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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1288996
審判番号 不服2013-4381  
総通号数 176 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2014-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-03-06 
確定日 2014-06-17 
事件の表示 特願2008-556543「対象が絞られたモバイル広告」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月30日国際公開、WO2007/098487、平成21年 7月30日国内公表、特表2009-527864〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2007年2月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年2月22日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成24年2月14日付けの拒絶理由通知に対して同年5月18日付けで手続補正がなされたが,同年10月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成25年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,さらに平成25年7月23日付けの審尋に対して同年10月29日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成25年3月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成25年3月6日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容について
平成25年3月6日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)により,平成24年5月18日付けの手続補正による補正前の請求項1?16は,補正後の請求項1?16のとおりに補正された。
このうち,補正前の請求項1に係る発明は,補正後の請求項1に係る発明に対応するものと認められるところ,補正前の請求項1及び補正後の請求項1はそれぞれ以下のとおりである。(なお,下線は,補正の個所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)

<補正前>
「 【請求項1】
モバイル機器に送信するための関連性のある宣伝材料を生成する方法であって,
前記モバイル機器からクエリを受信するステップと,
前記モバイル機器についてのパラメータと一致する,広告主によって指示された配信パラメータに関連付けられた複数の広告を特定するステップと,
検索結果と前記複数の広告とを備える,前記クエリに対する応答を生成するステップとを備えていて,
前記広告主によって指示された配信パラメータは,ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,および対応される機器ディスプレイの言語からなる群から選択される
方法。」

<補正後>
「 【請求項1】
モバイル機器に送信するための関連性のある宣伝材料を生成する方法であって,
前記モバイル機器からクエリを受信するステップと,
前記モバイル機器についてのパラメータと一致する,広告主によって指示された配信パラメータに関連付けられた複数の広告を特定するステップと,
検索結果と前記複数の広告とを備える,前記クエリに対する応答を生成するステップとを備えていて,
前記広告主によって指示された配信パラメータは,ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,対応される機器ディスプレイの言語,および広告の地理的到達範囲からなる群から選択される
方法。」

2.補正の目的について
補正後の請求項1は,補正前の請求項1に対して,次の補正がなされたものである。
(a)補正前の「ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,および対応される機器ディスプレイの言語からなる群」を補正後の「ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,対応される機器ディスプレイの言語,および広告の地理的到達範囲からなる群」とする補正。

補正事項(a)について検討すると,補正後の「ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,対応される機器ディスプレイの言語,および広告の地理的到達範囲からなる群」は,補正前の「ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,および対応される機器ディスプレイの言語からなる群」に,「広告の地理的到達範囲」を加えて「群」の構成を限定したものである。

してみれば,請求項1に係る本件補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2004/079522号(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の(ア),(イ)の事項が記載されている。(下線は当審において付加したものである。)

(ア)「§1.2 BACKGROUND INFORMATION
The Internet provides many with access to information of interest. A user might request a document that may concern a topic of interest. Sometimes, however, the document might not turn out to have exactly what the user is looking for, or the user may desire to obtain additional information on the topic. Hypertext links between documents that may concern the same or related topics allow users to navigate or "surf" the Internet in their quest for information on the topic of their interest. However, such links are typically embedded in the document by an author of the document and may be relatively static. Accordingly, the usefulness of links often depends on the foresight and knowledge of the author. Accordingly, there is a need to help users to find content of interest.
Moreover, the Internet is often a useful conduit for companies to relay information about their products and services to potential customers. Therefore, there is a need for companies to put their information before users. To do so, they must entice users to a particular Web page or Website. This will often not happen unless the user is motivated to do so. One way to motivate a user to go to a particular Web page or Website is via on-line ads.
(途中省略)
Although untargeted online ads may be useful, online ads targeted to the user (e.g., to the user's present topic of interest, to the user's location, to the user's demographic, etc.) generally perform better. For example, search engines, such as Google for example, have enabled advertisers to target their ads so that they will be rendered in conjunction with a search results page responsive to a query that is relevant, presumably, to the ad.
(途中省略)
The foregoing ad serving systems can be thought of as keyword-targeted systems (where ads are targeted using terms found in a search query) and content-targeted systems (where ads are targeted using content of a document).」(第1頁第23行-第3頁第19行)
(当審仮訳:第1.2項 背景技術
インターネットは,多数の人に関心のある情報に対するアクセスを与える。ユーザが関心のあるトピックに関係する可能性がある文書を要求することがある。しかし,前記文書が,厳密に前記ユーザが探していた内容を持たないことが判明する,あるいはユーザが前記トピックに関して補足的な情報の取得を所望することもある。同じ又は関連するトピックに関係する可能性がある文書間のハイパーテキストリンクは,ユーザが関心のあるトピックに関係する情報を求めてインターネットをナビゲーションできる,あるいは「サーフ」できるようにする。しかしながら,通常このようなリンクは文書の著者によって文書中に埋め込まれ,比較的,変更が少ない(static)場合がある。したがって,多くの場合,リンクの有効性は著者の先見性と知識に依存する。その結果,ユーザが関心のあるコンテンツを見つけるのを補助するニーズがある。
さらに,多くの場合,インターネットは企業が自社の製品とサービスについての情報を潜在的な顧客に伝えるための有効なルートである。したがって,企業がユーザの前に情報を提示することにはニーズがある。こうするために,企業はユーザをある特定のウェブページ又はウェブサイトに呼び寄せなければならない。多くの場合,これは,ユーザがその気にならない限り起こらない。ユーザをある特定のウェブページ又はウェブサイトに行く気にさせる1つの方法は,オンライン広告を介することである。
(途中省略)
非標的(untargeted)オンライン広告も有効かもしれないが,ユーザを(例えば,ユーザの現在の関心のあるトピック,ユーザの所在,ユーザの人口統計学(demographic)等を)ターゲットとしたオンライン広告の方がより良く機能する。例えばグーグル(Google)(登録商標)等のサーチエンジンは,広告主が,自分の広告がおそらく前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示されるように,それらをターゲットとすることができるようにする。
(途中省略)
前記の広告供給システムはキーワードターゲット式システム(広告が検索クエリーの中で検出される用語を使用してターゲットとされる)及びコンテンツターゲット式システム(広告が文書のコンテンツを使用してターゲットとされる)と見なすことができる。)

(イ)「§4.1 DEFINITIONS
Online ads, such as those used in the keyword-targeted or content-targeted ad serving systems like those introduced in #1.2 above, or any other system, may have various intrinsic features. Such features may be specified by an application and/or an advertiser. These features are referred to as "ad features" below. For example, in the case of a text ad, ad features may include a title line, ad text, and an embedded link. In the case of an image ad, ad features may include images, executable code, and an embedded link. Depending on the type of online ad, ad features may include one or more of the following: text, a link, an audio file, a video file, an image file, executable code, embedded information, etc.
When an online ad is served, one or more parameters may be used to describe how, when, and/or where the ad was served. These parameters are referred to as "serving parameters" below. Serving parameters may include, for example, one or more of the following: features of (including information on) a page on which the ad was served, a search query or search results associated with the serving of the ad, a user characteristic (e.g., their geolocation, the language used by the user, the type of browser used, previous page views, previous behavior), a host or affiliate site (e.g., America Online, Google, Yahoo) that initiated the request, an absolute position of the ad on the page on which it was served, a position (spatial or temporal) of the ad relative to other ads served, an absolute size of the ad, a size of the ad relative to other ads, a color of the ad, a number of other ads served, types of other ads served, time of day served, time of week served, time of year served, etc. Naturally, there are other serving parameters that may be used in the context of the invention.
Although serving parameters may be extrinsic to ad features, they may be associated with an ad as serving conditions or constraints. When used as serving conditions or constraints, such serving parameters are referred to simply as "serving constraints" (or "targeting criteria"). For example, in some systems, an advertiser may be able to target the serving of its ad by specifying that it s only to be served on weekdays, no lower than a certain position, only to users n a certain geolocation, etc. "Geolocation information" may include information specifyi ni g one or more of one or more countries, one or more (inter-country) regions, one or more states, one or more metro areas, one or more cities, one or more towns, one or more boroughs, one or more areas with common zip codes, one or more areas with common telephone area codes, one or more areas served by common cable head end stations, one or more areas served by common network access points or nodes, etc. It may include latitude and/or longitude, or a range thereof. It may include information, such as an IP address, from which a user location can be estimated. As another example, in some systems, an advertiser may specify that its ad is to be served only if a page or search query includes certain keywords or phrases. As yet another example, in some systems, an advertiser may specify that its ad is to be served only if a document being served includes certain topics or concepts, or falls under a particular cluster or clusters, or some other classification or classifications.」(第5頁第27行-第7頁第3行)
(当審仮訳:第4.1項 定義
前記第1.2項に説明されたシステムのようなキーワードターゲット式広告供給システム又はコンテンツターゲット式広告供給システム,あるいは任意の他のシステムで使用される広告等のオンライン広告は,多様な固有の特徴を有してよい。このような特徴は用途及び/又は広告主によって特定されてよい。これらの特徴は以下で「広告特徴」と呼ばれる。例えば,テキスト広告のケースでは,広告特徴はタイトル行,広告テキスト,及び埋め込まれたリンクを含んでよい。画像広告のケースでは,広告特徴は,画像,実行可能コード,及び埋め込まれたリンクを含んでよい。オンライン広告のタイプに応じて,広告特徴は,テキスト,リンク,音声ファイル,ビデオファイル,画像ファイル,実行可能コード,埋め込まれた情報等の内の1つ又は複数を含んでよい。
オンライン広告が供給されると,広告がどのように,いつ,及び/又はどこで供給されたのかを説明するために1つ又は複数のパラメータが使用されてよい。これらのパラメータは,以下では「供給パラメータ」と呼ばれる。供給パラメータは,例えば,広告が供給されたページ(上の情報を含む)の特徴,広告の供給に関連付けられた検索クエリー又は検索結果,ユーザ特性(例えば,彼らのジオロケーション,ユーザによって使用される言語,使用されるブラウザのタイプ,過去のページビュー,過去の挙動),要求を開始したホスト又は関連会社のサイト(例えば,アメリカオンライン(America Online),グーグル(Google)(登録商標),ヤフー(Yahoo)(登録商標)),広告が供給されたページ上の広告の絶対位置,供給された他の広告を基準にした広告の位置(空間的又は時間的),広告の絶対サイズ,他の広告を基準にした広告のサイズ,広告の色,供給された他の広告数,供給された他の広告のタイプ,供給時刻,供給曜日,供給時期等の内の1つ又は複数を含んでよい。本発明の関連で使用してよい他の供給パラメータがあるのは当然である。
供給パラメータは,広告特徴にとっては付帯的(extrinsic)であってよいが,それらは供給条件又は制約として広告と関連付けられてよい。供給条件又は制約として使用されるとき,このような供給パラメータは単に「供給制約」(又は「ターゲッティング基準」)と呼ばれる。例えば,いくつかのシステムにおいては,広告主は,その広告が平日だけに,一定の位置より高く,一定のジオロケーションのユーザだけに等,供給されなければならないと指定することで,その広告の供給をターゲットにすることができる。「ジオロケーション情報」は,一国又は複数の国の,一又は複数の(国の間の)領域,一又は複数の州,一又は複数の首都圏,一又は複数の都市,一又は複数の町,一又は複数の区,共通の郵便番号が付いた1つ又は複数の地域,共通の電話の局番がついた1つ又は複数の地域,共通のケーブルヘッドエンド局によってサービスを受ける1つ又は複数の地域,共通のネットワークアクセスポイント又はノードによってサービスを受ける一又は複数の地域等の内の1つ又は複数を指定する情報を含んでよい。それは緯度及び/又は経度,あるいはその範囲を含んでよい。それは,ユーザロケーションをそこから推定できるIPアドレス等の情報を含んでよい。別の例としては,いくつかのシステムにおいて,広告主は,ページ又は検索クエリーが一定のキーワード又は言い回しを含む場合にだけその広告が供給されなければならないと指定してよい。尚更に別の例としては,広告主が,供給されている文書が一定のトピック又は概念を含む場合,又はある1つ又は複数の特定のクラスタあるいは1つ又は複数のなんらかの他の分類に該当する場合にだけその広告が供給されなければならないと指定できるシステムもある。)

(ウ)「§4.2 EXEMPLARY ENVIRONEMENTS IN WHICH, OR WITH WHICH THE PRESENT INVENTION MAY BE USED
Figure 1 illustrates an environment 100 in which the present invention may be used. A user device (also referred to as a "client" or "client device") 150 may include a browser facility (such as the Explorer browser from Microsoft, the Opera Web Browser from Opera Software of Norway, the Navigator browser from AOL/Time Warner, etc.), an e-mail facility (e.g., Outlook from Microsoft), or any other software application or hardware device used to render content, etc. A search engine 120 may permit user devices 150 to search collections of documents (e.g., Web pages). A content server 130 may permit user devices 150 to access documents. An e-mail server (such as Hotmail from Microsoft Network, Yahoo Mail, etc.) 140 may be used to provide e-mail functionality to user devices 150. An ad server 110 may be used to serve ads to user devices 150. The ads may be served in association with (i) search results provided by the search engine 120. Content-relevant ads may be served in association with content provided by the content server 130, and/or e-mail supported by the e-mail server 140 and/or user device e-mail facilities. The various servers can store "other information". For example, content servers 130 can store news stories, reviews, user group messages, etc. Search engines 120 can store search queries, etc.」(第8頁第28行-第9頁第12行)
(当審仮訳:第4.2項 その中で本発明が使用され得る,あるいはそれを用いて本発明が使用され得る例示的環境
図1は,本発明がその中で使用されうる環境100を図示する。(「クライアント」又は「クライアントデバイス」とも呼ばれる)ユーザデバイス150は,マイクロソフト (登録商標)のエクスプローラブラウザ,ノルウェイのオペラソフトウェアのオペラウェブブラウザ,AOL/タイムワーナーのナビゲータブラウザ等の)ブラウザ機能,e-メール機能(例えば,マイクロソフトのアウトルック),又はコンテンツをレンダリングするため等に使用される他のソフトウェアアプリケーション又はハードウェアデバイスを含んでもよい。サーチエンジン120は,ユーザデバイス150が文書の集合体(例えばウェブページ)を検索できるようにしてよい。コンテンツサーバ130は,ユーザデバイス150が文書にアクセスできるようにしてよい。(マイクロソフトネットワークのホットメール,ヤフーメール等の)e-メールサーバ140は,ユーザデバイス150にe-メール機能性を与えるために使用されてよい。広告サーバ110は,ユーザデバイス150に広告を供給するために使用されてよい。広告は(i)サーチエンジン120によって提供される検索結果と関連して供給されてよい。コンテンツ関連広告は,コンテンツサーバ130によって提供されるコンテンツ,及び/又はe-メールサーバ及び/又はユーザデバイスe-メール機能によってサポートされるe-メールと,関連して供給されてよい。多様なサーバが「他の情報」を記憶できる。例えば,コンテンツサーバ130はニュース記事,レビュー,ユーザグループメッセージ等を含むことがある。サーチエンジン120は検索クエリー等を記憶できる。)

(a)上記摘記事項(ア)の「前記の広告供給システムはキーワードターゲット式システム(広告が検索クエリーの中で検出される用語を使用してターゲットとされる)・・・と見なすことができる。」との記載,上記摘記事項(ウ)の「ユーザデバイス150は,・・・ブラウザ機能・・・を含んでもよい。」との記載,「サーチエンジン120は,ユーザデバイス150が文書の集合体(例えばウェブページ)を検索できるようにしてよい。」との記載からみて,引用例1には,「広告が,ブラウザ機能を有するユーザデバイスからの検索クエリーの中で検出される用語を使用してターゲットとされるキーワードターゲット式広告供給システム」との事項が記載されていると認められる。

(b)上記摘記事項(ア)の「例えばグーグル(Google)(登録商標)等のサーチエンジンは,広告主が,自分の広告がおそらく前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示されるように,それらをターゲットとすることができるようにする。(途中省略)前記の広告供給システムはキーワードターゲット式システム(広告が検索クエリーの中で検出される用語を使用してターゲットとされる)・・・と見なすことができる。」との記載,上記摘記事項(イ)の「前記第1.2項に説明されたシステムのようなキーワードターゲット式広告供給システム・・・で使用される広告等のオンライン広告は,多様な固有の特徴を有してよい。」との記載からみて,引用例1には,「キーワードターゲット式広告供給システムでは,広告が,前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示され,」との事項が記載されていると認められる。

(c)上記摘記事項(イ)の「キーワードターゲット式広告供給システム・・・で使用される広告等のオンライン広告は,多様な固有の特徴を有してよい。このような特徴は・・・広告主によって特定されてよい。これらの特徴は以下で「広告特徴」と呼ばれる。例えば,テキスト広告のケースでは,広告特徴はタイトル行,広告テキスト,及び埋め込まれたリンクを含んでよい。」との記載からみて,引用例1には,「キーワードターゲット式広告供給システムで使用されるオンライン広告は,例えばテキスト広告のケースでは,タイトル行,広告テキスト,及び埋め込まれたリンクを含む“広告特徴”を有し,このような“広告特徴”は広告主によって特定されるものであり,」との事項が記載されていると認められる。

(d)上記摘記事項(イ)の「オンライン広告が供給されると,広告がどのように,いつ,及び/又はどこで供給されたのかを説明するために1つ又は複数のパラメータが使用されてよい。これらのパラメータは,以下では「供給パラメータ」と呼ばれる。」との記載からみて,引用例1には,「オンライン広告が供給されると,広告がどのように,いつ,どこで供給されたのかを説明するために1つ又は複数の供給パラメータが使用され,」との事項が記載されていると認められる。

(e)上記摘記事項(イ)の「供給パラメータは,広告特徴にとっては付帯的(extrinsic)であってよいが,それらは供給条件又は制約として広告と関連付けられてよい。供給条件又は制約として使用されるとき,このような供給パラメータは単に「供給制約」(又は「ターゲッティング基準」)と呼ばれる。例えば,いくつかのシステムにおいては,広告主は,その広告が平日だけに,一定の位置より高く,一定のジオロケーションのユーザだけに等,供給されなければならないと指定することで,その広告の供給をターゲットにすることができる。」との記載からみて,引用例1には,「供給パラメータは,供給条件又は制約として広告と関連付けられ,供給条件又は制約として使用されるとき,このような供給パラメータは単に“供給制約”と呼ばれ,例えば,広告主は,その広告が平日だけに,一定の位置より高く,一定のジオロケーションのユーザだけに供給されなければならないと指定することで,その広告の供給をターゲットにすることができ,」との事項が記載されていると認められる。

(f)上記摘記事項(イ)の「供給パラメータは,例えば,・・・ユーザ特性(例えば,彼らのジオロケーション,ユーザによって使用される言語,使用されるブラウザのタイプ・・・),要求を開始したホスト又は関連会社のサイト(例えば,アメリカオンライン(America Online),グーグル(Google)(登録商標),ヤフー(Yahoo)(登録商標)),・・・,広告の絶対サイズ,・・・,供給時刻,供給曜日,供給時期等の内の1つ又は複数を含んでよい。本発明の関連で使用してよい他の供給パラメータがあるのは当然である。」との記載からみて,引用例1には,「供給パラメータは,例えば,ユーザのジオロケーション,ユーザによって使用される言語,ユーザによって使用されるブラウザのタイプ,要求を開始したホスト又は関連会社のサイト,広告の絶対サイズ,供給時刻,供給曜日,供給時期の内の1つ又は複数を含んでよい」との事項が記載されていると認められる。

上記(a)?(f)の点をふまえ,上記摘記事項(ア)?(ウ)の記載及び図面の記載を総合すると,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

「広告が,ブラウザ機能を有するユーザデバイスからの検索クエリーの中で検出される用語を使用してターゲットとされるキーワードターゲット式広告供給システムでは,広告が,前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示され,
キーワードターゲット式広告供給システムで使用されるオンライン広告は,例えばテキスト広告のケースでは,タイトル行,広告テキスト,及び埋め込まれたリンクを含む“広告特徴”を有し,このような“広告特徴”は広告主によって特定されるものであり,
オンライン広告が供給されると,広告がどのように,いつ,どこで供給されたのかを説明するために1つ又は複数の供給パラメータが使用され,
供給パラメータは,供給条件又は制約として広告と関連付けられ,供給条件又は制約として使用されるとき,このような供給パラメータは単に“供給制約”と呼ばれ,例えば,広告主は,その広告が平日だけに,一定の位置より高く,一定のジオロケーションのユーザだけに供給されなければならないと指定することで,その広告の供給をターゲットにすることができ,
供給パラメータは,例えば,ユーザのジオロケーション,ユーザによって使用される言語,ユーザによって使用されるブラウザのタイプ,要求を開始したホスト又は関連会社のサイト,広告の絶対サイズ,供給時刻,供給曜日,供給時期の内の1つ又は複数を含んでよい。」

4.対比
本件補正発明と引用例1発明とを対比する。

(a)引用例1発明において,ユーザが,検索クエリーを入力したり,検索結果ページを表示したりするための,ブラウザ機能を有するユーザデバイスである,「コンピュータ端末」を使用していることは自明のことであり,引用例1発明の,この「コンピュータ端末」と本件補正発明の「モバイル機器」とは,共に「コンピュータ機器」である点で共通している。
引用例1発明のキーワードターゲット式広告供給システムでは,「広告が,前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示され」るから,ここで表示される「広告」は,「照会」と「関連性のある広告」であり,また,当該「広告」は,「コンピュータ機器に送信するための」ものである。
引用例1発明の「広告」は,「宣伝」をするための「材料」であるといえるから,引用例1発明の「広告」が本件補正発明の「宣伝材料」に相当する。
引用例1発明では,キーワードターゲット式広告供給システムが,「広告が,前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示され」るようにするために,「関連性のある広告(宣伝材料)」を「生成」していると言えるから,「関連性のある広告(宣伝材料)を生成する方法」が記載されているといえる。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「コンピュータ機器に送信するための関連性のある宣伝材料を生成する方法」の点で共通している。

(b)引用例1発明の「検索クエリー」が本件補正発明の「クエリ」に相当する。
引用例1発明では,「広告が,検索クエリーの中で検出される用語を使用してターゲットとされ」,キーワードターゲット式広告供給システムでは,「広告が,前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示され」るものであるから,引用例1発明の「キーワードターゲット式広告供給システム」が,「コンピュータ端末(コンピュータ機器)」から,「検索クエリー(クエリ)を受信」していることは自明のことである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「コンピュータ機器からクエリを受信するステップ」を備えている点で共通している。

(c)引用例1発明において,供給パラメータは,供給条件又は制約として広告と関連付けられ,供給条件又は制約として使用されるとき,このような供給パラメータは単に“供給制約”と呼ばれ,例えば,広告主は,その広告が・・・一定のジオロケーションのユーザだけに供給されなければならないと指定することで,その広告の供給をターゲットにすることができる。
ここで,引用例1発明の「ジオロケーション」は,ユーザのコンピュータ機器の地理的な位置であるから,引用例1発明の「ジオロケーション」と本件補正発明の「モバイル機器についてのパラメータ」とは,「コンピュータ機器についてのパラメータ」である点で共通しており,広告主が,「その広告が・・・一定のジオロケーションのユーザだけに供給されなければならないと指定する」ことから,「広告主によって指定されたジオロケーション」は,少なくとも,本件補正発明の「広告主によって指示された配信パラメータ」に相当する。
そして,引用例1発明では,広告主が指定した一定のジオロケーションのユーザだけに広告が供給されるから,そのようにするために,「コンピュータ機器についてのパラメータ」と「一致」する,「広告主によって指示された配信パラメータ」に「関連付けられた広告」を「特定」していることは明らかである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,少なくとも「コンピュータ機器についてのパラメータと一致する,広告主によって指示された配信パラメータに関連付けられた広告を特定するステップ」を備えている点で共通している。(なお,「広告の地理的到達範囲」については,後述する。)

(d)引用例1発明では,ユーザの検索に対して,「広告」が「広告に関連性のある照会に応える検索結果ページ」と共に表示されている。
ここで,引用例1発明の「広告に関連性のある照会に応える検索結果ページ」が本件補正発明の「検索結果」に相当し,また,引用例1発明の「広告が,前記広告に関連性のある照会に応える検索結果ページと共に表示されたもの」が,本件補正発明の「検索結果と広告とを備える,クエリに対する応答」に相当する。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「検索結果と広告とを備える,クエリに対する応答を生成するステップ」を備えている点で共通している。

(e)上記(c)で記載したように,引用例1発明の「ジオロケーション」が本件補正発明の「広告主によって指示された配信パラメータ」に相当し,広告は,このジオロケーションのユーザだけに供給されるものであるから,「広告の地理的到達範囲」と呼べるものである。
してみれば,引用例1発明と本件補正発明とは,「広告主によって指示された配信パラメータは,広告の地理的到達範囲である」点で共通している。

そうすると,本件補正発明と引用例1発明とは,

「コンピュータ機器に送信するための関連性のある宣伝材料を生成する方法であって,
前記コンピュータ機器からクエリを受信するステップと,
前記コンピュータ機器についてのパラメータと一致する,広告主によって指示された配信パラメータに関連付けられた広告を特定するステップと,
検索結果と前記広告とを備える,前記クエリに対する応答を生成するステップとを備えていて,
前記広告主によって指示された配信パラメータは,広告の地理的到達範囲である
方法。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
ユーザが使用するコンピュータ機器が,本件補正発明では,「モバイル機器」であるのに対して,引用例1発明では,「モバイル機器」であるとの特定はない点。

[相違点2]
機器についてのパラメータと一致する,広告主によって指示された配信パラメータに関連付けられた広告を特定する際に,本件補正発明では,「複数の広告」を特定しており,また,クエリに対する応答が,「複数の広告」を備えているのに対して,引用例1発明では,「広告」が「複数」であるとの特定はない点。

[相違点3]
広告主によって指示された配信パラメータが,本件補正発明では,「ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,対応される機器ディスプレイの言語,および広告の地理的到達範囲からなる群から選択される」のに対して,引用例1発明では,「広告の地理的到達範囲」である点。

5.当審の判断
上記各相違点について検討する。

[相違点1]及び[相違点3]について
携帯情報端末や携帯電話機などの「モバイル機器」を用いて検索を行うことや,検索結果とともに広告を提示することは,周知技術である。
例えば特開2005-332169号公報の【0016】段落には「携帯情報端末10は,入力された文字データを含んだ検索要求をサーバ装置20に送信する(ステップS4)。・・・サーバ装置20は,・・・商品選択のウェブページに広告情報を付加する(ステップS14)。・・・そして,サーバ装置は,商品選択のウェブページの情報を携帯情報端末に送信する(ステップS15)。商品選択のウェブページの情報を受信した携帯情報端末10は,広告情報を含んでいる場合には,図6に示す画面を表示する。」と記載され,また,特開2005-251021号公報の【0017】?【0018】段落には「ユーザが携帯電話機を使って・・・検索語の入力を完了・・・すると,・・・リンク表示部55と,コメント表示部56と,トリガ画像57とを含む広告画面が表示される。例えば・・・検索画面において入力された検索語が「新宿」及び「本屋」であった場合,リンク表示部55には「XXXX書店新宿店」のWEBサイトに接続するリンクが表示され,コメント表示部56には「XXXX書店新宿店」からユーザに向けられたコメント「今月のベストセラー!!1位XXXX」が表示される。」と記載されている。
また,「モバイル機器」にコンテンツを提供する際には,キャリア(ワイヤレスキャリア)や機種(機器の機種),メーカ(機器のメーカ)等に応じて異なるコンテンツ(例えば異なるマークアップ言語(対応される機器ディスプレイの言語)のコンテンツ)を作成して,ユーザのモバイル機器に適合したコンテンツを提供する必要があることは,周知事項である。
例えば特開2002-304352号公報の【0026】段落には「1台のサーバーで,複数のキャリア,様々な端末機種を用いる利用者に対し,適切なコンテンツデータを適切なデータ形式で提供することができる。」と記載され,また,特開2005-25734号公報の【0008】段落および【0031】段落には「特に携帯電話キャリアの提供するサービスは,各キャリアによって内容が異なるだけでなく,プロトコルや言語といった基盤自体が異なっており,さらに,同一のキャリアであっても携帯電話の機種によって同様に様々な相違がある。このため,情報提供者は少なくとも各キャリアごとにコンテンツを用意しておかなければならず・・・」,「携帯電話に対するコンテンツの提供においては,各キャリアまたは携帯電話メーカその他がそれぞれ独自のサービスを提供しており,このようなサービスを反映するコンテンツの提供は,共通言語のみでは困難である。」と記載され,更に,「WDG作成プロジェクト,Webディレクション標準ガイド,プロジェクト始動からサイトの設計・構築まで,株式会社ワークスコーポレーション,2005年09月19日,第2版,第262?263頁」の第262頁には「PC向けWebサイトとは異なり,携帯電話会社(キャリア)ごとのサービスの違い(これは言語や画像フォーマットの違いでもある)やメーカー,機種による画面サイズや表示色数の違いなど制作者は複雑な対応を迫られている現状もある。」と記載されている。
してみれば,引用例1発明のユーザデバイスに上記周知技術を適用して,これを「モバイル機器」とすることには何ら困難性がない。
そして,上記周知事項によれば,引用例1発明のユーザデバイスが「モバイル機器」であれば,広告主は,キャリア等に応じて異なる広告コンテンツを作成する必要がある。しかし,広告主が,全てのモバイル機器の全てのキャリア,機種,メーカ,マークアップ言語等に対応した広告コンテンツを作成することは困難であることから,広告主が,広告対象としたいモバイル機器を特定して,当該特定したモバイル機器に対してのみ広告が供給されるようにすべきこと,また,そのために,広告主が,広告対象としたいモバイル機器を特定するパラメータとして,当該モバイル機器のキャリア,機種,メーカ,マークアップ言語等を指定し,指定した特定のキャリア,特定の機種,特定のメーカ,特定のマークアップ言語に対応した広告コンテンツのみを作成すれば足りるようにすべきことが明らかであり,そのように構成することは,当業者であれば容易に想到し得ることである。
また,引用例1発明のジオロケーション(広告の地理的到達範囲)は,「広告主が,その広告が一定のジオロケーションのユーザだけに供給されなければならないと指定するためのパラメータ」であるから,同様に,「広告主が,広告対象としたいモバイル機器のパラメータ」である,キャリア,機種,メーカ及びマークアップ言語を,ジオロケーションと合わせて指定できるようにすること,すなわち,広告主によって指示された配信パラメータが,「ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,対応される機器ディスプレイの言語,および広告の地理的到達範囲からなる群から選択される」ように構成することも当業者であれば適宜なし得ることである。

[相違点2]について
検索結果とともに表示される「広告」の数をどのような数とするかは,当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計的事項に過ぎないものであるから,引用例1発明において,「広告」の数を「複数」とすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

そして,本件補正発明の作用効果も,引用例1発明,周知技術及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

よって,本件補正発明は,引用例1発明,周知技術及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成25年3月6日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成24年5月18日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下,「本願発明」という。)

「 【請求項1】
モバイル機器に送信するための関連性のある宣伝材料を生成する方法であって,
前記モバイル機器からクエリを受信するステップと,
前記モバイル機器についてのパラメータと一致する,広告主によって指示された配信パラメータに関連付けられた複数の広告を特定するステップと,
検索結果と前記複数の広告とを備える,前記クエリに対する応答を生成するステップとを備えていて,
前記広告主によって指示された配信パラメータは,ワイヤレスキャリア,機器の機種,機器のメーカ,および対応される機器ディスプレイの言語からなる群から選択される
方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には,上記「第2 [理由]3.」に記載したとおりの事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明は,上記「第2 [理由]」で検討した本件補正発明から,上記「第2 [理由]2.」に記載した補正事項(a)に係る限定を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2 [理由]5.」に記載したとおり,引用例1発明,周知技術及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1発明,周知技術及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1発明,周知技術及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2014-01-20 
結審通知日 2014-01-21 
審決日 2014-02-04 
出願番号 特願2008-556543(P2008-556543)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩間 直純  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 石川 正二
須田 勝巳
発明の名称 対象が絞られたモバイル広告  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  

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