• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1288993
審判番号 不服2012-11742  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-22 
確定日 2014-06-16 
事件の表示 特願2008-547572「コンテンツの配信および監視技術」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日国際公開、WO2007/075947、平成21年 6月 4日国内公表、特表2009-521865〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本件審判請求に係る出願(以下、「本願」という。)は、2006年12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2005年12月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年6月20日に特許法第184条の5第1項に規定される書面が提出され、平成20年8月15日付けで特許法第184条の4第1項の規定による国際出願日における明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の翻訳文が提出されるとともに、同日付けで審査請求がなされ、平成23年6月7日付けで拒絶理由通知(同年6月14日発送)がなされ、同年9月13日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成24年2月15日付けで拒絶査定(同年2月22日謄本送達)がなされたものである。
これに対して、「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として、平成24年6月22日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
そして、平成24年7月13日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ、同年12月17日付けで当審により特許法第134条第4項の規定に基づく審尋(同年12月18日発送)がなされたが、請求人からの応答がなかったものである。


第2 平成24年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成24年6月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正の内容

平成24年6月22日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容は、平成23年9月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項19の記載

「 【請求項1】
コンテンツ媒体と、
認証サービスとを含み、
前記コンテンツ媒体は、前記媒体上にあるコンテンツとは別個であって前記コンテンツおよび前記コンテンツ媒体を一意に識別する識別子を含み、前記識別子は、前記コンテンツ媒体が機械に接続されているときに取得されて前記認証サービスに提供され、前記識別子は、リーダが前記コンテンツ媒体のチップを処理するエネルギーを提供したときに、前記コンテンツ媒体の内側リング部に埋め込まれた前記チップによって起動され、前記認証サービスは、前記識別子を認証して、前記コンテンツを再生するためのアクセス・キーを前記機械に提供する、システム。
【請求項2】
媒体プレーヤを更に含み、前記媒体プレーヤは、前記認証サービスから前記アクセス・キーが取得された場合に、前記機械上で前記コンテンツを再生する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
警告サービスを更に含み、前記警告サービスは、前記認証サービスが前記識別子を認証しない場合に、報告サービスに警告する、請求項1に記載システム。
【請求項4】
ライセンス供与サービスを更に含み、前記ライセンス供与サービスは、前記認証サービスと通信して、前記コンテンツおよび前記識別子に関連付けられたライセンスを施行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
認証コントローラを更に含み、前記認証コントローラは、最初に前記識別子を取得して前記識別子を暗号化し、前記暗号化された識別子を認証のために前記認証サービスへ送信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記認証コントローラは、前記認証サービスから前記アクセス・キーを暗号化された形式で受信し、前記アクセス・キーを復号化し、前記アクセス・キーを用いて前記機械の上で前記コンテンツを再生する媒体プレーヤに前記復号化されたアクセス・キーを提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記識別子が、前記コンテンツ媒体の未使用部分に埋め込まれるか、または前記コンテンツ媒体にラベルとして貼付された無線周波数認識タグに埋め込まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
命令が書き込まれた機械アクセス可能な媒体であって、前記命令は前記機械からアクセスされた際に方法を実行し、前記方法は、
コンテンツ媒体の内側リング部に埋め込まれたチップを起動して識別子を取得することによって、前記コンテンツ媒体から識別子を取得するステップと、
前記識別子を認証サービスへ送信するステップと、
前記認証サービスからアクセス・キーを要求するステップとを含む。
【請求項9】
前記認証サービスから前記アクセス・キーを受信するステップと、
前記コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツを再生するために前記アクセス・キーを媒体プレーヤに提供するステップとを実行する命令を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記認証サービスから拒絶通知を受信するステップと、
前記コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツが再生不可である旨の通知を提示するステップとを実行する命令を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記認証サービスから前記アクセス・キーを受信するステップと、
前記アクセス・キーに応答して、前記コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツを前記コンテンツ媒体外のメモリまたはストレージに複製するステップとを実行する命令を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記送信ステップが、
前記識別子を前記認証サービスに送信する前に、前記識別子を暗号化するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツの再生を希望する要求者からコンテンツ識別子を受信するステップであって、前記コンテンツ識別子が、前記コンテンツ媒体に貼付され、前記媒体上にある前記コンテンツとは別個であり、前記コンテンツ識別子は、前記要求者によってアクセスされるバーコードリーダから受信され、前記コンテンツ識別子は、前記要求者が前記バーコードリーダを介してスキャンするスキャナ・ラベルとして前記コンテンツ媒体に貼付され、前記コンテンツ識別子は、前記コンテンツ媒体内に埋め込まれた前記コンテンツを一意に識別するステップと、
前記コンテンツに関連付けられたポリシに応答して前記コンテンツ識別子の認証を試みるステップと、
前記コンテンツ識別子の認証が成功した場合に、アクセス・キーを前記要求者に送信し、成功しない場合は、拒絶通知を前記要求者に送信するステップとを含む方法。
【請求項14】
前記受信ステップが、暗号化された形式で受信される前記コンテンツ識別子を復号化するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記受信ステップが、前記要求者の機械の地理的位置を取得するステップを更に含み、前記地理的位置は、前記ポリシの観点から評価されて、前記コンテンツ識別子が前記アクセス・キーのために認証されているか否かを判定する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記取得ステップが、
前記要求者に関連付けられたインターネット・プロトコル(IP)アドレスから前記地理的位置を推定するステップと、
前記要求者に関連付けられた装置から全地球測位衛星(GPS)座標として前記地理的位置を受信するステップ、のうち少なくとも1つを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリシをライセンス供与サービスから取得するステップを更に含み、前記ポリシには前記コンテンツ用のライセンスが関連付けられ、前記ポリシは前記コンテンツ識別子により識別される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記コンテンツ識別子が認証されなかった場合、報告サービスに警告するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記コンテンツ識別子を第2の要求者または同一要求者から受信するステップと、
前記ポリシが前記コンテンツの同時再生を許すか否かを判定するステップと、
前記ポリシが許す場合は異なるアクセス・キーを送信し、許さない場合は同時再生を拒絶するステップとを更に含む、請求項13に記載の方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正前の請求項」という。)

を、

「 【請求項1】
コンテンツ媒体と、
認証サービスとを含み、
前記コンテンツ媒体は、前記媒体上にあるコンテンツとは別個であって前記コンテンツおよび前記コンテンツ媒体を一意に識別する識別子を含み、前記識別子は、前記コンテンツ媒体が機械に接続されているときに取得されて前記認証サービスに提供され、前記識別子は、リーダが前記コンテンツ媒体のチップを処理するエネルギーを提供したときに、前記コンテンツ媒体の内側リング部に埋め込まれた前記チップによって起動され、前記リーダはコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダであり、前記認証サービスは、前記識別子を認証して、前記コンテンツを再生するためのアクセス・キーを前記機械に提供し、前記認証サービスによる認証は、前記コンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記識別子に基づくものであり、前記アクセス・キーは、前記機械上の前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスに施行されるルールを含む、システム。
【請求項2】
媒体プレーヤを更に含み、前記媒体プレーヤは、前記認証サービスから前記アクセス・キーが取得された場合に、前記機械上で前記コンテンツを再生する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
警告サービスを更に含み、前記警告サービスは、前記認証サービスが前記識別子を認証しない場合に、報告サービスに警告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
ライセンス供与サービスを更に含み、前記ライセンス供与サービスは、前記認証サービスと通信して、前記コンテンツおよび前記識別子に関連付けられたライセンスを施行する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
認証コントローラを更に含み、前記認証コントローラは、最初に前記識別子を取得して前記識別子を暗号化し、前記暗号化された識別子を認証のために前記認証サービスへ送信する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記認証コントローラは、前記認証サービスから前記アクセス・キーを暗号化された形式で受信し、前記アクセス・キーを復号化し、前記アクセス・キーを用いて前記機械の上で前記コンテンツを再生する媒体プレーヤに前記復号化されたアクセス・キーを提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記識別子が、前記コンテンツ媒体の未使用部分に埋め込まれるか、または前記コンテンツ媒体にラベルとして貼付された無線周波数認識タグに埋め込まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
命令が書き込まれた機械アクセス可能な媒体であって、前記命令は前記機械からアクセスされた際に方法を実行し、前記方法は、
コンテンツ媒体の内側リング部に埋め込まれたチップを起動して識別子を取得することによって、前記コンテンツ媒体から識別子を取得するステップであって、前記識別子はコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダから取得される、ステップと、
前記識別子を、前記コンテンツ媒体に格納されたコンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記識別子に基づいて認証する認証サービスへ送信するステップと、
前記認証サービスからアクセス・キーを要求するステップであって、前記アクセス・キーは、前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスに施行されるルールを含む、ステップとを含む。
【請求項9】
前記認証サービスから前記アクセス・キーを受信するステップと、
前記コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツを再生するために前記アクセス・キーを媒体プレーヤに提供するステップとを実行する命令を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記認証サービスから拒絶通知を受信するステップと、
前記コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツが再生不可である旨の通知を提示するステップとを実行する命令を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記認証サービスから前記アクセス・キーを受信するステップと、
前記アクセス・キーに応答して、前記コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツを前記コンテンツ媒体外のメモリまたはストレージに複製するステップとを実行する命令を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記送信ステップが、
前記識別子を前記認証サービスに送信する前に、前記識別子を暗号化するステップを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
コンテンツ媒体に埋め込まれたコンテンツの再生を希望する要求者からコンテンツ識別子を受信するステップであって、前記コンテンツ識別子が、前記コンテンツ媒体に貼付され、前記媒体上にある前記コンテンツとは別個であり、前記コンテンツ識別子は、前記要求者によってアクセスされるバーコードリーダから受信され、前記コンテンツ識別子は、前記要求者が前記バーコードリーダを介してスキャンするスキャナ・ラベルとして前記コンテンツ媒体に貼付され、前記コンテンツ識別子は、前記コンテンツ媒体内に埋め込まれた前記コンテンツを一意に識別し、前記コンテンツ識別子は、前記コンテンツ媒体を一意に識別し、前記コンテンツ媒体はコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)であるステップと、
前記コンテンツに関連付けられたポリシに応答して前記コンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記コンテンツ識別子の認証を試み、報告の生成又は警告を出すために前記識別子用の計測値を集めるステップと、
前記コンテンツ識別子の認証が成功した場合に、アクセス・キーを前記要求者に送信し、成功しない場合は、拒絶通知を前記要求者に送信し、前記アクセス・キーは、前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスがなされたときに施行されるルールを有するステップとを含む方法。
【請求項14】
前記受信ステップが、暗号化された形式で受信される前記コンテンツ識別子を復号化するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記受信ステップが、前記要求者の機械の地理的位置を取得するステップを更に含み、前記地理的位置は、前記ポリシの観点から評価されて、前記コンテンツ識別子が前記アクセス・キーのために認証されているか否かを判定する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記取得ステップが、
前記要求者に関連付けられたインターネット・プロトコル(IP)アドレスから前記地理的位置を推定するステップと、
前記要求者に関連付けられた装置から全地球測位衛星(GPS)座標として前記地理的位置を受信するステップ、のうち少なくとも1つを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリシをライセンス供与サービスから取得するステップを更に含み、前記ポリシには前記コンテンツ用のライセンスが関連付けられ、前記ポリシは前記コンテンツ識別子により識別される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記コンテンツ識別子が認証されなかった場合、報告サービスに警告するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記コンテンツ識別子を第2の要求者または同一要求者から受信するステップと、
前記ポリシが前記コンテンツの同時再生を許すか否かを判定するステップと、
前記ポリシが許す場合は異なるアクセス・キーを送信し、許さない場合は同時再生を拒絶するステップとを更に含む、請求項13に記載の方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項各項を「補正後の請求項」という。)

に補正するものである。

そして、本件補正は、

本件補正前の請求項1記載の発明を特定するための事項(以下、「発明特定事項」という。)であるところの「リーダ」、(認証サービスによる)「認証」、及び「アクセス・キー」を、それぞれ、より下位の「前記リーダはコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダ」、「前記認証サービスによる認証は、前記コンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記識別子に基づくもの」、及び「前記アクセス・キーは、前記機械上の前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスに施行されるルールを含む」に限定し、

本件補正前の請求項8記載の発明特定事項であるところの「前記コンテンツ媒体から識別子を取得するステップ」、「前記識別子を認証サービスへ送信するステップ」、及び「前記認証サービスからアクセス・キーを要求するステップ」を、それぞれ、より下位の「前記コンテンツ媒体から識別子を取得するステップであって、前記識別子はコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダから取得される、ステップ」、「前記識別子を、前記コンテンツ媒体に格納されたコンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記識別子に基づいて認証する認証サービスへ送信するステップ」、及び「前記認証サービスからアクセス・キーを要求するステップであって、前記アクセス・キーは、前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスに施行されるルールを含む、ステップ」に限定し、

本件補正前の請求項13記載の発明特定事項であるところの「コンテンツ識別子」、「コンテンツ識別子の認証を試みるステップ」、及び「アクセス・キー」を、それぞれ、より下位の「前記コンテンツ識別子は、前記コンテンツ媒体を一意に識別し、前記コンテンツ媒体はコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)である」、「前記コンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記コンテンツ識別子の認証を試み、報告の生成又は警告を出すために前記識別子用の計測値を集めるステップ」、及び「前記アクセス・キーは、前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスがなされたときに施行されるルールを有する」に限定するものであり、

この限定によって、本件補正前後の請求項1、請求項8、及び請求項13に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。

したがって、本件補正の目的は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるもの(以下、「限定的減縮」という。)に該当し、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられる事項を目的とするものであると解することができる。

2.独立特許要件

以上のように、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、補正前の請求項1に対して、限定的減縮を行ったものと認められる。そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)以下に検討する。

(1)補正後の発明

本件補正により、本願補正発明は、前記「1.補正の内容」において、補正後の請求項1として引用した、次の記載のとおりのものである。

「コンテンツ媒体と、
認証サービスとを含み、
前記コンテンツ媒体は、前記媒体上にあるコンテンツとは別個であって前記コンテンツおよび前記コンテンツ媒体を一意に識別する識別子を含み、前記識別子は、前記コンテンツ媒体が機械に接続されているときに取得されて前記認証サービスに提供され、前記識別子は、リーダが前記コンテンツ媒体のチップを処理するエネルギーを提供したときに、前記コンテンツ媒体の内側リング部に埋め込まれた前記チップによって起動され、前記リーダはコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダであり、前記認証サービスは、前記識別子を認証して、前記コンテンツを再生するためのアクセス・キーを前記機械に提供し、前記認証サービスによる認証は、前記コンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記識別子に基づくものであり、前記アクセス・キーは、前記機械上の前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスに施行されるルールを含む、システム。」

(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

(2-1)引用文献1

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年6月7日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2005-85336号公報(平成17年3月31日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

A 「【0054】
前記著作物データ等の主たるデジタルデータ(本発明のデジタルデータ)は、従来のCD(コンパクトディスク)やDVD(Digital Versatile Disc)で用いられている記録フォーマットによって記録され、本発明の識別情報(UID)は例えば前記デジタルデータの記録フォーマットとは異なる記録フォーマットに基づいて記録される。
【0055】
CDやDVDの記録フォーマットに基づいてデータの記録が行われる読み取り専用の光ディスクは、記録すべきデジタルデータに対応する凹凸パターンを転写するスタンパを用いて同種のものが大量に生産される。そこで、本発明の識別情報(UID)は、記録媒体の製造工程中に記録媒体毎に反射膜に直接書き込むことによって記録される。この識別情報(UID)を記録したディスク状記録媒体の製造方法については後述する。
・・・(中略)・・・
【0057】
そして本発明の識別情報(UID)はこれら用途別の複数のデータに各々付与されるものであり、その記録フォーマットの一例を図2に示す。図2(a)において、先頭の例えば8ビットがメディア識別子として働くUIDヘッダであり、例えば図2(b)のように固定コードと、プロモーション用か本編用かの識別コードと、メディアの種類を示すコードとで構成されている。」

B 「【0085】
次に、図6に示すようなシステムを用いて、本発明が適用されたディスク状記録媒体10に記録された各種のデータ及び情報を、通信機能付きパーソナルコンピュータ(図示省略)に接続されたUID再生光ディスクプレーヤ31を用いて読み取り、通信回線網やインターネット32を介して、この記録媒体の頒布元であるレコード会社が所有しあるいは管理するサーバ33(UID認証サーバ、コンテンツサーバ)と通信を行う状態を図7を参照して説明する。」

C 「【0088】
尚図7は、前記各コンテンツのデジタルデータとそれらデータ毎に付加されたUIDがともに暗号化され、URLの示すホームページのサーバ33側から暗号化を解くための鍵を入手する場合の具体例を示すものである。
【0089】
図7において、ユーザは、ステップS11で本発明が適用されたディスク状記録媒体10をUID再生光ディスクプレーヤ31に装着し、ステップS12でディスク状記録媒体10に記録されたUID内の、サーバのホームページのネットワークアドレスであるURLに関するデータを読み出す。
・・・(中略)・・・
【0092】
ユーザ側では、ステップS15でUID0データをディスク状記録媒体10から読み出しサーバ33に送信する。サーバ33側では、ステップS35でユーザ側から送信されたUIDデータを認証して記憶し、ステップS36で認証がOKか否かを判別する。認証結果がNOの場合にサーバ33は、ユーザ側に、ステップS16に示すように、ホームページへのアクセスを禁止してエラーをユーザのパーソナルコンピュータのディスプレイに表示させるとともに、サーバ側ではステップS37で通信履歴TR(トランザクション)を記録して通信を終了する。
【0093】
ステップS36でUID0データの認証が得られたと判別されたときには、ステップS38でUID0の暗号解読鍵を生成してユーザ側に送信するとともに、UIDに関する各種サービスをユーザ側に提示する。
・・・(中略)・・・
【0095】
次にユーザ側ではステップS17において、前記解読鍵によりUIDのコンテンツをデコードして再生(UID1?UIDNで管理されている本編用コンテンツを紹介するプロモーション用CD等を聴く)するとともに、前記提示された各種サービスのうちいずれかを選択してサーバ側へ送信する。」

ここで、上記引用文献1に記載されている事項を検討する。

(ア)上記Bの「図6に示すようなシステム・・・本発明が適用されたディスク状記録媒体10・・・を・・・UID再生光ディスクプレーヤ31を用いて読み取り、通信回線網やインターネット32を介して・・・管理するサーバ33(UID認証サーバ、コンテンツサーバ)と通信を行う」との記載からすると、引用文献1には、
“ディスク状記録媒体と、
サーバ(UID認証サーバ等)とを含む、
システム”
が記載されている。

(イ)上記Aの「識別情報(UID)を記録したディスク状記録媒体」、「本発明の識別情報(UID)はこれら用途別の複数のデータに各々付与されるもの」との記載、上記Cの「各コンテンツのデジタルデータとそれらデータ毎に付加されたUID」との記載からすると、各コンテンツ毎に付加される識別情報(UID)がコンテンツとは別個のものであり、当該コンテンツを一意に識別するものであることは、当業者にとって自明である。
してみると、引用文献1には、
“ディスク状記録媒体は、前記媒体上にあるコンテンツとは別個であって前記コンテンツを一意に識別する識別情報(UID)を含”む態様
が記載されていると解される。

(ウ)上記Cの「ユーザは・・・本発明が適用されたディスク状記録媒体10をUID再生光ディスクプレーヤ31に装着・・・ユーザ側では・・・UID0データをディスク状記録媒体10から読み出しサーバ33に送信する」との記載からすると、引用文献1には、
“識別情報(UID)は、ディスク状記録媒体がUID再生光ディスクプレーヤに装着されているときに読み出されてサーバに送信され”る態様
が記載されている。

(エ)上記Aの「主たるデジタルデータ(本発明のデジタルデータ)は、従来のCD・・・やDVD・・・で用いられている記録フォーマットによって記録され、本発明の識別情報(UID)は例えば前記デジタルデータの記録フォーマットとは異なる記録フォーマットに基づいて記録される」との記載、上記Cの「本発明が適用されたディスク状記録媒体10をUID再生光ディスクプレーヤ31に装着」との記載からすると、引用文献1に記載されている「UID再生光ディスクプレーヤ」は、CDやDVDを再生するプレーヤであると解されるが、該UID再生光ディスクプレーヤにおける読込部(リーダ)は、CDやDVD用のリーダといえるものである。してみると、引用文献1には、
“UID再生光ディスクプレーヤにおける読込部(リーダ)は、CDやDVD用のリーダ”である態様
が記載されていると解される。

(オ)上記Cの「ユーザ側では・・UID0データをディスク状記録媒体10から読み出しサーバ33に送信する」、「サーバ33側では・・・ユーザ側から送信されたUIDデータを認証して・・・認証がOKか否かを判別する・・・UID0データの認証が得られたと判別されたときには・・・UID0の暗号解読鍵を生成してユーザ側に送信する」との記載からすると、引用文献1には、
“サーバは、識別情報(UID)を認証して、認証が得られたと判別されたときには暗号解読鍵を生成してユーザ側に送信する”態様
が記載されている。

以上、(ア)ないし(オ)で指摘した事項を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

ディスク状記録媒体と、
サーバ(UID認証サーバ等)とを含み、
前記ディスク状記録媒体は、前記媒体上にあるコンテンツとは別個であって前記コンテンツを一意に識別する識別情報(UID)を含み、前記識別情報(UID)は、前記ディスク状記録媒体がUID再生光ディスクプレーヤに装着されているときに読み出されて前記サーバに送信され、前記UID再生光ディスクプレーヤにおける読込部(リーダ)は、CDやDVD用のリーダであり、前記サーバは、前記識別情報(UID)を認証して、認証が得られたと判別されたときには暗号解読鍵を生成してユーザ側に送信する、システム。

(2-2)引用文献2

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年6月7日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-173381号公報(平成15年6月20日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

D 「【0283】以上の仮定下では、ステップS506において、利用権管理部717は、ユーザ識別子Iusr としての「y1」を受け取り、さらに、発行要求Dirから、コンテンツ識別子Icnt としての「a」を取り出す。また、ステップS507において、ユーザ識別子Iusr としての「y1」およびコンテンツ識別子Icnt としての「a」の組みが、利用権DB714に登録されていると判断される。このように判断されると、ステップS508において、同じ組みの利用権情報Drgt には、「再生m回」と設定されているので、契約者βが操作中の機器201の利用許可を与えてもよいと判断される。このように判断されると、ステップS509において、利用許可情報Dlwが生成される。この時生成される利用許可情報Dlwとしては、例えば、「再生n回」が挙げられる。ここで、nは、上述のmを超えない自然数であり、より好ましくは、機器201の処理能力に応じて設定される。例えば、機器201が相対的に低い性能のハードウェアを搭載している場合であれば、nは、「1」のように、機器201が復号対象コンテンツデータDecntを利用可能な最低限の値に設定されることが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0287】ライセンス情報組立部7212は、発行要求Dirおよび利用許可情報Dlw、ハッシュ値Vhsならびに暗号済み復号鍵Kedのすべてが揃うと、図65のステップS3010と同様にして、図67(b)に示すライセンス情報Dlcを生成する(ステップS5013)。以上のライセンス情報Dlcは、通信部715に渡される。通信部715から、伝送路91を通じて、機器201に送信される(ステップS5014)。」

上記Dの記載からすると、引用文献2には、
“暗号済み復号鍵Kedとともに、再生回数等の利用許可情報Dlwを機器に送信する”技術
が記載されていると解される。

(2-3)引用文献3

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年6月7日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-188869号公報(平成15年7月4日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

E 「【0063】図15は、チケット発行管理部21の概略の動作手順を示すフロー図である。
【0064】まず、利用者に対して、正式ID{Id}、正式パスワード{Pw}および利用者が使用する記録媒体4を特定するシリアル番号{Sn}の入力を要求する(S45)。利用者が自分の正式なID{Id}とパスワード{Pw}および自分が利用する記録媒体のシリアル番号{Sn}を入力すると、チケット発行管理部21は入力されたID{Id}、パスワード{Pw}およびシリアル番号{Sn}が正しいかどうかを検証し(S46?S48)、入力されたID{Id}、パスワード{Pw}およびシリアル番号{Sn}のどれか一つでも正しくなかった場合には、チケットの生成は行わず、すべて正しかった場合にのみ、チケットを生成し(S49)、メールなどを利用して利用者にチケットを送信するなどして発行する(S50)。そして、発行したチケットの情報をチケットデータベース29に登録する(S51)。
【0065】図16、図17は、生成されるチケットの構成を示す図である。
【0066】チケットには、利用者のID{Id}と併せて、シリアル番号{Sn}、利用するコンテンツID{ci}、コンテンツの暗号化鍵{Kc}および有効期限{Vt}を利用者のパスワード{Pw}で暗号化した情報が記録されている。」

上記Eの記載からすると、引用文献3には、
“利用者から入力された記録媒体のシリアル番号等の情報が正しいと認証された時に、コンテンツの暗号鍵とともに、該コンテンツを利用する有効期限を利用者に送信する”技術
が記載されていると解される。

(2-4)引用文献4

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年6月7日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2005-316994号公報(平成17年11月10日出願公開。以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

F 「【0059】
このような構成において、光ディスク22aが書き込み可能なディスク(RWディスク)である場合には、当該RWディスクのRFIDタグ22bには、ディスクごとに固有な固有情報が書き換え不可能な状態であらかじめ記録される。また、光ディスク22aが再生専用のディスク(ROディスク)の場合には、当該ROディスクのRFIDタグ22bには、当該ROディスクの記録面を作製するためのスタンパごとに固有な固有情報が、書き換え不可能な状態であらかじめ記録される。
・・・(中略)・・・
【0062】
これに対して、本実施の形態では、これらの固有情報を、ICチップの一種としてのRFIDタグ22bに記録しておくことで、同じ固有情報を付与した光ディスクが容易に複製できなくしている。また、ICチップに、記録情報の利用側との間の相互認証機能を持たせることで、記録情報の不正な読み出しや改ざんを防止する。これにより、従来の固有情報の記録方法と比較して、著作権保護されたコンテンツの不正利用をより確実に阻止することが可能となる。」

(2-5)引用文献5

原審の拒絶の査定の理由である上記平成23年6月7日付けの拒絶理由通知において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、実用新案登録第3093630号公報(平成15年5月16日発行。以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

G 「【0019】
本考案では、DVDやCD等の記録媒体にRFIDチップを埋め込み、その記録媒体に音楽、ゲーム、オーディオビジュアル、映画などを暗号化処理またはパスワード処理などのプロテクト処理を施したコンテンツをユーザーに提供する。記憶媒体の流通管理は流通権利管理サーバーが一括して行う。」

H 「【0029】
特殊な販売形態に用いることもできる。RFID ICチップ内蔵の記録媒体にパッケージ収録コンテンツの識別(媒体ID)を記録する領域を確保し、権利購入用クライアント装置は、パッケージ状態(開封、未開封)によらず、媒体IDを読み出すことによって収録コンテンツで使用可能な(購入可能な)利用許諾(プロテクト解除データ)の商品カタログを流通権利管理サーバーから取得し、流通権利管理サーバーで記録媒体IDに対応した商品カタログを更新した内容で販売する。これによって、季節的販売などに対応した販売方法が可能となる。」

J 「【0034】
図2は、RFID付き記録媒体(RFID ICチップ内蔵のDVD-ROM、CD-ROM等)の構造を示している。記録媒体1にはRFID ICチップ101が埋め込まれている。コンテンツは、従来通り記録面102に登録されている。したがって、表面的には従来の記録媒体と変わらない。異なるところは、媒体内のコンテンツ流通に関する制御・管理をRFIDで一括管理している点である。ここには、権利管理ID、商品ID、販売店ID、暗号解読鍵(復号鍵)、パスワード等が登録され、RFID入出力装置でしか読み書きができない仕組みになっている。しかもこれらの権利管理用のデータは流通権利管理サーバーが一括して行い、個人が書き込むことができないように制御している。」

K 「本考案で用いるRFID ICチップ埋め込みの記録媒体を説明するための記録媒体の構造図である」図2において、“記録媒体の内側リング部にRFID ICチップを埋め込む”技術が読み取れる。

(3)参考文献に記載されている技術的事項

(3-1)参考文献1

上記平成24年12月17日付けの審尋で援用した上記平成24年7月13日付けの前置報告において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2003-297011号公報(平成15年10月17日出願公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

L 「【0038】通信手段32によってディスク管理者側サイト10Aより入手したユニークIDは制御手段34を介して一旦追記情報管理手段36にストアされる。ユニークIDは上述したようにディスクごとに異なったシリアル番号であって、このシリアル番号にはそのディスクのタイトル(アルバム名)などを付加することができる。シリアル番号は例えば7?8桁の数字によって構成され、乱数器などを使用して発生させた数字を利用することができる。」

(3-2)参考文献2

上記平成24年12月17日付けの審尋で援用した上記平成24年7月13日付けの前置報告において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、国際公開第01/15164号(2001年3月1日国際公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

M 「ここで、レコード会社IDデータは、ディスク状記録媒体に記録される著作物データを構成する音楽等の各コンテンツを制作しあるいは供給する著作権を所有しあるいは管理する著作権所有者を特定する情報である。媒体番号は、ディスク状記録媒体の頒布登録を行うために用いられる。製造装置IDデータは、ディスク状記録媒体を製造する装置を特定する情報であり、さらに48ビットのシリアル番号を記録する製造装置を識別する情報である。この製造装置IDデータ自体も、ディスク状記録媒体固有の識別を行う個別IDデータの情報の一部として用いる。48ビットのシリアル番号は、ディスク状記録媒体を個々に識別するための識別情報あるいは個別IDデータの主要部であり、記録媒体を最初に頒布するレコード会社等が自由に割り付けることができ、連続番号でなくてもよい。さらに、この暗号化エリアに連続して、例えば64ビットのエラー訂正符号(ECC-B)が付加され、先頭の同期部も含む全体として224ビットで構成されている。」(12頁15行?13頁4行)

N 「ところで、本発明が適用されたディスク状記録媒体は、記録媒体固有の識別を可能とする識別情報若しくは個別IDデータが記録されることから、さらに多様の利用の仕方が可能であり、このディスク状記録媒体を適正な頒布元から適正に購入して利用するユーザに多様のサービスを提供することを可能とするデータ処理システムの構築が可能となる。」(34頁16?21行)

(3-3)参考文献3

上記平成24年2月15日付けの拒絶査定において引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、『Klaus Finkenzeller, 「RFIDハンドブック-第2版- -非接触ICカードの原理と応用-」,日刊工業新聞社,2004年5月31日発行,初版,p.7?8』(以下、「参考文献3」という。)には、図とともに、以下の技術的事項が記載されている。
(当審注:下線は、参考のために当審で付与したものである。)

P 「1.3 非接触型システムの構成要素
非接触型システムは常に2つのコンポーネントから構成される(図1.7)。
・1つめはトランスポンダで,識別されるべき物体に取り付けられる。
・もう1つはインテロゲータ(質問器)またはリーダで,システムデザインや使用される技術にもよるが,読込装置,または読込/書出装置となる。この本の中では,通常の呼び方にしたがってデバイスの機能にデータの書込能力がある場合でもリーダと呼ぶ。図1.8が実例である。
リーダは一般的に,ラジオ周波モジュール(送信機および受信機),コントロールユニット,および結合ユニットを持つ。さらに多くのリーダがもう1つのインターフェース(RS232,RS485,……)を持ち,他のシステム(PC,ロボット制御システム,……)に受信したデータを送信することができる。
トランスポンダはRFIDシステムの実際のデータキャリアデバイスで,普通,結合ユニットとマイクロチップから構成される(図1.9)。トランスポンダは通常,独自の電力供給(電池)を持たず,リーダの交信領域に入るまでは待受け状態となっている。そして,トランスポンダは,リーダの交信領域に入ったときに活動化される。トランスポンダを活動化するために必要な電力は,非接触の結合ユニットを通してトランスポンダに供給される。」(7頁1行目?8頁8行目)

(4)本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(4-1)引用発明の「ディスク状記録媒体」及び「サーバ(UID認証サーバ等)」は、それぞれ、本願補正発明の「コンテンツ媒体」及び「認証サービス」に相当する。

(4-2)引用発明の「UID再生光ディスクプレーヤ」は、本願補正発明の「機械」に相当する。
してみると、引用発明の「前記識別情報(UID)は、前記ディスク状記録媒体がUID再生光ディスクプレーヤに装着されているときに読み出されて前記サーバに送信」は、本願補正発明の「前記識別子は、前記コンテンツ媒体が機械に接続されているときに取得されて前記認証サービスに提供」に相当するといえる。

(4-3)引用発明の「UID再生光ディスクプレーヤにおける読込部(リーダ)」は、本願補正発明の「リーダ」に相当する。
してみると、引用発明の「前記UID再生光ディスクプレーヤにおける読込部(リーダ)は、CDやDVD用のリーダ」は、本願補正発明の「前記リーダはコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダ」に相当するといえる。

(4-4)引用発明の「暗号解読鍵」は、上記Cの「前記解読鍵によりUIDのコンテンツをデコードして再生」との記載からすると、コンテンツ管理部署(サーバ)で生成されたコンテンツを再生するための“鍵となる情報”と呼べるものである。そして、本願補正発明の「アクセス・キー」も、コンテンツ管理部署(認証サービス)で生成されたコンテンツを再生するための“鍵となる情報”と呼べるものである。
してみると、引用発明の「前記サーバは、前記識別情報(UID)を認証して、認証が得られたと判別されたときには暗号解読鍵を生成してユーザ側に送信」と、本願補正発明の「前記認証サービスは、前記識別子を認証して、前記コンテンツを再生するためのアクセス・キーを前記機械に提供」とは、“前記認証サービスは、前記識別子を認証して、前記コンテンツを再生するための鍵となる情報を前記機械に提供”する点で共通する。

以上から、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、以下の点で相違する。

(一致点)

コンテンツ媒体と、
認証サービスとを含み、
前記コンテンツ媒体は、前記媒体上にあるコンテンツとは別個であって前記コンテンツを一意に識別する識別子を含み、前記識別子は、前記コンテンツ媒体が機械に接続されているときに取得されて前記認証サービスに提供され、リーダはコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダであり、前記認証サービスは、前記識別子を認証して、前記コンテンツを再生するための鍵となる情報を前記機械に提供する、システム。

(相違点1)

識別子に関して、本願補正発明の「識別子」が、「前記コンテンツおよび前記コンテンツ媒体を一意に識別する」ものであるのに対して、引用発明の「識別情報(UID)」は、コンテンツを一意に識別するものではあるが、コンテンツ媒体を一意に識別するものであるか不明である点。

(相違点2)

本願補正発明の識別子が、「リーダが前記コンテンツ媒体のチップを処理するエネルギーを提供したときに、前記コンテンツ媒体の内側リング部に埋め込まれた前記チップによって起動され」るものであるのに対して、引用発明の識別情報は、記録媒体の反射膜に記録されたものが読み出されるものであるが、どのようにして読み出されるのか不明である点。

(相違点3)

認証サービスによる認証に関して、本願補正発明が、「前記コンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記識別子に基づくもの」であるのに対して、引用発明は、このような特定のインスタンス用である識別子を用いるものであるか不明である点。

(相違点4)

コンテンツを再生するための鍵となる情報に関して、本願補正発明が、「前記機械上の前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスに施行されるルールを含む」ものであるのに対して、引用発明は、暗号解読鍵とともにコンテンツへのアクセスに施行されるルールを送るかどうか不明である点。

(5)当審の判断

上記相違点1ないし相違点4について検討する。

(5-1)相違点1について

記録媒体の識別情報に、該記録媒体固有の識別を可能とする識別情報を含ませるようにすることは、従来から当業者が普通に採用している周知技術(必要であれば、上記参考文献1の上記L、上記参考文献2の上記M及び上記N、等参照。)に他ならない。
してみると、引用発明においても、当該周知技術を適用し、識別情報(UID)にディスク状記録媒体固有の識別を可能とする識別情報を含ませるように構成すること、すなわち、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点1は格別なものではない。

(5-2)相違点2について

不正コピー防止等を目的として、ディスクごとに固有の情報をICチップの一種としてのRFIDタグに記録しておくことは、当該技術分野における周知技術(必要であれば、上記引用文献4の上記F、上記引用文献5の上記G及び上記H、等参照。)にすぎない。そして、記録媒体の内側リング部にRFIDチップを埋め込む技術についても周知技術(必要であれば、上記引用文献5の上記J及び上記K、等参照。)である。
また、RFIDシステムにおいて、マイクロチップを備えたトランスポンダに対して、リーダからトランスポンダを活動化させるために必要な電力を供給することは、上記参考文献3の上記Pに記載されているように、情報処理の技術分野における周知慣用技術にすぎない。
してみれば、引用発明においても、当該周知技術を適用し、識別情報(UID)をディスク状記録媒体の内周リング部に埋め込まれたRFIDチップに登録し、UID再生光ディスクプレーヤが該RFIDチップを処理するエネルギーを提供したときに、当該識別情報を読み出すように構成すること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点2は格別なものではない。

(5-3)相違点3について

本願補正発明の「コンテンツの特定のインスタンス」及び「コンテンツ媒体の特定のインスタンス」における「インスタンス」がどのようなものであるか明確な定義がないが、本願明細書の段落【0013】の「各々のコンテンツ媒体101Aは識別子を含んでいる。・・・ある意味で、識別子は・・・コンテンツおよびコンテンツ媒体101Aのシリアル番号であるとみなすことができるが、この場合にはシリアル番号が特定のコンテンツ媒体101Aまたはその包装上にあるコンテンツの特定のインスタンス用である」との記載からすると、シリアル番号を含むものと認められる。
そして、上記(5-1)で検討したように、記録媒体の識別情報に、該記録媒体固有の識別を可能とする識別情報(シリアル番号)を含ませるようにすることは、従来から当業者が普通に採用している周知技術(必要であれば、上記参考文献1の上記L等参照。)である。
してみれば、引用発明においても、識別情報(UID)をシリアル番号とするように構成すること、すなわち、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点3は格別なものではない。

(5-4)相違点4について

著作物データの再生に関して、再生回数等(本願補正発明における「コンテンツへのアクセスに施行されるルール」に相当)を設定することは、従来から当業者が普通に採用している周知慣用技術に他ならない。
そして、復号鍵とともにコンテンツの再生制限に係る情報を、当該コンテンツを再生する機器に送信する技術についても、例えば、上記引用文献2の上記Dに“暗号済み復号鍵Kedとともに再生回数等の利用許可情報Dlwを機器に送信する”技術が記載され、上記引用文献3の上記Eに“利用者から入力された記録媒体のシリアル番号等の情報が正しいと認証された時に、コンテンツの暗号鍵とともに該コンテンツを利用する有効期限を利用者に送信する”技術が記載されるように、当該技術分野における周知技術である。
してみると、引用発明においても、暗号解読鍵とともにコンテンツの再生制限に係る情報を、サーバからUID再生光ディスクプレーヤに送信するように構成すること、すなわち、上記相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

よって、相違点4は格別なものではない。

(5-5)小括

上記で検討したごとく、相違点1ないし相違点4は格別のものではなく、そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、上記引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3.むすび

以上のように、本件補正は、上記「2.独立特許要件」で指摘したとおり、補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求の成否について

1.本願発明の認定

平成24年6月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年9月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「コンテンツ媒体と、
認証サービスとを含み、
前記コンテンツ媒体は、前記媒体上にあるコンテンツとは別個であって前記コンテンツおよび前記コンテンツ媒体を一意に識別する識別子を含み、前記識別子は、前記コンテンツ媒体が機械に接続されているときに取得されて前記認証サービスに提供され、前記識別子は、リーダが前記コンテンツ媒体のチップを処理するエネルギーを提供したときに、前記コンテンツ媒体の内側リング部に埋め込まれた前記チップによって起動され、前記認証サービスは、前記識別子を認証して、前記コンテンツを再生するためのアクセス・キーを前記機械に提供する、システム。」

2.引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献およびその記載事項は、前記「第2 平成24年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(2)引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前記「第2 平成24年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」で検討した本願補正発明から「前記リーダはコンパクトディスク(CD)又はデジタル多用途ディスク(DVD)リーダ」、「前記認証サービスによる認証は、前記コンテンツの特定のインスタンス及び前記コンテンツ媒体の特定のインスタンス用である前記識別子に基づくもの」、「前記アクセス・キーは、前記機械上の前記コンテンツ媒体の前記コンテンツへのアクセスに施行されるルールを含む」との限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明が、上記「第2 平成24年6月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.独立特許要件」の「(3)参考文献に記載されている技術的事項」ないし「(5)当審の判断」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-20 
結審通知日 2014-01-21 
審決日 2014-02-03 
出願番号 特願2008-547572(P2008-547572)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松平 英  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 田中 秀人
辻本 泰隆
発明の名称 コンテンツの配信および監視技術  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ