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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C07K
管理番号 1288990
審判番号 不服2010-22305  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-04 
確定日 2014-06-17 
事件の表示 特願2007- 30405「ペプチド合成におけるマイクロ波により向上されたN-FMOC脱保護」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日出願公開、特開2007-211013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成19年(2007年)2月9日(優先権主張 2006年2月10日、米国)を出願日とする出願であって、平成22年5月31日付けで拒絶査定され、同年10月4日に拒絶査定不服審判が請求され、平成25年7月29日付けで拒絶理由が通知されたところ、同年12月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成25年12月26日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
脱保護反応に対してマイクロ波照射を適用すると同時に、Fmoc保護アミノ酸を5%ピペラジンを含む有機溶液中で脱保護すること;
マイクロ波エネルギーの適用の間、反応温度を、モニターすること;
モニターされた温度に基づいて適用されたマイクロ波パワーを和らげること;
ペプチド合成の活性化工程及びカップリング工程を実施すると同時に、マイクロ波エネルギーを適用すること;および
マイクロ波アシストされた脱保護、活性化、及びカップリング工程のサイクルを繰り返し、所望の配列のペプチドを形成すること
を含み、
得られるペプチドが5%未満のアスパルチミド副反応物を含むことを特徴とする、
マイクロ波アシスト固相ペプチド合成方法における改良方法。」

第3 引用例の記載事項
1.当審における拒絶理由通知において引用例aとして引用されたJ. M. Collins et al., “Novel method for solid phase peptide synthesis using microwave energy”, Presented at the 18th American Peptide Symposium, Boston, MA, 22 July 2003,[平成25年7月25日検索],インターネット には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。また、下線は当審で付与した。)。
(ア)「アメリカンペプチドシンポジウムにて発表
マサチューセッツ州ボストン
2003年7月22日 」(1頁5?7行)

(イ)「マイクロ波エネルギーの適用は、エネルギーインプットを必要とする多くの化学的アプリケーションのための主要で有効なツールであることが証明されている。マイクロ波アシスト固相ペプチド合成(SPPS)のための新しい手法は、増進された脱保護およびカップリング反応を可能にするように発展された。・・・
よく知られたアシルキャリアペプチドである、^(65-74)Acpは、それぞれのサイクルが60秒の脱保護及び120秒のカップリング反応で完了するように合成された。規制されていない脱保護試薬の置換、すなわち、ピペラジンは、90秒の脱保護時間で^(65-74)Acp配列を合成するために首尾よく使用された。・・・凝集は、より純粋で、より長いペプチド配列の可能性を可能にするマイクロ波エネルギーによって克服される。」(要約)

(ウ)「マイクロ波合成の速度は、安価で反応性の試薬の使用の可能性をもたらす。SPPSとマイクロ波エネルギーの組み合わせは、より純粋な製品をより迅速なサイクル時間で得ることを可能にする。本稿では、マイクロ波エネルギーを利用して脱保護及びカップリング反応が増進された、単一容器内におけるペプチド合成のための完全なプロセスを示す。」(2頁3?7行)

(エ)「プレロードされたFmoc-アミノ酸ワングレジン及びすべてのアミノ酸は、ペプチドインターナショナル(ルイビル, KY)から購入した。Fmocアミノ酸は、以下の側鎖保護基、Asn(Trt), Asp(OtBu),Gln(Trt), Tyr(tBu)を含む。・・・
手順I. ^(65-74)ACPペプチド:VQAAIDYING
・・・脱保護はDMF溶液中の15%ピペリジンを用いて行った。すべてのカップリング反応は、0.9mmol/1mmol PyBOP/HOBt及び15mL DMF中に溶解した2mmol DIPEAを用いて行った。脱保護及びカップリング反応のそれぞれは、マイクロ波エネルギーと窒素バブリングとともに実施した。・・・

手順II.^(65-74)ACPペプチド:VQAAIDYING
アシルキャリアペプチドである^(65-74)ACPは、脱保護溶液として、DMF溶液中の5%ピペラジンを用いて、脱保護時間を90秒とすることを除いて、手順I.のように正確に合成した。」(3頁4?24行)

上記記載事項(エ)の「^(65-74)ACPは、脱保護溶液として、DMF溶液中の5%ピペラジンを用いて、脱保護時間を90秒とすることを除いて、手順I.のように正確に合成した。」という記載において、DMFはジメチルホルムアミドのことであり、これは有機溶液であるから、引用例aにおける脱保護は、「5%ピペラジンを含む有機溶液中」で実施されていると認められる。
また、上記記載事項(エ)の「すべてのカップリング反応は、0.9mmol/1mmol PyBOP/HOBt及び15mL DMF中に溶解した2mmol DIPEAを用いて行った。」という記載において、PyBOP、HOBt及びDIPEAは、ペプチド合成において、アミノ酸を活性化させかつ、カップリングさせる試薬であるから(引用例bの段落【0075】、特表平10-511556号公報26頁実施例5、及び、日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質VI 合成および発現」、株式会社東京化学同人、第1版第1刷、1992年6月15日発行、9頁参照)、上記記載におけるカップリング反応は、アミノ酸を活性化させる工程を含むものである。
そうすると、上記記載事項(ア)?(エ)によれば、本願優先日前である平成15年7月22日に、以下の発明が公然知られたものとなったと認められる。

「脱保護反応に対してマイクロ波照射を適用すると同時に、Fmoc保護アミノ酸を5%ピペラジンを含む有機溶液中で脱保護すること;
ペプチド合成の活性化工程及びカップリング工程を実施すると同時に、マイクロ波エネルギーを適用すること;および
マイクロ波アシストされた脱保護、活性化、及びカップリング工程のサイクルを繰り返し、所望の配列のペプチドを形成すること
を含む、
マイクロ波アシスト固相ペプチド合成方法における改良方法。」(以下、「引用発明」という。)

2.当審における拒絶理由通知において引用例bとして引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開2005-15483号公報には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】
ペプチドの固相合成を促進する方法であって:
固相樹脂に結合された保護第一アミノ酸をマイクロ波透過性容器において脱保護性溶液と混合しながら、該混合アミノ酸及び溶液にマイクロ波を照射することにより、該保護結合アミノ酸を脱保護する工程;
第二アミノ酸及び活性化溶液を該同一容器に添加しながら、該容器にマイクロ波を照射することにより、該第二アミノ酸を活性化させる工程;
該同一容器中の組成物にマイクロ波を照射しながら、該第二アミノ酸を該第一アミノ酸にカップリングさせる工程;及び
結合されたペプチドを該同一容器において切断性組成物と混合しながら、該組成物にマイクロ波を照射することにより、該結合ペプチドを該固相樹脂から切断する工程、を含む方法。
【請求項2】
脱保護工程、活性化工程、カップリング工程及び切断工程の任意の1つ以上の工程の間に容器を冷却して、マイクロ波エネルギーからの熱の蓄積により固相支持体又はペプチドが分解するのを防ぐ工程を含む、請求項1記載のペプチド合成方法。
【請求項3】
3つ以上のアミノ酸に関して脱保護工程、活性化工程及びカップリング工程を連続して周期的に繰り返すことにより、所望のペプチドを合成することを含む、請求項1記載のペプチド合成方法。・・・
【請求項14】
容器の温度をモニターし、施用される出力を該モニター温度に基づいて節制することを含む、請求項1記載のペプチド合成方法。」(請求項1?3、14)

(イ)「別の側面において、本発明はペプチドの固相合成を促進するための方法である。この側面において、本方法は、マイクロ波透過性容器において保護結合酸を脱保護性溶液と混合しながら、混合された酸及び溶液にマイクロ波を照射し、混合物を冷却して(または別法では、施用される出力を制御して、あるいはこれら両方により)、マイクロ波エネルギーの熱の蓄積により固相支持体又は混合組成物のうちいずれかが分解しないよう防ぐことにより、固相樹脂に結合された保護第一アミノ酸を脱保護することを含む。」(段落【0071】)

(ウ)「別の側面において、本発明は、マイクロ波エネルギーの使用を含む、1つ以上のペプチドを固相合成する方法である。脱保護工程、活性化工程、カップリング工程及び切断工程中に反応セルの内容物に施用されるマイクロ波エネルギーにより、これらの反応を完了するのに要する時間が大いに短縮される。」(段落【0058】)

3.当審における拒絶理由通知において引用例cとして引用された、本願優先日前に頒布された刊行物であるLett. Pept. Sci., 2000, vol.7, no.2, p.107-112には、以下の事項が記載されている(英語で記載されているため、日本語訳で摘記する。また、下線は当審で付与した。)。
(ア)「センシティブな配列のFmoc-固相合成における、塩基が誘発するアルパルチミド(イミド環)及びそれに続く塩基の付加物形成は、予測及びコントロールが共に困難な重大な副反応である。2つのセンシティブなペプチド配列におけるN^(α)-Fmoc脱保護試薬として、ピペラジンの長期処理の効果を分析した。比較として、ピペリジン、1-ヒドロキシピペリジン、フッ化テトラブチルアンモニウム及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ-7エンを含む他の塩基もまた調査した。結果は、ピペラジンが最も少ない副反応を起こしたが、すべての塩基は、様々な程度のアスパルチミド及び場合によって塩基の付加物の形成を共に誘発した。・・・最良の結果は0.1M 1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを含むピペラジンを用いたときに得られ、この試薬は、塩基にセンシティブな配列のFmoc-固相合成において、N^(α)-脱保護についてしっかりと考えてみる価値があることを示した。この試薬のさらなる長所は、時としてFmoc-固相アセンブリにおける重大な塩基媒介性問題である、樹脂に結合したC末端システインのラセミ化を起こさないことである。」(要約)

第4 対比
本願発明と引用発明を対比すると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

一致点:「脱保護反応に対してマイクロ波照射を適用すると同時に、Fmoc保護アミノ酸を5%ピペラジンを含む有機溶液中で脱保護すること;
ペプチド合成の活性化工程及びカップリング工程を実施すると同時に、マイクロ波エネルギーを適用すること;および
マイクロ波アシストされた脱保護、活性化、及びカップリング工程のサイクルを繰り返し、所望の配列のペプチドを形成すること
を含む、
マイクロ波アシスト固相ペプチド合成方法における改良方法。」

相違点1:本願発明は、「マイクロ波エネルギーの適用の間、反応温度を、モニターすること及びモニターされた温度に基づいて適用されたマイクロ波パワーを和らげること」を含むのに対し、引用発明には、そのようなことは特に記載されていない点。

相違点2:本願発明は、「得られるペプチドが5%未満のアスパルチミド副反応物を含む」ものであるのに対し、引用発明は、アスパルチミド副反応物の量については特定されていない点。

第5 判断
1.相違点1について
引用例bには、マイクロ波エネルギーを使用する固相ペプチド合成方法において、マイクロ波エネルギーからの熱の蓄積により固相支持体又はペプチドが分解するのを防ぐことを目的として、容器の温度をモニターし、該モニター温度に基づいて施用される出力を節制することが記載されている(記載事項(ア)及び(イ)参照)。
引用例a及び引用例bは、固相ペプチド合成方法において、マイクロ波を照射することによりペプチド合成を改良するという点で技術分野及び課題が共通するものであるから、引用発明において、引用例bの記載を考慮して、マイクロ波エネルギーからの熱の蓄積により、固相支持体又はペプチドが分解するのを防ぐことを目的として、マイクロ波エネルギーの適用の間、反応温度をモニターし、モニターされた温度に基づいて適用されたマイクロ波パワーを和らげるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

2.相違点2について
引用例cには、Fmoc-固相ペプチド合成において、アルパルチミド形成及びそれに続く塩基の付加物の形成は重大な副反応であることが記載されているから、当業者であれば、得られたペプチドに含まれるアスパルチミド副反応物に注目し、その量を所望の程度未満に設定することは、容易に想到することである。
そして、本願明細書には、得られたペプチドに含まれるアスパルチミド副反応物が「5%未満」であることは何ら記載されていないから、「5%未満」という範囲に格別な技術的意義があるとは認められない。

3.本願発明の効果及び審判請求人の主張について
審判請求人は、平成22年11月19日付けで補正された審判請求書及び平成25年12月26日付けの意見書において、本願発明の顕著な効果として、3分で完全なFmoc除去を達成することができること、及び、アスパルチミド副反応物の量を顕著に低減できることを主張する。

しかしながら、本願発明は3分で完全なFmoc除去を達成することができるという効果は、引用例aの記載事項(イ)の、90秒で脱保護する旨の記載及び引用例bの記載事項(ウ)の、マイクロ波エネルギーの照射により脱保護、活性化及び活性化工程の時間が大いに短縮される旨の記載からみて、当業者が予測し得る範囲のものである。
また、本願発明はアスパルチミド形成の副反応が軽減されるという効果は、引用例cの、Fmoc-固相ペプチド合成において、脱保護試薬としてピペラジンを使用すると、他の塩基を使用した場合よりもアルパルチミド形成及びそれに続く塩基の付加物の形成の副反応が少ない旨の記載からみて、当業者が予測し得る範囲のものである。

4.小括
したがって、本願発明は、引用例a?cに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-21 
結審通知日 2014-01-22 
審決日 2014-02-04 
出願番号 特願2007-30405(P2007-30405)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸来 幸男  
特許庁審判長 今村 玲英子
特許庁審判官 冨永 みどり
田中 晴絵
発明の名称 ペプチド合成におけるマイクロ波により向上されたN-FMOC脱保護  
代理人 小林 泰  
代理人 江尻 ひろ子  
代理人 富田 博行  
代理人 小野 新次郎  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  
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