「はっ水性」,「pH」などの項目が好ましい品質として定められた土壌を使用すれば,土壌の保水性も維持され,薬液として散布または潅注された農薬有効成分の残留量も一定の範囲に保持されることが,本件出願日時点での技術常識であったことが理解できる。
さらに,甲第3号証には,「近年は,品質管理された多種多様なセル苗用培地が市販されており」と記載されている(摘記3d参照)ので,上記の好適な品質のセル培地が市販されており,また,甲第9号証には,本件発明1と同じくシアゾファミドを農薬有効成分として使用するハクサイの根こぶ病防除のための土壌として,「育苗コンポストTM-1(N:P:K=150:560:100mg/kgのコンポスト、タキイ種苗株式会社、日本)」を用いたことも記載されている(摘記9b参照)から,実際に,上記の「セル苗用培地の好ましい品質(JA全農,葉菜類用)」のものが市販されて,実際に使用されていたことが理解できる。
そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明には,使用する土壌の種類について,具体的にどのような土壌を用いたのか記載されていないが,本件出願時点の上記技術常識を踏まえれば,上述の「全孔隙率」,「はっ水性」,「pH」などの項目が好ましい品質として定義された,市販されている「セル苗用培地」が使用され,そのような土壌を用いれば,本件発明1?3,5を実施できることは当業者であれば理解できるから,発明の詳細な説明に土壌の種類が明記されていなくても,本件発明1?3,5を実施するに際して,当業者が過度の試行錯誤を要したとは認められない。

イ 薬剤量(施用量)と薬液量(容量)の関係及び無効理由Aに関して
当審が通知した無効理由Aは,単位株数当たり及び単位面積あたりの薬液量(容量)相互の関係を指摘するもので,請求人が主張していた薬剤量(施用量)と薬液量(容量)との関係に関する主張と必ずしも同じではないが,ともに,本件発明1の薬液量(容量)に関する点で共通するところがあるので,一括して検討する。

(ア)無効理由Aについて
本件発明1?3は,「農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、該農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1g?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布する」との発明特定事項を含むものであるから,「農薬有効成分の水溶液または水性分散液を」,「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量」,すなわち,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500mlの最低容量を選択した場合でも,「100株の苗あたり20ml?500mlの容量」となる態様を含み,必然的に,苗が苗育成区画面積1800cm^(2)あたり100?2500株存在することとなる。
一方,発明の詳細な説明には,「セルトレイ(苗98株/トレイ、1800cm^(2)/トレイ)」と記載され(摘記f参照),セルトレイに500mlの容量を散布した試験例1は記載されてはいるものの,これは,98株あたり500mlの容量であって,1800cm^(2)あたり2500株ないしはそれに近い株数の苗を高密度に植生させる態様,すなわち,薬液の容量を「100株の苗あたり20ml」という最小値に近い範囲とする態様については記載されていない。
しかしながら,通常,1800cm^(2)あたり100?300穴程度の畑作物の苗育成容器を用いられているとの本願出願時の技術常識(摘記3a,3b参照)を参酌すれば,本件発明1?3において,1800cm^(2)あたり2500株ないしはそれに近い株数の苗を高密度に植生させる態様,すなわち,薬液の容量が「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量」のうち「20ml」という最小値に近い範囲は,本件発明1?3において,実質的に実施を想定していない範囲であることが当業者に理解し得るから,このような範囲では実施できないとしても,本件発明1?3が全体として,当業者が実施することができないとまでいうことはできない。
また,本件発明5の発明特定事項は「98株の苗あたり500ml?1000mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で」あるから,上述のような苗が高密度に植えられなければならない態様を含まず,発明の詳細な説明の記載に基づいて,当業者が過度の試行錯誤をすることなく,実施できるものと認められる。

(イ)薬液量(容量)について
発明の詳細な説明には,薬液の容量を「100株の苗あたり20ml?500ml」の範囲とすることは具体的な実施例として記載されていない。
しかしながら,上記(ア)で述べたように,通常,1800cm^(2)あたり100?300穴程度の畑作物の苗育成容器を用いるとの本願出願時の技術常識を参酌すれば,薬液の容量を「100株の苗あたり20ml?500ml」の範囲のうち20mlに近い範囲はそもそも実施を想定していない範囲であることが当業者に明らかであって,薬液の容量を「100株の苗あたり20ml?500ml」の範囲としても,1800cm^(2)あたり100?300穴程度の畑作物の苗育成容器を使用することにより,本件発明1?3を実施可能であるといえる。

(ウ)薬剤量(施用量)と薬液量(容量)との関係について
薬剤の施用量の範囲は「100株の苗あたり0.1?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5gになるように」し,薬液の容量の範囲は「100株の苗あたり20?1100mlで,かつ,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100ml」となる組み合わせは,数多く存在するが,それぞれの薬剤の施用量の範囲,薬液の容量の範囲は,いずれも実施できない範囲はなく,これらの範囲内に薬剤の施用量や薬液の容量を設定して,根こぶ病の防除方法を実施することに,当業者が過度の試行錯誤を要したとは認められない。
なお,薬剤の施用量が「100株の苗あたり0.1?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5g」,薬液の容量が「100株の苗あたり20?1100mlで,かつ,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100ml」の範囲において,すべての条件のすべての範囲の組み合わせについて防除効果を奏しないとしても,発明特定事項である上記単位株数あたり又は単位面積あたりの薬剤の施用量,薬液の容量のある条件の数値範囲にわたって,その他の条件の範囲内のいずれかの値を採用することにより防除効果を奏するのであれば,本件発明1?3,5を実施し得るということができ,すべての条件のすべての範囲の組み合わせについて防除効果を奏しないという理由によって,本件発明1?3,5を実施するのに当業者が過度の試行錯誤を要したということはできない。

ウ 苗育成用容器について
本件明細書の発明の詳細な説明には,苗育成用容器に関して「本発明において用いられる畑作物の苗育成用容器とは、苗箱、プラスチックポット、セルトレイ、セル苗トレイ、プラグトレイ、ペーパーポット(登録商標、日本甜菜製糖(株))およびチェーンポット(登録商標、日本甜菜製糖(株))に代表される畑作物の苗を育成するために用いられる容器である。」(摘記c参照)と具体的に記載されており,また,試験例1,2において,98株の苗育成容器を使用している(摘記f参照)から,苗育成容器を選択するのに当業者が過度の試行錯誤を要したとは認められない。
また,セルトレイの苗数に関していえば,上記イで述べたとおり,当業者において,例えば,甲第3号証に記載される苗育成区画1800cm^(2)あたり100?300株程度のセルトレイを使用すれば,本件発明1?3,5を実施するのに当業者が過度の試行錯誤を要したとは認められない。

エ 薬液濃度について
本件発明1?3,5において,薬剤の施用量の範囲と,薬液の容量の範囲は発明特定事項となっているが,薬液の濃度については発明特定事項となっていない。
そして,薬剤の施用量の範囲と薬液の容量の範囲から計算上可能な薬液の濃度の範囲すべてで防除効果を奏する必要はなく,発明特定事項である薬剤の施用量の範囲と薬液の容量の範囲として規定された範囲内で,本件発明1?3,5が実施できればよいのであって,上記イで述べたとおり技術常識を参酌すれば,当業者が実施できないとはいえないから,本件発明1?3,5を実施するにあたり,当業者が過度の試行錯誤を要したとは認められない。

オ 試験例1について
発明の詳細な説明には,試験例1において,「4週間植物を育成後、ポットより土壌ごと植物を取り出し、健全土壌を入れた4寸鉢内に移植した。移植3週間後に根部の根こぶの着生程度を調べ、発病度及び防除価を評価した」ことが記載されている(摘記f参照)。
そして,このような条件で実施すれば,少なくとも,本件発明1?3,5は,当業者が実施できるのであるから,仮に,実施条件の異なる甲第21号証,甲第33号証の試験結果がどのようなものであっても,発明の詳細な説明の記載に基いて,本件発明1?3,5を実施することに,当業者が過度の試行錯誤を要したとは認められない。

(6)請求人の主張
ア 土壌について
請求人は,培土の種類によっては乾燥しやすいものがあるので,土壌の状態が異なれば薬剤の分布も異なるので効果にも影響すると主張している(平成25年3月1日付け上申書第3頁下から第6行?第4頁第2行)。
しかしながら,上記(5)アで述べたように,本件発明1?3,5において,甲第3号証に記載されるセル培土として好適な品質のものを用いることは,本件出願時の技術常識であったといえるから,本件明細書の発明の詳細な説明に土壌の種類について記載がないとしても,本件出願時の技術常識を踏まえれば,本件発明1?3,5を実施するに,当業者が過度の試行錯誤を要したものとは認められない。
よって,請求人の主張は採用できない。

イ 薬剤量(施用量)と薬液量(容量)の関係及び無効理由Aについて
(ア)無効理由Aについて
請求人は,
・特許請求の範囲に明確に記載された薬液容量に定まる単位面積当たりの株数の範囲の一部が実施可能要件及びサポート要件を満たしていれば,あとは技術常識を参酌して,請求項の記載により定まる範囲全体にわたって実施可能要件及びサポート要件を満たしているということにはならない,
・苗育成区画面積1800cm^(2)あたり98株の試験例しかないにもかかわらず,その規定のしかたを両者で意図的にずらしたことによって,あり得ない株数を含む態様が発生したものであり,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2500株に近い苗を植生させる態様を本件発明1の範囲に含ませることを意図していないとの被請求人の主張は失当である,
と主張している(平成25年11月14日付け審判事件弁駁書第4頁第29行?第5頁20行)。

しかしながら,上記(4)イ(ア)で述べたように,請求項の記載によって定められる範囲に一部実施できない部分が含まれているとしても,そのような範囲は,技術常識からして実質的に実施を想定していない範囲であることは,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり2500株に近い苗を植生させる態様を本件発明1の範囲に含ませることを意図していないとの被請求人の主張のみからではなく,当業者にも理解し得るから,請求人の主張は採用できない。
そして,薬液の容量の範囲は「100株の苗あたり20?1100mlで,かつ,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100ml」との範囲のうち,試験例1の裏付けのある「100株の苗あたり500?1100mlで,かつ,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100ml」に加えて,トレイ当たりの苗の株数を実施可能な範囲で増やすことにより,「100株の苗あたり20?500ml」の範囲内でも実施できることは,技術常識から明らかといえる。

(イ)薬剤量(施用量)と薬液量(容量)の関係について
請求人は,本件発明1?3,5において,薬剤量(施用量)と薬液量(容量)が定める範囲が広範にすぎ,同じ施用量であっても,高濃度少量散布とすることによって防除効果を高めるという効果を奏さないと主張している(平成24年12月10日付け審判事件弁駁書第10頁第2?16行,口頭審理陳述要領書第19頁第6?27行)。
しかしながら,上記(5)イ(ウ)で述べたように,本件発明1?3,5において,すべての条件のすべての範囲の組み合わせについて防除効果を奏するといえないとしても,発明特定事項である各条件の数値範囲にわたって,その他の条件の範囲内のいずれかの値を採用することにより防除効果を奏するのであれば,本件発明1?3,5を実施し得るといえるから,請求人の主張は採用できない。

ウ 苗育成用容器について
請求人は,1800cm^(2)あたり300株のセルトレイを用いた場合にも,単位株数あたりと施用面積あたりの施用量が同じ範囲の施用量において,98穴セルトレイと同じ効果が奏されると結論付けるには,それなりの理由付けが必要であると主張していたところ(審判弁駁書第10頁第28?31行),当審から審理事項通知において,「1800cm^(2)あたり100株のトレイで、500mlを使用した場合と、1800cm^(2)あたり300株のトレイで、1500mlを使用した場合は、100株あたりの容量は同じでも、後者の場合は、苗育成区画面積あたりの容量が本件発明の範囲外になり、必ずしも同じ効果を奏する必要はないと思われます。
この点について、何か意見があれば述べてください。」と回答を求めたが,口頭審理陳述要領書では何ら回答がなく,これ以上の意見がない(第1回口頭審理調書「別紙2 7(1)」参照)とされた。
そうすると,上記(5)ウで述べたように,請求人の主張は採用できない。

エ 薬液濃度について
請求人は,本件発明1?3,5の薬液の施用量の範囲,容量の範囲で定められる薬液濃度の範囲が広範にすぎ,その全範囲にわたって,同じ施用量であっても,高濃度少量散布とすることによって防除効果を高めるという効果を奏さないと主張している(平成24年12月10日付け審判事件弁駁書第11頁第4?18行)。
しかしながら,上記(5)エで述べたように,本件発明1?3,5において,薬液の濃度については発明特定事項となっていないのであるから,薬液の施用量の範囲と薬液の容量の範囲から計算される薬液濃度がどれほど広範囲であろうと,本件発明1?3,5の薬液の施用量の範囲,容量の範囲で定められる範囲が,それぞれの範囲内で実施できればよく,本件発明1?3,5を実施する際に,当業者が過度の試行錯誤を要したと認められない。

オ 試験例1について
請求人は,甲第21号証の実験結果が甲第10号証の結果と矛盾しないとした上で,本願明細書の試験例1のような根元に一株ずつ噴霧散布するという非常に均一な条件で農薬処理した苗を,根こぶ病菌が存在する通常土壌に移し替えて4週間育成した後,さらに「健全土壌に移植して」根こぶ病の着生程度を調べるという,通常行うことのない条件下で評価された特有の効果であり,甲第21号証の結果は甲第32?34号証の結果とも全く矛盾しないと主張している(平成25年12月10日付け審判事件弁駁書第5頁第4?6行,平成25年3月1日付け上申書第2頁第20行?第3頁第18行)。
しかしながら,上記(5)オで述べたように,試験例1と実施条件の異なる甲第21号証,甲第32?34号証の実験結果がどのようなものであろうと,本件発明1?3,5が具体的に実施できる条件が具体的な実施例として,発明の詳細な説明に記載されているのであるから,本件発明1?3,5を実施するにあたって,当業者が過度の試行錯誤を要したとは認められない。

(7)小括
以上のとおり,上記のいずれの理由及び証拠によっても,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が本件発明1?3,5を実施できるように明確かつ十分に記載されていないとはいえないから,発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4号第1号に適合するものではなく,本件特許が特許法第36条第4項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであるとはいえない。

6 無効理由8及び無効理由B
(1)請求人が主張する無効理由8
請求人の主張する無効理由8は,要約すると以下のとおりである(審判請求書第29頁第11行?第33頁第34行,口頭審理陳述要領書第19頁第5?30行,第19頁末行?第20頁第26行,平成25年11月14日付けの審判事件弁駁書第2頁第20行?第5頁第31行)。

ア 土壌について
本件明細書の発明の詳細な説明には,「薬液の容量」と密接な関係のある苗育成用容器に使用される土壌についての十分な記載がなく,いかなる土壌についてまでも本件発明1?3,5の効果を奏するとはいえないから,発明の詳細な説明の内容を,本件発明1?3,5の範囲まで拡張または一般化することができない。

イ 薬剤量(施用量)と薬液量(容量)について
本件明細書の発明の詳細な説明には,試験例1として,薬液量(容量)は,「100株株の苗あたり500?1100ml,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100ml」の範囲についてしか本件発明の防除効果が確認されておらず,「100株の苗あたり20?1100ml」との範囲を含む本件発明1?3の範囲まで本件発明の防除効果を奏するとはいえない。
本件明細書の発明の詳細な説明には,試験例1として,農薬有効成分の施用量が「100株の苗あたり0.4?0.5gかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.4?0.5g」の範囲のみ本件発明の効果を奏するというべきで,本件発明1?3,5の「100株の苗あたり0.1?5gかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5g」の全範囲まで本件発明の課題が解決できることが裏付けられていない。
また,本件明細書の発明の詳細な説明において,潅注処理した試験例2の防除効果は,噴霧散布された試験例1の結果と異なり,本件発明の効果が得られることが実証されておらず,潅注の場合において,発明の詳細な説明の内容を,本件発明1?3,5で規定される薬液の容量の範囲まで拡張または一般化することができない。

ウ 苗育成用容器について
本件明細書の発明の詳細な説明には,98穴トレイを使用して農薬有効成分の一つの施用量での試験結果(試験例1)が記載されているのみであって,異なる苗育成用容器を使用した場合についてまで,同様の効果を奏するとはいえないから,発明の詳細な説明の内容を,本件発明1?3,5の範囲まで拡張または一般化することができない。

エ 薬剤濃度について
本件発明で規定される薬剤量(施用量)及び薬液量(容量)から計算される薬液濃度は91?250000ppmとなり,非常に広い濃度範囲となり,これらの範囲全体にわたって,本件発明の効果が生じるといえないから,発明の詳細な説明の内容を,本件発明1?3,5の範囲まで拡張または一般化することができない。

オ 試験例1の試験方法について
本件明細書の発明の詳細な説明には,試験例1として,有効成分をトレイに噴霧散布し,噴霧散布翌日に汚染土壌に定植し,更にその4週間後健全土壌に移植し,移植3週間後に発病度及び防除価を評価した例しか記載されておらず,汚染土壌に移植しない場合においても本件発明の効果を奏することが記載されていないから,発明の詳細な説明の内容を,本件発明1?3,5の範囲まで拡張または一般化することができない。

(2)当審が通知した無効理由B
当審が通知した無効理由Bは,要約すると以下のとおりである(無効理由通知書参照)。
本件発明1?3,5については,農薬有効成分の施用量が,「100株あたり0.1?5g,苗育成区画1800cm^(2)あたり0.1?5g」であり,薬液の容量が「苗100株あたり20?1100ml,苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100mlの範囲」であることを,その発明特定事項としている。
そして,発明の詳細な説明には,試験例1によれば,薬液の容量が「100株の苗あたり500?1100mlで,かつ,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100ml」の範囲については,本件発明の課題が解決できることの具体的な裏付けがなされているといえる。
一方,本件発明1?3,5は,薬液の容量の範囲は,苗100株あたり20?500ml,苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100mlの範囲,すなわち,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500mlの最低容量としても,「100株の苗あたり20ml?500mlの容量」となる態様を含んでいる。
そして,この態様は,苗が苗育成区画面積1800cm^(2)あたり100?2500株存在する態様であって,この態様については,発明の詳細な説明に記載されていないし,出願時の技術常識を参酌しても,1800cm^(2)あたり2500株ないしはそれに近い株数の苗を高密度に植生させる態様をそもそも実施できるとはいえない以上,このような範囲についてまで,同じ農薬有効成分の施用量であっても,薬液容量が少ないものほど根こぶ病の防除価が高くなるとの課題も解決できるということはできない。
そうすると,本件発明1?3,5において,「100株の苗あたり20ml?1100mlの容量」との範囲のうち,20mlに近い範囲まで,本件発明の課題が解決できるということはできないから,本件発明1?3,5は,発明の詳細な説明に記載されたものということができない。

(3)特許法第36条第6項第1号の解釈
特許法第36条第6項は,「第三項第四号の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し,その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は,明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって,特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。
以下,この観点に立って検討する。

(4)本件発明の課題について
本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の課題は,「粉剤の土壌混和処理よりも省力的であり、環境と施用作業者に対して安全性の高い農薬の施用方法を提供すること」であり,本件発明の課題が解決できるのは,「単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の水溶液または水性分散液の施用量が少なくなるほど、土壌病害の防除効力が高まることを見出し、本発明を完成させた」(摘記a参照)と記載されているので,本件発明の課題は,単に農薬の容量を減らすのみにとどまらず,「単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の水溶液または水性分散液の施用量が少なくなるほど(結果的に,高濃度少量散布とすることで)、土壌病害の防除効力が高まる」という効果を奏することで農薬の容量を減らし,その効果により,「粉剤の土壌混和処理よりも省力的であり、環境と施用作業者に対して安全性の高い農薬の施用方法を提供する」との課題を解決しようとするものであると認める。

(5)判断
ア 土壌について
上記5(5)アで述べたように,本件明細書の発明の詳細な説明には,使用する土壌についての一般的な記載はなく,また,実施例にも「供試土壌:健全土壌にアブラナ科根こぶ病菌休眠胞子を2×10^(5)個/gの割合にて添加」(摘記f参照)と記載されているだけで,どのような土壌を用いたかについては記載されていない。
しかしながら,甲第3号証に記載されるように,セル用培地として,表6で示されるような「全孔隙率」,「はっ水性」,「pH」などの項目が好ましい品質として定められた土壌を使用すれば,土壌の保水性も維持され,薬液として散布または潅注された農薬有効成分の残留量も所定の範囲内の保持されることが,本件出願日時点での技術常識であったといえ,甲第9号証の記載から,上記の「セル苗用培地の好ましい品質(JA全農,葉菜類用)」のものが市販されて,実際に使用されていたことが理解できる。
そうすると,本件出願時点の技術常識を踏まえれば,発明の詳細な説明に土壌の種類について記載がなくても,本件発明1?3,5においては,上述の「全孔隙率」,「はっ水性」,「pH」などの項目が好ましい品質として定義された,市販されている「セル苗用培地」が使用されたものと解され,そのような土壌を用いれば,本件発明の課題は解決できると当業者が認識し得るものである。
そして,本件発明1?3,5においては,特に土壌について限定がなくても,上記の技術常識からみて,上述の適切な土壌を使用することを前提としていると解されるから,本件発明1?3,5に,土壌に関する発明特定事項が含まれないとしても,本件発明1?3,5が,本件発明の課題が解決できないとされる範囲を含んでいるとはいえない。

イ 薬剤量(施用量)と薬液量(容量)の関係及び無効理由Bに関して
当審が通知した無効理由Bは,単位株数当たり及び単位面積あたりの薬液量(容量)相互の関係を指摘するもので,請求人が主張していた薬剤量(施用量)と薬液量(容量)との関係,薬剤濃度に関する主張と必ずしも同じではないが,ともに,本件発明1の薬液量(容量)に関する点で共通するところがあるので,一括して検討する。

(ア)薬液量(容量)及び無効理由Bについて
本件発明1?3については,薬液の容量が「苗100株あたり20?1100ml,苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100mlの範囲」であることを,その発明特定事項としている。
一方,発明の詳細な説明には,「100株の苗あたりの薬液施用量は、・・・より好ましくは20?1100ml」,「畑作物の苗育成区画または畑作物の苗育成用容器の単位面積あたりの薬液施用量・・・より好ましくは20?1100ml」(摘記e参照)と,薬液の容量が「苗100株あたり20?1100ml,苗育成区画1800cm^(2)あたり20?1100mlの範囲」であることが記載されている。
また,本件明細書の発明の詳細な説明には,試験例1として,「化合物A顆粒水和剤」,「シアゾファミド懸濁液」を有効成分として,それぞれ,98株の苗あたり500mg,400mgの施用量とし,98株の苗あたりまた苗育成区画1800cm^(2)あたり,0.5l,1.0l,2.0lの容量で,それぞれ株元散布して,同じ施用量であっても,容量が少ないものほど根こぶ病の防除価が高くなることを示す実施例が記載され(摘記f参照),この試験例によれば,薬液の容量が「100株の苗あたり500?1100mlで,かつ,苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100ml」の範囲については,本件発明の課題が解決できることの具体的な裏付けがなされているといえる。
そして,本件発明1?3の薬液の容量の範囲は,「苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100ml」以外の範囲を含まないから,本件発明1?3は,苗育成区画1800cm^(2)あたりの薬液容量の点では本件発明の課題が解決できるといえる。
そして,薬液の容量が100株の苗あたり500mを下回る範囲であっても,「苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100ml」の範囲を満たす限り,土壌中の薬剤の状態に変わりはなく,また,甲第2号証に記載されるように農薬有効成分の使用にあたって,薬液の容量は単位面積当たりの薬液容量は規定しても,苗の株数あたりの薬液容量は規定されていない場合もある(摘記2d参照)ことからすれば,苗の株数あたりの薬液容量は多少異なっても同様に使用可能と考えられるから,100株の苗あたりの薬液の容量が500mlよりも減少させる,すなわち,苗育成区画面積1800cm^(2)あたりの株数を98株から増大(容量を500mlより少なく)させても,技術常識から通常想定される株数の範囲であれば,98株の苗あたり500mlの薬液の容量とした試験例1と同様に,同じ農薬有効成分の施用量であっても,薬液の容量が少なくなるほど根こぶ病の防除価が高くなるとの効果が得られ,課題が解決するであろうことは当業者が理解し得ることと認められる。
また,薬液の容量が100株の苗あたり20ml?1100mlの容量の範囲のうち,20mlに近い範囲については,上記5(5)イ(ア)で述べたとおり,苗育成トレイに関する技術常識を踏まえれば,その実施の想定外にあることが当業者に明らかであるから,このような範囲まで実施できないとしても,薬液の容量が「苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100ml」との発明特定事項を必ず含む本件発明1?3が,その範囲全体において,本件発明の課題を解決できないということはできない。
なお,本件発明5における,薬液の容量の範囲は,「苗98株あたり500?1000ml,苗育成区画1800cm^(2)あたり500?600mlの範囲」であって,この範囲のものは,本件明細書の発明の詳細な説明の試験例1として,具体的に,同じ農薬有効成分の施用量であっても,薬液の容量が少なくなるほど根こぶ病の防除価が高くなるとの効果を奏することが記載されているから,本件発明の課題を解決できることが当業者に明らかといえる。

(イ)薬剤量(施用量)について
本件明細書の発明の詳細な説明には,「上記農薬有効成分の施用量は、・・・100株の苗あたり・・・さらに好ましくは0.1?5gである。また、1800cm^(2)あたりでは、・・・さらに好ましくは0.1?5gである。」(摘記e参照)と記載され,試験例1として,98株の苗あたりまたは苗育成区画1800cm^(2)あたり500mg,400mgの農薬有効成分の施用量とした場合が具体的に記載されている(摘記f参照)。
そして,甲第9号証をみると,幅30×60cm^(2),128穴の育苗箱に,シアゾファミドを200mg,400mgジョウロを用いてドレンチ(潅注)した場合に植物毒性なしに良好な根こぶ病に対する防除効果を奏することが記載されており(摘記9b,9h参照),このことからすれば,128株の苗あたりまたは苗育成区画1800cm^(2)あたり200mgの施用量としても,400mgとほぼ同様に防除効果を奏することは,本願出願時点での技術常識であったといえ,200mgよりもある程度少なくても同様の効果を奏するであろうことは当業者に十分理解できるといえる。
また,苗の株数あたり又は単位面積当たりの農薬有効成分の施用量が増える分には,防除効果が増加することはあっても効果を奏しなくなることは技術常識からして考えにくく,試験例1として記載されている苗100株あたり500mg,苗育成区画1800cm^(2)あたり500mgの施用量がある程度増加しても,500mgと同様に根こぶ病の防除効果が得られると当業者が理解することができるといえる。
そして,本件発明の課題は,農薬有効成分を同一の施用量であっても,容量を少量にするほど防除効果を高めるとの効果を奏することによって解決しようとするものであって,このような効果は,根こぶ病の防除効果を奏する施用量の範囲であれば,薬液の容量が本件発明1?3,5に規定される範囲にある限り,施用量の多少にかかわらず同様に奏するものと考えられ,また,このことを否定するような根拠も示されていない。
そうすると,本件発明1?3,5において規定される「苗100株あたり0.1?5gかつ苗育成区画1800cm^(2)あたり0.1?5g」の下限値又は上限値としても,本件明細書に記載された400mg,500mgの施用量とした試験例1と同様に,同じ農薬有効成分の施用量であっても,容量を少量とするほど根こぶ病の防除価が高くなるとの効果を奏し,それによって課題を解決できると当業者に理解し得るといえる。

(ウ)潅注について
本件発明1?3,5において,薬液を潅注する場合については,試験例2が記載されているが,この場合の薬液の容量は苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.5lとした場合しか記載されていない(摘記f参照)。
潅注と散布との違いは,潅注がジョウロ等を用いて流し注ぐものであるのに対して,散布がスプレーガン等を用いて霧滴の形態で噴霧することを意味する(乙第1号証参照)ので,潅注は,散布に比べ,特に容量が少ない場合には,苗育成区画に対する均一な施用が困難で安定した防除効果が得にくいものであることが理解できる。
しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明の試験例2によれば,0.5lで潅注した場合に一定の根こぶ病の防除効果が得られることが記載されており,潅注でも散布でも,最終的に土壌に農薬有効成分が含まれることになるから,潅注であっても,単位面積1800^(2)あたり500ml以上の量があれば,散布の場合の試験例1で裏付けられているのと同様,同一の施用量であっても,薬液の容量を特定の範囲とすることで,防除価が高まるとの効果が得られるものと推認できる。
このことは,本件発明を再現した試験結果である甲第10号証において,薬液が潅注(ジョウロで散布されているので潅注といえる。)された場合,0.5lのものが2lの場合よりも土壌中の農薬有効成分の濃度が高くなっていることからも裏付けられているということができる。
そうすると,潅注の場合であっても,本件発明1?3,5においては,苗育成区画1800cm^(2)あたり500ml以上の潅注がなされるから,散布の場合と同様に,本件発明の課題を解決できると,当業者が認識し得るものと認められる。

ウ 苗育成用容器について
本件発明1?3,5は,特定の農薬有効成分を特定の施用量,容量で使用することにより,同じ農薬有効成分の施用量であっても,薬液の容量を少量とするほど根こぶ病の防除価が高くするとの効果を奏するものであって,本件発明1?3,5の発明特定事項を満たすために,技術常識を踏まえて通常使用される苗育成容器を用いることによって,本件発明の課題は解決し得ると当業者に十分理解できるといえる。
そうすると,本件発明1?3,5において,苗育成用容器の種類等を発明特定事項として限定しなくても,そのような課題が解決できるということができる。

エ 薬液濃度について
本件発明1?3,5で規定される薬剤量(施用量)及び薬液量(容量)から計算上可能な薬液濃度は91?10000ppmと広範囲になるが,そもそも,薬液濃度は,本件発明1?3,5の発明特定事項とはなっていないから,このような計算上の薬液濃度の範囲全体にわたって,発明の詳細な説明に記載されている必要はない。
そして,本件発明1?3,5においては,薬剤量(施用量)と薬液量(容量)がそれぞれ100株の苗あたりと苗育成区画面積1800cm^(2)あたりで規定され,これらに規定されたそれぞれの条件範囲全体において,本件発明の課題を解決できると当業者が理解できる程度に発明の詳細な説明に記載されていることは,上記イ(ア),(イ)で述べたとおりであるから,計算上可能な薬液濃度の範囲全体にわたって,本件発明の課題を解決できないとの理由によって,本件発明1?3,5が発明の詳細な説明に記載されていないことにはならない。

オ 試験例1について
発明の詳細な説明には,試験例1において,「供試土壌」(通常土壌)で「4週間植物を育成後、ポットより土壌ごと植物を取り出し、健全土壌を入れた4寸鉢内に移植した。移植3週間後に根部の根こぶの着生程度を調べ、発病度及び防除価を評価した」場合しか具体的に記載されていない(摘記f参照)が,試験例1の方法では,根こぶ病菌の存在下で4週間苗が育成されているのであるから,本件発明1?3,5において,試験例1のような通常土壌で育成後,さらに健全土壌に移植する条件を採用しなくても,同様の根こぶ病の防除効果を奏すると解するのが相当である。
甲第21号証においては,通常土壌で定植後に健全土壌への移植をせずに,本件発明を実施したところ,同じ施用量でも,0.5l潅注した場合よりも2.0l潅注した場合のほうが防除価が高いという結果が得られている。
しかしながら,苗の育成状況は,土壌のみならず,その他の環境(温度,日照時間,施肥の状況等)によっても変化するものであり,通常土壌で定植後に健全土壌への移植をするか否かという条件のみを変え,それ以外の育成条件を一致させたものを対比し,その結果が異なった場合に,はじめて,定植後に健全土壌への移植した場合にしか本件発明の効果を奏さないということがいえる。そして,本件明細書の試験例1と甲第21号証の試験とは,定植後の健全土壌への移植の有無以外の育成条件が完全に一致しているとはいえないから,通常土壌で定植後に健全土壌への移植しない試験のみ実施し,対照となる条件で試験を実施していない甲第21号証の試験結果によって,根こぶ病菌が存在する通常土壌に移し替えて4週間育成した後,さらに「健全土壌に移植し」た場合にしか,本件発明の効果を奏さないということはできない。
甲第33号証(甲第34号証も含む)には,通常土壌で定植後に健全土壌への移植をせずに,NC-244顆粒水和剤(化合物A)の200倍溶液を0.5l/箱で処理した場合,シアゾファミド500倍溶液を2.0l/箱で処理した場合より防除効果がほぼ同じであることが記載されている(第126頁3.試験成績参照)が,これも,同じ農薬有効成分どうしで比較しなければ意味がないから,甲第33号証の試験結果によって,根こぶ病菌が存在する通常土壌に移し替えて4週間育成した後,さらに「健全土壌に移植し」た場合にしか,本件発明の効果を奏さないということはできない。
また,甲第33号証には,ブロッコリーを対象とした同様の試験では,定植後の健全土壌への移植をしない場合でも,ランマンフロアブル250倍溶液を0.5l/箱で処理した場合,施用量が1/2となっているにもかかわらず,ランマンフロアブル500倍溶液を2.0l/箱で処理した場合より防除効果が高くなることも記載されている(第135頁3.試験成績参照)から,定植後に健常土壌への移植がない場合でも,本件発明の効果が得られているといえる。
そうすると,試験例1のような「4週間植物を育成後、ポットより土壌ごと植物を取り出し、健全土壌を入れた4寸鉢内に移植した」との工程を採用しないと,本件発明の効果を奏さないとすることはできない。

(6)請求人の主張
ア 土壌,苗育成容器,薬液濃度,試験例1,潅注,無効理由Bについて
請求人の無効理由8及び無効理由Bに関する主張は,無効理由7及び無効理由Bと一体となっており,無効理由7のうち,土壌,苗育成容器,薬液濃度,本件明細書に記載された試験例1,無効理由Bについての主張は,それぞれ,無効理由7,無効理由Aと同趣旨であって,上記(5)ア,イ(ア),ウ,エ,オ,また,上記5(6)ア,イ(ア),ウ,エ,オで述べたとおり,いずれも採用できない。
また,潅注についての主張も,上記(5)イ(イ)で述べたとおり,採用できない。

イ 薬剤量(施用量)と薬液量(容量)の関係に関して
(ア)薬液量(容量)について
請求人は,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1?3のうち,薬液の容量が「100株の苗あたり500?1100mlで、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500?1100ml」の範囲については試験例1として具体的な裏付けがなされているが,それ以外の態様については発明の詳細な説明に記載がなく,また,試験例1は株元に散布したものであって苗の単位株数(100株)あたりの薬液の容量も本件発明の防除効果に欠かせない構成要件であって,上記試験例1で実証された範囲以外は,本件発明の農薬有効成分の施用量が同じでも高濃度少量散布とすることで防除効果が高まるとの効果を奏することを証明していないと主張している。
しかしながら,上記(5)イ(ア)で述べたとおり,苗育成トレイに関する技術常識を踏まえれば,薬液の容量が「苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100ml」の範囲を満たす限り,薬液の容量が100株の苗あたり500mlを下回る場合でも,本件発明の課題を解決できると当業者に理解し得るものであるから,薬液の容量が「苗育成区画1800cm^(2)あたり500?1100ml」との発明特定事項を必ず含む本件発明1?3が,その範囲全体において,本件発明の課題を解決できないということはできない。

(イ)薬剤量(施用量)について
請求人は,本件明細書の発明の詳細な説明には,試験例1として,農薬有効成分の施用量が「100株の苗あたり0.4?0.5gかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.4?0.5g」の範囲のみ本件発明の効果を奏するというべきで,本件発明1?3,5の「100株の苗あたり0.1?5gかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1?5g」の全範囲まで本件発明の課題が解決できることが裏付けられていないと主張している。
しかしながら,上記(5)イ(イ)で述べたとおり,本件出願時の技術常識を踏まえれば, 「苗100株あたり0.1?5gかつ苗育成区画1800cm^(2)あたり0.1?5g」の下限値又は上限値としても,本件明細書に記載された400mg,500mgの施用量とした試験例1と同様に,同じ農薬有効成分の施用量であっても,薬液容量を少量とするほど根こぶ病の防除価が高くなるとの効果が奏され,本件発明の課題を解決できると当業者に理解し得るといえ,これを否定する根拠も請求人から示されていない。

(7)小括
以上のとおり,上記の理由及び証拠によっては,本件発明1?3,5は,発明の詳細な説明に記載されたものではなく,本件特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないということはできないから,本件特許は特許法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであるとはいえない。

第8 むすび
以上のとおり,請求人が示した理由と証拠及び当審が無効理由通知で示した理由によっては,本件発明1?3,5の特許は,無効とすることができない。
審判費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
農薬の省力的施用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畑作物の苗に対する農薬の省力的施用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
根こぶ病、根腐れ病または立枯病に代表される土壌病害の防除方法は、粉剤を土壌混和処理する方法が一般的である。しかしながら、その投下製剤量は20?40kg/10アールと非常に多く、施用作業者に対する負担が大きい。そのため、より省力的な防除方法の開発が望まれている(例えば、非特許文献1および2参照。)。
【0003】
また、土壌混和処理に使用される粉剤は、300メッシュ以上(46μm以下)の微細な粒径を有するために、施用されると微風によっても目的圃場以外の近接する田畑、家屋等へドリフトしやすい。そのため、粉剤のドリフトによって環境は汚染され、防除対象以外の圃場で栽培されている有用作物への薬害被害や、施用作業者等の安全性への悪影響といった、ドリフトされた粉剤による環境汚染がしばしば問題となっている。したがって、ドリフトを低減した新しい農薬製剤または施用方法の開発も望まれている。
【非特許文献1】新版土壌病害の手引編集委員会編、「新版土壌病害の手引」、(社)日本植物防疫協会、1984年10月1日、p.175-184
【非特許文献2】農薬散布技術編集委員会編、「農薬散布技術」、(社)日本植物防疫協会、1998年、p.125-126,202-207
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、粉剤の土壌混和処理よりも省力的であり、環境と施用作業者に対して安全性の高い農薬の施用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究した結果、畑作物の苗に対して農薬有効成分の水溶液または水性分散液を施用することによって、従来行われてきた土壌混和処理に比べて優れた土壌病害の防除効果を発現させることができ、且つ、作業労力や環境汚染を軽減化し、施用作業者に対する安全性を高めることができることを見出した。
【0006】
特に本発明者らは、単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位株数又は苗育成区画面積あたりの農薬有効成分の水溶液または水性分散液の施用量が少なくなるほど、土壌病害の防除効力が高まることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記〔1〕から〔17〕に記載の農薬の施用方法、下記〔18〕に記載の有害生物の防除方法(以下、下記〔1〕から〔18〕に記載の方法を「本発明方法」と称する。)および〔19〕に記載の農薬有効成分の水溶液または水性分散液に関するものである。
【0008】
〔1〕農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする農薬の施用方法。
【0009】
〔2〕農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、畑作物の苗育成用容器に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする農薬の施用方法。
【0010】
〔3〕農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、畑作物の苗育成用容器に床土充填後から苗の定植前までの期間に潅注または散布することを特徴とする農薬の施用方法。
【0011】
〔4〕農薬有効成分の水溶液または水性分散液が、農薬製剤を水で希釈して調製したものである上記〔1〕ないし〔3〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0012】
〔5〕100株の苗あたり20ml?2100mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0013】
〔6〕100株の苗あたり20ml?1600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0014】
〔7〕100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0015】
〔8〕100株の苗あたり20ml?600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0016】
〔9〕苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?2100mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0017】
〔10〕苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?1600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0018】
〔11〕苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?1100mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0019】
〔12〕苗育成区画面積1800cm^(2)あたり20ml?600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する上記〔1〕ないし〔4〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0020】
〔13〕農薬有効成分が殺虫剤または殺菌剤である上記〔1〕ないし〔12〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0021】
〔14〕農薬有効成分が殺菌剤である上記〔1〕ないし〔12〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0022】
〔15〕農薬有効成分が土壌病害に対して防除活性を持つものである上記〔1〕ないし〔12〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0023】
〔16〕農薬有効成分が根こぶ病菌に対して防除活性を持つものである上記〔1〕ないし〔12〕のうちいずれか1項に記載の施用方法。
【0024】
〔17〕根こぶ病菌に対して防除活性を持つものが3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミド、シアゾファミド、フルアジナム、フルスルファミドまたはエタボキサムである上記〔16〕に記載の施用方法。
【0025】
〔18〕上記〔1〕ないし〔17〕のうちいずれか1項に記載の施用方法による有害生物の防除方法。
【0026】
〔19〕上記〔1〕ないし〔17〕のうちいずれか1項に記載の施用方法で用いられる農薬有効成分の水溶液または水性分散液。
【0027】
なお、「農薬有効成分の水溶液または水性分散液」を、以下単に「薬液」と称する。
【発明の効果】
【0028】
本発明方法によれば、従来行われてきた土壌混和処理に比べて優れた土壌病害の防除効果を発現させることができる。また、作業労力や環境汚染を軽減化し、施用作業者に対する安全性を高めることができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明における畑作物の苗育成区画とは、畑作物の苗が育成されている場所、または畑作物の苗が育成されている容器を意味する。
【0030】
本発明において用いられる畑作物の苗育成用容器とは、苗箱、プラスチックポット、セルトレイ、セル苗トレイ、プラグトレイ、ペーパーポット(登録商標、日本甜菜製糖(株))およびチェーンポット(登録商標、日本甜菜製糖(株))に代表される畑作物の苗を育成するために用いられる容器である。
【0031】
本発明方法において用いられる農薬有効成分の水溶液とは、主成分として水を含有する溶媒中に農薬有効成分が溶解したものであり、溶媒中には他の成分が溶解、乳濁または懸濁していてもよい。
【0032】
本発明方法において用いられる農薬有効成分の水性分散液とは、主成分として水を含有する分散媒中に農薬有効成分が乳濁または懸濁したものであり、分散媒中には他の成分が溶解、乳濁または懸濁していてもよい。農薬有効成分のマイクロエマルジョンも、本発明の農薬有効成分の水性分散液に含まれる。
【0033】
本発明方法において使用できる農薬有効成分としては、除草剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺バクテリア剤、抗ウィルス剤、植物成長調節剤、殺菌剤、共力剤、誘引剤、忌避剤および生物農薬等が挙げられる。好ましい農薬有効成分として、具体的にその一般名(または化学名)を例示すれば次の通りであるが、必ずしもこれらのみに限定されるものではない。
【0034】
殺菌剤:3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミド(WO99/21851に記載の化合物であり、以下では化合物Aと略記する。)、アシベンゾラル-S-メチル(acibenzolar-S-methyl)、アシルアミノベンザミド(acylaminobenzamide)、アシペタックス(acypetacs)、アルジモルフ(aldimorph)、アンバム(amobam)、アムプロピルホス(ampropyfos)、アニラジン(anilazine)、アリルアルコール(allyl alcohol)、オーレオフンギン(aureofungin)、アザコナゾール(azaconazole)、アジチラム(azithiram)、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、バリウムポリスルフィド(barium polysulfide)、ベナラキシル(benalaxyl)、ベノダニル(benodanil)、ベノミル(benomyl)、ベンキノックス(benquinox)、ベンタルロン(bentaluron)、ベンチアバリカルブ(benthiavalicarb)、ベンチアゾール(benthiazole)、ベンザルコニウムクロリド(benzalkonium chloride)、ベンザマクリル(benzamacril)、ベンズアモルフ(benzamorf)、ベンゾヒドロキサミックアシド(benzohydroxamic acid)、ビナパクリル(binapacryl)、ビフェニル(biphenyl)、ビテルタノール(bitertanol)、ビチオノール(bithionol)、ベトキサジン(bethoxazine)、ボルドー液(bordeaux mixture)、ボスカリド(boscalid)、ブラストサイジン-S(blasticidin-S)、ブロモコナゾール(bromoconazole)、ブピリメート(bupirimate)、ブチオベート(buthiobate)、ブチルアミン(butylamine)、カルシウムポリスルフィド(calcium polysulfide)、カプタホル(captafol)、キャプタン(captan)、カッパーオキシクロリド(copper oxychloride)、カルプロパミド(carpropamid)、カルバモルフ(carbamorph)、カルベンダジン(carbendazim)、カルボキシン(carboxin)、カルボン(carvone)、チェシュントミクスチャ(Cheshunt mixture)、キノメチオネート(chinomethionat)、クロベンチアゾン(chlobenthiazone)、クロラニホルメタン(Chloraniformethane)、クロラニル(Chloranil)、クロルフェナゾール(chlorfenazol)、5-クロル-7-(4-メチル-ピペリジン-1-イル)-6-(2,4,6-トリフルオロ-フェニル)-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン(5-chlor-7-(4-methyl-piperidin-1-yl)-6-(2,4,6-trifluor-phenyl)-[1,2,4]triazolo[1,5-a]pyrimidin)、クロロネブ(chloroneb)、クロロピクリン(Chloropicrin)、クロロタロニル(chlorothalonil)クロロキノックス(Chlorquinox)、クロゾリネート(chlozolinate)、クリムバゾール(Climbazole)、クロトリマゾール(Clotrimazole)、カッパーアセテート(copper acetate)、塩基性炭酸銅(copper carbonate,basic)、水酸化第二銅(copper hydroxide)、カッパーナフテネート(copper naphthenate)、カッパーオレート(copper oleate)、塩基性塩化銅(copper oxychloride)、硫酸銅(copper sulfate)、塩基性硫酸銅(copper sulfate,basic)、カッパージンククロメート(copper zinc chromate)、クレゾール(cresol)、クフラネブ(cufraneb)、クプロバム(cuprobam)、シアゾファミド(cyazofamid)、シクラフルアミド(cyclafuramid)、シクロヘキシミド(cycloheximide)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、シモキサニル(cymoxanil)、サイペンダゾール(cypendazole)、シプロコナゾール(cyproconazol)、シプロジニル(cyprodinil)、シプロフラム(cyprofuram)、ダゾメット(dazomet)、ディービーシーピー(DBCP)、デバカルブ(debacarb)、デカフェンチン(Decafentin)、デハイドロアセテイト(dehydroaceticacid)、ジクロン(dichlone)ジクロロフェン(dichlorophen)、ジクロゾリン(dichlozoline)、ジクロブトラゾール(diclobutrazol)、ジクロフラニド(dichlofluanid)、ジクロメジン(diclomedine)、ジクロラン(dicloran)、ジエトフェンカルブ(diethofencarb)、ジエチルピロカルボネート(diethyl pyrocarbonate)、ジクロシメット(diclocymet)、ジフェノコナゾール(difenoconazole)、ジフルメトリン(diflumetorim)、ジメチリモール(dimethirimol)、ジメトモルフ(dimethomorph)、ジモキシストロビン(dimoxystrobin)、ジニコナゾール(diniconazole)、ジニコナゾール-M(diniconazole-M)、ジノブトン(dinobuton)ジノカップ(dinocap)、ジノカップ-4(dinocap-4)、ジノカップ-6(dinocap-6)、ジノクトン(dinocton)、ジノスルホン(dinosulfon)、ジノテルボン(dinoterbon)、ジフェニルアミン(diphenylamine)、ジピリチオン(dipyrithione)、ジノスルフィラム(disulfiram)、ジタリムホス(ditalimfos)、ジチアノン(dithianon)、ディーエヌオーシー(DNOC)、ドデモルフ(dodemorph)、ドジン(dodine)、ドラゾクソロン(drazoxolon)、エジフェンホス(edifenphos)、エポキシコナゾール(epoxiconazole)、エタコナゾール(etaconazole)、エタボキサム(ethaboxam)、エチリモル(ethirimol)、エトリジアゾール(etridiazole)、エテム(Etem)、エトキシキン(Ethoxyquin)、エチルマーキュリーアセテート(ethylmercury acetate)、エチルマーキュリーブロミド(ethylmercury bromide)、塩化エチル水銀(ethylmercury chloride)、エチルマーキュリーホスフェート(ethylmercury phosphate)、ファモキサドン(famoxadone)、フェナリモル(fenarimol)、フェブコナゾール(febuconazole)、フェナミドン(fenamidone)、フェンダゾスラム(fendazosulam)、フェンフラム(fenfuram)、フェンヘキサミド(fenhexamid)、フェノキサニル(fenoxanil)、フェンピクロニル(fenpiclonil)、フェンプロピジン(fenpropidin)、フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、フェンチン(fentin)、フェルバン(ferbam)、フェリムゾン(ferimzone)、フルアジナム(fluazinam)、フルジオキソニル(fludioxonil)、フルオピコリド(fluopicolide)、フルオロイミド(fluoroimide)、フルキンコナゾール(fluquinconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、フルスルファミド(flusulfamide)、フルトラニル(flutolanil)、フルトリアホール(flutriafol)、ホルペット(folpet)、ホセチル-アルミニウム(fosetyl-aluminium)、フベリダゾール(fuberidazole)、フララキシル(furalaxyl)、フラメトピル(furametpyr)、フェナミノスルフ(fenaminosulf)、フェナパニル(fenapanil)、フェニトロパン(fenitropan)、フェノキサニル(fenoxanil)、フルメトバー(flumetover)、フルモルフ(flumorph)、フルオトリマゾール(fluotrimazole)、フルオキサストロビン(fluoxastrobin)、フルカルバニル(furcarbanil)、フルコナゾール(furconazole)、フルコナゾールーシス(furconazole-cis)、フルメシクロックス(furmecyclox)、フロファネート(furophanate)、グアザチン(guazatine)、グリオジン(glyodin)、グリセオフルビン(griseofulvin)、ヘキサクロロベンゼン(hexachlorobenzene)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、ヒメキサゾール(hymexazol)、ハラクリネート(halacrinate)、ヘキサクロロブタジエン(hexachlorobutadiene)、ヘキシルチオホス(hexylthiofos)、ヒドロキシキノリンスルフェート(8-hydroxyquinoline sulfate)、イマザリル(imazalil)、イミベンコナゾール(imibenconazole)、イミノクタジン(iminoctadine)、イプコナゾール(ipconazole)、イプロベンホス(iprobenfos)、イプロジオン(iprodione)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、イソバレジオン(isovaledione)、カスガマイシン(kasugamycin)、クレソキシムメチル(kresoxim-methyl)、マンカッパー(mancopper)、マンゼブ(mancozeb)、マンジプロパミド(mandipropamid)、マンネブ(maneb)、メパニピリム(mepanipyrim)、メプロニル(mepronil)、メタラキシル(metalaxyl)、メトコナゾール(metconazole)、メタスルホカルブ(methasulfocarb)、メチラム(metiram)、メトミノストロビン(metominostrobin)、ミクロブタニル(myclobutanil)、MTF-753(試験名)、メベニル(mebenil)、メカルビンジド(mecarbinzid)、塩化第二水銀(mercuric chloride)、酸化第二水銀(mercuric oxide)、塩化第一水銀(mercurous chloride)、メタラキシルーM(metalaxyl-M)、メタム(metam)、メタロキソロン(metazoxolon)、メスフロキサム(methfuroxam)、メチルブロマイド(methyl bromide)、メチルイソチオシアネート(methyl isothiocyanate)、メチルマーキュリーベンゾエート(methylmercury benzoate)、メチルマーキュリージシアンジアミド(methylmercury dicyandiamide)、メトラフェノン(metrafenone)、メトスルホバックス(metsulfovax)、ミクロゾリン(myclozolin)、メトキシエチルマーキュリークロリド(2-methoxyethylmercury chloride)ナバム(nabam)、ニッケルビス(ジメチルジチオカーバメート)(nickel bis(dimethyldithiocarbamate))、ニトロタールイソプロピル(nitrothal-isopropyl)、ヌアリモル(nuarimol)、ナタマイシン(natamycin)、ニコビフェン(nicobifen)、ニトロスチレン(nitrostyrene)、オクチリノン(octhilinone)、オフレース(ofurace)、オキサジキシル(oxadixyl)、オキシカルボキシン(oxycarboxin)、オキシポコナゾールフマレート(oxpoconazole fumarate)、オーシーエッチ(OCH)、オリサストロビン(Orysastrobin)、オキシン銅(oxine copper)、ペフラゾエート(pefurzoate)、ペンコナゾール(penconazole)、ペンシクロン(pencycuron)、ペンチオピラド(penthiopyrad)、フタリド(phthalide)、ピペラリン(piperalin)、ポリオキシン(polyoxins)、炭酸水素カリウム(potassium hydrogen carbonate)、プロベナゾール(probenazole)、プロクロラズ(prochloraz)、プロシミドン(procymidone)、プロパモカルブ塩酸塩(propamocarb hydrochloride)、プロピコナゾール(propiconazole)、プロピネブ(propineb)、ピラゾホス(pyrazophos)、ピリフェノックス(pyrifenox)、ピリメタニル(pyrimethanil)、ピロキロン(pyroquilon)、ペンタクロロフェノール(pentachlorophenol(PCP))、尿素フェニル水銀(phenylmercuriurea)、フェニルマーキュリーアセテート(phenylmercury acetate)、フェニルマーキュリークロリド(phenylmercury chloride)、フェニルマーキュリーニトレート(phenylmercury nitrate)、フェニルマーキュリーサリチレート(phenylmercury salicylate)、ホスジフェン(phosdiphen)、ピコキシストロビン(picoxystrobin)、ポリカルバメート(polycarbamate)、ポリオクソリム(polyoxorim)、ポタシュームアジド(potassium azide)、ポタシュームポリスルフィド(potassium polysulfide)、プロキナジド(proquinazid)、プロチオカルブ(prothiocarb)、プロチオコナゾール(prothioconazole)、ピラカルボリド(pyracarbolid)、ピラクロストロビン(pyraclostrobin)、ピリジニトリル(pyridinitril)、ピロキシクロア(pyroxychlor)、ピロキシフル(pyroxyfur)、フェニルフェノール(2-phenylphenol)、キノメチオネート(quinomethionate)、キノキシフェン(quinoxyfen)、キントゼン(quintozene)キナセトール(quinacetol)、キナザミド(quinazamid)、キンコナゾール(quinconazole)、ラベンザゾール(rabenzazole)、炭酸水素ナトリウム(sodium hydrogen carbonate)、次亜塩素酸ナトリウム(sodium hypochlorite)、硫黄(sulfur)、スピロキサミン(spiroxamine)、サリチルアニリド(salicylanilide)、シルチオファム(silthiofam)、シメコナゾール(simeconazole)、アジ化ナトリウム(sodium azide)、ソジウムオルトフェニルフェノキシド(sodium orthophenylphenoxide)、ソジウムペンタクロロフェノキシド(sodium pentachlorophenoxide)、ソジウムポリスルフィド(sodium polysulfide)、ストレプトマイシン(streptomycin)、テブコナゾール(tebuconazole)、テクナゼン(tecnazene)、テトラコナゾール(tetraconazole)、チアベンダゾール(thiabendazole)、チアジアジン(thiadiazin/milneb)、チフルザミド(thifluzamide)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、チラム(thiram)、トルクロホスメチル(tolclofos-methyl)、トリルフラニド(tolylfluanid)、トリアジメホン(triadimefon)、トリアジメノール(toriadimenol)、トリアゾキシド(triazoxide)、トリシクラゾール(tricyclazole)、トリデモルフ(tridemorph)、トリフルミゾール(triflumizole)、トリホリン(triforine)、トリチコナゾール(triticonazole)、ティーシーエムティービー(TCMTB)、テクロフタラム(tecloftalam)、テコラム(tecoram)、チアジフルア(thiadifluor)、チシオフェン(thicyofen)、チオクロルフェンフィム(thiochlorfenphim)、チオメルサム(thiomersal)、チオファネート(thiophanate)、チオキノックス(thioquinox)、チアジニル(tiadinil)、チオキシミド(tioxymid)、トリマーキュリーアセテート(tolylmercury acetate)、トリアミホス(triamiphos)、トリアリモル(triarimol)、トリアズブチル(triazbutil)、トリブチルチンオキシド(tributyltin oxide)、トリクルアミド(trichlamide)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、バリダマイシン(validamycin)、ビンクロゾリン(vinclozolin)、硫酸亜鉛(zinc sulfate)、ジネブ(zineb)、ジラム(ziram)、ゾキサミド(zoxamide)、ザリルアミド(zarilamid)、ジンクナフテネート(zinc naphthenate)、エクロメゾール、及びシイタケ菌糸体抽出物。
【0035】
殺バクテリア剤:ストレプトマイシン(streptomycin)、テクロフタラム(tecloftalam)、オキシテトラサイクリン(oxyterracycline)及びオキソリニックアシド(oxolinic acid)等。
【0036】
殺線虫剤:アルドキシカルブ(aldoxycarb)、カズサホス(cadusafos)、ホスチアゼート(fosthiazate)、ホスチエタン(fosthietan)、オキサミル(oxamyl)及びフェナミホス(fenamiphos)等。
【0037】
殺ダニ剤:アセキノシル(acequinocyl)、アミトラズ(amitraz)、ビフェナゼート(bifenazate)、ブロモプロピレート(bromopropylate)、キノメチオネート(chinomethionat)、クロルベンジエート(chlorobezilate)、クロフェンテジン(clofentezine)、シヘキサチン(cyhexatin)、ジコホール(dicofol)、ジエノクロール(dienochlor)、エトキサゾール(etoxazole)、フェナザキン(fenazaquin)、フェンブタチンオキシド(fenbutatin oxide)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フェンプロキシメート(fenproximate)、ハルフェンプロックス(halfenprox)、ヘキシチアゾックス(hexythiazox)、ミルベメクチン(milbemectin)、プロパルギット(propargite)、ピリダベン(pyridaben)、ピリミジフェン(pyrimidifen)及びテブフェンピラド(tebufenpyrad)等。
【0038】
殺虫剤:アバメクチン(abamectin)、アセフェート(acephate)、アセタミピリド(acetamipirid)、アルディカルブ(aldicarb)、アレスリン(allethrin)、アジンホス-メチル(azinphos-methyl)、ベンジオカルブ(bendiocarb)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、ベンスルタップ(bensultap)、ビフェントリン(bifenthrin)、ブプロフェジン(buprofezin)、ブトカルボキシン(butocarboxim)、カルバリル(carbaryl)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、カルタップ(cartap)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、クロルピリホス(chlorpyrifos)、クロルフェンビンホス(chlorfenvinphos)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)、クロチアニジン(clothianidin)、クロマフェノジド(chromafenozide)、クロルピリホス-メチル(chlorpyrifos-methyl)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、シフルトリン(cyfluthrin)、ベータ-シフルトリン(beta-cyfluthrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、シロマジン(cyromazine)、シハロトリン(cyhalothrin)、ラムダ-シハロトリン(lambda-cyhalothrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、ジアフェンチウロン(diafenthiuron)、ダイアジノン(diazinon)、ジアクロデン(diacloden)、ジフルベンズロン(diflubenzuron)、ジメチルビンホス(dimethylvinphos)、ジオフェノラン(diofenolan)、ジスルホトン(disulfoton)、ジメトエート(dimethoate)、エマメクチンベンゾエート(emamectin-benzoate)、EPN、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、エチプロール(ethiprole)、エトフェンプロックス(etofenprox)、エトリムホス(etrimfos)、フェニトロチオン(fenitrothion)、フェノブカルブ(fenobucarb)、フェノキシカルブ(fenoxycarb)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フィプロニル(fipronil)、フルアクリピリム(fluacrypyrim)、フルシトリネート(flucythrinate)、フルフェノクスウロン(flufenoxuron)、フルフェンプロックス(flufenprox)、タウ-フルバリネート(tau-fluvalinate)、ホノホス(fonophos)、ホルメタネート(formetanate)、ホルモチオン(formothion)、フラチオカルブ(furathiocarb)、ハロフェノジド(halofenozide)、ヘキサフルムロン(hexaflumuron)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、イミダクロプリド(imidacloprid)、イソフェンホス(isofenphos)、インドキサカルブ(indoxacarb)、イソプロカルブ(isoprocarb)、イソキサチオン(isoxathion)、ルフェヌロン(lufenuron)、マラチオン(malathion)、メタルデヒド(metaldehyde)、メタミドホス(methamidophos)、メチダチオン(methidathion)、メタクリホス(methacrifos)、メタルカルブ(metalcarb)、メソミル(methomyl)、メソプレン(methoprene)、メトキシクロール(methoxychlor)、メトキシフェノジド(methoxyfenozide)、モノクロトホス(monocrotophos)、ムスカルア(muscalure)、ニジノテフラン(nidinotefuran)、ニテンピラム(nitenpyram)、オメトエート(omethoate)、オキシデメトン-メチル(oxydemeton-methyl)、オキサミル(oxamyl)、パラチオン(parathion)、パラチオン-メチル(parathion-methyl)、ペルメトリン(permethrin)、フェントエート(phenthoate)、フォキシム(phoxim)、ホレート(phorate)、ホサロン(phosalone)、ホスメット(phosmet)、ホスファミドン(phosphamidon)、ピリミカルブ(pirimicarb)、ピリミホス-メチル(pirimiphos-methyl)、プロフェノホス(profenofos)、プロトリフェンブテ(protrifenbute)、ピメトロジン(pymetrozine)、ピラクロホス(pyraclofos)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、ロテノン(rotenone)、スルプロホス(sulprofos)、シラフルオフェン(silafluofen)、スピノサド(spinosad)、スルホテップ(sulfotep)、テブフェノジド(tebfenozide)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、テフルトリン(tefluthorin)、テルブホス(terbufos)、テトラクロロビンホス(tetrachlorvinphos)、チアクロプリド(thiacloprid)、チオシクラム(thiocyclam)、チオジカルブ(thiodicarb)、チアメトキサム(thiamethoxam)、チオファノックス(thiofanox)、チオメトン(thiometon)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)、トラロメトリン(tralomethrin)、トリクロルホン(trichlorfon)、トリアズロン(triazuron)、トリフルムロン(triflumuron)及びバミドチオン(vamidothion)等。
【0039】
生物農薬:アグロバクテリウム ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)、シュードモナス フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス属菌CAB-02(Pseudomonas spp.)、バチルス スブチリス(Bacillus subtilis)、非病原性エルビニア カロトボーラ(Erwinia carotovora subsp.carotovora)、トリコデルマ(Trichoderma atroviride)、タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)、ザントモナス カンペストリス(Xanthomonas campestris pv.poae)、スタイナーネマ カーポカプサエ(Steinernema carpocapsae)、スタイナーネマ グラセライ(Steinernema glaseri)、バーティシリウム レカニ(Verticillium lecanii)、ペキロマイセス フモソロセウス(Paecilomyces fumosoroseus)、ボーベリア・ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)、パスツーリア ペネトランス(Pasteuria penetrans)、モナクロスポリウム・フィマトパガム(Monacrosporium phymatophagum)等。
【0040】
これらの農薬有効成分は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
これらの農薬有効成分のうちで本発明方法に好適なものは、土壌病害に対して防除活性を持つものであり、より好適なものは根こぶ病菌に対して防除活性を持つものであり、具体的に例示すれば、3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミド、シアゾファミド、フルアジナム、フルスルファミドおよびエタボキサム等が挙げられる。
【0042】
本発明方法は、好ましくは以下の4期間を対象とし、各期間における薬液の施用方法は次の通りである。
・第1期間:播種前
畑作物の苗育成区画の土壌または畑作物の苗育成用容器に充填された土壌に、薬液を潅注または散布する。
・第2期間:播種後、但し覆土前
土壌に播種した種上に薬液を潅注または散布し、そののち覆土する。
・第3期間:播種後、且つ、覆土直後
覆土の土壌表面に薬液を潅注または散布する。
・第4期間:苗の育苗中
畑作物の苗育成区画の土壌表面または畑作物の苗育成用容器中の土壌表面に、薬液を潅注または散布する。
【0043】
薬液の潅注または散布は、如露や噴霧器等の適当な器具を使用して行うことができる。
【0044】
単位株数の苗あたりの薬液施用量は特に制限されないが、通常100株の苗あたり20?2100mlである。単位株数の苗あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位株数の苗あたりの薬液施用量が少なくなる程土壌病害の防除効力が高まることから、100株の苗あたりの薬液施用量は、好ましくは20?1600ml、より好ましくは20?1100ml、更に好ましくは20?600mlである。
【0045】
畑作物の苗育成区画または畑作物の苗育成用容器の単位面積あたりの薬液施用量は特に制限されないが、通常1800cm^(2)あたり20?2100mlである。単位面積あたりの農薬有効成分の施用量が同一であっても、単位面積あたりの薬液施用量が少なくなる程土壌病害の防除効力が高まることから、1800cm^(2)あたりの薬液施用量は、好ましくは、20?1600ml、より好ましくは20?1100ml、更に好ましくは20?600mlである。その他の薬液施用量の例としては、20?2000ml、20?1500ml、20?1000mlおよび20?500mlが挙げられる。
【0046】
上記農薬有効成分の施用量は、限定されるものでないが、100株の苗あたり通常0.05?20g、好ましくは0.1?10gであり、さらに好ましくは0.1?5gである。また、1800cm^(2)あたりでは、通常0.05?20g、好ましくは0.1?10gであり、さらに好ましくは0.1?5gである。
【0047】
本発明方法で用いる薬液(農薬有効成分の水溶液または水性分散液)は、農薬製剤を水で希釈して調製したものであってもよい。薬液を調製するために用いられる農薬製剤としては、例えば、液剤(soluble concentrate)、乳剤(emulsifiable concentrate)、水和剤(wettable powder)、水溶剤(water soluble powder)、顆粒水和剤(water dispersible granule)、顆粒水溶剤(water soluble granule)、懸濁剤(suspension concentrate)、乳濁剤(concentrated emulsion)、サスポエマルジョン(suspoemulsion)、マイクロエマルジョン(microemulsion)およびゲル剤(gel)等が挙げられる。
【0048】
上記の農薬製剤は、通常、適当な固体担体又は液体担体と混合し、更に所望により界面活性剤、並びに農薬製剤調製時に用いられる慣用の浸透剤、展着剤、増粘剤、凍結防止剤、結合剤、固結防止剤、崩壊剤、消泡剤、防腐剤及び分解防止剤等を添加して得ることが出来る。
【0049】
固体担体としては、例えば石英、カオリナイト、パイロフィライト、セリサイト、タルク、ベントナイト、酸性白土、アタパルジャイト、ゼオライト及び珪藻土等の天然鉱物質類、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム及び塩化カリウム等の無機塩類、合成シリカならびに合成シリケート、小麦粉、デンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等の天然高分子、グルコース、マントース、ラクトース、シュクロース等の糖類、尿素等が挙げられる
液体担体としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール及びイソプロパノール等のアルコール類、キシレン、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレン等の芳香族炭化水素類、ブチルセロソルブ等のエーテル類、シクロヘキサノン等のケトン類、γ-ブチロラクトン等のエステル類、N-メチルピロリドン及びN-オクチルピロリドン等の酸アミド類、大豆油、ナタネ油、綿実油及びヒマシ油等の植物油ならびに水が挙げられる。
【0050】
これら固体及び液体担体は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0051】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(モノまたはジ)フェニルエーテル、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸(モノまたはジ)エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキシド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキシド付加物およびアルキルグリコシド等のノニオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物の塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸または燐酸エステル塩、ポリオキシエチレン(モノまたはジ)アルキルフェニルエーテル硫酸または燐酸エステル塩、ポリオキシエチレン(モノ、ジまたはトリ)スチリルフェニルエーテル硫酸または燐酸エステル塩、ポリカルボン酸塩(例えば、ポリアクリル酸塩、ポリマレイン酸塩およびマレイン酸とオレフィンとの共重合物等)およびポリスチレンスルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩およびアルキル4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、アミノ酸型およびベタイン型等の両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤ならびにフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0052】
また、これら界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0053】
以下に本発明方法に用いる薬液を調製するために用いることができる農薬製剤の配合例を示す。なお、以下の配合例において「部」は質量部を意味する。
【0054】
〔水和剤(wettable powder)〕
農薬有効成分 0.1?80部
固体担体 5?98.9部
界面活性剤 1?10部
その他 0?5部
その他として、例えば固結防止剤、分解防止剤等が挙げられる。
【0055】
〔乳 剤(emulsifiable concentrate)〕
農薬有効成分 0.1?30部
液体担体 45?95部
界面活性剤 4.9?15部
その他 0?10部
その他として、例えば展着剤、分解防止剤等が挙げられる。
【0056】
〔懸濁剤(suspension concentrate)〕
農薬有効成分 0.1?70部
液体担体 15?98.89部
界面活性剤 1?12部
その他 0.01?30部
その他として、例えば凍結防止剤、増粘剤等が挙げられる。
【0057】
〔顆粒水和剤(water dispersible granule)〕
農薬有効成分 0.1?90部
固体担体 0?98.9部
界面活性剤 1?20部
その他 0?10部
その他として、例えば結合剤、分解防止剤等が挙げられる。
【0058】
〔液 剤(soluble concentrate)〕
農薬有効成分 0.01?70部
液体担体 20?99.99部
その他 0?10部
その他として、例えば凍結防止剤、展着剤等が挙げられる。
【0059】
上記農薬製剤は、通常水で1?2000倍に希釈して潅注または散布する。
【0060】
また、本発明方法においては、上記薬液の施用と同時に、その他の殺菌剤、除草剤、殺虫剤、植物成長調節剤または肥料を施用することができる。
【0061】
本発明方法は、特に畑作物を加害する病害や害虫の防除に対して適している。防除しうる病害および害虫には具体的には次に示すものがあるが、それらのみに限定されるものではない。
【0062】
すなわち、病害としては、
ウリ類のべと病(Pseudoperenospora cubensis)、炭そ病(Colletotrichum orbicula)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Didlymella bryoniae)、つる割病(Fusarium oxysporum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、立枯病(Fusarium solani)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、キュウリの褐斑病(Corynespora cassiicola)、苗立枯病(Pythium cucurbitacearum、P.debaryanum、Rhizoctonia solani)、根腐病(Pythium myriotylum、P.volutum)、疫病(Phytophthora meronis、P.nicotianae)、斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv.lachrymans)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、スイカの褐色腐敗病(Phytophthora capsici)、疫病(Phytophthora cryptogea)、メロンの立枯病(Pythium debaryanum)、疫病(Phytophthora nicotianae)、カボチャの疫病(Phytophthora capsici)、ナス科の青枯病(Ralstonia solancearum)、萎凋病(Fusarium oxysporum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、トマトの疫病(Phytophthora infestans)、根腐疫病(Phytophthora cryptogea)、灰色疫病(Phytophthora capsici)、輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Fulvia fulva)、うどんこ病(Oidium sp.及びOidiopsisi sicula)、褐色腐敗病(Phytophthora nicotianae)、かいよう病(Clavibacter michiganensis)、褐色根腐病(Pyrenochaeta lycopersici)、炭そ病(Colletotrichum gloeosporioides)、苗立枯病(Pythium vexans、Rhizoctonia solani)、半身萎凋病(Verticillium dahliae)、斑点病(Stemphylium lycopersici)、ピーマンの疫病(Phytophthora capsici)、うどんこ病(Oidiopsis sicula)、苗立枯病(Rhizoctonia solani)、斑点病(Cercospora capsici)、ナスの疫病(Phytophthora infestans)、褐色腐敗病(Phytophthora capsici)、褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracerum及びOidiopsis sicula)、ネギ類の白色疫病(Phytophthora porri)、疫病(Phytophthora nicotianae)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、苗立枯病(Rhizoctonia solani)、黒斑病(Alternaria porri)、軟腐病(Erwinia carotovora及びE.chrysanthmi)、べと病(Peronospora destructor)、さび病(Puccinia allii)、ネギの萎凋病(Fusarium oxysporum)、黄斑病(Heterosporium allii)、紅色根腐病(Pyrenochaeta terrestris)、小菌核腐敗病(Botrytis squamosa)、タマネギの乾腐病(Fusarium oxysporum)、黒穂病(Urocystis cepulae)、小菌核病(Ciborinia alli)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、灰色腐敗病(Botrytis allii)、腐敗病(Erwinia rhapontici)、りん片腐敗病(Burkholderia gladiol)、アブラナ科野菜のべと病(Peronospora parasitica)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、白さび病(Albugo macrospora)、黒斑病(Alternaria japonica及びA.brassicae)、白斑病(Cercosporella brassicae)、軟腐病(Erwinia carotovora)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、キャベツの株腐病(Thanatephorus cucumeris)、バーティシリウム萎凋病(Verticillium dahliae)、ハクサイの黄化病(Verticillium dahliae)、尻腐病(Rhizoctonia solani)、根くびれ病(Aphanomyces raphani)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、ピシウム腐敗病(Pythium ultimum)、ダイコンの炭そ病(Colletotrichum higginsianum)、バーティシリウム黒点病(Verticilliu albo-atrum)、マメ類の青枯病(Ralstonia solanacearum)、萎凋病(Verticillium dahliae)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、黒根病(Thielaviopsis sp.)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、立枯病(Fusarium oxysporum)、炭そ病(Colletotrichum truncatum、C.trifolii、Glomerella glycines、Gloeosporium sp.)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、ダイズのべと病(Peronospora manshurica)、茎疫病(Phytophthora sojae)、葉焼病(Xanthomonas campestris pv.glycines)、紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum)、ラッカセイの黒渋病(Mycosphaerella personata)、褐斑病(Mycosphaerella arachidis)、エンドウのうどんこ病(Erysiphe pisi)、イチゴのうどんこ病(Sphaerotheca aphanis)、萎黄病(Fusarium oxysporum)、萎凋病(Verticillium dahliae)、疫病(Phytophthora cactorum)、角斑細菌病(Xanthomonascampestris及びX.fragariae)、黒斑病(Alternaria alternate)、じゃのめ病(Mycosphaerella fragariae)、炭そ病(Colletotrichum acutatum,C.fragariae及びGlomerella cingulata)、根腐病(Phytophthora fragariae)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、芽枯病(Rhizoctonia solani)、輪斑病(Drenerophoma obscurans)、レタスの菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、すそ枯病(Rhizbacter solani)、軟腐病(Erwinia carotovora)、立枯病(Pythium sp.)、根腐病(Fusarium oxysporum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、斑点細菌病(Xanthomonas campestris pv.vitians)、ビッグベイン病(Lettuce bib-vein virus)、腐敗病(Pseudomonas cichorii、P.marginalis pv.Marginalis及びP.viridiflava)、べと病(Bremia lactucae)、ゴボウの萎凋病(Fusarium oxysporum)、黒あざ病(Rhizoctonia solani)、黒条病(Itersonilia perplexans)、黒斑細菌病(Xanthomonas campestris pv nigromaculans)、黒斑病(Ascochyta phaseolorum)、根腐病(Pythium irregulare)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、ニンジンの萎凋病(Fusarium oxysporum)、うどんこ病(Erysiphe heraclei)、黒葉枯病(Alternaria dauci)、こぶ病(Rhizoctonia dauci)、しみ腐病(Pythium sulcatum)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、軟腐病(Erwinia carotovora)、根腐病(Rhizoctonia solani)、斑点病(Cercospora carotae)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、タバコの赤星病(Alternaria alternata)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭そ病(Colletotrichum cichoracearum)、テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、そう根病(Beet necrotic yellow vein virus)、バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa)、キクの褐斑病(Septoria chrysanthemiindici)、白さび病(Puccinia horiana)等が挙げられる。
【0063】
本発明方法を用いて防除しうる昆虫類、ダニ類、線虫類、軟体動物または甲殻類としては、
コナガ(Plutella xylostella)、タマナヤガ(Agrotis ipsilon)、カブラヤガ(Agrotis segetum)、オオタバコガ(Helicoverpa armigera)、タバコガ(Helicoverpa assulta)、コットンボールワーム(Helicoverpa zea)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、タマナギンウワバ(Plusia nigrisigna)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、ハイマダラノメイガ(Hellula undalis)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)、モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)等の鱗翅目害虫、ニジュウヤホシテントウ(Henosepilachna vigintioctopunctata)、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)等の鞘翅目害虫、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)等の半翅目害虫、ミカンキイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)等の総翅目害虫、ナスハモグリバエ(Liriomyza bryoniae)、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)、タネバエ(Hylemya platura)等の双翅目害虫、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ナミハダニ(Tetranychus urticae)等のハダニ類、チャノホコリダニ(Polyphaotarsonemus latus)、シクラメンホコリダニ(Steneotarsonemus pallidus)等のホコリダニ類、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)等のコナダニ類、キタネグサレセンチュウ(Prathylenchus penetrans)、クルミネグサレセンチュウ(Prathylenchus vulnus)、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)の線虫類、等が挙げられる。
【0064】
本発明方法が適用できる畑作物としては、例えば、
食用作物では、イネ、エンバク、オオムギ、コムギ、裸麦等のムギ類、トウモロコシ等のイネ科作物、アズキ、インゲン、エンドウ等のマメ科作物、ソラマメ、ダイズ、ラッカセイ等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、ソバ等、
野菜類では、ホウレンソウ、カブ、カリフラワー、キャベツ、コマツナ、ダイコン、ハクサイ、ブロッコリー、チンゲンサイ、ワサビ、カボチャ、キュウリ、シロウリ、スイカ、メロン、ゴボウ、シュンギク、チシャ、フキ、サトイモ、ショウガ、ミョウガ、セリ、セルリー、ニンジン、パセリ、ミツバ、トウガラシ、ピーマン、トマト、ナス、イチゴ、アスパラガス、タマネギ、ネギ、ニラ、ニンニク、ネギ、ラッキョウ、ワケギ等、
特用作物では、ワタ、テンサイ、ナタネ、サトウキビ、ゴマ、タバコ、コンニャク等、花卉類では、キク、カーネーション、バラ、ストック、リンドウ、宿根カスミソウ、洋ラン類、スターチス、ガーベラ、トルコギキョウ、チューリップ、ユリ、グラジオラス、フリージア、アイリス、スイセン、キンセンカ、マーガレット等
を挙げることができる。
【実施例】
【0065】
本発明の有用性について、以下の試験例において具体的に説明する。但し、本発明はこれらのみに制限されるものではない。
【0066】
なお、以下の実施例で用いた供試土壌(汚染土壌)及び供試植物、並びに化合物Aの顆粒水和剤の製造例は以下の通りである。
・供試土壌:健全土壌にアブラナ科根こぶ病菌休眠胞子を2×10^(5)個/gの割合にて添加
・供試植物:セルトレイ(苗98株/トレイ、1800cm^(2)/トレイ)内で3?4葉期まで育成したハクサイ(品種:無双)
・化合物Aの顆粒水和剤:
〔配合組成〕
(1)化合物A 50.0質量部
(2)アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 3.0質量部
(3)リグニンスルホン酸ナトリウム 15.0質量部
(4)硫酸アンモニウム バランス
上記(1)?(4)を混合粉砕した後、造粒水を加えて混練した。0.8mmのスクリーンをつけた押出造粒機にて造粒後、乾燥、整粒して顆粒水和剤を得た。
〔試験例1〕散布薬液量別:ハクサイ根こぶ病防除効果試験
前記化合物Aの顆粒水和剤を水で希釈し、化合物Aの投下薬量が同量となるように濃度を調整した薬液を、前記供試植物の各セルトレイごとに5ml、10mlまたは20mlの散布薬液量で株元に噴霧散布した。シアゾファミド懸濁剤(ランマンフロアブル〔商品名〕、石原産業(株)製)も水で希釈して薬液を調製し、化合物Aと同様に処理した。
【0067】
噴霧散布翌日、セルトレイから苗を抜き取り、直径10cmのポットに前記供試土壌を用いて定植した。
【0068】
温室内(20℃調整)で4週間植物を育成後、ポットより土壌ごと植物を取り出し、健全土壌を入れた4寸鉢内に移植した。移植3週間後に根部の根こぶの着生程度を調べ、発病度及び防除価を評価した。
【0069】
なお発病度及び防除価は下記の式に従い算出した。
【0070】
発病度=〔Σ(程度別発病株数×発病指数)/(調査した株×3)〕×100
防除価=〔1-(処理区発病度/無処理区発病度)〕×100
[発病指数]
0:根こぶの着生なし
0.5:側根に根こぶを形成
1:主根に小さな根こぶを形成
2:主根に大きな根こぶを形成
3:主根と側根に根こぶを形成
試験例1より得られた結果を表1に示す。
【0071】


表1に示すとおり、化合物A顆粒水和剤またはシアゾファミド懸濁剤のいずれの薬剤を用いた場合でも、散布薬液量を0.5L/トレイとしたものが最も発病度が低く、優れた防除価を示した。
〔試験例2〕処理方法別:ハクサイ根こぶ病防除効果試験
(1)セル苗潅注法
前記供試植物に、前記化合物Aの顆粒水和剤を水で500倍に希釈した薬液をセルトレイ当り0.5L潅注した。翌日、薬剤処理した苗をアブラナ科根こぶ病汚染圃場に定植した。
(2)土壌混和法
化合物Aの土壌混和処理は、定植当日に化合物Aの粉剤を30kg/10aとなるように薬剤を前記アブラナ科根こぶ病汚染圃場の土壌表面に散布し、よく混和した後にセル苗を定植した。
【0072】
定植60日後に根部の根こぶの着生程度別株数を調べた。下記の式に従い、発病度を算出した。
【0073】
発病度=〔Σ(程度別発病株数×発病指数)/(調査した株×4)〕×100
防除価=〔1-(処理区発病度/無処理区発病度)〕×100
[発病指数]
0:根こぶの着生なし
1:全体の25%以下に根こぶ形成
2:全体の25-50%に根こぶ形成
3:全体の50-75%に根こぶ形成
4:全体の75%以上に根こぶ形成
得られた結果を表2に示す。
【0074】

表2に示すとおり、処理方法としてセル苗潅注法を採用すると、土壌混和法と比べて薬剤の処理量を約1/10も少なくでき、且つ、防除価に優れるとする結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明により、農薬の省力的施用を行うことができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(3-ブロモ-6-フルオロ-2-メチルインドール-1-イルスルホニル)-N,N-ジメチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-スルホンアミドおよびシアゾファミドから選ばれる1種以上の農薬有効成分の水溶液または水性分散液を、該農薬有効成分の施用量が100株の苗あたり0.1g?5gにかつ苗育成区画面積1800cm^(2)あたり0.1g?5gになるように、100株の苗あたり20ml?1100mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?1100mlの容量で、畑作物の苗育成区画に苗の定植前までに潅注または散布することを特徴とする根こぶ病の防除方法。
【請求項2】
農薬有効成分の水溶液または水性分散液が、農薬製剤を水で希釈して調製したものである請求項1に記載の防除方法。
【請求項3】
100株の苗あたり20ml?600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する請求項1または2に記載の防除方法。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
98株の苗あたり500ml?1000mlの容量で、かつ、苗育成区画面積1800cm^(2)あたり500ml?600mlの容量で、農薬有効成分の水溶液または水性分散液を潅注または散布する請求項1または2に記載の防除方法。
【請求項6】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2013-12-26 
結審通知日 2014-01-06 
審決日 2014-01-17 
出願番号 特願2006-133554(P2006-133554)
審決分類 P 1 113・ 536- YAA (A01N)
P 1 113・ 537- YAA (A01N)
P 1 113・ 121- YAA (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 千香子  
特許庁審判長 井上 雅博
特許庁審判官 木村 敏康
村守 宏文
登録日 2008-03-14 
登録番号 特許第4092591号(P4092591)
発明の名称 農薬の省力的施用方法  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 小栗 昌平  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 古舘 久丹子  
代理人 萼 経夫  
代理人 加藤 勉  
代理人 加藤 勉  
代理人 萼 経夫  
代理人 伴 知篤  
代理人 濱田 百合子  
代理人 伴 知篤  

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